つれづれなるマンガ感想文4月後半

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一気に下まで行きたい



・「とっても! ミニモニ。」(2) 永野ゆかり、こやまゆき(2002、小学館)
・「聖闘士星矢」(6)〜(10) 車田正美(1987〜88、2001、集英社)
・「聖闘士星矢」(1)〜(5) 車田正美(1985〜87、2001、集英社)
・「放課後セブン」(上) 村正みかど(2002、ヒット出版社)
・「SASEMAN」 渡辺ヒデユキ(1997、東京三世社)
・「魔界のプリンセス プリティー美沙」(1)〜(2) もっちー(2001〜2002、ワニマガジン社)
・「アワーズライト」6月号(2002、少年画報社)
・「アワーズライト」4月号(2002、少年画報社)
・「アワーズライト」5月号(2002、少年画報社)
・「恋身女子高生パティ」(1) 乾はるか(2001、ぶんか社)
・「COMICラブラプ」Vol.1(2002、ワニマガジン社)
・「週刊少年チャンピオン」21号(2002、秋田書店)
・「ウォー! B組」マガジン・ウォー!4月号増刊(2002、マガジンマガジン)
・「ウォー! B組」マガジン・ウォー!5月号増刊(2002、マガジンマガジン)






・「とっても! ミニモニ。」(2) 永野ゆかり、こやまゆき(2002、小学館)

小学二年生、三年生、四年生連載。実在のアイドル「ミニモニ。」を主人公にしたマンガ。
小学校低学年向きで、別に悪い意味でなく「たわいない」のひと言に尽きる。興味深いのはつんくはともかく振り付け師の夏まゆみ先生まで登場している点。以前単行本で出た「尾崎豊物語」ではプロデューサーは名前すら出ていなかった(確か)のに対し、読者対象が子供の本作にまで、つんくはおろか振り付けの先生まで実名で出て来るというのにはちょっと驚いた。
プロデューサーなんて当然ながら裏方でしかなかったのに、ハロープロジェクトではまさに「プロジェクト」という認識が子供にまで浸透しているのかも、とか思った。
まあ、「ASAYAN」であれだけやりゃーね。

後はミニモニ。以外にミカのココナッツ仲間のアヤカとレファがちょっとだけ出ていて、でもすでにレファは引退しているというホロニガな事実もあったりします。

あまりにもかわいく描かれているので、もし4人がものすごく仲が悪かったりしたら……とかスキャンダルでもあったらどう始末を付けるのか……と思って「恐い考え」になったりする。「虚構だけで勝負」といった場合、最近では叶姉妹の徹底ぶりが思い出されるが、ミニモニ。もいい勝負だろう。「これはユニット内ユニットですよ〜」というアース機能が付いているにしろね。ポストモダンがどうのというならミニモニ。勉強しなきゃいけないと思う。
ちなみに私はアヤカはもうちょっと売れてもいいと思うので興味があるが、ポストモダンにはあまり興味がない。

1巻の感想

(02.0430)



・「聖闘士星矢」(6)〜(10) 車田正美(1987〜88、2001、集英社)

週刊少年ジャンプ連載。文庫版。5巻あたりから7巻の終わりまで「聖域(サンクチュアリ)編」があり(正式名称はなんていうんだ?)、ちょうど10巻で「ポセイドン編」が終わる。

再読して感じたのは「リンかけ」でよく言われたこと、すなわち主要キャラクターが死んだのに何度も生き返るとか、なんでそんなに根性だけで反撃できるんだとか、そういったことが注意深く設定として説明が付けられていること。
「瀕死だけど死んではいない」とか、本来死んだところを、対戦相手の黄金聖闘士に戦いぶりを認められて蘇生されるなどの説明がところどころに見られるし、「根性」は「小宇宙(コスモ)」とか「セブンセンシズ」という言葉・概念に置き換えられていて、無理を軽減している。
星矢たちの聖衣(クロス)は、破壊されたらムウによって修理してもらわないかぎり直らないのだが、フェニックスの一輝の聖衣(クロス)のみ、自己再生能力を持っている。それゆえに一輝はみんなと別行動をとることができるし、また何度死んでも蘇るという荒技をやってのけることもできる。
つまり、「リンかけ」に比べると「星矢」はいろんな意味で洗練されている。が、前にも書いたようにそこに淡泊な印象を受けるのも事実。しかしまあそういうことを感じるのはたぶん男子だけで、女の子の観点からすれば当時のジャンプ連載陣の中ではスマートな作品に映ったかもしれない。それでぜんぜんOKだと思う。

前から疑問に思ってたが、聖衣(クロス)には特定のデザイナーがいたんだろうか? なんかいたような気がするが……(と、調べないまま放置する)。
(02.0430)



・「聖闘士星矢」(1)〜(5) 車田正美(1985〜87、2001、集英社)

週刊少年ジャンプ連載。文庫版。ギリシャ神話の女神・アテナを守護し、歴史の影で平和を守ってきた幻の戦闘集団・聖闘士(セイント)。孤児の星矢はグラード財団に引き取られ、日本人として聖闘士となるべくギリシャのアテネに送り込まれる。財団は、星矢を含め100人の孤児を、世界各国の聖闘士の拠点に修行に出していた。
数年後、過酷な訓練に耐えて聖闘士となり、そのあかしである「聖衣(クロス)」(甲冑の一種)を持ち帰ることができたのは星矢と9人の少年たちだった。

グラード財団は、聖闘士同士の死闘をショーとした「銀河戦争(ギャラクシアンウォーズ)」という格闘技トーナメントを開催する。本来私闘を禁じられている聖闘士となった少年たちはそれぞれ反発するが、実はこのトーナメントの開催自体に、聖闘士の存立に関わる重大な秘密が隠されていた……。

・車田正美の作家評価を決定づけた作品
ご存じ、というかたぶん知らない人はいない車田正美の代表作。また、同人誌において「キャプテン翼」とともに特定ジャンルとしてかなりの長期政権を誇っていたという歴史も持つ。そういう意味では、世代や立場によって本作について感じることは違うだろうと思う。
車田正美という作家自体、現在ではよっぽどのことがないかぎり大ハズレはしない作家だと思われていると思うが、「星矢」前夜というのは「リングにかけろ」大ヒットの一発屋で終わるかどうか、の瀬戸際的状況であったように記憶する。
実際、現役の少年読者であった私でさえ、「リングにかけろ」の後にこの人がどんなヒット作をつくるのかは想像もつかなかった。

その前の作品「風魔の小次郎」は、もともとスポーツの助っ人として活躍する現代の忍者といった設定で始まるものの、おそらくいちばん盛り上がったのは「聖剣伝説」のあたりである。そして物語内で聖剣が崩壊し新章に入った後、すぐに終わってしまった(作者は、単行本のまえがきで「父の死に遭遇してモチベーションが低下してしまった」と書いている)。
本作も当初は「架空の格闘技マンガ」のような路線だったのが、途中から神話世界に近づいたファンタジック路線へと移行する。それが路線変更か当初から考えていたのかは知らないが、「風魔の小次郎」ではかなり不自然だったファンタジー路線への転換は、「聖闘士」の元の設定がSF的だったためさほどの違和感はない。

さきほど「リンかけ」の一発屋で終わるかどうか、と書いたが、「リングにかけろ」連載当時でさえ作風が微妙に古かった。
「リンかけ」の始まりは貧乏で不幸な姉弟がボクシングで成り上がっていくというもので、主人公とお姉ちゃんの涙、涙のボクシング特訓などが主流の作品だった。今考えると、菊ねえちゃんは女の子ゆえに社会進出がむずかしく、成り上がるためには気弱な弟に夢を託すしかないという時代状況が反映されていたように思う(それにしても当時としては古い設定だった)。

本作でも、星矢の師匠は「魔鈴さん」という女性で、聖闘士社会では女性が一人前扱いされていないという恨みがあるようであった。また星矢は孤児、という設定だがちゃんと「ちびっ子ハウス」みたいな孤児院や、幼なじみの少女など、60年代から70年代の定番設定が顔を出している。

「聖衣」の伝説は「リンかけ」時代の伝説の「カイザーナックル(だっけ? 名前失念)」→「小次郎」の聖剣、と続く車田作品の定番的アイテムだが、この辺りが姉弟愛を描いた初期リンかけとは別の嗜好、というかあまりあいいれない感じなのが興味深い。だからこそ、「星矢」で最初の設定に組み込んだことで始めて作品としてのバランスはよくなったと感じる。

・「ライバル不在」がちょっと物足りない
しかし、「星矢」は「リンかけ」ファンにはいささか淡泊な印象を与えたと思う。これは、主要な聖闘士全員が集う「銀河戦争(ギャラクシアンウォーズ)」の描き方が少し中途半端で、星矢のライバルたちの描き込みが足りないということに尽きる。
そもそも、星矢には「リンかけ」における剣崎や、「小次郎」における武蔵といった強力なライバルが出現しない。本来なら連載当初に強力にキザで嫌味なライバルが設定されていなければならないと思うのだが、ライバルらしきそぶりを見せた邪武は早々に脇役に後退し、かなり強い個性を持ったフェニックスの一輝も、むしろ弟との葛藤に比重があり、さらには「敵か味方かカウボーイ(byエキセントリック少年ボウイ)」的存在になってしまう。
この辺りのことについては、星矢のキャラ立ちという点においてなんとかしてほしかった。

上記のことについて勝手に推測すると、当時のジャンプ状況にあって早くトーナメントに移行しなければ人気が出ないという焦りがあったのではないかと考える。そして、星矢の「ライバル不在」は人気には何の関係もなかったことは歴史が証明していると言えると思う。

・同人ネタとしての「聖闘士星矢」
上記のように、少年マンガとしては淡泊な印象だった本作だが、少女たちにはスゴイ人気だったらしい(私は当時少女ではないので実感できん。当然、今でも少女ではないが)。コミケでは数年にわたって「キャプ翼」と並んですごい人気だった。私事だが、87年、大学に入学した私は一時期漫研に顔を出していたのだが、同じ年に入部した女の子が10人以上もいて(その漫研の規模としては異例)、しかもその中の9割りが「星矢」か「キャプ翼」のファンですでに同人活動も行っていた。
で、1年生だから文化系サークルだといっても上級生からいろいろ用を言いつけられるでしょ。そうしたら、それが「イヤだ」って言って、夏前には10人以上の女の子が確か1人か2人になっちゃった。
何が言いたいかというと、彼女らも「マンガ好きだから漫研に入ろうかなあ」という気持ちはあったものの、「マンガやアニメが好きな友達をつくるなら何も漫研に入らなくてもいいじゃん」と気づいたんだと思う。みんなでワイワイやりたければ、コミケもあるし、なにしろそこに行けばたくさんの「同じ作品が好き」な人々に出会えるのだ。

……というわけで、漫研活動とコミケ活動、創作活動とファン活動、サークル活動と個人活動が分化していく、そのきっかけが本作「星矢」と「キャプ翼」だったのではないかと、ちゃんと調べてないんだけどそういうことを考えてみた。明確な分岐点ではないにしても、その分化が大規模に行われた時期だったことには多分間違いがない。

で、「アストロ球団」についての車田正美の解説を読むと、孤児、生き別れの姉弟、貧乏人と金持ち、努力・修行、戦い、など60年代から70年代バリバリのアイテムをちりばめていた彼は、どうやら「女の子に人気の出る作品」を描くことには意識的だったらしい。つまり「星矢」でその目論見が大爆発したということになる。

まあ「女の子にウケる」というのと「パロディ本・やおい本が大量に出る」ことは意味あいがちょっと違うようにも思う。しかし、車田正美は「ファンロード」で島村春奈嬢の描く「リングにまねろ」などのパロディマンガを公認? 黙認? していたり、自作の「男が男に惚れる」というホモ的な側面にも意識的なフシがあったりして、「(コミケ的な)パロディ」と「やおい」という先進的な分野にも寛大な態度をとっていたことがうかがえる。そういえば、セルフパロディ「実録! 神輪会」なんてのもあったしね。

そういう意味で言えば、車田正美は他のジャンプ作家との最大の違いはそうした「古さと新しさ」が同居したスタンスにあったのではないかと思う。

「星矢」の単行本自体は、まだ続く。
(02.0427)

(追記)
上記の「リングにまねろ」の記述において、最初の段階では同作を「パロディであり、やおいである」との誤解に基づいて書いてしまったことを正直に告白しておきます。ここではファンロード的な「パロディ」と「やおい」は分けて考えるべきでしたなあ……。お詫びして訂正しておきます。(02.0821)



・「放課後セブン」(上) 村正みかど(2002、ヒット出版社)

COMIC阿ロ云(あうん)連載。成年コミック。セブンブリッジに似た悪魔のカードゲーム「セブン」。それはカードを揃えて上がると、相手の望んだかたちでを思い通りに犯すことができるというゲーム。それの達人である放課後セブンと、彼を慕う美少女・二ノ宮ほたるの悪魔との戦いを描く。

「セブン」というゲーム自体は、たとえば「リーマンギャンブラーマウス」の中の架空のギャンブルのように厳密なルールがあるわけではなく、際限なく都合のいいカードが出てくるような感じなんだけど、勝負モノの盛り上げ方をHマンガにうまく取り入れていてそれほどいいかげんな感じはしない。要するにお話のメリハリはきっちり考えられている感じだ。
放課後セブンが「セブン」を手に入れるキッカケとなったエピソードも実にいい意味でいいかげんな感じで面白く、出てくる女の子は巨乳もエロエロで、勢いがあるマンガ。
(02.0426)



・「SASEMAN」 渡辺ヒデユキ(1997、東京三世社)

SASEMAN

成年コミック。女子高生・佐世満美々(させみつ・みみ)は、突如空から飛来したスーパー男によって、セックスによって悪人を善人に変える「サセマン」に変身させられてしまう。……ということで、毎回まいかい、悪人とセックスするスーパーヒロイン・サセマンなのであった。

ものすごくバカバカしくて脱力する(いい意味で)マンガ。お話も実にとっぴかつご都合主義で、後半は善意からだれかれかまわず一本抜いてあげようとする迷惑男・キャプテン・マスカキや、「宇宙を悪に染める会」の刺客・ヤリチン(サセマンとは正反対に、ヤった相手を悪人にしてしまう)などが登場してドタバタする。

97年刊だけど、そこはかとなく古い感じがして、昔の高橋留美子の影響がうかがえる(と思う)。読んでいるうちになんとなく、ものすごく暑い蒸し風呂みたいだった晴海の夏コミを思い出す(笑)。いや、この作者のキャリアとか同人活動とかぜんぜん知らないけど、何かそんな感じなんです。
(02.0426)



・「魔界のプリンセス プリティー美沙」(1)〜(2) もっちー(2001〜2002、ワニマガジン社) [amazon]

プリティー美沙

快楽天星組、ヤングヒップ連載。成年コミック。ずっと若い頃、魔界からやってきて魔法少女「プリティー美沙」として活躍していた主婦・紺野美沙。またひょんなことからプリティー美沙としてご町内で活躍することに。でもコスチュームは昔のまんま。なんか、服のサイズも昔のまんまらしい。でもそんな細かいことはぜんぜん気にしないというか、むしろ嬉々としてやってる美沙さんの物語。

熟女が少女のするようなコスプレをして戦うHマンガ。脳天気主婦・美沙のライバルが女社長・魔野あずさ=マジカルあずさと、欲求不満主婦・岡田ナナ=エンジェルナナ
いや〜、こういうのを何と言ったらいいのか? 絵柄は鶴田洋久風だな〜と思っていたら鶴田洋久のアシスタントだった。おねーさん←→熟女って幅がありますが、コレは一般受け熟女の上限ギリギリではないでしょうか。個人的にロリものとかあんまり興味ないんで、まあコッチの方がいいです(笑)。

【関連作品】
・「DV」 もっちー(2003、コアマガジン)

(02.0425)



・「アワーズライト」6月号(2002、少年画報社)

「魔法少女本願寺美礼R」どざむらは新連載なのか? 先月号でドタバタギャグ路線の「本願寺美礼」が終わって、今度はうってかわってシリアス路線になった。なんだか「夢幻紳士」みたい。

「デッドコピー」がぁさんは短期集中連載の3回目。「殺されたときのみクローン再生でき、自分の記憶のバックアップを入れて生き返ることができる」世界で、5年くらいバックアップをすっとばして蘇った志保。彼女は自分の記憶の空白を取り戻そうとするが……。
これ、面白い。ちょっと70年代後半から80年代っぽいけど。それは錯覚で、こうした特定のSF的ルールにのっとって謎解きが展開されるようなマンガは、80年代にはなかった。

「Lucky Noodle」山名沢湖は、読みきり。ササヤカな小市民、タナカくんが買ってきたカップラーメン「ラッキーヌードル」には不思議な力があって……という話。
出てくる未来社会がものすごくカワイイ。そしてSFしてる。いや、SFかSFじゃないかということを価値基準とした評価はあまり意味がないとはわかっているんだけど。いいです。

「世縒り指」騎崎サブゼロは、シリーズ第4弾。錬金術師志願の少女・金石樹と、錬金術師に弟子入りした料理人・忠士の世界がようやく交わってきた。実は今までよくわかんなかった(汗)んだけど、これから面白くなりそう。

「絶望年代記」あびゅうきょは、人生に絶望した男が楽しかった学生時代を思い出し、かつての友人・仮面Z君兄妹を探しに解体されたマンションへ赴く。
ヒトが読んでどう思うか知らないが、これだけ「絶望絶望」と書いておいて、どことなくユーモアがあって、でもやっぱり絶望なマンガを描ける人はそうはいないと思う。
あのねー、この種の絶望ってギャグにするとそこで終わっちゃうんだよね。「出口なし!」っていうテーマがどーんと読者の上に落ちてきて。「ユーモア」って書いたけれども、本作も別に笑いをとろうとして描いているわけではもちろんない。ただ、深刻すぎるわけでもないと思う。深刻すぎてもそこで終わっちゃうから。テーマをはっきりと描きすぎて。

何か、深刻な問題をギャグにしようとする。と、まあ一時は気が紛れるけど、問題は解決しない。ものすごく面白いギャグが作者の苦労ほど売れないのは、実はそういうある種の不快感にあるのではないかと思う。よくも悪くも。
もちろん、どんな創作にも不快感を喚起させるものはあり、それは悪いことではないが、ギャグにおける不快感(ブラックだとかそういう意味じゃなくて、テーマが昇華されない消化不良感みたいなもの)ってあまり指摘されないから書いてみた。
で、「そこはかとないユーモア」って案外重要じゃないかと最近思うんですよね。まあはっきり言って、今の日本にそういう文化はないと思いますよ。昔は知らないけど。たやすく「にんげんだもの」的グダグダさや「ゆうもあ大賞」的なベタさに引きずられてしまうでしょ。
でも、本作の作者には、なんだかいい意味の「そこはかとないユーモア」があるような気がする。
まあこんなこと書いておいて、本シリーズがものすごくダークだったりスピリチュアルな終わり方だったらナンですけど。どこかに救いを残して終わってほしいですね。
(02.0423)



・「アワーズライト」4月号(2002、少年画報社)

今月号から平綴じ。

読みきり「大きなアナタと小さいワタシ」西村竜がよい。小さい小さい少女(「南くんの恋人」的コビト)と、彼女が住んでいる部屋の住人・トオルとの恋愛のようなそうでないような関係。なんかヤな女が出てきて、そいつをカッコよくふるんですよ。主人公が。あーすっとした。あーヤな女、最低。

読みきり「迷子になる」山名沢湖もよい。発想のモトはわりと日常的な思考で、そこから幻想方面へ飛躍するというか。そんな感じで。
(02.0423)



・「アワーズライト」5月号(2002、少年画報社)

「白衣の下は白っ!」嶺本八美は、読みきり。パンチラナースの話。ひとつの雑誌に、パンチラ要員がいることを私は否定しませんが、本作の場合変にストーリーにメリハリ付けることなかったんじゃないかなー? 主人公の内省みたいな。それでかえって深みにはまってる気がするんだけど。だって、セクハラはセクハラにすぎないから。
まあそういうマンガばっかりの中に混ざってたら目立たないんだろうけど。考える余地を与えずにバーッと通り過ぎていくというのも、ひとつの技術だから。

「金魚屋古書店出納帳」芳崎せいむは、「アワーズガール」で連載されているときに大好きだったのでこちらに移ってきて本当によかった。伝説的にすばらしい品揃えのマンガ古書店を舞台に、昔のマンガにまつわる人間ドラマを描く作品。
が、今回は連載の仕切り直しでキャラクターの顔見せ的展開のためか、ちょっとモノ足りずなんだか「せどりマンガ」みたいになっていた。
あとあまりにきれいごと過ぎるんで……。こういうプレミアモノ商売って、実際携わったことはないけど、中島誠之介の本とか読むとすごいです。しのぎあいが。まあそんなわざわざ汚いとこ、マンガで見せなくてもいいとは確かに思うけど。マンガは骨董品と違ってブツそのものがニセモノか本物かの区別はほとんどないし(サイン本のサインなどは別)、どうしても読みたければ復刊を買ってもいいから複製文化で良かったなあとか本作とは脈絡なく思ったりする。

で、その直後に「昭和名作マンガリスペクトシリーズ」という本誌の表紙イラストの解説が入る。オオシマヒロユキが5号連続で、過去の名作マンガのイメージイラストみたいのを描くという。
オオシマヒロユキが表紙ということに関しては何も異議ありませんが、第1回が「赤ん坊帝国」というのはあまりにマニアックすぎ。少年画報掲載だってことを考慮に入れても、第1回にするこたあないだろう。こんなこと、コミック伝説マガジンでもやんないですよ。
「金魚屋……」でせどりの話をさんざん読まされて、小島利明のレインボーマンの話題なんかを読んで、さらに「赤ん坊帝国」の話とかされるとさすがにムッとくる。読もうったって読めない作品だし、名前のみカルト化していて流布されちゃっているというのもどうかと思っている作品だから。まあ、題材をセレクトした人の思い入れとかはわかるつもりですけど。
(02.0423)



・「恋身女子高生パティ」(1) 乾はるか、原案・河崎実(2001、ぶんか社)

「みこすり半劇場巨乳ちゃん」連載。地球は変魔帝国が送り込む変態獣のせいでモラルを喪失し、ハレンチ惑星と化していた。このため、創造主アヌンは高エネルギー超生命体を生み出した。変身ならぬ「恋身(れんしん)」し、「変態」たちを「恋態」に変える正義のヒロイン、それが恋身女子高生パティであった。

性闘技マンガかと思って購入(最近こればっかだが、こうして書いておかないと後でデータとしての意味をなさなくなるので……)。しかし、敵の怪人こそチンチン状のモノが伸びたりいろいろあるが、セックスバトルというよりはあくまでもエッチをベースにした特撮ヒーローもの、という感じ。この辺りはいかにも原案・河崎実だなあ、と思った。
ちなみに大もとのネタは「マグマ大使」だそうである。

なお、森下くるみ主演のビデオ、DVDとのメディアミックスらしい。
(02.0419)



・「COMICラブラプ」Vol.1(2002、ワニマガジン社)

創刊号。オール読みきり。「ラブラブ」ではなく「ラブラプ」ね。「プ」。
ええ〜、実はと申しますか、アイドルを題材、もしくはモデルとしたマンガを収集しようと思っていて、本誌の「はちだんあいす」ぢたま某が「モー娘。」の辻・加護をモデルにしているらしいと聞いたので購入。でもま、実際読んでみるとほんとにモデルのモデル程度の感じ。名前も違う。こういうの、すごく微妙。
後は、「ラブコメ的和姦」の作品群がズラリとならんでいるので、そういうのが好きな人にはオススメかと。
個人的には、巻末カラーの「春つ方」タカハシマコがいちばんよかったかな。

巻末に載ってたギャルゲー業界座談会が、景気が悪くて読んでてダークになった。
(02.0419)



・「週刊少年チャンピオン」21号(2002、秋田書店)

「SAMURAIMAN」芹沢直樹が新連載。修学旅行で京都に訪れた主人公たちが、上空から飛来した謎の鎧武者に遭遇する。「スクライド」とか「A.−D.O.G.S」系統のSFアクションになるのかな? わからん。 そして「スクライド」黒田洋介、戸田泰成は最終回。いろんな意味で話題をまいた作品であった。

個人的感想としては、本作のメチャクチャぶりはそれこそ「リングにかけろ」並みだったが、「リンかけ」当時のリンかけのメチャクチャの意味と、本作のメチャクチャの意味はまったく違っていたと思う。それは「リンかけ」より一世代前の「アストロ球団」のメチャクチャぶりがまた違う意味を持っていたのと同じで。

「リンかけ」が人気絶頂のとき、私は個人的に「この作者は次に何を描くんだろう?」と思っていたし、「少年マンガの地平を見た」とも言われた。しかし、車田正美は「リンかけ」だけで終わりはしなかった。
基本的に、少年マンガのパターンはそういくつもはない。だから、何かそのパターンギリギリまで行き着いた作品が出てきたとき、「これはさすがについていけない」とか「こういうのが出るくらいならばもう終わりだ」などと思われたりする。 しかし、その感覚はいつも正しいとは限らない。そういう意味では、「スクライド」の「終わった感じ」をポストモダ〜ンな「何かが終わった」感覚と結びつけて語るのは、(そういう人がいるとすれば)いささか危険ではないかと思う。

そういう私も、ジャンルのある作品やある状況を通して「この世界も終わったな……」と思うことはなくはない。でも、それと本当に終わったかどうかは必ずしも合致しない、もっと後になってみなければわからないということだ。

「フジケン」小沢としおは、フジケンたちが合コンする話。この作者は「うだうだと飲み会をする」ところを描かせたら天下一品だ。すばらしい臨場感だ。
(02.0418)



・「ウォー! B組」マガジン・ウォー!4月号増刊(2002、マガジンマガジン)

エッチ寄りグラビア&情報雑誌。

「ぼくとメス犬」野田ゆうじ

女犬マンガ、第6回。
謎のメス犬・すずな(外見は全裸の美少女)を連れて友人の阿部くんの家に行ったケンちゃん。孤独ですさんだ心の阿部に、自分の義母を「犯せ」と命じられる。「そーゆう事は好きな人としなきゃいけないんだ!」と言うケン。「愛やらいたわりなど欲しくない」と突っ張る阿部。殴られるケン。怒りでキレた阿部に、ムチでしばかれるすずな。それに怒って阿部に向かっていき、また殴られるケン。そこを止めに入る淫乱義母。
……なんなんだ。

「バンビーナ」杉本カヅヒロが最終回。21回という、Hマンガとしてはやや長期連載。後半性闘技マンガ的描写が見られたが、スイマセン、ちゃんと読んでいなかったのでお話がつかめません。
本作に限らず、本誌連載のマンガは単行本にならないのだろうか。確かマガジンマガジンってHマンガ単行本のレーベルないから、他社から出るのを期待するしかないのか。
(02.0418)



・「ウォー! B組」マガジン・ウォー!5月号増刊(2002、マガジンマガジン)

エッチ寄りグラビア&情報雑誌。次回は5月9日発売。

「ぼくとメス犬」野田ゆうじ

女犬マンガ、第7回。
謎のメス犬・すずな(外見は全裸の美少女)とともに阿部くんの家から脱出したケンちゃん

「家での阿部くんは やさしさや、人を思いやる気持ちを否定する 冷酷な人間に思えた」「でもそれは、目まぐるしく変わっていく家族関係の中で 身につけてしまった自己防衛の手段なのかもしれない」(後略)

ケンちゃんの内省は、何やら昨今のギャルゲー原作のアニメ(ギャルゲー自身あまりやったことがないので、いちおう「アニメ」としておきますが)を連想させる。一方で、メス犬・すずながオナニーしたりするシーンはしっかり描いてある。そしてまた一方で、謎の男にさらわれたケンちゃんの姉の正体は「腐敗と堕落の卵 スフィア館の黒い娼婦」であることがほのめかされる。
当初は、パクリ感の強い女犬マンガかと思っていたが、他方面の影響が感じられなかなか見逃せない展開になっている。

「ドピュッ!」(前編)海生那智は、中村愛美とかいう実在の女優が過去にブルセラショップでパンツ売っていたという、現実のスキャンダルを素材にしている(「BUBKA」に何回か載った)。
要するに、中原愛美という女の子がブルセラでパンツを売っていたことがバレてしまい、決まりかけていた映画の役から降ろされないために、そこの社長にエッチなことをしかけるという話。
モトネタがすごい小さいと思った。スポーツ新聞を読んでいる人くらいしか知らない話なのでは?

あとうらまっくも描いてます。

(02.0418)

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