次にだが、これも凄まじいものになっている。

 まずは師団だけでも大変な数になる。ドイツ軍が大戦中全期間を通じて編成した師団はおよそ400個。これだけでも相当なものだが、師団を分割して、連隊単位で運用することもできる。そうなると更に駒の数は増える。また、同じ師団でも戦争が進むとなるとパワーアップしたりパワーダウンしたりするが、それもちゃんと再現されているのである。

 また、軍隊は、師団だけで構成される訳ではない。さまざまな独立部隊もあれば、工兵隊、砲兵隊、対空部隊、対戦車部隊、山岳部隊、海兵隊、特殊部隊といった小さな編成のものも沢山ある。恐るべき事にそれら全てが1駒をなしているのだ。変わり種としては、ドイツやソ連の秘密警察や、犯罪を犯した兵が送りこまれる懲罰部隊、ドイツのV1、V2部隊といったものも再現されている。

 とにかく細かいのである。地上部隊は実に58種類に分類され、それぞれが違った能力を持つのである。それは独自のシンボルによって見分けることができるのであるが、実に58種類である。シンボルを覚えるだけでも一苦労なのだ。

 細かさの最たるものといえば、大砲1門が1駒、というものがある。それはさすがに世界最大の(口径80cm!)大砲として記録に残っているドイツ軍の「ドーラ」であるが。ここにも「第二次大戦の陸軍部隊を全てカバーする」という基本思想が生きている。

 もちろんそれはドイツ軍だけではなく、イギリス軍、フランス軍、ソ連軍、アメリカ軍、イタリア軍でも同様だ。大国に限らず、どのような小国であってもこの基本姿勢は変わらない。さすがにリヒテンシュタインやルクセンブルグ、アンドラといった本当の小国の駒はないが、それ以外の地図上の国はすべて独自の駒を持っている。1940年にソ連に併合されたラトビア、リトアニア、エストニアの駒もあるし、イランやイラクの駒もある。しかもそれらは詳細な調査にしたがって戦力が数値化されているのだ。

 恐ろしいことに、空軍や海軍でも全く同じアプローチが取られている。空軍の駒は機種とタイプによって分類されている。一般にメッサーシュミットとして知られるMe(Bf)109は、E型とG型では性能が違うし、同じG型でも前期型と後期型では性能が違う。他の機種でも同様で、スピットファイアだけでも10種類以上のバリエーションが存在する。他にも細かい特殊能力が再現されており、対戦車砲を持つ機種は戦車に対し有効な防御になるとか、対艦ミサイルを積んだ機種は艦船を攻撃する際にボーナスがつく、というルールがある。 海軍にいたっては1隻1駒である。細かいことこの上ない。

 当然、駒の数は膨大になる。現在私が所有する駒の数は実に18704個。当然ダブりもあるし、戦争後期にならないと登場しない駒もあるから、この全てが一時に地図上に並ぶことはない。だがそれにしても1万個になんなんとする駒が地図上に並ぶのだ。

 当然、遊ぶための準備も大変である。実際にやったことがないので分からないが、もしすべてを連結したキャンペーンゲームを始めるとするなら、駒の初期配置をするだけで数日、いや数週間の時を必要とするだろう。まさに常識の範囲をはるかに超越し去ったゲームなのである。

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