オス単:2003年1月の日記より


 このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。

 日記形式だと、どうしても日にちが過ぎてしまうと大量の過去ログの中に個々の作品が埋もれてしまうため、このコーナーではダイジェスト的にまとめてみました。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則としてしませんので、普段日記を読んでくださっている方にとっては読む意味がないかもしれません。手抜きといえば手抜きなんですが、まあその点はご容赦ください。

 なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でもどんどん入れていきます。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、わりと省略しがちです。


▼強くオススメ

【単行本】「ペット」1〜2巻 三宅乱丈 小学館 B6 [bk1][Amzn:1巻/2巻

 いや〜面白い。これは引き込まれる。他人の記憶の中に入り込み、その記憶の消去・変更を行うことのできる特殊能力者たちの物語。彼らは中国人マフィアによる「会社」の監視下にあり、過酷な任務を強いられている。

 この作品で描かれる超能力で面白いのが、記憶における「ヤマ」と「タニ」という概念。ヤマは「その人を支え続ける記憶が作った部位」、タニは「その人を痛め続ける記憶が作った部位」のことを指す。当然記憶におけるヤマの部分は幸福感に満ちており、タニは陰鬱で悪夢的である。このヤマの部分を破壊してしまえば人間の人格は崩壊する。この二つの部位と、通常のなんでもない記憶の部分を操作することで、人を思いのままに動かすのが特殊能力者たちの役目である。

 しかし能力者たちにも当然人格はあるし、能力者たち同士の絆は深い。この物語の時点だは、彼らの想いと会社の利害に齟齬が生じていきさまざまな事態が展開していく。この作品において、三宅乱丈の描写力は冴え渡っている。「記憶」というものは非常に抽象的で、漫画にして見せるのは非常に難しいと思うんだけど、それをしっかり具象化してさらにいろいろな形にこねくりまわして物語を構成していく手際は鮮やか。それから他人の精神に対する感応力がありすぎるという、普通だったら障害とさえいえるような能力を抱えて生きていく、能力者たちの生き様を描いた物語も非常に吸引力が強い。

 昔は超能力モノといえば念動力や透視能力といった物理的な能力を駆使したものが多かった。で、最近は(超能力モノ自体が減ってきてはいるものの)読心力を中心とした精神的なもののほうが増えてきているような気がする。「他人の記憶を操る」という能力は精神系のほうだが、漫画ではこれまでさほど扱われてこなかったジャンルであると思う。それだけにいろいろと新鮮な展開が生まれてきそう。三宅乱丈にはもっとガッツンガッツン、この路線を突き詰めていってほしい。すごく期待している。

【単行本】「いちご実験室」 山名沢湖 講談社 A5 [bk1][Amzn]

 ついに出ました初単行本。収録作品とかはこちら。軽やかでファンシーきわまりない作品の連発に、一本とられて二本とられて三本とられて……という感じ。この人の作品はスタンスが非常に独特なんで、その感触を伝えるのが非常に難しい。なんというかラブといったら重すぎる、メルヘンというほどベタでなし。以前この人が寄稿していた同人誌で使われていた「キャッチでキュートでチャーミング」という響きが絶妙だなあと改めて思う。例えば表題作である「いちご実験室」は、なんでも発明しちゃうハカセくんとその隣に住んでいる女の子の日々の生活を描いた話。白衣のメガネくん、かわいい幼なじみの女の子、奇妙な発明品、ダジャレ、巻き起こる不思議でシュールな事態の数々……とおいしいアイテムはいっぱい出てきて、どれも作者が好きなものでありそうなんだけど、どこかに力点がかかる前にひょいひょいとリズミカルにそれらを飛び移って行ったり来たりしてるみたいな、独特の飄々としたところがある。読んでいると精神がふわふわ空中に解放されるみたいで気持ちいいです。

【単行本】「甘い水」(上) 松本剛 講談社 四六判(ハードカバー) [Amzn]

 タイトルは「甘い水」で青春の恋愛を扱っている作品だけど、読んでみると苦い。ほろ苦いなんてもんじゃなく苦い。物語は、北海道のとある学校に通う平凡な高校生1年生の男子・戸田夏生が、転校生の少女・沢俣眞千子と出会うところから始まる。無鉄砲な夢を見がちではあるけれど優しいところもある夏生と、どこか陰のある美少女・眞千子はお互い惹かれ合い恋に落ちるも、眞千子の抱えていた秘密は夏生には受け止めきれぬほどに重くて……というのが上巻の大まかなあらすじ。

 夏生と眞千子の恋が育っていく様子は、見ていて非常に心地よい。どっちもそれぞれに不器用で、気持ちの優しいいいカップルなのだ。それだけに現実というモノの厳しさが、ズーンと重く、切なくのし掛かってきてダークな気分にさせられる。大人ならまだしも何らかの気持ちの落ち着けどころ見出す術を用意できるかもしれないが、二人ともまだ高校1年生。自分の気持ちをどっちに持っていったらいいのか、現実を打開するだけの方策も持たなければ力も持たない。それだけに身を切られるほどのもどかしさが募っていく。分かってはいても知りたくない、でも目は離せない。

 松本剛の絵は、青春モノ好きな人間ならパッと見た瞬間に心動かされるような風情があるし、話の運び方もうまい。正直なところ、やろうと思えばいくらでも、甘くて普通に楽しめる好感度高めな話くらいだったら作れちゃう人だと思う。しかしそれをあえてやらず、ものすごく苦しく痛みを伴う話にしちゃっている。読むほうもしんどいけれども、たぶん描いているほうもしんどいじゃなかろうか。ただ、それを受け止めたうえで真っ正面から描くという意気込みはひしひしと感じられる。だから読者としても、この続きがどうなるにせよ覚悟して見届けたいと思う。

【単行本】「オーバーマン キングゲイナー」1巻 作:富野由悠季+画:中村嘉宏 メディアファクトリー B6 [bk1][Amzn]

 この作品のアニメ版は最近ちゃんと観ていて、観るたびに「キングゲイナーおもしれー!!」と感激している。その徹底したエンターテインメントを味わうにつけ、富野由悠季の作家としてのぶっとさを感じずにはいられない。なんか細かな情念だのなんだのは置いといても、理屈抜きに楽しい。思わずDVDのほうもAmazonで(1)/(2)/(3)と立て続けに予約してしまった。それだけ面白がって観ている。

 ストーリーのほうは、雪と氷に閉ざされたシベリアの地から始まる。ネットを使ったロボットバトルゲームのチャンプだったゲイナー少年が、とある事件を機に「エクソダス」に巻き込まれていく。大戦争の後、地球上の大半の地は汚染されシベリアのような過酷な地でしか人類は追いやられていたのだが、もっと広い世界を観たいという欲求からこの物語の時代には外の世界へと「エクソダス」する者が増えつつあった。エクソダスというのは要するに移民みたいなもの。でもエクソダスというのは政府から禁じられていて、行う者に対しては政府やシベリア鉄道から追手が差し向けられ、撲滅されるという定めになっていた。で、ゲイナーの巻き込まれたエクソダスは町を構成する居住ユニットごとというたいへん大がかりなもの。騒動のさなかに「オーバーマン」と呼ばれるロボットの操縦役となったゲイナーは、エクソダス反対主義者ながらその手伝いをやらされていく……といった具合。

 中村嘉宏による漫画版(コミックフラッパーで連載)は、アニメにかなり忠実に漫画化していて、しかも作画のほうもすごくうまい。たいへんよくできている。……と単行本を読んだ人はきっと思うだろう。でも雑誌で読んでいると、連載ぺースが遅すぎて漫画のほうではストーリーが全然追えなかった。なんといってもしょっちゅう落としたりページ数が少なくなったりする。そんなわけで単行本でまとめて読み返してみて、上記のような感想を持った。以前は「アニメと違って漫画は一人でできるから……」などといったことを考えていたが、アニメのほうは落とすわけにはいかないので、ときに作画とかがヘロヘロになったりする作品はあるものの、とりあえずストーリーは進行する。そういう点はアニメのほうがいいなあとか最近思うようになった。とくにこの作品についてはテレビ放送のほうも非常に高品質だし。ただわりと途中の何話分かはすっ飛ばしちゃってもOKなタイプの作品なので、漫画版のほうはうまいことコンパクトにまとめることで、ストーリー展開を早めることはできるかも。なんにせよ掲載ペースは上がってほしい。面白いんだから。

【単行本】「天水」上巻 花輪和一 講談社 A5 [bk1][Amzn]

 完全版として復刻。めでたいめでたい。確かこの作品の連載中に例の逮捕事件が起こって18話以降が単行本未収録となっていたのだが、これでようやく全部読める。ちなみに上巻には17話までが掲載。内容は、平安時代とかかなといった感じの昔の日本の都で、一人暮らしている少女・棗が、ある日河童と出会い共に暮らすようになるところから始まる。それがきっかけで彼らにさまざまな怪異が起こる中で、棗は母親が生きていることを知り、彼女を探し始める。

 花輪和一の緻密なタッチはこの作品でも存分に発揮されていて、さまざまな怪異をとてもつぶさに描写している。例えば棗の背中に巨大ゴキブリがとりついたり、オロチのせいで河童さんが極悪な顔になっていったり……などなど。そのグロテスクでもありユーモラスでもある様子も魅力だが、やはり棗とお母さんが無事再会できるのかというストーリーの展開が気になるところ。下巻の発売[Amzn]は2月下旬。早く続きが読みたいよ〜ん。


▼一般

【単行本】「弥次喜多 in DEEP」8巻 しりあがり寿 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]

 ずっと発売延期が続いていた最終巻がついに終了。弥次喜多がお伊勢さんに到着した後は、彼らが不在のまま「リアル」という概念のみが、鳥息子のご託宣に乗って暴走を続けその混乱、狂騒がこの巻で最高潮を迎える。ラフな、ときに子供の落書きのようにさえ変化する描線が、ここぞというときに生み出す爆発力は相変わらずすごい。現実のような現実でないような世界は最後までゆらゆら揺らぎ続け、読者をどんどん予期しない方向へと導いていく。その牽引力の強さは恐ろしいほど。ラストシーンをどう取るかは読み手しだい。これだけあやふやで曖昧模糊とした世界を、これだけのスケールで描いた作品はまれだと思う。とにかく一度は読んでみる価値のある作品だということは間違いない。そして繰り返して読んでも得るものはきっとある。前シリーズに当たる「真夜中の弥次さん喜多さん」の第1巻が1996年発行。長きにわたったこの大作を、最後までしっかり描き切ったしりあがり寿に敬意を表したい。

【単行本】「THE大市民」1巻 柳沢きみお 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 「大市民」でいろいろひとりごちまくっていた小説家・山形先生が、今度は成城に仕事場を移し、さらに年輪を重ねた自分ライフを展開するというお話。正直なところ、山形先生のこだわりについて全部が全部同意できるわけではない、というか同意できないところは多い。でもなんだかこの人の作風って、主張は異にしている立場の人間でも素直に受け容れやすいなと思う。まあおおむねビールの飲み方とか寿司の食い方といったついてのこだわりがメインだからというのもあるんだが、なんというか主張の押し出し方に罪がない。かといって哀愁を感じさせるとかいった、世をスネたりイジけたところが全然ないのも個人的にはありがたい。大人の男の稚気というものがてんこ盛りなのは見てて素直に楽しい。

【単行本】「美鳥の日々」1巻 井上和郎 小学館 新書判 [bk1][Amzn]

 それまで全然モテなくて寂しい青春を送っていた不良少年・沢村正治の右手に、ある日突然彼女が生えてきた……というわけで、文字通り右手が恋人状態。この生えてきた彼女というのは別に妄想でも人面疽でもなく、正治にずっと片想いしていた美鳥という美少女。それこそ四六時中、小さな彼女と一心同体、いつでもいっしょという状態で繰り広げるラブコメ。この娘さんが非常に分かりやすく可愛くて萌え〜というお話ではあるんだけど、これがちゃんと面白く読めているのはそれだけじゃなくてラブコメとしてうまくできているからという気もする。状態が状態だけに手を出しようがないし(やりようはある……というツッコミは抜きにして)、イヤミのないキャラクター造形、性格なんかも好感が持ちやすい。いちおう恋敵キャラも出てきててその娘さんもいい感じだし。そういえばラブコメのキャラって、一人にモテ出すと途端に入れ食い状態になりますな。金がすでに持っている人のところに集まるのと同じ理屈か。

【単行本】「ナイトクレイバー竜一」1巻 稲光伸二 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 対人恐怖症のせいで、お店に行ってもモノを買うこともできないがために万引きを繰り返し……という状態にあった内向的な少年・竜一が、その異常なまでの手さばきを見込まれて、ストリート麻雀の世界へと引きずり込まれ、そこでようやく自分の生きる場所を見出していくというお話。……とあらすじを書いてたら、なんか「ホーリーランド」みたいなストーリーだなとかちょっと思った。要するにストリートファイトが麻雀になっていると考えればOK。真夜中のストリートで手積みの卓を囲んでいる状況というのは考えてみると異様だが、演出にハッタリが利いているのでそんなに違和感なく読める。イカサマバリバリの麻雀模様は、刺すか刺されるかという緊張感があっていい。あとスリカエは必殺技っぽさが強くて、数あるイカサマ技法の中でもカッコイイと思う。まあ麻雀好きにとってはここまで何でもアリだとちとキビシイというのはあるかもしれないので、それを補うだけの演出を期待といったところ。少年が自分の殻を破って成長を遂げていくという物語でもあるので、読んでてけっこうカタルシスもあります。

【単行本】「デ・ジ・キャラット劇場 ぴよこにおまかせっ!!」2巻 作:コゲどんぼ+画:ひな。 メディアワークス B6 [bk1][Amzn]

 1年ぶりの第2巻でこれが最終巻。でじこを誘拐して身代金をゲット、母星の貧乏を救おうとしているブラックゲマゲマ団の首領ピョコラ=アナローグIII世、通称ぴよこを主役としたお話。といってももうこの巻になるとほとんどでじこを誘拐なんてことはやってなくて、ぴよこたちの日常を楽しく描写。ちまちましたキャラクターたちがあっちゃこっちゃドタバタと動き回っている様子は見ていて単純に楽しい。ブラックゲマゲマ団にしろでじこたちにしろ、やることが全然デッカくなくってなんかすごく平和。ほのぼの。ひな。の絵も相変わらず可愛らしい。単行本については、おまけで付いてるアバウトなペーパーフィギュアとかがいい味。これも含めて全体の雰囲気がきちんと統一されてるのが素晴らしい。まあ面倒な話はどうでもいい。面白いよ。

【単行本】「召喚の蛮名 学園奇覯譚」 槻城ゆう子 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]

 ちょっと遅ればせながら。「素っ裸の幸せ。」がいまだ印象に残る、槻城ゆう子の久々の2冊目。といってもこの作品がRPGマガジンで連載されたのは1997年から1999年にかけて。お話のほうはとある学校の普通科から、魔法使いになるための勉強をする神智科に編入させられた少女・栃草緋不美が、クラスメートの天野と共にオカルト的で不思議な騒動に巻き込まれていくという学園ファンタジーといった趣。クトゥルーやタロット、錬金術など「その手の」アイテムがいろいろとからんできて怪しげ、かつ楽しくお話は展開していく。おどろおどろしくはあっても、どこかほのぼの、適度なヌルい均衡を常に保っているあたりがこの人らしいなと思った。クトゥルー関係の知識は多少持っておいたほうが面白く読めるかとは思うけど、さほど大それた知識量は必要ない。まあわりと気軽に読んでもOKなのではないかと。

【単行本】「楽園」 藤原薫 祥伝社 A5 [bk1][Amzn]

 相変わらず繊細で美しいねえ、この人の描く作品は。乱暴に触れたら壊れそうな硬質でデリケートな作風は、ハッと目を留めずにはいられないものがある。お話も絵の雰囲気そのままに息苦しいような緊張感がある。今回の単行本は全4話だが、それぞれが独立した話になっていて、3話めがまた#1〜#3に分かれている。この第3話がとくにいいなと思った。双子の兄弟、千昌と千紘。彼らは、千昌が人の隠された想念をイメージとして見ることができ、千紘がそのイメージの意味を感知してしまうという、不思議な感覚の持ち主。しかし彼らは他人の秘密が見えてしまうということでさまざまな嫌な思いをしてきており、千紘は千昌を守るため、家に引きこもる道を選んだ。千昌は千紘を再び外に連れ出そうとするが、いざ連れ出してみるとそれを後悔することになる。千紘を放置しておいても外に誘っても、千昌が苦しい想いをすることには変わらない。逃れようのない閉塞感。これはこの単行本掲載作品全体に共通して漂う雰囲気である。美しいガラスの箱に封じ込められた花みたいに、息苦しくも美しい1冊。


▼エロ漫画

【単行本】「このまん○が凄い!」 摩訶不思議 ヒット出版社 A5 [Amzn]

 最近の摩訶不思議作品はエロくて良いなあ。昔からの柔らかく丸みのある描線に磨きがかかり、おちんちん描写とかもいやらしさを増している。汁気もたっぷり。19冊目の単行本とのことだが、まだまだ勢いがある。今回は短編集だが、人妻、ロリ、獣姦、近親相姦……と内容は盛りだくさん。あとがきによれば前作「雛迷宮」がロリだったので今回は違うことをやろうとしてたとのことでロリは少なめだが、その分汎用性は高いかも。掲載作品の中では人妻専門にセックス相談をやっている医学博士、人呼んで「人妻博士」の活躍を描いた「大月人妻相談室」あたりが好き。シリーズ化しても良いキャラのような気がした。それ以外の作品もそれぞれ芸がある。いい感じにキャリアを積んでるエロ漫画家さんだと思う。

【単行本】「TAG」 すえひろがり シュベール出版 A5 [Amzn]

 零式で連載された作品で、最終回は雑誌が休刊になってしまったため描き下ろしで収録。女子大生の瑞萌が、ある日、学園祭中のキャンパス内でとんでもない光景を目にする。それは同じゼミに属する女性が、全裸で構内を駆け抜けていく姿だった。それがきっかけとなり、やがて瑞萌自身も衆目の監視の中に自分の裸身を晒すゲームに巻き込まれていく……という内容。ストーリーの要約からも分かるとおり、いかにもすえひろがりらしい、露出・羞恥モノの作品であり「誰かが見ているかもしれない」「きっと見られている」、そういう感覚から来るドキドキをうまく生かしている。描写自体は現在のエロ漫画としては過激なほうではなく、むしろ上品っぽくさえある絵柄なのに、他人の視線というアイテムを活用することでHな気分を盛り上げている。ここらへんはやっぱりすごくうまいなと感心する。この人の絵はやっぱり好きだ。シンプルだけどいい感じに色気がある。男性向けエロ漫画に興味のある女性の人にも入門用としてオススメできるかもしれない。

【単行本】「めいどin!」 みた森たつや コアマガジン A5 [Amzn]

 かなりおばかさんなメイド漫画。第1話めからして、水深1500メートルの深海に、メイドさんがシュノーケルいっちょでやってくるところから始まるというはちゃめちゃぶり。派遣されてきた先のご主人様である男は、勃起するとちんちんが野球のバットくらいにもなろうかという長巨根。でもメイドさんは一流なので、ご主人様の命令とあればそんな化物でも受け容れてしまう。んでもって2話以降は、そのメイドさんが契約満了とともにどこぞへ入ってしまったこの巨根男を探す旅に出て、行く先々でさまざまなご主人様に仕え、最終的にご主人様と再会するという様子が描かれていく。そして最終回はこの巨根がもうすごいことに。

 というわけなんだかいろいろ波瀾万丈あるんだけど面白かった。メイドさん、巨根ご主人様ともども人間離れしているし、しかもその状態でラブラブな物語を紡いでしまう、みた森たつやのエンターテイナーぶりにも感心。この人の漫画は読んでて気持ちいい。

【単行本】「さらくーる」3巻 みた森たつや コスミックインターナショナル A5 [Amzn]

 「めいどin!」も出たことだし、と思って全3巻まとめて買ってきた。2巻まではすでに読んでいたのだが3巻はまだだった。このお話は、壺から出てきた魔女と彼女を呼び出してしまった男・要沢春巻のラブストーリー。魔女のサラクールは呼び出されたときに壺が壊れたショックで魔力を放出、それがハルマキに宿ってしまい、その魔力を取り戻すためにハルマキとHを繰り返すうちに二人の間に固い絆が芽生えていく。というとよくある押しかけ女房モノみたいであり、まあ実際ストーリー自体は当初そのように展開していく。でもこれがすごく面白いんですな。ハルマキとサラクールの関係が密になっていくにつれて「お互いを好きだ」という気持ちの描写が強くなっていく。相手がいると幸福、いないと寂しい、そういう素直な気持ちをみた森たつやは実にストレートに描く。もう気持ちいいくらいに。ストーリーも終盤大きく動く。非常にドラマチックで、最後の展開なんかも含めて感動した。

【単行本】「人妻姫」3巻 かるま龍狼 ワニマガジン社 B6 [bk1][Amzn]

 これにて完結。人妻であるのに姫、そんなワンダーな存在を求めて王子が旅をするというストーリーは、人妻モノ大好き人間である自分もぶっ飛んだし、奇妙な着想をドタバタコメディとしてサービスもふんだんにまとめ上げるかるま龍狼の手腕は相変わらずうまいな〜とうならされるものがあった。エロシーンの描写も、ポーズの付け方とかくびれの付け方とかツボを押さえてて凄く好きなんだよね。何はともあれラストへ向かう展開もカラッと明るくおめでたくてこの作品らしかったし、全30話、きっちり楽しませていただきました。

【単行本】「SWEET LESSON」 BENNY’S 司書房 A5 [Amzn]

 この人の描く女の人はとても柔らかそうでいいなあといつもながらに思う。んでもってお話のほうはノリが良く楽しげで、なおかつHシーンもけっこう充実感がある。あとやっている最中の女性の表情がすごくいい。トロトロにとろけそうな表情で、一つ一つの刺激に反応している様子はたいへん色っぽい。エロシーン以外では、女性キャラが時折見せる他人を包み込むような慈愛に満ちたまなざしも好き。まあるいおしり、大きなおっぱいと合わせて、母性を感じさせる絵でもあるなーと思った。そんなキャラたちが激しく感じまくる派手さと、しっとりとした質感が共存しているのが、なんかもうたまんねえなあという具合。今回収録されたお話では巨乳な看護婦さんが、ワガママな芸能人の息子に媚薬を使われてメロメロになり、彼とその取り巻き連中に病室でさんざっぱらやられちゃうという「なな子のお仕事。」がヒット。巨乳、輪姦、媚薬といずれも俺性嗜好にフィット。

【単行本】「淫絶の薔薇」 山本よし文 エンジェル出版 A5 [Amzn]

 ははは、なんかやりたい放題やってます。「オッパイファンド」で有名(?)な山本よし文の最新単行本。後書きで「今回のマンガのテーマはパロディです」といっているとおり、Hな学園パロディものとなっている。で、何をパロディのネタに使っているかといえば昔の有名な少女漫画(一つまだ続いている作品もありますが)。なんといってもヒロインの名前からして岡ヒロミ。この娘さんはジャルジュ学園という全寮制のエリート校に通っているのだが、女子生徒を対象にしたSEXの授業が苦手。その彼女の目標となる存在が先輩の龍崎零香さん。さらに演劇部の北嶋真矢さんらも登場。で、学園の暗部ではカッコイイけど悪いヤツである藤堂先輩が女生徒を凌辱しているといった具合。まあストーリー的にはとっちらばってるといえばとっちらばってるんだけど「なんで今さらこれを……」というキャラたちが、あけすけにやりまくってるさまはけっこう笑っちゃうので一見の価値あり。相変わらず面白いことする人だなあ。

【単行本】「人妻みつ江」 ペンネームは無い 東京三世社 A5 [Amzn]

 「少女調教録」シリーズでおなじみ、ペンネームは無いの5冊めの単行本。今回はタイトルどおり人妻メイン。夫が淡白で欲求不満状態に陥っていた人妻のみつ江を、同じマンションに住む奥さんがいかがわしげなマダム倶楽部へと誘う。それを契機としてみつ江の肉体は開発され、ドロドロな肉欲の日々が始まっていく……というお話。「少女調教録」のころよりも絵柄はだいぶアダルトな雰囲気に練れてきてはいるけれども、密度が高く熱量の多いハイテンションな作風、特徴でもある大仰なセリフは健在。「わ・私は…感じ…な・が・らそんあ…端無いぃ自分をぉ…男…達にぃ気づかれまいひ……と沸き上がるぅも・桃色の声…を必死に……押し殺すぅのですぅ…」。心内描写でさえこんな調子。昔に比べると肉体改造ネタは影を潜め、スタンダードでガチンコなエロスで責めようとしている感じ。個人的には「少女調教録」でファンになったクチなので、もっともっと肉体改造ネタとかは見たかったところだけど、まあその分実用度は上がっているとは思う。それにしてもエロシーンのない見開きが数えるほどしかないってくらいに、全編エロで埋め尽くすパワーはやっぱり凄い。どんな服着てようが最低限乳首くらいは浮かすし。

【単行本】「World Wide Love!」 泉ゆうじろ〜 コアマガジン A5 [Amzn]

 表題作「World Wide Love!」全9話は、ナヨっちくてかわいい系の容貌をした少年・健助と、借金のカタに彼を下僕として買い取った幼なじみで超わがままなお嬢さま・可憐を中心とした学園Hストーリー。これに可憐のおつきの肉奴隷子ちゃん、恋敵のめがねっ娘生徒会長、健助の後輩の女の子らがからんで、H満載の学園生活が展開されていくという具合。この作品の特徴は、いかにも萌え系な感じの明るい絵柄で描かれた女の子と、やけにぷりんぷりんと存在感のあるおちんちんのコラボレーション。お話のほうは毎回健助が女の子にいいようにされて濃いHを繰り返す……という感じで、さほどラブコメっぽくもならず大きくは動かないし深みもあんまりない。でもHシーンは派手。精液の吹き方は盛大だし、みんなたいへん貪欲だ。中でもおちんちん描写については見るべきものがあって、けっこうしっかり描き込まれているんだけどすごいリアルって感じではなく、丸みがあってテラテラつやがある。タマのほうもそう。リアルちんこが萌え系な絵に合わせる形で進化した……というふうな印象を受けた。これもまたTM-Revolutionの一産物なのかもしれない。そんなことを考えた。


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