つれづれなるマンガ感想文10月前半

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「つれづれなるマンガ感想文」9月後半
「つれづれなるマンガ感想文」10月後半
一気に下まで行きたい



・「ビジネスジャンプ」22号(2000、集英社)
・「ゴキブリ刑事」(12) 新岡勲(1983、芳文社)
・「なんてっ探偵アイドル」(1) 北崎拓、原案協力/井上敏樹(2000、小学館)
・「ヤングアニマル」20号(2000、白泉社)
・「バキ」(5) 板垣恵介(2000、秋田書店)
・「週刊少年サンデー」46号(2000、小学館)
・「週刊漫画アクション」43号(2000、双葉社)
・「週刊少年チャンピオン」47号(2000、秋田書店)
・「おじゃまユーレイくん」全1巻 よしかわ進(1979〜81、2000、笠原出版社)
・「やけくそ天使」全3巻 吾妻ひでお(1975〜80、2000、秋田書店)
・「コミックバウンド」2号(2000、エニックス)
・「エンジェルブラッド」(3) 美和卯月(1994、東京三世社)
・「隷従」 たちばな薫(1997、司書房)
・「コミックGOTTA(ガッタ)11月号」(2000、小学館)
・「SF/フェチスナッチャー」 西川魯介(2000、白泉社)
・「男の星座」(4)〜(8)(完結) 梶原一騎、原田久仁信(1998〜99、アース出版局)
・「男の星座」(1)〜(3) 梶原一騎、原田久仁信(1998、アース出版局)
・「おんな切り」全1巻 神保史郎、さとう栄治(1981、廣済堂)
・「斬鬼」10月6日号(2000、少年画報社)
・「週刊漫画アクション」42号(2000、双葉社)
・「ビックリマン2000」(2) 犬木栄治(2000、小学館)
・「月刊ヤングマン 11月号」(2000、三和出版)
・「パチスロ7 11月号」(2000、蒼竜社)
・「COMIC ボナンザ」11月号(2000、リイド社)
・「別冊漫画ゴラク」10月4日号(2000、日本文芸社)






・「ビジネスジャンプ」22号(2000、集英社)

やっぱダメだ〜。雑誌のレビュー書くのって、すごく辛い。
読みたくないマンガもいちおう目を通さなきゃいけないし。家に雑誌はどんどんたまるし。……ってなわけで、しばらく雑誌レビューやめます。よくやったよおれ。自分で自分をほめたい←甘ちゃん野郎

・「警視総監アサミ」 近藤雅之、有賀照人

なぜやめたいやめたいと思った雑誌レビューをまだやろうと思ったかというと、本作を立ち読みしてしまったからだ。

このマンガ、以前からなんとなく読んではいたが、微妙にヘンだ。内容は、女刑事(刑事なのか? とにかく警察官)のアサミがイロイロ事件を解決するというものだが、推理モノではなくなんというか従来の意味での「刑事モノ」に近い。
ところがプロットはほとんどどうでもよく、どうやらアサミやその他のキャラクターのHシーンを出す方が眼目らしい。

もちろん、刑事モノやアクションモノでお色気メインの作品は珍しくなく、コメディ調のモノなら「出動! ミニスカポリス」(岡田正尚、ぶんか社〉 があるし、マジなものなら小池一夫原作作品はかなりエロいと思う。
しかし、本作はそれらの作品に比べて格段に「エロシーンのムリヤリ率」が高い。いや、もしかしたらその他の作品だって似たようなものかもしれないが、本作は「ムリヤリだ」と読者が感じ取ってしまう何かがある。何か、っていうか単に唐突なだけだということなのかもしれんが。

先週号では、麻薬密売人・野口勝彦をマークしたミサキ(アサミの後輩?)たちの尾行がことごとく失敗。単なるチンピラではないことを匂わせる手強い野口。いよいよアサミが今週号で尾行に乗り出すが、これもまた見破られ、まかれてしまう。
野口はなぜことごとく尾行を見破ってしまうのか!? キレイなおねーちゃんのヒモになってかなりやりたいほうだいだが、捕まえても改心するのか!? 野口を愛するおねーちゃんはどうなるのか!? ……というのがヒキだったわけだが、あっとびっくり!! とにかくスゴイまとめ方だ。信じられん。計算なのか天然なのか……いや、計算だとしてもこんな回答は出ないだろう普通。北崎拓の「なんてっ探偵アイドル」も、「ヘンな味」を確信的に出そうとしている作品だと思うが、本作に比べればずっと整理されたマンガだと言える。ここで萬田警部補が下着姿になる理由はいったいどこにあるんだ……!?(いちおう露出癖があるという設定にはなっていたはずだが……)

でも人気あるらしいんだよなー。巻頭カラーだし。
それに、確かに絵はキレイだし萬田警部補はイイ女だよ(いきなり普通の感想書いてるが……オネエサマ好きには人気高いらしいっスよ。こばやしひよこの「でぃすぱっち」(講談社)なんかとともに)。

・「柳生十兵衛死す」 山田風太郎、石川賢

新連載第2回。かなり前、石川賢が「魔界転生」を描いたときには、マンガはぜんぜん読まない私の知り合いの風太郎ファンはとまどっていたが、それこそ見識不足であって、もうそういうのは私は相手にしない。石川賢作品にハズレなし。言いたいことはそれだけ。
(00.1015、滑川)



・「ゴキブリ刑事」(12) 新岡勲(1983、芳文社)

ゴキブリ刑事

どんづまりも
どんづまりの
終着駅までいきついた
笑うことさえ忘れた男と女……

そんな二人のために
今 人生という名の
始発駅のベルが鳴る
『終着駅……
ふりかえれば始発駅
になるじゃねえか』

鳴神はふく風に
つぶやいた

主人公・鳴神は「ゴキブリ刑事」と恐れられている。悪は絶対に許さない。その反面、自分が捕まえた犯人の出所を待って、就職先まで世話をしてやる一面も持っている。
そんな彼が狂言回しとなって、都会ですりきれてしまった人々の人情や悲しみを描いた1話完結の刑事モノ。

毎回のラストの1コマは、必ず冒頭あげたような詩みたいなものが書かれ、鳴神の後ろ姿で終わる。どうってことのない内容で、言ってみれば「太陽にほえろ!」とか「特捜最前線」みたいなストーリー。しかし全部のコマが路地裏を描いているような荒々しい絵と、顔にものすごい傷が走っているが二枚目調の鳴神、そしてスキンヘッドで片目眼帯(愚地独歩風)の課長など、奇妙な懐かしさ・安心感を覚える劇画。
昔はこうした作品はほっといてもゴロゴロしていたものだが、今はどこを探しても見当たらなくなってしまった。「手を伸ばせばすぐにあるものほど、時間が経てば手に入らなくなってしまう」ということなのだろう。

余談だが、奇妙にうすた京介の絵が似ているような気がしてしかたがない。「劇画コマンドー」(実在するのか?)から「セクシーコマンドー」を考えついた人だから、読んでいるかもしれない、と思ったりもするがやっぱり考えすぎかもしれん。
(00.1015、滑川)



・「なんてっ探偵アイドル」(1) 北崎拓、原案協力/井上敏樹(2000、小学館)

なんてっ探偵アイドル

ヤングサンデー連載。カワイイ系の白瀬あきら、巨乳おねーさま風の青井梨奈、外見ロリコンでいちばん醒めている赤坂可菜子の3人は、「トリコロール」という売り出し中のアイドルグループ。行く先々で事件に巻き込まれ、いちばんトロそうなあきらが次々に事件を解決していくという推理もの。

原案協力の井上敏樹は、同姓同名でなければ「ジェットマン」、「シャンゼリオン」などのメインライターで、現在「タイムレンジャー」や「仮面ライダークウガ」でちょくちょく脚本を書いている人。まあ「吉田秋生」の例があるので別人かもしれないが、マンガ原作を担当した松森正とのコンビでの「オメガ」、猪熊しのぶとのコンビでの「ドラムナックル」などを読むと、作風は非常に似通っている。……ので、いちおう同一人物として話を進める。

本作では「原案協力」となっているのでどの程度携わっているのかはわからないが、なんとなく「井上敏樹風」な感じはする。
ただし、やっぱりこのプロットなら新人アイドルとかを使って映像化した方が面白いかなあ、と感じてしまう。むろん北崎拓の絵はうまいし、ネームの多くなりがちな推理モノを手堅くまとめているとしてもだ。

トリックは「金田一少年」以来ほとんどの推理マンガと同じく、すべて物理トリック。まあ〜こんなモンかな。井上敏樹は最近の作家の中では「ぶっとび血中濃度」が異常に高い人なのではないかと思うんだけど、マンガではどうも小さくまとめられているような気がする。本作も、行くとこまで行けばもっとハジけるような気がするんですけどね。
(00.1015、滑川)



・「ヤングアニマル」20号(2000、白泉社)

この雑誌買うのもすっごいひさしぶりだなあ。なんで買ったかというと、巻頭グラビアの坂井優美がなんとなく見たかったから。このヒト、なんとなくガイジンぽい顔してて、グラビアアイドル的に言えばカワイイ顔の川村亜紀と対局に位置する。
立体的な顔なので、角度とか光の当て方によって、すごくコワイ顔に写っちゃうんですよね。それだけに面白いっつーか、面白いっていうとヘンだけど。
以前みた野村誠一の写真では、ほとんどすべてのショットがアゴを上に向けていた(本誌では西田幸樹という人)。なんでだろうと思ったら、顔の彫りの深さを軽減してかわいく見せようという配慮だったのかもしれん。実際子供っぽく写っているショットが多かった。

巻中グラビアのコスプレ企画(佐藤江梨子小池栄子)は、おれ的にはもういいって感じ。ただし、オトナっぽい小池栄子の顔はコスプレ自体があまり似合ってないので、もしカッコいい系の女優にでもなったらお宝的意味が出てくるかもね。

で、肝心のマンガなんだけど、アニマルっていつの間にか格闘アクションマンガ誌になってたのかな!? 「ベルセルク」(三浦健太郎)、「エアマスター」(柴田ヨクサル)、「VF」(林崎文博)、「HOLYLAND」(森恒二)、「拳闘暗黒伝セスタス」(技来静也)……って格闘するか、これからしそうなマンガばっか。
「HOLYLAND」は新連載らしいが、ストリートファイトマンガらしく、しかもボクシングの技とか出てきて理論派、それとチーマーとかの「コワイ感じ」もよく出ててちょっと注目。個人的には「ストリートファイトマンガに格闘理論を取り入れることはむずかしい」と思っているので、その辺どうなるのか楽しみ。

「藍より青し」「愛人」は、単行本で読んでいるが雑誌で読むと実に恥ずかしいことがわかった。ちょっと自分にショック(笑)。「ふたりエッチ」も、克・亜紀がエッチを描くことにやっかみ的な発言を目にしたことがあったんで擁護したいんだけど、いかんせんあまりにも「仲のいいアカの他人のセックス」を見せつけられている感じでちっともコーフンしない……。いったいおれはどうすればいいのか。
(00.1015、滑川)



・「バキ」(5) 板垣恵介(2000、秋田書店)

地下闘技場闘士と死刑囚の戦いにおいて、初めて決着の付いた1戦を収録。
これがまた非常に満足の行く展開で、「ルールのまったくない実戦」という設定に対する懸念を吹き飛ばしてくれた。

ちょっとカンケイない話だが「菊地秀行は語るな。読め」と言ったのは夢枕獏であった。確かに菊地秀行の小説は、小難しいことを語るヒマがあったら別の作品を読んだ方がいい性質のモノだ。そのデンで行くなら現在の「バキ」がそうだと思う。「今週のバキさー」って読者同士で語る会話が、今のところすべてだ。

こうしたエンターテインメント作品は後々になって「なぜ面白かったのか」が問題(?)になるので、そのときに何らかの答えが出ればいいんだけど、そのときに語れるかどうかが、まあマンガをめぐる言葉の成熟を表すんじゃないですかね。
(00.1015、滑川)



・「週刊少年サンデー」46号(2000、小学館)

買ったの半年ぶりくらいだよう。ものすごく大雑把に印象を言うと、全体的に絵がとても見やすい作家が多い。アニメ絵を基調としているんだけど、「少年マンガ」な絵柄を逸脱しないというか。高橋留美子、藤田和日郎、みんなそうだ。こういう絵柄に慣れて育った者としては、実に目に優しい。
反面、物足りなさも感じて、たとえばここに「ベルセルク」みたいな絵柄が飛び込んできたらそうとう浮くだろうと思う。

内容については、スポーツマンガが多いなあ。まあ盤石のラインナップ、って感じなんでしょうがボクはイイや。

ギャグマンガは全般的にすごく面白い(まあ毎週読んでいれば波はあるだろうが)。
これらの絵柄が多様なので、誌面全体としてアクセントになっている感じ。

後は個々の作品がどれだけ好きかで定期購読するかどうかが決まるんだろう。やっぱりひとつひとつの作品のレベルは高いし、何より読みやすい。看板は「犬夜叉」か「コナン」であろうと推察するが、何か突出したというかサンデー的な「色」から逸脱した作品があれば(玉砕してもいいから)、毎号買うかもしんない。

・「ナズミ@」 岸みきお

今週から新連載。河津郭志(かわづ・ひろし)は、ボクシングをやっているが女の子に誘いのeメールを出そうか出すまいか悩んだりする、ちょっとウジウジした少年。ある日、パソコンから謎のプログラムが届き、それが美少女NAZUMIに実体化。彼女は、どうやら「キス」によって個人データを採取するプログラムらしい……。

実は、本作を読むためにサンデーを買ったのだった。SFおしかけ女房モノかどうか偵察するためである。

読んだ最初の感想は……15年くらい前のマンガかと正直なところ、思ってしまった。絵柄が北沢拓をちょい古めかしくしたような感じなのと、ナズミが自分のことを「僕」というところ、さらに軟弱な主人公がなぜかボクシングをやっていることなどなど……。またナズミのコスチュームもなんつーか、もうちょっとなんとかならんもんかとも思うし……。もしこれをメール云々の設定を取り除き「85年の作品」といったとしてもわからないのではないかと思う。

似たような設定の対抗馬(?)であるヤンマガの「ちょびっツ」(CLAMP)と比べても、絵柄や設定のイマドキ感に相当の開きがあると言わねばならない。

しかし、まあ相対評価だけれども、「ちょびっツ」と連載第1回目だけ比べてどうかといったらおれ的にはこっち(ナズミ)の方が面白い。連載第1回で基本設定を説明してあるし、伏線も張ってある。ツルリと読める。
そういうわけで、私はこっちを押す。

そもそも、おれ的にはマンガに出てくる軟弱ボーイはボクシングやってなきゃダメ、と思っているのである。

「翔んだカップル」を見よ。あとあだち充を見よ(何描いてたか忘れた)。「ストップ! ひばりくん!」の耕作もボクシングやってたぞ。まあ「ひ弱な少年が成長していく」という過程をロッキー風に目に見えるカタチで描くことができるからだろうが、 こういうのはすでに伝統芸にさしかかっているのである。だからイイのだ。

さて、そういうことを踏まえたうえで、非常に気になるのは「ちょびっツ」同様、「SFおしかけ女房的設定」のコンサバ化とでもいう現象……。「SFおしかけ女房モノ」は、「どんな設定の女の子が出てくるか」だけが作品のインパクトを決定するといっていい。お笑いで言うところの「出オチ」である。

どんなにダメダメな「SFおしかけ女房モノ」でも、設定だけは面白い要素を持っているのだ。ところが本作もCLAMPも「パソコン、あるいはプログラムの擬人化」というアイディアで、これは「AIとま」というヒット作もあるし、ぜんぜんまったく珍しい設定ではない(「ナズミ」の方は「キス」という設定が付与されているが)。それだけパソコンやネットが浸透してきているということなのだろうが、「設定の面白さ」を大きな興味として読んでいる私としては、もうちょっと奇抜な設定の作品が読んでみたい、と思うのであった。
(00.1014、滑川)



・「週刊漫画アクション」43号(2000、双葉社)

次号予告に「ぎゃるかん」(倉上淳士)という新連載予告が載っているんだが、惹句が「エロゲーコメディー」となっていた。まあミもフタもない言い方だけど、それでスッと内容わかるもんなあ……。

・「欲シガリーノ★ネダリーナ」 紺条夏生

おお、今回は主人公の女にちょっと感情移入できるぞ。
飲み屋で飲んでたら知り合いの女の子の彼氏が来て、こいつがすごくイヤなヤツ。
で、読者の私もイヤなヤツだと思えるから。……でもけっきょくヤっちゃうんでしょ?
「最初はイヤなヤツだと思ってたけど次第にひかれてきて……」とかいう展開になるのかなあ。

・「ぷるるんゼミナール」 ながしま超助

連載の途中なのでサッパリわからんのだが、「チカンキング」とか「鬼畜ボーイズ」とかが出てくるところ(というか、ネーミングがヘンに立ってるところ)はながしま超助だなあという感じ。
それと、ちょっと胸デカすぎるのが気になるんスけど……。なんか納得行かないっていうか。だれもかれもがこんなに巨乳を書くこともあるまい、というか。

・「セバスチャンGT2000」 マイボール遠藤

就職の面接をテーマにした4コマギャグ。和田ラヂオ風の絵だけどけっこう笑えました。
(00.1014、滑川)



・「週刊少年チャンピオン」47号(2000、秋田書店)

・「バキ」 板垣恵介

加藤の「糞リアリズム」をファンタジーで返す愚地独歩。あまりにも「こんなことできるわけねーだろー」な展開なんだが、板垣恵介のスゴイところはこれをおそらく意識的にやっているところだ。板垣恵介を「天然か、確信犯か」どちらと考えるかは実に微妙なところだと思うが、「多少自分でばかげていると思っても、確信を持って描く」ことが突破口になると考えていることは間違いないだろう。この「自分でもばかげてるのでは?」というところが少しだけかいま見えるのが奥ゆかしいところで、作品全体の「品」になっていると思う。

・「オバコブラ」 園田ともひろ

今週で最終回だそうだ。なんか私の周囲では連載当初評判がかんばしくなく、私はこういうゴチャっとした絵柄とドタバタ&人情ってのはキライではなかったんで応援してたんだけど、たとえば「海岸にゴミを捨てて平然としてる」とか、そういうオチの付け方の細かいところが気になってしまった。まあギャグマンガの主人公が品行方正では面白くもなんともないが、「コワモテでイイやつ」、「独自の倫理観を持つ」というのであれば、もっと徹底するべきだったと思う。

あと雑誌巻末の作者コメントも、よくわかんなかったんだよな〜。承伏しかねる放言というか。
(00.1014、滑川)



・「おじゃまユーレイくん」全1巻 よしかわ進(1979〜81、2000、笠原出版社)

おじゃまユーレイくん

コロコロコミック連載。友紀霊次郎(ユーレイくん)は、ある日交通事故にあって幽霊になってしまった。同級生の山野こだま(こだまちゃん)にしかその姿が見えないため、彼女と一緒にいていろいろ騒動を起こすというエッチギャグマンガ。

子供の頃読んだちょっとエッチなマンガとかテレビって強烈に覚えていて、とにかくハダカが出てくるだけで記憶に残ってしまうため、印象に残るわりには時を経て読んだときにどうかとも思ってたんだけど、いや、本作はオモシロイです。

霊くんが人間にとりつくことができる、というワンアイディアをいろいろなカタチで活かしていて、女の子のハダカが出てくるのにもちゃんと必然性がある。
いじめっ子の賀麻は実はこだまちゃんが好きだとか、優等生の立花薫はけっこうスケベだとか、キャラも立ってるし、霊くんが死んだ悲しみをまぎらわそうと、両親がわざと悪口を言うたびにそこへ霊くんが出くわしてしまうとか、の繰り返しもキいているし。

最終回はやや唐突なんだけど、このオチは予想がつかなかったな〜。「最後は全員死んで全員幽霊になってしまう」というもうひとつのオチは編集部からやめてくれと言われて実現しなかったらしいけど、そっちも見てみたかった。

復刻版としては、おそらく全3巻だったてんとう虫コミックスの区切りごとに、コミックスの表1と表4がカラーで入っていたり、よしかわ進のインタビューや他作品の簡単な解説も付いているし、こういうちょっとした配慮がすごく嬉しい。

読みきりの「かぷせるクッキー」「まさかのヒカルくん」を同時収録。
(00.1013、滑川)



・「やけくそ天使」全3巻 吾妻ひでお(1975〜80、2000、秋田書店)

プレイコミック連載。秋田文庫。ほとんどセックスのことしか考えていない女の子・阿素湖素子(あそこ・そこ)がドタバタする不条理(?)ギャグマンガ。

吾妻ひでおといえば、80年代を駆け抜けていったというイメージが個人的にする。その後失踪したり、マンガ界から姿を消していたためによけいそのような印象となった。
まとまった吾妻ひでお評価というものを私は勉強不足でよく知らない。しかし、とりあえずはアニメやSF小説からの引用・パロディや、「不条理日記」という作品があるように「不条理ギャグ」を得意としていたこと、また「妖精とか妖怪とかがやってきて美少女とセックスして去っていく」みたいな短編のパターンの元祖といったところが妥当だろう。それは80年代に爆発的に増えたアニパロ同人誌や美少女Hマンガと連動(か、吾妻ひでおが始祖か)していた。

だが「不条理日記」が毎度まいど代表作とされていることに個人的には座りの悪さを感じる。実際、本書第3巻の川又千秋の解説でも「不条理日記」の名が出てくるのだが、あれって初めて吾妻ひでおを読もうって人には向かないんじゃないかと思う。なぜって不条理すぎるから。楽屋オチみたいのも多いし。よくわからないもん。

一時期の吾妻ひでお作品は、あまりにも時代と密着している。だから「不条理日記」が評価されるのにはその時代の理由があったのだろうし、それはだれかがまとまったかたちで言語化しなければならないと思うが(すでにやってるかもしれないが)、吾妻ひでおの一時期の面白さを堪能するなら本書を押す。

75年から始まり、最初は「ヘンな看護婦」という設定だったが(「天使」というのは白衣の天使からか?)、途中から看護婦でも何でもなくなり、ツッコミ役の小学生進也くん(みなしごでカワイソウだからと阿素湖が引き取っている)とのコンビ以外は決まった設定はほとんどなくなる。
この文庫版では1巻の終わりにすでにメチャクチャ(=不条理?)になっている。このまま続くのか、と思うと、それから4年くらい(80年の初頭まで)続く。

その間、78年に不条理日記が連載される。パロディとか作者自身の登場、SFへのオマージュ、やけくそ的な展開、美少女などはすべて本作を構成する要素でもあるので、あまりにも飛びすぎている「不条理……」よりは、基本設定がふつうのマンガっぽいこっちの方がわかりやすいと思う。
なんつーか、何が引用されててどうの、とか何のパロディだ、ってのがわからなくても面白い吾妻作品が他にもいっぱいあると思うんだけどな。でないと、あまりにも一時代の人、って理解で終わってしまうような気がしてちょっと。今の若いひととかどう思ってるんだろう。

それともうひとつは、美少女マンガだろうとギャグマンガだろうと、とりあえずヒロインの処女性は絶対的なものであったのに対し、阿素湖素子は淫乱でセックスのことしか考えず、それでいてかわいらしさを獲得している希有なキャラクターだということなんだが(最近ではこうしたキャラクターはけっこういるけど)、これはなんだろね。突然変異的に出てきたんではなく青年マンガのちょっとエッチな女性キャラをものすごく極端にしたものではないかと思うのだが。

どちらにしろ、もう75年あたりから現在の絵柄に近くて、古さをぜんぜん感じない。今だからこそ「やけ天」、ってコトで。
(00.1012、滑川)



・「コミックバウンド」2号(2000、エニックス)

おれ、やっぱり雑誌のレビュー書くの向いてないかもしれねー。マンガ単行本1冊読むよりよほどエネルギーを必要とする。また、連載作品に点が甘くなるのも自分では不思議なところだ。面白いところをムリにでも探し出そうという気が働くからだが、それがいいことかどうかも自分ではわからない。

巻頭グラビアは中島礼香

・「東方鬼神伝承譚 ボロブドゥール」 太田垣康男

新連載。信徒を大量に殺し、巨大な生体兵器のような「鬼神」に転生させる技術を持った「僧会」は、乱世を平定し覇王となったが、罪人を大量に処刑することでいまだに鬼神の増産を続けていた……という、架空の仏教王国が舞台の異世界ファンタジー。初回なので、まだ話見えず。

・「アストロベリー」 金田一蓮十郎

新連載(月イチ)。奴隷用かペット用に人間(人造人間? クローン人間?)をつくり出した宇宙人が、素材とした地球の女の子の性格とまったく異なってしまったことをヘンだと思い、その女の子に会いに行く。
連載第1回を読むかぎり、まあ人間には多面的な部分があるというか、外からの観察だけではわからないところがあるというか、そんなような話になるのかなあ。ある意味「ちょびっツ」とかの美少女アンドロイドものの裏返し的設定って感じで面白いんだけど、ヘンに説教臭くなったりしないことを願う。わたし的には、比較的注目株。

・「亡国のイージス」 福井晴敏、中村嘉宏

小説が原作の、なんつーか国際謀略モノ。……がーん。もうお話がわかりにくくなってきた。ネームが多い。

・「吉祥寺モホ面」 土田世紀

口臭の強い青年とワキガの強い青年の物語。まだ話見えず。

・「虐殺! ハートフルカンパニー」 ピエール瀧、漫☆画太郎

おれやっぱり漫☆画太郎のコピー繰り返しギャグってダメなのかもしれん……。なんかもうついていけない……(笑)。「まんゆうき」と「地獄甲子園」は面白いと思ったんだけどなー。「くそまん」がダメだったからなー。ただ、読みやすい。それはおれにとってかなり重要なのだ。

・「トンネル抜けたら三宅坂」 森高夕次、藤代健

異常に強い性欲を持った少年・三宅坂登を主人公にしたギャグもの。森高夕次がコージィ城倉の別名(らしい)と知ってからものすごく納得するものがあった。 確かに作風は似ている。コージィ城倉および「おさなづま」の好きな人なら、楽しめると思う。

・「PEACE ON LINE」 山崎かな女、日高トモキチ

インターネット麻雀の話。このままただの駆け引きの話だけで続くのならちょっと苦しいか……?

「独立お小言連隊」(ほりのぶゆき)と「フェチ研」(南智子、きょん)は、フェチを題材としたマンガなんだけど、ちょっとネタ的に弱いと思う。最近ここら辺も過当競争スゴイから。

以下、記事モノ。
「国民総カード化計画!! ファミリア」は、「面白そうな感じ」がするわりには実際ちょっとヌルい。う〜んどうするのか。

「モンスーンテリング」は、決まり文字数のコラムを数本まとめて載せるコーナーで、「モンスーンクルー」という人たちが書いているらしい。前回も載ってたかもしれないが今回が初見。
まず定型コラムがとても見やすいレイアウトで載っていることはイイと思うのだが(昨今懲りすぎててなんだかわからないレイアウトのモノがけっこうある)、読みやすいかと思うと意外と読みにくい。たとえば「姉妹セブンセンセイション」という小説のレビューはタイトルが「東京夜遊びセンセイション」となっていてよくわからないし(ジョージ秋山「銭ゲバ」のレビューのタイトルは「銭ゲバ」になってるのに)、出版社名もわからない。別のコラムのお店紹介ではちゃんと住所が載っているので、そういった必須事項に無頓着とは思えないから最初から何かフォーマットを決めればよかった。

また企画全体としては、このコラムの複数の執筆者がとにかく興味のあるモノを、ということらしく音楽とかマンガ紹介などの決まったコーナーではない。しかし、この場合、雑誌内雑誌というか治外法権的なよほど強い打ち出しをするか、あるいは単純な流行とシンクロする当たり障りのない題材(でも内容は違った視点で、とか)にするか、方向性を定めないとどっちつかずになってしまう。現状ではちょっと苦しいのではないか。

そもそもこの雑誌、「バカに目覚めるオトコのコミック」っていうキャッチフレーズのわりには、それほどバカげたマンガは載ってない。ギャグマンガはともかく、ストーリーものではもひとつマッチョ系の人が欲しいと思ったりする(まあ編集部の考えている「バカ」と私の考えている「バカ」の意味合いが違うかもしれないが)。
(00.1011、滑川)



・「エンジェルブラッド」(3) 美和卯月(1994、東京三世社)

成年コミック。A5判。珍しく、単行本何巻にもまたがった長編Hマンガ。
会社を牛耳る野望を持った男・緋村の罠にかかった専務の娘・水沢明日香はやられまくる。明日香をかばおうとして、その義母・雪絵もやられまくる……という話らしいんだが、やっぱり最初から読まないと面白さがきちんと判断できん。すいません。

ただ、調教され続けている明日香は、そのわりにあまりにもあっけらかんとしすぎているような気はする。それと表情のカタさとネームの説明っぽさが気になることもある。絵柄は、この頃のは結構好きだった。いつからかこの作者の絵はものすごく乳がデカくなるんだけど、それはいかがなものかと思ったりする(まあ好みの問題ですが)。
(00.1010、滑川)



・「隷従」 たちばな薫(1997、司書房)

成年コミック。A5判。短編集。ほとんどが「一見カワイイ無邪気なコ、でも本当はとってもスケベ」な女の子とのHを描いている。手堅くまとまったショートストーリーといった感じで、それだけに読後の印象が弱いような気もするが、絵はうまいし構成も比較的達者だと思う。
本書のなかでは個人的に「Call My LucK.」という話が好きかな。伝言ダイヤルで知り合った女の子は、「彼氏に処女だと嫌われてしまうのではないか」と思い、セックスを教えてくれと申し出る。遊びのつもりの主人公はだんだんその子を好きになってしまい、彼氏に嫌われるようにアブノーマルなことまで教えていく……というもの。これもオチが少し物足りないけど、わりといい。
絵はほんの少し、細野不二彦入っている。
(00.1010、滑川)



・「コミックGOTTA(ガッタ)11月号」(2000、小学館)

「阿弖流為II世」 原作:高橋克彦、漫画:原哲夫

今回は、月刊誌なのにお話はほとんど進んでねえー!! ただ梨元モドキを出してきて「私だって寝てないんだ!!」とか言わせて(しかも梨元本人のセリフじゃねーし……)むちゃくちゃ傲慢なヤツに仕立て上げ、首をちょんぎりたいってだけの展開だ!!(と思う)。単行本が12月に発売されるそうでホッと一安心だ。

それにしても雑誌の最後のページの作家コメント「先生のお気に入りの1冊」は、なんでこんなにつまらない答えばかりなんだ! まあ何でもいいけどな。本読んだってロクな大人にならないよ。つまらない大人になっちゃうよ。ガラスのジェ〜ネレーショ〜ン。
(00.1008、滑川)



・「SF/フェチスナッチャー」 西川魯介(2000、白泉社)

A5判。ヤングアニマル、少年キャプテンなどに掲載。
少女・栗本波瑠のかけているめがねは、実はめがね型宇宙人にして刑事「捕り手」であった。彼は女子校に潜入したスクール水着型、上履き型、ブラジャー型などの悪い宇宙人「ホシ」を退治しなければならない。その際、「ホシ」とただのモノを判別するには、波瑠の協力が必要なのだ。ホシにとって人間の唾液は腐食性の劇薬のため、ナメることによって正体を見破るのである。波瑠はいろんなものをナメナメすることで、宇宙人の正体を暴いていく。
ということで美少女が上履きをなめ、スクール水着の内張りをなめ、ブラジャーをなめ……という、絵はカワイイがなかなかにエロ度&フェチ度の高いお話が展開されている。
フェチものっていうか「こだわりエロもの」は、かつてはニッチなジャンルであったが、現在は永野のりことかG・B小野寺の「ロリータ番長」とか八神ひろきの「G−taste」とか、なかなかスゴイ人がいろいろ確立したのでこちとらの見る目も厳しくなるんでやんすが、コレはなかなかイイですよ。ホンモノですよ。

サブタイトルも(「たったひとつの冴えた張形」とか)、プロットも、ところどころに散りばめられたこまいネタも、SF小説その他モロモロの引用があったりしてうまい。こういうのを読むと、引用ってのは大変な才能を必要とすることを再認識する。 「栗本波瑠」ってのはハル・クレメントからとったそうだが、そうえば「20億の針」ってまだ読んでないんだよな……。

まためがねっ子に対する執着も並々ならぬものがある……っていうか主人公ほとんど全部めがねっ子。こういうの見ると、自分ってめがねっ子好きでもなんでもないヌルいやつなんだ、って再認識しちゃいますな。情熱の決定的な差。

SFタッチの短編も何本か同時収録。個人的にはアイディア重視の話の方が好きかな。
(00.1008、滑川)



・「男の星座」(4)〜(8)(完結) 梶原一騎、原田久仁信(1998〜99、アース出版局)

87年頃までの連載。梶原一騎の自伝的セミドキュメント劇画。

力道山カール・ゴッチ戦において、プロレスの八百長というか駆け引きについて延々と書かれているが、これが連載当時のプロレスファンにとってうなずけるものだったのか、それとも失笑ものの創作だったのか、私にはわからん。
プロレス門外漢の私としては、作者の「確かに駆け引きはある。しかしそれを踏まえた上での『本当の強さ』というものがあるだろう」という主張ではないかと思う(この作者の他のプロレスマンガもたいして読んでないので、はっきりしたことは言えないのだが……)。
マンガのキャラクターだった「タイガーマスク」をレスラーとして登場させるなど、実際のプロモーターとしても活躍した梶原一騎だが、何から何まですべて創作、ストーリーをつくり込んでいたとしても、男の「強さ」に対する考えにはそれなりのものがあったと推測する。さらに、柔道、空手、ケンカの「実践者」であるところからプロレスのリアリティを出そうとしていたというか、そうした考えあっての「八百長論」だと思うけど詳しいことはわかりません。

ちょっと他の梶原ムックを再読してみると、本作の連載当時は「作者のスキャンダラスな半生を描く」という部分に読者の期待は大きかったらしい。ところが後半は、格闘技関係の話に大きくシフトし(前述の力道山VSゴッチなど)、「なぜ他人のことばかり書くのだ?」と思われていたという。
個人的には、さんざんさまざまなかたちで書いてきたプロレスや空手について、引退を決意してから新たに語り直す、という意味があったんではないかと思う(自分のことを書きたくなくなったのかもしれないが)。

何にしろ、話は梶一太(梶原一騎)よりもプロレスに振れたり、極真空手に振れたりする。
ここで特筆すべきは、「空手バカ一代」で「悲劇の天才」として描かれた有明省吾のモデルとなった春山章(さらに彼にもモデルがいるらしい)と、彼に惚れ込んで勝手に後援会長を名乗ったオカマの屋台のおでん屋ジャニーさんのエピソードだろう。
無口で禁欲的で大山倍達に心酔した春山と、心の弱さゆえ立派な店を乗っ取られ屋台のおでん屋に甘んじていたジャニーさんの奇妙な友情と悲劇。このジャニーさんの死のシーンはスゴク泣ける!! ここに一種異様な迫力がある。全体の流れとしてもいささか唐突な感じのするエピソードだが、とにかく泣ける。これは読んでいただくしかない。

さて、梶原一騎のセミドキュメントの作成法というのは私には謎が多く、うかつに類推するとまったくの的はずれになることが非常に多いので、つまらん推測はしない。
あくまで完全なるフィクションとして、キャラクターを追ってみる。

まず主人公の梶一太。ストーリーだけ追っていくと、自意識過剰の乱暴者で反省はするが同じことを繰り返すダメ青年だが、原田久仁信の「図体がデカくオドオドとした顔」というキャラクター造形により、強がる反面人一倍コンプレックスを持つという両面性を見事に表している。
梶一太の弟。一太の悩みをズバリと言い当てたり、相談に乗ってくれたりする。
弟はダメな兄を優しく見守る風、父は「星一徹」風だが一徹より優しい。また一太の父への愛情も、屈折するところはあまりない。
ユセフ・トルコ。力道山の下につき、一太と力道山とのパイプ役になったり、「大物」力道山の言葉を一太に伝えるために現れる。物語を転がしていくのに重要なキャラクター。少しタイプは違うが、極真側では黒崎健時がこの役割を担っている。
力道山。実力はあるが、格闘技追究の求道者というよりは、アメリカナイズされたビジネス感覚を持つ男として描かれる。また気まぐれや自己顕示欲、度量の広さと狭さを合わせて(実態はともかく)、一太にとって「いわゆる大物」、社会的成功者の象徴。
大山倍達。力道山に対して、真の空手追究のためには赤貧に甘んじる。世渡りもあまりうまくないが、周囲が勝手に盛り立ててくれる劉備玄徳型のカリスマ。もちろん本人も強い。「どこそこでだれと戦った」という記録が力道山よりずっと曖昧なため、そのフィクション性も強い。力道山が「現実派」なら、大山倍達は「浪漫派」。
春山章ジャニーさん。春山章は、大山倍達をさらに純化したような理想家肌の天才。ジャニーさんは、人の良さと精神の弱さから店を乗っ取られてしまった、誇りを持ってはいるが社会的には弱い人。自伝と銘打つ作品に登場するにはあまりに唐突だが、彼のエピソードが個人的にはいちばん心に残った。

梶原一騎の武勇伝というか暴力沙汰は、話を聞くたびにシャレにならないと思うが、本作を通読すると主人公・梶一太のコンプレックスとそれを自覚する心、また彼の心を察する登場人物たちから考えるに、梶原一騎という人はそうとう他人の考えや行動を見通す能力があったと思う。もちろんそういうのがなければ作家にはなれないが。
そのくせ暴力事件を起こすというのはにわかには信じがたく、陳腐な言い方だが作家と作品とのつながりというのは簡単にはわからんもんだな、と思うのでありました。

なおゴラクコミックス版には弟・真木日佐夫原作の追悼劇画が付いていたというが、このアース出版局版では未収録。
(00.1007、滑川)



・「男の星座」(1)〜(3) 梶原一騎、原田久仁信(1998、アース出版局)

暴力事件を起こた後に大病を患い、その後劇画引退宣言をして梶原一騎が書いた自伝的劇画。漫画ゴラク連載。85年頃。

実はというか……連載当初少しは読んでいたんだが、絶筆となり、ゴラク版単行本も買わないうちに絶版になってしまって、復刻したこちらもグズグズしていてはなくなってしまうと思い、あわてて買ったりした。

今でこそ虚実皮膜の物語は梶原一騎に限らずある程度受け入れられているが、「実話」をウリにしていた彼の作品が暴力事件の後説得力を失ってしまったことも確かではないかと思う。大槻ケンヂは「骨法」の堀辺正史のことを、「20年早く生まれていたら大山倍達になっていた」と言っていたが、それはまさしく現代があまりにも情報化社会になりすぎたということであって、梶原一騎作品も当時、情報化の弊害を被りつつあった。「きれいごと書いてても乱暴なヒトだった」という読者の失望だけでなく、そういった部分(真実を書く、と言っても何が真実なのか?)も晩年の梶原一騎に対する向かい風となってしまったと思う。

現在でこそ、梶原一騎の評伝、作家論・作品論が多数出版され、プロレスや格闘技マスコミの異常とも言える発達があるため、梶原作品がいかによくできた「お話」づくり(いい意味で)をしてきたかを読者も確かめることができるが、おそらく本作「男の星座」連載当時でも普通の読者レベルではまだ梶原作品は「実話」の範疇だった。
そういうことからも、現在と連載当時とでは、作品の捉え方が変わってくる。

それをふまえたうえであえて後出しジャンケン的な感想文を書くとすれば、やはり梶原一騎の「お話」づくりのうまさにはすごいものがある。事件直前まで、自作のエピゴーネンを繰り返すイメージが強かったが、本作では「自伝」としてストレートに自分を出せるからか、題材としてきた空手やプロレスを「自伝」というかたちで語り直すことができるからか、非常に中身の濃い作品になっている。

とくに主人公・梶一太(梶原一騎)の心の動きはものすごく「わかるなぁ」という感じである。無名の自分をさげすむことなく接してくれる大山倍達や力道山にかえってコンプレックスを感じ、同棲している人気ストリッパーにコンプレックスを感じ、「ジャリマン」と児童漫画をさげすむ編集者に怒りを感じ、……まあコンプレックスを感じどおしなのだが、これすごくわかるなー。
そして一太のコンプレックスは、「他人に認めてもらう」ということでたやすく氷解し、また「認めてもらわない」ことであっけなく復活する。もちろん当時からいかなる仕事も誇りをもってこなしてはきたのだろうが、それと世評とはまた別問題、っていう心の動きが、とにかくすっごくよく出ている。……って思うのは、私がやっぱり自己顕示欲強い人間だからだろうかね???
(00.1006、滑川)



・「おんな切り」全1巻 神保史郎、さとう栄治(1981、廣済堂)

渡り板前の小林旭(俳優と同姓同名)が、相棒の宍戸錠とともに全国を板前修業、あちこちで女の子をひっかけてはヤってしまうというマンガ。

なんつーか当然そこには義理人情やら何やらがあるんだけど、ページ数のせいかあまりにもストレートな回もあって、「ノンノン族は黒鯛の味」の回は、海辺の民宿に板前として入り込んだ小林旭と宍戸錠、しかしノンノン族(アンノン族?)の女子大生に「あんたたちみたいな職人とオ○○コするためにわざわざ海に来たんじゃノンノンよ!」と言われる(ひでー……)。
しかしだれも調理できないとれたての黒鯛を、旭があっという間にさばいてしまうのを見て女の子たちは「サイコ〜〜〜よ ナウイわ〜っ」「二人の手つき見てたらなんか変な気持ちになっちゃったあ〜〜〜っ」とかいって、ヤられちゃう。ものすごいスピードのマンガだと思った。
(00.1006、滑川)



・「斬鬼」10月6日号(2000、少年画報社)

小池一夫原作・神田たけ志作画の傑作時代劇画・御用牙を114ページ再録したヤングキン グSPECIAL増刊号第2弾。前号は平とじだったが、中とじで再登場。

他に、大島やすいち、小島剛夕、吉田かずひろ、もりもと崇、ひらまつつとむの作品が掲載(小島剛夕は再録)。

「御用牙」は、70年代に長期連載された時代劇画で、「大儀王道を守るためなら法をも犯す」という信念のかみそり半蔵が、江戸の町で事件を解決していくというもの。

今回は「嗚呼! とったりの女牢」、「江戸城御金蔵破り」の2本を収録。

・「伊吹忍流秘話 くノ一百鬼」 小島剛夕

戦乱の世、浮浪者同然だった少年・クイタは、「見込みがある」ということで謎めいた老人と娘のおぼろに連れられ、忍者の里・伊吹ヶ宿へ行く。やがておぼろを愛するようになったクイタだったが、彼女は「くノ一の修験」のために奥道に入って出てこないという。自らも奥道に踏み入れたクイタが見たものは……。

初出はアクションデラックス(80年)。忍びの術は合理的かつ幻想的で、結局は歴史の流れから切り取った忍術合戦なのだけれど、そこには「殺し合わないと生きていけない」人々の哀しみと凄みが満ちている。昔はこういうのいくらでも読めたんかなあ。それともそうでもないのか。とにかく現在の作家にはちょっと出し得ない迫力があることは確か。

・「からくり仕置人」 ひらまつつとむ

からくり仕置人

ある意味、本誌の「裏の目玉」とも言えなくもない読みきり作品。作者はおそらく「飛ぶ教室」「ハッスル拳法つよし」のひらまつつとむと同一人物。
まずタイトルが、「必殺からくり人」でも「必殺仕置人」でもない、「からくり仕置人」である。

菊島藤次郎は、江戸の伝馬町で「からくり屋」を営んでいる。ここは、よくわからないけどお皿、根付け、オルゴールなども売っているから道具屋なのか? 藤二郎にはおがみの安次という腹心の部下がいる。ナレーションによって戸隠流忍術の達人と説明されている。

ある日、備前屋の奉公人・おそのの土左衛門が浮かんだ。こがれる恋に悩んだ末か、主人の備前屋のしつこいいいよりに悩んだのか……町人たちは無責任にウワサするが、江戸の粋を大切にする藤次郎はそんなものに耳を傾けない(普通は仕置人っていうのは情報には敏感なはずなんだが……)。

しかし読者の疑問は次のページでふっとぶ。藤次郎に情報を提供していたのは、西宝寺の天祥尼という尼さんであった。彼女は仏と心が通じあうことができ(テレパシー?)、引き取ったおそのの死体からすべてを把握していたのだ。
備前屋はおそのにペルシャ猫を預け、知れぬところで殺し、それをおそのの責任として責めたてて毎晩犯していたのであった。

天祥尼「藤次様 どうか備前屋に死を!」
藤次郎 ゴゴゴ←藤次郎の怒りが燃え上がる音

普通こうしたアクションものは、時代劇に限らず情報収集がポイントとなる。だからこそ必殺シリーズでは秋野大作とかなんとかが情報屋にいたり、「多羅尾伴内」では情報収集のために七変化を繰り返すわけだが、本作では「天祥尼にはテレパシーがある」、そして「おがみの安次は忍者」という設定によりものすごいいきおいで情報収集シーンを割愛することができるのだった。

備前屋は大池の上に寝所を設置した特殊な場所で眠っていることが判明、しかも寝所に入ると渡廊下は上げてしまう。他には細いネコの通り道しかない。このため藤次郎は、得意のからくり技術で、歩いて油をまくおもちゃのネコを開発、それを使って寝所を火の海にする。
この混乱に乗じて用心棒を倒した藤次郎と安次だったが、備前屋はただのスケベじじいではなかった。落ちている槍を拾い、振り回す。そして言う。

「オレに槍を持たせたのは失敗だったな」

おお、北斗の拳!!
でもまあ結局藤次郎に倒されちゃうんですけどね。

こうして江戸の毒虫は退治されたのであった、って話なのであった。
(00.1005、滑川)



・「週刊漫画アクション」42号(2000、双葉社)

最近、気まぐれで雑誌を多く読んでいるが、1作は必ずその中で私にとっての目玉商品を見つけて、けっこういいカンジだ。
本誌も、ひさしぶりに購読。数号前からエロ系にシフトしているという話は聞いていたが、今週号を読むかぎりエロ系とそうでない系の作品が混在しており、いずれおちつくのかこのままの路線で行くのかわからないが誌面構成的にはやはりシッチャカメッチャカな印象を受ける。

まあ私はそういうのは好きな方なんだけど。

巻末グラビア、相沢しの

・「オッパイファンド」 山本よし文

第4回目。この号を読むかぎり、あまりにもスゴイ作品。

「オッパイファンド」という、なんかよくわかんないがオッパイの株を売ったり買ったりするシステムがある。オッパイについての眼力を持つ本郷タケシがマンゲ銀行のオッパイファンドに入り、という女の子のオッパイを最初の公開銘柄に決定した。
だが岬ユリ子は、大物新人タレント・裏筋カリ子のおけつを公開したことでサーバーがダウンするほどの力を誇示した。
「オッパイは営業成績でおけつに勝ったことなんて一度もないじゃない」
「みんなおけつが好きなのよ」
「おけつを求めているの」
「でかいだけで品のないオッパイより」
「みんなおけつに……」
「プッチ勃ちしてんのよ」
……すごすぎるマンガだ。注意深く見守っていきたい。

・「欲シガリーノ★ネダリーナ」 紺条夏生

第2話。これからうだうだあまり関係ないことを書きますけど、私は基本的に雑誌のレビューとかは苦手です。
それは単行本の場合は好きとか嫌い、面白いつまらないがある程度把握できて、あまりに自分の好みに合わない場合は「感想を書かない」ということで済んでしまうのだけれど、雑誌の場合は、好きとも嫌いとも言い難い作品を読むことになる。それによって起こる連想を書いていくと、なんだか自分の言いたいことが浮上してきて、作品をおしのけてソレだけを書くような愚をおかしてしまいそうな気がするからです。

ということで、本作は初回を読んでいないのでよく内容がわからないながらも、主人公のOLが自分の欲望について忠実に行動したりうまくいかなくてイラついたり、という話であることはおぼろげながらわかる。
そこで、OLたちの実態めいたことが描かれるんだけど、あまりディティールが細かすぎると悲しいかな、男である私にはわからない。たとえば主人公のOLが男について「服がださいから」誘いを断るが、それが「古着だから」というのですでに私にはわからなかったりして。

男は、現実でも虚構でも勝手な言いったくれを言いまくってきたので、それを女性にやるなとは言わない(この作者が女性かどうかもわからんが)。しかし、女性の女性ゆえの欲望をストレートに描いて、それで男が欲情できるかというとまた別問題だろう。本作はいちおうエロ主体のようなので、そういう疑問が沸いて来るということなのだけれど。
もっとも作者が人間の欲望に深い洞察力を持っているのかもしれない。それは今後の展開を見てみないとわからない。

・「むっ尻娘(ちりむすめ)」 さつき優

尻フェチの青年・猿田紋二郎が、ファミレスで見事な尻の少女・高木留美を見つけ、それをわがものにせんと奮闘する。
この人の描く女の子はスゴクかわいい。好み。

表紙の「美尻に悲しみは似あわない!!」という惹句もスゴイ。
(00.1005、滑川)



・「ビックリマン2000」(2) 犬木栄治(2000、小学館)

月刊コロコロコミック連載。
星天使タケルは、ライバル「超大凶魔」を倒すため、天聖魔オリンピック(天下一武道会みたいなもの)に出場する。

アニメではメインキャラの賢守カンジーや天助ポーチはほとんど出ず、タケルの熱血ストーリーになっている。もう少しバトルに技の応酬があるといいんだが……。

・「ビックリマン2000」(1)

(00.1004、滑川)



・「月刊ヤングマン 11月号」(2000、三和出版)

今月号から新創刊の青年コミック誌。表紙があまりにもヤンマガに似ているのはご愛敬。
アクションものとちょっとエッチなラブコメ、という構成で路線としては「月刊チャンピオン」とかを大人向けにしたような感じ。リーダブルな作品がほとんどで、滑川的には好感触。
作家陣:松久由宇、かどたひろし(読みきり)、唯上拓、井上いちろう、石川賢(読みきり)、古沢優、スズキサトル、岡崎つぐお、市川智茂、吉迫哲彦、マスノヒデトモほか。イラストに叶精作。

巻頭グラビア、坂井優美。ちょっとページが少ないのが難点。

・「ハイエナの夜」 夢枕獏、松久由宇

30代の体力勝負のカメラマン・滝村薫平の関わる事件を描く一話完結のハードボイルド・アクション。
原作は夢枕獏の小説で、関川夏央・谷口ジローの劇画「事件屋稼業」へのオマージュだと明言されていたモノだが、それが今度は劇画そのものになった。
原作では「バツイチで別れた娘のことを心配している」という設定があったと記憶しているが、想定される読者の年齢のためか、マンガ版である本作では第1話ではソレへの言及はなく、イイ女の助手が付いていることになっている(原作にこのヒトがいたかどうか忘れた)。
もともと夢枕獏の書くセリフは、マンガにしたときもお話の展開をなめらかにするような劇画的な要素があるので、それを活かしていけば(原作どおりではなく「それっぽい」という意味も含めて)読みやすくてイイアクションマンガになると思いました。

・「走れ! エロス」 かどたひろし

読みきり。「男も女も全員ハダカになって描く」という美人マンガ家のところにアシスタントに行った青年が鼻血を出したりするマンガ。しょーもないことを徹底して描いているところがイイ。とくに劇画調の絵なので。

・「東洋鬼」 原麻紀夫、唯上拓

外国人のシマとなってしまった新大久保辺りを取り戻そうと動き出す沖縄出身の若い男・金城晋吾。3人のはみ出し者を味方につけ、「戦争」をしかけることを決意する。
まあ新宿・新大久保界隈のことは滑川はよく知らないんでうかつなことは言えないんだけれど、「特殊能力を持ったアウトローが金と野望だけのつながりでおおごとをしかける」って話は基本的に嫌いではない。

・「回天(竜馬暗殺)」 石川賢

読みきり。タイトルから、歴史の謎にせまるような話だと思ったら大間違い、完全な石川賢テイスト全開バリバリの恐ろしいまでのアクション巨編だ! ゲッターロボっぽい鎧を付けた暗殺者と、拳銃で武装した主人公が斬ったはったを繰り広げ、最終的には続きをまったく予想できない謎が明らかに……(まあ読みきりなんで続きはなくてもいいんだけど)。

・「爆音THE80」 古沢優

すっかり弱小化した暴走族チームの少年が、ビンテージなゾク車にまたがったままもっとも暴走族の抗争が激しかった80年代へタイムスリップ! 初回は今後の展開への伏線ありまくりで、大いに期待が持てる。

・「ミツマのトリコ」 岡崎つぐお

チギルくんこと三渚契一(みつま・けいいち)は、その優柔不断さゆえにガールフレンドの小利戸みつまともいまいちしっくりいかない。そしてチギルはその優柔不断さゆえに、ハロウィンの夜に3人の美女精霊と契約することに……。
ありがちと言えばありがちな話だけど、やっぱり岡崎つぐおだと読みやすい。絵柄そんなに変わってないですね。
(00.1003、滑川)



・「パチスロ7 11月号」(2000、蒼竜社)

石山東吉の「ランブルアイズ」が面白くて大変なことになっている。雑誌の性質上全体的にはパチスロの攻略が主で、パチスロの予備知識なし、純粋に展開を楽しめるのは同作品しかない。これは誌面をバラエティに富ませるためでいたしかたないこと。
それゆえ、これ1作のためにパチスロをやらない人に本誌を買えとは言いづらいのだが、立ち読みくらいはしてもソンはない。

・「ランブルアイズ」 石山東吉

左目だけに驚異的な視力がある主人公・は、悪のパチスロ軍団・エンジェルバンプとの勝負に挑む。エンジェルバンプの三姉妹は、「ザ・ハード・インパクト ユナイト3−D」という三位一体の技でもって観客を魅了する。

対する瞬は、五感をすべて眼に凝縮させる「ランブル・アイ」によって、驚異的な連チャンを展開。彼のエンジェルバンプに対する怒りは、ランブル・アイに新しい展開をもたらしていた。

「ヤマセミ」(鳥の一種)の生きる本能「目の膜」を自分のものとした瞬は、「ランブル・アイ 瞬膜(ティアーズコート)」をなしとげたのであった。

この「瞬膜」がどんなものであるかは、あまりにも今回のネタバレになるので書かない。しかし、表紙にドカンと打たれた「オレの眼は宇宙だ!!!」という惹句といい、「瞬は……パチスロを肚の底からエンジョイしてるぜ!!」というセリフといい、いかしすぎる展開となっている。

・「ランブルアイズ」

(00.1002、滑川)



・「COMIC ボナンザ」11月号(2000、リイド社)

巻頭グラビア、那由多遥、巻中グラビア、アリーネ。あとヌードグラビアがついてる。

全体的に、ラブコメテイストのHマンガを多く載せている雑誌。大島岳詩の絵柄が変わったのにビックリ。アニメ顔になってる。過去に劇画タッチからもっとスッキリした描線に変わったと記憶しているが、さらにアニメっぽい顔になっている。

執筆者は雅亜公、法田恵、立沢直也、小林亜由美、大島岳詩、エンゾ円蔵、鈴木岳生、牧野靖弘、矢野健太郎、みやたえつこ、沖田龍児、チャコ、松元保郎、坂辺周一。

・「コットンプレイ」 矢野健太郎

事故にあって瀕死の状態となった琴美は、松田にだけ見える霊体となってそこらをウロウロすることになってしまった。松田の後輩でオタク・下田辺は、琴美がデジタル媒体であれば姿が見えることを発見、ベタ惚れになってしまい、霊体である彼女にどうすれば触れることができるか研究。琴美ソックリのダッチワイフ(1分の1ドール?)を開発、コレに乗り移ってもらえればHさえ可能だと主張。

で、人形に乗り移った琴美とHするところをえんえんと妄想する。

「白く濁った淫らな牝汁の濃厚な味と香り、……と同時にシリコンラバーの清々しいケミカル臭が混ざり合って」「ああ、最高!」……と言ったりする。

……今まで、「人形が美少女に変貌する」、あるいは「美少女アンドロイドとHする」というマンガはたくさんあっただろうが、ここまで詳細に「そのH」について描いた作品があったであろうか??? いや多分ない。
たいていは徹底したプラトニックラブだったり、そのときだけ人間に変身したり、「セックスは人間そっくり」という機能が都合よくついていたりして、その「人間っぽさ」は強調されても「人形っぽさ」は強調されないものだ(せいぜいギャグっぽく首がとれちゃうとかそんな感じ)。

それにひきかえ、このエピソードはスゴイ。う〜んスゴイ。

・「コットンプレイ」(1)

(00.1001、滑川)



・「別冊漫画ゴラク」10月4日号(2000、日本文芸社)

ぐわ〜失敗した。雑誌を買ったまま積ん読、ということは私にとって非常によくあるコトで、この号は前のやつ。で、今号を買おうと思ったらすでに9月20日に発売されていて、隔週の雑誌で10日も経ってるからもうないんだな。いきつけのコンビニに入ってないとつい忘れてしまう。ちなみに本誌は隔週水曜発売で、次号発売はたぶん5日。

前川つかさの「新・大東京ビンボー生活マニュアル」が連載されている。懐かしい。

・「女狩り」 倉科遼、佐多みさき

次号で最終回だというので、最後が読みたかったんだけどな〜。
「縛り絵師」沢渡幻愁は、幻の女を追い求めている。今回は春画に興味のあるゴーマンな白人女・スーザンを亀甲縛りで縛ってイカせてしまう。スーザンは「日本に武士のような男を求めてきたが軟弱なのばっかり、幻愁先生こそ追い求めていた幻の男!」とか言って縛られたままヤられちゃうんだけどいいのかな……。

・「真夜中のジャズマン」 柳沢きみお

今号から新連載。一流商社に勤める水上は、我流でジャズピアノを練習している青年。密かにジャズピアニストになることを夢見ている。ある日、水上はチンピラにからまれているところを中年男に助けてもらう。この男、ケン早川というジャズピアニストだった。
彼に自分のピアノを聞かせたところ、「プロで充分に通用する」と太鼓判を押されたことから、ピアノ弾きになる決心をする水上。

なんかちょっと絵が荒れているけど、柳沢きみおってホントに中年近くなってからの男の悩みを描くのがうまいよな〜。仕事とか、恋愛とか結婚とか。生き方みたいなもの。

……っていうか、他に描く作家がいないんだよな。

・「女の好事艶(こうじえん)」 寿ねね

「女の子はこういう考えをしてる」といったことをエッセイ風に描くマンガ。今回は「ドラマと女」ということでドラマに影響される女の子たちについて描いている。
「食事、おフロ、の他に電話を避ける時間帯として『ドラマを見ているとき』がある」、ってのは素朴に「へー」と思ったりして。だって、「食事の時間の電話は失礼に当たらない」ってすごく昔の「エチケット入門」みたいのに書いてあったんだもんよ。

……という内容への言及はともかく、「女の子の感性とか実体験」をモトにした、男性誌に載っているマンガってもちろんそれだけではものすごく面白いものにならないのだが(そのわりに数が多いように感じるが……)、これはけっこうカッチリまとまってる。まあ数読まないと、常にどれくらいのレベル保っているのかはわからないんだけど。

・「梟(ふくろう)」 笠原倫

池袋を根城にする探偵(たぶん)の福郎を主人公にした話。まあ笠原倫なので、ハズレはないわけですよ。
(00.1001、滑川)

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