つれづれなるマンガ感想文11月後半

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一気に下まで行きたい



・「性獣少女戦ヴァギュナス」 NEO’GENTLE(2001、桜桃書房)
・「COMIC阿ロ云(あうん)」1月号(2001、ヒット出版社)
・「Get or Die」 師走の翁(1997、ヒット出版社)
・「週刊少年チャンピオン」53号(2001、秋田書店)
【同人誌】・「blue」 さくらのりたか(2001、DARUMAYA FACTRY)
・「雨天順延」 ナンシー関(2001、文芸春秋)
・「てれコロコミック 月刊コロコロコミック冬休み増刊号」(2001、小学館)
【書籍】・「韓日戦争勃発!? 韓国けったい本の世界」 野平俊水、大北章二(2001、新潮社)
・「週刊少年チャンピオン」52号(2001、秋田書店)
【同人誌】・「ComicReseach Academy4」 工藤俊英(2000、道の曲がりか堂)
【同人誌】・「Macな生活」 藤井ひまわり(2001、ひまわりデザイン事務所)
【同人誌】・「SF少女エス子ちゃん 特別編」 はしもとさちこ(1998、はしもとさちこ)
【同人誌】・「SF少女エス子ちゃん 図書館編」 はしもとさちこ(2000、はしもとさちこ)

・「YOUNG キュン!」12月号(2001、コスミックインターナショナル)
・「漫画世代」No.1(2001、辰巳出版)
・「週刊少年チャンピオン」51号(2001、秋田書店)






・「性獣少女戦ヴァギュナス」 NEO’GENTLE(2001、桜桃書房)

ヴァギュナス

成年コミック。A5。「性獣戦(セクスヴィストファイト)」における、愛菜・フィーリア性裸・サカザキとの戦いを描く。
「性獣戦(セクスヴィストファイト)」とは、少女が「性獣」というぐねぐね系人工生物を身にまとって戦う近未来(?)格闘技。このぐねぐねが変化して、相手に攻撃を加えたりする。逆に攻撃されると、それを装着している人間にもダメージが来てしまうのだ。
愛菜・フィーリアはヴァギナスというレディ・ヴァギュナタイプ(雌)の性獣を身に着けている。どうも、ハナっから雌の性獣というのは分が悪そうだ。
性裸・サカザキは、エレクティ・ペニクス(雄)のペニクスという性獣を使う。
戦いは、基本的に性獣同士が犯し合うような展開になることが多いらしい(たてまえ上はセックス抜きの格闘技らしいが……)。性裸の攻勢に、愛菜は徹底的な防戦を強いられる。

物語の基本は、戦いがえんえんと続く格闘技マンガを連想してもらえばいい。あるいは「イヤハヤ南友」の、何百ページも続く美少女同士のSMチックな対決を。
本作、性闘技マンガであるため、「ぶっとびマンガ」「Hマンガ」のカテゴリに入れようかかなり悩んだのだが、「ぶっとびマンガ」特有の脳天気さ、あるいは「性闘技マンガ」にある熱血な部分がナイので、こちらに感想を書くことにした。
むろん、だからといって悪い作品というわけではない。美少女とぐねぐねな生物が入り乱れてくんずほぐれつする、かなりハードなHマンガになっていると思う。格闘技というより、愛菜が徐々に追いつめられていくジワジワ感にエロさを見いだすマンガなのだ(この何百ページにもわたるジワジワ感は、まったくすごい)。

おそらくCGを使った独特の画面効果、人体の肌の光具合、表紙だけでなく巻頭に数ページにわたって掲載されている作者本人がつくったフィギュアなど、非常につくり込んだ印象を与える1冊。
(01.1130)



・「COMIC阿ロ云(あうん)」1月号(2001、ヒット出版社)

「The kei」師走の翁、ってコトで「シャイニング娘。」シリーズです。メンバーがオカルトがらみのHな事件に巻き込まれていると察知した保陀刑阿部なつみが、「敵地」に乗り込んであれこれされてしまう。おお、保陀のアクションかっこいいよ。「絵がヘタ」、「『暗い』と言われる」と言ったヤスダの属性もお話に組み込まれている。
それと、数回読んでわかってきたんだけど、悪魔みたいのがメンバーを次々に襲っていくというプロット、ただレイプして回るってんじゃなくてけっこう考えてあるんだよなー。

ヤスダについてはけっこう書きたいことあんだけど(笑)、本作とは関係なくなるからやめた。ひとつだけ書くとすれば、こうしたプロットの作品では役割的に頭がいい、って設定が割り当てられると思うわ。実際。

「BAD SLAMMERS」ジャム王子は新連載。後宮の性妾として性技をたたき込まれた女「三蔵法師」が、妖怪とセックスしたくって旅に出る。西遊記……じゃなくって、コレ「悟空道」だな(笑)。元気があってイキオイがあってよろしいんじゃないでしょうか。
(01.1130)



・「Get or Die」 師走の翁(1997、ヒット出版社)

成年コミック。A5、短編集。最近、個人的にマンガ「シャイニング娘。」に注目している。理由はいくつかあるが、マンガとして優れているというのは当然理由のひとつ。で、この間、たまたまハロプロファンらしき人と会ったんで「コレ読んでます?」って出したら、「それ読んでんだァ!?」と軽蔑されてしまった(笑)。
確かに、特定のアイドルのファンだった場合、彼女たちがモデルのポルノを読むということを好む人と好まない人がいるだろう。どっかの掲示板では「許せる許せない」と意見が交換されているとも聞いた。
まぁ「百恵」とか「聖子」とか「ありさ」とか、そのときどきのアイドルの名前をポルノに拝借するのも今に始まったことじゃないんだが、そういう言い合いがどっかから出てくるというのはモー娘。人気のバケモノぶりを物語っている。

ンでまあ私も、ただモー娘。をトレースしていることにだけ喜んでいると思われるのも業腹なので、作者のデビュー単行本である本書を読んでみた。今より線が細く、もっとちまちました感じだ。巨乳、微乳、男→女、女→男、パターンとしてはいろいろあるようだ。全体通して言えるのは、おねーさんが優しくHなことと、セックスそのものが非常に明るいということ。
新人賞受賞作品「カウンセラーはどこだ?」は、男性恐怖症の女の子をスキンシップ(?)で直してあげる女性カウンセラーの話だが、あとがきによるとラストはアンハッピーエンドを用意していたという。しかし後味が悪いのでやめたらしい。私もその方がよかったと思う。
まあ他に後味の悪い作品もあるのかもしれないが、本書を読むかぎり、セックスを「生の肯定」として描くところがこの作者の持ち味なんじゃないかと思うんで。
(01.1130)



・「週刊少年チャンピオン」53号(2001、秋田書店)

「満天の星」楠本哲と、「おやつ」おおひなたごうが最終回。来週は「迷探偵史郎シリーズ」芹沢直樹が最終回か……。しかしほんとに「アメリカ行きを誘われる」ってのは最終回の王道だね。
「バキ」板垣恵介は、あいつが登場。
あいかわらずネームがイカす。「二皮くらいむけたンじゃないッスか」、「○○さんがこの件にからみたがってるとはなァ……」、「だが現在(いま)の私は烈海王にだって勝てる!!!」他人事ヅラした愚地克巳もイイ味出してます。
(01.1130)



【同人誌】

・「blue」 さくらのりたか(2001、DARUMAYA FACTRY)

コミティアで購入。青春恋愛短編集、と言ったらいいのかな。いきなり自分語りしますと、本書の中の作品を初めて読んだのはコミティアの勉強会みたいなやつで、だった。みんなで原稿やネームを持ち寄って批評しあったりする会。たまたま同じテーブルで、私は本書収録の「行けるところまで行こう。と君は行った。」を読ませてもらった(都合のいいことに、私自身が何を持っていったかは忘れてしまった)。
面白くないことがあって学校をさぼった少年と、幽霊の少女との出会いを描いていた。えんえんと二人の会話でお話が進行していくところに、不思議な魅力を感じた。
本書収録の「そして人生は続く」は大学の演劇研か何かが舞台だということを考えると、「行けるところまで……」は演劇っぽい要素を取り入れたのかもしれない、とも思う。

「行ける……」は二人のみの会話劇であったため、今後どういうふうな作品を描いていくのだろうと思っていたが、登場人物が増えても、恋愛が前面に出ても、登場人物のまっすぐさとつまずきと、そしてまた走り出すときの決意の感覚、そこは変わっていないと思った。
本書を読んで、おそらくその「まっすぐさ」を魅力としてあげる人は多いと思う。笑って泣いて怒って悩んで……だけど、コレは夢枕獏の「獅子の門」に出てきた言葉(記憶あいまい)だけど、悩むときにもまっすぐに悩む、曲がるときもまっすぐに曲がるというか、そんな感触が本書収録の作品には、ある。

絵は正直なところ、そんなにうまくはないと思う。そのかわり、ネームはうまい。技巧的なものではなく、天性のものではないかと思う。あるいは天性のものではないかと思わせる技巧を持っている。まっすぐではあるが、紋切り型ではない。この作者でしか描けない着地の仕方をする。
こういう作品に接することができるのが、コミティア(創作同人誌即売会)の魅力なんだろうと思う。
(01.1130)



・「雨天順延」 ナンシー関(2001、文芸春秋)

当然マンガでも何でもなく、ナンシー関がテレビについて書いたエッセイを、消しゴム版画とともにまとめたもの。あ、さすがに「消しゴム版画」からこの「マンガつれづれ」にカテゴライズしたワケではない。しかし、マンガだけでなく読んだ本とかも入れないと更新ペース守れないんですよ。
まあ守らなくてもいいんだけど、どっかのだれかが言う「マイペースでいいじゃないか」なんて言葉、ありゃウソだから。「シロウトのくせに締め切りに追い回されるなんて恥ずかしい」とはナンシー関本人の弁だけど(それも一面は真実だけど)、人間どっかで何かのペースを守らないと、何事も成し遂げられないことも事実なのではないですか!?(と机を叩いてみる)。

さて、本書はエッセイとして面白いし、長年読み続けてると「作者のとんねるずに対するキモチ」とか「大食い大会についての思い入れ」とか「木村拓也をおとしめたい意地悪さ」とか「和田アキ子に対する嫌悪感」などが断続的に登場してきてオモシロイ。とくに和田アキ子が微妙につまんないというのは私も同意するけど、だれも面白い人がいない場合、ああいう人が重宝がられるのもわかる気がすんだよなァ。和田アキ子を許せるようになったとき、人は何かを忘れていくのかもしれない(大げさ)。

で、これからどうこの文章を「マンガ」にこじつけようかと思ってるかというと、「チノパン」についての文章があって、「チノパン」ってのは新人女子アナのチノって人が司会のトーク番組でした。で、そういえば「チノパン」でチノアナが松本零士ゲストのときにメーテルのコスプレしてたな、というそんだけのことなんだけど。
本書で作者はチノアナの「失礼」について(「チノパン」というと「チノアナが失礼」というネタになるほどだった)、それは女子アナのスタンスではなく「若くてきれいな女性」のスタンスであり、130R蔵野がゲストのとき(私は未見)は「あれは悪意ではなく『美人』がランク外の男に対するときの残酷さである。」って書いてあって、すっげえ納得がいった。いや、真実かどうかは知らないが。もう私が納得したからそれに決定。

それで連想したのが、昔「ゲームWAVE」という番組で伊集院光がアシスタントの川村ひかるになんかすごく冷たいオーラ出してたってことなんだけど。いや、テレビ的バランスだと、伊集院がいじめキャラになるのはわかりますよ。川村ひかるが「ゲームのことは何もわからない、チャラチャラした感じ」を出してたから。伊集院がツッコミ役になるしかないんだけど。
だけど川村ひかるの「チノパン的」雰囲気に伊集院が反応してた、って考える方が、私としては納得が行く。私が納得したからそれに決定。
(01.1129)



・「てれコロコミック 月刊コロコロコミック冬休み増刊号」(2001、小学館)

てれびくんとコロコロコミックが合体した、小学校低学年向けコミカライズ中心雑誌。夏から2号目。

「機獣ぎゃぐわーるど ぞいどっ!!」曽山一寿は、ゾイドをテーマにしたギャグマンガ。ライバルキャラ・ケニッヒがあまりにイイ顔をしているので載せてみた。←

ケニッヒ

「仮面ライダーアギト」坂井孝行「決戦! 3大ライダーVS超ロード」。おなじみ3人のライダーが協力してアンノウンを倒すというモノだが、ライダーの造形が細かくてカッコいい。私がテレビを付けると、いつもギルスが苦しんでいる印象があるが、このマンガでは活躍していてよかった。
「爆転龍HAYATE」おおせよしおはベイブレードのマンガで第2回。電気を使う敵と対決する。
「おはスタ危機一髪!! ゾナーのマル秘大作戦!」飯田清は、実はいちばん期待していたマンガ(笑)。だってテレビ番組をマンガにするって、最近あまりないじゃん(過去もあったかどうかよく覚えてないが)。しかし内容は基本的に「ゾナーのマンガ」。要するに、ゾナーが「おはスタ」を乗っ取って単独ライブをするぞー、というドタバタを描いたもの。このため、山ちゃんすら少ししか登場しない。
……にしても、サイガーとカナの造形がなんかイイ味出してる。
カナ

サイガー

「電脳冒険記ウェブダイバー」難波孝は、えんえんとロボット戦を繰り広げていて実にすがすがしい。
「ウルトラマンコスモス」犬木栄治は、防衛軍がバルタン星人の能力を分析し、人間搭乗型の空飛ぶ要塞「ロボバルタン」を開発するというのがスゴイ。戦闘機モード「スターバルタン」にも変形するし。
「バリアライド2020」河野成寛、つくじ大三、メカニックデザイン/原田吉朗は、ロボットに変形するバイク・バリアライドに搭乗した警察官の活躍を描く。第2回。
パトレイバーとナイトライダーと、トランスフォーマーを足して3で割ったようなカンジかなあ。
(01.1129)



【書籍】・「韓日戦争勃発!? 韓国けったい本の世界」 野平俊水、大北章二(2001、新潮社)

書籍です。韓国における、一ジャンルを形成するほどの出版点数を持つ「日本に関する変な本」を「日本けったい本」と名付け、収集・吟味したレビュー集といった体裁。「日本けったい本」とは、日本について書かれた本でありながら、著者の知識不足や偏見、思い入れが災いし、日本の現実と離れた「作者の意図しないところで面白さが発生してしまっている本」のことだという(大意)。
大きくジャンル分けして「韓日対決けったい小説」、「韓日歴史けったい本」、「その他の日本けったい本」として、いくつかの書籍を取り上げて解説している。
要するに方法論的には「トンデモ本」などのセレクトやツッコミに近いものがあるが、韓日の歴史的背景や現在の微妙な関係が、「日本けったい本」というジャンルに特殊事情として大きく影響していると言える。

とは言ってもそれらは日本の、韓国や諸外国への認識の裏返しのように思えて、考えさせられたり反省したりする部分は多い。たとえば「韓日対決けったい小説」は、日本のいくつかの「大逆転シリーズ」のような小説を思い起こさせるし、韓日関係を超古代史から論じた本も、日本の自国中心主義的な超古代史、トンデモ歴史観と立場を変えただけで同じようなものだと言うことができる。

本書ではマンガも取り上げられている。超古代史というかトンデモ的歴史観を綴った歴史マンガ「大朝鮮帝国史」と、韓国青年が日本人美少女にモテモテとなる青年マンガ「夜桜」
「夜桜」はスポーツ新聞に連載されたストーリーマンガで、絵柄としては小島功に近いという色っぽいマンガらしい。
内容は、旅行会社社員の韓国人青年が、韓国旅行に来た日本人中学生と女子大生に誘惑されるというもので、ここまでのあらすじとしては「SFおしかけ女房」モノに近い! 二人の誘惑を主人公が一度は退けるところもソレっぽい。
中学生の方は結婚をせまり、「韓国人と結婚することによって日本の過去の侵略を謝罪したい」とか言うらしい。「SFおしかけ」において、ヒロインが自分の故郷、宇宙とか未来とか異次元などのしきたりや倫理観から主人公との結婚や肉体関係を結ぶためにせまってくる、というのはよくある話だ。まあむろん、それを「日本人」とキメウチしてしまうからマズいんだが。
その後のあらすじを読むと、次から次へと日本人美少女がせまってきてそれをとっかえひっかえするらしいので、「SFおしかけ」というよりももっと主人公の女性遍歴に重点が置かれた「週刊漫画TIMES」とか「漫画ゴラク」みたいな展開になるらしい。いずれにしろ、もし絵柄が色っぽいならちょっと読んでみたいという気にはなる。

ところが、そこまで脳天気に話は終わらない。本作は向こうの有害コミック規制の対象になり、その他のマンガ家と含めてかなりの騒ぎになったらしい。
それと、本作はまったく何も知らない作家が適当に描いたのではなく、かなり日本について調べて書いた部分がある、というところがまた問題を複雑にしている。作者は本当に日本人を誹謗する目的で描いたわけではないらしいが、しかしそうとられざるを得ない危険性をはらんだしまっているらしいのだ。このあたり、アニメ「新オバQ」の「バケ連」の回(何でも今ではテレビで放送できないらしい)などを思い出し、考え込んでしまうのだった。
(01.1126)



・「週刊少年チャンピオン」52号(2001、秋田書店)

「A.−D.O.G.S.」北嶋博明、鈴木ダイは、新連載。警視庁の、凶悪犯罪者を消してまわる必殺仕置人みたいな組織の話になるらしい。鈴木ダイってよくも悪くも非常に大味なんだけども、原作が付いてどうなるかが楽しみ。
「エイケン」松山せいじは、エイケン部で鍋パーティー。と思ったらお酒を入れすぎて、全員酔っぱらい状態に……。そして次々と乱れていく美少女たち。とにかく展開があまりにもバカすぎて毎度のことながら衝撃を受けた。いくら酔っぱらったからって、自分の尻をスパンキングする女教師がいるだろうか? 伝助の想像(もし東雲さんが酔うと露出狂で泣き上戸だったら……)というのもスゴイし。タネぎれかと思うと突然スゴイのをやるよねこの人。
(01.1124)



【同人誌】

・「ComicReseach Academy4」 工藤俊英(2000、道の曲がりか堂)

作者は「ComicReseach Academy」という学会で、学術的なマンガ研究をしていたらしい。あとがきを読むと、そこの活動は残念ながら終了してしまったようだ。
本書は、学会での発表をもとにしていて、呉智英の唱えたマンガにおける「現示性(全体的につかめる)、線条性(流れでつかめる)」をより深く考察した論文が収録されている。コラム的に短い書評なども同時に載っていて、1冊の読み物として読みやすくなっているし、堅くなりがちな評論文体においてかなりわかりやすく書かれていると思う。数人によって書かれた書評も非常に読みやすく、本のセレクトも面白い。
ひとつだけ「メディアとしてのコミックの特徴」という項では、昨今のメディアミックスから見たコミックについて論じているが、マンガに対する贔屓目からか、あまりにも物語重視のようにも思える。それと、アニメや映画などの他ジャンルとの差もきっちり把握されているとは、ちょっと言いにくい。座談会風などにすれば、各論者の考えがもっと引き出せたかも、と岡目八目で少し思った。
いずれにしても、評論同人誌としてはけっこうイイ本。
(01.1124)



【同人誌】

・「Macな生活」 藤井ひまわり(2001、ひまわりデザイン事務所)

「Mac peaple」に連載された、1ページのマック入門マンガをまとめたもの。オールカラーでコピー誌。内容としては「学習マンガ」的なので起伏に富んだ物語があるわけではないが、作者のデフォルメされた絵がかわいい。 たぶんDTPだと思うんだけど、ここまで縮小してここまできれいに出力できるんだー、とパソコンに疎い私は非常に驚いた。
(01.1124)



【同人誌】

・「SF少女エス子ちゃん 特別編」 はしもとさちこ(1998、はしもとさちこ)
・「SF少女エス子ちゃん 図書館編」 はしもとさちこ(2000、はしもとさちこ)

コミティアで購入。SF大好きなエス子ちゃんが登場するエッセイ風マンガ。「特別編」は「鍋が笑う」という本を推したりなど。「図書館編」は、図書館に入っているSF全集についてなど。

コピー誌で、タッチもなぐり描き風というかラフな感じ、お話も「エッセイ風」としかいいようのない感じなのだけど、評判を耳にしたので買ってみた。
そうしたらやはり、評判になるだけの何かがあるのだよね。
コミティア(創作マンガ系同人誌即売会)に出展されている作品すべてに言えることなんだけど、「○○風」などと分類してみたところでその面白さを表現することはむずかしい。私はそれをミもフタもない意味で「才能」と呼んでいる。
実に陳腐な言い方だが「作品」ってのは企画書を具体化しただけのものではない、ってことを、コミティアに行くたびに思う。
(01.1124)



・「YOUNG キュン!」12月号(2001、コスミックインターナショナル)

成年コミック雑誌。

「続・桃色物件」あろひろしは、独身アパートの住人である主人公にいろんな美女がせまってくるという話。今回は超巨乳のアメリカ人女性がやってくる。この作品、嫌いじゃないんだけどどうもエロく感じないなあ。カラッとしすぎてるからかな。

「プリンセスハンターズ」IRIE YAMAZAKIは、西欧ファンタジー的な世界の勝ち気なお姫様が敵国に捕まってあれこれされてしまうという作品。前作もそうだったし、もともとそういうのが好きな人らしい。

「激しい課外授業」毛野楊太郎は最終回。前回休載だったので、単行本とほとんど同時掲載みたいになった。感想についてはここ参照。次号から、同一キャラによる続編開始(だと思う)。
(01.1120)



・「漫画世代」No.1(2001、辰巳出版)

創刊号。毎月18日発売。「オール読みきり」って書いてあるけど、まあ「ほとんどの作品が1話完結」というほどの意味。
執筆陣は、三山のぼる、石井さだよし、宮尾たけ史、つくしの真琴、川島ビリッジ、坂辺周一、なすの庸一、岩田和久、多岐かいし、エリオット後藤、小平小平、ゲストに山本直樹ほか。
おそらく三十代半ばの男性が読者対象で、「三十代半ばの主人公が何となく毎日を空しいと思い、それを打開しようとするとかしないとか」というような話が圧倒的に多い。

「ファウストの天使」三山のぼる、原案:嶋本周は、毎日を退屈だと考えている三十代半ばのサラリーマンが、インターネットのあるホームページから「魂と引き替えに美女をあっせんする」サービスに申し込んでしまうという話。
「隠れ家あります」坂辺周一は、くたびれきった中年男3人が、隠れ家的な家をつくることになる話か? よくわからん。この人の描く中年男は、今は亡き「リイドコミック爆」でやってたヤツもそうだったがあまりにもミジメすぎてぜんぜん笑えないし、カタルシスも(私にとっては)ない。どうしたものか。
「E弦の月」岩田和久、原作:森山祐介は、仕置人と水戸黄門を足して2で割って現代風にしたようなアクションもの。
「イマジナリ」山本直樹は、ゲスト扱い的読みきり。だらしのない若者たちが酒飲んでセックスする溜まり場みたいなところに、いつの間にか紛れ込んでいた女の子と、彼女となし崩し的にヤったりヤらなかったりする男たち。
雑誌全体からまったく浮いているけど、かえって本作がいちばんストレス解消されるな、なんか。

とにかく雑誌全体通して「くたびれた初期中年」がミジメに生きてミジメに100円もーかったとか200円もーかったとか言ってるような話ばっかりな気がする……(たとえとして)。まあそういうのが読者の好みだったら何も言わんけど、せっかくマンガって何でもできるんだからもうちょっと荒唐無稽な話が混ざっててもよくない? とか思いました。

中年男の悲哀を描かせたら柳沢きみおは天下一品だけど、何というか心底どんよりするようなみじめったらしさはないような気がする(本誌には書いてない。たまたま私が連想しただけ)。それは柳沢きみお自身の資質があると同時に、彼が成功者だからという結論が出たらいったいどうするつもりだ。とか思った。
本誌ではコラムの杉作J太郎や湯浅学の方が、まだマンガ陣より「中年男のがんばり」というテーマで気を吐いているよ。
(01.1119)



・「週刊少年チャンピオン」51号(2001、秋田書店)

「刀真」石渡洋二は、新連載。「現代でも通用する、人を殺せる妖刀」をつくることに魅入られた男が、6本の変形刀をつくった。そのうち5本が、武道家くずれの「人を殺したい」欲望を持つ者どもに奪われてしまった。刀鍛冶の義理の息子・刀真は、残った1本の妖刀で、他の5人を倒すことを決めた……というような話。
ちょっと設定そのものが「バキ」の死刑囚たちを連想させるし、展開もちょっとバキっぽいのだけど、それだけ読みやすいということは言える。絵は細密でともすれば見にくくなりがちだとは思うが、展開やコマ割りなどで読みやすくなっている。どんな敵と変形刀が登場するのか、楽しみ。
「虹色ラーメン」馬場民雄は、「狂牛病でお客の来なくなった牛骨ラーメン店を救うため、太陽が新しいラーメンを開発!!」 ……とかいう話だと思ったら、なんだかぜんぜん違っていたことに驚く。巨乳ねーちゃんの正体にも驚く(笑)。この作者、ちょっとエッチなマンガとか描けばものすごく素晴らしいものが描けるような気がする。
「ななか6/17」八神健は、17歳のななかが登場、文化祭の劇の台本を書いたりするも、再び引っ込んでしまう。残された6歳のななかに、文化祭の運営ができるのか……!? という展開だが、ほんっとうにうまい。ワクワクする。伏線の貼り方や、展開のさせ方がめちゃめちゃうまいのだ。それも「どうだうまいだろー」っていう感じじゃなくて、そこはかとなくうまい。
「おやつ」おおひなたごうは、最終回近いらしい。そして「オリキャラ」が……。もうサイコーだ。まあもともと「オリキャラ」っていう企画そのものが非常に面白かったんだけどね。
「O−HA−YO」川島よしおは、最終回。同誌に連載している「がんばれ酢めし疑獄!!」に比べると、わりとおとなしめのほのぼの(?)ギャグという感じだった。後半から出てくる女の子の目が大きくなって、なんとなくかわいくなった。で、今度は「ナックルボンバー学園」というのが始まるらしい。
(01.1118)

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