つれづれなるマンガ感想文10月後半

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一気に下まで行きたい



・「タスク」全3巻 笠原倫(1987、秋田書店)
・「週刊プレイボーイ」44号
・「ヤングマガジン」46号
・「東方好色今風娘」 阿宮美亜(1993、桜桃書房)
・「夜遊び禁止Vゾーン」 阿宮美亜(1993、日本出版社)
・「わかってまんがな」 たなかじゅん(1992、小学館)
・「ちんぽ刑事」(1) 丘咲賢作(1998、講談社)
・「マンガでわかる再販制度 いま出版が危ない!!」 小板橋次郎、東海林秀明(1997、講談社)



・「タスク」全3巻 笠原倫(1987、秋田書店)

週刊少年チャンピオン連載。学園ケンカマンガ。
文部省がBAND(学校機動隊)を使い、私立高校を牛耳ろうとしていた。そこで警視庁は殺人罪で小刑に収監されていた出口宗助を寿学園に潜入させる。宗助をBANDの刺客が襲う……。

宗助は「コンクリート・フック」という必殺パンチを持つが、敵を倒すときは「ボクシング・グローブを着ける」というルールを自分に課している。襲い来るさまざまな敵は、中国拳法、相撲、ムエタイとさまざまな格闘技のエキスパート。こういう展開、好きだな〜。

そして宗助はアイドルマニアでもある。こうしたエキセントリックな(ヒーローにしては)嗜好、自分にルールを課す、個性的な敵など、本作はB級アクション映画の楽しさを持っている。そして痩せ我慢の美学。美しい。ちなみに「タスク=TUSK」、「牙」の意味だそうだ。
(99.1021、滑川)



・「週刊プレイボーイ」44号(集英社)

・「きまぐれオレンジ★ロード 特別編」(まつもと泉)

Vol.158だそーな。
「コスプレ+マンガ」という謎の企画のひとつで、他にもりいくすおという人とナカタニD.(宮村優子のダンナ)が描いている。

「きまオレ」つったら滑川的トラウママンガであって、滑川にとって「アニメ絵」とはいのまたむつみのことでも高田明美のことでもなく、「まつもと泉」であった。
まつもと泉はジャンプ内でも「火を発見した人」くらいの位置には結果的につけている。

旧来のマンガマニアの価値観、とりわけ少女マンガサイドから見たら退行としか思えない「少年ラブコメ」のブームの中で、ジャンプも「キックオフ」(ちば拓)という男女が何コマにもわたって見つめ合うシーンが毎週入るという謎のラブコメを始めた(「必殺技」などのキメ代わりだったんだろう)。

当時中学生だった滑川の周囲でこの「キックオフ」は「ラブコメだ」という以前に「男女が毎週毎週見つめ合うマンガ」としてフリーキーな地位を獲得していたが、キックオフの次に「ジャンプ内ラブコメ」として始まったのが「きまオレ」だったと記憶している。

もともと80年代前半当時の「いわゆるアニメ絵」ではなかった初期まつもと泉の絵は、それなりに淡泊で味はあったが、連載を重ねるごとに急速にアニメ絵化、「どういうわけだかアニメ絵人材が不足」していたジャンプにおいては希少価値を持っていた。

つまり「アニメ絵でラブコメ」やれば売れる、と当時の中高生でも思っていただろうが、それに先鞭を付けたのがまつもと泉であった(これをさらに洗練させたのが滑川が少年有害指定(笑)にしているマガジンの「BOYS BE...」であろう)。

「きまオレ」は、最初にグレイシーに勝ったとか最初にサーチエンジンをつくったとか、とにかく「最初」というだけでも歴史に刻まれるべき作品であった(と、個人的には思う)。

(なぜ「個人的に」かというと、当時アニメ絵を描く新人候補などいくらでもいただろうから、まつもと泉+ラブコメ、という企画には滑川が考えている以外の意図があったかもしれないからだ)

その後、ジャンプでは「アニメ絵」としては萩原一至が出てきて他の追随を許さないほどにまでなる(と、個人的に考える)。
彼の「バスタード!」以前の読みきり「微熱ルージュ」はラブコメものだったが、「味」などということを無視して「どれだけアニメ絵のコードを踏襲したという意味でウマいか」という観点から言えば、たいへんなインパクトを持っていた(と、個人的に考える)。

さて、「アニメ絵+ラブコメ+超能力」という最強トリプルウェポンをひっさげた「きまオレ」は、ジャンプのあらゆるボンクラ読者層ヤワなハートをガッチリキャッチ(笑)したことは、今週のプレイボーイでいまだに登場してきていることでもわかるだろう。

なにしろ今回のサブタイトルが「ほんでもってとーめー恭介!の巻」である。「とーめー」という書き方だけでもう体中がカユくなる。

たった2ページだが「透明人間になった恭介鮎川の家に忍び込むと、鮎川がさまざまなコスプレを楽しんでいる」という基本プロットといい、コマ運びといいオチといい、絵柄も後期「きまオレ」からまったく変わってないし、これ読んで恥ずかしさに布団でゴロゴロするのも秋(っていうかもう冬か? なんか寒いし)の夜長には一興というものだろう。

鮎川のルーズソックスに涙しろ。というわけでヘンなシメ。
(99.1020、滑川)



・「ヤングマガジン」46号(講談社)

巻頭グラビア、佐藤江梨子。

・「ジェンマ THE PASTAMAN」(笠原倫)

短期集中連載第3回完結編。パスタ対決の続き。「風景をどれだけ料理に盛り込めるか」の勝負。
シブい。シブいぜ。

「『アルデンテ』という言葉は直訳すれば『歯ごたえ』という意味にすぎん」

「野郎 夕陽をまんま海に沈めやがった!!」

うーんカッコいい。
第4話が早くも「別冊ヤングマガジン」第3号(10月21日発売)に掲載ということで、嬉しいかぎり。

・「花とみつばち」(安野モヨコ)

さすがに私くらいの年齢になると、「いかにモテるか」で奔走するということがバカらしくなってくる(……などと言うとだれかに説教食らいそうだが)。
本作も「モテたくてモテたくてしょーがない」男子高校生のジタバタを描くマンガのようだけど、なんかもうこの「モテたい社会」にウンザリだよボクは!(笑)

・「デッド・トリック!」(華倫変)

犯人がついに発覚か!? しかしまだ企画倒れに不安な予感……。(99.1019、滑川)



・「東方好色今風娘」 阿宮美亜(1993、桜桃書房)

成年コミックの短編集。

・「感じる愛の双曲線」
 脱力モノの「巨人の星」パロディ。
・「アクメモンスター」
 事故で脳移植、他人の身体でプラトニックな関係だった女の子とH。
タイトルとはかなり関係がない。
・「ボディにリクエスト▽」(▽はハートマークの代用)
 阿宮美亜にはめずらしい羞恥プレイモノ。
・「悲恋! 好色ゲリラ」
 武闘派ゲリラのセクト争い+ロミオとジュリエット。奇怪かつ爽快。
・「美肉色のペン先」
 超脱力モノ「オ●ム」パロディ。いずれ同人誌で紹介したい。
・「ホテルでレッスン」
 農業自由化に引っかけた? 農家の人が都会に出てきてやるH。
・「尻穴マドンナ」
 双方宝くじに当たったホテトル嬢と客が何の情念もないセックスを繰り広げるというある意味深い話。
・「新婚コンサバプレイ」
 退屈をもてあました新妻が発明に凝り出す。でもこれ、なんか展開がすごい思いつきくさいんですけど???(99.1019、滑川)



・「夜遊び禁止Vゾーン」 阿宮美亜(1993、日本出版社)

政治ネタにひっかけたパロディ路線で、あいかわらず突っ走る。
「政治ネタ」といっても、セックスの最中の会話が空虚な政治談義になっているという(おそらく、それが作中ですごく語りたいテーマでも何でもない)空虚感・脱力感が80〜90年テイストということなんスかね。私は好きです。
「まだ抜かないで……」は俳句同好会で俳句みたいなこと言いながらH。単行本「美少女グルメ」内の「おフェラ天使」と同工異曲の展開。(99.1019、滑川)



・「わかってまんがな」 たなかじゅん(1992、小学館)

ヤングサンデー連載。漫画に関するWebページ「OHP」で紹介されていたので、ソッコーマッハ(<大流行語)でゲットする。
なぜそんなに急いでゲットしなければならなかったかというと、本作に出てくる女の子が「高岡早紀」がモデルになっているからであった。

大学入試に落ちてしまった大黒茂は、何となくノリきれないながらも浪人生活を始める。彼は妹の同級生・河村早紀(むろん高岡早紀がモデル)にホレられ、まんざらでもないのだがさらに中学の同級生で予備校で再会した高野綾からも思いを寄せられる。
……などと書くと、また「理由もなくサエないヤツがモテまくるぬるま湯ラブコメかぁ」と思われるかもしれないが、さにあらず。

大黒の、「何で大学に行かなければならないのか」という迷いがそのままサルサなどの「日本ではあまり聞かれないちょっと変わった音楽」で象徴され(大黒は珍しい楽器や音楽が大好き)、浪人生の迷いと、やっぱり大学を目指そうというキモチとが、ダークになりすぎずかといって楽観に流れず、描かれている。

絵に特徴があるわけでもなく、展開も地味なのだが、全編通して登場人物たちがしゃべる大阪弁の効果もあり、読後そこはかとない心地よさが宿る。こういう作品はマンガの洪水の中で急速に忘れ去られてしまうかもしれないが、本作のようなモノこそ拾い上げておきたい。そんな気持ちにさせられる1冊。

なお、作中さりげなく出てきた代ゼミの「田村の現代文講義」は本当にイイ参考書なのでオススメ(笑)。(99.1017、滑川)



・「ちんぽ刑事」(1) 丘咲賢作(1998、講談社)

ものすご〜くちんぽのデカい刑事、「ちんぽ刑事(デカ)」の活躍を描いたギャグマンガ。
他にも「うんこ刑事」、「うんこ刑事の娘」、「肛門から何か発射するヤツ」、「うんこを盗む怪盗」、「ちんぽじゃなくてタマキンがものすご〜くデカいヤツ」などが出てきて戦う。
あまりにもクダラナイことを気合いを入れて描く、っつーのはすごいことだ。ウンコ系の下ネタははずすと目も当てられないけど、これは徹底していてある領域にまで到達している。(99.1012、1016、滑川)



・「マンガでわかる再販制度 いま出版が危ない!!」 小板橋次郎、東海林秀明(1997、講談社)

自分の店を日本一でかくしたいために、再販制度撤廃に賛成する青空書店店主・青空翔(かける)が、再販制度に反対するフリージャーナリストの楠文(ふみ)に連れられて出版界のさまざまな人に会い、再販制度撤廃派になって再販制度についてより深く学んでいくマンガ。

「ゴーマニズム宣言」があんなに売れたのなら、なぜ追随作品が出ないのか、とたまに言われるけど、コレは方法論としてどこがどうとは言えないがちょっぴり(ちょっぴりね)「ゴー宣」入ってます。なかなかの迫力ですぜ。
(99.1013、1016、滑川)

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