つれづれなるマンガ感想文3〜5月

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「つれづれなるマンガ感想文」6月前半
一気に下まで行きたい



・「吠えろアドロス」(1) みやぞえ郁雄、ひろみプロ(1977、高橋書店)
・「悪魔学園」(1) 太田康介(1975、永岡書店)
「コロコロコミック5月号」
・「おやつ」(2) おおひなたごう(1999、秋田書店)
・「神聖モテモテ王国」(5) ながいけん(1999、小学館)
・「淫乱牝奴隷」 荒井海鑑(1999、松文館)
・「制服はミルク色」 阿宮美亜(1989、日本出版社)
・「誘惑・セブンチャンス」 阿宮美亜(1993、一水社)

・「レッツゴーしゅんちゃん」(1) 坂本しゅうじ(1982、講談社)
・「パロディーZONE 魔女っ子エリス」 荒井海鑑(1993、久保書店)
・「永井豪ギャグ傑作選1」 永井豪(1999、集英社)
・「備前屋十兵衛」(2)(3)(完結) 富沢ひとし(1995、秋田書店)
・「備前屋十兵衛」(1) 富沢ひとし(1995、秋田書店)
・『ウルトラ超伝説(復刻版 全2巻)』居村眞二(1998、大都社)
・「勇士ダンダン」 永井豪(光文社)
・「極楽ハンター」(2)、「極楽ダイナマイツ」 本沢たつや(スコラ)
・「麻雀八犬伝」(上)呪いの血脈の巻 灘麻太郎、北野英明(1984、グリーンアロー出版社)
・「麻雀八犬伝」(中)黄金の闘牌の巻(1984、グリーンアロー出版社)
・「麻雀八犬伝」(下)炎の終焉の巻(1984、グリーンアロー出版社)

・「BORN 2 DIE」 井上三太(1998、太田出版)
・「青春I・N・G」 全2巻 やまさき十三、芳谷圭児(1978、秋田書店)
・「ミラクル・ランジェリー」(3) 帯ひろし(1991、秋田書店)
・「ためしたガール」(1) 山田こうすけ(1998、秋田書店)
・「オレってピヨリタン」(1) 高崎隆(1995、秋田書店)



・「吠えろアドロス」(1) みやぞえ郁雄、ひろみプロ(1977、高橋書店)

今から1億年前……。惑星アドロスの王ゼウスが、邪悪なゾルゲ族と戦い星を占領されてしまう。逃げ延びたゼウスの子供は、赤ん坊だったがタイムカプセルに入れられ生き延びる。
それが現代、普通の地球人として生活を送っていた悠木新(ゆうき・あらた) である。

彼はアルカード三世、フランケン、犬神圭(ウルフ)というアドロス星人の3人の従者とともに、「戦士アドロス」となって地球侵略をもくろむゾルゲ族と戦っていく。

「まんが秘宝 まんがチャンピオンまつり」(1998、洋泉社)内の「古今東西なんにも鑑定団」でも紹介されたヒーローマンガ。発表経緯などは「チャンピオンまつり」を参照していただくとして、アルカード(「ドラキュラ」のアナグラム)、フランケン、狼男を従者とするところ、「ミクロマン」と「テッカマン」を足して2で割ったような「戦士アドロス」のデザインなどはなかなかカッコいい。

またアルカードも黒い「アドロス」と同等のスーツ? に身を包んで戦うシーンが出てきてカッチョええです。

「アドロス星人」が世界の怪物伝説の元になっているらしい(と、ちょいと妄想してみたい)設定で、そのくせ変身したアドロスは甲冑のようなデザイン。そのミスマッチが新鮮。

また強力な重力を発生させる装置の争奪戦が、今後の盛り上がりを予感させる。
1巻しか手に入らないので続きが読めないんだが……。
(99.0530、滑川)



・「悪魔学園」(1) 太田康介(1975、永岡書店)

悪者を育成するのが目的であり、本物の悪魔が理事長を勤める「悪魔学園」に冷やかしで入学したカッパ(あだ名)。
彼らは次第に悪魔学園の恐ろしさを目の当たりにするが、持ち前の図々しさと開き直りで自分たちの居場所を確保していく。

彼らにかわい子チャンのマリア、不良のカマキリユウレイが加わって、毎回悪事を働くスラップスティック。

増刊だか月刊だかの少年サンデー連載だったという。
私には知識不足により太田康介というヒトの正体が皆目検討がつかないのだが、
やや劇画調の絵でありながら荒唐無稽な展開、中途半端に女の子のハダカが出てくることなどから類推するに、

「ハレンチ学園みたいなものを」

という企画ではじまったのではないか。
怪物みたいだがまぬけな教師、アナーキーな生徒たちなど共通点が非常に多いのだ。

ただし、本作の方が生徒たちの争いなどがリアルで、「悪魔学園」というよりは「少年院」みたいなイメージ。

これも古書店で売っているのを私は見たことなーし。続きは謎〜。
(99.0530、滑川)



久しぶりに読んだ 「コロコロコミック5月号」
(今月号でないところがメチャシブ!)の感想。

・「超速スピナー」(橋口隆志)
「THP−J」(チームハイパフォマンス ジャパン)を目指しての、孤島サバイバルレースの開始。
主人公・堂本瞬一以下、ライバルたちがヨーヨーを使って過酷なゲームに挑む。

「抜け穴」を開くボタンを、ヨーヨーでないと押せないようになってたりします。
そうした難関を次々突破する訓練らしい、「コロコロホビーモノ」の定番展開。
しかしちゃんとメンバーに美少女混ざってたり、
「ペアを組むレース」ってコトでライバルたちの人間模様が描かれそうな気配。燃えるぜ!

・「爆球連発! スーパービーダマン」(今賀 俊)
主人公・タマゴのビーダー仲間、スナイパー・ガンマに新ライバル「ガンモ」登場。
かつてガンマの後輩、ほとんど舎弟だったガンモが実力をあげてガンマに挑戦。燃えるぜ!

・「デュエル・マスターズ」(松本しげのぶ、テクニカルアドバイザー:中村聡)
カードゲーム「マジック・ザ・ギャザリング」のマンガ。カード修行に旅立った父が行方不明に……。
マジック大好き少年の主人公・切札勝舞(きりふだ・しょうぶ)は、
父とともに旅立ち一人生還したオトコ・NACにカード勝負を挑む。

話がまったく見えん! だってカードのことよく知らないから〜。しかし何か熱さだけは伝わってくるゼ。

・「K−1ダイナマイト」(坂井孝行、監修:石井和義(正道会館館長))
世界最強を目指す小学生・大奈舞人(だいな・まいと)が正道会館に入門。

今回は基礎訓練の大切さを知らされるが、逆に才能の片鱗をアンディ・フグに見せつける舞人。

空手のテクニカルな解説が面白い。
ここまでの細密さは、空手マンガでは梶原一騎以来、今まであったようでなかなかなかったと思う。

面白い立ち技格闘技マンガになるか? 初見だが期待大。

・「学級王ヤマザキ」(樫本学ヴ)
アニメなどでおなじみのギャグマンガ。コロコロ伝統の「ゴリポン君」系ギャグマンガでは現在いちばん絵がキレイだと思う。

それでいてオババ様の迫力もある(「オババ様 爆誕!」には笑った)。

・「ぼく! ミニドラえもん」(原作:藤子・F・不二雄、まんが:萩原伸一(藤子プロ)
ドラえもんが用事でいないときに、代わりに出てくる「ミニドラえもん」の活躍。

今回は私のようなオジサン世代にも懐かしい「ムードもりあげ楽団」の登場だ!

音楽で人間の喜怒哀楽を操作する「ムードもりあげ楽団」が暴走し、それをくいとめるためドラミちゃんが忙しいとき代わりに出てくる「ミニドラミ」が登場。

「ミニドラミのムードもりあげ楽団と暴走ムードもりあげ楽団が対決」……って面白いじゃないですか。
これネーム切ってるのだれなんすか!?

・「最新ドラえもんひみつ百科」(三谷幸広)
今回が最終回らしい。ドラえもんのひみつ道具を紹介するマンガだが、ひみつ道具のひとつ、
「異説クラブメンバーズバッジとマイク」ってのはすげえ。

「ほんとうは天動説が正しい!」とマイクにしゃべってバッジを付けると、

「天動説を信じてしまう」ってメチャメチャコワイ道具じゃー。

「流行性ネコシャクシビールス」もそうだが、洗脳系道具はコワイね!

……でも欲しいね。

・「PaPiPuペット」(画:姫野かげまる、作:ウィズ)
山神拓也の買っているゴールデンハムスターが、パソコンのコードをかじってしまった。

ちょうどそのとき、パソコンには絶滅危機動物ファイルのデータが立ち上がっていた。

パソコンから絶滅危機動物の願いや魂がハムスターに乗り移ったのか、身体と瞳がブルーに、そして額に星形の模様がついてハムスターがへんしん!
拓也はこのハムスターを「ブルー」と名付ける。 ブルーには動物の言葉を翻訳する不思議な力があるらしい……。

今回は「親に勉強べんきょううるさく言われ続けた少年・まさるが、学校で飼われているうさぎに自分の姿を投影してしまい
かわいそうになって山に逃がしてしまう」という話。

うわー、映画「E.T」のワンシーン、「実験に使われるカエルをぜんぶ逃がしてしまう少年」じゃないっスかあ。
イタくて悲しい話……。

もちろんナニワブシ的ハッピーエンドを迎えるんだけどね。

昨今の環境問題ペットブームをテーマとした、子供向け「泣き」マンガとして面白くなりそうな気配だ。絵もカワイイし。

・「魔動天使 うんポコ」(江川達也)
「小学校低学年向けタルるーと」って感じの本作、話がものすごく単純なだけに楽しめたポコよ。
今回はカードゲームの話。そんなにカードってブームなのか。「ジャイアン」的ガキ大将が「ゴリポン」って名前なのは故意か偶然か!?

・「どすこい! サイぼん」(のむらしんぼ)
「とどろけ! 一番」ののむらしんぼ先生最新作! でも今月が最終回。
ここから読むので話があまり見えないが、動物を擬人化した世界で
プロレスラーかなんかになるために「最強の黒サイ」ブラックサイバーと戦うサイぼん。

なぜ「サイ」なのか!?

う〜んミステリア〜ス。(99.0527、滑川)



・「おやつ」(2) おおひなたごう(1999、秋田書店)

少年チャンピオン連載のギャグマンガ。「おやつくん」が主人公で、あとゼリーくん、ビスコちゃん、モンブランくん、おやつ神さまなどが登場、いろんな事件が巻き起こる……という基本展開は1巻と同じ。といっても「ちびまるこちゃん」や「クレヨンしんちゃん」的な「(大人びているとはいえ)ストレートに子供を主人公とした」マンガではなく、ワンクッションおいた、「ジャンルパロディ」の集積体という印象である。
藤子・F・不二雄(含むトキワ荘時代のマンガ家)表現を意識的にサンプリングしていることからも作者の「ジャンルパロディ魂」をくみ取ることができる。

しかし、「あきらかに藤子Fの『表現』を踏襲することによるパロディ的な笑い」と、「本当に表現、効果として藤子Fの手法を用いている」場合があり、単純に「これはジャンルパロディです」と言い切れない「つかみどころのなさ」がある。
それはギャグにおいても同じで、ジャンルパロディ、不条理ネタ、「あるある!」と思わず言いたくなるネタ取り混ぜた中にベタベタなギャグも混ざっており、一言でかたづけられない面白さを持っている。

とりあえず「コドモマンガ」的展開としては「おやつ族とごはん族」の戦いに巻き込まれたおやつくんの活躍(タイトル「サウスポー」ほか)、「あるある!」的ネタとしては「スーパーおやつくん」になったおやつくんが「どの辺がスーパーか」というと、「日本代表は応援するけどJリーグはそんなに……」「救急車の音がしてもいちいち外を見なくなった」(タイトル「ウエハース」)と説明するくだりに爆笑してしまいました。(99.0524、滑川)



・「神聖モテモテ王国」(5) ながいけん(1999、小学館)

少年サンデー連載。謎の宇宙人ファーザーと、その息子として同居している少年・オンナスキーが毎回「こうすればモテる!」とない知恵絞っては失敗続きのずっこけギャグマンガ、というのは今までと同じなわけの巻! で来週もキリコと地獄につきあってもらう、ってファーザー調でキメようと思ったが「モテモテ」にはボトムズネタは出てこないんじゃよー。

この巻から本格的にキャプテン・トーマス(アメコミ風ヒーローだが実は偽善者)がファーザーと対立している模様。

偽善者なので、オンナスキーも彼を嫌っているところが深い。

ファーザーとオンナスキーの関係は、当然容易に「ドラえもんとのび太」、「オバQと正ちゃん」に置換されうる。……ってなことは当然作者のながい閣下はお見通しである。そこで、すでに「ファーザーとオンナスキーの別れ」は、実にしみじみとダウナーでドキリとした感じで過去に描かれているのだが、そこには休載を挟まなければならないという便宜上の理由以上のものがある気がする。「すごいよ マサルさん!」が最終回を先取りせねばならなかったように、「モテモテ王国」もまた最終回を先取りしたのだ。

今回も、第3話「二人の道」において、「ファーザーとオンナスキーの関係」について言及される。ここでオンナスキーはファーザーの謎について考えようとするのだが、結局、
「いや……もういい。」「お前がだれだって。」「……というよりお前の正体なんて知りたくない。」「なんだか知ってしまったら終わりって気もするし……」「ぼくにとって昔の事ってまだあいまいだし……」「その上、今の生活がなくなっちゃったら……困る。」と言う。

オンナスキーは、今の生活自体が幻想であることを知っている。実はファーザーですら、キャプテン・トーマスですらそれらを悟っているようなフシさえあるのだ。

まあギャグマンガをあまり深読みするのもどうかと思うが、しかしそんな風情がかいま見えることも確かだ。(99.0524、滑川)



・「淫乱牝奴隷」 荒井海鑑(1999、松文館)

成年コミック。荒井海鑑の新刊短編集(といっても出たのは2月)。
成年コミックにおける「ギャグ」について語るのは非常にむずかしい。雑誌にアクセントを付けるため、Hより(場合によってはHはまったくなく)ギャグを優先させている作品は単純に「ギャグマンガ」としていいのだろうが、設定に奇妙な要素が入り交じっていると、それを「ギャグ」とするかどうかは読者の判断によるのではないか。

まずフェチモノの場合、読者がそのテのシュミでないとギャグにしかとれない場合がある。これは「読者によって感想が変わる」典型。

またHマンガでは「何かをたとえとして表現する」場合が多くある。たとえば「レイプ倶楽部」というのを描くとして(あくまで例)、体育会系を皮肉って、軽いギャグにも、陰惨な話にもできるわけである。「ギャグと恐怖は紙一重」というが、それを体言できると言えるし、読者がどのレベルで許容できるか、という問題でもある。

また、作者側が「ギャグを描きたい」と思っても、「ギャグ」というのは大雑把に言って「客観化」であるため、「エロい気持ちを追体験する」という傾向の強いHマンガとは、相反する部分がある。

また、「ギャグの面白いHマンガ」と、「コメディっぽいHマンガ」とはまた印象の違うものである。

で、以前に感想文を書いた阿宮美亜荒井海鑑の場合は、「はっきりと読者を笑わせることを意識して」描いているということができる。

本作「淫乱牝奴隷」は、タイトルはものものしいし内容もSM風味だが、「海鑑節」としかいいようのないギャグ的要素に満ちている。
SMものだと、ギャグで陰惨な内容をサンドイッチにしてはいるが全体的な印象はやはり陰惨、という場合もある(こういうのは正直苦手)が、
荒井海鑑の場合は読後はどこまでも(いい意味で)「くだらな〜い(^_^)」と笑っていられる作風だと思う。
今回の短編集も、毎回ラストが急転直下の(それもかなりものすごい)ギャグオチであった。

収録作品「フランダースの雌犬」は、「画家をめざす女の子が飾ってある名画を見ようと教会に忍び込む」という話。このオチは(もちろんいい意味で)脱力モノ。(99.0524、滑川)



・「セイテン大戦 フリーダーバグ」(1) 石川賢(1999、角川書店)

西暦2040年、中国大陸に眠るエネルギー源を巡り、第三次世界大戦、通称「斉天(セイテン)大戦」が勃発。蛟竜(こうりゅう)という名の男に謎の美女「バグ」運搬を依頼された運び屋・護国寺大和は、潜入した敵の飛行艇の中で謎の巨大人型ロボット「セイクン」と同化してしまう……。

とにかく最近の石川賢にはハズレなし。「セイクン」のデザインもムチャクチャカッコいい。話もデカい。石川賢は「戦争の中で独立部隊みたいのが戦う」というパターンが本当にウマい。(99.0517、滑川)



・「制服はミルク色」 阿宮美亜(1989、日本出版社)
・「誘惑・セブンチャンス」 阿宮美亜(1993、一水社)

成年コミック。すべてコメディタッチ。なぜか本気とも冗談ともつかない政治談義を登場人物がえんえんと繰り広げたり、政治パロディがあったりするのが特徴? 近年、雑誌「特冊新鮮組」に連載された超絶性技バトルマンガ「SEXAL REVENGER マナミ」の作者です。
ところで、「制服はミルク色」は、なぜか一部の男女の結合部分に「直接」(印刷した紙にじかにだよ!?)ホワイトで修正がしてあったが、これは何なんだろう? 古本屋で購入したものだが、「まあイヤラシイ」などと思って最初に買ったヤツが修正入れたのか。
じゃなんでHマンガ買ったんだ。謎だ。(99.0208、0511、滑川)
99.5.27



・「レッツゴーしゅんちゃん」(1) 坂本しゅうじ(1982、講談社)

コミックボンボン連載。しゅんちゃんほか子供たちがCMのセリフをしゃべってはわーわー騒ぐというだけの、ギャグマンガ。「CMネタは風化が早い」と言う。おそらく本作が出て数年後、読み返したら(そういうヒトがいたらだが)、その風化具合は大変なことになっていたんじゃないかと思う。17年も経った今では「なにもかもが懐かしい……」で済んじゃうけどね。
作者は謎の超ヌルいマンガ「七瀬ちゃんSOS」を描いている。でも女の子はカワイイと思う。(99.0207、0511、滑川)



・「パロディーZONE 魔女っ子エリス」 荒井海鑑(1993、久保書店)

力の抜けるようなギャグと急転直下のオチ、アニメ絵なんだけど藤子不二雄と昔の林静一を混ぜたような???独特のタッチで魅了する荒井海鑑の昔のHマンガ単行本。10本の読み切りがすべてジャンルパロディとなっていて、そのジャンルの「狙い」が企画書として話の冒頭に毎回載っている。ジャンルパロディ大好きっコの私としては、こういうのやられちゃうともう何もやる気しなくなりますね。なおこのテの形式は、後にダウンタウンなどが徹底的にやり尽くしたため、現在では企画としてはそのままでは古いとは思う(この単行本は面白いけど)。そう考えるとこの6年間、何もなかったようで長かった。

各話のタイトルは以下のとおり(カッコ内はジャンル):
「科学戦隊カッチョマン」(戦隊ヒーローもの)、「デデデの電魔くん」(妖怪もの)、「魔女っ子エリス」(魔法もの)、「クラッシャーペアの冒険」(SF冒険アクション)、「タイガーマント」(スポーツ根性もの)、「超合体ガッターロボ」(巨大ロボットもの)、「変身忍者 風」(忍者もの)、「アイドル神話E.E.ガールズ」(アイドルもの)、「魔女っ子エリス 魔州代がくる!! の巻」(「魔太郎」のパロディ)、「どハレンチ学校」(学園ギャグ)

個人的には「超合体ガッターロボ」の「イッターマン」がお気に入り。
ちゃんと登場時に「イ」のポーズを取るのがなんかおかしくて。
同じ作者の「戦闘少女隊」(1995、久保書店)も面白かった。(99.0127、0511、滑川)



・「永井豪ギャグ傑作選1」 永井豪(1999、集英社)

「迷惑探偵!! イボ痔小五郎」シリーズを収録。「バイオレンスジャック」にまで(声だけ)出てくる、キレ痔の探偵・イボ痔小五郎の活躍を描くギャグマンガ。もともとジャンプの愛読者賞の読みきりだったのを、あちこちで連作短編風に描いたものをまとめた(らしいが、初出が明記されていないので不明)。

表紙にキューティハニーが描かれていたので、「この作品にもハニーが出ているのか?」と思い買ったら、なんとハニー出演部分は、「キューティハニー」本編のイボ痔小五郎登場シーンだけを抜粋したものであった!

まあ「イボ痔小五郎」自体は、キレ痔の探偵・イボ痔小五郎、その部下の「こややし少年」(なぜか肥桶をかついでおり、歩くたびに中の肥が周りの人間にひっかかるのでとてもいやがられている。だがなぜか小五郎も彼を呼ぶのをやめないし、毎回まいかいまったく出る必然性がないのに登場する)や「廃人二十面チョ」「女賊ふろとかげ」など世にもクダラナイキャラクターのオンパレードで面白いことは面白い。

なお同時収録の「ガリキュラろぼチャー ド・キーン」は、ハレンチ学園の教師たちが、普通の学園で生徒にまったく相手にされないことをなげいて、「神さまにお願い」することで教師ロボットに変身する、という気の狂った(または2秒で考えた……?)設定。絵がまるっきり「ボスボロットだ〜い!」の真樹村正。これぜんぶ真樹村正が描いていると思う、たぶん。(99.0408、0511、滑川)



・「備前屋十兵衛」(2)(3) 富沢ひとし(1995、秋田書店)

「エイリアン9」の富沢ひとし作品。ファンタジックな世界での、「どんな商品でも仕入れてくる天才商人(あきんど)」備前屋十兵衛の活躍。2巻では、「それを据えればどんな攻撃でも船は絶対沈まない」という伝説の「魂の船首像」を取りに、罪人の魂が無数に住む「ジェリー島」(本当にジェリーのカタチをしている)へ向かう。

3巻ではまるまる「出島競り市編」。商人の島「出島」で、商人の組織「絆会」を掌中におさめようとする悪徳商人グリルに、自分の商品の入った「ガマ口」(活きている魔法のアイテム)を盗まれた十兵衛が、奪還に挑む。

以前にも書いたとおり、あまりにも「何でもアリアリ」な世界なため、「問題が起こる>解決」という緊張感が出にくいのが難点だが、単行本でまとめて読むとすごくワクワクする。ひとつひとつの不思議アイテムがとっても楽しい。(99.0408、0511、滑川)



・「備前屋十兵衛」(1) 富沢ひとし(1995、秋田書店)

現在、ヤングチャンピオンで「エイリアン9」という小学生の女の子がエイリアン退治をするマンガ(けっこう人気あるみたい)を描いている人の作品。たぶん。今はロリっぽい女の子を描いているが、本作は絵柄的にはおそらく筆者が板垣恵介のアシスタントだったときの影響が大きい。

ストーリーは、アラビアンナイトの世界をさらに幻想的にしたようなところで、「どんな商品でも必ず仕入れてくる」という冒険家に近い商人・十兵衛の活躍を描くというもの。依頼されるモノも、食べれば100年は寿命が延びる「延命饅頭」や、船に立てれば絶対に沈まないと言われる「魂の船首像」など面白いものばかりで飽きない。結果的に本作は打ち切りになってしまったのだが、これはあまりにも何でもアリの世界のため、十兵衛のスゴさが読者に伝わりにくい、ストーリー展開もご都合主義だと思われやすいという理由からだろうと思う。(99.0103、0511、滑川)



・『ウルトラ超伝説(復刻版 全2巻)』居村眞二(1998、大都社) [amazon]

1982年頃、「てれびくん」連載。
地球に突然、ウルトラマンAの宿敵・エースキラーが出現! 暴れ回る。ウルトラ兄弟たちは速攻かけつけるが、パワーアップしたエースキラーにはなすすべがない。ウルトラ兄弟の長男・ゾフィーは、エースキラーにコテンパンにやられ、ブラックホールに吸い込まれてしまう。悲しみにくれる光の国。
ウルトラの父は「エースキラーを倒すには、伝説の強化服・コスモテクターが必要だ」と言うが、それがどこにあるのかがわからない。そんなとき、再びエースキラーが地球を攻撃。そこにやってきたのが、コスモテクターに身を包んだ謎の戦士、「アンドロメロス」だった!
一撃でエースキラーをやっつけるメロス。しかしエースキラーを操っていたのは、宇宙征服をたくらむ「グア」であった……。

この他にもマグマ星人三人衆、ベムスター、メカバルタンなどが手下として登場。さらに怪獣戦艦ベムズン、ギエロニア、キングジョーグというそれぞれベムスター、ギエロン星獣、キングジョー型の宇宙戦艦が登場したりと、テレビの怪獣の「夢の復活」が楽しい。

そして特筆すべきが、第2巻収録「プロメテウスの伝説」
ウルトラ兄弟の苦手な怪獣が復活したり、光の国のウルトラ戦士が総力戦を行うなどの盛り上がりは内山まもるの「ザ・ウルトラマン」と同一なのだが「ウルトラ超伝説(中でもプロメテウスの伝説)」のすっとんだところは、マンガの中でテレビ版本編の疑問(なぜウルトラマンはアカの他人の地球人に親近感があるのか? など)にすべて答えてしまい、なおかつ新ヒーローである「アンドロメロスとその仲間」をからませようとしたことにある。当時の「てれびくん」、こんなに大胆かつ高学年向けの雑誌だったのか???

ごく基本的な設定……光の国は太陽がなく、「プラズマ・スパーク」なる機械の光で成り立っていることなどは学習雑誌の特集記事で読んではいたが、これほどまでに大胆に「正史」として組み込んでしまった例は他に知らない。
いりくんだ設定はほとんどヴァン・ヴォクトやディックの世界だ〜。

本作は、ある意味コミカライズの限界に挑戦した作品だと言えよう。
(98.0908を99.0511、04.1031、滑川)



・「勇士ダンダン」 永井豪(光文社)

今は亡き「少年王」連載のSFファンタジー。失われた科学文明の上に築かれたファンタジックな世界で、すでに人間がつくったことさえ忘れ去られた戦闘用ロボット(鉄人族)のダンダンと、女剣士ミーコの珍道中を描く。「魔人」と恐れられた、鉄人族の身体を操る人間・ガーゼット(魔人ガーゼット)ってのだけが面白かった。(98.0908、99.0511、滑川)



・「極楽ハンター」(2)、「極楽ダイナマイツ」 本沢たつや(スコラ)

副題が「下半身暴走紳士」とあるように、一見ダンディーな紳士が、ただひたすらにどんな女性でも容姿・年齢関係なく、ただただやりまくるというすごいマンガ。
(1)は本当にただやりまくるだけだったけど、(2)になってから、ある意味「博愛主義」の主人公が幸薄い女性をセックスによって心ならずも救っていく、という展開が多くなり、味わい深い。ただ、作者なりのおたく批判らしい、「アニメ顔のピンサロ嬢だけは勃たない主人公」、「アニメ顔の女の子をさらってきてレイプしようとするおたく男」というエピソードにかなりダークネスな気持ちに。
なお、「ハンター」と「ダイナマイツ」の関係は続編か総集編か、調査不足で不明。(98.0908、99.0511、滑川)



・「麻雀八犬伝」(上)呪いの血脈の巻 灘麻太郎、北野英明(1984、グリーンアロー出版社)
・「麻雀八犬伝」(中)黄金の闘牌の巻(1984、グリーンアロー出版社)
・「麻雀八犬伝」(下)炎の終焉の巻(1984、グリーンアロー出版社)

飛騨穴山藩は幕府への自己防衛のために隠し金山を持っていたが、幕末の政変でそれが明らかになるとかえって不利になることを恐れ、闇に葬ることにする。
その際関係者を命令によりすべて殺してしまったのが、剣術指南・犬塚修輔である。
しかしその命令を下した家老・倉沢陣内と勘定役・村田利太郎は、おのれが金山を手中にすることを計画していた。
それを知った修輔は2人を殺し、自身も死んでしまうが、金山の秘密と穴山藩の因縁は、時を経た現在でも生き続けていた……。

時は経って現代。主人公・犬塚八郎は、父が本当の父ではないこと、本当の父はすでに死んでいるが雀士・犬塚修次郎であること、そして自分には7人の兄弟がいることを知らされ、兄弟探しの旅に出る。だがそれは、自身の呪われた血と、黄金の在処を探す旅でもあった。守護神である犬に助けられながら、八郎の旅は続く……。

麻雀マンガはあまり読まない。なんでかというと、自分が麻雀ができないからです。だから、肝心の麻雀の勝負シーンのよしあしはまったくわからなかったりする。
反面、「なんとか八犬伝」と名が付く作品はどこか気になる。それは、「なんとか水滸伝」というタイトルのものが「人がうじゃうじゃ集まってくる」程度に原典を踏襲していればよいのに対し、「八犬伝」はかなりのところまで原典をふまえてストーリーを展開しなければならない面白さがあるからだ。本作は「麻雀」と「八犬伝」を何がなんでもからめねばならず、そのため実際に麻雀が日本に来たそれ以前の幕末から、連綿と麻雀の知識が犬塚家にはあることになっている。そして麻雀の「黄金陣」の牌譜に黄金の謎が隠されているというのだ。
う〜ん伝奇である。ロマンである。
登場する八犬士たちも、プロレスラーとか盲目の笛師とか個性溢れる輩であった。

しかしいつも思うのだが、「八犬伝もの」は映画では2時間では短すぎるし、マンガでも単行本3巻ぶんとはちと短い。八人の個性をじっくり描く余裕がなかなか出ないんである。(99.0509、滑川)



・「BORN 2 DIE」 井上三太(1998、太田出版)

「コンビニに散らばる9つの死体−−女子高生バイト、暴走族、オバサン、黒人店員、お巡りさん、そして豪福寺SARUのイジメられっ子・バイブ……。大都会『トーキョー』の密室コンビニで、いったい何が起こったのか? 気が狂いそうに暑い夏の、ある一夜の物語。」−−単行本オビより。

井上三太が「クイック・ジャパン」に連載していたマンガの単行本化。孤独な子供たちが理想の王国をつくろうとする「ぶんぷくちゃがま大魔王」やイジメられっ子の少年が凶悪な二重人格者となり復讐しようとする「隣人13号」などで有名。……というか、やたらと書評で取り上げられたり、作者がインタビューに出てきたりする「ギョーカイ受けするマンガ家」という印象があった。
しかしジワジワと人気は上昇、ストリートファッション雑誌「BOON」で連載中の作品も人気があるというし、過去に出した単行本も版を重ねているという。イヤめでたいめでたい。

「ストリート系マンガ家」のようなくくり方をされる場合があるように、井上三太が描くのは「あるあるある!」と叫びたくなるような日常のありがちな風景。たとえばカップラーメンの液体スープに書いてある「麺を湯切りした後お湯を注ぐ前に入れてください」まで刻銘に描いていたりする。

なんか、DJとかチーマーとかを主人公にした物語、っていうと(あ、本作は「チーマー」みたいな「豪福寺SARU」のメンバーが登場人物の一人になっている)、言葉遣いが違うだけで内容は単なるヤンキーマンガだったり、「ビッグトゥモロウ」的物語だったりしてガックリすることがある。雛形あきこがDJを目指すっていう映画企画があったそうだがけっきょく立ち消えになったみたいね。イヤ、公開されればいろんな意味で絶対見に行っただろうけど。

で、井上三太もR&Bとかヒップホップが好きで、またそれらが好きな子たちの風俗をリアルに描いてるとは思うんだが、彼の描く「ストリート」っていうのは本当の意味でのストリートで、別に流行の最先端行っている若者だけじゃなく、ホントにその辺(つまり「通り」イコールストリート)をプラプラしてそうな人を描くのがウマいんです。

……その「あるある感」っていうのも作品によって微妙にトーンは異なるんだけど、頭っから小馬鹿にしているわけでも、読者に共感を求めているわけでもなく、実に不思議なタマ投げてくる、っていう感じ。冷徹にして、どこか愛嬌がある。

それにコギャルってんですか? そのコギャル顔のリアルさったらないんだよね。なんつーか、鈴木紗理奈をブサイクにしたようなというか、チャラをブサイクにしたようなというか、そういう「普通の顔」を描くのがすんごくウマい(んじゃあ作者本人はアイドルとか大っ嫌いかと思ったら、国分佐智子が好きだそうだ。スバラシイ)。
この「あるある感」には仕掛けがしてあって、現実にはないファッションや現象などもうまく取り混ぜてある。たとえば「黒人のコンビニ店員」、日常的に見かけるものではないんだけど、「ありそう」な雰囲気がある。
パラレルワールド的な「東京」を描こうとかなり意識的なヒトなんだよね。

本作は構成からして少し変わっている。

あらすじは、交番で巡査から拳銃を奪った「豪福寺SARU」のメンバー・バイブ(彼のアダ名は中学時代、授業中に机の中からバイブが飛び出したことによる)がコンビニ強盗に入るところからはじまる。
バイブ、店員、客たちがシャッターを閉めたコンビニ内で異様な状況に置かれることになる。
「ループマンガ」と自分で言っているように、コンビニで起こった「殺人事件」のようすがそれぞれの登場人物の視点で描かれているため、どのページから読んでもだれの視点から見ても楽しめるようになっている。それは意識して視点を俯瞰的にしているからで、すべての登場人物にほぼ均等に比重が置かれている。これは失敗すると全体的に食い足りない印象になってしまうんだろうけど、「あるある感」があるため読者をつなぎとめておくことができているんではないかと思う。

ものすごくおおざっぱに言って、拳銃バンバンぶっ放してヒトがバンバン死ぬ。でもそこには「人はなぜ生きるのか?」「なぜ殺すのか?」「なぜ死ぬのか?」みたいなテーマがあるんスよね。

本作は大量殺人事件の真相は? という謎解き的な面白さもある。最近パラッと読んだ作品にJ・G・バラードの「殺す」っていう小説があって、これは現実の大量無差別殺人をモデルにして、アメリカの高級住宅街で起こった無差別殺人の謎を追う構成になっている。骨組みが本作と似ていないこともないし、テーマも近いと思うんだけど、「殺す」の方はもったいぶってて血みどろ描写が仰々しいのでイヤになって放り出してしまった。本作「BORN 2 DIE」は「どこからでも読める」んだから強い。よって本作の勝ち。(99.0304、滑川)



・「青春I・N・G」 全2巻 やまさき十三、芳谷圭児(1978、秋田書店)
(青春コミックス)

今から17年ほど前古本屋でよく見かけ、友人同士で「おれたちっていま『青春I・N・G』ダネ!」なんて冗談飛ばしてたのが懐かしい。
自動車スクラップ処理工場? の息子・風間 大は、平凡な高校生。だが廃車寸前のジープがまだ活きていたことから、それを修理して運転し、あてのない旅に出ようと思い立つ。そして、卒業を目前にして、教室の窓から家出同然で旅立つのだ。
1話完結形式で、旅先で出会った事件を描く。滑川は個人的に同じ原作者の「夕日よのぼれ!」(画:あだち充)の、昔の中村雅俊主演の青春モノのようなノリが好きだったのだが、本作もまさにそんなカンジである。

この作品発表後数年もすれば、80年代に入って「なんクリ」とかがブームになって、こんな「ジープであてもなく」という旅自体がナンセンスだと受け取られていってしまうのだろう。

2巻の後半ではうってかわって滝沢解(最近ではふくしま政美とのコンビが話題に)原作の、やたらハードな短編「連鎖反応」と「虫けら」がおさめられている。うーん70年代。(99.0409、滑川)



・「ミラクル・ランジェリー」(3) 帯ひろし(1991、秋田書店)
(エロコメ)

月刊少年チャンピオン連載。「宇宙から突然降ってきたミラクル・ランジェリー」を身につけた中学生の村上千里が不思議なパワーを発揮。幼なじみの大助や宇宙人タマノスケも巻き込んで騒動が起こるというエロコメ。の第3巻。だって1、2巻が見つからないんだも〜ん。
要するに、スーパーパワーを持った女の子が下着姿で暴れ回るというタグイのマンガです。
途中から「闇の女帝グレートパイパイ」が登場。
「ミラクル・ランジェリーが陽とするならブラック・ランジェリーは陰!!」「闇の女帝はそれを司る者!! 女帝が復活する時 陽のミラクル・ランジェリーも影響を受けてしまうと聞いたことがある!!」
「ついでに話すならその昔 世界を淫らで邪悪なものにしてしまおうとした闇の女帝をミラクル・ランジェリーをつけた天使が四次元の世界へ封印したっていう伝説があるんだ」
「それ以来 天使たちが使ったランジェリーは王家の宝物となり 花嫁を決める時には必ずそれを手に入れた者の中から選ぶという掟ができたんだ」……そうである。GOOD!



・「ためしたガール」(1) 山田こうすけ(1998、秋田書店)
(エロコメ)

月刊少年チャンピオン連載。「子供の頃、自分の周囲にいた身勝手な女子を思い出して描いた(大意)」という作者まえがきのとおり、少々身勝手な女の子・姫野睦美が、憧れの萩原先輩を誘惑する際どのような方法がいちばん有効か実験するために、「自分がまったく興味を持てない男子」猪瀬にパンツを見せたりしまくるというエロコメ。このマンガ、何がすごいって睦美は猪瀬を「本当にどうでもいい対象」としか見ていないこと。「いじめてやろう」という気すらない。まったくの実験台なのである。さらに、睦美に「どんどん実験すべき」とハッパをかける親友・桜井由香も、「睦美がいろいろ実験してくれると自分の参考になってありがたい」という打算でしか動いていない。ふつうこのテの話には必ずラブコメ的要素が入っているものだが、少なくとも単行本1巻の時点ではラブコメにすら至らない。たとえば、「最初は何とも思っていなかったけど誘惑しているうちに自分もその気になってきて……」的な描写はまったくない。
登場する女の子たちが「性的誘惑」というものを根本的にわかっていないという点が、本作をノホホンとしたコメディに仕立て上げているが、「猪瀬」という登場人物こそ「リアル石ころ帽子をかぶったキャラ」と言えるだろう。言えるからなんだっつっても困るんだけど。



・「オレってピヨリタン」(1) 高崎隆(1995、秋田書店)
(エロコメ)

月刊少年チャンピオン連載。「デバガメが趣味」の武双学園2年生・池田順は、女の子の身体にタッチしただけでイイ気持ちにさせる(ピヨらせる)能力を持っている。またふだんのあくなきデバガメ生活により、身近にいる女の子のスリーサイズなどをすべて把握しており、それを「ピューリタン日記」につけている。なぜ「ピューリタン」なのかというと、「ピューリタンのように純粋な気持ちでデバガメに励んでいる」からだそうだ。ムムム。抗議が来ても知らんぞ(笑)。「ピューリタンなんてもんじゃない、ピヨリタンね」と女子からは言われている。
そんな順だが、幼なじみの工藤美衣(みい)だけはハダカを見ないと誓っている。なぜかというと、美衣だけは特別な存在だから(ラブコメ風味)。
後はなぜか順を誘惑したがる女の子が後から後から登場し、毎回釣りに行ったり海に行ったり……という「お約束」な展開となる。
「ためしたガール」と並行して連載されているものだが、こちらの方がアニメっぽいというかマンガチックな絵だ。ただし「線を細くした方がよい」と言われたということで、初期は線がぶっとくてどういうモノに影響を受けてきたのかいまひとつナゾな絵柄だった。また、美衣がポニーテールであるところに「エロコメ魂」を感じる(これも編集者側からの提案だったそうです)。



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