2000年4月10日(月)
花とみつばち 1 | 安野モヨコ | 講談社 | <漫画・単行本> | 505円 |
「ヤングマガジン」での月イチ連載です。さえねえ地味男がモテモテになるために、エステに通って少しずつ変わっていきます。驚くべきことにいつものモヨコと全然変わってないのに、見事にヤンマガ読者向けの漫画になってます。昔から男のオシャレ漫画というのはありましたが(平光琢也/高田裕三なんてのもありましたなあ)、これほどまでに合致するとは。結局男の子だろうが女の子だろうが、関心事はたいして変わらないってことなのでしょうか。漫画におけるジェンダー差がなくなってきたことの現れであるようにも思います。興味深い本ですな。
極楽丸 | 相川有 | ソニー・マガジンズ | <漫画・単行本> | 520円 |
「バーズ」に掲載されて「良いじゃないの」と思ってた作品。やっぱり前があったのですね。前半は「AX」の付録に掲載されていたのですね。線はきれい、キャラクタは魅力的、魂を救うという極楽丸の役割と、見るべきところが多い作品になってます。1巻で完結なのが惜しいといったところでしょうか。
秘めごと ロマンス2 | 田中ユタカ | 雄出版 | <漫画・単行本> | 562円 |
3本だけ新作がありますが、あとはすべて再録です。まあ、全くの再録本ではないので、それほど損はしないかと。内容はもうホントに気恥ずかしくって全部一度に読み通せません。必要なのはラブだ、ということが徹底的に認識される次第です。
エースネクスト 5月号 | 角川書店 | <漫画・雑誌> | 619円 |
ガーン!『あかりミックス』が最終回ですか!!石田さまを失ったいま、私はどうやって生きていけばいいのですか??世をはかなんで自殺してしまうかもしれませんよ??
ところで。『NIEA_7』は相変わらず面白いです。
ガロ 5月号 | 青林堂 | <漫画・雑誌> | 780円 |
さすがに5号目ともなると安定してきているようで。今回は丸尾、大越、川崎、みぎわ、逆柱と連載陣はレベルが高く、初の新人=入選作品も載ってます。これがまたバカバカしくって笑っちゃうのですね。もちろん昔からのガロっぽくはないのですが、つまんない漫画じゃあないです。加えて津野裕子が連載を!セクシャルなメタファの連発に私死にそうです。見た目は全然そうじゃないのですが、イコノロジー的にもの凄くエロいのですね。頭の中のエクスタシー。最高です。
コミックビーム 5月号 | エンターブレイン | <漫画・雑誌> | 467円 |
今月もやんなるくらいテンションが高いです。会社が変わったせいでしょうか?ともかく。新連載はTKD+竹谷州史の『LAZREZ』。すべてのリアルが仮想的になっていく世界において、ひとり、ライブハウスのステージに立つパンク。ってあんたカリブ・マーレイじゃないか!誰が何といおうと私はそう信じてますし、大丈夫、間違いなくそうでしょう。パンクオヤジの魂、受けて立つぜ!
他にはネタ合わせが微笑ましい『おさんぽ大王』『夜は千の眼を持つ』、ラストに痛ーいオハナシを持ってきた『彼女とデート』、マサルとそのママの体型がすごーくイヤですごーく素ン晴らしい『テルオとマサル』、センスオブワンダーとは何か、ということを考えさせられる『期末試験前也』と、凄い内容になってます。まあ読め、という感じですか。
2000年4月9日(日)
ロリータ番長RX | G.B小野寺 | 雄出版 | <漫画・単行本> | 800円 |
「熱血!ロリータ番長」に続く2冊目の単行本。いかにストックが多かったか、そしていかに前作の反響が大きかったかがうかがえます。だって面白いんですもの。過剰で、かつ懐かしい少年漫画的誇張が実に心地良いです。前作に比べてロリータ番長の割合が少なく、ちょっと雑多な感じのする本になってますが、きっと大丈夫でしょう。雑誌「アワーズ200X」で連載するのは間違いなく、少年画報社から出る本はきっとロリータ番長オンリーの本になるでしょうから。
うさぎパラダイス | 竹本泉 | ノアール出版 | <漫画・単行本> | 571円 |
懐かしい「コミックマスター」(Jじゃないですよ)に掲載された作品の再版です。発明家の孫でいつも寝てばかりいる苺太とガールフレンドの美世代が毎回センス・オブ・ワンダーにあふれた騒動に巻き込まれる…というものですが、何か凄いんですね。何の説明もなく中世になったり、古代ギリシャ/ローマになったり、宇宙からグラマーな侵略者がやってきたり。コミックマスターという男性向けの雑誌(?)のせいか、SFテイストにあふれた作品が多いのも印象的です。ああ、幸せ。
零式 19号 | シュベール出版 | <漫画・雑誌> | 円 |
久々復活の上連雀三平ですが、ちょっとやっぱりおちんちんが足りない感じ。きっと他の仕事の「毒」が足りないのでしょう。もっとイヤーな(ヒドい)原作付きのお仕事を増やされたら?なんて思ってしまいます。不謹慎ですが。全体的に「快楽天」と近い方向を目指しているように見受けられます。全体的にエロ度は高いですが。今回は上月まんまるが初登場。河原(利根川?)で客を取る女の子に惹かれる高校生、というネタで、かなり痛いです。また他には目黒三吉、二階堂みづきなどが気になったところです。
2000年4月7日(金)
とても変なまんが | 唐沢俊一 | 早川書房 | <漫画・評論> | 1500円 |
かの「SFマガジン」の連載をまとめたものです。呉智英やいしかわじゅん、当然昨日の瓜生などとは異なって、ヒネた視点を貫徹しているのが好ましいところです。ハイブロウなもの、理性で解釈できるものではなく、理性で解釈できないもの、おかしな方向に進んでしまっているものに視線を向ける。実に共感すべき方法論だと思います。もちろんこの「変なもの至上主義」がもたらした「サブカル至上主義」には、深刻な問題が潜んでいるとは思います。伊藤剛や東浩紀などが指摘しているように。ですが、誰かが目を向けなければ、広く知られることなく単に消えて行くだけのものもまた多いわけです。ですから唐沢のこのような試みは一定の評価を与えられてしかるべきでしょう。ま、私も変化球の人間ですので。
ルチル Vol.4 | ソニー・マガジンズ | <漫画・アンソロ> | 950円 |
山田ユギ強化中につき購入。本誌の方は今までそれほどチェックしていなかったのですが、まあ半分くらいは読めるかな、という感じです。斉藤岬、山田ユギは当然読めるとして、結構良かったのが田中鈴木、南京ぐれ子、梶原にきです。田中鈴木(人食ったPNですなあ)は、背中に羽根を持った男の子と、もと犬であると主張する男の子の心のふれあいを描いた作品。実に無邪気な「もと犬」の様子に、次第に心を開くさまがいいのですね。「もと犬」が、本当に犬なのかどうかわからないところに一筋の薄ら寒さがありますが。また南京ぐれ子の作品は、人造人間のドロップス(オコサマ形態)が可愛くていいのですね。梶原にきは線にグッと惹かれます。それ以外の作品はちょっと様式的過ぎるように思えるので「半分」としていますが。全体としてはボーイズラブの現在を知るのには十分だと思います。
パイナップルフィーリング | まんだ林檎 | 角川書店 | <漫画・単行本> | 560円 |
まんだ林檎強化中につき。15歳まで女の子として育った麗(うらら)は、ずっと女子高育ち。向かいの男子校の斎木先輩に片思いしているのだが、高校入学のときに男だということが分かり、男子校に入ることに。男子校では女の子のように可愛いと評判の麗。そして憧れの斎木先輩と一緒にいられることがわかる。だがそれってホモじゃない!?というオハナシ。15歳の男の子ですが、いつもの可愛い男の子という描写は健在です。それにもと女だというのですから。このトランスジェンダーな構図!加えて麗くんが入部するのはアマレス部(乳首露出)。きゃー、って感じじゃないすか。そして斎木先輩は実は双子で、片方は科学の先生(ロマンチスト)とデキている…。はあ、ご馳走様です。とにかくさまざまな要素が入り組んで盛りだくさんに現れて、それを結構きちんとまとめているのですね。もと女の子だから当然男の子が好きになってしまう、というシーケンスはちょっと日和ってるようにも思いますが、可愛いから良いんです。ハイテンションなボーイズラブコメがお好みのあなたに。
2000年4月6日(木)
桜色の肖像 | 天竺浪人 | コアマガジン | <漫画・単行本> | 1000円 |
93年から96年の「ホットミルク」に掲載された作品を集めたものです。小さかった頃のホットミルクですね。デビューして間もない頃の作品なので、現在と絵が違って見えますが、内容は実に切ないです。当時のホットミルクはもの凄く厳選された作品しか単行本にしませんでしたが、このレベルの作品でも単行本にしなかったのですね。堅実すぎる商売だったのですね…。
蠍の火 アルコールラムプの銀河鉄道(下) | しろみかずひさ | 三和出版 | <漫画・単行本> | 933円 |
『アルコールラムプの銀河鉄道(上)』についてはこちらをご覧下さい。3年ぶりの新作。作者しろみにとってのファム・ファタルであるところの麻理果を描いた連作です。テーマはどれも重いです。「強烈な体験(ニーチェ)」、「永遠」、「無限の距離」…。どれも人間の手には負えないものばかりですが、人間が求めずにはいられないものです。しろみはそれに果敢にも/無謀にも挑戦します。結果は…。とにかく読んでください。アクのある画面ですが、その「やりきれなさ」が強くこころを打ちます。特に『τ(タウ)』の訴求力はきわめて強力です。
多田由美短編集1 接吻/Nu-Nile | 多田由美 | 光風社出版 | <漫画・単行本> | 古書価100円 |
雨宮智子が持っている「空っぽ」さ。『バグダッド・カフェ』。『スローターハウス5』。ホワイト・アウトした風景。ロスト・ジェネレーション/ニューロストジェネレーション/ジェネレーションXに見ることができる「アメリカの空虚さ」は、現在の日本の空虚と関連を持っているに違いありません。
冷蔵庫の中はからっぽ | 山田靫 | 集英社 | <漫画・単行本> | 古書価300円 |
感想はまたあとで。
ホットミルク 5月号 | コアマガジン | <漫画・雑誌> | 838円 |
漫画作品自体もかなりテンションが上がっていますね。巻頭は天竺浪人のカラー。途中で終わっちゃってますが、やはり説得力のある描写は良いです。驚くべき連続登場の田沼雄一郎、言葉責め(男に対する)がやらしい船堀、精神的に危険な領域に踏み込んでいるファンシー獣姦ものの瑠璃えりか、私の「地味な子ラブ」が炸裂しまくるタカハシマコなど、かなり読みがいがあります。
「ジャンキーズ」の方は、「調教コミック特集」。Bondage&Diciplineものをきっちり押さえてます。わんぱく、海野やよい、マーシーラビット、山田タヒチ…なんだ、だいたい持ってるじゃないですか。このジャンルの最高傑作は、今も昔も変わらずにしのざき嶺の『ナイトメア』だと思っているのですが、ここでは紹介されていません。絶版でしょうから仕方ないことですが。結構揃いで出ているのを見ますので、そっちに興味のある方は読んでみられたらいいんじゃないでしょうか。インタビューは砂。「下品帳」の秘密が明かされていたりと、興味深い内容です。
メディア・スタディーズ | 吉見俊也 編 | せりか書房 | <専門書> | 2500円 |
日本におけるカルチュラル・スタディーズの実践をまとめた最初の本です。むろん鶴見俊介や江藤文夫などの「プロトカルスタ」は日本に存在したわけですが、「カルスタ」という言葉を頭に冠して行われた研究をまとめた本は、これが初めてのはずです。内容は実にスリリング。注目すべきは瓜生吉則の『マンガを語ることの<現在>』という論文です。戦後の漫画評論を概観し、夏目房之介らの図像論的解釈が発生した背景を探ろうとします。現在の漫画評論のありさまを、アプリオリに語り手である「わたし」に即していると指摘している辺りには、随分肝を冷やされる思いです。
現在の漫画評論が持ちうる可能性は、瓜生が指摘しているとおり、図像論的解釈(これはイコノロジーの領域ですね…「漫符論」とでもいいましょうか)と、そこで語られているオハナシの総合的解釈/読解にあると思います。どっちが欠けても的を射た評論にはならないでしょう。その総合性に、漫画という表現(=メディア)が持つアクチュアリティがあるのだと思います。そしてもう一つ重要なことは、結論を急がないことだと思います。瓜生がアカデミックな文脈で戦後漫画論を概観し、その『アクチュアリティ/リアリティ』を見いだそうとする。それはそれでいいと思います。砂や東浩紀のやっている「直球勝負」と同じですから。ただ、結論を急がずに、感想/批評の積み重ねを丹念に行うことで見えてくる地平も存在すると思います。私はそっちでやってみようかな、と考えています。
2000年4月4日(火)
アワーズ2001 | 少年画報社 | <漫画・雑誌> | 円 |
「ヤンキンアワーズ」の増刊です。内容は実に恐るべきもの。犬上すくねをはじめとして、大石まさる、どざむらと本誌で活躍した人、伊藤伸平、西川魯介といった徳間系、そしてTAGRO、黒田硫黄といった旬の作家を揃える。ギャグもGB小野寺、小田すま、樹るう、ひぐちきみこと充実。特に黒田硫黄→TAGROの連続攻撃にはグウの音も出ない、という感じです。5月には犬上すくねの単行本2冊、夏には新雑誌創刊のニュースもあり、恐ろしいほどにテンションが高まっています。すでに俺様ちゃんとクロスレヴュに取りかかってます。あと、お願いなのですが、どなたかスポットでクロスレヴュを書いてくださいませんでしょうか。この素晴らしい雑誌を天下に知らしめたいと考えているもので。
コミックフラッパー 5月号 | メディアファクトリー | <漫画・雑誌> | 円 |
ついにカラーで登場『パラノイアストリート』、大幅ページ増『串やきP』、かなり善戦している『刀神妖緋伝』など、読み応えのある内容になってきています。編集方針が固まってきた、ということでしょうか。私にとってはごく懐かしい浅野香織『EXTREME』、濃厚なショタ風味が嬉しい新人、宇夢和実の『太陽革命』も、雑誌のカラーを上手く作り出しているように思います。一方で和田慎二やたけだみりこの「浮き」が気になるところではありますが…。この勢いを上手く維持して欲しいものだと思います。
ヒカルの碁 6 | ほったゆみ/小畑健 | 集英社 | <漫画・単行本> | 390円 |
まっすぐに未来を見つめる塔矢とヒカル。まぶしいことこの上ありません。少年の徳目をこれでもか、と詰め込む作劇方法にはうならされるばかりです。「可愛い佐為」という描写はちょっと余計なように思いますが…。
少年探偵 鹿鳴敬介 1&2 | まんだ林檎 | 徳間書店 | <漫画・単行本> | 古書価各200円 |
『ヒカ碁』の次がこれかよ、という感じですが。半ズボンの美少年探偵鹿鳴敬介くんが、美少年に関係するものを盗み続ける怪盗サド公爵を追い続けるというのが基本的なスジなのですが、オハナシが徹底的に迷走するのが素晴らしいのですな。担当の刑事は敬介くんに骨抜きにされちゃうし、毎回サド公爵の仕掛けはくだらないし、果ては敬介くんは子役として映画デビューまでしてしまうのですから。ボーイズラブ、というよりはショタ、という表現がぴったり来る作品集です。この人があちこちで描いていたお馬鹿で可愛く、畳みかけるような作品にピンと来ていたのですが、単行本を買ってみてその感覚が間違っていなかったと確信した次第です。可愛い少年は社会の宝です。
2000年4月3日(月)
恋の狩人▽ 白いガクラン2 権田原まさ子の愛 | しりあがり寿 | 新潮社 | <漫画・単行本> | 1000円 |
▽はハートマークの代用です。『白いガクラン』の2にあたる単行本で、やっぱりベネッセの「高一チャレンジ」に連載されていた作品をまとめたものです。あとは「きみとぼく」に連載された音楽ものも。内容としては、ごく初期の作品(『おらぁロココだ!』など)に見られるような展開の迷走を見せながらも、ギャグとして成立しているのが良いです。「オナラプー子」なんていうキャラクタを臆面もなく出してくるのですから侮れません。ついつい笑ってしまったことですよ。また、「帰ってきた白雪姫男」とでもいうべき『トモ研部長白雪姫男』では、ギャグをやる一方、しりあがりのライトモティフになっている「トモダチ」を考察しています。確信犯的な白雪姫男の描き方に心動かされるところです。全体的に前作より読みがいのある内容になっていると思います。
平成維新 戦う自衛隊 | 小林源文 | 日本出版社 | <漫画・単行本> | 857円 |
ずっと待っていた源文先生の新作です。ですが収録されている作品は90年代初頭のものばかり。佐藤&中村コンビが固まりはじめた頃の作品が読めたり、「オメガ」シリーズの原型となっている作品が読めたりしますが、全体的には不満が多い内容です。
私は以前のブックレヴュ『Cat Shit
One』で、源文先生の「右翼」的な側面を指摘しましたが、最近の考えではそれは間違いであったか、過剰反応であったと思っています。思えば源文先生の視点は最初から前線で戦う兵士に向いていました。もちろんポリティカルなことも描いてはいましたが、それは作品を決定的に規定するものではありませんでした。「オメガ」のシリーズは例外で、「攻性の組織(士郎正宗)」を持たずに迷走する日本政治への苛立ちが背景となっていますが、描写の中心は明らかに佐藤と中村の織りなすギャグにありました。真剣に日本の状況を憂いてはいても、ポリティカルな側面に一枚オブラートをかぶせ、画面の中で動き、生きている人物たちに視線を向ける。ここに源文先生の作劇方法と特徴があると思うのです。
この本で気にくわないのは、そのオブラートを見えなくするようなコンピレーションがなされているということです。たとえば架空戦記よろしく、国軍化した自衛隊が強力な原子力空母と衛星兵器を備え、アメリカを占領するというオハナシが収録されています。92年の末に描かれた作品で、その時点の政治状況や文化的文脈においては、このオハナシは壮大なシャレとして認識されていたはずです。ところが現在においては、同じ作品が何者かによって捏造された薄っぺらな日本ナショナリズムを煽動するように働きます。また巻頭には、自衛隊がクーデタを起こす、という作品があるのですが、これも同じように現在では何らかの意図のもとに「動員」されています。
要するに、この作品集は、源文先生がシャレを多分に含めて描いた作品を、安直な現在の風潮にあわせて「動員」しているのです。90年代の初頭の作品を、あえてここでひとつの作品集にまとめる、という行為それ自体が、背後の意図を露わにしているように思います。結果として作家の作品は曲解され、本来持っている要素は薄められてしまいます。これは、作家に対する重大な冒涜行為ではないでしょうか?あとがきや書き下ろしのウサギちゃん漫画を細かく読めば、コンピレーションの背後に含まれる「歪曲」は読めるのですが、やはり一見したかぎりではそれは見えてきません。作品そのものはかなり面白いのですが、出版社の意図が実に気にくわない作品集だと思います。
ネムキ4月号増刊 大ピンチ! | 朝日ソノラマ | <漫画・雑誌> | 524円 |
えーっと、死の危険を感じるようなピンチをテーマにしたアンソロジーです。執筆者は今市子、TONO、伊藤潤二、山田理矢、かまたきみこなどです。TONO先生が載っているのですから買わねばなりますまいて。
藤子・F・不二雄のまんが技法 | 藤子・F・不二雄 | 小学館文庫 | <漫画・文庫> | 552円 |
昔てんとう虫コミックスで出ていた、F版の「漫画のかきかた」の再販です。若干編集の手によって補われている様子。「まんがは映画に学んで完成した」というテーゼが明らかで、実に明快です。一次情報の摂取を大いに薦めているのが印象的です。「キミ、漫画とアニメしか見てないでしょ?」という作家が頻繁に見られる現在、重要な言葉なのではないでしょうか。あと印象的なのは、大長編ドラえもんを「いきあたりばったりに」描いていたと述懐しているところでしょうか。私の大好きな『あやうし!ライオン仮面』を地でいっていたのですね、やはり。『ブッチュくん』をはじめとする「リスペクトF」の作品にシンパシーを感じる人だけでなく、漫画家を目指す人にはとりあえず読んでほしい本だな、と思います。
2000年4月1日(土)
Garden | 古屋兎丸 | イースト・プレス | <漫画・単行本> | 1111円 |
2冊目の購入でサイン本です。私の行動範囲が分かってしまいますね。…この本は自分で切らなくちゃいけないじゃないですか。そこで失敗したときのために。
時事おやじ2000 | しりあがり寿 | アスペクト | <漫画・単行本> | 900円 |
以前の巻も相当ヌルヌルでしたが、この巻もヌルいです。新聞漫画のような時事的な話題の連発は、脳がクラクラするところです。はっきり言ってそんなに面白かあないですが、ダウナー系の魅力を持っていると思います。
桜玉吉のかたち | コミックビーム編集部編 | アスペクト | <漫画関係・単行本> | 1500円 |
しあわせのかたち愛蔵本 1〜3 | 桜玉吉 | アスペクト | <漫画・単行本> | 各1890円 |
怒濤の玉吉ラッシュ。スーフャミが出たてだった頃のあの頃のファミ通は今やはるか昔になっているのですね。最初の方はあまり見るものはないのですが、3巻になると玉吉が抱える狂気/躁鬱気質が炸裂しているのが素晴らしいです。「しあわせのそねみ」とか、「同棲暗黒舞踏漫画」とか。なるほど、ここに『漫玉』に至る流れがあるわけですね。『桜玉吉のかたち』は、玉吉に関係する人々(父親、姉、ちょりそ、サイバー佐藤、竹熊健太郎など)へのインタビューを通じて、桜玉吉という作家がどのような経緯をたどってきたかが描かれています。育ちの良いスマートな表現者、というペルソナが現れる一方、ヤヌスのごとき躁鬱気質を持った作家というペルソナが現れる。ただでさえ読者は正気と狂気の綱渡りを強いられるというのに、二つのペルソナの綱渡りさえ強いられる。興味深い本です。
ハネムーンサラダ 1 | 二宮ひかる | 白泉社 | <漫画・単行本> | 505円 |
あこがれだった初恋の人と、駅で偶然助けた女性とのあいだで板挟みになる実。…ひでぶ!私はのたうち回ったあげく死にました。読み返してみたのですが、もう一度死にました。ぐは。
ご破算で願いましては | 雁須磨子 | ソニー・マガジンズ | <漫画・単行本> | 660円 |
主人公は拘置所の看守。看守になったのは埋没していた青春を取り返すためといった屈折した性格。そんな男が、大家の娘・美津子(そろばん塾講師)に惚れていくが…というもの。とにかくどのキャラクタの思いもラブも、予定調和という概念をすっ飛ばして滑っていくところが素晴らしいです。はたから見りゃドラマチックなシーケンスも、どうしようもなくくだらないものだったりして、いちいちずっこけさせてくれる。気がつくと我々はカリスマ先生に手玉に取られているのですね。いやあ、怖い怖い。女性の描き方が妙になまめかしいのも面白いところです。音楽のように数を読み上げる美津子、温泉地で春を売る涼子。そしてそれと対照的なすっかすかの線と上手くないカラー。それがいいんじゃないですか。
ベルセルク 19 | 三浦健太郎 | 白泉社 | <漫画・単行本> | 505円 |
…別に私がこの作品についてとやかく言う必要はないでしょう。福住さんのページをご覧頂くのが一番か、と。
さよりなパラレル 1,2 | 竹本泉 | 角川書店 | <漫画・単行本> | 620円 |
「コミックガンマ」に載っていた作品の再販です。旧版でも持っているのですが、新しい版は表紙が素晴らしいのですね。作品毎の「言い訳漫画」も好ましいですし。次の「みるく」では泉先生を強力にフィーチャーしますよ!
ラグランスリーブ | 小野塚カホリ | 芳文社 | <漫画・単行本> | 562円 |
ボーイズラブ、っちゅうかホモエロです。「毒のある漫画を描きたい」と最初に述べていますが、どんどんスメリー系やハード系の「特殊な」(もちろん一般的な視点から、ですよ)ホモエロに向かっているのが微笑ましくもいい感じです。ヒリヒリするような欲望が非常に露わになるのですね。ニヤリと笑いつつも魂を剃刀で切り裂かれる、といった印象でしょうか。ホモエロは良いねぇ…。
Happy End of the World | うらまっく | ふゅーじょん・ぷろだくと | <漫画・単行本> | 古書価500円 |
うらまく先生の良さは、強烈なバカマンガを描くことができる一方、痛ーいオハナシも描けるところにあると思います。この作品集では『理子はよくいなくなってぼくを困らせる』『NONFIX』などがそれに当たります。特にご結婚なさってからの「痛いオハナシ」の連打が目を引くところです。山本夜羽と逆なのは何故?現代社会が抱える人間のこころの隙間を嫌というほどえぐり出すその筆は、強い説得力を持って我々に訴えかけます。
ヨネケンファースト | 米倉けんご | 司書房 | <漫画・単行本> | 古書価400円 |
「ジャンキーズ」のインタビューにあった、「おしゃれな服装を描くと嫌われる」という一節に、深く心を痛めているというわけですよ。シヴヤで原画を見たのですが、やはり感心した次第です。
ぱんつ姫 | 彩樹衛生 | オークラ出版 | <漫画・単行本> | 古書価600円 |
ていうかColorですね。この人の漫画の凄いところは、展開のこどもっぽさとでもいうのでしょうか、妙な「短絡」「跳躍」が見られるところにあると思うのですね。あるいはおもちゃで無心に遊んでいる子どもの楽しさとでもいうものが見られるところでしょうか。展開をヒネろうとか、盛り上がりを作ろうとかいった「くふう」に頓着しない姿が実に潔くも美しいと思います。
フラミンゴ 5月号 | 三和出版 | <漫画・雑誌> | 743円 |
休刊こそ決定したものの、後半年は続くとのこと。『バージェスの乙女たち』のように畳みに入っている連載もあれば、一方で海明寺裕『奴隷立國』のような新連載もあったりします。…この作品が良いのですよ。これまでのK9シリーズが行き着いてしまった果て、まさに極北が垣間見られるのですね。もちろん海明寺先生が生きておられるかぎり、そして我々の内面にK9世界が存在し続けるかぎり、K9世界は拡大を続けるわけですが、とりあえずの到達点が見られるように思うのです。凄えですよ、こいつは。また今回の駕籠は、小津+愛子というネタ。『東京物語』『秋刀魚の味』を見た人には(白山宣之『宇宙怪獣ギララ』でもよし)、腹を抱えて笑える内容になってます。ああ、私も一次情報のインプットをもっと増やさないとなあ!
ヤングキングアワーズ 5月号 | 少年画報社 | <漫画・雑誌> | 305円 |
読み切りは抜山蓋世『One more Red Nightmare』。「零式」だったかで描いていた人ですね。良くは読んでないのですが、手慣れた線の引き方、独自の構図、深みのあるオハナシと、見どころが多いように思います。ただ、もう一つくらい読み切りがあってもいいと思うのですが。別冊「2001」に回しすぎなくてもいいと思うのですが。竿尾とか滑りまくっているのですから、その分のスペースを当てても…なんて思ってしまいます。
快楽天 5月号 | ワニマガジン社 | <漫画・雑誌> | 314円 |
全然読む時間がないです。TAGRO、道満、朔、夏蜜柑、陽気婢。読み応えは強烈そうですね…。
Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:16:47 JST