◆ 2000年2月中旬 ◆

2/11〜20
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2/20(日)……流転原画

 先週、秋葉原に行ったときに以前から買おうかどうしようか悩んでいた19インチディスプレイを購入してしまった。前に使っていた17インチの奴は、BNCだと端っこのほうが青みがかって表示される程度だったんだけど、D-SUBで接続するとまるで水彩の絵に水をぶっかけて横にビヤーッと引きずったみたいな表示になってしまっていた。ずっと買い換えたいとは思っていたのだ。でもディスプレイってデケェから、前の奴をそう簡単にお払い箱にするのもねえ……とか考えてなかなか踏み切れずにいた。実際、買ったからといって用途が広がるわけでもないし。でもやっぱり現物見ちゃうとダメだ。燃え上がった物欲は抑えきれない。
 まあそんなわけで、買っちまった物件が本日到着。30kgもあるパワフルな巨体だ。機種は東京特殊電線(TOTOKU)のCV821X。フラット管なのでまっ平ら。今まで表示画面が丸みを帯びて膨らんだディスプレイを使っていた身には、なんだかへこんでいるようにさえ見える。文字がビシッとシャープに表示されるので、文章メインの用途にはかなりええ感じである。USBハブ機能もちょっと便利。
 ちなみに前に使っていた奴は、親に使わせてるパソコン用に進呈。いちおう親孝行も兼ねることもできるという事実は、購入のさいに自分への大きな言い訳となってくれた。

 いらない漫画単行本をBOOK OFFで売却。67冊で4020円。エロ漫画がけっこう入っていたのでそこそこのお値段。まあ本当はYahoo!オークションで売るとかのほうが高く売れるんだろうけど、今回は金ではなく整理が目的だったので、てっとり早く売ることを重視。ああ、新しい本棚が欲しい。そろそろ同人誌用本棚も用意せんと。

【雑誌】まんがくらぶオリジナル 3月号 竹書房 B5中
 明日森うさぎ「ごうING舞ちゃん!!」。かわいくまとまった絵柄。今回は扉絵がペンタッチ細かめでいい感じ。中嶋沙帆子「電脳やおい少女」。やおいとインターネットにハマって人生こわれ気味な女の子のお話。パターンはいつもまあ一緒で、人生やめますかネットやめますかなオチなんだけど、ちまっとしつつちょっとゆるめな絵柄で楽しく読める。かたぎりわかな「みちばたトライアングル」はまあいつもの通り。もう少しギャグの回転が上がってくるといいんだけど。

【単行本】「秘密結社α」 井田辰彦 講談社 B6
「HeRaLD」などのイダタツヒコの初期の作品。初版は1993年。表題作「秘密結社α」がなかなか面白かった。品行方正、成績優秀なんだけど引っ込み思案と見られがちな女の子・ノリコさん。実は遊びたいという気持ちも持っているし、歌という特技も持っている。そんな彼女が高校に入り、ちょっと変人っぽい友達が二人できる。彼女たちとの出会いによって、徐々に活発になっていくが、なぜか秘密結社αを名乗る組織の魔の手も迫るノリコさんの日常を描く。このころはまだ今ほど絵が洗練されてないんだけど、垢抜けなさがかえっていい味になっている。女の子の友情ものを楽しく描けていて、なかなかいいじゃないですか。今では入手困難かと思うけど、古本屋などで見かけたら読んでみるのも一興かと。

【同人誌】「Silky voice.」 <竜の子太郎> 果竜
【同人誌】「竜の子太郎1999」 <竜の子太郎> 果竜
 果竜の、少女マインドあふれるキラキラとしたかわいい絵柄が毎度良い。今回は「竜の子太郎1999」に収録の「無精卵」が良い出来。この人は、少女のちょっとレズっぽい話を描かせると抜群にうまい。今回のコミティアでは「プリズム」の総集編も買ってしまったが、こちらも美しさと哀しさの同居する傑作。

【同人誌】「touch」 白井弓子
 うーむ。すごくいい。美大に通う女性が主人公。彼女は、同じ学校の男に恋しているが、男には別に恋人がいる。それも分かっている彼女は、自分の想いをさとられまいとするも気持ちは抑えきれず思い悩む。白井弓子の絵は上品で丁寧。そして構図取り、物語構成なども実にしっかりしている。全5話をまったく飽きさせず、読者をグイグイ引き込む。小手先の技でなく、きっちりお話を作ってしっかり読ませられる人だ。2月13日のコミティアで俺が買った本の中で、屈指の読みごたえを持った作品。

【同人誌】「僕らのユメ」 <YOIKO> 山川黄予美
 山川黄予美がいろいろな同人誌で発表した短編を集めた作品集。この人のカッチリした線で描かれた、地に足の着いた少女漫画マインドあふれる世界はやっぱりいい。コミカルであったりファンタジックであったりするけれど、その底に流れるものは歴然と揺るぎなく頼もしい。

【同人誌】「花」 <KIZ2000> 山川直人/ハルノ宵子/遠見友都/belne/彰永よん/驢馬
 この中では山川直人「インタルード」と、彰永よん「のみちゃん」が面白く読めた。山川直人のカケアミバリバリの作画と不思議な雰囲気ながら居心地の良い世界。それから「のみちゃん」は、単純な絵柄ながら物語は案外硬派で読ませる。

【同人誌】「少女耽奇」 <水燈> 夏目わらび
【同人誌】「訃音」 <水燈> 夏目わらび
 硬質な線で耽美的な雰囲気を醸し出す絵柄。この2冊では「訃音」が読みごたえあり。描いたモデルがすべて死んでしまうという噂のある、超美形でなおかつものすごい技量を持つ画家。そしてその弟子。彼ら二人の哀しみと願いを軸として描かれる物語。70ページちょいとページ数はあるが、絵のクオリティは高いし、シッカリと読ませる。

【同人誌】「Across。 section1」 <ちくちくNET> 西村竜
 2ページの漫画が4本の8ページ。まあ要するに2ページの漫画を4本同時に、4回のコミティアにわたって連載する……という形式である模様。4冊全部が出たら、本をバラして、1作品ずつにまとめてくださいという感じであるようだ。というわけで評価は4冊出てからということにしたいが、試みとしてはなかなか面白い。4作品全部、違う絵柄、違う系統のお話になっていて、いろいろな作風が楽しめる。

【同人誌】「もういないミサコ」 <Pocket> しゅんたいな
 何をしたいか見つけることができない少年・少女が、一室にこもり、さまざまな趣味をこなすことで自分のやりたいことを見出すための施設「情報かんりシステム」。そこに入った友人・ミサコと文通し続けるカオリ。手紙を交わし続けるうちに、カオリはミサコと自分の間にある断絶に気づいていく。スッキリした絵柄が気持ち良い。単純に「女の子同士の友情」ではくくれぬ複雑な気持ちを、うまいこと表現できていると思う。

【同人誌】「うそのない人生」1〜2 <まじめなたまご> おさわゆき
 まん丸くおっきい目。ずんぐりとした体つき。おざわゆきの絵柄はかなり特異だが、そこで描かれる物語は真摯である。AIDSキャリアーの青年の想いに真っ向から取り組んだ「メッセンジャー」といい、辛いテーマを逃げないで描く。今回のお話は、カメラ屋勤務の女性が主人公。彼女は昔、ものすごく愛した恋人が何もいってくれず、それが原因で別れたことをいまだに引きずっている。それから何年かが経ち、二人はまた再会する。そのときに、実は彼がゲイだったことが判明する。それでもやはり断ち切れない想い。辛さを抱えたまま、彼女はその想いに向き合っていく。絵柄は丸っこく(コマの角まで丸められている)一見ユーモラスだが、同時に哀愁も含んでいる。じっくりしんしんと読ませる一作。

【同人誌】「迎撃」 <大深海水淵亭> 紅茶羊羹
 いつもはドタバタギャグなどが多い人だけど、今回は人類終末モノのハードSF作品。こういう重めのお話も描ける人なのだなあ。けっこう絵柄とかもシッカリしてて、なかなか読める。ただ、ちょっとイメージが断片的な感じもする。もう少し長くしてじっくり攻めていったほうがよかったかも。

【同人誌】「take a nap」 <girl-c> 有吉
 カッチリとまとまったキャラクターが特徴的。引っ越してきたばかりの女の子の家に、ヘンなキャッチセールスやソバ屋とかが次々やってくる。ちょっと不思議な雰囲気のある作品。

【同人誌】「ルーテンゲンガー」 原田みどり
 白い紙に青インクの印刷が印象的。中世のヨーロッパ(ドイツあたりかな?)が舞台。鉱脈のありかを探し当てることを生業とする、探鉱師(ルーテンゲンガー)の少女・フリューエンの物語。白黒(というか白青)のコントラストの利いた絵柄もそうだが、お話作りもしっかりしていてすごく真面目に描かれているなという印象。読む側も真剣に取り組むに足る重厚感を備えている。商業誌には合いにくいタイプの作風かもしれないが、実力はかなりなもの。

【同人誌】「Works. vol.3」 <青空倶楽部> 西沢一岐
【同人誌】「終わりの詩 始まりの詩」 <青空倶楽部> 西沢一岐
 ヤングサンデーで「ホタルロード」を描いた西沢一岐の作品。「Works vol.3」は1999年8月29日の日記でPREVIEW弐を読んで詳しく感想を書いたのでそちらを参照のこと。今回のものはその完全版。基本的にお話などはほとんど変わっていないようだ。「終わりの詩 始まりの詩」は1997年のもの。「ホタルロード」連載直前のもので、漫画を作っていくことに悩み、それでも好きでい続けようとする作者の姿をそのまま投影したような作品。少女が海岸を思い悩みながら歩く……といった感じの9ページの短編。シッカリとした構図取りや作画力など、やはりこの人はすごくきちんと漫画に取り組んでいるのが伺える。それはちょっと窮屈そうに映ることもあるのだけど、うまく流れをつかめれば相当にすごいものを描く人である。「Works.」シリーズの作品を読むと本当にそう思う。ところでこの「終わりの詩 始まりの詩」の後書きに、西沢一岐はこう書いている。「コミティアに帰ってくる為に、商業誌で腕試しをしようと思っている」「商業誌で通用しない程度の自分に、コミティアに出る資格は無い」と。煮詰まりすぎと西沢一岐自身も認めてはいるが、しかし作る側の人がこれだけ自分を賭けて作品を作ってくれていると思うと、一般参加者として本を買っているだけの人間も気合入れて読まなきゃという気持ちにさせられる。

【同人誌】「もかいろシスターズ Ver.β」 こいずみまり
 1999年夏に作って夏コミ、コミティアなどで販売されていた「もかいろシスターズ」に、未収録だったこいずみまり姉妹モノの漫画をいくつか付け足した作品集。4コマがメイン。まんがちょとか、いろんなところに描いたものを集めたもので、作品発表時期としてはけっこう前の模様。基本的なテイストは今と変わってないけど、このころのほうが若干大人しめ。下ネタをカラリと料理してあって楽しく読める。巻末に2000年の単行本発行予定が書いてあるけど、2月1冊、3月1冊、4月2冊……。うーん、ジャカスカ仕事してますなあ。

【同人誌】駕籠真太郎のコピー画集
【同人誌】「日本全国トイレ巡り」 駕籠真太郎
 これはコミケで吉本松明さんに頼んで買っておいていただいたモノ。画集と書いたほうは、まあ要するに駕籠真太郎のラフスケッチをコピーしてホッチキスで綴じたもの。イラストだけではあるのだが、駕籠真太郎の悪趣味ぶりが炸裂していて、やはりスパイシー。女子高生が何十人も嘔吐している「船酔い女子高生」や、妊婦が大勢全裸で体操している「妊婦ラジヲ体操」あたりが絵柄的に素敵。「日本全国トイレ巡り」は、全国のおトイレの写真を集めた小冊子。時折挿入される女学生のイラストがいい味わい。


2/19(土)……業務上地下室死

 最近、近くにある小さな酒屋がどんどん日本酒に対して気合いを入れてきている。店の大半が日本酒で埋め尽くされていて、日本酒ガイドブックとかまで売るようになってきた。さらに店先には「地下室に日本酒セラー作りました」とか貼紙があったので、噂だけは聞いているが呑んだことのない東一大吟醸とか置いてたりしないかなーとか思ったのだが、意気地のない俺はなんとなくお店のご主人さんに聞けずじまい。まあ、最近おうちでは酒を呑まないようにしているのでいいんだけど(今日は久しぶりにビールを一缶呑んだが)。

【単行本】「アガルタ」4巻 松本嵩春 集英社 B6
 なんといっても絵のクオリティがスゴイ。硬質でシャープ、しかし人体はしっかり柔らかさを感じさせる緻密な描線。絵を眺めているだけで、面白そうだと思わせる。ただ、ストーリーに関してはやっぱりストレートに頭に入ってこない。面白そうな匂いをぷんぷん発散しながら、でも煙に巻かれているような感じもする。この分かりにくさが「いかにも何かありそう」という雰囲気につながってもいるんだが。

【単行本】「目隠しの国」 筑波さくら 白泉社 新書判
 ララDXで主に活動している人。この前、1月発売のララ3月号に掲載されていて、なかなか良かったので単行本を購入してみた。他人にぶつかると、その人の「未来」が見えてしまう体質の持ち主である少女が主人公。彼女はその能力によって、自分が傷つかなくてもいい場面で傷ついたりしている。だが、彼女も同じように他人の「過去」を見る能力を持つ少年との出会いを通して、その能力をポジティブにとらえられるようになっていく。スッキリとして整った絵柄の好感度が高く、少年少女の心のゆらぎをきちんと描写しお話をまとめあげてくる腕前も大したもの。「目隠しの国」3話が1999年発表で、同時収録の短編2本が1996年、1997年発表。やはり最近の作品のほうが格段に上達している。なかなか筋が良い作風で、これからにも期待できそう。

【単行本】「この愛のはてに」 小栗左多里 集英社 B6
 短編4本が収録されているが、なんといっても表題作が抜群の出来。お話は入院中のおばあちゃんと結婚したいという青年の登場から始まる。二人はパソコンを使って、通信で短歌のやり取りをして知り合ったという。家族はもちろん反対するが、二人の気持ちは固い。おばあちゃんにずっと付き添っている青年と話し合ったりするうちに家族の心もほぐれてくるが、結局おばあちゃんは退院することなく亡くなってしまう。終盤の、おばあちゃん死後のお別れ会のシーンは、優しく美しく思わずほろりときた。素直に泣かせてくれるとてもいいお話。

【単行本】「ARMS」11巻 皆川亮二 小学館 B6
 この巻では、強靭な肉体と卓越した技でARMSをも窮地に陥れる究極の格闘ファイター、コウ・カルナギがかっこいい。でもさすがに11巻もやると、刺客が出てきて戦って、刺客が出てきて戦っての繰り返しに飽きがきているのも確か。アクセントになる仕掛けがなんかも一つ欲しい。

【単行本】「地下室のプリンセス」 ぽいんとたかし 東京三世社 A5
 いやあもう、やたらめったらテンションが高い。爆乳少女を縛り上げ、肌にミミズばれや縄の痕、それから無数のひっかき傷ができるまでギュギュウと絞り上げまくる。一見コミカルで楽しそうな絵柄なんだけど、やってることの密度、容赦のなさは並大抵のものではない。飛び散る体液、激しい嗜虐の数々にただただ圧倒される。あまりにテンションが高くて実用にはちと向かないとは思うけど、ここまで妄念を爆発させてくれると実に立派。

【単行本】「いとこ」 山田タヒチ ティーアイネット A5
 前単行本の「稜」は、「おっ」と思わせる迫力のある描写のわりにはなんかイマイチもう一押しが足りないという印象を受けたが、こちらも似たような印象。迫力のある局部アップや肉弾系の描写は一見、実用的なように思えるが実際にはどうももの足りない。フードをかぶった猫耳少女の魅力が爆発する「耳フード」はいいのだけど。いいモノは持っていると思う。でも、なんか頭で考えて描いているなーという風に感じてしまう。こういうお話の場合は、やっぱり「自分でヌキたくて描きました」というドロドロしたものが欲しい。

【単行本】「彼女 −あのおんな−」 かかし朝浩 メディアックス A5
 この世を呪い、巧みに人の心を操って人格を崩壊させる、魔力とさえいえるほどの狡智と支配力を持った女性、春日香(かすか)が主人公。取り澄ました顔をした「善人」のニコニコ面を引っぺがし、本性を発露させることにより、狂気の世界へと追い込んでいく。ドス黒い呪詛に満ちており、緊張感をもってお話は進む。すべてを拒絶し狂おしくかつ冷たい春日香の目つきは、底知れぬ虚無を感じさせ、ビリビリとシビれる読み心地。エロ漫画系では珍しいくらい、コマ割りやキャラクターメイク、ストーリー構成がシッカリしている。読者が真剣に取り組むに足る、どっしりとした読みごたえのある一冊。


2/18(金)……読点ポール

 ウチのページでは読点に「、」を使っているのだけど、そのせいで文章が必要以上にくどく見えたりしてはいないだろうかとふと思った。本当は「、」のほうがいいと思うんだが、勤め先の雑誌で読点は「、」にするという決まりになっているのでそれに合わせているのだ。さすがに5年もやってると「、」のほうに慣れちゃって、今では「、」だとなんとなくもの足りなく感じてしまう体になってしまった僕なのです。

 以下、本日購入済み未読物件。

【単行本】「アガルタ」4巻 松本嵩春 集英社 B6
【単行本】「目隠しの国」 筑波さくら 白泉社 新書判
【単行本】「この愛のはてに」 小栗左多里 集英社 B6
【単行本】「ARMS」11巻 皆川亮二 小学館 B6
【単行本】「地下室のプリンンセス」 ぽいんとたかし 東京三世社 A5
【単行本】「いとこ」 山田タヒチ ティーアイネット A5

【雑誌】ヤングジャンプ 3/2 No.12 集英社 B5中
 おっ。壬生ロビン「餓鬼バラ」が新連載だ。この人は、今までにけっこうボリュームのある短編を何本か発表していて、それがどれもけっこうイケていた。このお話は、土方歳三が主役。彼が15歳のころ、遊女と恋仲になっていたのだが、貧しい身分であるがゆえにもちろん身請けはできず。そのうち彼女を身請けしようという侍が現れ、そいつに打ってかかるが結局は泣き寝入りするしかなかった。その悔しさに身を焦がすところから物語がスタート。ペンタッチに細かさと激しさが同居し、上品ながら勢いのある絵柄はすでにけっこうな完成度。うまくやれば面白くなりそう。野部利雄「Monacoの空」を見て、「そういえばこの人って、実は案外少ないあだち充的なノリを体現している一人であるな」とか感じた。物語の端々でパンチラなどを入れて「ムフ」とか言わせたりするところが。

【雑誌】週刊少年チャンピオン 3/2 No.13 秋田書店 B5平
 おおひなたごう「おやつ」が連載150回記念でついに巻頭カラーゲット。キャラクター不人気投票もあるぞ。今回の見どころはええ表情した外人二人。水島新司「ドカベンプロ野球編」。犬神がカープの4番か……。セ・リーグについては本格的にどうでもいいらしい。樋田和彦「京四郎」。おお、ついに次号で最終回。ヤンキー漫画のわりにほのぼのした雰囲気がけっこう好きだった。ご苦労様です。

【雑誌】ウルトラジャンプ 3月号 集英社 B5平
 ウルトラジャンプはあんまり肌に合う雑誌ではなかったのだが、最近けっこう見直してきている。俺の趣味とは多少ズレているけど、雑誌全体にやる気が感じられる。作家の登用も意欲的だし、ほとんどの連載作品に「〜通信」って感じのおまけページが付いてたりと仕掛けも施してある。なんだか戦闘力が上がってきた感じ。独立創刊して以来、軟弱さが増してきつつあるヤングキングアワーズとは対照的な誌面。次号でもAloha「TT」、三輪士郎「DOGS」がスタートし、藤原カムイ「福神町綺譚」が再開するなど、どんどん仕掛けてきている。このご時世にあってなお、攻めの姿勢にあるというのは頼もしい。
 今回は新連載がいくつも。まず巻頭カラー、花見沢Q太郎「BWH」。これなかなかいい。島を出て本土の学校に通うことになり、女子寮に入寮した転校生。その女子寮は、ヘンな娘も多いけどなかなか楽しそうな場所でもあり……という展開。女子寮モノってところがまずなんといっても良い。そして楽しそうな雰囲気。女の子たちの魅力満載で、かなり魂がくされている。そこがいい。六道神士「アラハバキ」も新連載。こちらはけっこうデッカい話になりそうなんで、第1回の段階ではまだよく分からず。ところでタイトルはアキハバラとなんか関係あったりするんだろうか。櫻見弘樹「イルミネイト・レッド・ドット」。短期集中連載。殺し屋家業をやっている少年のお話。元はエロ系で活躍してた人だけど(というか今も描いているが)、ずいぶん一般誌向けに絵が洗練されてきた。も一つ短期集中連載、伊藤悠「面影丸」。老面打ち師が彫り上げた渾身の面を巡り、暴君の城に乗り込む軽業師の三人組。シャープな絵とダイナミックなアクションで、なかなかの実力派。ウルトラジャンプ系では最も楽しみな素材の一人。

【雑誌】ウインクル 3月号 海王社 B5平
 たぶん先月末発売号。今さらながらなんとなく購入。まあその原因は、早見純「閉ざされた扉」が読みたいなとか思ったからなんだけど。この作品は、1989年に一水社から発行された「乙女の遺言」という単行本に収録されたものの再録。女生徒に恋慕する理科教師が、彼女を監禁、凌辱する。この男の妄想がすばらしい。「僕以外の何モノをも見て欲しくない」「耳にして欲しくない」「僕のことだけを考えて欲しい!」というセリフのバックで、耳の器官や脳味噌の断面図が描かれたりといった演出が男の妄執をビシバシ感じさせる。そして最後は、女生徒の目や鼻を縫合し、完全に外界と遮断してしまう。痛快なまでに彼岸へ行ってしまっていて、頼もしいことこの上ない。目次ページに「そろそろ活動再開しようかな」という著者コメントもあり。どうぞどうぞ。うらまっく「Prisoners」。12歳で精神の成長が止まると同時に芸術の才能だけがメキメキと発露してしまった男と、その姉の禁断の愛……といったお話。ここでも短編を達者にまとめ上げている。ただ、設定的にけっこう面白くできそうなので、これは一話でまとめないほうが良かったような気がする。RaTe「パパのビデオ」。最近、精液系のお話を描くようになってからずいぶん面白くなってきた。ほっぺたのもったりした絵はそれまでも好きだったが。

【単行本】「BECK」1巻 ハロルド作石 講談社 新書判
 おもしれえ。月刊少年マガジン連載作品。普通すぎるくらい普通の生活を送っていた中学生男子・田中幸雄(コユキ)が、ある日、ベックといういろいろ縫い目のあるヘンな犬を連れた少年・竜介と出会う。実は竜介は、かなりの腕前を持ったバンドマンであり、彼との出会いがコユキを変えていく。コユキの非凡なボーカルとしての才能の片鱗が示されたところでこの巻は終わるが、これからの展開に期待を持たせる。物語を見せていく腕前が、ハロルド作石は非常にうまい。少年の成長物語が、確かな手応えをもって読者に伝わってくる。

【単行本】「独裁【FASCIO】」 佐野タカシ フランス書院 A5
 まだエロ漫画雑誌でやってたころのお蔵出し的作品集。基本は女の子のような美少年が、包茎ちんちんをお姉様にしごかれまくってひんひんいうパターン。眼鏡っ子美少年にメイドのかっこうさせたりするあたり、妄想爆発でよろしいですな。やはりテンションが高い。ただ、同じ系統の作品が続くので、単行本全体として一本調子ではある。

【単行本】「泉家のおくさま!」 BENNY'S 司書房 A5
 BENNY'Sの作品は、女性作家っぽさの漂う(本人が男性なのか女性なのかはどうでもいいとして)コメディタッチながら、女体がぷりぷりしててけっこうH。乳輪は大きめだがあんまり気にはならぬ。ペンタッチの強弱が利いていて肉感的。コメディとしても気軽に楽しんで読めるし。


2/17(木)……百年の購読

 謎の台湾人たちとの昼食会に出席。こちらは謎のアメリカ人で対抗。

 入手済み未読物件は以下のとおり。ウルトラジャンプは、今月が定期購読の第1回め。ビームもそうだが、定期購読にしとくと荷物が減るし買い忘れもないし、なかなかいい。アフタヌーンみたいに重い奴とか、ネムキみたいに入手しにくい奴とかもぜひ始めてほしい。

【雑誌】ヤングジャンプ 3/2 No.12 集英社 B5中
【雑誌】週刊少年チャンピオン 3/2 No.13 秋田書店 B5平
【雑誌】ウルトラジャンプ 3月号 集英社 B5平
【単行本】「BECK」1巻 ハロルド作石 講談社 新書判

【雑誌】ヤングサンデー 3/2 No.12 小学館 B5中
 新井英樹「ザ・ワールド・イズ・マイン」。スゲエ。今回は、トシに殺される女性の視点で物語が進むのだが、殺されていく人間のリアルタイムな視界をここまで迫力満点に描けるとは。走馬灯なんぞという甘ったるい言葉が差し挟まる隙などまったくない。今回のサブタイトルはズバリ「殺されました」。その表現の力強さ、確かさ、到達点の高さにゾクゾクした。原秀則「シーソーゲーム」。なんかラブコメムードが高まってきた……とか思ったら、またしてもしばらく中断。今度は5月11日発売予定の24号に掲載。これだけ中断が多いと雑誌で追っている人間にはつらい。かといって、この作品は単行本で読むほどでもないし。岩田やすてる「球魂」。スグルと鄭の試合が最高潮。静止する一瞬とダイナミックなアクション。なかなか息づまる試合をかっこよく描けている。山本英夫「殺し屋イチ」は、イチ復活でいよいよ臨戦態勢。まずはイチvs.金子あたりから始まるのかなあ。竹下堅次朗「カケル」。女王玲子がかなりかわいそうな状況に。切ないですな。

【雑誌】モーニング 3/2 No.12 講談社 B5中
 高橋ツトム「鉄腕ガール」第2回め。高橋ツトムのシャープな描線に、ヒロインのしなやかさ、強靭さが映える。ツリ目がかっこいい。お話にも引き込まれる。とりあえず好調に滑り出した。作:西村ミツル+画:かわすみひろし「大使閣下の料理人」。かわすみひろしの描く女性キャラは、簡潔な線だけどほのかな色気もあって惹かれる。今回は美人が3人も出てきてその魅力を再確認。三宅乱丈「ぶっせん」が巻中4色カラー。かなりカラーページを無駄遣いしてて楽しい。2月23日には単行本1巻も出る。ウレシー。さだやす圭「ダニ」。ぶちっと最終回。

【雑誌】別冊ヤングマガジン 3/1 No.007 講談社 B5中
 平本アキラ「アゴなしゲンとオレ物語」番外編。今回は異様にソウルフルでよかった。ゲラッパ、アーンド、ゲローレ!! 小田原ドラゴン「松屋ブルース」。松屋しか頭にないような暑苦しい男の入社面接風景。男の一生懸命さとシャウトの内容の下らなさのバランスがいい案配。少年マガジンで「LET'S ぬぷぬぷっ!」を連載していた三ツ森アキラが青年誌初登場。タイトルは「イケイケヨーコちゃん」。伝説のイケイケギャルに憧れて彼女の足跡を追う、Clubデビューしたばかりの女の子のお話。女の子がなかなかかわいい。松本光司「サオリ」は最終回。あんまり目立つ作風ではないけど、骨組みはシッカリした感じなのでまとめて読んだらけっこう面白そう。天野明「ぷちぷちラビイ」。キレているときのテンションは高いが、もう少しギャグでない部分の割合が増えたほうがメリハリが利いていいのではとか思う。前川かずお「闘破蛇烈伝DEI48」。ミミガーズが一人足りなくなってると思ったらそういうことですか。なお、「DEI48」のオフィシャルホームページがなんかできている模様。「馬鹿4コマ漫画」とかが楽しい。河田雄志「ゴッドキーパー ハットリ」。ワールドカップ決勝戦 日本vs.ブラジル。4-0でリードする日本が投入した選手はGK(ゴッドキーパー)ハットリ。彼の超人的な活躍は感動を呼ぶが、点はとられる。ギャグがリズミカルに繰り出されてきてわりと面白い。
 次号は別冊ヤングマガジンはお休みで、3月21日に、ヤンマガ創刊20周年記念増刊の関西限定ヤングマガジン「ヤングマガジンKANSAI」が出るらしい。これって巻頭でも売るのかなあ。売らないようだったら、関西方面在住の方にお願いするしかないかも。

【雑誌】コットンコミック 3月号 東京三世社 B5中
 なんか最近、コットンコミックを読むのがとても楽しい。紙の悪さ、作品の安っぽさ、C調っぷり。レベルは高くないんだけど、なんか読んでると安心する。全般に垢抜けないというか、ダサいところがいい。
 駕籠真太郎「駅前粒子」。今回も正方形のコマ、縦3段×横2列のおなじみのコマ割り。シャワーの穴とか、電話の受話器の口の穴、それからぷちぷちマットみたいな、規則的に丸い穴や凸が並ぶものに魅せられてやまぬ男のお話。リズミカルに次々とそういった物体を登場させつつ、残酷描写を飄々と楽しそうに描く。最近、駅前シリーズはなかなか好調だが、今回も面白かった。それから、毎度のことながら渡辺ヒデユキ、サセマンシリーズが面白い。今回の「最後の決戦!」も馬鹿馬鹿しくて脱力感のある展開が最高。あと、雪見野ユキオとか、呉屋明とか、みみずしきとかがちゃんとエロをやってるのもなんかうれしい。それを実用に供するとかではないのだが。

【雑誌】ZetuMan 3月号 笠倉出版社 B5中
 最近テンション落ち気味だったが、今号は榊原薫奈緒子とZERRY藤尾の二人が揃っていたので、だいぶ印象が違う。榊原薫奈緒子「アストロメイド」は、ぷりっぷりでかまびすしくて楽しい。今号はわりとエロ方面の比重が置かれているような。ZERRY藤尾「Beautiful Boy」。女の子みたいな男の子と、ボーイッシュな女の子のラブコメ。前半はギャグテイスト、中盤でラブラブ、終盤でしっかりエロをやったと思えば、最後にまたギャグでうっちゃる。きっちりといろいろな要素をぶちこみつつきれいにまとめあげる構成の妙。うまい。ZERRY藤尾といえば、ホームページが開設されたようだ(なんとpicnic.toサーバーだ。いつの間に……)。1999年の冬コミに出ていた同人誌も通販できるので、スペースに行ったけど完売でイヤーンと思った人はぜひリベンジを! 小林少年「香ル造花ノ茎ニ滴ル露ニ溺レル虫」。タイトルからしていい感じなんだけど、この人はエロもうまいしコメディもできるし、本当に器用。かかし朝浩「いぬ少女」。この人の作品は、漫画としてしっかりしている。エロうんぬんだけでなく、しっかりストーリーを作って読ませる。キャラクターの表情もダイナミックで、表現が分かりやすい。

【単行本】「考える侍・やぁ!」 山田芳裕 小学館 文庫
 小学館による山田芳裕作品の文庫版での復刻第2弾。今回は「考える侍」「やぁ!」のほかに読切の「グレイト2」も収録。データは山田芳裕ページのほうを参照のこと。


2/16(水)……おてぃなみ拝見

 TINAMIX新創刊。おめでとうございます。

 本年度の小学館漫画賞が発表。
●少年向け部門:河合克敏「モンキーターン」、作:ほったゆみ+画:小畑健「ヒカルの碁」
●少女向け部門:いくえみ綾「バラ色の明日」
●児童向け部門:ながとしやすなり「うちゅう人 田中太郎」
●審査員特別賞:日暮修一(ビッグコミック表紙作画)、村松誠(ビッグコミックオリジナル表紙作画)

 今年はわりと納得の顔ぶれ。とくに少女向け部門で、いくえみ綾「バラ色の明日」が上がっているのがいいではないですか。ただ青年部門が該当者なし。新井英樹「ザ・ワールド・イズ・マイン」、山本英夫「殺し屋イチ」とかじゃダメかなあ。内容がヤバいか。原作者だけど坂田信弘にいろいろな漫画の合わせ技で……っていう線もいいかなあとか思ってたんだけど。

【雑誌】週刊少年サンデー 3/1 No.12 小学館 B5平
 というわけで、小学館漫画賞受賞の河合克敏「モンキーターン」が巻頭カラー。今回はレースシーンがメインではないので地味な展開だけど、今後に向かって着々と布石を打っている。久米田康治「かってに改蔵」。今、流行りの「2」がテーマ。ほかの業界はともかく、漫画に関しては2がダメなケースは本当に多いが、さて「リングにかけろ2」はどうなるか。

【雑誌】週刊少年マガジン 3/1 No.12 講談社 B5平
 本多康昭「泣くようぐいす」再開。今回は野球はなく、下品ギャグのみ。なんかそんなにムリヤリギャグにせんでも……とは思うのだが。赤松健「ラブひな」。今回はまたしてもラブ度が強まる。根性がくされててたいへんよろしいと思います。

【雑誌】ヤングキング 3/6 No.5 少年画報社 B5中
 五十嵐浩一「迷惑の人」が月イチで新連載。「めいわく荘の人々」に出てきたオタクな人、安川くんが主役。ちなみに安川くん2号は出てこない。小池田マヤ「聖★高校生」。今回も神保くんは最悪で、息苦しさの募る展開。青臭くって、そしてハードな漫画である。

【雑誌】ヤングマガジンUppers 3/1 No.5 講談社 B5中
 桑原真也「0(ラヴ)リー打越くん!!」。今回はますます切羽詰まった展開に。藤原京花が悪のゴンゲルゲと化し、打越はツライ決断を迫られることになりそう。地下沢中也「毛付き!!フラン健DX」が新連載。といっても登場キャラは、以前やっていた「デカちゃん」「デカママ」あたりとほぼ同じ。脱力系の刑事モノギャグ。下らなく馬鹿馬鹿しいノリは健在。今回のE-OppersはSABE「オッパイ女」。オッパイがデカい女が、オッパイ殺し屋になり人を殺すという4色カラー4ページ。デカいぞっ。

【雑誌】メロディ 3月号 白泉社 B5平
 雁須磨子「どいつもこいつも」は、いつものようにほんわかぱっぱな面白さ。外は寒くても「どいつもこいつも」ワールドはいつも春。自衛隊が舞台であることを忘れてしまいそう。桑田乃梨子「男の華園」も、基本的にはほんわかしているのだが、ラストはちょっと切なくしみる。新人さん、沢野湯ユキ「SELFISH LINE」。スマートでソフトなタッチの絵柄はなかなか見どころあり。ただ、とくに序盤、一人の女を巡って二人の男が争っているシーンは、構図取りが悪くて各キャラクターがどう動いているか、ひいてはどれが誰なのかが分かりにくくなっている。絵柄的なスジはいいので、演出力が向上すればもっと良くなりそう。


2/15(火)……軍鶏ソーセージの秘密

 16日の明け方4時くらいまでかかって、TINAMIX 3/1号用の原稿をいちおう一通り書き上げる。当初の予定よりもずいぶん長くなってしまったが、まだ書き漏らしていることがいろいろあるような気がしてならない。このあたりは連載を続けていく中でできるだけフォローしていきたいけど、どんなもんかなあ。今回はジャンキーズと重なったこともありけっこうヒイヒイいうハメになったが、来月は本業とジャンキーズとTINAMIXが重なることになる。計画的にやらないと相当ひでいことになりそう。

【雑誌】ビッグコミックスペリオール 3/1 No.5 小学館 B5中
 東本昌平「SS」。車の疾走感の描写が痛快。地味な作風だが、土性骨が据わっている。渋くいい仕事している。作:坂田信弘+画:かざま鋭二「でんでん虫」は、なんだか次号で最終回。ちょっと消化不良気味。

【雑誌】ビジネスジャンプ 3/1 No.6 集英社 B5中
 久保田眞二「ホームズ −ロンドンの竜−」。日本からロンドンにやってきた少年・大五郎がホームズと知り合い、冒険にめぐりあう。ラストのオチがなかなか決まっていて面白かった。絵柄は森田信吾系。作:近藤雅之+画:有賀照人「警視総監アサミ」。最近、何気に注目している作品。この作品でのエロシーンの盛り込みぶりはあまりにも無意味で、シュールに感じてしまうときさえある。本編そっちのけな感じが馬鹿馬鹿しくて味がある。素晴らしくはないが。

【雑誌】漫画アクション 2/29 No.9 双葉社 B5中
 巻頭カラーは作:橋本以蔵+画:たなか亜希夫「軍鶏」。今まで一度も負けたことがないという喧嘩屋とリョウの死闘が描かれる。静のコマと動のコマできちんとメリハリが利いており、迫力のある画面を創り出している。作:森高夕次+画:あきやまひでき「おさなづま」では、「めぐみのピアノ」のアニメ化話が進む。今回はおさなづまは全然出てこないんだけど、脇役キャラも十分立っていてグイグイと読ます。

【単行本】「未来のゆくえ」 やまむらはじめ 少年画報社 B6
 実はこの文章は、昨年の11月後半くらいに書いたものである。どうやら書いた後、日記のファイルのほうにペーストするのを忘れてたみたいなのだ。今さら……という感じもするのだが、せっかく書いたのを載せないのももったいないし、書き留めて残しておくことの重要性を考えて載っけておく。

 短編集である。この作品に出てくるキャラクターたちは、おおむね目つきが暗い。そして実にハードでビターな青春を送っている。とある男は死んだ親友の彼女に対する報われぬ想いを抱え続け、またとある男が高校時代の想い人に久しぶりに再会したと思ったら彼女はヤク中だったり。この作品集の中では「肩幅の未来」が出色の出来。一見幸せそうな恋人たちの話だが、半年以内に起こるらしい何か決定的な断絶を暗示しつつ、それに直接はまったく触れずにしめつけられるような後味を残して終わっていく。まるで部屋の各所に固定されたカメラから覗き見ているかのような、いっぷう変わったアングルも効果的に作用している。読者に対する情報の隠蔽と開示が実に巧みである。まあここらへんは物語の分かりにくさにもつながっているので、両刃の剣でもあるのだが。読者のハートにザクリと切り込む鋭利な想念を持ちつつ、表現はときに突きっ放すようで甘えを許さない。そしてハードなストーリーをじっくり読ませるだけの技術を併せ持っている。


2/14(月)……熱湯珈琲園

 コミティアで買った同人誌の残りを読みたいところだけど、ちょっと時間が足りないので我慢我慢。

【雑誌】まんがタイムジャンボ 3月号 芳文社 B5中
 やはり、こうの史代「こっこさん」目当てなのだ。毎回、1カットくらいは見開きや1ページぶち抜きとかでスコーンと美しい情景描写が入る。一枚絵だけでも、その見事さに惚れ惚れしてしまう。心暖まるお話と、見せ場シーンの挿入され方の気持ち良さ、そして柔らかくて優しいカケアミ系のペンタッチ。昨日のコミティアには出ていなかったが、最近は毎月読めるのでうれしい。クレヨンしんちゃん特集号で描いているほうは立ち読みで済ませているけど。

【雑誌】ビッグコミックオリジナル 3月増刊号 小学館 B5中
 井浦秀夫「AV列伝」。今回はチョコボール向井編の後編。チョコボール向井は駅弁ファックで有名な浅黒い人だ。AVに賭ける、生真面目な職人根性に感心。あの駅弁にはこんな想いが込められていたのだなあと思うと、AVを見る目が多少変わってきそう。松野美鳥「軽業末広一座」。明治時代の下町を舞台にした、軽業一座に入った青年の成長物語。ほのかな垢抜けなさが心地よい味わい。そしてこの雑誌の目玉は、やはり花輪和一「和一怪奇おかし話 コブとり爺」である。別に鬼が出るわけでもなく、爺が踊るわけでもなく。毎度出てくる、金属とも粘土ともつかないような材質の身体を持った宇宙人的な何かがいい。不気味なんだけど、妙にのどかで。花輪和一キャラは、ものを食うときの表情、笑顔などたいへんに「ええ顔」している。花輪先生は偉大なり。

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 2/28 No.11 小学館 B5中
 高橋しん「最終兵器彼女」。ネタバレになるので詳しくは書かないが、4色カラーの扉ページがえらくかっこいい。そして本編も、描写が美しく、おセンチでトキメく。なかなか泣かせる展開。「いいひと。」は好きじゃなかったが、この作品はめきめき面白い。柳沢きみお「SHOP自分」。最近、扉の文句がいい。今回は「近づきたいんだ。もっと…自分に。」とデカデカと。毎度、脱力させてくれる。「”自分発見”のためのライフ・スタイルを模索する大好評連載!!」ときて、さらに「チョクのあがく姿が満載!!単行本1〜2集熱烈発売中!!」。なんかもりもりと単行本が欲しくなってきやしませんか?

【雑誌】週刊少年ジャンプ 2/28 No.11 集英社 B5中
 富樫義博「HUNTER×HUNTER」。今回は時間が足りなかったのか、鉛筆描きのラフ状態のまま掲載されているページが何ページか含まれる。作者コメントによれば、単行本収録時には直すとのこと。

【雑誌】ヤングマガジン 2/28 No.11 講談社 B5中
 三田紀房「甲子園へ行こう!」が巻頭カラー。迫力のある描写で、ピッチャーのメンタル面、ときに地味だったりする部分を丁寧に描いているのが面白い。160km/hの速球や魔球のごとき変化球を投げずとも、場外ホームランを打たずとも、野球は面白く見せられる。実際の野球だってそんなものなのだし。今号は月イチの安野モヨコ「花とみつばち」、安達哲「バカ姉弟」の2作が掲載される号。とくに最近の「バカ姉弟」はかなり面白くなっている。バカ姉弟の日常をつづっているだけで、別になんかでっかい事件があるわけでもないのだが、やる気のない空気に呑まれて気持ちが良くなる。まとめて読んだらけっこうすごそうだ。蓮古田次郎「しあわせ団地」。連続6週掲載の5回め。はだか夫は今日もダメ人間だが、むだに元気だ。天野明「ぷちぷちラビイ」。今回はダジャレなど、ギャグのキレが良くて面白かった。この続きは2月17日発売の別冊ヤンマガで。さらにヤングマガジン本誌の3月6日発売号にもまた載るらしい。


2/13(日)……てくまく麻薬をん

 創作系同人誌即売会であるところのコミティアに行ってきた。いつもは午後になってから回る感じなんだけど、今回は午前中に到着。でも昨今ブレイク著しいと推察されるTAGROさんのところの本はすでに売り切れていて残念。今回は小野夏芽、こうの史代、山田参助、紺野キタ、犬上すくねといったあたりは出てないようで残念だったけど、ほかにも読むべきであり買うべきである本はいっぱいあったわけで、なんかいつもよりたくさん買ったような感じ。即売会では絨毯爆撃的に机の上に載っかっている本をざかざか見て回るわけなのだが、ずっと首が進行方向から斜め横を向いていて、しかも時間が経つにつれ荷物が重くなることもあって、回り終えるころには腰にくる。こういう場面でも運動不足を痛感するのだ。
 本だけでなく、今回も本当にいろいろな人にジャカスカお会いできて、ええ感じでした。会場でお会いした皆様、こんな僕とお話してくれてありがとうございました。友達少ない僕ちんだけど、まだまだ捨てたもんじゃないなもしれないとか錯覚できるひとときです。

 本日感想を書いた本以外では以下のようなものを入手。兄&俺合計で今回は46冊。感想は読み終わりしだいゆるゆると。なお、< >内はサークル名。感想のところでは敬称略。

●俺購入物件もしくはいただきもの
【同人誌】「プリズム愛蔵版」 <竜の子太郎> 果竜
【同人誌】「Silky voice.」 <竜の子太郎> 果竜
【同人誌】「竜の子太郎1999」 <竜の子太郎> 果竜
【同人誌】「touch」 白井弓子
【同人誌】「僕らのユメ」 <YOIKO> 山川黄予美
【同人誌】「花」 <KIZ2000> 山川直人/ハルノ宵子/遠見友都/belne/彰永よん/驢馬
【同人誌】「少女耽奇」 <水燈> 夏目わらび
【同人誌】「訃音」 <水燈> 夏目わらび
【同人誌】「Across。 section1」 <ちくちくNET> 西村竜
【同人誌】「もういないミサコ」 <Pocket> しゅんたいな
【同人誌】「うそのない人生」1/2 <まじめなたまご> おざわゆき
【同人誌】「迎撃」 <大深海水淵亭>
【同人誌】「take a nap」 <girl-c> 有吉
【同人誌】「ルーテンゲンガー」 原田みどり
【同人誌】「新 戦え! 筋肉番長」1〜3巻 加藤礼次朗
【同人誌】「Works. vol.3」 <青空倶楽部> 西沢一岐
【同人誌】「終わりの詩 始まりの詩」 <青空倶楽部> 西沢一岐
【同人誌】「もかいろシスターズ Ver.β」 こいずみまり
●兄ゲット物件
【同人誌】「みるくきゃらめる5号」 <みるくきゃらめる堂>
【同人誌】「やまむらはじめ『未来のゆくえ』を読む」 吉本松明
【同人誌】「ぴあのの気持ち」 石川ひでゆき
【同人誌】「Private Beach」 <つくりもの> 三五千波
【同人誌】「けだもののように2-6」 <ぐんたまカンパニー> 渋蔵
【同人誌】「おめでとう」 志賀彰
【同人誌】「アリスの國のアリス」 <真空館>
【同人誌】「聖処女13騎士団」 あびゅうきょ
【同人誌】「海にでる川山の灯り」 <Hee-Haw>
●吉本松明さんにお願いしてコミケで入手しておいていただいた物件(購入担当は松明氏の肉親。ご両人に感謝)。
【同人誌】「巨大愛子責め地獄」 駕籠真太郎
【同人誌】「日本全国トイレ巡り」 駕籠真太郎

【同人誌】「げんこつさん」 <みりめとる> 小田智
 小田智=小田扉。力は抜けているのだけど、妙に小粋。瀟洒である。テンポ良く虚をついたギャグを小気味よく連発してきて、心の微妙なツボにすこんすこんと入りまくる。絶妙にタイミングを外す脱力感。味のある一枚絵。すごいセンスだ。

【同人誌】「クズの脳みそ!」 <ち> 上原昭人
 前回のコミティア後、掲示板で話が盛り上がりまくり、買っていなかった俺は歯噛みしまくって「くそう今に見てろ」と夕日につぶやいた「ち」の本。これ以上ないくらいにぶっとい線で、画面にビシ!バシ!いわせてもらうでえ〜的にぶちまけられるドロドロした脳味噌の精髄的な絵が無性に心を打つ。ドラッグに溺れる人が、今頭に思い浮かんだイメージを忘れないうちに書きつけておこうとして、ハイスピードで書きなぐり、醒めたあとに「何これ……?」といいそうなイメージが続く。同人誌でしかやりようのない作風ではあるが、同人誌でもこのようなものはほかにないぞ的な作風。噂に違わぬいいものです。

【同人誌】「もっと麻薬を」 <ち> 上原昭人
 これが本のタイトルなのかどうかは正直よく分からない。なんといってもすごいのが本の作り。ながーい紙の端っこと端っこをつないで折り曲げ、上から見ると☆のような形になっている筒状の本なのだ。だからどこから読み始めていいか、右左、どっちの方向に読み進めていいものやら迷う。ナチュラルでこういうことやっちゃうあたりがすごいなあ。一本どころか十本くらいとられた。

【同人誌】「Night-Marchenの幻想雑誌 2000.2.13版」 村山慶
 黒々とした髪と瞳。それから広いおでこの女の子が鮮やかな魅力。可愛い女の子のセリフであるのに、やけに漢字の多い文芸チックなセリフ回しにも味がある。不思議な雰囲気を持った人。カラーコピーの表紙も毎回色がくっきりと鮮やかで目を惹く。黒の黒々しさがとても艶やかなのだ。まあこれは印刷のせいもあるんだろうけど。

【同人誌】「ハリとオレンジ」 <GRAIL> きづきあきら
 以前「少女楽園」という本で発表した作品を、雑誌投稿用にリメイクしたものなのだそうだ。中国から来た女の子と、相手のことをただ好きでいられて裸で抱き合うような関係になった日本人女性のお話。きづきあきらの絵は、線はキッチリしているがしっとりとした色気が漂っている。すでに商業誌でできるだけの構成力、画力は持っている人なので、どんどん日の当たるところに出て行ってもらいたい。これからは同人誌での新作はしばらくお休みになるかもしれないということで、その点は残念だが、そのぶん商業誌に載っていただけると幸い。

【同人誌】「コミケスター」 中森一郎
 中森一郎の作風は非常に愉快だ。「さぁーおっぱいもむぞお」「ペチャだろうが男だろうがもむっ!!」という力強い言葉から始まる本編も、ヤケクソで暑苦しくて下品、でもスペクタクルでパワフルに仕上がっていて有無をいわせず読ます。とっても楽しそうだ。こういう人がずっと漫画を描き続けていてくれるというのは、なんとはなしに心強い。

【同人誌】「伝言ゲーム」 <parking?> 南研一
 売価10円。左上のコーナーをホチキスで留めてあり、1枚1話で7話分のお話が収録されている。南研一の、さりげなくファンタジックで小粋な作風はとても好きだ。ところでセリフが横書きなのだから、左のコマから右のコマへと読み進むようにしたほうがよかったのでは? 左上のコーナーを留めてあるだけに余計そう思う。最初、一瞬とまどった。

【同人誌】「アンダー」 長縄
 イジメられっ子だった少年が、自分の殻を克服して女の子にズケズケと告白できる自信たっぷりな奴になるまでの物語。途中でいっぺん底まで落として、そこからまたずいーっと引っ張り上げていく展開とか、面白いではありませぬか。本来はホモやらレズやらを描いている人ならしく、これは特例的な本のようだけどなかなかどうしてよくできていると思った。

【同人誌】「へなチョコ」 <突撃蝶々> 山名沢湖/二条都示古/コーノコーイチ
 二条都示古の「示古」は示へんに古の一文字。山名沢湖のキュートな絵柄と、ファンタジイ魂には、毎回めろめろになってしまう。かわいい絵柄なのだが、かわいいだけじゃねえ。描かれるのはなんてことないものであっても、味付けが良ければおいしく食せるってもんです。

【同人誌】「ASPHODEL」 <Angel@Air> 秋乃/中森一郎/柚たかき/藍月紘一郎
 まずは巻頭の秋乃「ちいさなおへや」が良い。ちいさなおへやの中で、遊ぶ少女二人。片方の少女はいつも親に虐待されて何かしら怪我をしている。閉ざされた空間の中で二人の少女の想いがぐるぐると回る。キュートな絵柄で、きれいに完成した作品。藍月紘一郎「実験動物少女のり子ちゃん」は、女の子がかわいいのと楽しそうなのがうれしい。3ページと短くはあるが。

【同人誌】「LOLITA TALKING」 梧桐風子
 4コマ&イラスト。下らないギャグに味があって楽しい。

【同人誌】「学園ラブコメ」 <三人部屋> 淵/梧桐風子/大西
 この3人のユニットはすごく楽しそうで大好きだ。今回は大西画による禍々しい図柄の時計とか売ってたんで、思わず買ってしまった。不吉な絵で奇矯な物件をユーモラスに描く大西は、ネムキあたりではすぐ使えるであろう逸材。さらに奇妙なノリでサバサバとヘンなギャグを描く淵、絵的には一番まとまっているがやはりギャグテイストは他の二人に負けず劣らずな梧桐風子。一枚絵でもものすごい大西がとくに目立つが、いずれ劣らず面白い。淵の「おはよう船長」を買い忘れていたのは今回のコミティアにおいて、TAGROの本を買えなかったのと並ぶ痛恨事。

【同人誌】「中学生日誌 第1号」 <ぼそけち商会> ぼそけち2号
 藤子テイストあふれる簡潔で味わい深い絵柄が毎度いい。中学校の超化学部。マッドなメガネ君部長。本当に幽霊の幽霊部員。帰国子女。変型するロボット少女。放課後の実験室。ラベンダーのかおり。

【同人誌】「Winter Child」 <あまちゃづる三昧> 檜木倭世
 まだラフの状態のコピー誌なのだが、きちんとでき上がるのが楽しみになる。雪の日に戯れる恋人たちの情景を描いた作品。ラフの段階であっても、絵柄の気持ち良さ、筋の良さが伝わってくる。印象的な構図作りとかもしっかりしているし。

【同人誌】「ポップライフ」 <DARUMAYA FACTORY-e」 さくらのりたか
 若さでムンムン。青臭さよりも、今回はヌルめの恋愛ぶりを押し出した感じ。「恋するために僕は生まれてきたんだ。」あたりは、ラストの締め方がなかなかズバッとしてて気持ち良かった。まあまだ絵的に至らないところもあれど、今はそれも含めて味になっている。ガンガン描いてガンガン挫折してそれでもまたガンガン描いて、そしてもっともっとすごい作品を描いていってほしい人。今度はもっと長い作品も読みたい。

【同人誌】「世界はあぜ道2」 <STUDIO MAILAND」 駿馬
 男子生徒が、あぜ道を通って帰る。それだけのなんてことのない風景なんだけど、清涼感のある高い描写力で気持ち良く読ませる。青春モノの邦画的なスピリットにあふれていて、毎回しみじみといい。

【同人誌】「ILLEGAL STYLE Vol.3 RINKAI」 <山本内燃機> 山本昌幸
 今回は引き続き線をだいぶ簡潔にしてまとめてきた印象。店で買物した少女を追って街をさまよっていた少年が、ふとした拍子に隠された武器庫に迷い込んでしまう。そこは偏執狂的で残虐な武器商人のアジトであり、先ほどの少女は、この武器商人に舌を抜かれて監禁されていた。……というところから始まる今回も36ページの作品。この人はいつもまとまったボリュームでドーンと見せるお話を描いてきてくれるのでうれしい。女性キャラがどんどんうまくなっているとの、アクションシーンを積極的に描こうとしてきているのが伺える。ただ、今回は設定などの面では消化不良気味ではある。もう少しページ数があっても良かったのかもしれない。次回作は60ページとのことでまたまた楽しみ。


2/12(日)……くおらんちんどもとっちめちん

 12日の明け方に、ホットミルク4月号分のジャンキーズ用原稿が完了。今回は24冊分。最近だいぶ自分の書くぺースがどんなもんかつかめてきたが、ジャンキーズ原稿の場合だと、1冊(280文字)分の原稿を書くのにだいたい30分かかる。読む時間を入れると1冊あたりの所要時間は45分といったところか。連続して書く場合は、集中力が続くのは6〜8冊程度まで。それ以上やると気持ち悪くなってくる。

【雑誌】コミックビーム 3月号 アスペクト B5平
 志村貴子「敷居の住人」。ちょっと影が薄めだった近藤ゆかが今回のメインで、いきなり色濃い影をドスーンと落とす。孤立して強がりつつくじけもする魂たちを、あのオシャレな絵柄で逃げることなく描く。じんじん来ます。吉田戦車「ひどいじゃないか兄さん」。素晴らしく面白かった。例の、ひげを生やして赤や緑の服を着用、いいトシしてといんといんと跳ね回っている、不気味なおやじ兄弟のお話完結編だ。兄弟のうっとうしさ、歯の生えた小鳥、うざったい人々。吉田戦車はなんと「いい顔」を描くのだろう。しびれる〜。タイム涼介「東京カイシャイン」。あけすけに下品で下らなくて良い。馬頭ちーめいが体調不良ということで「ボトルシップ・トルーパーズ」は途中までの掲載。ここで第一部・完にして、体調回復後ま第二部再開する運びとのこと。その分、桃吐マキル+福実未ノアル「蟲酸」の第2話が掲載されているのは不幸中の幸い。蟲の国からやってきた、ナゾの転校生ムシズさんの奇妙な生態を描くイカれた作品。ダイナミックでエクスクルーシブ。面白いナリ。市橋俊介「テルオとマサル」。テルオとマサルが彼らの河原野球(というかなんというか)によって負傷した徘徊老人を拾得する。キャラクターはくどいけど、ギャグはさりげなくかつクレイジー。とくに身勝手で暑苦しい顔で思わずイジメたくなるような空気をまき散らす、眼鏡男マサルがお気に入りだ。
 しりあがり寿「弥次喜多 in DEEP」、羽生生純「恋の門」の2作は、コンスタントに迫力があってしかも高いレベルで突っ走っている。今号も充実。有川祐「彼女とデート」は、セッちゃんがついに八神に気持ちを伝え急展開。今回はいつになく表面的に目立つ動きがあった。有川祐ホームページによれば全8話で今回が6話め。そろそろクライマックス。ますます面白くなってきた。いましろたかし「釣れんボーイ」。ヒマシロ先生、ラブレターですかあ。うーむ、ますます募るダメ人間ぶり。素晴らしい。そして後編掲載の松本充代「陽の下の恋人」のダークな読後感にまたまたしてやられる。きれいな少年への愛が高じて、小学校の教師を目指した女性。陰湿な策略を巡らし、ストーカーまがいの行為をし、可愛い少年を追い回す成人女性の執念深さに慄然とする。美しくない子供は「野菜」として、心中からバッサリ切り捨てる。さっぱりした絵柄なのに、その描写は果てしなくねちっこい。ズーンとした気持ちになれるヘヴィな一作。松本充代はやっぱりスゴイぜ。
 あと、桜玉吉「しあわせのかたち愛蔵本」全3巻プラス1冊(ファンブック「桜玉吉のかたち」)が2000年3月に出るらしい。今回は「WoodBallの唄」のCDはつかないのかなー。うっぼーうっぼーうぼうぼううぼー。カネコアツシ「BAMBi」は映画化決定。

【雑誌】ネムキ 3月号 朝日ソノラマ A5平
 伊藤潤二「富江」。今回は、密室に幽閉され気持ち悪い赤ん坊の世話をさせられることになったベビーシッターの女性のお話。赤ん坊的生物の表情がグロテスクで刺激的。諸星大二郎「栞と紙魚子」シリーズ「迷惑な侵入者」。今回ものどかにユーモラスに奇想がぽんぽんとまき散らされる。和みますな。あとは、本山理咲「Mr.hoo・doo」が今号から3回掲載されるが、くっきりとしたコミカルな絵柄と後味の良さでなかなか読ませる。以前まんがくらぶオリジナルとかで描いてたのを見たことがあるが、急がない感じの絵柄が持ち味な人。

【雑誌】コミックバーズ 3月号 ソニー・マガジンズ B5平
 今月号はなんだか充実していたように思う。まあそれはそれとして、すごいのは目次にはないけど実際には載っている作品の数。玉木満「おさるのムード」、キャンディキッチンプロダクション「宇宙キャット」、しゅうせい「東京猫物語」、西岡秀樹「宇宙人とコロクプル」、大黒真苗「西駅16時」と、なんと5本も。山田章博「BEAST of EAST」は目次には載っているけど、作品は掲載されていないといういつものパターン。
 まず、巻頭カラーの作:奥瀬サキ+画:志水アキ「夜刀の神つかい」。今回はアクションが派手でハッタリも十分に利いていて印象に残った。冬目景「羊のうた」は、八重樫さんラヴァーにはたまらなそうなお話。冬目景画集の情報も掲載されているが、スタンダード版が2800円、デラックス版が1万円になるそうだ。デラックス版はすでに通販申し込みが開始されており、申し込むと5月下旬に届くとのこと。書店での発売はともに5月30日。さらにはコンセプトデザインで冬目景が参加したSFX時代劇映画「さくや 妖怪伝」の情報も。盛んなり冬目景ビジネス。分かってはいつつもむしられてしまうのが惚れた者の弱み。雨宮智子「クウォランティーン」。火星移住を控えて、生まれ故郷に戻ってきたゲイのケネス=マレーネの姿を、彼(彼女)の少年時代の追憶を交えて描く。この人は、洋風なテイスト漂う上品な作画で、毎度上質の読切を描いてくる。今回のも優しい読後感で、よくできたお話だった。
 以前、Super FEEL Vol.2に登場したスズキユカ(日記1999年7月23日分参照)がバーズ初登場。タイトルは「サボテン姫」。兄について荒野を旅していた少年が、ある日、サボテン色の肌をした少女「サボテン姫」に出会う。彼女は実は、荒野の真ん中でサボテンに囲まれ、母の遺骸と共に暮らす寂しい少女であった。端整な絵柄でなかなかセンスオブワンダーのあるお話を描く。しばらく見ていなかったが、やっぱりいい作品描く人だ。もっと作品を見たいところ。吉田戦車「スカートさん」。すっとぼけたノリが加速してきて、この連載も徐々にいい味を出してきた。うむ。面白い。それから雁須磨子「春猫」もなかなか。自分は不幸を呼ぶと思い込んでいる少年と、転校生のお話。ますます「反町くんには彼女がいない」的なノリで、あの作品を好きな人はこちらも気に入るだろうと思う。

【雑誌】別冊マーガレット 3月号 B5平
 和田尚子の新連載「Flower」がスタート。雑誌で読者モデルをやってる女の子と、小学校のころからの仲間である男の子とのラブ物語。いまどきこんなんいるかーという感じに、あざといくらいに微笑ましくラブコメしているあたりが楽しかった。あとは羽柴麻央「センチメンタルバム」が、素直な絵柄&前向きなお話でスタンダードな読み口。なお、次号からいくえみ綾の新連載「ハニバニー」が開始。楽しみ。


2/11(土)……警棒テレビ

 小田急ケーブルビジョンのホームページを覗いてみたところ、今年の8月にはウチの家のほうでもケーブルテレビインターネットのサービスが始まるらしい。現在、マシンがなんだか調子が悪く、ダイヤルアップしてログインする瞬間にTCP/IP関連のプログラムがなんだか落ちる。これがいったん落ちると、ほかのアプリケーションもガクンと調子が悪くなるので再起動を余儀なくされてしまう。ダイヤルアップ2回につきいっぺんくらい、このハングアップが発生するのですごく困っているのだが、それもこれもケーブルテレビになっちまえば関係なし(のはず)だ。これは楽しみになってまいりました。っていうかまたインターネットに投資することになるわけですな〜。

【雑誌】ヤングジャンプ 2/24 No.11 集英社 B5中
 月イチ連載、山本康人「打撃天使ルリ」が掲載。許せない人間が多すぎる。時代を切り拓くのは、今ズバリ打撃。

【雑誌】エースネクスト 3月号 角川書店 B5平
 作:大地丙太郎+画:SUEZEN、新連載「風まかせ月影蘭」がスタート。アニメは全然観ないので知らんかったけど、WOWOWでやってる奴なのだそうな。SUEZEN絵はアニメとはずいぶん違った雰囲気だけど。岩原裕二「クーデルカ」。なるほどヨシュアってそうだったのか。やられた。安倍吉俊+gK「NIEA_7」。今回もダラダラとした日常をてれてれと描く。これだけ目的も何にもないようなお話をアニメにするのかー。けっこうすごい話ですな。石田敦子「からくり変化あかりミックス!」。あかりが健全な青少年の育成に有害なほどに可愛すぎる。成功ばかりでなく、おせっかいすぎて失敗してしまう賢くなさとかが、守ってやりたいごころを刺激して激ヤバ。弟くんも毛並みが良くていいではないですか。くそう9年間……。

【雑誌】少年チャンピオン 2/24 No.12 秋田書店 B5平
 水島新司「ドカベンプロ野球編」では今回もいかがわしい野球が展開されていますよ。瀬口たかひろ「オヤマ!菊之助」は、今回も脳味噌トロトロの下らなさで素晴らしいと思います。

【単行本】「おさなづま」2巻 作:森高夕次+画:あきやまひでき 双葉社 B6
 最近アクションが妙に面白いのだが、その要因の一つがこの作品。
 コージィ城倉の絵をさらに丸っこくしたみたいな絵柄で、だんなさまの変態プレイにさらされる処女のおさなづまである少女漫画家ハタイチコが、あれよあれよという間に国民的漫画家に登り詰めていく。でも団地住まいのまま。非常に特殊な状況であり馬鹿馬鹿しくもあるのだけど、妙に説得力のあるネーム、ストーリー展開、分かりやすい絵で読ませる読ませる。脂っこくなりすぎず、適度に垢抜けない。たいへん面白い漫画だと思うのであります。

【単行本】「犬狼伝説」完結編 藤原カムイ 角川書店 B6
 端から端までクオリティの高い作画で完成度高し。ただ、セリフの文字が小さすぎて読みにくい。というか、作風自体が閉じているうえに隙がなさすぎて物語に入っていきにくい感じがある。一発気合いを入れてからでない物語が頭に入ってこないかも。

【単行本】「たたかえ! お嬢さま」 由瞳綺麗 シュベール出版 文庫
 ジャンキーズで来ていた奴。読み忘れていた。良くも悪くも、フツーなアニメ絵系美少女漫画。438円+税と安いので、まあそっち系が好きな人が手軽に使うのにいいかも。


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