つれづれなるマンガ感想文11月後半

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一気に下まで行きたい



・「北関東ボディコン娘」 阿宮美亜(1989、東京三世社)
・「ドッキリ姉妹」 阿宮美亜(1989、辰巳出版)
・「シューティングタイガー」 原田久仁信(1988、朝日ソノラマ)
・「1995東京壊滅」つのだじろう、神鳥ひかる(1995、秋田書店)
・「月刊少年チャンピオン12月号」(1999、秋田書店)
・「DRUM拳(ドラムナックル)」 全4巻 井上敏樹、猪熊しのぶ(1994、小学館)
・「別冊週刊漫画TIMES 12月7日号」(1999、芳文社)


・「北関東ボディコン娘」 阿宮美亜(1989、東京三世社)

成年コミック。漫画スマック掲載。群馬県吾妻郡穂下村(架空の村)を舞台にした連作短編集。要するにイナカ/都会をネタにしたコメディ。
遠赤外線だのセラミックだのが都会で流行っている、という情報を聞いた村人が、たまたま仕事に疲れてやってきたアイドル歌手・世羅美久(せら・みく)をセラミックだと思いこむ。そして彼女を裸にし、興奮した男たちが勃起したので「これが遠赤外線の力だ!」と信じ込み、それから乱交に突入してオワリという「毛だらけ少女星」がバカバカしくて面白かった。 (99.1128、滑川)



・「ドッキリ姉妹」 阿宮美亜(1989、辰巳出版)

成年コミック。漫画スキャンティ、漫画エキサイト号掲載。
連作はエロ劇画家・神矢美加と、その妹結花の物語。いいかげんな姉・美加のおかげで、毎回女子高生の結花がヤラれるハメにおちいる、というのが大筋。
実在の人物がモデルらしい編集者やマンガ家が出てきて、展開も楽屋オチのような感じ。
美加は、「くりぃむチェリーの保健室」(1989、日本出版社)掲載の連作「びしょ濡れ天使」と共通のキャラクター。連作としての最終回?「愛のフィナーレ」において、「びしょ濡れ……」のヒロイン、菜摘(美加の友人)も登場している。(99.1128、滑川)



・「シューティングタイガー」 原田久仁信(1988、朝日ソノラマ)

プロレスラー・佐山聡がマットを降り、総合格闘技「シューティング」の創設に力を注ぐ姿を描く。
確か「コミックファイター」とかいう格闘技マンガ専門雑誌に連載。
マンガの全体を覆うトーンは「佐山よ、またリングに戻ってきてくれ!」っていう感じ。当時彼が29歳だったことを考えるとその若さに、自分の29歳時と比較してガクゼンとしたりするが、基本的には「プロレススーパースター列伝」的なオーソドックスな内容。
まだ、「グレイシーショック」みたいのが起きる直前で、総合格闘技に対する考えも現在とは違っている。確かシューティングって、もう佐山いないんだよね。10年って、長いよな。

単行本巻末に載っている石川賢「邪鬼王爆裂」を買い逃したことを思い出す。現在プレミアもん。マンガ図書館にもナッシング。
(99.1127、滑川)



・「1995東京壊滅」つのだじろう、神鳥ひかる(1995、秋田書店)

主人公・秋津つばさは、神鳥ひかるという男装の転校生に出会う。彼女は阪神大震災経験者で、霊能者だった。
ひかるや霊能力を持ったネコ・ミューとの出会いで、つばさは「もうすぐ東京に大地震が起こる」ことを知り、被害を最小限に食い止めようと尽力するが、結局地震は起こり……という話。
巻末には実在の霊能者の推薦文が付いている。

正直言って、震災を「天罰」とする考えにはウンザリだ。じゃあ震災で死んだ人間はみんな罪人なのか? 本作ではその辺に妙なフォローがなされている(行政の怠慢によって犠牲者が出たからこれは人災だとか、精神的に向上することによって「神に助けてもらえるかどうか」というレベルにまで達することができるとか。「向上」しても「助けてもらえるかもしれない」程度なら、「震災天罰説」は破綻してしまうと思うが)。
その辺が小市民的でオモシロクない。
では「宗教の市民社会にからめとられない部分を取り戻す」とか何とかいって、「ぜんぶ罪人でした」と言いきればスッキリするかというと、なおのこと腹が立つだろうと思う。要するに何もかも気にくわないのだ。私が。

ところで、作中キャラクターと同名の神鳥ひかるは、レディースコミック系の絵柄でキレイでみやすい。女の子もカワイイ。どういう分担か知らないが、男性も、地震で崩れ落ちる建物も、うまく描けている。

それにしてもこのテの宗教コミックは判で付いたように同じだ。3冊読めば信者以外はいいような気がする。 (99.1125、滑川)



・「月刊少年チャンピオン12月号」(1999、秋田書店)

ヤンキーヤンキーヤンキー、ヤンキーマンガの金字塔。それが月刊少年チャンピオン。

・「未来人間GO GO GO」(佐藤まさき)

高校生のところに、同じくらいの年齢のトボけた未来人がやってきて大騒動のギャグマンガ。チョット面白いけどノリが「幕張」っぽい。「モグソ」という未来人の連れてきた動物が、「身体がモグラで顔がトグロを巻いたウンコ」というのがぜんぜんかわいくない。いいんだろうか……。

・「鬼 組」(藤井克己)

男くさくない、カッコいい系のキャラがたくさん出てくるヤンキーマンガ。
途中から読んだんでよくわからないけど、敵チームである「鬼組」をタイトルにしているところは面白い。ただしケンカシーンの迫力がイマイチ。単なるドツキあいではないアイディアはあるんだけど。

・「ヤマチャン」(浜岡賢次)

トボケた小学生「ヤマチャン」を主人公としたギャグマンガ。彼はいじめられっ子だったので、父さんから「ガリ勉に見えるように」メガネを、「強さの証として」チャンピオンベルトをもらった。面白い。

・「B.A.D」(鈴木ダイ)

月チャンで、ずっと「一風変わったアクションもの」をやっている人のマンガ。
リングの上で人を殺したレスラーが、天才少女やサイボーグ青年と一緒に、パワード・スーツのようなモノを着て戦う。このパワード・スーツが、「ジョジョ」のクレイジー・ダイヤモンドにソックリなのだが。いいのか。

・「走って! RUN」(斎藤むねお)

女の子が主人公のマラソンマンガ。作者は「コロコロコミック」でポケモンのマンガもやっている。
実力派で読ませるとは思うが、きっちりしすぎているところがよくも悪くもサンデー出身(確か)のようにも思う。

・「花右京メイド隊」(もりしげ)

メイドがたくさん出てくるという、ある意味Hでないメイドマンガの最終進化形態。
絵はかわいいがどこかさむざむとしていて突き放したようにクール。

・「Rock’n爆音」(古沢優)

ブ男系ヤンキーマンガで、「鬼組」の対極。コミカルな要素が強い。なんとなく絵が山松ゆうきちに似ているような気がするがたぶん気のせいだろう。

・「トンビ」(宮崎信二)

月チャンの三大柱「ヤンキー・エロコメ・妙なバトルもの」の中の「妙なバトルもの」系。ルパン三世やキャッツ・アイっぽいドロボーマンガ。絵はムリヤリ形容するなら「冷たい感じの『フルアヘッド・ココ!』」。人間の動き・アクションなどはうまいと思う。

・「OH! 江戸婆娑羅」(冨張ケンジ)

伝奇時代アクション。婆娑羅だから時代系ヤンキー? ちょっと違うか。

・「バトルフィッシュ」(歳脇将幸)

関西系ヤンキーマンガ。タイマンの強い男とバイク乗りのコンビ。
ガッチリした男たちが出てくる、筋肉系絵柄。
絵とコマ運びは見やすい。

・「新・河原崎長一郎」(おおひなたごう)

週刊で「おやつ」をやってるおおひなたごう。今月で最終回らしいが、すごく面白いので単行本をみんなで買おう。

・「オレってピヨリタン」(高崎隆)

エロコメ。「女の子をさわっただけでイカせる」少年の話。
初期に比べるとずいぶん絵も見やすくなった。もともとエロ系の人ではないらしい。

・「知的生命体たかしくん」(ベイブリッジ・オカノ)

四コマ。けっこう面白い。週刊でも連載希望。

・「ためしたガール」(山田こうすけ)

エロコメ。ストーリーらしいストーリーはないが、女の子の止め絵がカワイイ。
グラビア的というか。エロ漫出身らしい。 (99.1124、滑川)



・「DRUM拳(ドラムナックル)」 全4巻 井上敏樹、猪熊しのぶ(1994、小学館)

少年サンデー連載。お祭り請負業「寿屋」に入社した秘村タケルは、自分も大のお祭り好きのお調子者。
しかし、彼は世界を制することのできる拳法「神意妙拳」の使い手でもあった。
神意妙拳の秘密を探る、ドクロア共和国を裏で支配する暗殺集団の長・リューマは、タケルに次々と刺客を差し向けていく……。

特撮ドラマ「鳥人戦隊ジェットマン」、「超光戦士シャンゼリオン」の脚本を手がけた井上敏樹原作のマンガ。
拳法というより超能力に近い描写、さまざまな怪人(全身がガン細胞でできている不死身の男など)、そして超古代文明のイメージがある神意妙拳の謎など、いろいろ面白いのだがやはり映像にした方がより効果をあげる作品のような気がする。
他にも「重要人物のようでぜんぜんそうでない男」や、「すぐ勝手に人の過去を想像しては悲しむ美少女」など、マンガで読むといまいちハズしているギャグが出てくるがたぶんドラマにしたらそうとう面白いんじゃないかと思う。

「井上敏樹的」な物語というのをどうこう言えるほど数は見ていないが、本作では「ジェットマン」で非常に面白かった「敵組織幹部のキャラの立ち具合」、「シャンゼリオン」で太いテーマだった「理想国家を目指す独裁者と民衆反乱」の要素が両方見られたところがポイントか。とくに後者は、わりと特撮やアニメなどに安易に使われる図式ではあるんだが、井上敏樹の場合、「独裁政治」と「民衆蜂起」、どちらにも独特の肩入れと感傷があって、典型的な全共闘な人みたいな感じでもないし、図式だけ拝借してきたという空虚な感じもしない。不思議な手触りを持っている。

最終回は、なぜタケルが「祭り屋」を自認するほどお祭り好きなのかが、神にも匹敵する最強の力を手に入れたリューマとの戦いで明らかになる。
これで笑ってしまう人もいるんだろうけど、私はこういうの認めるクチですね。

なお登場する女の子はカワイイ。無理矢理形容するなら、山口譲司の描く女の子をマイルドにしたような感じです。 (99.1119、滑川)



・「別冊週刊漫画TIMES 12月7日号」(1999、芳文社)

ある意味「ビッグコミックスピリッツ」の対極に位置している雑誌の別冊。
ドラえもんの「もしもボックス」で「コジャレのない世界」をつくったとしたら、それはこんな世界。

特捜・ワル刑事(画:緒方恭二、作:風早一人)

「刑事(デカ)もの」のベテラン緒方恭二氏の作品。「マンガだから何でもできる!」という表現を使うなら、「マンガならこんな西部警察ができる!」というようなスピリットに貫かれた作品。しかも西部警察のように集団ですらない。
一匹狼の矜持+西部警察ゴージャス版。チンピラの夢見る「こんなこといいな、できたらいいな」だ。

悪徳弁護士・禿げ鷹(画:狩谷ゆきひで、作:兜司朗)

法律をタテにとって悪事をはたらくヤツをこらしめる弁護士。私も含めてみんな法律に対する呪詛はいっぱいだ。それを逆手にとってゼニ儲けするのもまたみんなのドリーム。

ほろ酔い名言録(画:良治もんだい、作:橋本一郎)

毎回だれかの名言でドラマをシメる人情モノ。……がしかし、あまりにもストレートな展開に驚愕。ホントに「名言でシメている」だけなのだ。チャレンジ魂的な「雨が降ったら天気が悪い」の方式。

SEXデザイナー麻美(画:花田一秋、作:吉田雄亮)

「仕込みの女の子が逆ナンパ」という作戦でさびれた温泉街を盛り上げる「SEXデザイナー(プランナーみたいなものか?)」麻美。地回りのやくざと衝突するが、「金を払ったんだからやくざにもナシを付けてくれ」と依頼者から頼まれる。どうするのかと思ったら、なんと依頼者もやくざも両方潰してしまう。
フリーランスとかアウトローは、しがない庶民の憧れ。その憧れを単純に(あるいは無邪気に)描くと「寅さん」になる。だがちょっと角度を変えると「庶民→アウトロー」という図式はウソで、まさしくアウトローはアウトローになるのではなくアウトローに「生まれる」ということ、あるいは「共同体からはずれた」のではなくまったく次元の違う世界に住んでいることを思い知らされる。結果的にまさにそういうことになった話。ある意味リアルすぎる(笑)。
ゴーマンな庶民になどアウトローはかまっていられないのだ。

秘孔師▽愛夜子(画:大和正樹、作:倉田稼頭鬼)

▽はハートマークの代用。「あげちゃう! 女教師」など、おっさんが仕事をさぼって喫茶店で週刊誌読んでいるときに見る妄想のようなナニやアレを、具現化し続けてきた大和正樹の作品。
帝王ホテルのマッサージ師・愛夜子は、実は回春の秘技を持つ「秘孔師」であった。
「秘孔を突くから秘孔師」とはまさしく「腹が減ったらメシ」のごとき率直さ。
そしてまた展開も……。
関係ないがこの人の描くパンチラは独特である。形容しがたいが金井たつおやアニメ絵系エロマンガ家とは逆ベクトルで「独特」なのだ。
それとオッパイの描き方が実にテキトー。うるし原某は泣いて怒るかも。乳首にトーン貼ってあるだけ、ありがたいと思うべきなのかもしれない。
(99.1118、滑川)

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