・「いっぱい出したネ▼(▼はハートマークの代用)」 1999年9月15日発行(富士見出版) [amazon]
おバカ系ギャグの短編集。おもに月刊コーヒーブレイク連載。
毛野楊太郎は「男が何に欲情するか」、正確に言うと「男がどんなマンガ表現で欲情するか」をメタな視線で描くことが多いが、今回もそのバリエ。
「内容にピッタリのタイトル思いついたんだけど師匠に悪くて使えないので無題」は、まさしくタイトルどおりの内容。だってお話は「ネコじゃないモン!」じゃなくて、「ネコだモン!」(笑)。ただしよほど時間がなかったのか、絵が荒れている。
・「正しい課外授業」 1999年9月23日発行(コスミックインターナショナル) [amazon]
成年コミック。確か「月刊コーヒーブレイク」連載。
このテの陵辱モノや鬼畜系ってのは、「どのくらいが許容範囲か」は読者一人ひとり異なるだろうし、時と場合にもよると思うのでムズカシイところではある。
高校教師武内久美は、子供時代レイプされかかったことがトラウマとなり、セックス恐怖症のためいまだに恋人とも結ばれずにいる。久美はアブナイ系の生徒・倉田の奸計により、彼の仲間である望月、土門の3人に課外授業中レイプされてしまう。
途中から用務員の朽木(イカニモ危なそうな、暗くて恐い顔をしている男)にまで秘密を知られてしまった久美。朽木はレイプ願望は希薄で、久美を緊縛・調教することに意義を見いだしていた。
確かに後味は悪いが、本作が単なる陰惨な話で終わっていないのは、ことあるごとにあらわれる「ジャンルパロディ」的なセリフだろう。
「フツーこーゆーシーンって省略されるとこじゃねーの?」
と言ったりする。
本作の「後味の悪さ」には、やってることの鬼畜外道ぶりもさることながら、逐一解説される「正しい性知識」によって、そのつど読者が物語から引き離される、シラフに戻されるという「いやなかんじ」が含まれている。
ラスト、朽木が突然あらわれ、高校生3人の調教の方法論があまりに未熟だ、と説教を垂れるシーンには思わず笑ってしまったが、その後、この物語はシリーズ化してえんえんと続くことになる。
・「プレイヤーS」(B6) 2000年3月25日発行(蒼竜社) [amazon]
判型:B6
「その1」の「プレイヤーS」(1995、富士見出版)を参照のこと。
(01.1002、滑川)
・「楽しい課外授業」 2000年2月21日発行(コスミックインターナショナル) [amazon]
「正しい課外授業」(→感想)の続編。
今回は、久美の生徒・池原みづきが久美の調教シーンを目撃してしまい、秘密を知られた倉田たちのグループに犯されるところからはじまる。
レイプしか知らなかった土門は、みづきの媚態や「愛のある(と思わせる)セックス」にハマってしまい、脅迫の材料であるデジタルカメラのデータとビデオテープの在処を吐いてしまうが……という展開。
「恥じらいがない」「ずうずうしい」「セックスに慣れている」等々のイメージがあるいわゆる「コギャル」・みづきを登場させたことで、Hマンガ内における「男は何に興奮するのか」を抽出し、相対化。これは作者の毛野楊太郎がやたら追及しているテーマだ。
これらは何を意味するか。前作「正しい課外授業」以上に「男はHマンガの何に興奮するのか」の抽出と相対化が進み、一種のメタHマンガになっているのだ。随所にエロいシーンは出てくるから、パラパラッと読むぶんには完全なるHマンガだが、ストーリーを読んでいくと読者を興奮と逆のベクトルに導こうとしているとしか思えない(心底、本当の意味で女性にいやがらせしたい読者の場合は別だろうが)。なにしろ「恥じらいのない女の子」と「責めを責めとしか受け止めない女性」しか出ないのだから。
「正しい……」に思わせぶりに出てきた「調教慣れしていそうな」用務員・朽木も、いちおう手順はふんでいるようだが久美はちゃんと調教されたとはいいがたいし、みづきもまた……なのだった。その関係は完全なるディスコミニュケーション。本作でヌケるかどうかは、微妙なところではないか。
・「磨衣スレイヴ」(B6) 2000年3月30日発行(蒼竜社)
「その1」の「磨衣スレイヴ」(1996、富士見出版)を参照のこと。
(01.1002、滑川)
・「恥しい課外授業」 2000年9月1日発行(コスミックインターナショナル) [amazon]
A5判。成年コミック。本作は、「正しい課外授業」(→感想)、「楽しい課外授業」(→感想)の続編にあたる。前二作が、鬼畜系エロ描写の合間あいまに「ホントはこんなことで女性は喜びません」という注釈が読者にとって無情にも(?)入るという、鬼畜系エロマンガ自体を相対化するようなある意味キケンな、実験的な内容だったのに対し、本作はオーソドックスな鬼畜マンガ。
まじめで、上品な美貌を持つ巨乳の女教師(付:めがね)・武内久美が変態マゾ奴隷に調教されてしまい、その後もえんえんと調教され続けるという展開。
また、ストーリー的にも久美先生がときどき正気を取り戻したり、ささいな抵抗をするところなんかはメリハリになっていて物語としても興味深いところ。
短編が2本収録。「ペットマニアック」はさらってきた女性をネココスプレのまま調教する話だが、ラストが本当に救いがない。ダーク。「とらんするーせんと」は、コレまた輪をかけてダーク。でもまぁある意味純愛モノだからこっちのがいーかな。絵柄が微妙に違っていて、新しい絵の模索か、時間の関係か何かでこうなったのかは謎……。
・「いっぱい出したネ▼(▼はハートマークの代用)」 1999年9月15日発行(富士見出版)
・「正しい課外授業」 1999年9月23日発行(コスミックインターナショナル)
・「プレイヤーS」(B6) 2000年3月25日発行(蒼竜社)
・「楽しい課外授業」 2000年2月21日発行(コスミックインターナショナル)
・「磨衣スレイヴ」(B6) 2000年3月30日発行(蒼竜社)
・「恥しい課外授業」 2000年9月1日発行(コスミックインターナショナル)
判型:A5
シリーズ:富士見コミックス
価格:840円(本体800円)
ISBNコード:ISBN4-89421-341-9 C9979
(収録作品)
・トロはいかが?
・ミルクはいかが?
・プリティドール
・プリティドール2
・内容にピッタリのタイトル思いついたんだけど師匠に悪くて使えないので無題
・お困りですか? #0:パイロット版
・お困りですか? #1:β版
・イケないコトして▼(Lesson4)(▼はハートマークの代用)
・AWAKEN第2部予告
いちおう統一テーマとしては、ネコ娘、牛娘、ヴァーチャル美少女など「非・人間系」キャラとのHか。途中まではしがないサラリーマンがひょんなことから「非・人間系美少女」とヤルことになるという連作。
単行本中、「お困りですか? #0:パイロット版」は、女ドラえもん(?)銅鑼美々が、わがままなコギャルの彼女にほとほと困った男・立川のもとに 現れて、渡したモノが「眼鏡っ娘育成ギブス」というメガネ。これをかければ、「どんな腐れコギャルもたちまち内気な眼鏡っ娘に変身」する。あとは、カレシの立川が「内気な眼鏡っ娘」に変身したカノジョ相手にえんえんと羞恥プレイにいそしむという一種のジャンルパロディ。
「お困りですか? #1β版」も同様。時間がなかったのか、絵もお話もどこかやっつけくさい(^^;)。セルフパロディに終始している。
「イケないことして▽ Lessen4」(▽はハートマークの代用)は、毛野氏の他作品「アウェイクン」のキャラクターと「イケない……」キャラとのクロスオーバーパロディ。
(99.0907、01.0831、滑川)
判型:A5
シリーズ:キュン コミックス
価格:857円(税別)
ISBNコード:ISBN4-7747-0115-7 C9979
(収録作品)
「正しい課外授業」Lesson1〜5
作者あとがきには、「レイプや陵辱とはこんなにヒドいものなんだ!」と読者に後味の悪い思いをさせようとして描いたら、存外にウケてしまった、とある。
……でまあその後延々と久美は犯されまくるのだが、レイプや調教にはまったくのシロウト(突然「こいつを犯す!」とか言って始めたんだから当たり前だが)の高校生3人がとまどいながらコトに及んでいく過程において、Hマンガのお約束ではない性知識が開陳されるという妙な構成になっている(「開陳される」と言ったって「アントニオ猪木・談」みたいんじゃなくて、それがストーリーに組み込まれているのだ)。
その後も幼少の頃のレイプ未遂がフラッシュバックで久美の脳裏に表れて……。
強姦され放心状態になった久美に高校生3人が服を着せようとするのだが、
こうした方法は、Hマンガに限らず80年代のマンガではよく使われていたが、ヘタをすると「つまらないツッコミで物語を壊してしまう」危険性があるので、こと没入性重視のHマンガでは嫌う人がいるかもしれない。
だがHマンガにおける徹底したジャンルパロディ作家(しかも非常にストーリーテリングのうまい)が、一人くらいいてもいいと私は思っている。
・「楽しい課外授業」(→感想)
・「恥しい課外授業」(→感想)
・「アナザー・レッスン」(→感想)(番外編)
・「激しい課外授業」(→感想)
・「アブナイ課外授業」(→感想)
・「淫らな課外授業」(→感想)(完結編)
(99.0907、01.0831、滑川)
シリーズ:プラザCOMICS
価格:550円(本体524円)
ISBNコード:ISBN4-88386-043-4 C9979
(収録作品)
判型:A5
シリーズ:キュン コミックス
価格:857円(税別)
ISBNコード:ISBN4-7747-0120-3 C9979
(収録作品)
「楽しい課外授業」Lesson1〜6
前回は、全編通してHマンガでお約束とされていることどもがいかに現実のセックスと違うかの「講義」が挿入されるという趣向だった。
しかし、なんとみづきは「犯されても動じないコギャル」であった。「心と体は別よ」と言いきる彼女は、逆に倉田たちをおどさんばかりの勢いである。
彼女は、本当は「犯されても動じないフリをできる女性」で、レイプされたことでも
傷ついたが、性奴隷にされてしまった久美先生を救出するために土門を誘惑する。
もうひとつ、久美先生は調教され続けるが、混乱して濡れたりはしているけれども、一般的なSMマンガのように「どんどん調教されて性の奴隷に」みたいなプロセスはふまない。倉田たちの責めと久美の快楽は少しも合致せず、責めはそのまま苦痛に転化している描写が圧倒的に多い。
「ヌケない(ことを意図した)Hマンガは是か非か」で、意見はわかれるだろう。
・「正しい課外授業」(→感想)
・「恥しい課外授業」(→感想)
・「アナザー・レッスン」(→感想)(番外編)
・「激しい課外授業」(→感想)
・「アブナイ課外授業」(→感想)
・「淫らな課外授業」(→感想)(完結編)
(00.0125、01.0831、滑川)
判型:B6
シリーズ:プラザCOMICS
価格:550円(本体524円)
ISBNコード:ISBN4-88386-044-2 C9979
(収録作品)
・「磨衣スレイヴ」調教1〜8
判型:A5
シリーズ:キュン コミックス
価格:952円(税別)
ISBNコード:ISBN4-7747-0130-0 C9979
(収録作品)
・恥しい課外授業#0〜#6
・ペットマニアック
・とらんするーせんと
責め的には羞恥モノが多く、セーラー服、恥ずかしい格好で電車に乗って痴漢される、コスプレのままH、小さい水着で泳ぐ、露出の多いボディコンでの野外プレイ、放置プレイと続く。描写的には巨乳なんだけどお尻は小さい久美先生の体型や恥ずかしがり方、全体的に立体的というか浮き上がって見える人体、ねばい体液がしたたり落ちるかのようなセックス描写がポイント。
調教グループの変態趣味の違いや、調教に自信のある朽木が調教師として意外な才能を発揮する小野寺先生を陰で評価していたりと、調教側のかけひきや戦い(?)も面白いがどうしても物語の中心にはなりにくい。というか意図的に後退させているんだと思う。
保健の村崎先生(勝ち気な美人)も捕まってしまいますが、ラストは尻切れトンボ(後の「激しい課外授業」に続く)。
あとがきを読むと、連載時の順番を入れ替えたりいろいろ苦労しているらしく、おそらく新潟の監禁事件がひびいているんではないかとも思うが、これは単なる私の予測。
・「正しい課外授業」(→感想)
・「楽しい課外授業」(→感想)
・「アナザー・レッスン」(→感想)(番外編)
・「激しい課外授業」(→感想)
・「アブナイ課外授業」(→感想)
・「淫らな課外授業」(→感想)(完結編)
(00.0826、01.0831、滑川)
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