つれづれなるマンガ感想文7月後半

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「つれづれなるマンガ感想文」8月前半
一気に下まで行きたい



・「リイドコミック爆」9月号(2001、リイド社)
・「獣道」 影丸丈也(2001、実業之日本社)
・「劇画マルクス」 滝沢解、伊藤みきお、芳谷圭児(1981、エンタプライズ)
・「アワーズライト」9月号(2001、少年画報社)
・「プレイコミック」15号(2001、秋田書店)
・「漫画話王」8月1日号(2001、ぶんか社)
・「週刊少年チャンピオン」35号(2001、秋田書店)
・「ダビデにお願い!」 結城モイラ、高瀬直子(1990、小学館)
・「初恋まだですか」 佐藤滋子、中原千束、監修/堀口雅子(1990、小学館)
・「みーこメタモルフォセス」 たかはしちこ(1987、徳間書店)
・「地上最強の男 竜」 風忍(2001、双葉社)
・「スーパーロボットマガジン」Vol.1 (2001、双葉社)
・「妄想戦士ヤマモト」(1) 小野寺浩二(2001、少年画報社)
・「マンガ心理学入門シリーズ1 やる気学」小倉康仁、平松修(1987、力富書房)
・「月刊少年チャンピオン」8月号(2001、秋田書店)
・「大日本天狗党絵詞」全4巻 黒田硫黄(1995〜97、講談社)





・「リイドコミック爆」9月号(2001、リイド社)

「ジャスティ」岡崎つぐおが新連載。確か、80年代に月刊少年サンデーで連載されていた超能力アクションものが復活。

「恋してカレン」水無月潤は読みきり。「飼い猫がネコ耳を付けた裸の美少女に変身して……」というベタベタな展開ながら、何とも言えないオチが付いた。

「パート退魔(タイマー) 麗」矢野健太郎は新展開。力の強そうな淫魔・アナクロスが復活する。古来より生きる魔物が時代の変化に狼狽するというパターンはよくあるが、本作は独特な感じでけっこう面白い(どう独特かはネタバレなので書かない)。美少女の新キャラも登場。
(01.0731、滑川)



・「獣道」 影丸丈也(2001、実業之日本社)

週刊漫画サンデー連載。赤ん坊の頃、旅客機の墜落事故で九死に一生を得たタケルは、山林で修行する山伏に拾われ、「獣道」と呼ばれる格闘技を身につける。成長した彼は自分の力を試すために、法師様の反対を押しきって山を下りるが……。

「獣道(じゅうどう)」だから柔道だと思ったら、打撃系の格闘技だった。作者が「空手バカ一代」の作画者であるせいか、名前が登場するのもすべてK−1をはじめとするカラテ系の格闘技団体ばかりだったりする。普通このテの作品は、ハデな悪人との対決や伝奇色の濃い戦い、あるいは華々しい試合に出場することになるのが常道だが、最後まで大阪あたりをウロウロしてストリートファイトをしているうちに終わってしまう。
アクションシーンはさすがに上手だが、どういうわけかちゃんとしたファイトのシーンが少なく、試合らしい試合は2つしかない。なんでだ。
(01.0731、滑川)



・「劇画マルクス」 シナリオ/滝沢解、伊藤みきお、構成・作画/芳谷圭児(1981、エンタプライズ)

カール・マルクスの伝記劇画。最愛の妻を亡くして気落ちする年老いたマルクスを励ますエンゲルス。思いはいつの日か若い頃に……というところから始まるマルクスの生涯。
ノンポリの私からすると、まぁ普通の伝記劇画です。マルクスの姉がゾフィーって名前だとか、そんなことはどうでもいいしね。マルクスが大恋愛の末に結婚した年上の貴族の娘イェニーと最後まで純愛を貫いたというストーリーなんだが、本編には触れられてないけどマルクスが使用人の女性ヘレーネとの間に一児をもうけ、それをエンゲルスが認知した、なんちゅー話も(年表に)載っている。
このヘレーネ、「おもな登場人物」のところでは「マルクス家の女中だったが、一家を支配した」と説明されている。なんかコワイ。

本作はもともと実業之日本社から出ていたらしいが、いつの発行かは表記なし。こういう作品こそ、発行年代が大事なんだけどね……。
(01.0728、滑川)



・「アワーズライト」9月号(2001、少年画報社)

「みちづれ」宮尾岳は読みきり。20年前に自殺して霊となった少女の身元を探す、さえない中年サラリーマン。ええ話。
「セイ!−Say−」才谷ウメタロウは、女の子を密かに守ろうとしている飼い猫・セイの物語。これもええ話。
「純粋! デート倶楽部」石田敦子は、先月「女の子が好きな女の子」桃子が登場してから、なんかまったく物語の構造そのものが変貌してしまったかのような印象を受けるんですけど(^^;)。「あえてズバリと物を申さない」というのが本作の特徴だったと思うのだが(だからこそロールプレイの「デート倶楽部」という形式が生きていた)、そのあたりの機微がまったくなくなってしまった。
「紺碧の國」水原賢治は、あいかわらずイイ味出している。オトナならどうでもいい部分にいちいちひっかかっては悩んだり傷ついたりする少年たち。この作品は、おそらく展開自体が突然変わったりすることはないだろう。そして、このままでいい。
「妄想戦士ヤマモト」小野寺浩二は「熱闘! 妄想選手権」(前編)。こりゃすごい。大傑作(笑)。別作品の妄想キャラクター「番長」と「ヤス」も登場する天下一武道会的内容を短いページでうまくやっている。目立たないめがね君の松下大活躍。スバラシイ。

……なんか「妄想」が本誌の重要なテーマになってないですか? ときどき載るあびゅうきょとかも含めて。いやそれがいいんだけど。
(01.0727、滑川)



・「プレイコミック」15号(2001、秋田書店)

みね武、桜井フミヒロ、如月次郎、堂上まさ志、土光てつみ、ケン月影、芳井一味、大地翔、白虎丸、あきやま耕輝、二宮博彦、名胡桃ゆう、佐多みさき、スリッパ大石、みやたけしなど。

「悪太郎」結城真吾、みね武は、創刊33周年記念の月イチ新連載。昭和40年代、主人公の少年・芥鱗太郎が「悪太郎」と呼ばれるような大物の「悪」に成長していく劇画らしい。
「紅姉妹」団鬼六、如月次郎は、団鬼六のSM小説「肉体の賭け」の劇画化。
(01.0727、滑川)



・「漫画話王」8月1日号(2001、ぶんか社)

なんつーかいわゆるオヤジ系マンガ雑誌で、テーマは不倫、フーゾク、ギャンブル、バイオレンス。積ん読していたら読むのが遅れてしまったが、次号は7月31日発売。
なぜかレースクイーンのパンチラが袋とじで、ヘアヌードは普通に載っていた。大地翔、武下純也、成田アキラ、伊賀和洋、はしもと真一、月屋京子、山松ゆうきち、ももなり高、ともだ秀和、松山三津夫、はまのらま、仙菜椿、間宮聖士など。

「アジア人妻パチンコ売春 龍姐」仁科ゆりえ、伊賀和洋。タイトルもスゴイが出てくる「セックス賭博」というのがすごい。交合する男女の頭に電極とか付けて、どっちが先にイクかを賭ける。実に小池一夫チックでいいですな。
「銀の蝶」間宮聖士は、幻のパチプロ・銀の蝶が八卦の辰と対決する話らしい。
(01.0727、滑川)



・「週刊少年チャンピオン」35号(2001、秋田書店)

あいかわらずいろんな見所満載だー。「チャンピオンカップ」(読者のお便りコーナーみたいなやつ)、妙に面白いし……。ネタセレクトもタクネタになっちゃってますね。「エイケン」作者の巻末コメントとか。基本的にチャンピオンの巻末コメントっていつも楽しみなんだけどね。

「虹色ラーメン」馬場民雄は主人公とライバルとのラーメン勝負。なんともいえない「クラブ活動」な雰囲気と(実際「ラーメン部」の活動なんですけど)、ライバルの少年の子分みたいなちっちゃいめがねっ娘。それと本誌の表紙が本作なのだが「メイド帽かぶって水着」とかが「見所」かな。この人の描く女の子は動きがカワイイですね。
「樹海少年ZOO1(ずーいち)」ピエール瀧、漫$画太郎は、このまま突っ走るしかないね。一般読者がついてけるかどうかは別として。スゴク爽快感がある(やってることはキチャナイけどね。吐いたりとか)。
「バキ」板垣恵介は、……まあおれとしてはやっとこの作品の呪縛から逃れられたというか、つまらなくはないんだけどもういいや、というインフレ感覚。余談だがネットを漠然と見ていると妙にアニメ「バキ」を見ている人が多いんで驚いた。いくら最大トーナメント編突入とはいえ……。
「エイケン」松山せいじは、エイケン部の合宿でバーベキューやってどーたらこーたらという、当然のようにチャラけた展開なのはいい。しかしトビラの女の子、普通上半身がコッチなら下半身はこんな曲がり方しないだろ。それだけは言いたい。
「ななか6/17」八神健は、ななかの初恋。転校生を好きになっちゃうという定番なのだが、「霧里さんとはどういうカンケイ?」なんて聞くキャラクター、ひさしぶりに見たよ。まあそれがいいんだけどね。それと、本作は「その他おおぜい」の女の子たちがすごく残酷でリアル。
「生命のダイアリー」取材・原作:達山一歩、漫画:小山田いくは最終回。本作に関して、お涙ちょうだいであるとかきれいごとだけ描いているとかいっていやがる人はいるかもしれないけど、おれは好きだった。主人公の苦しみや努力や、周囲の理解や無理解が伝わってきた。何より、弱者を主人公にする少年マンガって最近ないから。弱者の努力や、一見かなわない努力、成果の小さい努力について描いていたから。バランス的にたまにはこういうのもなければいけない。
「しゅーまっは」伯林は、メイド型しゅーまっは登場。
「KUROKO−黒衣−」高橋葉介も今週で最終回。「寂しいけれど、寂しくない」という高橋葉介らしい(?)結末だった。
(01.0726、滑川)



・「ダビデにお願い!」 結城モイラ、高瀬直子(1990、小学館)

「思春期の女の子の心とからだのなやみ」についての解決策をマンガにした「ドリーミーライフシリーズ」の5作目。「ドキドキおまじないコミック」とサブタイトルにあるように、おまじないのマンガ。

奈良ひとみぷっぷというあだ名の元気な小学生四年生の女の子(「お奈良(なら)ぷっぷ」からそう言われてるらしい)。おばさんのモイちゃん(たぶん占い師の結城モイラのことであろう)はうらないやおまじないの先生なので、ときどきいろいろなおまじないを教わっている。
お父さんがいなくて、お母さんは働いているので寂しいときもあるけど、活発に生きるぷっぷの日常をおまじないを交えて描いた少女マンガ。

読む前は「どうやっておまじないをお話にからめるのか?」と思っていたが、なんちゅーか普通の女の子の生活の中におまじないが入ってるってだけで、おまじないそのものが物語を動かしてしまうような神秘性は皆無。
逆にすごく元気な女の子・ぷっぷを主人公にしたことで、物語が立ってきていると思いましたね。なかよしの澄香ちゃんと同じ男の子を好きになっちゃったり、「笑ったことがない」という女の子を笑わせてあげようとしたり、新聞部の先輩との恋話があったりという、むしろヒロインの行動的な側面がきわだつマンガです。絵柄としては90年当時でも古かったかもしれないけど、私としては何の問題もありません。キャラ立ち具合がイイです。なお、「ダビデ」という特定の何かが出てくるワケではないです。

巻末に載っている結城モイラの短編小説「あの彼にアイ・ショック!」は、さすがにおまじない自身が主役的な印象を受けるけどね。
(01.0726、滑川)



・「初恋まだですか」 佐藤滋子、中原千束、監修/堀口雅子(1990、小学館)

「思春期の女の子の心とからだのなやみ」についての解決策をマンガにした「ドリーミーライフシリーズ」の1冊。初恋の妖精・ピピが案内役となってオムニバスで繰り広げられる女の子の初恋物語。

内容的には「親友の好きな子を好きになった」などのこころのなやみと、あと月経についての解説など。……デリケートな内容だけにヘタなツッコミはできません(汗)。またその必要もないのだが。
巻末に付いているQ&Aで「わたしは胸が大きいからブラジャーをしたいのですが」というQに対し、「きゅうくつでいやだと思う人は、ブラジャーをしなくてもかまいません」という答えはアリなのか。いや、読者対象が小学校5、6年だから、別にそのトシにブラジャーをしなくてもいいということなのかもしれんが。余計なこと言いました。すいません。
(01.0725、滑川)



・「みーこメタモルフォセス」 たかはしちこ(1987、徳間書店)

老舗同人誌「漫画の手帖」などに連載していたみーこのシリーズを、商業誌用に書き下ろしたもの。だということが判明。 以前、コミティアで「新・ミーコメタモルフォセス」(1)(2)(アップルBOXクリエート)というタイトルで同人誌として復刻したものを購入した。そのときはそのときで感想文を書いた(我ながらこの感想文もヒドイ。もっと簡潔に書けなかったものか)。同じ作品でも違ったかたちで読むとまた感想も変わる。繰り返しになる部分もあるが、今回読んだ感想を書いておきたい。

片岡美江子(ミーコ)は15歳の女の子。お隣の「おにいちゃん」、大学生の海野良太に家庭教師をしてもらっているが、良太のことを異性として意識している。そんなミーコに妖魔が宿り、ある日「ネコ耳ネコしっぽ」が付いてしまう。突然のことにミーコは悲しむが、安心させてやろうとなぐさめる良太となりゆきで結婚することに。大好きだった「おにいちゃん」と結婚できるので、とりあえずネコ耳のことは忘れてはしゃぎまくるミーコ。
だが妖魔退治の専門家、「阿部一族」の攻撃にさらされ、幼い頃役の小角から修行を受けて超能力のようなものが使える良太は、彼らを迎え撃つのだった。

……というのがおおかたのあらすじ。以前感想を書いたときには「80年代的アイテムの集大成」だと感じたと記したが、現在読むと構成自体はむしろ特異な感じがする。
まずラブコメにありがちな「慣れぬ男女のさぐり合い」とか「もうちょっとで結ばれるというところで邪魔が入る」といった「お約束」がほとんどない。ミーコと良太はいきなり結婚してしまうし、両親も納得ずくだ。良太は「16歳になるまで肉体関係を結ばない」と誓いを立てるが、描写としてはほとんどまともな結合に近い。
もうひとつは、ミーコと良太のラブコメ的描写と、ミーコの命を狙う「阿部一族」VS良太のバトル部分が乖離していること。少女マンガが途中から忍者ものになったような印象を受ける。
おそらく同人誌での長期連載だからだと思うが、ミーコにネコ耳、ネコしっぽが付いた理由が謎かつちゅうぶらりんのままお話が進む。典型的なシチュエーションコメディだったら、こういう引っ張り方はしないはずだ。

だから、アイテム的には80年代的と言えるのだけれど、その構成にはパターンを意識しないもっとオリジナルな部分があるのではないかと今回思った。絵柄がいわゆるアニメ絵ではなくて、横山光輝や吾妻ひでおなどの80年代前半以前からいる作家の影響を受けている(と思われる)ことにも注目したい。どことなく「オトナの余裕」が感じられる作品だと、2度目に読んで思いました。
(01.0725、滑川)



・「地上最強の男 竜」 風忍(2001、双葉社)

70年代頃、少年マガジン連載。カラテの達人・雷音竜は、寸止めの空手大会で対戦相手を撲殺してしまう。このため力を封じる仮面を被せられ、妹ともに地下に隠れ住むことになる竜。しかし、自分の殺した対戦相手の恋人が、自分のカラテの師匠とともに復讐にやってきた。竜はやむをえず迎え撃つが、この戦いには背後に人類の命運を決するほどのすさまじい意味が込められていた……。

数年前に復刻されていたやつを持っているのだが、ダンボールに入ったままどこ行ったかわからなくなってしまったので再購入。
この作品については……実はあまり書くことがない。「凄まじいイメージの奔流」であるとか「カンフー映画を下敷きに精神世界を描いた作品」であるとか、「昔のマガジンってこんなの載ってたんだあ……」とか、「デビルマン」や「聖マッスル」と共通テーマである戦士の自己探索についてであるとか、……なんかいまさら書いてもしょうがないような気がする。
さらにもともとはギャグマンガだったらしいことや、おそらく80年代までのダイナミックプロの中では極端に異質な、メタリックなんだけどどこか暖かみのある風忍の絵柄についてもきちんと調べてないんでコメントのしようがないし。「ブルース・リーが出て来るんだよねー」とか「地球が割れちゃうんだよねー」とか書いても、もはや有名すぎて情報伝達の意味がないだろう。「ぶっとびマンガ」にカテゴライズされるべき内容なのだが、そのわりにはものすごくカルトってわけでも、逆にメジャーってわけでもない微妙な位置につけている作品だと思う。あ、読んでない人は読むべし、な作品ではあると思います(なんか感想としてはお茶を濁したな)。
(01.0724、滑川)



・「スーパーロボットマガジン」Vol.1 (2001、双葉社)

ゲームの「スーパーロボット大戦」や、マジンガーのOVA、フィギュアなどがらみのスーパーロボットモノのコミック専門誌。
「ロボット&美少女傑作選 レモン・ピープル1982-1986」(2001、久保書店)の感想にも書いたけど、メジャーマンガ誌では「巨大ロボモノはダメ」とずっと言われてたようだ。佐藤健志のガンダムについての評論でも「そもそも巨大ロボもので人間ドラマは描きにくい」と断言されてたし、唯一メジャー週刊誌でやってた黒岩よしひろの巨大ロボもの「バリオン」も10回でうち切られちゃう始末。
とにかくそういうことらしいのだが、「巨大ロボのマンガを読みたい!」という需要に応えてくれる雑誌が出てうれしい。何と言われようと、読みたいったら読みたいんだよ少なくとも私は。これはメディアミックスのイイ面じゃないでしょうか。いまさらオリジナルで巨大ロボマンガというと、素人考えでもさすがにキツいと思うので(ダイナミック系は除く)。

「ゲッターロボアーク」永井豪、石川賢は、とんでもない宇宙の彼方へ読者を運び去った「真・ゲッター」の続編。本誌の目玉連載作品。「アーク」の造形がまたスゴイよ。

「超電磁大戦ビクトリーファイブ」長谷川裕一は、コン・バトラー、ボルテス、闘将ダイモスの世界で再び起こる戦いを描く。連載。
「鋼の救世主」富士原昌幸はスーパーロボット大戦α外伝コミック。これも連載。
「マジンガーZアンソロジー」は豪華4本立。坂井孝行、川石哲哉&ダイナミックプロ、伊藤伸平、藤井昌浩がそれぞれテーマに絞ったマジンガー関連の短編を描いている。
「完全ロボ組ゴールド8」小林真文はギャグ4コマ。
「いい旅ロボ気分」はぬま あんは、「日本のロボ仕事探訪」とサブタイトルの付いたレポートマンガ。今回はタカラのロボットおもちゃ「DREAM FORCE」について。今CMで、三浦友和がチューハイを入れさせているあのロボットですね。4ページの短編ながら、さすがロボットにアツい作者、マンガの内容も熱いです。
「われはロボットにあらず」星野力は人工知能・人工生命の専門家によるエッセイ。第1回のサブタイトルが「アトム症候群が日本のロボットを駄目にする」。現在、鉄腕アトムに影響を受けたロボット研究者が「アトムのような」自律型のロボット開発にばかり目を向け、ガンダムのような操縦型ロボットにいまいち意識が向けられていないことに苦言を呈する。真偽のほどは知らないが、雑誌の性質として実に正しい内容。確かに、災害救助や事故処理のためのロボットに可能性があるならもっと見てみたい。

次号は9月発売で、「ダイターン3特集」だそうだ。イイねえ。
(01.0722、滑川)



・「妄想戦士ヤマモト」(1) 小野寺浩二(2001、少年画報社)

アワーズライトなどに連載。ちょっと危ないオタク系妄想を抱いて暴走する少年・ヤマモトを描いたギャグマンガ。

マンガというのは「マンガ」という大きなくくりだけでは、「SF」とか「ミステリ」とかのくくりほどには過去からの流れを意識しない(ように思える。とくに少年・青年マンガ)。表現上の進化があるにはあるが、よほど注意してみないと気づかなかったりするし。逆に同じテーマをえんえんと繰り返したり、突然ブームが来たりいつの間にか去ったりというのも、その都度の読者の好みの反映があまりに大きく、「流れ」を掴んでいるマニアの影響はあまり受けないもののように思える。
ところが、マンガにおいてかなり目に見えるかたちで、おそらく送り手も受け手もきちんと意識にのぼらせていないのに進化(あるいは変化)が見られる部分がある。それがフェチ的アイテムとその扱われ方である。

本作は「オタク的妄想を恥ずかしげもなく開陳する」ことがギャグとなっているが、これは読者に了解されなければ成り立たない。たとえば第1話「仔猫ファンタジー」で、ヤマモトが仔猫を助けるのは「美少女になって恩返しに来てくれるから」である。このギャグは、ヤマモトが「つるの恩返し」を現実とゴッチャにしているという超歴史的なモノとしても成り立つが、描かれた美少女がネコ耳だったりエプロンドレスを着ていたりすることにある種の必然性を感じない読者はいないだろう。もちろん、似たようなギャグは20年前にも通用したが、現在では「ネコ耳」であったり「エプロンドレス」であったりといったアイテムが加わっている。
他にも第7話「レンズごしに光る瞳」では「めがねっ娘フェチ」について描かれている。ここでは「めがねっ娘教団」というのが登場してくるが、少女マンガにおいて単に「普通よりは少し目立たない子」の記号でしかなかった「めがねをかけた子」が、繰り返し描かれることで「めがねをかけた子を極端に愛でる」集団の登場というふうに描かれ方が加速している。

どうもエロ妄想というかフェチ的なアレというのは、アニメやマンガに定着すると描写が加速化する傾向にあるらしい。それが単に使い捨てられるモノなのか、何か別種のモノを生み出すのか、ふと考えてみたくなる作品です。
(01.0722、滑川)



・「マンガ心理学入門シリーズ1 やる気学」小倉康仁、平松修(1987、力富書房)

監修・南博(一橋大学名誉教授)。小倉康仁が心理学の専門家で、平松修がマンガ家。要するに「マンガで心理学をわかりやすく解説」というたぐいの本。

小学生の息子を持つ3人の主婦が、それぞれの子供に勉強のやる気を出させようと苦心するストーリーに、「やる気とは何か」という心理学の解説が入る。
こういう企画は本当にむずかしいと思う。実際、わかりやすさに走るあまり、解説が不足している印象。それと「やる気を出させる」という実用書という意味でも、食い足りなさを感じた。でも、「失敗の原因を努力に求める人間は無気力にならないが、能力に求める人間は無気力になる」ってとこにはちょっとなるほどと思いましたよ。
結果的に「3人の若いママが生兵法で子供を振り回す」という、すでにママ側の年齢になっている私からするとちょっとイタイ内容になっていた。ただしドラマとしてのまとまりは一貫している。

この本を読んで感じるのは、10年以上前の心理学とマンガに対する実用としての期待だ。どちらにも、現在これほどまでに楽観的な期待を抱いている人はもういないのではないか。「ココロジー」などの心理ゲームが流行る何年か前の著作だと思う。たぶん。

ちなみに推薦は「頭の体操」などの本を多数書いている多湖輝。
(01.0720、滑川)



・「月刊少年チャンピオン」8月号(2001、秋田書店)

「ヒッサツ!」伊藤清順はあの「ぶかつどう」の作者の作品。格闘部の部員を集めるため、「三島中暗黒地帯(ダーク・エリア)」に踏み込んだ日々月颯耶と鈴木玲香。連載間もないし、読者の人気をつかむための重要な回だと思うが、どびっくりするようなザコキャラが登場。私は大好きですけどね。

「香取センパイ」秋好賢一は「人望がないバカ先輩」香取を描くヤンキーマンガ。今回は子分のガチャピンにケンカを教えてやった香取が、最初は強いヤツとケンカさせて「負けたらヤンキーを引退しろ」とけしかけていたが、もしガチャピンが負けた場合自分のパシリがいなくなることに気づき、後から弱いヤツを探さねばならないことに気づいて悩むという、いい意味で素晴らしくくだらない展開でよかった。

次号に黒岩よしひろが読みきりかなんかを書くらしい。
(01.0718、滑川)



・「大日本天狗党絵詞」全4巻 黒田硫黄(1995〜97、講談社)

アフタヌーン連載。子供の頃家出をした女性・シノブは、天狗の「師匠」に出会い、依頼その弟子として22歳にいたるまで天狗になるための修行をしている。しかしかつては栄華を誇っていたらしい天狗も、今では残飯をあさったりコンビニの期限切れ弁当を食うなどして生きる日陰の存在になってしまった。
人間の陰に隠れて生きる天狗たちであったが、その宿敵と思われる「邪眼」を持つ男が出現、これを倒し日本を天狗の世界とするため、天狗たちは「大日本天狗党」を結成する。

ネットでけっこう評判になっていたので購入。ココをずーっと読んでいる人にはわかるでしょうが、私がレビューを書きにくいタイプの作品というのがあり、まさにそれが本作。この作者の短編集・「大王」の感想を書いたときもずいぶんナンギしたが(今読み返してもひどい文章)、要するに抽象度の高い世界を構築しているので、解説することがぜんぶソレの謎解きになってしまうわけね。それは推理小説においてトリックの解説をするくらいにヤボなことだと思う。
本作も、人間に背を向けて生きてきた「天狗」とは何なのか、「邪眼」を持つ男は何者だったのか、彼の愛する泥人形は何だったのかなどの疑問こそが読者が解釈すべき部分であるので、これ以上私が何も書くことはありません。
ただ、連載で読んだら相当難解なマンガだという感想を抱くかもしれない。それは少し思った。
(01.0718、滑川)

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