SFおしかけ女房その3

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一気に下まで行きたい

・「MONOほんモノロジィ」全3巻 恋緒みなと(1998、茜新社)
・「愛人[AI−REN]」(1)〜(2) 田中ユタカ(1999〜2000、白泉社)
・「ブギーキャットNAVI」(1) 矢也晶久(2000、集英社)
・「花右京メイド隊」(2) もりしげ(2000、秋田書店)
・「ラブやん」(読みきり) 田丸浩史(2000、アフタヌーンシーズン増刊4号、講談社)
・「コットンプレイ」(1) 矢野健太郎(2000、リイド社)
・「セルロイドナイト」全1巻 矢野健太郎(1986、1995、集英社)
・「魔女はHなお年頃」全1巻 中嶋瀬奈、有間一郎(1992、白泉社)
・「戦うメイドさん!」(4) 西野つぐみ(2000、ぶんか社)
・「まほろまてぃっく」(1)〜(2) 中山文十郎、ぢたま某(1999〜2000、ワニブックス)



・「MONOほんモノロジィ」全3巻 恋緒みなと(1998、茜新社)

MONOほんモノロジィ

1992年7月〜、「ペンギンクラブ」(辰巳出版)連載。
一人暮らしをしながら大学に通う長瀬悠介は、几帳面できれい好きで、まだ使えるモノがあると拾ってきてしまうクセがある。ある日、彼の拾ってきたラジカセの中から謎の美少女エミッタ・カレントが出現。彼女はエレメンタル・メディカルサービス営業部員だと言う。捨てられていたラジカセを助けたお礼に、悠介のもとに現れたのだ。
「TVでもCDでも何でも直す」と言うエミッタ。しかし、修理および異世界を行き来するためのシステムディスクを壊してしまい帰れなくなってしまう。電話で課長に連絡したところ、もろもろの理由で帰還可能になるのは二週間後。行くところのないエミッタは、二週間悠介と同居することになる。
その後、悠介を恋する小学生横川智佐や白人女性エクレア・シュークリームなどが現れ、いろいろ騒動が起こるのであった。

エミッタは無邪気でかわいく、ドジで泣き虫。……まあこのテのジャンルの典型的なキャラクターなんだがやっぱりカワイイです。モノから精霊を呼び出す、という能力があるがそれがアイディアとして強烈に打ち出されているわけでもなく、そもそも「エレメンタル・メディカルサービス」というのが未来にあるのか宇宙にあるのか異次元にあるのか、説明がナイ。いちおうエミッタの世間知らず的性格は、会社の会長の娘(お嬢様)であるらしいということで説明が付いているが、まあ細かい設定があるわけではない。

そのくせ設定が「若い男女が同居する」という方便に終わっていないのは、とてもキッチリしたコスチュームやメカ描写のため。また二週間というリミットは「なぜ悠介がエミッタに手を出さないか」の理由づけになっているし、さらに大きなワケが悠介にはある。
ただし、単行本を読むかぎりはこの「悠介がエミッタに告白しないわけ」に、エミッタ自身がからんでいるような伏線があるのだが説明がないし、最終回もなんだか途中で終わっているような印象を受ける。その辺はもう少し説明が欲しいと思った。
また恋愛話になると、登場人物が全員すぐ泣くところがちょっとハズい。

でも、大枠ではかわいらしいマンガ。
.(00.1012、滑川)



・「愛人[AI−REN]」(1)〜(2) 田中ユタカ(1999〜2000、白泉社)

愛人

ヤングアニマル連載。生まれて間もない頃に事故に遭い、身体の半分を喪失するが「他者」を移植され生き延びた少年・ヨシズミイクル。彼は自分を生かした「他者」によって、いつか死ぬ運命にあった。
イクルは市の福祉課に「愛人(AI−REN)」を申請する。これは「精神的援助用再生人造遺伝子人間」、終末期の患者の精神的な救済を目的とした擬似的配偶者、つくられた恋人だった。
一般的には「人格をケミカル・プログラムされたお人形さん」、「みじめななぐさめ」とも思われている存在「愛人(AI−REN)」だったが、イクルのもとにやってきた愛人・あいは可愛らしさと無邪気さ、生を肯定する態度を持っていた。彼女と暮らすことで生きる希望がわいてくるイクル。しかし自分の命も長くは持たないばかりか、「愛人」そのものも長くて10カ月しか持たない存在だった。かけがえのない存在を手に入れた瞬間、それを失う恐怖と戦うことになるイクル。

一方、イクルを取り巻く世界は大きな変貌を遂げつつあった。人間はとうの昔に性行為によって子供をつくることをやめてしまい、人類そのものの余命も200年と言われている。そして人類未曾有の大事件である「南半球災害」。死の恐怖に悩まされるイクルを生かしている人類もまた、死と直面しているのであった。

……本作を「SFおしかけ女房」に入れることに、異義がある人も大勢いると思います。これは「SFおしかけ女房ジャンル」の全作品に言えることですが、「○○もの」とカテゴライズすることは、作品をそのパターンからしか見ない危険を伴うし、また不毛な定義論争みたいなことを呼び起こすことにもなる(まあ「おしかけ女房モノ」というジャンルは私が勝手に言っているだけなのでそういうことはないと思いますが)。
何回も繰り返し書いているようにこのカテゴライズは遊びの部分が大きいことと、優れた作品はどれでも特定のジャンルから逸脱した部分を持っている(逆に言えばパターン的な部分を持っている)、ということでご容赦ください。インターネットによくあるコラム的なコンテンツをつくって紹介してもイイんだけど、やっぱりある観点で斬った方がレビューを読まれる確率も高くなるんじゃないかと思うし。

さて、本作は広い意味で「美少女マンガ」であり(ガンダムが「ロボットアニメ」であるように)、基本的にはイクルとあいの生活を描いている以上、とっかかりを「おしかけ女房モノ」として読むことは、まあ、ものすごく間違っていはいないとは思う、個人的には。
ヒロイン・あいはいわゆる美少女アンドロイドのリニューアルであると言えるし、無邪気な少女であることも「おしかけ女房モノ」の副次的な要素を満たしている(そもそもピュアでなければおしかけてなんか来ない)。その意味では80年代から続くある種のパターンを継承しているし、「美少女がひょんなことから兵器の力を身に着けてやっかいごとに巻き込まれる」という高橋しんの「最終兵器彼女」(→感想)とは、往年の「オタクっぽいマンガ」をリニューアルというか発展させた点で兄弟姉妹の関係にあると言えるかもしれない。

美少女マンガは当然ながら美少女を出して、主人公の男の子とからませなければいけないのだが、ここには何らかの理由があった方がいい。別になくても困らないのが少年誌・青年誌における美少女マンガとかラブコメのスゴイところだが、まあないよりあった方がいい。
その点、本作では主人公が死の恐怖から逃れるため、生の確かさを得るために美少女を得る、ということでしょっぱなからありあまるほどの理由を有している。というか、死、「限られた生」そのものが本作のテーマだと思うので、なんてことのない(それでいていとおしい)イクルとあいの共同生活(本来の少年ラブコメならば、「こういうものだ」というお約束を了解していなければ入っていけないような読んでてちょっと恥ずかしい状態)も、すべてが貴重なかけがえのない時間として読者に感じられてくる。

もっとも、作者は本来的に「セツナイ系ラブコメ」にものすごい訴求力を持ったヒトではあると思うのだが。「純愛(ロマンス)」(1999、雄出版)(→感想)などを読んでみると。

そして目が離せないのが、そうしたお膳立てが単なる「ラブラブな状態」を正当化するための方便で終わっていないところ。2巻あたりからイクルを取り巻く世界(滅び行く未来世界?)が少しずつ描かれ、彼の生活と前述の「南半球災害」とも物語がつながっていきそうに感じられる。「個人の死(生)」の問題と、人類規模の大きな問題とがどうつながっていくか、というところに非常に興味をひかれる。

ナイーブになればなるほど、社会問題や世界情勢と、個人の物語をつなげて描くことはむずかしくなった。具体的には学生運動がザセツしてからむずかしいむずかしいと言われ続けてきたと思うが、現在、決定的にむずかしくなっているように感じられる。そこら辺をかなり自覚的に、突き放して描いた作品で思い出されるのは富沢ひとしのエイリアン9(→感想)なんだけど、本作はもっとストレートに感情を吐露しつつ、それをコントロールして作品世界を構築できるような印象が今のところある。

これはなかなかワクワクすることだと思います。

・「愛人[AI−REN]」(3)〜(4) 田中ユタカ(2001、白泉社)(→感想)

.(00.0920、滑川)



・「ブギーキャットNAVI」(1) 矢也晶久(2000、集英社)

ブギーキャット

作者はネット検索で自分を調べてる、とのこと。う〜んウチのようなチッポケなサイトとはいえ、検索かければひっかかるワケで、いいかげんなことは書けんなぁと決意(?)を新たにする。

月刊少年ジャンプ連載。「タトゥーン★マスター」の作者が、少年誌に場を移して描く。

ケンカっぱやい高校1年生・小厨野ライカ(おずの・らいか)は、高校で再会した幼なじみ・小珠(こだま)ひびきに片思いしている。そのライカの元に何かの研究をしている父親から一匹のネコが送られてくる。コレこそが、不思議なイヤリングの力で美少女に変身する「ブギーキャット」の凪野式(なのしき)ナビなのだった。
彼女は「人間の、ヒトを好きになる気持ち」を理解すると本当の人間になれるという。そして「好きになる気持ち」を学ぶために、一人暮らしのライカと同居して高校生活を送ろうとする。周囲から誤解されたりナビに振り回されたりのライカの運命やいかに……? といった内容。

わたし的に面白くなるのは「第4話:雨の降る日のテンキの行方」からで、それまで単なる(?)引っかき回し役だったナビが何を考えているのか、とかライカの日常から逸脱した存在である自分をどう考えているのかとかが、少し明らかになるから。正体は依然としてナゾのままなんだけど、ナビとライカやひびきとの関係がハッキリするし、しんみりしたイイ話になっている。

連載のプロトタイプである読みきり「ブギーキャットなVi」も収録。こちらではナビの正体がネタバレしているが、これはこれでまとまっている作品。コレの設定が連載で活かされるのが楽しみ。
ナビは、本編より色っぽいのが特徴。
(00.0917、滑川)



・「花右京メイド隊」(2) もりしげ(2000、秋田書店)

花右京メイド隊2

月刊少年チャンピオン連載。大金持ち・花右京家の家督をすべて譲られた太郎は、当主としてでっかい屋敷でものすごく大勢のメイドに囲まれて暮らすことに……の第2巻。
なんか1巻から、「おしかけ女房モノ」に入れていいかどうかわからなかったんだけど、設定的にはますます関係なくなってる。だけれど、花右京家のライバル、慈悲王家からその当主の孫娘・リュウカ(タカビーお嬢様)が「おしかけメイド」になってきちゃったりと、まあこのテのマンガのお約束ははずしていない。

あとさー、「メカオタクでドジなめがねっ子メイド」というベタベタな設定の鈴木イクヨ「イクヨッチ」といつの間にか愛称が……)がいいよねえ。

さて、今回は太郎がひそかに恋するメイド、「決してでしゃばらず だけどいつも側にいてくれる 母さんのようにあたたかく そしてとってもカワイイ女の子」マリエルの正体が明らかになる。おお、これはちょっと面白いよ。ネタバレになるから書かないけど。「メイドマンガ」は突き詰めるとけっきょくこうなるしかないんだよなー。

カンケイないけど、日本のこと知らない外国人がメイドマンガばっかり読んでたら、ぜったいに日本にはこういうカッコしたメイドが当たり前のようにいる、と思っちゃうよね。そう考えると「メイド」は西欧の文化だが「メイドマンガ」は確実に日本文化なのだねぇ。

・「花右京メイド隊」(1)

(00.0831、滑川)



・「ラブやん」(読みきり) 田丸浩史(2000、アフタヌーンシーズン増刊4号、講談社)

ラブやん

どんな片思いでも成就させる愛の天使・ラブやんが、額のラブセンサーで導かれてやってきたのは、オタクで就職浪人のダメ人間・カズフサのところであった。
しかも、彼が片思いというのは小学生の女の子……。この絶対成就しないと思われる無謀な片思い、ラブやんに策はあるのか!?

ジャンルものはパロディがおいしい。コレは昔の人がよく言ってました(嘘)。しかし、何らかのメタな視線が入ると抜群に面白くなる、ということもあるにはあるのである。アフタヌーン増刊掲載のこの作品、「女神さまっ」を意識していることは明白だが、まあそのなんつうか、やっぱり面白いんですよねこういうの。

とどめは巻末のウソ予告。
「カズフサの愛が成就するまで同居をキメたラブやん。しかし2人の間に愛が芽生えるのに時間はかからなかった。すったもんだするうちラブ時空からラブやんの姉と妹が来訪! などというコトにはならない。」
……んでたぶん姉はタカビーおねえさまか勝ち気な女の子で、妹はロリ。キメ。
(00.0822、滑川)



・「コットンプレイ」(1) 矢野健太郎(2000、リイド社)

コットンプレイ

コミックボナンザ連載。片思いの男性を思い出しながらオナニーにふけっている最中、自室にトラックが飛び込んできて、それ以来幽体離脱状態(しかも記憶喪失)になってしまった水野琴美。彼女の姿(しかも全裸)が見えるのはリストラで無職になったばかりの松田武彦、彼はなりゆきで彼女を自室に住まわせることに……。

もともと本当のなりゆきだったので二人に恋愛感情があるはずもなく、松田は女の子をやたら邪険に扱うヤツ、琴美はそんな彼を批判的に見る、気が強い、でも自分の境遇にときどき不安に襲われる普通の女の子。琴美は「松田にしか見えない」、「ものを通り抜けてしまう」といった映画「ゴースト ニューヨークの幻」チックな設定がお話を転がしていくが、そこはただのお約束にとどまらない。
「デジカメにだけ映る」というのも面白いし(その秘密をオタクの下田辺だけが知っている)、いちばん秀逸なのは松田と琴美のセックス。琴美は正気を失うと何でも通り抜けてしまうので、肝心なところで松田の身体を通り抜けてしまったりするのだ。

また松田・琴美以外のキャラクターも立っていて、何でも松田の言うことを聞いてしまう「受」的性格の(カリカチュアライズされているけどコレはコレでかわいい……)や、琴美の秘密を探っては彼女の気持ちを自分に向けさせようとオタク的知恵(陰謀?)をめぐらす下田辺くんなどが脇を固める。

「SFおしかけ女房モノ」というカテゴライズそのものに、おしかけてくる女の子が自分の役割(妻や恋人)を押しつけてくるというロールプレイ的要素がある。しかし、本作は松田と琴美の人間関係は最初ゼロの状態からはじまっているために、「日常生活にSF・ファンタジー的属性を持つ女の子が入り込んでくる」という条件は備えていても、関係そのものは「出会い方が唐突」というだけで普通の男女だ。だから正確には「おしかけ女房モノ」には入らないのだが、「便宜上」というコトでご容赦ください。

何にしろ、あらかじめ役割が規定されていないだけに二人がどのように結ばれていくかの過程がとてもスリリングである。「変わった設定を最初につくり、後は転がしていく」本当に面白いコメディは、とくに青年・少年ラブコメには意外なほど少ない。そこには「惚れたハレたそのものが恥ずかしいことである」という前提の、共感を呼ぶ「ニヤニヤ」的な笑いはあるが、真に「ギャグ」的な笑いは良くも悪くもほとんどない。そんな中、「ラブ」を通して「コメディ」を描こうとしている希有な作品(他にもあったら教えてください)。

・「コットンプレイ」(2)(完結) 矢野健太郎(2001、リイド社)感想

(00.0814、0817、滑川)



・「セルロイドナイト」全1巻 矢野健太郎(1986、1995、集英社)

セルロイド

たぶんビジネスジャンプ連載。波風を立てずに生きてきた、ことなかれ主義のサラリーマン新田朗。彼はある朝、古ぼけたセルロイドの人形を拾う。家に持ち帰ってきれいに直してやったその人形・マリイは、夜な夜な12、3歳にしか見えない美少女に変身し、性的誘惑も含めて恩返しをする、と言い張ってきかない……。

第1話だけでほぼ完璧にまとまった「SFおしかけ女房もの」。新田を「ご主人様」と呼び献身的にふるまうマリイや彼女を人間だと思い込み不思議に思う新田の心情、人形を乱暴に扱う村雨に反感を持つ(でも何も言えない)シーンだけで新田が心優しい/臆病であることを表すところ、マリイが過去のご主人様との関係を思い出すファンタジックなシーン、全編を通して新田がマリイとの出会いから積極派人間に生まれ変わる流れなど、物語は土台となるパターンが問題なのではなく、読者がパターンと悟りつつも読ませる技術が大切、ということを再認識させる一編。

第2話からはマリイの旧敵・ラミイが登場し、オカルトアクションの要素が濃厚なハードな展開となる。ココでは「恩返しモノとしてパターンをはずしている」という自己言及が作品内でなされている。パターンに敏感な作者のことなので、もしかしたら作品発表当時には「おしかけ女房モノ」的概念は確立していなかったのかも、とも思わせる。

お話はハードアクション路線になるが、人間と人形というギャップのある恋愛は作品全体に貫かれ、予測可能な場合の多い「おしかけ女房モノ」の中でももっとも意外で、そして泣ける結末になっていると思うがどうだろうか。

現在のようにフィギュアやドール趣味が一般化していなかった時代の、気の優しい青年と行き場のない少女人形との恋は、現在読む方がグッと来るものがあるかもしれない。

なお、滑川のもうひとつのペンネーム「新田五郎」が「新田朗」に似ているのは偶然。

「コットンプレイ」(1) 矢野健太郎(2000、リイド社)感想

「シーラント」全1巻 矢野健太郎(2003、リイド社)感想

矢野健太郎感想ページ

(00.0814、0817、滑川)



・「魔女はHなお年頃」全1巻 中嶋瀬奈、有間一郎(1992、白泉社)

魔女

月刊アニマルハウス連載。「魔女狩りでは魔女と疑われた者の陰部を検査した」という話を読んでオナニーにふける(……)黒須三太(くろす・さんた)の前に、突然セクシーな魔女デルタ・B・ルーデルが出現する。三太の行為が偶然「降魔の儀式」になっていたからだ。

魔女は呼び出した者の願いをかなえることになっており、デルタは三太の「美女とヤりたい(要するにデルタとヤりたい)」という願いをかなえてやろうとするが、一度魔女とまぐわうと他の女と二度とできなくなる、と知った三太はソレを拒否する。
三太の願いをかなえてやらないと魔界に帰れないデルタは三太の部屋に住みつき、三太の幼なじみで気の強い吉原圭子、デルタと小さい頃からライバルだった魔女ランドゥを巻き込んでのドタバタが始まる。

キレイなまでにお約束な作品だが、最大の特徴? はヒロインのデルタが「魔法の力を大地の力から取り込み子宮に集めるために、常に下半身ハダカ」ってことでしょうか。もちろんライバルのランドゥもそうです(なんか前掛けみたいのを着けてはいるが)。

後は三太が好きだが素直になれない圭子とのラブコメや、魔女スタイルから人間の服に着替えたデルタと三太がデート(「うる星」でもあったね)する話などが続き、ラストでデルタは人々から自分に関するすべての記憶を消して魔界へと帰っていく。

年代的には決して古い作品とは言えないのだが(「女神さまっ」連載開始の89年より後の作品だし)、ちょい高橋留美子チックな絵柄や後にこのテのマンガで定番となるキャラ造形(あからさまにロリロリな子やいわゆるめがねっ娘など)が出てこないことから「おしかけ女房もの」としてはオールドスクールに属すると言える。圭子なんてセイラさんみたいな髪型をしているし。

誤解をおそれずに言えばここにあるのはノスタルジーだ。当時からそういったニュアンスをまといつかせていたかは不明だが、わずか8年前ながら、ここにあるのは80年代に確実にあったある種の「気分」である。それを味わう作品。青春の幻影。
(00.0702、滑川)



・「戦うメイドさん!」(4) 西野つぐみ(2000、ぶんか社)

「コミックまぁるまん」連載。モテないフリーライター・田辺晴親(ハルチカ)は、酔って冗談で「メイドロボット=メイドロイド」のモニターに応募。やってきた2人のメイドロボ・葉月如月に、ハルチカの幼なじみ・有賀時子がからんで展開するラブコメ。

以前、3巻の感想を長々と描いてしまって、あとから考えるとなんだか恥ずかしい思いがしたもんだが、今回も読んでいてウルウルきちまう話が多くて、読後つい熱くなってしまうんですよね。
そんな要素が本作にはある。

今回は、3巻にも出てきた農家で働く男性召使いロボット・睦月のモニター期間が終わり、農家の老夫婦の元を離れるので別れの前に行った思い出づくりの旅行や、「メイドロイドの小型軽量化」をテーマにつくられた「iメイドシリーズ」(iMACのパロディ)の新型ロリっ子メイド・神無(カンナ)、「恐い」という感情をインプットされてしまった葉月の心の葛藤などが描かれてウルウルする。

神無(カンナ)はレギュラーになったので少し説明すると、「マニュアルどおりにしか動けない」というまあ定番的なアンドロイドなんだけど、その融通のきかない行動でハルチカとぎくしゃくする。
で、いろいろあってやっと心が通じ合う。そしてカンナがはじめて笑うシーンがある。

「この時 私の電脳からは 『笑え』の命令は 出ていなかったのです
ものすごい スピードで全身の 回路がつながって……
気がついたら 笑っていたのです
体の中だけ 重力が変わってしまい
フワリと浮いた 感じがしたのです……」

……っていうのがさあ、これだけだとわかんないかもしれないけど、なんか泣けるんですよ。

「恐いという感情を植え付けられた」葉月は、自己防衛本能が第一になってしまいハルチカを守ることができなくなる。でもその葛藤を乗り越えて危機に立ち向かう。
……これなんかも感動しない? しないかなあ……。

というわけで、アシモフのロボットものとかが好きな人にはオススメだと思うんだが。あ、それと、「まほろまてぃっく」も本作も、なぜかバビル二世の「3つのしもべ」のパロディキャラが出てきます。偶然なのか、何なのか。

1〜2巻については、ここを参照してください。
(00.0701、滑川)



・「まほろまてぃっく」(1)〜(2) 中山文十郎、ぢたま某(1999〜2000、ワニブックス)A5

コミックガム連載。人知れず外宇宙からの使者と戦ってきた組織・ヴェスパーで最強と言われた美少女戦闘用アンドロイド・まほろ。戦い続けた彼女の命は残り少ないが、武装を解除すればあと398日間は生きられる。その残りの期間、好きなように生きていいと組織から言われたまほろは、平和な世界でもだれかの役に立ちたいと、両親に先立たれた少年・美里優(みさと・すぐる)の元でメイドとして働くことになる。

若くてかわいいまほろにドキドキの優は、一見ひ弱そうだが強い正義感を持っている。それを知ってか知らずか女の子からもけっこうもて、幼なじみのボーイッシュな佐倉深雪、黒髪ロングヘアの日本的美少女・等々力凛(とどろき・りん)からヒソカに思いを寄せられ、「カワイイ男の子食っちゃいたい妄想」に取りつかれている巨乳女教師・式条沙織から常に誘惑の危機にさらされている。
他にロリロリ美少女の大江千鶴子がいるが、2巻までの段階ではとりたてて優のことは何とも思っていないらしい。

優は、まほろがアンドロイドだということは知っているが、その寿命のことは知らない。そしてさらなるまほろとヴェスパーに関する秘密も……。

そんな中、異星人との戦闘アクションあり、ラブラブありの忙しい青春を送る優であった。

またまたメイドもの。時代でさあ。
こういうのは気持ちを中学1年生くらいに切り替えて読むのが吉。母親の愛情に飢えている優のまほろに対する代理母的解釈、そして恋人願望、さらに少年にありがちな潔癖さ、それらがないまぜになった優の悶々を感じ取りながら読む。

ちょっとHなシーン、ラブコメ的展開、学園モノノリ、メカ戦闘シーンというバラエティに富んだ毎回の趣向を楽しむべし。また「別れの時間」が決められているところがモラトリアムの期限を予感させてせつないっス。

なお作画者は「つるぺた好き」ということなので、まほろはつるぺた。
「ヴェスパー」の男性スタッフは全員つるぺた好きだったため、そのように設計されたらしい。つるぺた好きの殿方は、ぜひお読みなされ。
(00.0701、滑川)

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