つれづれなるマンガ感想文2月前半

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一気に下まで行きたい



・「すべてに射矢(いや)ガール」(1) ロクニシコージ(2001、講談社)
・「週刊漫画アクション」9号(2001、双葉社)
・「影男」(1)無音拳銃 佐藤まさあき(1967、2001、道出版)
【同人誌】・「TWO STORY TOWN」 オノ・ナツメ、緑山りょう(2000)
【同人誌】・「エヴリデイズ」 らいだゆず(2000、COMITA実行委員会)
【同人誌】・「高円寺ごみ少女帯」 あびゅうきょ(2000、あびゅうきょ工房)
・「独身アパートどくだみ荘 総集編Vol.2」 福谷たかし(2001、芳文社)
・「アフタヌーン シーズン増刊 No.6」(2001、講談社)
・「東京ミュウミュウ」(1) 吉田玲子、征海未亜(2001、講談社)
・「タイムスキップ真央ちゃん」 北崎拓(2001、小学館)
・「プレイボーイ」8号(2001、集英社)
・「週刊少年チャンピオン」11号(2001、秋田書店)
・「月刊少年チャンピオン」3月号(2001、双葉社)
・「週刊漫画アクション」8号(2001、双葉社)
・「戦群」(2) 吉川英治、永井豪(2001、実業之日本社)
・「月刊ヤングマン 3月号」(2001、三和出版)
・「週刊少年チャンピオン」10号(2001、秋田書店)
・「アワーズガール」2号(2001、少年画報社)





・「すべてに射矢(いや)ガール」(1) ロクニシコージ(2001、講談社)

すべてに射矢ガール

ヤングマガジン連載。山田料詩は転校先の高校で、頭に矢が貫通している女の子・鳥井あすみと出会う。なぜ矢が刺さっているのか、痛いのかなどについてはいっさい謎。彼女はこの「矢」をコンプレックスにしていて自分から心を開こうとはしないし、クラスのみんなも矢のことに触れていいかどうかもわからないので彼女にかまうことはない。孤立しているあすみと友達になろうとする料詩は、「矢が刺さっている」という他人には理解しがたい不幸や女の子独特の心の動きにとまどったり苦労したりしながら、徐々に人間関係の距離を縮めていく。

フツーの高校生活に「矢」という不条理なものが投げ込まれて物語を転がしていくのだが、単に「何かの象徴である」というようなイヤラシイものではなく「矢」としての機能とか属性がしっかりお話にからんでくるのがイイ。たとえばあすみが顔をふると矢の先にだれかが刺さって痛がるとか、矢に光が当たった反射でどーたらこーたらとか。また、「矢」の話題に触れないようにとか心を傷つけないようにという気遣いからすれ違いが起こるとか。

「矢ネタ」にかぎらず全体的にすれ違いとか勘違いから起こる騒動とかギャグが多いのだが、勘違いのままうまく行ったりする場合もあるし(HEAD8「世界の万事に通ずる便利なことば」)、逆に何かオチがくるのかと思ったらちょっとクサい物言いでもズバリと作品テーマにしていたりと、一筋縄ではいかない展開になっている。
また小道具の使い方に気遣いが見られ、連続高校爆破魔が出てくるHEAD11「都鬼侵」や「あすみの矢に触ると幸せになれる」というウワサが広まるHEAD13「幸せ矢の占い」はほんの少しジョジョ入ってて面白い。かと思えば身近なことをネタにしたギャグなどもあり、なかなかにあなどれない作品。

フツーのラブコメを描かせてもかなりの腕前の作者だと想像するが、「頭に矢が刺さっている」ということを導入することでグッと普遍性を獲得できるとは。なんというか、コレがセンスオブワンダーだ。たとえばHEAD9「恋人ごっこ」なんて、なんとも言えない話で泣けてしまったよ。
(01.0215、滑川)



・「週刊漫画アクション」9号(2001、双葉社)

「彩子(サイコ)」 佐藤丸美は、えーこれで終わりなのかー。なんかもうちょっとお話が進展すると思っていたけどなー。短期集中連載で、またいつか再開するらしい。「ぷるるんゼミナール」 ながしま超助「オッパイファンド」 山本よし文のオッパイマンガ対決は、最近「ぷるるん」の方が勝ってるなァ。「オッパイファンド」では足首ファンドとの対決が描かれているんだけど、反撃の仕方がありきたりだった。「ぷるるんゼミナール」の方はレスリングをテーマにしているからやっぱり出てきたグレイシー一族のパロディ。中途半端にしか似てないところとか、対して調べていないっぽいところがイイしなぁ。ホントにこの2作品を読むのは「バキ」の格闘家の対決を見てるみたいだ。飛び道具による激しいラッシュで押してきた「オッパイファンド」がやや疲れを見せ、関節系の「ぷるるんゼミナール」がじんわりと盛り返していくカンジか。それと、来週から柳沢きみお登場。
(01.0214、滑川)



・「影男」(1)無音拳銃 佐藤まさあき(1967、2001、道出版)

1967年頃描かれた、殺し屋・影男を主人公にしたハードボイルド・アクション。
「無音拳銃」、「暗い怒り」、「暗殺教団」、「狼の葬列」収録。

ハードボイルドといってもガチガチに非情ではなく、影男は悪人は殺さないことを信条としているし、女にもけっこう優しい。展開も宝探しがテーマだったり、仮面を付けた忍者みたいな暗殺集団が出てきたりとマンガっぽい。「正々堂々と戦う」ことを、影男も暗殺集団もプライドにしているあたりが、今読むにあたってのこの劇画の「味」と言えるでしょう。

貸本全盛期の作品だと勘違いしていたが、本作執筆当時はすでに貸本末期の頃だったという。アシスタントが川崎三枝子、松森正、かざま鋭二、みね武、緒方恭二というからそうそうたるメンバーだ。妙に色っぽい女性キャラクターはみんな松森正が描いたものだそうだ。
「殺し屋」という設定や、冒険活劇的設定、忍者みたいなやつとの戦い、しかしそれでいて主人公のニヒルな独白が入るところ、細密な劇画的背景や貸本ブームから一般書店に流通させる新書版コミックス発行への移行など、個人的に興味がある時期の過渡期的な作品ではないかと思うが、このあたり勉強不足でぜんぜんわかりませーん。
(01.0214、滑川)



【同人誌】

・「TWO STORY TOWN」 オノ・ナツメ、緑山りょう(2000)

「巡査が困ったらESUを呼べ」と言われる、ニューヨーク市のレスキュー隊的エリート組織「ESU」を舞台に、同一キャラクターをつかってオノ・ナツメ、緑山りょうの両氏が違った物語を描く。

緑山りょうの方はとくに一人の隊員とその兄の確執というか兄弟愛を描く。オノ・ナツメの方は、以前助けたが今でも麻薬をやっている少女と隊員(とくにその中の二人)との人間関係を描いている。
どちらもシミジミとした人情モノなのだけど、ベッタリしないオシャレさがあるといった感じ。とてもイイんだが、いかんせん登場人物の見分けが少々付きにくい。一人くらいめがねをかけさせるとかしてもよさそうだと思うんだけど……。あ、でももしかしてESUってあんまり眼が悪いとなれないのかもしんないしなあ。私が少年・青年マンガ以外の絵柄になれていないだけかもしれないし。
(01.0214、滑川)



【同人誌】

・「エヴリデイズ」 らいだゆず(2000、COMITA実行委員会)

短編集。本来の意味での同人誌かどうかわからないけど、便宜上そうカテゴライズした。

何気ない日常を切り取って、それを「面白いこと」、「楽しいこと」として見せるというのが基本ライン。そのもっとも日常寄りなのが、本作では「昔の彼女からもらった財布を今の彼女に見つかってどーたらこーたら」という「TAKAHASHI」であり、日常連作という感じなのが女子高生のどうでもよさげな会話を追った「星は何でも知っている」であり、逆に設定上の非日常さ加減が激しいのは戦隊モノパロディ「菊地戦隊」、ドラクエ風RPGのパロディ「聖剣エクスカリバー」、男の子の家にメイドロボットが同居してどうこう、といった「メイド イン イガラシ」あたりではないかと思う。
ただし、どんなに設定自体が飛躍していても、出てくる登場人物の発想や会話は徹底して日常的。そのネーム運びがうまい。非日常が舞台の作品は、そのギャップをギャグにしたものが多い。

……というわけで、個人的には発射台となる設定が飛んでいる作品ほど気に入っているが、考えてみればコレは劇団出身というか芝居系のコントに近い。要するに登場するのが妖精でもロボットでも、演じているのはあくまで人間であるというところに面白さの着地点がある。「メイド イン イガラシ」なんかはほぼそのまま舞台でやっても充分ウケるんじゃないかと思う。

カンケイないが、ティアズマガジンでの本作の広告では、内容がまったくわからないんですけど。せめて短編集であるという明確な表示が欲しかった。ノーブラのロボットが登場して大怪獣と戦う長編マンガかと思ってたよ。マジで。
(01.0213、滑川)



【同人誌】

・「高円寺ごみ少女帯」 あびゅうきょ(2000、あびゅうきょ工房)

「ごみ捨て場と少女」をテーマにしたイラスト集のような感じの本。基本的に同人誌のイラスト集ってほとんど食指が動かないんだけど、この人は別。トーンワークゼロで、細密な絵柄によって不可思議な空間をつくりあげている。ちなみに下記の「どくだみ荘」は舞台が阿佐ヶ谷で、こちらは高円寺だ。何かあるのかこの辺り。
(01.0213、滑川)



・「独身アパートどくだみ荘 総集編Vol.2」 福谷たかし(2001、芳文社)

阿佐ヶ谷の「どくだみ荘」に住む自由労働者(気が向いたときだけ働く怠け者)ヨシオが、毎回美女と仲良くなれそうで結局フラれるさまを描いたマンガの総集編第2弾。

ヨシオのいきつけのスナックで働く女の子・ユミちゃんがかわいい。作者追悼の意味が強かったVol.1と違い、フツーの総集編になっている。
(01.0213、滑川)



・「アフタヌーン シーズン増刊 No.6」(2001、講談社)

この雑誌も、何号か読んだらやっと慣れてきた。青臭いことを書かないで済みそうだ。

・「Hang(ハング)」 遠藤浩輝

読みきり。「世界の果てが見たい」と言う女の子と「キャプテンフューチャー」に出てくる脳・サイモンみたいに機械の中に入っている文彦、彼らにつき合う小吉たちの道行き。

へええ。遠藤浩輝ってけっこう面白いじゃん。……ってなことを書くのはマンガ感想サイトでは相当まぬけなことだとは思うが。しょうがねえじゃないの今まで読んだことなかったんだから。このプロットで、大友克洋みたいな絵柄だったらちょっと高踏的な感じになった気もすんだよ。だけどたぶん大友克洋と、アニメ絵も通過した果ての絵柄だと思う。読みやすくてイイね。

・「みんみんミント」 士貴智志

やたらとハダカになる魔法少女のマンガ。しかも巫女コスチューム。

・「グラス・ガーデン」 うたたねひろゆき

読みきり。美少女メイドが出てくる他愛のない話。それにしても表面上職業サベツのない社会であると言われている現代日本において、なぜメイドが流行るのか。平等社会の戯れ言か。はたまた何かの暗部を暗示しているのか。……まあ西洋にもメイドプレイってあるじゃん。それの縮小再生産で、たぶん答えは出ていると思うんであまり掘り下げる気はないですな。

・「蟲師」第六話 筆の海 漆原友紀はかなり考え抜かれた幻想譚。単行本読みたいなぁ。

・「ラブやん」 田丸浩史

第2話。第1話の感想についてはここを参照してください。

どんな片思いでも成就させる愛の天使・ラブやんが、オタクでロリコン、就職浪人という三重苦を背負ったダメ人間・カズフサをなんとかしようと奮闘。今回は、カズフサの隣の家に住んでいる同い年(25歳)の幼なじみとどうにかラブラブにならないかと頑張る。

ああーっこれおもしれえなあ。次回も載るみたい。ウレシイ。

ギャグマンガがたくさん載ってるけど、今号では「スニーカーの助」 木賃ふくよしがいちばん面白かった。4コマ。

・「ババと友達」 杉原亘

冬の四季賞受賞作。「まきババ」といってとぐろをまいたうんこを町のそこらじゅうにしまくることに熱中する小学生の主人公・マル。しかし、ある日学校のボスであるカジ君の上履きにうんこがされていた。いじめられっ子のカンタが疑いをかけられるが、いろいろあって、その疑いはやがてマルに向けられる。
そしてそこには意外な真相が……。

面白い。ただし、小学生時代のマルを取り巻く子供たちの人間関係や、大人になったマルと彼がナンパした女の子たちとの悪口雑言の投げ合いを読んでいると、まぁ個人的な話だが「私には関係ないタイプの面白さ」かなぁという感想。しかしプロットは巧妙で、ネームもうまい。短編ミステリーと言ってもいいくらいの内容だと思う。

さて、本誌では本作が「オタクっぽくない」マンガの最たるもので、逆にあまりにもオタクオタクしたマンガが「グラス・ガーデン」、その次くらいが「みんみんミント」ではないかと思う。「ミント」では、ミントにしか見えないはずの妖精だか精霊だかのライムが、実はミント以外のキャラクター全員に見えており「皆フツーに受け入れてくれた」ことがギャグオチになっている。ほとんどいじめをテーマとしていたといってよい「ババと友達」と、そのスタイルとともに人間関係が両極端であるところが面白いと思った。

(01.0212、滑川)



・「東京ミュウミュウ」(1) 吉田玲子、征海未亜(2001、講談社)

なかよし連載。12歳の桃宮いちごは、アクシデントから絶滅動物の遺伝子を注入されてしまい、正義の味方ミュウミュウになってしまった。彼女にはエイリアンと戦う指命がある。そして同じく絶滅動物の遺伝子を注入された、4人の仲間を探すことになるが……という話。

決めゼリフが「ご奉仕するにゃん」だったり、主人公が「ネコ耳」だったり、「メイド服風の制服でカフェでバイト」していたりというあまりにあまりな設定だと聞いていたのでちょっと期待していたが、個人的にはかわいさの等級としては「普通」かなあ。
原作はアニメの脚本家だし、メカデザイナー等も付いているというので非常に「アニメノリ」な作品ではあるけれど、征海未亜という人の絵が基本的に平面的なので、なんつーかふっくらした質感(?)をかわいさの基準にしている私としては「まあまあ」ってカンジです。
「絶滅動物の能力を持つ美少女戦隊」という基本設定は嫌いじゃないんだけどね。あとタイトルの「東京」ってホントに物語に関係あるんだろうな!?

すごく集団企画的な感じなので大幅にハズれる作品にはならないと思うけど、定番をなぞりすぎて物足りなくならないことを祈る。
(01.0210、滑川)



・「タイムスキップ真央ちゃん」 北崎拓(2001、小学館)

てんとう虫コミックススペシャル。B5判。小学五年生3月号〜小学六年生2・3合併号掲載。生田真央は、担任の深町先生に憧れている小学六年生の女の子。
ある日、道で拾ったケータイの力により織田信長のいる世界へタイムスリップしてしまう。しかも森乱丸の身体の中に、魂が入ってしまったような状態で! 子供のように無邪気なところもある織田信長、深町先生にソックリな明智光秀と日々を過ごす真央。そこに元の身体の自分ソックリの女忍者・かざみが現れて、信長の命を狙おうとする。そして刻一刻とせまる本能寺の変……。本当にこの優しい心を持った明智光秀が信長を裏切るのか? 真央は元の時代へ帰れるのか? そして真央を時間移動させたケータイはいったい何物……!? というタイムスリップ・ロマン。

……面白い。実は軽い気持ちで衝動買いしたのだが、読みはじめて10ページくらいで完全に引き込まれてしまった。もし同じプロットで、少年サンデーなどでやっていたらこの面白さは半減しただろう。やはり学年誌で、おそらく連載期間も決まっている中で、どのようにお話が進んでいくかに興味があるからだ。しかも、タイムスリップモノは歴史を変えてはいけないため結末も決まっている。決められた結末に向かって、登場人物たちが何を考えどう動くのか。その興味であっという間に読んでしまう1冊。

お話自体は典型的なタイムスリップモノで、「幕末高校生」とかちょっと思い出しますが。しかし、真央が飛行機の説明をするために紙飛行機をつくって飛ばすと、信長と光秀が超巨大な紙飛行機をつくってそれに乗って飛ぼうとしたり(そこに信長の無邪気さと冒険心、光秀の信長を思いやる心などが表現されている)するところなど、なかなかにうまいと思うわけであります。
(01.0209、滑川)



・「プレイボーイ」8号(2001、集英社)

毎度のことながら、やたらマンガがいっぱい載っているんですよねこの雑誌。

・「天より高く」 宮下あきら

すっかり長寿連載となった本作。いつの間にか主人公のソラは古代にタイムスリップし、今は「古代諸国巡り編」というのをやっている。

んでコッカイ族のモーリン(当然森首相がモデル)とウマナミ(松浪健四郎がモデル。いつもコップを持ち歩いていて、気にくわないやつにその中の水をぶっかける)と、「ラグベ」というラグビーみたいなスポーツをすることになるらしいソラ。
「モーリン」がにこやかにヒドいことをするやつっぽくて、不気味なキャラクターになっている。

・「キン肉マンII世」 ゆでたまご

超人たちのビーチフラッグ大会。キン肉万太郎の対戦相手は、カナダ代表「ザ・軍艦魔鬼(マキ)」、台湾代表「バナナマン」。「ザ・軍艦魔鬼」は両手が海苔巻きになってて「ニョニョニョ〜〜ッ」とか笑う。「バナナマン」は、巨大なバナナに顔と手足がくっついたやつ。旧作「キン肉マン」も、一歩間違えれば国際問題になりかねん超人がいたもんだが、台湾バナナだから「バナナマン」はまだしも、カナダの超人が軍艦巻ってのはなんか意味があるのか!?

しかしそこはゆでたまご。そんなことには構わず、「軍艦魔鬼」の必殺技は「センセーショナル・スシペーパー」という、酢飯を敷き詰めた巨大な海苔を敵に投げつけ、巨大な巻寿司にしてしまうという技だったのだ。技のネーミングがイイ。
「バナナマン」の必殺技は「バナナピール」。なんと自分の皮をはいで地面に落とし、敵を滑らせるという技だ。
やはりゆでたまごは天才だ(もし超人募集の投稿者が考えたとしても、それを採用する根性が天才だ)。

・「禁じられた黄昏に……」 ボビンチョ浅田

読者投稿欄に載っている四コマ。「銀河漫画小説ケツオ&オカメ」という副題が付いている。第294回。
「サザエさん」のキャラクターが全員イッちゃってるという、ありがちといえばありがちな設定のマンガだが、断片的に読んでいると(第1回から追い続けているやつもそうはいまい)、その執拗なまでに長く続いていることや読むたびごとに壊れてくる展開などで、さすがにだんだんおかしな気持ちになってくる。
たとえばケツオはギャグキャラなのだが、なぜかオカメは綾波風美少女キャラで、そんな妹にケツオが抱いた近親相姦願望の描写が、ほんっとうにしつこいくらいに何週にもわたって繰り返されるのだ。

ちなみに今週は、ケツオの両親が姿を消し、いつの間にかロボットと入れ替わっていた。オカメはそれに気づいていないが、ケツオはそれを知っていて言い出せないでいる、という話。
……なんかあらすじ書いててダークな気持ちになってきた。既存のキャラクターを使ってダークすぎる世界を描いたという点において、ある意味「真夜中の弥次さん喜多さん」より先駆けた作品とは言えまいか。まあそりゃ言い過ぎだけれども。
(01.0208、滑川)



・「週刊少年チャンピオン」11号(2001、秋田書店)

・「バキ」 板垣恵介

末堂ドリアン戦。
「有利だ…………!!!」
「思い上がりじゃねェ…………」
「俺が…………有利だ!!!」
……っていう末堂のセリフがイイ。格闘マンガは、作中人物と読者の肉体感覚とのシンクロ(あるいはシンクロしたという錯覚)をいかに生み出すかがカギだと思うが。
その辺り、当然考え抜かれている。

・「しゅーまっは」 伯林

毎回ヒロイン・小林彩のおじいちゃんが「しゅーまっは」という、発明というかバイオ生物みたいのを出してくるギャグマンガらしい(「らしい」というのは今までちゃんと読んでいなかったから)。
今回はおじいちゃんが彩に妹としてより人間にちかいしゅーまっは「まは」をつくってやることにより起こる騒動。いざ読むとけっこう面白いねコレ。登場する変質者のキャラがいい。
(01.0208、滑川)



・「月刊少年チャンピオン」3月号(2001、双葉社)

ヤンキーヤンキーヤンキー、ヤンキーマンガの金字塔。それが月刊少年チャンピオン。久しぶりに購入。前号のレビューから1年近く経ってしまったが、雑誌のテイストはほとんど変わらず。

・「シルス」 歳脇将幸

連載第2回。月刊チャンピオンには「ドラゴンボール」や「ジョジョ」を曲解したような近未来アクションものが必ず定番として連載されるが、コレもその類。外見は人間そっくりだが、特殊能力を持つ生体兵器「シルス」に脅かされる人々。そしてシルスから不思議な、水を鋭利な刃物に変える力で人々を守った男・ゼロ。その戦いを描く。
新味としては、シルスは死ぬと「シルスの呪い」と呼ばれる致死率の高いウイルスを出す、ということ。それをどのように描くのかはまだわからないが「倒してもなおモンダイが残る」生体兵器というのは、マンガでは珍しいといえば珍しい。

・「花右京メイド隊」 もりしげ

褐色の肌に真っ赤な瞳、銀色の髪の毛というメイド・早苗八島が出ていた。
アニメ化決定も決定し、絶好調な感じ。

・「鬼 組」 藤井克己

わりとキレイめな絵のヤンキーマンガ。1年前に読んだときと、ほとんど感想は変わらない。ケンカにいろいろアイディアを取り入れている。今回は乱闘になったときに、廃オイルを燃やして敵の集団を分断するという戦法をとっていた。

・「ドラゴンスクリュー」 井深英記

連載第3回。ブレイクダンスのマンガ。「ダンスで勝負する」というのがけっこう面白い。今回だけ読むと、ブレイクダンスってのは現実にもダンスバトルがあるみたいな感じなんだけどどうだろう。
「ただ速いんじゃねえ とかく単調になりやすいトップロックのムーブに オリジナルのステップを組みこんで変化をつけてるんだ ただ者じゃねえ……」とか、適度に専門用語が入ってるところがイイな。「トップロック」ってのは全ての技の基本になる、ブレイキングの基本的なステップのことだそうです。

・「未来人間GO GO GO」 佐藤まさき

ギャグマンガ。ラーメン対決の話の後編。主人公側がちゃんとほんとの料理マンガっぽい、考えたラーメンを出してきたのにはかなり驚いた。面白い。

・「香取センパイ」 秋好賢一

新連載。ケンカはメチャ強いがバカで人望もない男「香取センパイ」が騒動を起こす、というヤンキーマンガなんだが、コレ面白い。香取という男のバカっぷりや、彼に振り回される男たちがギャグの前フリになっているところなど、なかなか考えられていると思いました。

・「タオの緑(グリーン)」 原案協力/田中秀道、笠原倫、神谷隆光

笠原倫が「原作」のゴルフマンガ。どんなにぶっとんだ内容かと思ったら、この回を読むかぎり「かわいい男の子がゴルフする系」の、わりと地味めのマンガだった。月刊チャンピオンは、派手なマンガと地味なマンガの落差が激しい。
(01.0207、滑川)



・「週刊漫画アクション」8号(2001、双葉社)

「レディ・フィアー」 岡田ユキオは新連載。小さい頃、性交中に女が男を殺す場面を見てから、通常のセックスには興味がなくなってしまった男が主人公。サイコサスペンスものか?「ぷるるんゼミナール」 ながしま超助は「プルァイド・2」。男とエッチにからむのが目的でレスリングを続ける菜々美。やっぱり登場、グレイシー一族がモデルの呉石先輩。で、次回に続く。「おさなづま」 森高夕次、あきやまひできは前からやってる人気作品だが、「めぐみのピアノ」映画化騒動がどんどん転がっていってだんだん面白く感じるようになってきた。同じく「キラリが捕るッ」 高橋のぼるも、毎号読むとハマる。

(01.0207、滑川)



・「戦群」(2) 吉川英治、永井豪(2001、実業之日本社)

漫画サンデー連載。吉川英治原作の伝奇小説「神州天馬侠」のマンガ化第2弾。
徳川・織田に滅ぼされた武田勝頼の息子・伊那丸は、武田家に加勢してくれる者たちを探すため、少数の家臣および「青眼入道」と呼ばれる僧・忍剣とともに旅に出るが、追っ手から逃れるために忍剣との二人旅になる。

その後、バテレンの妖術使い、甲賀忍者、野武士の美しい娘、そして女海賊まで登場して伊那丸をめぐっての大争奪戦となる。

妖術によってドクロコウモリを現出させ、それの背に乗って空を飛ぶ呂宋兵衛(るそんべえ)。それに応える忍者・木隠龍太郎
「伴天連! 空を飛ぶのはお前だけではないぞ!!
甲賀忍術 闇飛翔!!
「忍剣! 武田伊那丸殿は木隠龍太郎がいただいた!!」

んん〜、いいねえ。以下続刊。
(00.0205、滑川)



・「月刊ヤングマン 3月号」(2001、三和出版)

個人的に、波に乗ってきたという印象。

「どろろん艶靡ちゃん」 永井豪は絵馬の妖怪・絵馬濡流(エマヌレル)夫人が登場。「エマニエル夫人」のパロディであることは言うまでもないが、本作のバカバカしさの究極はバーのママに化けた絵馬濡流夫人が「エマッシャ〜〜イ」というところだろう。もはやダジャレですらなくなっている。「東洋鬼」 原麻紀夫、唯上拓「爆音THE80」 古沢優などの創刊号からの連載陣は、どれも佳境に入ってきている。今後これらが面白くなるかどうかで雑誌全体の力が決まってくると思う。
「メガパンチャー」 南方ゴング、井上いちろうもすでに連載5回目のボクシングマンガ。絵がイマイチなのと主人公がボクシングに関わっていく過程があまりに嘘臭いので様子見だったが、今回はよかった。謎めいた凄みを持つトレーナーのすごさが伝わってくる一編。
「ミツマのトリコ」 岡崎つぐおは3人の美女精霊に魂を吸い取られつつあるさえない男の話。ありきたりな展開になるのかと思ったら、なかなかどうして毎号つい読んじゃうカンジ。手練の技と言えよう。
「ハイエナの夜」 夢枕獏、松久由宇は表題「ハイエナの夜」前編。毎号巻末で、本作における目玉的作品だと思うが、シンプルでわかりやすい展開でその任を果たしていると思う。カメラマンである主人公のアシスタントがイイ女。
(00.0205、滑川)



・「週刊少年チャンピオン」10号(2001、秋田書店)

・「BM」 藤澤勇希

国産BMにやられそうになる麻綾たち。下っ端研究員の池内が、自分を犠牲にして麻綾たちを守り抜く。

池内は犬死にじゃない、という麻綾たちの慰めの言葉に対し、女の子(テレビのリポーターだったっけ)が、

「犬死にじゃない? 英雄? ナニそれ? どこの国の話よ? 犬死にじゃなきゃいいんだ? 死ぬこと自体は別にいいんだ? ねェ? いつから日本はそんな国になったのよ? あんた達絶対オカシイよ 気持ち悪いよ!」

……って言うのがよかった。人間、英雄として死にたいという気持ちも、生き延びたいという気持ちもあるはず。そのどちらにせよ、読者の思っていることをズバリと描いてくれるとスカッとします。

・「フジケン」 小沢としお

「お勉強会ふたたび」。進学ができないかも、という危機に見舞われたフジケンたちが、集まって勉強するが集中力が続かず、勉強会はいつしか飲み会に……という話。
オチがすばらしい。やはり日常ヤンキーマンガは人生に必要だ。

その他、「浦安鉄筋家族」「おまかせ! ピース電器店」などの長期連載作品が安定した強さを見せ、充実した週だった。
(02.0204、滑川)



・「アワーズガール」2号(2001、少年画報社)

創刊第2号。少女マンガに慣れていないため、気負って書いた創刊号の自分のレビューが微笑ましいぜ(気負ったわりにはレビューとしてイマイチだった)。……っていうくらい、おれとしてはこの雑誌に慣れた。慣れればマンガには、面白いかつまらないかしかない。

・「夜と星のむこう」 今市子

前号からの続き。血のつながらない姉弟のもとに、赤ん坊の頃火事で死んだはずの兄が帰ってくる。彼にはサンショウウオの化身らしい守護精霊みたいなやつがついていて、彼は人間にも変身する。

おもしろくなくはないと思うが、家族構成や散りばめた謎が複雑すぎ、月刊誌くらいならともかく発行の間隔が何ヶ月も開く本誌のような雑誌では、前の話を忘れてしまう(それをフォローするために、1ページ使って「前回までのあらすじ」みたいのが付いてはいるが)。

……「アワーズライト」ですでに(私が)作品を読んだことのある「先生のラブ時計」 おがきちか「君のためにできないこと」 犬上すくねは盤石という感じで安定感アリ。それらと比較的近しいテイストと思われる(いかにも大雑把だが「逆柱いみり」よりは近いというほどの意味で)「バースデイ・ツアー」 有元美保「ぎゅー」 小石川ふにもかわいらしくてイイ感じ。

そして私好みの作品としては、以下の2本があげられる。

・「天使のしっぽ」 篠原鳥童

前号からの続き。「しょせんロボット」と侮られるロボット犬(アイボみたいにメカメカしておらず、毛皮をかぶせて本当にリアルな犬を目指す)を懸命につくる青年の話。前号からの続き。地味だが、「戦うメイドさん!」みたいに人間とロボットの関係を問う、しかしハードSFってわけではないイイ話になるのではないかと私の期待は高まってます。

・「金魚屋古書店出納帳」 芳崎せいむ

前号からの続き。毎回、特定の古典的名作マンガをテーマにドラマを綴る話らしい。
今回は、ヒロインが密かに恋する病弱な叔父が「どうしても河童の三平が読みたい」と言うので探す話。
ヒロインと叔父の微妙な関係と、死を覚悟する叔父の心情が「河童の三平」という一見ユーモラスな、しかし水木しげるの死生観の現れた作品を通して表現される。コレはいいなあ。前号に引き続き、わたし好みです。

「白妙の雪」 佐々木久美子は白髪の少女をめぐる不思議な話、「MANI−MAX」 川原由美子は「ヒトの郵便受けから他人が何かを取っていく」という日常の謎にせまる話。ちょっとオチが拍子抜けか。「アダルトハーフ」 藤原薫は、恋人に絶対肌を見せたがらない、ミステリアスな少女の話。絵がめちゃくちゃうまいなー。幻想とも現実ともつかないお話で、ピリピリするような冷たさが漂ってくる。雑誌全体通してちょっと異色かも。

「カッパドリル」 逆柱いみりも幻想的な話だがこちらは全体的にほのぼのな感じが漂ってくる。「ライオンの首」 呪みちるは、前号も伊藤潤二のホラー短編が1本載ってたので、「ホラーを毎号1本載せる」という方針か。オチにも意外性があって恐くてけっこう面白い。

巻末カラーは「森の魔子さん」 水野純子。前からCDのジャケなどで目にしていたが、今回も「コワかわいい」ような感じのイラスト的なマンガ。毎号巻末に入るといいなあ。

(01.0202、滑川)

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