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・「雛子バリエーション!」全4巻 (1995〜96、学研)




・「雛子バリエーション!」全4巻 (1995〜96、学研)

当HPでは、まとまった作家別の作品レビューをもっと充実させたいんだけど、手つかずの部分が多い。Hマンガは1冊で完結しているからわりと感想も書きやすいんだけども、単行本も3巻以上になるとストーリーが何部かに分割されていたり路線変更が行われたりして、まとめるのがむずかしいのです。
毎月1作ずつ読めば、1作家の大まかな作品レビューもすぐまとまったものになると思っていたんだが、どうも思うようにはいかないもんです。

雛子バリエーション!

・あらすじ
コミックガイズ連載。高校生の沢良木雛子前島和也は幼なじみ。和也は雛子に密かに思いを寄せていたが、言い出せないでいる。悪友の藤之里下田辺も同じく雛子のことが好きだが、やっぱり言い出せない。
ある日、和也は雛子から、生徒会・副会長の芥川につきあってくれと言われたと相談される。好きだと言い出せず、つい「俺には関係ない」と言ってしまった和也は、藤之里と下田辺に相談、雛子に催眠術をかけて芥川の誘いを断るようにさせるという突飛なアイディアを実行に移す。
しかし、この催眠術により、どういうわけか雛子はクンツァイトという石の光を見るとさまざまな性格に「変心」してしまう、多重性格者になってしまった。そして、不良になったらケンカが強くなり、「卑怯者」になったら卑怯なワザを使うようになるなど、もともと引っ込み思案だった雛子の潜在能力が引き出されるようになる。

淫乱モード、女王様モード、バーサーカーモード、スーパーヒロイン、お嬢様、猫など、さまざまな性格への変化とそれが引き出した雛子の潜在能力によって事件が巻き起こる、スラップスティックエロコメ。

・感想
「多重人格」ではなく「多重性格」であるというところがポイントで、「変心」してやった行動、起こした騒動を雛子は全部覚えている。要するに本来人間が持つ多様性をマンガ的にカリカチュアライズした感じで、それが和也とのラブコメばなしでもちゃんとつながってくる。
たとえば、雛子が変心していないのに恋をして大胆になった自分を変心したと思い込んだり、雛子の別性格が和也を誘惑しようと元の性格を「擬態」したりというのは、普通の人間の「自分とは何か?」という疑問にからんだりしていて、なかなか深い。

全編通して見ると、登場人物全員が自分たちはマンガの中の登場人物だと自覚しているという、かなりむちゃくちゃな話。エロい妄想ばかりして雛子を「おねー様」と追いかけまわす明野沙織、大金持ちで何でもできて容姿端麗で、でも頭のネジがどうなっているのか、行動原理がイマイチわからない深沢真也、いろいろあった末学園アイドルになってしまった雛子を追い落として主役になろうとするタカビーお嬢様・西真上蒔絵などが入り乱れてのドタバタが展開する。

だんだんむちゃくちゃになっていくのではなくて、途中学園モノに戻りそうになるんだけどまたドタバタに、とものすごく落ち着きがなくてそこがまた面白いマンガ。まあもっとむちゃくちゃなギャグマンガは他にもあるんだろうけど、キャラクターが二頭身とかじゃなくて普通のラブコメなどのキャラクターなのが個人的にはツボでした。

とにかく本作のドタバタっぷりは非常に気に入っております。絶版だと思うが、マンガ古書店ではけっこう手に入ると思う。

86年に単行本化された「プレハブラプソディ」を同時収録。あらすじは当HPのここを参照のこと。(03.0116)

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