Yu Kaimeiji

海明寺裕

2001/01/24……コミックスリスト4に「奴隷立國」追加

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コミックスリスト

  • リスト1: 「ルナティック・ルナ」 「ファイナルファンタジー」 「亡國星」
  • リスト2: 「eXpose」 「後宮学園」 「ボディ・ショップ」
  • リスト3: 「K9」 「volunteer Breeding」 「girl Hunt」
  • リスト4: 「めしべのアルバム」 「puppy Love」 「奴隷立國」 NEW

 海明寺裕は、もともとはSF畑出身の漫画家だ(デビューは1980年)。そのころの作品には「ルナティック・ルナ」や「ファイナルファンタジー」などがある。しかし、このころの作品は正直なところ、あまり面白くなかった。ギャグが上滑り気味だったり、オタクっぽさがマイナス方面に出ていた印象がある。掲載誌が次々とつぶれるなど、不幸な面もあった。そういったわけで長いこと、くすぶっていた(というと失礼かもしれないが)海明寺裕だが、活動の舞台を、強烈なSM系漫画雑誌として名高い「フラミンゴ」(三和出版)に移したことにより大化けした。もともと、絵的にはたしかなものがあり、休刊したヤングパラダイス誌に掲載された「虚構列伝」などでも、ストーリーテングの能力が高いことは実証済みだったが、安定した掲載先を得たことによりその力が発揮され始めた。

 現在の作品は、「eXpose」から始まる一連のSM系作品に見られるように、細かな設定を組み合わせて、独自の「人間奉仕用生物K9」を中心とした世界を築き上げようとしている。その作風はSM系雑誌に載っていながら、実は非常にSF的。また、読者を幻惑する大細工、小道具を使って臨場感を高めるあたりも実にうまい。エロ漫画界においては当代きっての技巧派といっていい。下品なことをやっていつつも、全体の雰囲気自体は良くも悪くも上品で、実用にはあまり向かないかもしれない。しかし、巧妙で周到な世界作りは一見の価値ありだ。オススメはコミックスリストの「eXpose」以下の諸作品。
 あと、「eXpose」巻末の豊島ゆーさくのコメントによれば、今まで日本で発売されたアニメの主題歌をほぼすべて保有しているというとんでもないコレクターでもあるらしい。やっぱり濃い人の描く作品は濃い(ことが多い)。

「虚構列伝」  また、単行本化されていないのだが、非常に印象深い作品に前述の「虚構列伝」がある。これは、「栄光なき天才たち」のウソっぱちバージョン的な作品で、世界で初めて「飛翔機」を作ったジェニィ・A・ラインズ、謎の生物である「キャリコ」を発見したドロシイ・ローズ・ドリトル、フラクタル理論の産みの親であるイングリッド・M・フラクタルという、3人の異端の天才たちの生涯を描いた物語だ。ウソっぱちの物語にさまざまな装飾を施し、実にまことしやかにもっともらしく、そしてかっこよく見せる腕前は実に大したもの。俺としては海明寺裕の中で最も好きな作品だ。画像はコミケに出店していた海明寺裕のサークル「空色の猫目石」で購入した、「虚構列伝」を1冊にまとめた同人誌の表紙である。現在でも入手可能かどうかはよく分からない。ぜひ、多数の人に読んでもらいたい作品なので、いずれ何かの単行本に収録されてほしいと思う。


【関連リンク】

海明寺裕の部屋……海明寺裕本人のホームページ


Text:芝田隆広 Takahiro Shibata