◆ 1999年8月下旬 ◆

8/21〜31
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8/31(火)……旅の恥はぽけすて

 死刑宣告を受けるような気持ちでポケステをプレステに差し込み、「どこでもいっしょ」を立ち上げた。カエルのやまもとは俺の元を去るに違いない……そう思っていたが、おお、きちんと戻ってきてくれたではないか。これでまたしばらくは強く生きていけそうだ。というわけで、9月のお買い物予定は以下のような感じにしようと思う。逆柱いみりなど、8月の予定に入っていたモノがいくつか延期された模様。

タイトル作者出版社
ケキャール社顛末記逆柱いみり青林堂
ブルマー1999SABEワニマガジン
2悟空道(9)山口貴由秋田書店
4球魂(5)岩田やすてる小学館
4デカスロン(22)山田芳裕小学館
6フローズン(2)山崎さやか講談社
6カイジ(12)福本伸行講談社
7東京H一水社
9春よ、来い(1)咲香里講談社
90リー打越くん(2)桑原真也講談社
9G-taste(3)八神ひろき講談社
9妖魅変成夜話(1)岡野玲子平凡社
9トンデモ怪書録唐沢俊一/唐沢なをき光文社
10歌麿(4)六田登双葉社
10軍鶏(5)橋本以蔵+たなか亜希夫双葉社
くみちゃんのおつかい軽部華子朝日ソノラマ
16バロン・ゴング・バトル(9)田口雅之秋田書店
16たとえばこんなラヴ・ソング(4)北崎拓小学館
17入神竹本健治南雲堂
20ダイキライうらまっく蒼竜社
20我が名はネロ(2)安彦良和文藝春秋
20二十一世紀科学小僧唐沢なをき文藝春秋
20ステンシル秋号エニックス
22蒼天航路(17)王欣太+李學仁講談社
22キリコ(4)木葉功一講談社
24太陽が落ちてくる(2)咲香里笠倉出版社
25弥次喜多 in DEEP(3)しりあがり寿アスペクト
27空からこぼれた物語大石まさる少年画報社
27密室監禁強姦桃山ジロウ松文館
28今日のだいちゃん(3)太陽星太郎小学館
29メイドロイド雪乃丞井荻寿一実業之日本社
30MOMONE(4)友永和一水社
30ギャラリーフェイク(17)細野不二彦小学館
30演歌の達(7)高田靖彦小学館
30ダイヤモンド(6)青山広美小学館
30LOGOS小野塚カホリマガジン・マガジン
好きさ好きさ好きさ小野塚カホリ宝島社

【雑誌】コーラス 10月号 集英社 B5平
 佐野未央子の読切「君のいない楽園」が掲載。2年前、遠い南の島で事故に遭い他界した父親の弟子である一椰だけにやたらと懐いている女の子、十萌が主人公。反抗期でひねくれているように見えるが、ちゃんと自分の目でまっすぐに物事を見つめている彼女の姿がかわいい。佐野未央子の描く男はあまりにいい人っぽすぎてあんまり好みでないのだが、少女は澄んだ可愛らしさがあっていい。あと読切だととてもキレイにお話をまとめてきてうまい。くらもちふさこ「天然コケッコー」。そよと宇佐美くんの噂の話で学校は持ちきり……という展開を予想していたのだが、ちょいと肩透かし。今回はそよの父親の浮気疑惑。日常の中のちょっとしたことからお話を広げていく手際はさすが。

【雑誌】ヤングキングアワーズ 10月号 少年画報社 B5中
 平野耕太「ヘルシング」。偉そうな男たちの表情、顔の歪み方が大仰でたいへんにかっちょいい。黒々とした影のつけ方がまたいいのだ。佐野タカシ「うさぎちゃんでCue!」。それがどんな場面であろうと、何が起ころうと、常にパンチラを忘れないサービス精神。見事である。希代のパンチラ漫画家として記憶すべき存在であろう。当代随一のパンチラ漫画家は桂正和だとは思うが。犬上すくね「未確認の愛情」。今回はベタベタに甘いばかりではないが、ラストはやっぱり幸せに終わる。誰かを好きになるってステキなことなのだとしみじみ感じさせる良い後味。どざむら「放課後のモチーフ」。放課後の美術室で二人きりで、ヌードモデルをする女の子と、彼女を描く男の子。絵を描くだけの彼にイライラしたのか、彼女は外から見えるようなスリリングな位置でポーズをとったりして、彼氏を挑発するが……というお話。爽やかだけどエロティックで良い。最近この人は好調。

【単行本】「神戸在住」1巻 木村紺 講談社 B6
 神戸に住む大学生の女の子、辰木桂さんが送る平凡な日常を等身大の細やかな視点で描く物語。大きなクライマックスとかがあるわけではないのだけど、控えめな絵と書き文字で語られる物語は、ほのかな暖かさに満ちていて気持ちが良い。雑誌掲載時は、小さくまとまりすぎかなあとかも思ったのだが、単行本で改めて読んでみるとちまっとまとまった感じがいい味を出している。まるで大学ノートにボールペンで描いたかのごとき味わいのある描線が、懐かしい雰囲気を醸し出しており大いに和む。神戸地震のことを描いたあたりもよくできているが、むしろ日常の中で出会うちょっとしたことに対する辰木さんの感動が、より新鮮でいい感じがする。商業誌っぽくない絵柄ではあるのだけど、こういうのもありなのだなあと思わされた一作。


8/30(月)……童貞の義務

 ドーテーズデューティーってことで。

 えーと。「神聖モテモテ王国」のファーザーしゃべり禁止。期限は昨日まで。解禁は明日。今日はその中間。以上。

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 9/13 No.39 小学館 B5中
 吉田戦車「学活!!つやつや担任」。いろいろ学園にいいキャラクター登場。番長・三宅。何もしゃべらず恐ろしいところに担任たちを誘う彼は、とてもデンジャラス。「つやつや担任」は今まであんまり盛り上がっていなかったが、今回は良かった。山崎さやか「便所」。誰とでも寝る、お便所ちゃんとの噂の女の子。そして彼女に恋する少年。もう少しハードなお話になるかと思ったが、意外にもハッピーエンド。まあこういうのもありか。山本直樹「ビリーバーズ」。淫行がバレた『オペレーター』さんは『議長』さんの執拗な尋問により告白を強いられ、下半身を土に埋められた状態で野外に放置される。暑さと渇きで精神も錯乱した状態になりつつある。そんな彼の言葉によって見え始めた「会」の裏側。というわけで気になる展開のまま以下次号。伊藤潤二「うずまき」。これが本当の最終回。うずまきを極めつくして行き着く先は、地底の大うずまき。悪夢のようにうずがまききったその世界は、静粛で、そして禍々しい。ここまで極め尽くすと見事というほかない。面白かった。作:周防瞭+画:盛田賢司「ブルーダー」は最終回。いまいち。

【雑誌】ヤングマガジン 9/13 No.39 講談社 B5中
 東和広「ユキポンのお仕事」。あけみちゃんの人間を捨てきった激しい酔っ払いぶりが豪快でよろしい。小田原ドラゴン「おやすみなさい。」。清く正しく内気な童貞のココロを失い、換骨奪胎されたドーテーズを守るため、鉄郎が一人ぼっちの闘いを始める。その姿はとてもどうでもいい加減に雄々しい。鉄郎はやるときはやる男だ。俺は昔からそう思っていた。
 次号では華倫変が復活。今度はミステリ。しかもヘンな奴。楽しみだ。イエー。イエー。も一つイエー。

【雑誌】週刊少年ジャンプ 9/13 No.40 集英社 B5平
 作:ほったゆみ+画:小畑健「ヒカルの碁」。巻頭カラー&表紙と絶好調。お話も面白い。インターネットで対局する佐為+ヒカルと塔矢アキラ。実際には顔も何も見えていず画面上で淡々と繰り広げられている勝負なのに、白と黒の石が緊張感を持って縦横の升目の上を走る。囲碁を全然知らなくても、その緊張感で十分読めてしまう。森田まさのり「ROOKIES」。今回もまた熱血していていいお話。川藤先生の言葉がまっすぐで力強い。うすた京介「武士沢レシーブ」は最終回を取ってつけた。あんまり面白くなかったので早期連載終了はいたしかたあるまい。

【単行本】「バラ色の明日」5巻 いくえみ綾 集英社 新書判
「Who」シリーズ4〜最終話の3話が収録。このシリーズはこれで完結。母が死に、父が借金こさえてトンズラした後、一人残されて母の実家に引き取られた中学三年生の女の子・柚子。母の実家に溶け込めない彼女の前に、ある日、少し危ない雰囲気のにーちゃんが現れる。彼は昔現れて、彼女を拉致しようとした男だった。彼は自分のおじさんで、その後自分のために生きていたんだと信じ込んだ柚子は、そやつの家に押しかけ居候する。しかし、それも長くは続かず家に戻ることになりそれから3年の月日が経つ。この巻に収録されているのは、3年経った後の物語。高校生になってちょっとだけ女らしさの増した柚子。成長した、その目で見たおじさんの姿はどう映ったのか。彼女が本当にしたかったことは。求めていたものは。そんなことが語られる。
 最初は、ちょっとデンジャラスな雰囲気を持った青年に恋する女の子の話なのかなーとか思っていたが、さすがいくえみ綾。一筋縄では終わらせない。一時の感情だけではなく、途中に3年間のブランクを挟むことにより、その気持ちにより明確な輪郭を与え、鮮やかに描き出している。安易なハッピーエンドには持っていかず、しかし絶望的にもならない。ひらりひらりと軽やかにお話を転がしながら、深みと爽快感のある世界を作り出すその力量はなまなかなものではない。


8/29(日)……アフロ18号

 コミティアへゴー。今回は池袋のサンシャインで開催だが、いつものワールドインポートマートではなく、文化会館のほうが会場。いつもよりだいぶ狭くて、なおかつ会場のところどころにある柱のおかげで机が変則的な配置になっていたので、勝手がつかみづらかった。まあ例によって全サークルの前を通過し、目についたものを購入。途中、山名沢湖さんや吉本松明さんの弟さんと「どこでもいっしょ」の名刺交換をしたりもしてうれしかった。
 お買い物が終わった後、閉会後どっかに飲みに行こう思っていたのでそこらへんでひまつぶし。本当はサンシャイン水族館でやっていた、世界のカブトムシ・クワガタ展を見に行きたかったのだが、夏休み最後の日曜日を虫にまみれて暮らそうとする小学生どもが長蛇の列を作っていたので断念。喫茶店で時間をつぶした後、会場に戻り、いっしょに飲みに行く相手を物色。結局、会場で見つけたメビウスさん、沼田さん、あやこさん、立ち読み屋さんを拉致。それに兄と俺の6人で飲みに行く。
 ドトールで時間をつぶした後、17時から池袋西口のKUI菜てしごとやという、入口がやたらに狭い、炭火焼系のおいしげな店に入る。ここはいい店なのだが、平日に行こうとして席が満杯で入れないということが続いていた。今回はそのリベンジということで、開店と同時に入店。その後3時間ほど、飲みかつ食いまくる。なんかどうも疲れていたようで、途中コクリコクリと船を漕いでしまう。深く不覚。店を出たころには大雨。帰りがけに通過した半蔵門線の渋谷駅は完全に浸水しており、改札口のところが5cmくらいの深さまで水がたまっていた。電車の線路も川状態。

 そんなこんなで帰りついてから、以下の同人誌を読了。買った分全部ではなく、まだ10冊以上読み残しがある。ここらへんは、追い追い読めるときに読んで感想を書く予定。ああ、それにしてもまたしても未読漫画がたまっていく……。

【同人誌】「ダメナヒトタチ」「キャデラックス」 小田智 <みりめとる>
【同人誌】「アフロ氏」「こさめちゃん」 小田智 <みりめとる>
 今まで買い逃していたのでうれしい。全部コピー本。小田智は、モーニング新マグナム増刊で「話田家」を連載していた小田扉と同一人物である。
 小田智の描く作品は、どれもたいへんに飄々としている。頼りなさげな、投げ遣りな線で描かれたお話は、非常に力が抜けていて、こちらの笑いのツボを思わぬ方向から刺激してくる。ギャグのテンポがとてもいいし、それがまた「こうくるだろうな」という予想を実に巧みに外してくる。その間の取り方が絶妙なのだ。アフロ氏が下らないことにガーンと驚くというだけのギャグの繰り返しやら、セリフの巧妙さは、ほかの作家にはない呼吸がある。この力の抜けっぷりはコピー誌にこそふさわしい、なんとなくそういう気がしてならない。

【同人誌】「バンパイヤ3」 果竜 <竜の子太郎>
 お互いを求め合っているのだけど、けして一つにはなれず、最後の部分で噛み合うことのできない女の子同士のカップルの物語。この人は絵柄も表現もたいへんに少女的。キラキラした絵柄と、一瞬のトキメキ。少女なるものが非常に美しい形で結晶している。見ための華やかさのわりに、けっこうお話に深みもあり読みごたえあり。この「バンパイヤ」シリーズは、次号は100P近くある最終話になるそうだが、果たして予定通りでるのか? なんにせよ楽しみである。

【同人誌】「CIPHER」 南研一 <small parking>
 10年ぶりくらいのコピー本だそうだ。PARKING後、南研一さんとしては初の本。オアシス都市を目指す旅人を軸に、複数の人々の夢と夢がリンクし、つながっていく、ちょっと不思議なお話。短いのだけれど、夢と夢が現実を介してつながって境界があいまいになっていく描写は気が利いていて面白い。アッサリしているけど、味のあるいいお話だと思った。

【同人誌】「kidology1999」 西村竜 <ちくちくNET>
 この人は、ますます絵が洗練されて良くなってきたなあという感じ。絵的にはところどころ、宇仁田ゆみとか、南Q太とかのあたりに似た雰囲気も漂う。この本は、10ページ前後の短編を8本集めた作品集。多少、恋だったり青春だったりする若人の日常を、気取らない描写で描く。サッパリした絵柄とストーリーがマッチしてよくまとまっている。人物の描写は必要十分な力量があるので、あとは背景とかモノの描写がうまくなってくるとかなりスバラシイと思う。

【同人誌】「ユリイカ」 <突撃蝶々/擬少女μノオト>
【同人誌】「夏の花」 <突撃蝶々/擬少女Mノオト/理数館/少女時間>
 山名沢湖はやっぱりとてもいい。とくに「ユリイカ」。とある女の子の家に、毎日贈られてくる百合のかんむり。彼女はそれを「王子様からの贈り物」だと信じている。その彼女に対して恋愛的感情を持っており、彼女を独占したいと考えている親友の女の子。彼女を迎えに行く振りをしてその百合を奪い、王子様のジャマをせんとする。その恋心はけして報われはしないのだけど、切ない気持ちは輝いて美しい。明るく可愛い絵柄ではあるが、お話も十二分に奥が深い。キラキラとした一瞬を物語の中に包み込む、お話作りの腕は本当に素晴らしいと思うのだ。

【同人誌】「Works Vo.3 PREVIEW弐」 西沢一岐 <青空倶楽部>
 主人公の少女・服部志穂の母親が事故に遭い脳死の判定を受ける。母は臓器提供のドナーカードを持っており、その臓器は他人に移植されていった。その後、志穂は立ち直り成績優秀なクラスの中心人物として活躍していく。そんなある日、一人の転校生が志穂のクラスにやってくる。何くれとなく彼女・緑川縁の世話をし、親友となった志穂だが、実は縁は志穂の母親の心臓の提供を受けた相手だった……というお話。
 全体としては安易な臓器提供と脳死判定に対して、読んでいる人に対して「考える」ことを促す内容となっている。しかし、その主張的なものはけして押しつけがましくなく、説教臭くもない。重い話ではあるのだが、志穂など、キャラクター作りがしっかりしていて魅力的に描かれており、その重たさがきちんとした読みごたえにつながっている。作画も実にシッカリしていて、技術的な面の問題もない。
 ヤングサンデーで連載された「ホタルロード」は残念ながらさほど盛り上がらなかった西沢一岐だが、自由に描いたオリジナル作品はとても面白い。実力はすでにかなりのレベルにある。あとは何かきっかけがあれば、商業誌でもそれなりに行けるのではないかと思う。

【同人誌】「LOVE LOVE SHOW 2000」 きづきあきら <GRAIL>
 藤川毅も2ページ描いているが、基本的にはきづきあきらが中心。ロリ、レズ、ホモ、近親相姦、覗きという、一般にはタブーとされている性癖を題材にしたオムニバス形式の短編。一つ一つのシーンが、短いながらもよくできていて楽しんで読めた。ちょっとボリューム的にもの足りない点もあるが。多少きわどい題材でも、下品にならずしっかりまとめあげてくる手際は実に見事。

【同人誌】「死の聲」 作:藤川毅+画:きづきあきら <GRAIL>
【同人誌】「月光」 作:きづきあきら+画:藤川毅 <GRAIL>
 GRAILの二人が、お互いに原作を提供し合って1冊ずつ本を作成。「自分では思いつかない『らしくない』作品を描いてみる」という試みなのだそうだ。きづきあきらは切り絵のように太いくっきりとした滑らかな線で、どちらかといえばウェットなお話を描いてくる。そして藤川毅は対照的に、硬質な線で、クールで理屈っぽい作品を描く。両方とも独自の作風を持っていて、その力量はとても見事なものがある。自分たちの描きたいものを、紙の上で存分に表現する力量は確かなものだ。GRAILについては最初はきづきあきらが目についたが、最近では藤川毅のシビアな作風により心を惹かれている。
 作品の感想だが、どちらもやはり自分のモノをしっかり持っている人だけあって、相手の原作を自分の世界の中に取り込んで世界を作り上げている。「死の聲」のほうは、藤川毅の理屈っぽくてクールで閉塞的な節回しが、きづきあきらの艶のある絵柄でウェットに仕上がっている。「月光」はウェットなお話なんだけど、観念的な描写も出てきて藤川毅味も適度に混ざっている。何より藤川毅の、カケアミ多用な描線が美しくかっこよい。
 これだけの実力の持ち主二人が組んでいるというのは、どうにも大したことだと思う。

【同人誌】「undoゆにぞん」 <UNDOゆにぞん編集部>
 山川直人、ハルノ宵子、BELNE、井上伸之、西沢一岐という、けっこう豪華な合同誌。ハルノ宵子「オーパーツ」は、オーパーツにまつわるちょっといい話。将来一緒に旅してまわろうと、世界の不思議に思いをめぐらしていた二人の少年。しかし、片方は病気で死亡する。もう片方は成長し、一人で世界の不思議回りを始めるが、とある遺跡で彼が目にしたオーパーツは……といった感じ。ファンタジックできれいにまとまった掌編。それから井上伸之「ヒトの子」は、ひょんなことから掘り起こされたゾンビに追い回されることになった通りすがりの青年と子供、それから過激な反開発の活動家の女性の話。いちおうスリラー仕立てなのだが、絵柄が妙に淡々としていて、そのミスマッチぶりが味わい深い。身もフタもない感じのラストも楽しい。西沢一岐「公差」は、絵もお話もシッカリしている。先ほど書いた「Works」もそうだけど、自分の描きたいものを描いているときの西沢一岐は強い。山川直人「ウルトラマリン」。パッとしない探偵が主人公。ふわふわとした不思議な雰囲気。そして、印象深く染み渡ってくるセリフの数々が見事。「つつましい君の胸 人類学者のウソが 僕のあの娘を苦しめる」。う〜ん、かっこいい。

【同人誌】「GADGET」 鈴木ちょく <直立不動産>
 再録+描き下ろしが少しの短編集。この人は描線が艶やかで、シッカリとしているんだけど滑らかな手触りのある画面を作り出す。ロマンあり、ファンタジーあり、冒険ありで、物語を作る力もなかなか。整った絵柄で仕上げがキレイ。人の眼を惹くタイプの絵柄。しし座流星群にヒントを得た、事故にあって意識がない少年に起きた奇跡のようなそうでないような出来事を描いた「星の降る夜」が、この作品集の中では一番印象に残った。ちょっとホロリとさせるいいお話である。

【同人誌】「夜の煙突」 犬上すくね <ワーカホリック>
 犬上すくねの初個人誌のリライト版。ゴミ捨て場に廃棄されていたロボットが付けていた翡翠の腕輪を、処理業者の青年が拾う。その腕輪の隠しボタンを押すと、マスターの女性からロボットへの愛のメッセージが再生される。青年はそれをタネにして、ロボットに対して入れあげていたことを婚約者に知られたくないマスターの女性に金銭を要求するが……というお話。途中までは世知辛い展開だったが、ラストは暖く締めくくっている。青年の恋人であるパン屋の女の子の登場は、多少唐突な感じがしないでもないけれど、物語は心優しくまとまっていて後味は良い。

【同人誌】「世界はあぜ道」 駿馬 <STUDIO MAILAND>
 まだプロローグといったところで、お話の出だしのところ5ページのみ。奥付を見ると今年の2/14発行になっているのだが、ここまで買い逃していたわけだ。この人の絵柄は線は単純であるが、涼やかでかつ柔らかくとても爽快。そして光の中に透けるような構図がたいへんに印象的だ。見ているだけで気持ち良くなってくる。というわけで早く続きが読みたいな、という一冊でありました。

【同人誌】「花」 笹井一個 <NARA2SAN(ガソリン)>
 豆本。本のどちら側から開いても楽しめるリバーシブルな構成。右開き側の物語と、左開き側の物語が、真ん中のページで融合するあたりが気持ち良い。フルカラー。ページ数も少ないし大きさも小さいけれど、きれいにまとまってて良かった。

【同人誌】「光彩陸離」「光彩陸離ぷらす」 依々 <NARA2SAN>
 笹井さんの相方、依々さんのイラスト&トーク本といった趣。こまごまとした書き文字の部分は、実はまだしっかり読んでいないのだけど、この人も達者な人ですなあ。

【同人誌】「なかせっとREcoRDらいぶらり file-001u」 なかせよしみ <まるちぷるCAFE>
【同人誌】「TECH MATES image」 なかせよしみ <まるちぷるCAFE>
「なかせっと〜」のほうは、ほのぼのした4コマもの。「TECH〜」のほうは、丸くてユーモラスな万能お手伝いロボットをモチーフにしたショートストーリー。どちらかといえば「TECH〜」のほうが好き。テクノロジーが人間生活のなかにうまいこと融和した、ポジティブな理系世界観が心地よい。また、この丸いロボットが、形は単純だけど実に愛敬がある。なかせよしみの柔らかいペンタッチが抜群の親近感を生み出している。ゆったりとして和むいい作品。


8/28(土)……網走ゲームショー

 ここのところ、珍しく一所懸命仕事をしていた。それもひとえに、コミティアのために日曜日お休みを取りたかったからだ。まあなんとか手持ちの原稿もおおかたさばいたし、明日はちゃんと行けそう。めでたいケロ〜。とかいっているうちに、「どこでもいっしょ」でカエルのやまもとに「生きていくのがツライ日もあるケロ……」などと日記につけられ、10日めにはきっと去っていってしまうのだろうなあと確信。

【雑誌】マンガの鬼AX Vol.10 青林工藝舎 A5平
 最近の花輪和一先生は、最高ならざるときがないくらいに最高なのだった。今回の刑務所漫画シリーズ、「檻火花」も例外ではなかったのだった。刑務所内の囚人たちが、いかにお互いを観察しあいながら生活しているかということを、例によってあの執念深い筆致で描き出すのだった。最大のクライマックスは見開きいっぱい使った、服役囚たちの入浴シーンなのだった。ラストの下らない一言も、俺の心に激しくヒットするのだった。これが単行本にまとまってくれるとなんてうれしいのだろう、と思わずにはいられないのだった。
 インタビューも掲載されている東陽片岡。「命より大切なもの」。ああ、なんともいい人たちだなあ。東陽片岡の作品を眺めていると、そのこころ豊かなしみったれぶりに心が和む。これってひょっとして癒し系? 鳩山郁子「美男葛」は後編。閉じた世界ではあるが、なんと美しく繊細に完成されていることか。神経質な筆致が快感。川崎のぼる「猟奇王怪人狩り」は力が抜けてて、気楽に読めていい。キクチヒロノリ「くるくるきいきい」。例の奇天烈なキャラクターたちが絶好調。このぶっ飛んだ遊び心には、いつもいつも驚かされる。かっこよすぎ!

【雑誌】快楽天 10月号 ワニマガジン B5中
 OKAMA「スクール」。草薙くんがやたらモテモテでやりまくりだ。無軌道なまでの入れ食いっぷりが見ていて楽しくもある。このまま彼は、全員を愛し続けていくことができるのか。先の展開が楽しみ。かるま龍狼「ゴローダイナマイ!」。コミカルで手堅くエロもやってていい仕事してますなという感じ。一つのお話の中で、幼女(でも巨乳)、人妻、おねーさんを同時にこなすヌカリのなさ。大したもんである。道満晴明「00000000013DAY」。大王が降りてきて、少女と少年が二人だけ取り残された世界。この二人の触れ合いを描きつつ、クールなオトボケをポコポコ織り交ぜてくるリズムの良さがとても気持ちいい。

【雑誌】COLORFUL萬福星 Vol.07 ビブロス B5平
 なんかだいぶ厚くなったような。好調ですな。今回は北崎拓や、「辰奈1905」のディレクター・井口尊仁のインタビューもあったりする。
 漫画のほうでは、TAGRO「ビンボーリンボー片眼ちゃん」がいい。本当は母違いの姉弟なんだけど親が離婚して、ビンボーな母に連れられていった片眼ちゃんと、裕福な父親に連れられていったまちをくんのお話。意味がないほどやみくもに親切なまちをくんのパワーもいいが、片方しか眼が出ていないヘアスタイルの片眼ちゃんのキャラクターはもっといい。月角「CANOMA」は、いつものように幼女とおにいちゃんではあるが、いつも変わらぬ業の深さ。月角幼女は、ボーッとしているときの目つきが良い。

【雑誌】ラッツ 10月号 司書房 B5中
 山岡鋼鉄郎「良妻のススメ。」。どっかで見たような、たいへんステロタイプな感のある人妻もの。それだけにいやらしさはシッカリ。人妻が調教者の命令に従い、公衆便所で男子高校生どもに奉仕するとかいうお話。うさぎのたまご「みっちゃん」。やたら弟の世話を焼きたがりな、天然系で巨乳な眼鏡娘のお姉ちゃん。まあそんなわけで姉×弟の近親相姦モノ。この人は、絵は淡いんだけど案外やることはハードで、かつ無邪気に楽しそうだったりするところが好きだ。

【単行本】「神様ゆるして」 比古地朔弥 B・S・P A5
 もう出ないだろうと思っていたあきらめていただけに喜びもひとしお。比古地朔弥初単行本。
 大学を2浪して家でうだつのあがらぬ生活をしているケンジ。家はけして裕福とはいえず、狭い部屋をカーテンで敷居を作って妹と二人で使っている。妹の玉魚は、学校に溶け込めず、兄のケンジにしかなつかない内気な少女。年ごろに育ってきて玉魚をいやらしい目つきで見つめる父の姿に嫌気がさした二人は、家出して東京に出る。しかし、何も計画を持たず出てきた若僧がうまくやれるほど東京は甘くない。月3万のボロアパートで二人寄りそうように暮らしながら、ケンジは悪事にも手を染めるようになっていく。そんな日常に押しつぶされそうになったケンジは、そのストレスのはけ口を玉魚に求め、妹と肉体関係を持つようになる。
 そんな感じで、やり場のない感情、無力感がぐるぐると渦巻く息苦しいお話である。唯一の逃避先である玉魚との近親相姦も、ケンジのうしろめたさを募らせていくばかり。罪悪感から目を背けるために玉魚を抱き、そしてさらなる泥沼へとハマる。甘えん坊でちょっぴり太めで肉感的な玉魚の姿はかなりエロティック。
 商業誌での活躍自体は少ない人だが、絵はすでに完成されて独自の空気を持っており、表現がゆるぎなく実に見事。雑誌掲載時、ラストの1ページがかなりもの足りなく感じたものだが、単行本で読み返してみると案外気にならない。まあラストを知っていたからというのはあるけれども。近代麻雀オリジナルに掲載された作品はあんまり面白くなかったけど、こちらは一読の価値は絶対にあるし、二読、三読にも十分堪える一冊。買うべし!


8/27(金)……BLAMEとストーカー

 秋葉原にてウチの雑誌で描いていただいている漫画家さんと待ち合わせ原稿の受け渡し。そのさい、登場人物の名前をどうしようかということで、二人でうんうんいいつつダジャレ的な名前を考え続ける。なかなかうまいのが思い浮かばずけっこう困る。なかなか難しいもんですな、ああいうのは。
 そんでもってまた買い物。今回は安物ビデオカードと、USBでPCにプレステ用のコントローラを接続するためのアダプタ。最近モノ買いすぎー。金遣いすぎー。

【雑誌】ヤングジャンプ 9/9 No.39 集英社 B5中
 奥浩哉「ZERO ONE」とおおひなたごう「犬のジュース屋さん」、それから山口譲司「BOING」。基本的に載っている漫画は全部目は通しているんだけど、それなりにイケると思う作品はそれくらい。

【雑誌】ヤングアニマル 9/10 No.17 白泉社 B5中
 文月晃「藍より青し」。夜の森で怖がっているいいなずけの女の子のオデコに、男がキスして安心させる。女の子のほうは、大好きな男の子にキスされて怖い気持ちも吹っ飛ぶ。今回はそれだけのお話。過剰なほどのトキメキ度。仲よしこよし。ああ、他愛ない。素晴らしい。三浦建太郎「ベルセルク」。悪鬼どもがブイブイいわせていて、山羊頭の異形の獣がキャスカに襲いかからんとする。燃えるぜ。氷室芹夏が読切で登場。「君といた夏」。登校拒否をしていた高校男子が、夜中に行ったコンビニでバイトしていた同級生の女の子と出くわす。それがきっかけで二人は夜中に一緒に出歩くようになる。そうするうちにだんだん二人の距離は近づいていくが……といったお話。それなりに爽やかで、それなりに青臭い短編。氷室芹夏の絵は肉感的だけど涼しげでもありけっこう好きだ。こいずみまり「コイズミ学習ブック」。今回は女の子のオナニーのやり方。下品なネタではあるんだけど、それを軽やかに楽しくテンポよく料理してて楽しい。

【単行本】「BLAME!」3巻 弐瓶勉 講談社 B6
 だいぶお話の輪郭がハッキリしてきた。最近のSF系作品の中でも、トップクラスの重厚感と鋭利さのある描写力。どこまで続くとも知れない、金属で囲まれた建築物の中を主人公・霧亥が歩き、そしていずことも知れぬ中核へ向けて一歩一歩進んでいく。入り組むパイプで覆われた通路。いくつもの部品が組み合わされたゴツゴツした壁。そういった背景の精緻な描き込みが迫力を持って訴えかけてくる。その行方を阻む、有機的でかつ金属質で、陶器のようでもある質感を持った、異形のセーフガードたちの造形がクールでサイバーでしなやか。そして邪悪というのではなく、異質なものであり、感情などの入り込む余地のない冷酷さが感じられてかっこいい。この人がSF小説の挿絵をやってくれたら、ビシッとハマっていい感じであろうなと思う。

【単行本】「ヨリが跳ぶ」18巻 ヒラマツ・ミノル 講談社 B6
 ヨリとリカコが全日本の合宿に練習相手として呼ばれる。そこで出てきたのが、国舞リップスの秘密兵器、海外で武者修行をしていた4人の選手。とんでもない実力を持つ彼女たちだが、ヒロコの圧倒的なパフォーマンスはそれをも飲み込む。ヒロコの生の力に触れたヨリとリカコは、また新たなるステップに向かって一歩を踏み出す。今回は大きな試合とかはないので、テンションはさほど高くない。まあそういったところでも、ヨリたちの日常をコミカルに描いて楽しく読ませるあたりがヒラマツ・ミノルのうまさともいえる。もちろん真骨頂は、力と力の豪快な応酬ではあるのだけれど。


8/26(木)……天使密猟区

 新たに買ったPC用フルタワーケースがおうちに届く。今まではデスクトップケースだったのだが、外部ドライブベイが少なくていろいろ四苦八苦していたのだ。今度のケースの外部ドライブベイは3.5インチ×3、5インチ×5。これならそうそう埋まるまいて。
 ようやく「どこでもいっしょ」でプレステに書き込めたが、明日は会社に泊まる予定。また滞ってしまうのか? 会社用にプレステもう1台買うかなあ。何しに会社いってんだかねえ。

【雑誌】週刊少年チャンピオン 9/9 No.40 秋田書店 B5平
 山口貴由が鴨川つばめ原作で「マカロニほうれん荘」を執筆。1999年の終末をなんとかちゃんと終末にしてしまおうと、きんどーさん、ひざかたとしぞう大暴れ。……なのだが、あんまり面白くない。山口貴由の絵だと、みずみずしすぎる感じがする。もうすこしクールかつ乾いた線で、「大丈夫か?」ってくらいぶっ飛ばしてくれるほうがマカロニらしく思う。あの無闇に急ぎすぎな感じが足りないような。橋本俊二「麻雀鬼ウキョウ」。役満しばり勝負最終局面。どうせ大四喜か小四喜を作るつもりなら、中を持っておいて字一色にしてダブル役満にしちゃえばいいのにとか思った。相手が二枚、中を握っててもあと1枚ひくでしょ。こういう人なら。

【雑誌】週刊少年サンデー 9/8 No.39 小学館 B5平
 40周年記念読切シリーズで、島本和彦「炎の転校生」が帰ってきた。あの滝沢昇が。今回は高校の同窓会で悪を叩く、というよりけっ飛ばすのが目的。前後編で、前編は校門から校舎に入るまで。オトナになっても、滝沢昇はむやみやたらである。久米田康治「かってに改蔵」。やっぱりあの6巻を読まずに続き読んじゃダメだよね! 漫画のミッシングリンクといえば、ゆうきまさみのアレが有名ですな。月刊OUT時代、編集部が4ページ紛失したのに話がきちんとつながってしまい、読者も4ページ欠けていることに全然気がつかなかったという奴。

【雑誌】週刊少年マガジン 9/8 No.39 講談社 B5平
 石垣ゆうき「MMR」。MMRってもう10年間もこんなことやってたんだなあ。ご苦労様です。真犯人はイニシャルS? あのたわけた推理小説、清涼院流水「コズミック」を思い出してしまうじゃないか。塀内夏子「Jドリーム完全燃焼編」。鷹と伊達の新ホットラインがいい感じに機能して白熱した展開。頑張れ!イラン代表!

【雑誌】ヤングサンデー 9/9 No.39 小学館 B5中
 秋重学が読切で登場。タイトルは「雲につき出る」。とある高校野球の球児と、同じクラスの風呂屋の娘のお話。球児のほうは春から通算20回連続代打バント成功という記録を誇りにしているのだが、誰もそんなこと気にしちゃいないし誉めてもくれない。レギュラーからも落ちてムシャクシャしているところで、同じクラスの女の子が番台に座る風呂屋に行く。実は彼女も、誰も誉めてくれないモノへの誇りを持っていて……という感じ。青春模様が青臭くキラキラしていて、気持ちいい作品だった。秋重学は一話完結タイプの作品のほうが持ち味がストレートに出ていいなあと思った一作。「柔らかい肌」の山田たけひこの新連載「No No Boy」がスタート。サーフィンとナンパとSEXに明け暮れる少年の、Hな青春物語……といった趣。なんかもう、たいへんに馬鹿っぽくてよろしいですな。山本英夫「殺し屋イチ」では、暴力ジゴロ兄弟が好き勝手やりまくり。女だろうが情け容赦なく、乳首は切るわ、その乳をグーで思いっ切りぶん殴るわ。慄然とする暴力の連続に、ビリビリしびれて気持ち良いくらい。
 遊人「桜通信」、新井英樹「ザ・ワールド・イズ・マイン」は取材のためお休み。何を取材しているのやら。さしずめ巨乳眼鏡娘と巨大生物かなあ。

【雑誌】ヤングキング 9/20 No.18 少年画報社 B5中
 田中宏「グレアー」。目下の悪役くんたちの、ハードな子供時代、そして友情が描かれていて力が入った展開。悪役の、悪役なりの事情をしっかり描くことで物語に厚みが出ている。宮尾岳「並木橋通りアオバ自転車店」。今回は2本立て。自転車にまつわる爽やかで心暖まる物語。スッキリした気持ち良い後味。

【雑誌】モーニング 9/9 No.39 講談社 B5中
「えの素」および「バカボンド」はお休み。
 巻頭カラーで三宅乱丈「ぶっせん」が新連載スタート。初回はいきなりの3本立て。ライバル寺が設立した仏教専門学園に、スパイとして一人の少年僧が送り込まれる。仏教+コギャル的ファッションに身を包んで。絵柄の暑苦しさとマヌケなギャグの連続で、なかなかに下らなく味わい深かった。高梨みどりの女性テーラー奮闘記「Order-Made」が、今号と次号の2号連続掲載。キャラクターも立ってきたし好調である。ヒラマツ・ミノル「ヨリが跳ぶ」。ヨリ vs.ヒロコの意地の張り合いが最高潮。二人ともかっこよく、そして美しい。太田垣康男「一生!」。一生がついに大手術に踏み切ったころ、父の大樹も世界ランク1位の王者との試合に臨む。大ゴマの使い方がダイナミックで迫力があった。でも次号は休載。ちと残念。

【単行本】「天使の近親相姦」 月角 松文館 A5
 ロリ系漫画には、「幼女系」と「少女系」があるように思う。この二つは、おんなのこの年齢、というよりもそれを推察させる頭身によって区別される。幼女系と少女系は近いようで、かなり味わいは違う。ただ、大人が「大人のミニチュア版」である少女を愛するというのは「一般的」とされる性的嗜好との断絶があまり大きくないけど、小さなおともだちはかなり大人と別生物度が高く「一般」との性的嗜好の断絶も大きい。また社会的な障壁も。幼女系の濃い人が持つ、それを乗り越えるだけの妄念のパワフルさには、尊敬と恐怖を同時に覚える。もちろん少女系の人でも深い人はやたらと深い。あびゅうきょなんてものすごいし。少女系のすごく濃い人は、ときに美少女という神にかしづいているようでさえある。
 前振りが長くなったが、月角はその幼女系の代表的な存在だ。これが2冊めの単行本。ちなみに1冊めはオークラ出版「テレビとチョコレート」。基本的に内容はその2冊でほとんど変わらない。幼女様たちに対する愛情と、その行為の容赦のなさがたいへんに素晴らしい。鉛筆描きっぽい描線で描かれた、まるまるとした幼女たちのかわいさと、やっていることの過激さのミスマッチがとても刺激的。初めてこの人の作品を読んだのは同人誌だったが、その業の深さに感動したもんである。ただ、最近の作品はちょいとマンネリ気味なのが残念ではあるが。
 幼女系の業の深い人というのは、おんなのこのお腹の描き方がうまいと思う。うすべったいだけでなく、イカの腹のように、微妙に膨満した感じのラインを非常に味わいのある線で描き出してくる。月角もそうだし、大山田満月の絵なんて本当に絶妙だった。


8/25(水)……ホールを掘る

 ライター的人々に校正を見てもらうために来社していただき、ついでに飲み。むしろ、校正がついでっぽくもあり。サイトウマサトクさん、ムネカタさん、LZDさんといういつものメンツ。なんかいろいろ話したあと電車ゴトゴト帰宅の途についたのだが、やはり乗り過ごしてタクシー。その後、漫画でも読もうかーとか思ったのだけど、風呂に入ったあときゅーと眠って起きたら出社時間。結局読めたのはアフタヌーンのみ。しかも出社してからWeb更新。未読本がドカドカたまって困るぼよ〜ん。これから忙しくなるうえ日曜はコミティアだから、さらにたまること必至なのに。それより困るぼよんなのは、「どこでもいっしょ」でプレステへの書き込みが滞っていること。これで3日くらいサボっているので、きっとヤツは10日めになったら家出してしまうに違いない。そいつはひどく寂しいことぼよん。

【雑誌】アフタヌーン 10月号 講談社 B5平
 今月号の最大のトピックは、高野文子のひさびさの新作「黄色い本」。読書好きな高校3年生の女の子が、「チボー家の人々」を読む。本の内容を頭の中にオーバーラップさせ、ときにジャック・チボーに語りかけ、語りかけられながら、平凡な日常を送り続ける。本に熱中し、その本の世界と現実世界の境目を自ら曖昧にしていき、それでいて現実世界での生活も淡々とこなしているあたりがたいへんに面白い。本の世界(というよりこの女の子の頭の中の世界か)と現実世界を、まったく等価にさりげなく展開させる技巧は冴えまくっている。というか「技巧」といってしまうのがためらわれるほどに、その表現は自然である。絵についても、脂っけがますますなくなり恬淡として、枯淡の境地という感じ。満足させていただきました。
 弐瓶勉「BLAME!」は連載再開。センターカラーあり。無機物がたいへん邪悪でかっこよい。ああ、そういえばこの作品も、単行本3巻を買ったまままだ読んでいないのだ。鬼頭莫宏「なるたる」。竜の子たちをめぐる騒動は、さらにハードで痛ましいものになっていく。情け容赦がなくっていい。それから今号には四季大賞、クリハラタカシ「アナホルヒトビト」が掲載。始祖的存在の犯した罪により、地上に出ることを禁じられた人々の住む世界。地上に出れないがゆえに、地球の裏側にあるという極楽園を目指して人々は穴を掘り続ける。地上に出ることに憧れているが、その反対を指向する職業である穴掘り人になることが決まってしまった少年の憂鬱を描く。薄暗く、黒々とした個性的な線で描かれる世界は、重厚な迫力がある。閉塞的な世界の完成度はかなり大したもの。さすがに大賞を取るだけのことはある良い出来栄え。面白かった。
 あと、樹なつみの新連載「暁の息子」がスタート。


8/24(火)……軽井沢営利誘拐案内

 仕事が進まない。なぜか? それは俺が進めてないからだぜ! イエー!

【雑誌】CUTiE comic 10月号 宝島社 B5平
 吉本蜂矢登場! ヒャホ! タイトルは「女地球人リンコ」。一目ぼれしちゃったけど、ノリの悪い不思議ちゃん的彼女をつなぎとめようとして四苦八苦する男。「デビューマン」ほどに人間のプライドをかなぐり捨てたかのような下品さはないが、間の取り方がうまくておかしみがある。そしてところどころに差し挟まれる、投げ遣りで意味不明な感じのコマがいい味を出している。ああ、それにしてもこの人、もっとたくさん作品を読みたいなあ。でも、作品を量産してテンションが落ちることは望まないので、わがままはいわない。たまの登場を心待ちにするなり。南Q太「こっぱみじん」。今回は読切で、「夢の温度」はお休み。身体だけの関係であるはずの男女。女のほうは身体だけの関係でなくもっと心もつながりたい所存なのだが、男には別に彼女がいる。二人は身体だけなんだってことを、会って身体を重ねるたびに痛感させられる彼女は、逢瀬のたびにハートがこっぱみじんな日々だ。ラストシーン、つまらなそうにテトリン55をやっている彼女に男が声をかけるあたり、呼吸が自然ですごく心地いいなあ。女の子がソバカスもあって、スタンダードに綺麗すぎないあたりも惹かれる。海埜ゆうこ「ここにおいで」。ちょっと不良っぽいグループの男子と付き合い始めた、平凡グループ側の女の子。相手が好きという想いが、今まで周りに流されるだけだった彼女をちょっとずつ変えていく。青くて若くてええ感じですのう。ラブに恋!

【雑誌】ヤングチャンピオン 9/14 No.18 秋田書店 B5中
 富沢ひとし「エイリアン9」最終回。思ったよりもだいぶ静かにしめやかに完。まだまだ語るべきことどもはありそうな感じだが、そこらへんが最終ページの次のページにあるヤングチャンピオン編集部のメッセージ、「……そしてまたあのこたちに逢える。という。」につながっているのかもしれない。続編があるのかどうかはよく分からないけど、あってもおかしくなさそう。とりあえず、多少の疑問は残しつつも、余韻のあるラストで悪くないと思った。柴田芳樹「セク・サイキックス」第2話「性霊」。ホラーものだが、柴田芳樹にしてはやはりちょっと落ち着きすぎな感あり。もっとハイテンションで飛ばしてほしいところではある。

【雑誌】きみとぼく 10月号 ソニー・マガジンズ B5平
 なんかいつの間にか、毎号けっこう楽しみな雑誌になってしまった。
 今回一番面白かったのは、藤田貴美「651のブルー」。未来世界。対立し戦闘を続ける2勢力。支配的な力を持つ勢力が、敵方の捕虜を収容するために用意した施設の中での物語。その収容所では、男と女がいっしょくたに放り込まれている(といってもさすがに戦場だけに男のほうが圧倒的に多いが)。その中で何者にも捕らわれずしたたかに暮らす女性捕虜と、学究的なお坊ちゃんで同僚からは役立たず扱いされている看守。この二人が物語の中心。屈辱的な目に遭いつつも、心に強いものを持ち屈しない女性捕虜の姿が、なんとも気高く美しい。ガラスの破片のように、透明な表現でエッジは鋭い。なかなかにハードな物語で読みごたえがあった。スッと溶けていくようなラストも爽快でジンと来る。
 花樹いちや「Eve」。なんかこの人、どんどん絵がうまくなっているような気がする。最初は奔放だったヒロインの大虹が、どんどん女の子っぽく、そしてかわいくなってきた。テクノサマタ「りんごちゃん」。ショートストーリー。江がキラキラしていて良い感じ。架月弥「チョコの歌」。今回もユルくお話が展開。なしくずしな感じで事態が転がっていく感じが楽しい。

【雑誌】LaLa 10月号 白泉社 B5平
 津田雅美「彼氏彼女の事情」。今回は学園祭での劇中劇だけで一話まるまる使用。そしてさらに劇中劇は続くのだ。この劇中劇、たぶん実際の学園祭とかで同級生が演じているところを見たら、設定がSF的に過ぎてツライんではないかと思う。というよりかなり演技力が必要になりそう。でも漫画内で演じられているのだから、そんなことはどうでもよく、十分に面白い。「彼氏彼女の事情」のキャラクターを使った番外編という趣もあり。なかじ有紀「ビーナスは片想い」。かなり骨の髄までラブコメな作品。たいへんに他愛なく、ラブコメぶりが非常にストレート。浮き世離れしているけれどもそこが良い。恋にラブ!


8/23(月)……アブドゥル・アルファズレッド

 終電で帰宅したところ、先日購入したパソコンラックが届いていた。そういうものを目にすると、居ても立ってもいられなくなる俺は、午前1時を回っているというのにさっそく組み立てを開始してしまった。「組み立てて部屋に配置したらさぞいい感じだろうぜ。ワクワク」といった、もやもやした妄念を一刻も早く断ち切るためには仕方のない行為だったといっていい。
 暑い中、クーラーもつけずに1時間くらい格闘して、いちおう完成。機材の配置は時間のある日に少しずつやる予定。なんでクーラーをつけなかったかというと、一仕事して風呂入って、それからビールでもクワーッとやったら激しく気持ち良かろうと思ったからだ。いや、実際、労働の後のビールはジャイガンスティックであり、さながら俺の脳髄がビールにレイプされたような気分だったわけよ。

【雑誌】フラミンゴ 9月号 三和出版 A5平
 影夢優が初登場。「響破」。実の父に凌辱された娘が、しだいに肉欲を受け容れていくというお話。この人の絵柄はスッキリとしたロリ的可愛らしさなのだが、その割りにけっこう鬼畜である。ただ、フラミンゴに入ると、これじゃまだヌルいかなという印象。海明寺裕「puppy Love」。今回の作品は、今までより若干時代が後のようだ。K9をめぐり、「子供の教育に有害だから」と圧力をかける市民団体などの社会事情が見え隠れし、さらにK9世界は深みを増してきている。実際、この異世界構築の周到さは大したもの。やるなあ。白井薫範「Pの血脈 私の罪はアナタノツミ」。毎度毎度、牛体型な女の人(P)がシデー目に遭う。いやはや痛そうだ。しかも、それをPの側では喜々として受け止める。やはり、この人の作品はハンパでない。
 駕籠真太郎「輝ける青春の光」。前にも出てきた、パラレルワールドを利用した女学生・愛子さん増殖ネタのバリエーション。なにわ愛子さんが世界をなにわ化するまでの一代記。最近の駕籠真太郎は、多少軽め(駕籠真太郎にしては、である)のドタバタにキレがある。蜈蚣Melibe「バージェスの乙女たち」。フェラチオ奴隷として調教され、身体中にフェラチオしている少女たちの図柄の入れ墨を施された元女戦士「フェラチオアスカ」が大迫力。入れ墨の圧倒的なインパクト、それからフェラチオアスカの尋常ならざる目の光。スゲエ。

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ No.38 小学館 B5中
 一條裕子「犬あそび」。巻頭で新連載。一軒家を手に入れた作家先生が、念願の犬を飼おうとするのだが、なんかいろいろ下らないやり取りをしているうちに飼いにくい状況に。日常のなんでもないことに対して、やたら真剣に、かつ軽やかにこだわってくるあたりは一條裕子節って感じ。山崎さやか「便所」前編が掲載。とある高校にやってきた転校生の女子。彼女を見つめていた男を、突然誘惑しSEXへと至る。その後、さらに近しくなりたい男だが、彼女の態度はすげない。そのうち、彼女は「便所」、つまり「誰とでもやっちゃう女」であるという噂が流れ始める……というところで以下次号。何やらエロチックで赤裸々なお話になりそうで、続きに期待してしまう。なおこの作品、予告では「沖さやか」名義になっていたのだが掲載時は「山崎さやか」名義だった。小学館、講談社で名前を使い分けているとかではなかったようだ。山本直樹「ビリーバーズ」。『副議長』さんと『オペレーター』さんの淫行発覚。さてどうなる。展開がどうにも予想がつかない。うう、楽しみだなあ。

【雑誌】週刊少年ジャンプ 9/6 No.39 集英社 B5平
 尾田栄一郎「ONE PIECE」。「偉大なる航路」に乗り出す前の一騒動。画面構成がダイナミックでスペクタクル。気持ち良い。作:ほったゆみ+画:小畑健「ヒカルの碁」。インターネットでブイブイいわすsaiの正体に、塔矢アキラが勘づく。駆け引きといい感じの探り合いが面白い。好調である。樋口大輔「ホイッスル!」。ん?なんか点を取ったほうのチームがキックオフしちゃいませんか?

【雑誌】ヤングマガジン 9/6 No.38 講談社 B5中
 安達哲の4色4P、ほのぼの漫画「バカ姉弟」が掲載。この作品、相変わらずやる気なさげではあるが、なんかそのリズムが少し気持ち良くなってきている。望月峯太郎「ドラゴンヘッド」。ついにテルと瀬戸さんが再会。というわけでいよいよクライマックス近し。もっとサクサクお話が進んでくれるとうれしいが。月イチ連載、安野モヨコ「花とみつばち」。まあいつもの安野モヨコのノリ。コンスタント。気軽に読んで楽しい一作。

【雑誌】コミックアルファ 9/7 No.17 メディアファクトリー B5中
 休刊号。というわけで久しぶりに買ってみたが……。うん、これは休刊になるのも無理はない。全然面白くないんだもの。ビッグコミックを狙っていたらしいが、旬を過ぎてしまった作家さんが多くてどうにもイキが悪すぎる。一番楽しみにしていた山川直人もしだいに載らなくなっていたし。なお、メディアファクトリーからは10月下旬に新月刊コミック誌が創刊されるらしい。誌名は「VEOV α」(仮称)。なんか予告のところには、「ピカレスクヒーロー、ホラー、ファンタジー、ミステリー、伝奇」とかあるが……。島本和彦「スカルマン」は新雑誌のほうに移って続く模様。
 実は休刊号だから読んでいる人も少ないだろうし、読者プレゼントに応募してみようかなとかいう考えもあったりする。以前まんがガウディの休刊号のプレゼントで、ねこぢるマグカップを当てた俺としては。


8/22(日)……ひょっこりミュータン島

 仕事の関係で行けるかどうかまだ不透明だが、いちおう来週29日(日)開催のコミティア49で回る予定のサークルさん。ざーっとチェックしただけなんで、たぶん抜けとかはいっぱいあると思うけれども、まあどっちみちいつも通り全部見て回るだろうからまあいいや。
 なお、今回のコミティアの会場は、池袋サンシャインシティ文化会館地下特別ホール+噴水広場。地図はここらへん参照。

【雑誌】花とゆめ 9/5 No.18 白泉社 B5平
 山口美由紀「ドラゴン・ナイト」。剣と魔法的ファンタジー世界が舞台。巷によく見られる「剣と魔法=ファンタジー」みたいな図式は嫌いだけど、便宜上そういっておく。大地の声を聞き、それに活力を与える異能力を持つ娘を、都から一人の騎士が迎えに来る。荒れ果てた国土を元の豊穣な地に戻すべく、冒険の旅が始まる……といった感じの出だし。樋口橘「スワンレイク」。貧乏な育ちを隠すべく、尋常でない努力を払ってお嬢さまぶっていた女の子を中心とした三角関係ラヴコメ。なかなか素直になれない女の子の姿が微笑ましくて可愛らしい。スッキリした絵柄も吉。それから望月花梨が読切で登場。「緑のこども」。何やら神秘的な感じさえする強固な絆で結ばれた、双子の男のコと女のコ。この二人には、お互いがいなくては生きていけないような、切実さと危うさがつきまとう。親の離婚によって引き離されることが決まった二人はある決意をするのだが……。今まで望月花梨の作品を読んだ限りでいえば、やはりこの人は読切のほうが表現がより繊細で面白い。儚くてもろい一瞬の輝きを、そっと物語の中に包み込んでくる。

【単行本】「ミュータント花子」 会田誠 ABC出版 B5
 掲示板#1812で沼田さんがオススメしていて、ちょうど会社近くの本屋さんで発見したのでガソッとゲット。後日、同じく会田誠の「孤独な惑星」という本(発行:DANぼ。A4版。このDANぼという会社は、逆柱いみり「夢之香港旅行」を出したところだと思う)も神保町の高岡書店で購入したが、こちらは漫画の単行本ではなく現代美術のほうの作品の写真集という感じ。
「ミュータント花子」のあらすじは沼田さんの書き込みに詳しいので割愛するが、まあ簡単にいえば、エログロで愛国な戦争ものギャグといった感じか。あえてラフな描線で描かれた、ハチャメチャでナンセンスでエロでグロでちょっとアナーキーでもあるお話は、投げ遣りで下品なパワーにあふれていてスパイシー。それでいてけっこうページ数があって楽しめた。

【単行本】「天然コケッコー」11巻 くらもちふさこ 集英社 B6
 すでに定番的一作。過疎の村に住む女の子、右田そよの日常を丹念に追っかけていき、その心情やら、彼女の置かれた情景などを鮮やかに美しく描き出す一品。「美しく」と書いたのは、心情が美しいというのではなく、その描写自体が実に見事なのだ。今回はそよが、彼氏の浮気の気配を感じとったあたりから芽生えた、ちょっとした食い違いが拡大したあたりから始まり、途中ひとまず収まりいつも通りの日常に戻るが……といった感じ。巻を重ねるごとに、そよと大沢以外の人たちの思惑がいろいろからみあってきて状況を構成する要素が増え、何やら面倒な方向に。単純でなくなってきているだけに分かりやすいカタルシスは得られにくくなっているが、それでも物語を語る力と筆致は安定しており手堅く楽しめる。印象的なコマも各所にあるし。

【単行本】「アガルタ」3巻 松本嵩春 集英社 B6
 今さらいうまでもないことだが、松本嵩春の絵はたいへんにかっこいい。流れとしてはいわゆる「アニメ絵」系なのだろうけど、そこらへんにある凡百のかわいい女の子絵のレベルをはるかに突きつけて洗練されている。とくにいいのが人体の描き方。ピンと一本筋が通っていて、一つ一つのポーズが実に絵になっている。
 さて、お話のほうだが、最初のころは曖昧模糊としている点が多かったが、ここまで来ていくらか輪郭が見え始めてきた。まだ氷山の一角に過ぎないだろうが、その一角くらいは姿を目視して把握できるようになってきた……という趣。中国娘喋りの紅花らを始めとして、各登場人物たちもキャラが立ってきている。ただ、一つ注文をつけるとすれば、やっぱり判型が小さいように思える。せっかく抜けのいい美しい絵なのだから、判型がデカいとより映えると思うのだがなあ。だからといって判型を変えて再版してほしいなどとはいわないけれども。

【単行本】「BAMBi」3巻 カネコアツシ アスペクト A5
 この巻で印象的なのは、以前はプロレスラー「プラチナ・キング」として鳴らし、今は刺客としてバンビたちに差し向けられた男。醜い容貌のため、一般人としては生活できず、力で周囲に認めさせるしかなかった人間である。彼が自ら歩んできた辛い人生の回想と、バンビを襲うアクションシーンが交互に展開し、バトルの迫力と、人外のものの哀しさが交錯する。BAMBiの、躊躇ない暴力の威力はこの巻ではあまり見せ場がないが、脇役たちがそれを補って余りある活躍を見せている。迷いのないカッチリした線で構築されたポップでストリートな絵柄と、リズムが良く読みごたえのあるストーリー展開。すでに自らのスタイルを確立し、安定感が際立つ。それでいながらテンションも高く、上質のエンターテインメントになっている。


8/21(土)……カイジよ〜、お前の運をくれや〜

 昨日の日記で触れた「どこでもいっしょ」のプロテクト解除コードだが、その後、このWebページを見てくれている方からメールをいただき、コードの載っているURLを教えてもらった。入力してみたところ、ちゃんとうまく立ち上がってくれた。教えていただいてどうもありがとうございます。いやあ、書いてみるもんだなあ。
 それはともかく、今日は休日出勤。当たり前だが、やる気がないといくら休日出てきても仕事ははかどらない。29日の日曜日、コミティアに行くためにも、今がんばっておかなくちゃいけないんだけど……。

【雑誌】ドルフィン 10月号 司書房 B5中
 マーシーラビットが新連載。タイトルは「SEX WAT」。泣き虫で役立たずだった婦警さんが、ハイジャックを機に暴徒化しそうになった乗客を鎮めるため、身体を張って彼らの欲望を発散させる。で、その活躍が認められて、対性犯罪特殊部隊「SEX WAT」(セックスワット)に配属される……というところで第一話終了。婦警さんが乗客たちに寄ってたかってヤラれるところが今回の見せ場。とにかくちんちんがいっぱいでてきて、体液もドバドバ。割り切って実用方向に振れてて、あっぱれな展開。この人の描くSEXは、女の子がうれしそうだなあ。よこやまちちゃ「しゃぼん奥様 THE HOLIDAY」。今回はエロス少なめだが、目的は別のところにあり。みやびつづる「夏色」。短編。眠っているおねーちゃんに男の子がイタズラ。なんといっても濡れ透け。濡れ透け。濡れ透け〜。ネスケ〜。

【雑誌】COMIC JAM VOL.1 フランス書院 B5平
 5月発売号で休刊した、COMICパピポGAIDENの後継誌。GAIDENはB5中とじだったが、今度は平とじに。で、読んでみたが、実用重視系の誌面作りかなーという気はするけれども、飛び抜けたモノを感じさせない。特徴があんまりない雑誌という印象を受けてしまう。
 その中では、東海道みっちいの巻中カラー「今夜はドレイ DE ナイト」がむちむちと充満感が高く、豊満なモノを好む人にはよろしい感じ。あと鴨川たぬきが2本立て。この人はわりと身体の描き方とか、ちんちんをしっかり描くところは悪くないので、あとは表情がもうちょっといやらしく描ければ、といったところ。今のままだと表情が貼り付いたみたいな感じなので、いまいちいやらしくなりきらない感じがする。

【雑誌】ぷちみるく Vol.2 コアマガジン A5平
 ロリ系アンソロジー。今回は内容的にかなり充実していたと思う。業の深い真性ロリって感じはさほど濃厚ではないものの、よくできた作品が多く粒が揃っていた。
 まず馴染しん「ジューンブライド」。とある男と、その姉の娘のお話。女の子がたいへんに健気で、そして優しい物語に仕上がっている。絵も省略が気持ちよく魅力的。ナヲコ「八月の夢」。作画も筋立てもうまい。上品でかつ切ない。毎回コンスタントに面白く、もっと大きな舞台に行ってもやっていけるだけの実力はあると思う。ウメダダイマル「Girl's Talk」。鉛筆描きのような水彩のような(実際はCGであろう)、ゆらゆらとした描線が特徴的。背が高くて凜とした女の子と、背が低くて可愛らしい女の子。その二人がそれぞれの重荷を癒すかのように抱き合う。重たい背景はありながら、ラストは軽く爽やかに。タカハシマコ「夜の幼稚園」。華やかできれいで、端整な絵柄。描線はきっちりしているけど、繊細で良い。
 みかん(C)「とろけてしまいそう」。今回の収録作品中、絵的に一番真性ロリっぽいのがこれ。昼寝している女の子の肋とかが浮き出ていても、そこもまるごと愛してしまっているかのような妄執を感じる。ロリ系では最近の注目株。ほしのふうた「くらくらバケーション」。幼年向け雑誌のちょっとHな漫画といった趣がある、無邪気で楽しそうな作風がけっこう気に入っている。絵柄もカラリと明るく、ノリが良い。トウタ「Worship」。主人公の男が、公園でレイプされていた女の子を拾う。身寄りのない彼女を、男は妹にする。痛々しい彼女の姿に打たれた彼は、彼女を絶対に穢すまいと誓う。絵柄のキュートさとは裏腹になかなかハードで、ラストは純粋な想いが痛みと清らかさとともに伝わってきた。町田ひらく「約束の血」は、やはり外人を描くのがたいへんにうまい。実に雰囲気がある。
 そして、今回のぷちみるくで一番の問題作はにゃんこMIC「らぶらぶSICKなパパの昼下がり」であろう。ロリものとはいえ、パパが自分の娘、しかも生後間もないであろう赤ちゃんにフェラチオさせるという、なんともどうしようもない内容。そして、それがあくまであっけらかんと明るく展開する。さすがにSEXまではしないというかできないが、この脳天気さはかなりスゴい。

【単行本】「うしろまでヌルヌル」 みかりん 一水社 A5
 うーん、この表紙は……。耐性のない人にとってはさぞ買いにくかろうなあ。年端もいかない少女に向かって、2本の男根からおとこ汁が発射された瞬間、という構図なのだ。男根も多少修正されているが、ほぼばっちしだし。
 相変わらず、実話ではないかと思われるような非常に生っぽい、だけど妙に脳天気なロリが爆発している。ちょいとラフながらかわいらしい絵柄であるところが、その確信犯的な作風をさらに引き立てる。「ファミコンや漫画をいっぱい持っていて、近所の子供たちに人気なおにいさん」的。この生な感じがたいへん刺激的でかなり好きだ。今回の単行本の中では、「アニキと私の二乗」が素晴らしい。顔はいいんだけど知能障害で「あー」「うー」とうなることしかできないアニキを妹が誘惑してSEXに至るというお話なのだが、へらへら笑いつつ「うをっうをっ」といいながら力いっぱい妹に身体をぶつけてくる兄の姿があまりにも激しい。いやー、ヤバ素晴らしい!

【単行本】「仏師」 下村富美 小学館 B6
 プチフラワーで連載された作品。時は永正2年(1505年)。戦国時代。国と国との争いに揺れる、国境の村が舞台。母を亡くし天涯孤独の身の上になった巨躯で無口な仏師・魚人(おびと)が、その地方で「死神」と呼ばれる姫をモチーフに、仏を彫ることに挑む。その魚人を見つめる少女・阿トリ。この3人を中心に物語は展開する。
 下村富美で特徴的なのは、まずはなんといってもその卓抜したデッサン力。精密で硬質な線、そして白黒のコントラストが利いた画面。人物の造形の確かさ。いずれもうならされる出来。お話も単行本1冊ではあるが、骨太で読みごたえがある。死神と呼ばれ、戦乱の中、政略に巻き込まれてさまざまな死を横目に見てきた姫の妖しく酷薄な美しさなど、キャラクターもしっかり描き込まれている。背景の描写も巧みで、しかもうるさくならない。静謐なラストの透明さ加減は眩しいほど。実際、この人の実力は相当なものだ。前単行本「首」(こちらもプチフラワーコミックス)のときよりも、さらに大きく進歩している。オススメ。


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