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・「ネットワーク戦士」 矢野健太郎(1991、学研)




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ネットワーク戦士

・あらすじ
プロローグは月刊少年チャンピオン86年4月号掲載。それ以降は、月刊ホビーズジャンプに86〜88年にわたって掲載。

パソコンマニアの少年・藤井通と幼なじみの山葉美香は、パソコン通信をするうちに謎のオンラインネットゲーム・D-NETWORKにアクセスし、ゲームの世界に入り込んでしまう。
同じようにアクセスして来ているらしい、黄金戦士ゴルドラウとともにD-NETWORKの秘密を探る通と美香は、地球全体を巻き込む恐ろしい計画を知ることになるが……。

・感想
プロローグだけ主人公が違っており、パソコン少年の初川充になっている。掲載誌も違っており、おそらく単体の読みきりとして描かれたものだと思うが、最終的には重要な伏線となる。

本作の掲載期間は、パソコン通信のまったくの黎明期。まだ音響カプラやモデムで交信する時代。途中でファミコンの大ブームが訪れるが、オンラインRPGの概念をすぐに理解できる読者はそうはいなかったのではないかと思う。
このため、現在ではわりと一般的になっている単語(「チャット」や「I・Dナンバー」など)にも注釈がついている。
現在でも、オンラインネットゲームに登場人物が入り込んでしまうという設定はアニメやマンガ、小説などで見受けられるが、本作はさきがけ的存在だろう。

プロローグも含めて全8話から成るが、まあ率直に言って本作はすごく面白い。現在は絶版のようだが、古書店などで見かけたら購入をオススメする。

とくに、美香がD-NETWORK内の世界のひとつ「イルシオン」に入り込み、妖精たちの救世主となるACT2 藍の妖精(ブルー・フェアリー)は短編として完成されているし、××が○○していたというACT4 真紅の罠(レッド・トラップ)などは、ネットワークゲームを舞台にするという固定観念を逆手にとっていて面白い。

その後、このテのプロットは「お約束」となって、89年から描かれたファンタジー作品「インジュカーシス」(→感想)では、そのお約束をふまえた上でのプロットづくりがなされているが、本作はパソコン通信の海のものとも山のものともつかない感じと、当時のSFっぽい感じが合わさっていて味わいがある。

ラストにプロローグとつながってくる感覚は、快感です。

(05.0102)

ここがいちばん下です

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