◆ 1999年4月中旬 ◆
4/11〜20
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4/20(火)……薔薇と犬獣
【雑誌】ウルトラジャンプ 5/25 No.29 集英社 B5平
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平野耕太が読切で登場。巻頭カラー。タイトルは「ガンマニア」。ブッ壊れた人格の殺し屋が、アニソンやらわけの分からない歌を口ずさみながら殺戮を行うガンアクション。特筆すべきはそのリズミカルな描写。これだけ血みどろで凄惨なことをやっていて、キャラクターも凶悪でイカれているのに、それを軽々と読ませてしまうテンポの良さに脱帽。そして時折挟まれるお得意のヤケクソにいい加減なふざけ絵。これはたいへんおかしくもあるのだが、主人公の狂気をさらに増幅させる意味で効果的だったりするところも憎い。大仰で邪悪で、個性的なセリフ回しもかっこよすぎる。そこにシビれる憧れるう。真剣に。
大暮維人「天上天下」。好調である。連載開始当初はあんまり面白くなかったが、最近どんどん良くなっている。格闘シーンもかっこいいが、その中で乳も忘れちゃいない。豊満で、しかもすごくいい形だ。乳ばかりでなくて、キャラクターの表情も艶があって華やかで魅力的。絵の魅力を存分に生かしつつ、話もけっこう盛り上がってきた。ああ、それにしても大暮維人乳(オーグレーニューと名付けることに決定。個人的に)はいいのう。藤原カムイ「福神町綺譚」。なんかチキチキマシンって感じの自動車(みたいなもの)レースがスタートする。車とそのキャラクターは、すごく楽しんで描いているって感じ。キャラクターの名前を見ていると、「福神町綺譚」のホームページの掲示板などで見かけた名前がぼこぼこと。
それから第1回ウルトラコンペ入選作家、伊東悠の読切「影猫」がなかなかいい。侍の時代が舞台。幼いころから鳥などの声態模写が得意だったみなしごの少年が、怪しげな男に買われていき、武家の世継ぎを「影」として護る忍としての教育を施される。影ゆえ名前も自分の声も持たない、存在しない存在としてあるようたたき込まれる。しかし、その彼がその世継ぎのおかげで自分の存在というものに目覚めてしまう。それまで「武器」でしかなかった存在が、「人間」に成長していくさまを描いた物語といってもいい。印象的なのは、影の少年のグリグリ眼。やはり忍者はグリグリ眼が基本だ。シャープでスタイリッシュだけど、骨太なところもある絵柄がなかなかかっこいい。すでに完成された作風でのびしろがどんなものかよく分からないが、その完成度は確かに高い。Infoseekで検索してみたらこういうものを発見。
【雑誌】花とゆめ 5/5 No.10 白泉社 B5平
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日高万里「世界でいちばん大嫌い」がほのぼのラブコメしていていい感じ。線はちょっと直線的でクセがあるけど、それだけに目立つ絵柄でもある。スッキリした絵なのでけっこう読みやすいのもいい。高尾滋の短編「素顔の風景」は、水に愛され魚のように泳いでいた少年・山野と、彼をいつもうらやましく思っていた親友の直の物語。水の中では抜群に楽しそうに泳ぎまくる山野だが、交通事故に逢って1年間入院し、前のようには泳げなくなってしまう。前のように水を楽しめなくなった山野と、彼を見つめる直の切なさが伝わってくる、美しいけどほろ苦いお話。高尾滋は柔らかくて爽やかでぽかぽかした絵柄でわりと注目の人。
【単行本】「薔薇のほお」 岩館真理子 集英社 B6
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「薔薇のほお」「ヴィヴィアンの赤い爪」「黄昏」「世界で1番」の4作を収録した短編集。今回収録された作品は詩的でミステリアスな雰囲気を持っているものが中心。「薔薇のほお」は満月の夜、坂の上の欄干から落ちてきた男と激突したときのショックで記憶をなくしたらしい女性が主人公。記憶を失った彼女の正体はいったい……というのがメインのテーマだが、ほのぼのしたオチになるのかと思ったら最後にまたどんでん返しが用意されていてなかなか驚く展開。「ヴィヴィアンの赤い爪」は、ある編集者の男と、その彼女のお話。男は今話題になっている正体不明の小説家とコンタクトをとろうと試みているが、その手掛かりは杳としてつかめない。また、彼女のほうはその小説家の小説から、自分と妙にシンクロする感性を感じとっていた。男は彼女がその小説家なのではと疑い始めるが、というお話。中盤まではちととろい展開だなと思っていたが、結末は鮮やか。一見関係ないかと思われていたことが自然にからんできて、これまたうまい。そのほかの2作は若干短め。愚直な両親とその息子の物語である「黄昏」は少し泣ける。
どの作品も「大作」ってほどじゃないが、けっこううまくまとまっていて面白く読める。展開も意外性があるし。まあ読んで損はなしってところか。
【単行本】「けだもの会社」1巻 唐沢なをき 集英社 A5
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唐沢なをきのページに追加しといたので、そちら参照のこと。
4/19(月)……シャイロック・ボーン!
本日読んだビッグコミックスピリッツによれば、5月下旬に松本大洋の「100」に続く第2画集「101」が発売されるらしい。それから一條裕子の「2組のお友達。」2冊同時発売。一條裕子は4月24日から4月30日まで東京・原宿アートギャラリー「せ・ら〜る」(渋谷句千駄ヶ谷3-52-3黒川ビル3F)にて個展も行うとのこと。詳しくはスピリッツを参照のこと。あとスピリッツ増刊Manpuku!が4月30日発売。
【雑誌】週刊少年ジャンプ 5/3 No.21 集英社 B5平
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作:小畑健+画:ほったゆみ「ヒカルの碁」。ヒカルのライバル、塔矢がかなり本気になっていて燃える展開である。面白い。ただ、あえて難点を挙げるなら女の子のキャラクターは弱いかな。主人公の幼馴染みのコもけっこうかわいいとは思うのだけど、なんか印象薄い。尾田栄一郎「ONE PIECE」。ロロノア・ゾロのセリフがなかなか力強くかっこよかった。ムリして突っ張ってこそ男ってもんでがんしょ。桂正和「I''s」。くわーっ。甘ったるい〜。今回、一貴と伊織が腕を組むとこなんざ、あまりに他愛なくってもうのたうちまわっちゃう感じ。濃厚な腐りっぷりがとても素晴らしいのだぜ?
【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 5/3 No.20 小学館 B5中
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今号もおがわさとし「木の時間」が掲載。不登校児の真弓が、現在は陶芸家の弟子をやっている友達に会いに行き、その出会いの中から自分の道をちょっとだけ見出していく。のんびりと急がず、まるで木のようにゆっくり成長していく、しみじみといいお話。自分を見つめるまっすぐさと、あとは漫画としての丁寧な表現になんだか泣けてくる。このシリーズはこれでおしまいらしいが、またおがわさとしの作品は読みたいなあ。今度はもっともっと長い奴を期待したい。作:坂田信弘+画:中原裕「奈緒子」。今まで影が薄いというか何やってるんだか全然分からなかった奈緒子の見せ場がついにやってくる。このお話はここのところずーっとテンションが高いが、それが最高潮に達しそうな気配。ゾクゾクする。現代洋子「おごってジャンケン隊」。今回は武内直子+富樫義博の浮き世離れ漫画家夫妻がゲスト。漫画の魅力っていうより人物の魅力ですな、こりゃ。
【雑誌】ヤングマガジン 5/3 No.20 講談社 B5中
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前川かずお「DEI48」が最終回。とか思ったら第一部・完だったようで、7月に再開されるらしい。安心。それにしても、このお話は最後までたいへんにマヌケだった。爆笑した。ヤケクソな巨大男根モンスター、ガシュガシュという腰づかい、ラストのどうしようもないオチ。いずれも見事。死んじゃいそう。小田原ドラゴン「おやすみなさい。」は久々にテンションが高く良かった。今回は鉄郎がジョギングしながら落ちているエロ本を拾って回る、エロロードワークの最中に生まれたエピソード。エロ本の正しい持ち方など参考になりまくり。それから今号ではかたぎりわかなが登場。タイトルは「Rock'n'」。イカれたカップルのデート模様。まったくかみ合うことのない脈絡のない会話が延々と続く。なんか最初から最後まで、一つとしてまともな会話がないよ。どういう方向に話が進むんだかまったく分からない不安な展開がたまらない。東和広「ユキポンのお仕事」は2本立て。しかも2色カラーあり。どうやら好調の模様だ。平本アキラ「アゴなしゲンとオレ物語」は、人はムチャクチャいいのだけど、ぷりぷりした尻が意味もなく人をムカつかせる男の話。ゲンさんも最低な奴だが、何気にケンヂもかなりの人でなしだ。城倉浩司「グラス・ブレス」は次号で最終回。そろそろ終わりかなと危惧はしてたんだけど、やっぱりという感じ。伸びのいい球だけでグイグイ押すというのは、なかなか爽快で良かったのだが。
あ、次号では相沢トモコ登場。楽しみ〜。
【単行本】「福神町綺譚」1巻 藤原カムイ 集英社 A5
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詳しいことは後日書く予定だが、ついに単行本化されて喜ばしい限り。ここまでの歩みはいろいろあったものの(「福神町に関する覚え書き」も参照のこと)、よくぞここまで、たいへん感慨深い。単行本の第一印象はハードであった。っていうかハードカバーなのである。
すでに何度も触れたが「福神町綺譚」は、藤原カムイを中心として読者参加型コミックである。架空の町「福神町」を舞台にストーリーは展開し、その町のあちこちに読者のアイデアが織り込まれる。読者自身も、藤原カムイの絵になって登場したりするあたりが参加している人にとっては魅力だ。俺としては、作品の中に自分のものらしきアイデアが入っていたりするのを見ると思わずニヤリとしてしまう。お話自体はかなり不思議な雰囲気なので、参加していない人には得体が知れないだろうと思う。コアになるストーリーも現在は見え隠れしている程度の状態だったりするわけだから。実際に参加してみないと乗り切れない部分があるのは事実だと思う。そんなわけでとりあえずは「福神町綺譚」のホームページに行ってみることをオススメする。この単行本だけでは何がなんだか分からないところも多いと思うので。
【アンソロジー】「爆乳スペシャル」VOL.5 司書房 A5
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表紙に米倉けんご、うさぎのたまご、KASHIみちのくといった名前があったので買ってみたのだが、間垣亮太以外は再録。司書房系の雑誌はけっこう買っているので、目新しいものはほとんどなし。残念。ああ、それにしても大きいのは好きだ。
4/18(日)……わかってまらかなん
サッカー・ワールドユース大会準々決勝、日本vs.メキシコをTV観戦。ナイジェリアからの中継のわりに映像がきれいだなあという感じ。俺は後半から見たので残念ながら得点シーンは見られず。でも2-0で日本代表が勝って、ユース史上初ベスト4進出。
試合を見てて思ったのは、小野は疲れててもところどころケレン味のあるプレーをしててかっこいいなあとか、酒井はナイス、それから高原は身体はゴツいけど案外足技もあるし、ガッツもあるしいいFWであるなあとかそういうあたり。ディフェンスは急造のわりに全般に固くて優秀。元フリューゲルス勢、辻本、手島もなかなかやるなあ。層も厚い。稲本いなくても大丈夫じゃないか。メキシコの詰めの甘さに助けられたという感じもあるけど。今のところ勝った相手はポルトガル、イングランド、メキシコ、アメリカときていて、ヨーロッパ勢二つ、北米勢二つ。アフリカ勢、南米勢にも勝てると最高なのだけど。ともあれ次はブラジルに勝ったウルグアイ。ここで南米も一発クリアしておいてもらいたい。
ベスト4という実績を残したトルシエだけど、去就についてはどんなふうにいわれるんだろうか。フル代表もそんなに悪いプレーしてるわけじゃないようだし、トルシエってそれなりにいい監督だと思うのだけど。
【単行本】「FUN、FUN、FUN」 ZERRY藤尾 富士美出版 A5
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ZERRY藤尾の初単行本。発行は1995年。現在では東京中の古本屋を探してもまず見つからないんだそうだ。
絵的な面では、現在と大筋は変わらないと思う。ディテールやら仕上げ、線の感じは今のほうがだいぶ洗練されているとは思うけど、作者自身「絵を描くのが好きでない」といっているだけあって4年経っても劇的に変わってたりはしていない。進歩しているのはむしろストーリー作りや構図といった、見せ方の部分。この単行本に収録の作品はいくらかネタが空回りしていたり一人よがりだったりする部分も見られるが、現在のほうがその点でハズしがなく、割り切ってサービスしててプロフェッショナルな感じがする。とはいえ、この単行本収録の作品もけっこう楽しめた。4年の歳月が経っているのだけど、意外に古びた印象はない。絵よりもネタで勝負するタイプだからだと思う。どちらかというと淡白な絵柄だとは思うのだが、エロシーンはわりといやらしい。適度に汗をかいてて汁気が適量より若干多めなあたりが好みである。
【単行本】「わかってまんがな」 たなかじゅん 小学館 B6
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初版は1992年。連載当時から気になっていた漫画ではあるのだ。今までなんとなく買わないでいたのだが、気になるんだったら買わなきゃだめだ、とか思い直して古本屋で購入。
主人公は浪人生の男・大黒。彼が高校の後輩の早紀ちゃん、それから中学校時代の同級生で現在は同じ予備校に通う綾ちゃんに、とくに何もしてないのに好かれる。彼女たちと付き合いつつ、それからなんのために勉強するのかとか悩んだり逃避したりしながらお話は進む。で、このお話の特徴はもう抜群にヌルいこと。たいしていいところもありそうに思えない呑気な男が、かわいい女の子に好かれ、とくに激しくもならない微温で居心地のいいラブコメが展開する。ちょっと野暮ったい絵柄もこれまた心が和む。女の子たちにも垢抜けない可愛さがあって、なんかこうトロトロなのだ。ヒロインの一人、早紀ちゃんが高岡早紀をモデルにしているらしいところもオタク心をくすぐる。ああ、ぬりぃ〜。素晴らしい〜。やっぱり買っといてよかった。
【単行本】「超・学校法人スタア學園」15巻 すぎむらしんいち 講談社 B6
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スニャップの合宿を抜け出したコキジは、スタア學園退学、スニャップクビ、映画撮影中止、そしてちんちん勃たず、一気に苦境へまっしぐら。ほかにすることもないコキジは、仲本、太田川たちと漫才トリオを組むが……という展開。
漫才仕立てで話を進める漫画というのはわりとよく見る。ところが、そういう漫画って読んでみると実際には面白くないことが多い。作者の人が笑わそうとしてやってるというのはよく分かるのだが、よく分かりすぎちゃって読んでいるほうとしては引いてしまう。描いてる人は「何か仕掛けを施した」ってことでそこそこの満足が得られるのかもしれないが、大半のものは自己満足レベルで終わってしまっているのだ。第一、お話を漫才仕立てにするのが本当に効果的な手法なのかというのがまず疑問。あんまり必然性がないのだ。漫才自体は面白いものもある(もちろんつまらないのも)。ただ、漫画内漫才は圧倒的につまらないものが多い。
その中で、すぎむらしんいちの描く漫才はとても面白い。下手な本物の漫才よりもよっぽど迫力があるし、先の展開も予想がつかない。テンポもいい。漫画内で漫才をやるということが、ストーリーの中で必然性があり、さらに元々立っているキャラクターがやってくれるというのもデカい。こういうのを見るにつけ、すぎむらしんいちってスゲエなあと思うのだ。
4/17(土)……少女の赤いベイベー
今日本屋さんにいったら、ヤングサンデーの特別編集号がタダで配られていたのでもらってくる。判型はB6。ヤンサンをそのまま小さくしたような装丁である。これは販促用のアイテムで、現在ヤングサンデーで連載されている人気作品(佐藤秀峰「海猿」、遊人「桜通信」、山本英夫「殺し屋イチ」、いわしげ孝「新・花マル伝」)の連載第1回めだけを収録している。効果のほどがどのくらいあるんだかよく分からないのだが、こういう試みはなかなか面白いので歓迎したい。これが成功しなかったとしても、こういうことをやる攻撃的な姿勢ってものは雑誌全体に反映されてくるものだと思うし。
【雑誌】ヤングマガジン赤BUTA増刊 5/2 No.23(最終号) 講談社 B5中
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赤BUTAもこれで最終号。ワイルドな新人を数多く輩出してきた雑誌だけに名残惜しい。だが、やはり予想どおり、講談社はまた新たなる別冊を構想中の模様。誌名はまだ仮ではあるが、いちおう「別冊ヤングマガジン」と銘打たれている。つまりは別マ? まあなんにせよ、またしても野蛮な雑誌になってくれることを強く期待しまくりである。
久々登場、安達哲「バカ姉弟」はやる気のなさそうな馬鹿姉弟が、メシを食ったり寝たりする4色カラー4ページの漫画。たいへんにやる気なさげな作品で、あんまり面白くない。ひょっとしたら、本当は連載を狙ってたのかなあと思われる作風。石川雅之「カタリベ」。大河海洋ロマンであっただけに、急な休刊でどう落とし前をつけるかと思っていたのだが、結論としては落とし前はつけなかった。未完である。まあ下手に詰め込んで中途半端にまくるようなら、むしろこっちのほうが清々しいかもしれない。いつか単行本にでもなって加筆されたりするとうれしいなあ。平本アキラ、「アゴなしゲンとオレ物語・特別編」の「哀願人形ダッチ・アスカ」は、巻中4色カラー4ページ。本編で出てきたダッチワイフのセールスマンが主役。たいへん馬鹿馬鹿しくて汚らしくてインパクト抜群。「下之森丈」のまちぞうがペンネームを難波義和と名前を変えてひさびさの登場。タイトルは「魔所くんがゆく」。オカルト狂いの奇矯な少年が、クラスの目立たなそうなヤツに目をつけ、強引にしもべとして扱い、ほかの奴らには呪いをまき散らす。主人公のアナーキーさが爽快。ただ、「下之森丈」の主人公は人間型をしていながらほとんど異生物的なキレっぷりだったので、今回のは大人しいといえるかもしれない。タイム涼介「新人日記」。当然これも最終回である。マーライオン先生の本名ってこんなだったのか。
で、最後のモノクロページに、かつて赤BUTA増刊で活躍した20人の漫画家の4コマ漫画が1本ずつ掲載されている。タイム涼介、永野数馬、天野明、長田裕幸、石川雅之、小松大幹、坂井恵理、難波義和(まちぞう)……といった顔ぶれを見ると、本当に惜しい雑誌だなあと改めて思う。別マ、待ってるぜ〜。
【雑誌】ZetuMan 5月号 笠倉出版社 B5中
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ZERRY藤尾「闖入生」。「扉をコジ開けて」シリーズの第5話め。絶倫生徒会長と巨乳副会長の間に、後輩の女の子が割り込んでくる。今回もなだれ込むようにエロエロな展開。過剰ではないけど十分に汁気が多く、女の子が快感に我を忘れていく過程がうまくて実用面も十分。楽しいシリーズである。MDM「ゆああいずおんりぃ!2」。ロリ系である。ベターッとした感じではなく、細かいペンタッチで一本一本線をひいている絵柄が達者でとてもいい。髪の毛も、ヘアスタイルの構造を考えてしっかり一本ずつ描いてる感じ。SEXシーンはほとんど出てこなくて、かわいい幼女やら少年やらを描きたいというのがメインなように思える。業の深いロリ系の匂いを感じる。こういうのは好きだ。あろうれい「ライヤーBOM」。この人の絵って、女性的な雰囲気が漂ってて上品ではあるのだが、ちんちんの裏側(いわゆる縫い目のあるあたりですな)のシワとかもちゃんと描かれてて案外いやらしいところがいい。
【雑誌】コットンコミック 5月号 東京三世社 B5中
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相変わらず「絶対に読むべき」と思えるのは駕籠真太郎だけだが、まいなぁぼぉいの連載「淫靡帝国」が始まったのでそれはちょっと楽しみ。で、駕籠真太郎「駅前穴掘」。今回は人々が穴を掘ることにただただ血道をあげている社会のお話。駅前シリーズは設定にこだわりすぎていまいちな作品も多いのだが、今回のはなかなか良かった。垂直方向に向かって穴を掘り続ける「縦穴派」に対抗する勢力として「横穴派」が出現し、さらにその二つを両方ともひっかき回す存在がでてきて、かなりごちゃごちゃな展開。この前のMANGA EROTICSを読んで駕籠真太郎の良さに目覚めた人はぜひこっちも読んでもらいたい。駕籠真太郎のためなら、350円くらい惜しんではならぬと俺は考える。そう簡単に単行本化はされないので切り抜いて保管しておくが吉。
【雑誌】パイク増刊号(COMIC BOX Jr.5月号増刊) ふゅーじょんぷろだくと B5平
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いつものA5ではなくB5と大きな判型である。今月はA5判型の通常バージョンは出ないみたいである。
TAGRO「特殊映研」はTAGRO得意の複乳もの。この人の複乳は、あんまり人外な感じがしなくてむしろチャームポイントでさえある。四つ乳を生かした多人数パイズリシーンはなかなか見もの。うらまっく「理子はよくいなくなってぼくを困らせる」。頭が軽くて、常にSEXしていないではいられない女の子と、彼女と一緒に住んでいる男の物語。彼女、理子は一時でも彼氏がいないとその淋しさをまぎらわすため、行きずりの男とSEXしてしまう。それは彼女がふしだらであるからというより、どうしようもない欠落が彼女の中にあるためだ。その欠落をふさぐためにSEXをし、彼氏はそのたびに深く傷つき、泣く。うらまっくはコミカルで明るい話を描いてもうまいけど、陰鬱な話を描いても明るい話と同じくらい、いやそれ以上にうまい。このコンスタントさとクオリティの高さはやはり大したものだと思う。とくに今回の奴は、最近のうらまっくの中では一番良かったと思う。よこやまちちゃ「かんご3姉妹」。もうタイトル見ただけで内容が想像がついてしまいそうな作品である。簡潔だけど柔らかくて色っぽい線がいい感じだ。わんぱく「二人三脚」。単行本「彼女がつながれた日」(二見書房)が最近出たばかり。落ち着きがあって、なおかつ洗練された爽やかな画風がとても気持ちが良い。絵の爽やかさに比べ、作風が案外鬼畜系なのもわりと好き。あと、次号から加藤礼次朗がパイクで連載するそうで、この増刊に予告編がちょびっと載っかっている。
4/16(金)……Youはショックシュ!
前々から思っていたことだが触手っていいよね。会社に泊まっていて妙にハイになっているとき、職場の人間としみじみ「ああ、触手ほしーっ」と話し合ったりしている俺だが、催淫効果のあるぬらぬらした液体をぴくぴくと湧出する触手が背中とかに何本も生えていたらどんなにか素晴らしいことだろう。きっと人生変わるね。「人」生といっていいのかよく分からないけど。ああ、触手触手。生えてこないかなあ。……とか書いていたらわきの下のあたりにちいさいのが生えてきた。そんな夢を見た。
買ってないけど、「Chuッ!」というグラビアメインのエロ系雑誌で西川魯介がなんか描いていた模様。情報までって奴だーっ!
【雑誌】COMIC an・an 5/20 マガジンハウス B5平
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誰もが思うことだろうがCUTiE comic的雑誌である。とはいえ、ちょっとだけCOMIC P!の流れもくんでおり、高口里純はCOMIC P!掲載作の続き。それから江口寿史はCOMIC P!掲載作にちょっと加筆したもの。
執筆陣は安野モヨコ、高口里純、魚喃キリコ、冬野さほ、亜月裕、吉野朔実、やまだないと、村田順子、松田奈緒子、江口寿史。こういう女性向けでセックスがからみ、ちょいとハイソな雑誌にはやまだないとが付き物。非常にコンスタントではあるが、ちと食傷気味な感じがしなくもない。でも今回の「うちのヨメの好きなとこ」もやっぱりうまいんだよな。安野モヨコ「プルヌス・セルラタ」は、砂漠の国でいきなり拉致され、ハーレム住まいをすることになった日本人女性のお話。王様的男に愛される快感に目覚めてしまいすっかりなじんでしまった女性の、特殊環境における男と女の駆け引きを描いた作品。いつもと多少毛色は違うが、それでもちゃんとまとめてくるところがなんとも鮮やか。魚喃キリコ「こんなふうな夜の中で」。今さら何を言い足すことがあろうか、っていうかっこよさである。かっこつけ方がかっこいいといおうか。冬野さほ「ねむるまえ」。ふとんに入って眠ろうとする子供たちを取り巻く暗闇の中で展開される不思議な世界。コマ割りなしセリフなし。全編1ページがそのまま1コマ。既製の漫画の枠をはるかに逸脱してしまっててすごいなあと感じる。面白いか面白くないかは別として。
【雑誌】近代麻雀オリジナル 5月号 竹書房 B5中
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巻頭カラーは片山まさゆき「ミリオンシャンテンさだめだ!!」だが、この人カラーはあんまりうまくない感じだなあ。カラーだからといって登場人物にヤケクソに色の多いシャツを着させているのがちょっと気になる。その後のモノクロページでのトーン貼り分けがたいへんそうだ。日高トモキチ「ハードラックカフェ」。今回は都知事選ネタ。相変わらず下らないコジツケネタが楽しい感じ。比古地朔弥「崖っぷちギャンブラー」。うーん、どうもヌルい。
和田慎二「スケバン刑事 prelude PART2」。「スケバン刑事」とキャラクターはほぼ同じだけど、実際にはまったく違う世界で、麻宮サキ系キャラクターは天宮佑希、海槌麗巳的キャラクターが氷室麗華という名前で登場する。本編では宿命のライバルだった二人は、こちらでは同じくコインロッカーベイビーだったことが絆となり、なんだか助け合ってしまうという筋立て。和田慎二のインタビューによれば、今回は二人スケバン刑事的方向で進めたいらしい。前回もそうだったけど、氷室麗華の部屋にコインロッカーが二つぼいーんと並んでいて、ヒモをくいっと引くと緞帳があがってそれが姿を現すシーンはなんかマヌケてていいなあ。雁須磨子「どいつもこいつも」。自衛隊が舞台だがほとんど学園コメディだな、とか思っていたら、今回の扉はまんまソレである。確信的にやってるんだろうなあ。酒井美羽「\十億少女 TENビリオンガール」が新連載。この人の絵はなんとなく馬鹿っぽくてわりと好き。それからメロディでは最近注目株、朔田浩美「魔法のSHAKOCHAN」がとてもイキが良い。大人気のバンドヴォーカルをやっている男の弟で、考古学オタクの少年が、土偶が変身した女の子シャコちゃんとパワフルな恋愛をするドタバタラブコメ。元気が良くてよろしい。我孫子三和「楽園へ行こう!」は今回で最終回。最後までくにょくにょ柔らかい絵柄で幸せいっぱい。作品全体の雰囲気がもう抜群に楽しかった。
【雑誌】モーニング 4/29 No.20 講談社 B5中
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巻頭カラーで「牛のおっぱい」の菅原雅雪が新連載。タイトルは「暁星記」。遠い未来の金星が舞台。灼熱の地だった金星を、人類は3世紀かけてヒトの住める環境に作り替えたが、その後1万年の間に、金星の圧倒的な自然の前に原始的な生活に退行する。今回は、おそらく今後のストーリーで主要な役割を担ってくるだろう部族の狩りの模様を描く。原始的な生活といっても腰みの+ヤリって感じではなく、いちおう毛皮で出来た上着を羽織ってはいる。主人公はその部族の青年ヒルコだと思うが、まだよく分からない。とりあえず細部まで描き込まれた自然の質感と、コミカルでぬぼーっとしたキャラクターたちの造形は変わっていない。今後要注目の作品ではある。
本宮ひろ志「旅の途中」はかなりヤケクソな最終回。なんか昔の少年漫画の番長モノとかにあったような、放り投げたような終わらせ方。読者をポカーンとさせておしまい。はあそうですかって感じ。笑えたので俺は別にいいけど、納得できない人も多かろうなあ。でも下手にいい話にするよりもこっちのほうが豪快で味わい深いかもしれない。高梨みどり「Order-Made」。今回は5万円以下のスーツで花梨と銀座の有名店が激突。洋服屋系人情モノで、革新的ではないけど手堅く読めるシリーズ。森田信吾「駅前の歩き方」第2回めが掲載。作品のキャッチが「駅前食堂的ジャンク・グルメ探訪記」となっていることからも分かるように、いろいろな土地で人々が普段食べててけっこううまいモノをネタに話を進める漫画である。今回は静岡の立ち食いソバ。ソバの具である桜エビのかきあげがうまいらしいのだ。で、実際読んでてうまそうである。読んでいると漫画に出ているものが食いたくなる料理漫画って実はあんまり多くないが、この作品を読むと激しく高級な料理でもないのになんだか無性にカッ食らいたくなる。料理と、それを食べている人の描写が優れているからであろう。
【雑誌】ビジネスジャンプ 5/1 No.10 集英社 B5中
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駅ゴミ箱からゲット。
山花典之「夢で逢えたら」。最初っからくっつくしかないっていう渚とフグ野の二人が延々とついたり離れたりを繰り返し、そのたびにより近づいてここまできたが、ようやくプロポーズまで来ようかってとこでまたちょっとした一波乱。ここで決着をつけるんだかつけないんだか。
4/15(木)……ZあるいはX
久しぶりにリンクのページを更新。ほぼ半年ぶり。今まで月2回発行の雑誌の制作に関わっていたので、1ヶ月の中で息をつけるときがあんまりなく精神的に摩耗していた感じがあったのだが、新年度の人事異動で新雑誌(しばらくは隔月での発行)に移れたため、精神的な疲弊が回復しつつある。そのおかげで、前々からやりたいと思っていたリンクページの整理も少しやる気が出てきたというわけだ。とはいえ、この気分がいつまで続くかはよく分からない。
その新雑誌がらみでとある漫画家さんにお会いしてくる。その人とはこれで二度目だが、そういえば前にお会いしたのも約半年前。なんかこの半年、いろいろなモノを犠牲にしてたような気がする。それはともかく、その漫画家さんはかなりディープな趣味人であるだけに、お話は脱線しまくり。本来の仕事の話はうっちゃって、詠んだ漫画などの話ばかり。でもまあ、きっとこういう脱線がのちのち生きてくるに違いない、とか思ってみることにした。
あ、そういえばモーニング入手するの忘れてた。
【雑誌】ヤングサンデー 4/29 No.20 小学館 B5中
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山本英夫「殺し屋イチ」。イチによる殺害現場に垣原たちが乗り込む。その凄惨な血みどろぶりに勃起する垣原の表情がたいへん素晴らしい。前回までのイチの殺しっぷりも良かったけど、垣原はそれをすっかり食ってしまっている。この二人の対決がすごく楽しみだ。垣原は消しちゃうには惜しいキャラクターだけど。阿部潤「the山田家」。今回も無闇にテンションが高い。花子だけでなくトムもすごい。毎度圧倒される。
次号では大越孝太郎と、古屋兎丸「ショートカッツ番外編」が掲載されるとのこと。大越孝太郎は最近あんまり面白くないが、古屋兎丸は楽しみ。
【雑誌】ビッグコミックスペリオール 5/1 No.9 小学館 B5中
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小山ゆう「あずみ」。きくが惨殺され、怒りに燃えるあずみが浪人どもを斬って斬って斬りまくる。こんだけ斬ると、たぶん人の脂で刀の切れ味は鈍るだろう……などというつまらないツッコミをする奴は嫌いだ(俺か)。その鬼神のごとき闘いぶりにはカタルシスがあるが、悲痛でもある。六田登「シネマ」は、テレビドラマの撮影が成功だったのに、サバニたち一同はどんどん転がり落ちるように不幸に呑み込まれていく。北野武似の西野が転がり込んだ先のうらぶれた親父が詠んだ詩が、見開きで展開されるところがかっこいい。けして整っているとはいえないぬるぬるとした文字に迫力がある。あと、あべ善太の遺作ということで、作:あべ善太+画:倉田よしみの集中連載「カントク日記」がスタート。
【雑誌】ヤングジャンプ 4/29 No.20 集英社 B5中
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高橋ツトムが急病らしく、しばらく「ALIVE」は休載になるそうだ。ってことは「地雷震」もしばらくお休みかな?
山口譲司が新連載で2本立てタイトルは「BOING〜ぼいん〜」。巨乳でもなく美乳でもなく、ただひたすら理想の乳形態「ぼいん」を追い求め続ける高校男子が主人公。ぼいんって、なんか非常に語感がよろしくて夢がありますな。は〜ぼいんぼいん。プリンプリン姫〜ぼいんぼいん。そういえば「山口譲司」が「やまぐちまさかず」と読むのだと知ったのはつい最近のことだ。この人の絵は好きだけど、なんだか骨の髄まで「B級」って感じがする。それもひっくるめて好きな漫画家さんではある。単行本を買うには至らないのだが。
【雑誌】週刊少年チャンピオン 4/29 No.21 秋田書店 B5平
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柔道モノの新連載、斉藤邦和「どうぎんぐ」がスタート。板垣恵介「グラップラー刃牙」では、ジャックと刃牙の身体が引き続き崩壊しまくり続ける。決着のときは近いが、なんだか両方ともタダでは済みそうにない負傷っぷり。激しく痛そうだ。岩塚卓の読切「フライング」は、恋の病により、ドキドキすると身体が宙に浮かんでしまうようになった少年のお話。ちょっと寸詰まったキャラクターがコミカルで、お話も楽しく爽やか。田口雅之「バロン・ゴング・バトル」。マチルダの正体がついに明らかになったが、けっこう悲惨な出自&扱われ方。ああっ、マチルダさあああんっ。ていうか僕の大好きなフラウ・ボウ?
4/14(水)……西洋でいう絵露窒句とはこういうことかもしれん……
↑とは富嶽十蔵のセリフよな。
【雑誌】MANGA EROTICS Vol.1 太田出版 B5平
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山本直樹がスーパーバイザー。執筆陣は南Q太、塔山森、駕籠真太郎、安彦麻理絵、町田ひらく、砂、柳沢きみお、やまだないと、古泉智浩、雁須磨子、町野変丸、福山庸治、卯月妙子。買うなといわれてもそりゃ無理というもの。金閣寺は燃やさねばならないのと同じように、エロティクスは買わねばならん。
まず一番嬉しいニュースは、太田出版から駕籠真太郎の単行本が出るってこと。5月中旬。タイトルは「輝け!大東亜共栄圏」(仮題)。フラミンゴに掲載された、例のヤバいアレだ。駕籠真太郎の新刊をずーっと待ち続けていた俺としてはうれしくてうれしくてもう、ヘソがスパゲティをゆでるかの如き勢いだ。というわけで今回の駕籠真太郎の作品「大葬儀」。やたらに画一的な構造でどこまで行っても同じ町並みの住宅街で葬儀が始まる。それを狙って、未亡人の身体を狙って集まる「未亡人荒らし」やら、未亡人を騙る「葬式セックスマニア」の女、さらに死体を狙う死姦マニアなどなど、故人にはまったく関係ない奴らばかりが集まってくる。本当の葬儀はどこで行われるのか、誰が死んだのか、誰が未亡人で誰が未亡人荒らしなのか。そこかしこで未亡人荒らしと葬式セックスマニアのセックスが始まり、さらには死体マニアによる死体争奪が行われ、葬式会場は混沌とした異世界と化す。シニカルなジョークと底意地の悪さ、そして妄想を現実化してしまう描写力が相まってすごい世界を描き出している。やっぱりこの人は並じゃねえ。
巻頭カラーは南Q太「不幸せでもいいじゃない」。南Q太には珍しく、もろにちんちんを描いているのがちょっとびっくり。しかもなんかSEXシーンが、オシャレながらも生々しくっていやらしいのだ。ちんちんのぼてりとした質感が秀逸。でも作品全体としては、いつもながらにさりげなく抑えたトーンでキチッとうまくまとめている。ここらへんはもう風格さえ感じてしまう。山本直樹の別名、塔山森としては久々の作品「なやまない」は、催眠術で操られているという設定の女の子が、手を叩く合図でスイッチが入り次々といやらしい行為をする。手を叩くコマごとにシチュエーションがくるくる変わり、何が現実に進行していることなのかがだんだん分からなくなってくる。彼女が本当に催眠術にかかっているのか、それはいったい現実なのか、読者を次々に幻惑し立脚点をなかなか与えない。さすがの面白さ。山本直樹、そして塔山森は、抜群にかっこいいのである。町田ひらく「股正宗」は江戸時代の幼女趣味の男の男根を刀になぞらえた、落語仕立てのお話。筋立てと読ませ方がきっちりまとまった佳作。
砂「セクスパレイト」は、進化した売春の形態をコアに、主人公の女性が真の自由を確信するまでの過程を描く。売春婦は腰を壁に固定されて尻を向こう側に突き出し続け、男は公衆便所のような個室に入り、その壁からにゅっと飛び出ている尻に向って情欲を満たす。その間女性は壁の向こうで自分の好きなように時間を過ごすという仕組み。この奇想だけでもすごいのだが、例によってセックス時の異常に長くてアメリカン的にワイルドなセリフのやかましさがまたすごい。「オオッ イイチンポだわッ ケツを犯ってッ! ウッ ナイスピストンッ! クウッ このケツマンイイッ!」。これが一つのフキダシに収まってて、さらにそれが一コマの中に二つも三つもあるって具合だ。しかもそんなことやりつつも、自己決定がどーのこーの、自由がどーのこーの、いってることが大マジだったりする。そしてラストページのものすごいセリフの羅列。うーん、こりゃすげえわ。
雁須磨子もエロ漫画に挑戦。タイトルは「ピクニック」。木葉功一「キリコ」の遊佐みたいないかつい男がバニーさんみたいなかっこしているかと思えば、ヒロインは浮浪者相手にノーパンでスクワットするなど、なんだか摩訶不思議な雰囲気が漂う。雁須磨子のもったりとした肉厚な絵柄もけっこうエロチック。エロでもけっこうやるじゃん、という印象。福山庸治「うろしま物語」は、地図のどこにもない「うろしま」というフリーセックスの地に迷い込んだ男が見た夢のような現実のような、奇妙な出来事を描いた物語。ここらへんはなんとも福山庸治らしい。
顔ぶれを見ただけでワクワクするような雑誌だけど、中を読んでも期待に違わぬ出来栄え。次号は安野モヨコ、榎本ナリコ、ユズキカズ、森園みるくが参加予定とのこと。ちなみに、季刊となる予定で次号は7月15日発売だ。これまた買わねばならん。季刊というのは、このクオリティを維持することを考えたら妥当なペースといえるかもしれない。
【雑誌】コーラススペシャル 5/20 集英社 B5平
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今回のコーラススペシャルは読後の満足感が高かった。というのは、雑誌の最後がイキの良い新顔二人だったからだと思う。まずは新人一発め、蜜月マイロ「屋台・ゴールデンドラゴン」。ラーメン屋のオヤジを父に持つ姉妹のお話。父は物語の冒頭で死亡し財産なんざ全然持っていなさげだったのだが、彼の残した山形の土地が新幹線の開通により地価高騰、3億円ほどの価値になっていたことが判明する。しかし、その遺産を受け継ぐ条件が「ラーメン屋の屋台をやれ」というモノ。さすがに屋台をやるのはイヤな姉妹はガタガタ言うのだが、というお話。まずはなんといっても絵のタッチ。線のタッチだけでいうと、くらもちふさこっぽさがちょいとある。それに三原ミツカズっぽさをプラスって感じか。なんか新人とは思えない完成して洗練された絵柄。お話もドタバタしててけっこう面白い。それからもう一人、一ノ坂ひかる「HAPPY ESSENCE」。学生時代からの仲良し3人組(女二人に男一人)が、それぞれに仕事をしながら居心地のいい3人のオトモダチ関係に励まされて成長していく物語。途中で少し重めの展開になるが、基本的にはカラリと明るく元気がいい。飛び抜けてすごいって人じゃないが、それなりに楽しんで読める作品。あと新人以外では、小栗左多里「マカロン・マカロン」。50ページ読切。お友達である酒屋の息子といろいろ語らいつつ、大富豪な男とも逢瀬を重ねるOLのお話。二人の対照的な人間を見比べながら、自分にとっての幸せを探していく。洗練されたキレイな絵柄なんだけど、美しすぎの方向に行かない軽やかさがあるというか、とりあえず肩が凝らずに読める。
【雑誌】週刊少年マガジン 4/28 No.20 講談社 B5平
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塀内夏子「Jドリーム完全燃焼編」。今まで「だいぶ経過をはしょってるな」と感じていたのに、それでも「やっと第3代表決定戦のイラク戦か」とか思ってしまうのだから読んでいるほうは自分勝手なものだ。イラン代表はけっこう好きなチームなので、カッコよく描いてほしい。今回出てきたアル・ファイサルは、現実でいうとバゲリに当たるのかな?っていうか、イラン代表ではバゲリが一番好きだ。その次はマハタビキア。
【雑誌】週刊少年サンデー 4/28 No.20 小学館 B5平
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40周年記念読切シリーズ、今号と次号は青山剛昌「まじっく快斗」。さすがに手堅いんだけど、「名探偵コナン」とも話がからんできちゃうので、なんかいつもと同じっていうか。あんまり読切のワクワク感はない。河合克敏「モンキーターン」。毎度感心するのだが、この人ってかつて物語を盛り上げた脇役も、役割が終わったからといってお役御免にしたりせずきちんとフォローを入れる。あんまり脇役に入れ込みすぎると、本編のほうの進行がもたつくこともあるのだが、そうはならないようにきちんとバランスもとってくるしうまいなあと思う。
【雑誌】ミスターマガジン 4/28 No.8 講談社 B5中
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原作:浅田次郎+画:幸野武史「大正侠盗浪漫 天切り松闇がたり」がなかなか読ませる。大正の世を駆け抜けた、今は老いた怪盗が留置所の闇の中で昔を語るという物語。自分の盗みに誇りを賭けた男の語る生き様は、世の裏通りを行きながらもビッとした骨がある。今回は、世界は違えど松と同じように大工に命を賭けた父親とのエピソードを描いているのだが、なんのかんのでお互いを認め合っている父と息子の姿がたいへんにかっこよかった。安彦良和「王道の狗」は、金玉均が東京で朝鮮の近代化へ向け活動を開始。明治日本の傑物たちと会合するが、あまり良い返事はもらえない。老いてなお闊達な勝海舟がいい味を出している。
4/13(火)……春はアケメネス朝ペルシアだぜベイベー!
なんか最近文章が不調。っていうかマンネリ気味。どうにかしたい、っていうかどうにかするしかないのだ、いまやむしろあながちさしずめ。春はあけぼのだから!春眠は暁を覚えないから!だから今、なんかこうリフレッシュ?したいっていうか?とりあえず酒!うまい焼き鳥食いてー!
今号はなんかいまいちテンションが低いような。
表紙には川原由美子「観用少女」ってデカデカと描いてあるが、中には載ってないぜー!というわけでまあたぶん落としたのだろう。こういうときは寛容になることが肝要。っていうか青木昆陽だよねー。海ロ書房(かいろしょぼう)「ラボルトは笑う」はわりと気になった。笑うことがヘタクソで、笑うと顔がひきつってしまう女の子が、ある日突然締まりのない満面の笑みをずっと浮かべ、蛍光灯を呑み込んで身体を発光りさせるなど奇矯な行動をとるようになる。実は怪異にとりつれてしまっていたというわけなのだが、その笑顔は心から楽しげで周りの人たちを楽しい気持ちにさせる。スラリと上品でコミカルなタッチの絵柄が気持ち良い。爽やかなり。お話的にもちょっぴり恋愛風味ありのコメディでけっこう面白かった。波津彬子「雨柳堂夢咄」。骨董屋さん的ファンタジー。硬質な線で、上品でしみじみしたお話を描いていてなかなか手堅く読める。
多田かおる追悼特集が掲載。今号の別マはなんとなくもの足りない感じがしたんだが、「いたずらなKiss」がなかったというのは大きいかもしれない。わりと似た感じのキレイで少女っぽい作品が多い中、あの作品がしっかり底を支えていたっていう印象があった。当然のごとく掲載されているレベルの高いごはん系の有無は、雑誌の印象を大きく左右するものだなあと再認識。永田正実「恋愛カタログ」。硬質ゴム系の堂々たる体躯を持つ笹錦さん=郷右近さんが迫力あってかっこよくていい感じ。この作品はコンスタントに楽しくわりと気に入っている。
【雑誌】ヤングキング 5/3 No.9 少年画報社 B5中
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吉田聡「荒くれKNIGHT」。今回は善波の兄貴二人が登場する、なんだかほのぼのとした展開。この人ってバトルのシーンも迫力あるが、日常的なシーンの描き方が飄々としてて抜群にうまいと思う。タダの不良モノでは終わらない魅力があってけっこう好きなのだ。佐野タカシ「イケてる2人」。この前のヤングキングダムに掲載されていた「イケてる刑事」で、花見のシーンでなぜか佐次たちが出ていると思ったら、ちゃんとこっちにもそのお話がリンクしている。両方読んでいる人はニヤリとできてオトクな感じ。
ヤングキングって、「コレは」って作品はあんまり多くないんだけど、全般的にごはん系な味わいでほどほどに楽しい気持ちになれる。ヤングキング系では最近アワーズがマニア筋の評価が高いけど、俺は本誌かキングダムのほうが合う。
【雑誌】ヤングチャンピオン 4/27 No.9 秋田書店 B5中
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巻頭カラーで作:宮崎克+画:高岩ヨシヒロ「ふりかえればアイツがいた!松田優作物語」がスタート。漫画として面白いというより、松田優作の人生自体が面白かったりする作品。そういえば松田優作物語は、以前にスピードコミック(宝島社)で連載やってたなあ。村生ミオ「サークルゲーム」。9年にわたった連載も今回で最終回。ストーカー女の妄執ギトギトの邪悪な濃厚さで、どうなるのかと思っていたが終わってくれてホッとしたようなちょっと寂しいような。それにしても村生ミオは奇妙な作風になったものだ。脂をふいたみたいな厚化粧な感じが怖い。富沢ひとし「エイリアン9」。大谷ボウグの様子がヘンになる。そして強まる大谷包囲の網。かすみの無邪気な凶暴さも暴走していて、うすら寒いものを感じる展開。これからどうなっちゃうんだろう。
4/12(月)……おりさまはよう、だりなんだよう
っていうかスペインの画家で超現実派の代表的存在だよねー。
今号は若干テンション低めか。顔ぶれがいつもに比べてちと弱い。とはいえ、それでもハイレベルではあるんだけど。
上連雀三平「淫肉交姦日記」。今回もちんちん&せーえきである。にょきにょき生えているちんちんと、それをしゃぶる描写は、楽しんで描いてるんだろうなあという気がする。B5サイズで見て、今回の最長ちんちんは15cmと、上連雀三平としては恐ろしいことに平均的だが、毎度ご立派である。前はB5対角線いっぱいいっぱいくらいの大きさの堂々たる物体を描いていたこともあったのだ。上連雀三平のちんちんぶりを味わうには、単行本より判型のデカい雑誌のほうがより素晴らしいと思う。目黒三吉「びわこでチュチュチュ!」。以前描いた「びわこでチュ!」の続編。びわこに住む女神、びわこさんと少年のH。この人はやっぱり絵がうまい。何気ない表情とかもかっこよく決まっている。話はまあ普通の出来。砂「まわりみち」は、相変わらず下品でやたら長いセリフがイカしている。女子高生が「ノーリスクで不特定多数の男とゲーセンの便所とかでセックスしまくる計画」を立てたりするのだが、最後をなんだかヌルげなラブで締めくくるあたりの落差がたまらない。
【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 4/26 No.19 小学館 B5中
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なんといってもおがわさとし「木の時間」である。創作系同人誌でとてもすごい作品を発表しているおがわさとしだが、この「木の時間」はどうもシリーズ化されるらしい。次号も連続掲載。夜の河原の桑の木の下で、登校拒否児の女の子が、同じく学校に行っていない男の子と出会う。桑の木は、実を食べた鳥がフンをすることにより種が遠くの地に落ち、そこで芽をふく。飛べない木は、そうやって遠くへと自分の種子を運ぶのだ。登校拒否でなんともままならない生活を送っている少年少女たちも、いつか遠くへ行く方法を見出さぬとも限らない。勉強で頭がコチコチだった少年も、桑の木の下で自分の道を見出すきっかけをつかんでいく。この人の漫画は、基本的にはオーソドックスな長方形のコマの連続で進んでいくが、ここぞというときの大ゴマの使い方がうまい。細部まできっちりと神経を行き渡らせ、とても印象的な画面を作り出す。それから描画力も確か。細い線を緻密に集めて作り出される画面の質感は、一枚絵としても美しい。とくに今回の話ではラストのコマ。トーンを使わず、線のみで木や洋服、光と影の質感を描き出している。地味な話ではあるが、とてもかっこいいのだ。アフタヌーン四季賞的な、純文学っぽい漫画が好きな人はぜひチェックでゴー。
そのほかでは、ほりのぶゆき「ちょんまげどん」が次号で最終回とのこと。けっこう面白くなってきていたが、まあこれはどこで終わっても落ち着く話ではあるのでここらへんでケリをつけとくのもいいと思う。
【雑誌】ヤングマガジン 4/26 No.19 講談社 B5中
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平本アキラ「アゴなしゲンとオレ物語」。ゲンがハルの働く幼稚園の送迎バスの運転手を始めるが、実は幼稚園から依頼されていたものではなく勝手にやっていただけなので、誘拐犯と間違われる。警察に囲まれてブチ切れ、幼稚園児に歌を強要するときのゲンの表情がたいへんに危なく愉快。最低って最高だ。前川かずお「闘破蛇烈伝DEI48」。今回もまた豪快な交合を……とか思ってたら、次号「最終の義」とのこと。つまりこれって終わっちゃうってこと? 強烈で豪快にマヌケで良かったんだけど、まあ長く続ける話でもないからしょうがないか。東和広「ユキポンのお仕事」。ユキポンがバイトをしている店に、ご主人ちゃまのあけみちゃまが合コンでやってくる。人間としてのプライドをなくして酔っ払いまくるあけみちゃまの姿がたいへんに豪快で楽しい。小田原ドラゴン「おやすみなさい。」。鉄郎が空手七段という事実が判明しびっくりした。詳しくは自分で確認のこと。スゲエぜ鉄郎。地下沢中也「創立100年ギンザ小学校」。今回で最終回。まあ期待どおり、どうしようもなくて、どうでもいい終わり方。終盤はとくに暴走してて良かったので、6月発売の単行本1、2巻を楽しみに待つ。
【雑誌】まんがタイムジャンボ 5月号 芳文社 B5平
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掲示板の#1397にて4コマ研究所のさんきさんが「こうの史代が描いている」と教えてくださったのでさっそく買ってくる。
こうの史代の作品のタイトルは「俺様」。気が弱くて損ばかりしてきた父により、せめて息子は堂々と生きてもらいたいということで「俺様」と名付けられた青年が主人公。本屋の店員をしている俺様は、ぼーっとしているわりに自分のことを「俺様」というくせがあるため、気は弱そうなんだけど発言だけはなんか強気っぽく聞こえる。そんな彼がいつもお店にくる女性に恋をして、というお話。4コマ漫画雑誌掲載だけどこの作品は別に4コマではない。トーンをほとんど使わない、というのはこういう雑誌に載る人では珍しくないが、こうの史代は4コマ系の絵柄ではなく、カケアミ多用で隅まで丁寧に描かれたやわらかくのほほんとした絵の持ち主である。その絵と雰囲気に俺は惚れている。丁寧なカケアミの暖かさ、それから表情の柔らかさ。なまめかしさとはまた別の、健康的な艶がある。今回の作品はほのぼのとした短編だが、もう少しファンタジックなお話を描かせてもとてもうまい。ときどきモーニングのプレゼントページのイラストも描いているのでチェックしてみてもらいたい。
【雑誌】週刊少年ジャンプ 4/26 No.20 小学館 B5平
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桂正和「I''s」。一貴と伊織の誤解が解けるが、まだ何かしらヤマがありそう。っていうかヤマがなくなったら連載終わりなのだが。伊織の泣き顔もこれまた美しい。桂正和の女の子描画力はやはりすごい。それはともかく、森崎さんも見たいぞ。池本幹男の49ページの読切「COSMOS」。少し松本大洋フォロワー的なスカシた絵柄だが、お話としては案外面白かった。麻薬や暴力が蔓延する町が舞台。この町で少年たちはチームを組み、暴力を生活手段としていた。人は彼らを「愚者(フール)」と呼ぶ。で、主人公はそのチームの中でもトップクラスの実力を持つ少年バド・ワイザー。権力者やポリスは彼らを取り締まろうとするが、自由に生きる自分のためバドは闘う。そんな彼と、警官を目指そうとする少年を軸に物語は展開する。要するに少年が、「俺の町」でときに暴力を振るいつつも自分を貫きながら生きていくっていうお話であり、その点では「鉄コン筋クリート」を連想しなくもない。ただ、シャープで鋭い絵柄や、力強いストーリー回しはけっこう楽しめる。この作風をいかに自分の中で昇華してオリジナルなものとして発現させていくかこれからの課題。
4/11(日)……やらかい肌
「やらかい漫画」は東陽片岡じゃぜ。青林堂刊……ってことはもう絶版?しょえー。
【雑誌】コミックビーム 5月号 アスペクト B5平
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詳しい収録作品リストはコミックビームのページ参照のこと。
先月号で予告されていたとおり、梁慶一は、アシスタント徴兵により休載。こういう休載理由はちょっとほかに見たことがないけど、梁慶一は韓国の人なので仕方ない。日本と韓国、近づいてきたような気がするとはいえ、彼我の差はまだまだ大きいようで。
園山二美は今回は表紙も執筆。ああ、それにしても園山二美が表紙を描くようになるなんて。しかも5月25日には2冊目の単行本も出るらしい(タイトル、出版社等は不明)。感慨無量、というほどでもないか。今回の作品「蠢動 彼女はスーパー」は単行本「蠢動」に収録されている「コンビニキング」の続編。料理がまったくできないんでコンビニ飯ばかり食っていた男が、コンビニで鉢合わせた同僚の女の子と結婚して、愛に満ちた生活を送るというお話。前回ではコンビニで出会ったところまでで、今回は幸せな新婚生活篇。夫も妻ものほほんとしていて、一本ネジが抜けているような会話が楽しい。
志村貴子「敷居の住人」。高校受験を控えたちあきの生活がちょっと賑やかになってきた。女の子たちがかわいくなってきて味を出してきてるし、最近どんどん良くなっている。顔の絵を構成するパーツ自体はいずれも簡潔なんだけど、それがいいバランスで配置されているなーと思う。鈴木みそ「本の墓場」では、鈴木みそが返品された本などの倉庫を見学に行く。見ていると死にたくなるくらいの売れない本の山の描写を見ていると、出版社に対して「絶版にするな」とかいうのがためらわれてしまう。
入江喜和「ちゃらっぽこ幽霊」は今回後編。地方の町で小料理屋を開き、自由奔放に生きているように見えたおやじの、かっこ悪い意外な一面を娘は目撃する。かすれた感じのペンタッチになんとも味があって、懐かしいような心地よさ。またこれからも描いてほしい。いましろたかし「釣れんボーイ」。いましろ先生、っていうかヒマシロ先生、終わりまくってる。アユ釣りでヒットした瞬間「マンガ描いてるより100倍おもしろい!」と叫ぶ。ああ、たまらない堕ちっぷり。鮪オーケストラ「BAD TRIPPERS」は、近未来バイオレンスもので、今までのイカれたギャグ系の話から一変。シリアスである。でも、今のところそんなに面白くないなあ。
【単行本】「0(ラヴ)リー打越くん!!」1巻 桑原真也 講談社 B6
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とある高校のテニス部員にしてイジメられっ子、打越くんが、吸血鬼少女の真希シノヴに「至高の血を持つ者」として目をつけられる。シノヴに血を吸われるととてつもなく官能的な快感が得られるのだが、イジメられ慣れている打越は彼女から向けられる剥き出しの好意に耐えられない。シノヴは打越を独占するためなら、周りの人を殺害するなんてへっちゃら。でもそんな打越にも、女の子を次々ひきつけたり、ひとたびテニスを始めると周りがまったく見えなくなって凶暴化するといった異常な一面があり、その能力がときどき暴走する。そんなこんなで打越たちの学園生活は進んでいくのだが……という物語。
まず目に付くのはなまめかしい女性キャラクターたちの表情。身体の線もむっちりとしてエロチックだが、瞳が潤み舌先がふるえる表情がなんともHである。キャラクターの行動も極端だし、それぞれみんな一癖あっていっぷう変わっている。画面作りもわりとダイナミックで、サクサクとテンポ良く読める。妖艶で邪悪なものをはらみつつも、お話は至って軽快に進展していて肩が凝らない。絵にも話にも独自のクセはあるが、とくに鼻につくわけでもないし、いい味わいになっている。初単行本ではあるが、なかなか堂々としたもの。これからも期待できそう。ちなみに掲載誌はヤングマガジンUppers。
【単行本】「柔らかい肌」3巻 山田たけひこ 小学館 B6
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最終巻である。青春の1ページを彩る、画家志望の少年と彼の才能に着目する女教師の性を描いた作品。女性の身体がやけにダイナマイツで妄執たっぷりなわりに、顔は丸かいて棒かいてーという具合のぎこちない線で、そのギャップがなんとも珍妙な味わいのある作品だった。基本的には青臭い「性春白書」とでもいうべき話なのだけど、その根底にある妄念に惹かれるものがあり継続して買っていた。なんだか妙な作品である。
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