つれづれなるマンガ感想文8月前半

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一気に下まで行きたい



・「モーニング娘。ハートドロップス」 亜都夢(2001、蒼馬社)
【同人誌】・「秋元文庫目録 カバー編、リスト編」(2001、現代むかし話愛好会)
・「月刊少年チャンピオン」9月号(2001、秋田書店)
・「アフタヌーン シーズン増刊 No.8」(2001、講談社)
・「てれコロコミック」 月刊コロコロコミック9月号増刊(2001、小学館)
・「バサラ」(1) さいふうめい、ミナミ新平(2001、講談社)
・「週刊少年チャンピオン」36号(2001、秋田書店)
・「漫画話王」 9月1日号(2001、ぶんか社)





・「モーニング娘。ハートドロップス」 亜都夢(2001、蒼馬社)

ハートドロップス

つんく4

完全書き下ろし作品。モーニング娘。のデビューからメンバーの変更、シャッフルユニットなどの変遷をマンガで追ったモノ。あのー……、私、別にモーニング娘。の熱烈なファンってわけじゃないんだけど、マンガにおける「つんく」像についてダレ〜と考える(あと娘。)などというのを書いた手前、やっぱりコンプリートしなきゃいけないとか思って読んでみた。

本作では娘。以外にもメロン記念日だとかカントリー娘だとか、他の面々も出てくるが、似てるか似てないかは実に微妙なところ。一発で本人だとわかるものもあれば、なんか似せることを最初から放棄しているとしか考えられないキャラ、似せようとして写実的になってしまったキャラなどが混在している。まあ普通のマンガでも登場人物を何人も描きわける(しかも全員年齢の近い女の子)はむずかしいから、仕方ないとは思う。
ただ、つんくは妙に似てるよな。水っぽい雰囲気が出ていると思った。

マンガの内容は、メンバーのプロフィルをマンガで簡単に解説、その後駆け足で活動を追うという感じ。ゴマキのお父さんが登山で亡くなったとか、加護のお父さんは義父だとか、保田のお母さんがカラオケの先生だとか、石川梨華は横須賀出身だとか、おそらく私の今後の人生に何のカンケイもない知識を得られた! また賢くなった!

なお、同じ出版社から似たような歌手の実録マンガが「ヤングサクセスシリーズ」として出ているらしい。小柳ゆき、椎名林檎、浜崎あゆみ、宇多田ヒカルなど。「RELEASE(リリース)」というそういうの専門のコミック誌も出ているそうである。ちょっと読んでみたいな。
(01.0815、滑川)



【同人誌】

【同人誌】・「秋元文庫目録 カバー編、リスト編」(2001、現代むかし話愛好会)

「秋元文庫」とは、73年から86年まで刊行された、ティーンズ向け読み物のレーベルである(注:マンガではない)。本書は、その秋元文庫の目録を個人で作製したものらしい。「カバー編」が表紙カバーを番号順に並べたもので、リスト編が書名、作者を表にしたもの。
ひたすらクールに目録そのものの完成を目指している本で、周辺情報や評論的な部分はほとんどないが、タイトルやカバー絵を見ているだけでも充分に懐かしい気分に浸ることができる。

ここから、思春期の悩みや性愛について語ったもの(「加藤諦三文庫」というシリーズもある)、青春小説、眉村卓などのジュブナイルSF、受験合格体験記、学園推理ものなどが出ている。
おそらく岩波少年文庫より少し上の世代向け、コバルト文庫などとターゲットの女子が重なり、ソノラマ文庫がライバル、みたいな感じだったのではないかと思う。 しかし、実はというか、73年から86年までと私の少年期と刊行時期が重なっていてなお、きちんと読んだことがない。作家ラインナップを見ても、80年代に台頭してくる作家陣より一世代前という感じで、どうにも古くさい感じが否めなかったからだと思われる。

おそらく80年代という時代を語るとき、秋元文庫は同時代的なものとして認識されないだろう。70年代の残滓という印象が強くする。しかしそれでもなお、今更ながら強く惹かれるのは現代にはないスタイルを持っているからであり、それが80年代に入ってからも実際に続いていたということは、否定できないしまた無視することはできない。

ちなみに野村義雄第1回主演映画「三等高校生」は、この文庫から刊行された赤松光夫の同名の小説を原作としている。
(01.0813、滑川)



・「月刊少年チャンピオン」9月号(2001、秋田書店)

「ヒッサツ!」伊藤清順は第5話「悪魔に追われる男」。「三島中暗黒地帯(ダーク・エリア)」に踏み込んだ日々月颯耶と鈴木玲香。セルゲイ・ポリャンスキーという「外人部隊」の一人と遭遇。「こ……これが外人……!」というセリフが笑える。「ぶかつどう」にも出てきた、三枚目キャラがここでも登場。

「ANGEL2(エンジェルのじじょう)」黒岩よしひろは、読みきり作品。天界からやってきた3人の天使が、美人三姉妹としてさえない男の子を守護することに……。
……というわけで、妖魔が現れてそれを倒すために美少女が変身して(「変幻戦忍アスカ」風)、やっつけた後に変身をとくとハダカになっちゃって……という黒岩テイスト全開の作品。
思えばジャンプにおける「読みきり作品」が読みきり作品ではなく、新連載への様子見やプロモーションのためだったことを知ったのは、彼の作品を読んでからだった。いや、それほどたくさんの「新連載への含みを持たせた」読みきりを実際に描いていたかどうかは知らないのだが、まあその……やっぱり打ち切りが多かったから。 考えてみりゃそれだけ多く編集部からチャンスを与えられていたということでもあるわけで、編集側の期待と読者のニーズがなかなかマッチしなかった80年代ジャンプの七不思議のひとつではあります。
それと自分のキャラクターに惚れ込んだり単行本化の際思い入れたっぷりの描き足しを行ったり、渡辺美奈代のファンだと公言したりするさまは、自作のコスプレをしていた桂正和以降、オタク受け全開の「バスタード!」以前の存在としてオタクマンガ家としての地位を広く世間に知らしめ云々……まあ本当にそうかどうかは知らないけど、とにかく印象に残らざるを得ない作家ですな。

今回は、ひさしぶりに見たが絵柄も多少イマっぽく変わっており、黒岩よしひろの現役っぷりを楽しめる一作。
(01.0812、滑川)



・「アフタヌーン シーズン増刊 No.8」(2001、講談社)

レビュー書くのひさしぶりです。これくらいのペースが、本当は普通なんです。

「G組のG」しんえもんは、読み慣れてきたせいかとても面白く感じられるようになってきた。
「ラブやん」田丸浩史は第4話「ナイスダネ計画」。ロリ・オタ・プーの三重苦を持つ青年・カズフサに彼女を見つけてやらねばならない愛の天使・ラブやん。今回は「マンガ家になれば社会復帰と彼女ゲットを同時にできるのでは……?」という作戦。
冒頭「妹が欲しいい−−−−−ッ!!!」と叫んだり、メイド型ロボットが欲しいと騒ぐカズフサ。やっぱりイモウトブームが来てんだよな……。んでなんとかマンガのアイディアに協力しようとラブやんが「オニーチャーン」とか言う(なんか心がこもってない)のが最高に素晴らしかったです。
「おひっこし」竹易てあしこと沙村広明は、大学生を主人公にしたラブコメ。いつもなら「キィー! おれには何にも関係ないんじゃ! 怪獣を出せ! もしくは宇宙人か忍者!」と叫ぶところだが(私が)、なぜだか読んでしまった。会話が面白いのだ。「この世のどこかに必ずあるという 回転しない寿司屋に!!」、「所持金700ペリカ」、「この売女(一度は女に言ってみたい言葉第1位(国勢調べ)」、「おめーみてーな女がアレだろ? アンケートで『好きなタイプは→自分を持ってる人』とか あーゆー薄っぺらな答え書くんだろ やっぱ」、「それのどこが悪いのよ アンタなんか好きなタイプが『ロリ少女』でしょ! 救えない男ね」

「You'll never walk alone.」玉置勉強は、アルゼンチン帰りの天才サッカー少女と、同じくサッカーをやっているがまったくさえない男子の相思相愛ラブエロ関係。
一読して感じたのは、あまりにもこの少女が都合がよすぎるんじゃないかということナンだが(男の方を好きになる理由が強く打ち出されていないというか)、作者はたぶんそれなりにリアリティがある女の子が描けて、その上で描いているんだろうなという気はする。
「ラブやん」(「妄想戦士ヤマモト」でもいいが)に出てくる「萌え」の記号が、あまりにも記号としてのみ機能して、まあこういう言い方は陳腐かもしれないんだけど現実の、あるいは現実だと思われる女の子とすごく乖離していることに危機感を持たざるを得ない(モードによって好みを切り替える、という説にもどうも信用ならん)私としては、こうした女の子の描き方が今後、新たな「かわいさ」になるのではと少しだけ思った。
というのは、本作の女の子が「南米のマチスモ(えーとなんつーかオトコ中心マッチョ主義みたいなもの)」に嫌気がさして日本に来たことになっているから。そこが、さえない男子と付き合っている理由のひとつにもなっている。
最近、少年・青年マンガに出てくる女の子の「かわいさ」ってのはどの辺に出てくるのかとか、フッと考えるので、そのヒントになるかもしれんとか思う。

「蟲師」漆原友紀は、第8話「雨がくる虹がたつ」。父親が魅せられた謎の「虹」を探して持ち帰るために、旅を続ける男。出てくる怪異のオリジナリティといい、それに夢中になったり振り回されたりする人間たちの描き方といい、実にしみじみとしたいい作品。ただ、連作短編でありながら1話から何作か読んでおかないと、ちょっとわかりにくいのではないかと思う。だから、本来の意味とは違うけど初回から読んだ方が楽しめる作品。

「おかゆさん」吉田とむは、 岡湯まいという4歳の女の子の、なんてことない日常を描く読みきりギャグマンガ。一見20年くらい前の絵柄かと思うとそうでもない、不思議な作風。けっこういい。

「II ツヴァイ」近藤有史は、 ブタロボットみたいのが学園に現れてメチャクチャになる短編ギャグマンガ。これ、いつも読むたびに「80年代ぽいマンガだなあ」と思うが(具体的には昔の後藤寿庵とか永野のりことか)、今回のラストはちょっと好き。

・「毒々姫」番次郎士は、四季賞受賞作。江戸時代、立派な侍になることを目指す少年が謎の美少女と知り合って、そこからハチャメチャな巨大怪物の戦闘シーンへ。なんかスゴイね。似たような感じとしては「鉄甲機ミカズキ」よりもイイと思う。ヘンな比較だけど。

・「ふにゃふにゃ」さかもと未明は、搭乗する白川道(実在の作家)がカッコいいです。
(01.0811、滑川)



・「てれコロコミック」 月刊コロコロコミック9月号増刊(2001、小学館)

「てれびくんとコロコロコミックが合体した夏休み増刊」ということで、ほとんどが特撮かゲームのコミカライズ作品。小学校低学年向けのため、さすがにそれぞれのお話は単純で他愛ないものが多いが、コロコロの常連作家が多いのでそれなりに楽しめる。

「仮面ライダーアギト」坂井孝行「G3−XVS機動装備G2」。G3−XのプロトタイプであるG2をアンノウンが動かし、危機に陥るアギトとG3−X。アクションは素晴らしいがラストがちょっと尻切れ。
「ウルトラマンコスモス」かとうひろし「プロローグ ファーストコンタクト前夜」。コスモスとバルタン星人が、見知らぬ星で一戦交えていたというオリジナルストーリー。単純な話だが、個人的に「どこかの知らない宇宙人を守っていたウルトラマン」という設定はなんか燃える。
「爆転龍HAYATE」おおせよしおはベイブレードのマンガ。「弱虫な主人公が意地悪なライバルとベイブレード対決」という設定自体は、もはやコロコロにおける伝統芸。主人公・ユウキのベイブレードには「正義の爆転龍」というメカドラゴンみたいなやつが宿っており、「悪の爆転龍」と戦うのだが、もともと爆転龍ってのは世界を支配していたらしい。むやみにデカい話。
「ゴレンジャーVSガオレンジャー」石ノ森章太郎、犬木栄治。戦隊シリーズ25周年記念スペシャルマンガ。犬木栄治はコロコロで「ビックリマン2001」などを描いている人。「パワーアップするために黒十字の魂を呼び出した」オルグを倒すため、ゴレンジャーとガオレンジャーが協力して戦う。なんかみんなものすごく筋肉ムキムキ。
「バリアライド2020」河野成寛、つくじ大三、メカニックデザイン/原田吉朗は、近未来を舞台に、ロボットに変形するバイク・バリアライドに搭乗した警察官の活躍を描く。たぶんオリジナル。
「仮面ライダークウガ」石ノ森章太郎、上山道郎は、エクストラエピソード「信頼」。友達に裏切られたのではないかと悩む少年に、五代が一条との信頼関係を見せることで信じることの大切さを教える。顔もけっこう似せて描いていて、ドラマの魅力をよくとらえて描いていると思った。ライダーキックもキマっててカッコええです。
(01.0808、滑川)



・「バサラ」(1) さいふうめい、ミナミ新平(2001、講談社)

ヤングマガジンアッパーズ連載。原作者は少年マガジンで「哲也」をやっている人。
終戦後、中国で戦犯として処刑されそうになった日本人の男・バサラは、直前で裏社会のボスに救われる。だがそれは、他の3人の戦犯とともに、命を賭けた麻雀をやるためだった。

他の3人は無骨系のゴーマン男、手先の器用なズル賢いヤツ、エリート意識丸出しの冷血漢。負ければ即座に殺されてしまう。だんだんと本性を現していくうちに、なんかバケモノみたいに顔が変貌していくところがスゴイ。ひたすらに勢いのある麻雀マンガ。
(01.0808、滑川)



・「週刊少年チャンピオン」36号(2001、秋田書店)

「虹色ラーメン」馬場民雄はラーメン勝負決着。すごくサワヤカ〜な終わり方。この作者のマンガってはじめてじっくり読んだけど、このサワヤカっぷりはすばらしい。
「ななか6/17」八神健は、「手が早い」と評判の男子に惚れられるななか。いやあ少女マンガですねえ。すばらしい。それでいてちゃんとヤロウ向けでもある。という名人芸。
「CARNIVAL」海老根一樹は短期集中連載の第1回。「スケボーで空を飛ぶ」ことを夢見る不良っぽい少年と、大金持ちのお嬢様が出会う。荒削りで勢いがあって、なんかイイです。
「エイケン」松山せいじは、エイケン部がガマン大会を開いてそこにヒロインが参加して汗びっしょりで体操服が透けてイヤ〜ンという展開。汗の描写がなんかヘンなところがいい。
(01.0803、滑川)



・「漫画話王」 9月1日号(2001、ぶんか社)

なんつーかいわゆるオヤジ系マンガ雑誌。ギャンブル情報やゴシップ記事など満載。「叶美香ゴージャス情報」っていう囲み記事があって、あくまで叶美香を応援していて叶恭子に冷淡なところが素晴らしい。
巻末にはアイドルの森本さやか(「ゲームWAVE」などに出ている子)の水着グラビアが載っているが、さわやか系なので誌面全体から浮いていた。
「人情性戯指南 『あなかしこ』」成田アキラは、十数年前に作者の知り合いだった「どこでも脱いでしまう」女子大生の話を回想風に。その女子大生がイタズラで作者の今は亡き父親のアパートに行って、全裸になって二人でお風呂に入るところなど、笑える話なんだけどどこかしんみりしますね。
「アジアン人妻パチンコ売春 龍姐(ロンシェ)−東洋的女豹−」仁科ゆりえ、伊賀和洋
「セックス賭博」勝負の続編。もう第6話で途中から読んだんだけど、別に性闘技マンガというわけではなく、たまたまそういう話になっただけらしい。そういった意味も含めてやっぱり小池一夫チックですな。
(01.0803、滑川)

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