つれづれなるマンガ感想文4月後半

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一気に下まで行きたい



・「コレクション 〜美肉の蒐集〜」 海明寺 裕(2001、桜桃書房)
・「月刊マガジンZ」6月号(2001、講談社)
・「ゲノム」(3) 古賀亮一(2001、ビブロス)
・「健康師ダン」全2巻 高橋のぼる(1996、講談社)
・「BONDAGE WARS」 牧村みき(1988、久保書店)
・「ママと遊ぼうBONDAGE」 牧村みき(1989、久保書店)

・「美少女まんがベスト集成」(1982、徳間書店)
・「天翔けるセールスマン」 沖由佳雄(1984、徳間書店)
・「サマースキャンダル」 かがみ・あきら(1985、徳間書店)
・「ワープin」(1985、徳間書店)
・「ハイパー・ゾーンII」(1985、徳間書店)
・「ぷるるんゼミナール」(1) ながしま超助(2001、双葉社)
・「劇画バカたち!!」全2巻 松本正彦(1979、2001、劇画史研究会)
・「俺の名はバーサス!」 小野寺浩二(2001、雄出版)
・「アナザー・レッスン」 毛野楊太郎(2001、コスミックインターナショナル)
・「アイラ」Vol.7(2001、三和出版)
・「YOUNG キュン!」5月号(2001、コスミックインターナショナル)





・「コレクション 〜美肉の蒐集〜」 海明寺 裕(2001、桜桃書房)

成年コミック。「夢雅」に連載された連作短編シリーズ「調度品」3話の他、アンソロジー本に収録された作品を集めた短編集。

「調度品」は、「家具人間(ファニチャノイド)」の輸入販売を行っている骨董店を舞台にした作品。「家具人間」ってのは、要するにあれですわ、ハダカの女の人を椅子やテーブル代わりにするというモノです。はい。「原産地」は「スレイヴァリー諸島」だという。しかしこの「家具」たちは食事したり眠ったりするのかとかずっと同じ格好で疲れないのかとかそういう説明はいっさいナシ。あくまで「人間のような家具のような人間のような……」なのだ。
通常のHマンガではむしろ詳細に描かれる部分をスッパリ切り落としてしまうのはこの作者の特徴でもあり、「犬調教モノ」とかもそうなのだが「家具」というのは犬以上に静的で人間から遠いモノであるだけに、この手法が合っているかもしれない。

ところで「人間テーブル」といったたぐいの家具はサドの小説に出て来るって、シブサワタツヒコの本に書いてあった。伝統ある(?)モノらしい。マンガでは「女体盛り」とともに、ごくたまに物語の背景としては登場してくる(たとえば「リーマンギャンブラーマウス」のように)のだが、実際にストーリーのあるマンガになったのってかなり珍しいのじゃないだろうか。

その他、Hゲームのアンソロジーとか性犯罪実録モノ(だったかな)のアンソロジーとかからとられている。とくに後者の「送り狼」はホンバンが出てきたのでびっくり(いつも滅多に出ることはない)……って書こうと思ったら、すでに「あしすと日記」で小杉さんに書かれてた(^^;)。
(01.0428、滑川)



・「月刊マガジンZ」6月号(2001、講談社)

・「仮面ライダー SPIRITS」 石ノ森章太郎、村枝賢一

村枝賢一による、「仮面ライダー」のコミカライズ作品。毎月順繰りに個々の仮面ライダーが出てきて主役をはる連作。今回の主役はライダーマン、サブタイトルは「右腕の記憶」

プルトン爆弾を積んだミサイルを安全な場所に誘導するため、それに乗り込んだまま消息を絶ったライダーマン、結城丈二。彼は一命はとりとめたものの、記憶を失ってポリネシアの小島にいた……。

ああ〜ライダーマンかっこいい〜。ライダーマンって、ライダーシリーズ中なんかおミソっていうか、そんな感じだったんで活躍を見られてうれしいです。私も子供心に、なんで彼が出てこなきゃいけないのかわかんなくておミソ的な印象も持ってたけど、熱心に見ていたわけでもなかった「V3」でライダーマンがミサイルで散った回は、なぜかちゃんと見ているんですよね。滝和也もそうだけど、超人であるライダーを補佐する立場というのはシブいですよね。立花のおやっさんもそうだし。

本作では変身後はできるだけ実写に忠実に描くポリシーのため、「腕の付け替えシーンがとくにないままいつの間にか変わっている」というテレビでの描写を律儀に描いたのはちょっと苦しかったかも。でもカッコいいからなぁ。「右肘のカートリッジを交換してアームを変える」というのは本作独自の設定なのだろうか?

・「スーパーロボット大戦α THE STORY 竜の滅ぶ日」 バンプレスト、長谷川裕一

確か先々月から始まった短期集中連載。恐竜帝国の攻撃で危機におちいる連邦軍。しかもマジンガーZが乗っ取られてしまった。マジンガーVSゲッターロボの戦いが前回まで。今回はゲッター線で巨大化したゴールとゲッターとの死闘。
前からの展開としては、ロボット美少女の三姉妹が光子力研究所を襲う、永井豪版マジンガーでも出てくるエピソードを下敷きにしていて、熱心なスパロボファンではない私にもわかりやすく、かつ迫力ある展開になっている。ほんとカッコいいです。

「AMONデビルマン黙示録」永井豪、衣谷遊は途中から読んでるのでお話は見えないんだけど迫力ある展開が続いている。「KING OF BANDIT JING」熊倉裕一は恋愛をすると「恋愛税」を取り立てられる町ムーラン・ルージュの話。「濃爆おたく先生」徳光康之は最近「サクラ大戦3」ネタが多い。「機神」永井豪は、アンドロイドと人間と巨大ロボが入り乱れての戦いになってむやみに迫力があってなんだか面白い。今回は「カスミ伝」唐沢なをきが載ってないな。
(01.0427、滑川)



・「ゲノム」(3) 古賀亮一(2001、ビブロス)

カラフルBee連載。異世界からの留学生・エルフのエルエルとロボットのパクマン、生物研究所の所長コバヤシが毎回昆虫の生態を解説する、という基本設定により、毎回エルエルにテーマとなった昆虫のコスプレをさせるギャグマンガの第3弾。
自分で書いた2巻のレビューを読み返すと(しかし自分で書いといてくだらない文章だったスミマセン)、2巻まではエッチっぽいシチュエーションづくりも本作の重要ポイントだったようだが、パターン化でこちらが慣れたのか新キャラのダクエル(エルエルの幼なじみ)投入で物語の展開が多少変わったのか、おもしろギャグマンガ的要素がずっと強まっているように感じた。

同時収録として正義のロリっ子魔法少女を主人公にした「チョコんとチロルちゃん!」が収録されている。
ところで同作での

「う〜 寒っ寒っ!! 早く家に帰ってコタツに入りたいよ」
「そうですねぇ」
「こんなに寒い日が続くんなら半袖の服はもういらないなぁ…… 邪魔だし捨てるか……」
「……半年後にきっと後悔しますよ」

っていう会話に大笑いしてしまった。こういう当たり前のことをボケ倒すのがホント、面白い。

また、十数人のマンガ家に1コマずつ描いてもらうという「合作ゲノム」も同時収録。
(01.0427、滑川)



・「健康師ダン」全2巻 高橋のぼる(1996、講談社)

団流星は歓楽街に診療所をかまえる天才的整体師。おしかけ助手となった安西貴美佳(通称キー坊)はあまり役に立っていないけど、さまざまな人々の健康に関する悩みを壮絶な指圧(……でいいのかな?)で治療していく。

あくまでもクソマジメで二枚目キャラクターの団流星と、ちょっとドジな普通の女の子であるキー坊のコンビは現在の「リーマンギャンブラーマウス」マウスインドまぐろ子のコンビを思い出させる。また1話完結であることや、大げさな必殺技的ネーミングの治療なども「マウス」的な感じで楽しめる。ただ、最終回が少し唐突。
(01.0425、滑川)



・「BONDAGE WARS」 牧村みき(1988、久保書店)
・「ママと遊ぼうBONDAGE」 牧村みき(1989、久保書店)

成年コミック。ラバーフェチ専門マンガ。キャラクターはどっかで見たアニメキャラクターかひと昔前のレディースコミックみたいのばかり、タイトルは意味不明、内容も意味不明。ネームもヘン。そして執拗に描き込まれた壁や板の木目。こうして書くとけなしているみたいだけど、そうではなくてある意味すごい。

もともとラバースーツで女の人(ときどき男も)を拘束するだけ、というパターンがお話にしにくいのもわかるが、それにしても読んでいてとまどいを隠せないほどのお話のとっちらかりぶりである。単行本化の際に書き足されたと思われるおまけページもすごい。ホントのらくがきなのだ。美少女のひとつでも描けばウケもいいだろうに、なんかオバケみたいのが1ページにわたっていくつも描き散らかしてある。

困惑の一作として単行本「BONDAGE WARS」「GAGほど素敵なギャグはない」をあげてみる。まず表紙には「BONDAGE PUNK」というよくわからない歌の歌詞(「筋肉少女帯風」と書いてあるのはわからなくはないが)、内容はヘアーサロンの店長としてバリバリ働く佐知子がつかまってラバースーツで拘束されてHなコトされてしまうという話。しかしこの「佐知子」と同じくらい均等に「葉月優」という剣道少女にも描写がさかれ、15ページのマンガを読み終えるまでどっちが主役かわからない。しかもラストは実に中途半端なハッピーエンド。ここまで来るとある意味スゴイと思うのである。

パロディ的要素が強いとは言え、その対象作品がバブル期というかトレンディドラマっぽい話が多いせいか、それっぽい絵柄や内容のものも多い。それにしてもラバーより、偏執的に描かれた木目の方が気になるなぁこれ。
(01.0425、滑川)



・「美少女まんがベスト集成」(1982、徳間書店)

当サイトの掲示板で交わさしていただいたやりとりや、まあ私自身の現実逃避の意味もあって突如「80年代にひたりたい!」と思ってしまった。で、発作的に「いかにも80年代っぽい」作品を読もうと思ったら、この徳間のアンソロジーシリーズに手が伸びた。
ここで「80年代っぽい」と言うのは、70年代にはなく、90年代には定型化しているものの萌芽のようなものだと私は考えていて、そう考えていくとなかなか広いですが、とりあえずオタク物件に絞るとマンガ方面でこのシリーズってのはずせないと思う。

Hマンガではない「単行本形式のアンソロジー」ってのが当時流通・販売的にどういう意味があったのかはよく知らないんだけど、現在でも古書店で処分されず残っているっていうのは後世に当時の雰囲気を伝えるものとしてなかなか意味があると思う(まああと5年もしたら古書店からも完全に消えてしまう可能性はあるが)。
80年代の「オタク系マンガ」ってことに絞っても、この他に東京三世社や奇想天外社や新書館の雑誌、増刊少年サンデーや少年ジャンプといったわりとタク系を積極的に取り入れたメジャー誌、また少女マンガや少年ラブコメとのリンクってことについても考えなければいけない。
さらに、当時のコミケや同人誌(文字どおりの同人。現在の漫研の会誌のようなもの)などのアマチュア発表形体についても思いをはせなければならないんだけど、とりあえず、ってコトで。簡単にいえば私の単なるヨタ話です。

で、本作なんだけど、コレが今読んでもなかなかいいです。執筆者は細野不二彦、高橋葉介、吾妻ひでお、和田慎二、早坂未紀、谷口敬、火野妖子、さえぐさじゅん、なにわ・あい、久掛彦見、このま和歩、かがみ・あきら、あびゅうきょ、術田久美。

やっぱり濃厚に「SF」と「アニメ」と少女マンガの影響が見られる。まあ今でも少年マンガ的絵柄と劇画と少女マンガ的絵柄が雑誌内で同居することは珍しくないですが、今読むからかもしれないけど一見まったく関係ないと思われていたモノが、時代の要請で同じところにおさまるようになっていっているインパクトを感じる。細野不二彦とさえぐさじゅんとあびゅうきょが同居してるってことに感慨を覚えたりして。現在で同じことが起こってもなんら不思議はないんですが。

作品もツブが揃っているが、ほとんどが女の子が主人公でしかも読者対象が男(もちろん女の子も読んでいたでしょうが)だったということに考えさせられるものがある。この単行本ではスペースオペラである細野不二彦や早坂未紀を除いては物語自体がどれもとっても少女マンガチック。今読むと、なんで少女の心情を描いた作品が男の子向けにこんなにも供給されていたのかとも思うが。そうしたものの過剰さをいっさい抜いてある意味において洗練されきったのが現在の「ラブひな」ってことでいいのだろうか?

和田慎二が作中で「おれはロリコンじゃない!」と叫んでいたり、巻末の執筆者紹介のところで「ロリコンブームも一段落した」と書かれているところが興味深い。82年の段階で一段落してたんだ。たぶん後にもりしげ(コドモ陵辱モノの方ね)やなんかが登場するとは夢にも思われない時代だろう。美少女の扱いにある種のフォーマットがあった頃ですよね。
(01.0422、滑川)



・「天翔けるセールスマン」 沖由佳雄(1984、徳間書店)

プチ・アップルパイやアニメックに掲載されたマンガを集めた短編集。表題はSFチックな連作短編。フェアリーのようなかわいらしい宇宙人・チャフが、地球にやってきてはいろいろなものを売りつけようとする。ところがお客さんも変わり者ばかりで……という話。

作者は吾妻ひでおの元アシスタントで、ギャグにその影響をけっこう受けている人ではないかと思う。
この作品集では「サンプル」っていう読みきりが個人的には面白い。ある日突然、少女の頭の上に謎の小さな金属球が浮かんだまま離れなくなる。……という出だしだが、むしろお話は「それによっては何も起こらない」方向へ進んでいく、という 点では同時代の美少女マンガ「麻衣子MIX」と酷似していると思う。「SF的に異常なことが起こっても登場人物が動じない」っていうギャグが、吾妻ひでおも含めて当時流行っていたような気がする。
私のデータが少ないので思いきって見切りで言ってしまうと、80年代ってのは70年代と90年代にはさまれてポッカリと「もう何も大事は起こらない」っていう安心と落胆のもとにあった時代なんじゃないかと思う。あるいはそういうポーズをみんなとっていた頃。だから同時代的にオウムが醸成されてったってことはまたなかなかモンダイだとは思うんですけどね。本作と直接の関係はないんですが、そんなことを考えました。

出てくる女の子は足がサリーちゃん足でかわいくて、この頃独特のデフィルメ具合だと思います。作者はいつかのコミックレヴォリューションで作品を出しているのを見ました。
(01.0422、滑川)



・「サマースキャンダル」 かがみ・あきら(1985、徳間書店)

この当時のオタク系のマンガ家で、もっとも強く少女マンガっぽさを打ち出していた一人じゃないかと思う。この作品集では表題の「サマースキャンダル」が80年代的かなあ。登場人物が毎回SFチックな騒動に巻き込まれるという連作短編ですが。なんかこう、取り立てて強く訴えかけるものがあるわけでもない、描きたいもの(メカや美少女など)を描きたいがためにお話が進んでいくような感じで。それはそれで嫌いじゃないんですが。こうした展開に強い「泣き」の要素が入ってくると、永野のりこになるのかもしれない。

収録作の「トライアングルラブ・ソング」はプチ・アップルパイに掲載された連作短編。バンド活動に精を出す少年少女の恋愛模様を描いた作品で、これはけっこう好きだな。ちょっと主人公がモテすぎのような気もするけど。
こういう、物語の背景にバンドが登場する軟派な話っていうのもけっこうマンガにはあって、まつもと泉もバンドものを読みきりで描いてて実際やっていたらしいし。こういうのってものすごくコアに、実際にバンドをやっている人たちからは批判されちゃうわけじゃないですか。江口寿史の「GO AHEAD!」はまともだった気がするけど。
だけれど、まぁ本当に単なる背景で登場する場合はともかく、作者があきらかにやってたっぽい作品の場合私は考えさせられるところがあるんですよね。この頃(70年代後半から80年代初頭)ってどういう人がバンドやってたんですかね? たとえば今少年キャプテンが健在でも、こういうタイプのバンドものって載らないと思うんですよね。その辺の当時との意識の違いというか。

実はまとめてかがみ・あきらって読んだのがはじめてなんですけど、SFチックな短編よりはこういう作品の方に可能性があったのかもしれない、とか考えちゃって。星里もちるとか、ラブコメをやってた頃の克・亜紀的な展開ができる人だったんではないかと。
(01.0422、滑川)



・「ワープin」(1985、徳間書店)

「プチ・アップルパイ」などと同様の、B6判単行本のアンソロジー。これはSFマンガがテーマですね。けっこう面白いです。
ただ「SFマンガ」ってのはいつの時代にも常に論争の的というか、「SFマンガとは何か?」って話になっちゃうわけで、本作もSFに疎い私にはレビュー書くのがけっこう辛いです。

アニメやSFX映画の影響が濃厚な明石のぼる(チャンピオンで「未来警察ウラシマン」を乾はるかとは別に描いていた人)の、宇宙空間でのメカ戦がある「フェダーイン」も楽しいし、原案/南里英伸、作画/末弥純の「ユニット」は現在から見ると設定の正しさは浅学にしてわかりませんが「孤独な宇宙船での作業」をテーマにしていてもっともSF的な作品といえるかも。とてもシブくていいです。
宇宙からやってくる巨大宇宙生命群を、核ミサイルを積んだスペースシャトルで迎撃する「最終防衛戦」相原和典は、絵柄やメカデザインなどに時代を感じるものの、カッコいい。オチもきいてます。「スペースシャトルで迎撃」っていうのは、私があんまり好きじゃないSF小説「降伏の儀式」が翻訳されたより早い。まあ以前からあるアイディアなのかもしれませんが。
「トラブル・トライアングル」は田中芳樹原作で絵はかもしたゆきひさ(たぶん現在のこのどんと)。超能力者の女の子が秘密プロジェクトを探ろうとしてつかまっちゃうんだけど、いつ陵辱して改造されるのかと思ってしまった……。そんなわきゃないんだけど。でも作者は現在、ほぼ似たようなシチュエーションでそういう作品を描いているので……。絵柄も基本的には現在とほとんど変わらないし。

その他、本当にメカやSFっぽい設定だけを出すためだけに描かれたっぽい作品も載っている。個人的にはここらへんが当時を語るポイントのひとつかなと思っているんですけど。楽しいことを追体験したいというのが創作やそれを享受する者の楽しみでもあるんで。
(01.0422、滑川)



・「ハイパー・ゾーンII」(1985、徳間書店)

「プチ・アップルパイ」などと同様の、B6判単行本のアンソロジー。「視覚世代の特撮まんが全集」。くくりがよくわからないんだけど、特撮へのオマージュが大きなテーマということでいいのかな。怪獣もの、宇宙刑事ものなどのフォーマットがきっちりしたものを題材にしているということで、よけい当時の雰囲気を表しているかもしれない。
本作の中では、ゆうきまさみと計奈恵と永野のりこと横山えいじが面白い。だれもが超時代的なマンガを描ける人だし、また超時代的な作品だと思う(他の人がそうでないというわけではないが、本作においては)。

実は「ハイパーゾーン」は読むのがはじめてなんだよね。なんでかというと、当時特撮ものにほとんど興味がなかったんで。あとがきに手書きの作者コメントが載っているんだけど、ホントに同人誌みたい。ここまで同人ライクな商業誌はもうできんでしょうなあ。しかしそれだけに、もう少し読んでみたいシリーズです。
(01.0422、滑川)



・「ぷるるんゼミナール」(1) ながしま超助(2001、双葉社)

週刊漫画アクション連載。「爆射!! 弓道MEN」という、非常にノーテンキなエロコメの作者の作品。成年マークは付いてないけど内容は成年コミック。

さる高名な哲学者の娘である深瀬菜々美は、華ノ水女子大に入学、フェミニズム論の世界的権威・田嶋陽美教授のゼミに入った。「自立した女になりたい」というのが理由だったが、異常なまでに敏感な巨乳の持ち主でセックスが大好きな菜々美は、ついついいろんな男とヤりまくってしまうのであった。

山本よし文の「オッパイファンド」とともに、漫画アクションリニューアル後のノーテンキエロコメの一翼を担ってきた本作。読んではあきれ、読んではあきれしてきたがなんとなくやめられないタイプのマンガなのだが、まとめて読んで今更ながらその理由がわかった。ヒロインの深瀬菜々美が、極度の淫乱なのにそれをまったく自覚していないところが面白いんではないか。

菜々美はちょっとでもオッパイを触られるとセックスしたくてたまらなくなるのだが、なんか自分のせいだとかぜんぜん思っていないらしい。「オッパイが大きすぎてゴメンなさい」っていうセリフがよく出て来るんだけど、感度のイイオッパイがそうさせるのであって自分のせいじゃないというか、いちおう敏感すぎることに悩んで田嶋ゼミに入ってはいるんだけど、どこか悩みが核心に近づいていない感じが面白い。さらに性道徳に反しているという点はまったく問題にしていないところもスゴイ。菜々美にとっては「ヤりたい気持ち」が制御不能であることがあくまでも大問題なのであって、ゆきずりの男とヤろうがチカンに車内挿入されようが、その辺りは別に問題じゃないのである(「チカンキング」と「鬼畜ボーイズ」の戦いに巻き込まれる第4話「これがチカン?」はまったくひどい。ここでいう「ひどい」はホメ言葉)。

この辺は、イイ女ヤりまくっているのに弓道がうまくないからという理由だけで悩み続けている「弓道MEN」の主人公に近いですね。
(01.0422、滑川)



・「劇画バカたち!!」全2巻 松本正彦(1979、2001、劇画史研究会)

79年のビッグコミック増刊に2回にわたって掲載された作品の復刊。中野の「タコシェ」で購入。昭和三十年代、貸本劇画に情熱をささげる若者たちを描いた作者の自伝的作品。……といっても主人公っぽく一番目立っているのは若かりし頃のさいとうたかを
貸本の出版社「日の丸文庫」で、今までにない新しい、笑いがなくストーリーで読ませるマンガを「劇画」として世に広めることを夢見るさいとうたかをたち。しかしマンガを悪書と見る世間の冷たい目や、月刊誌体裁の読みきり集の貸本「影」がなかなか売れなかったりと数々の苦難が迫る。
個人的には簡単に手塚治虫についてふれた場合、ほとんど名前しか出てこない新宝島の原作者・酒井七馬が登場していたり、日の丸文庫倒産の直接の原因が、横山泰三や岡部冬彦、加藤芳郎の作品をまとめた大人向けの新書版マンガが売れなかったことだというのが興味深かった。

また、1、2巻双方の巻末に作者が貸本時代に描いたスリラーものの短編が載っているが、いちおう簡単だがどちらもトリックがあった。推理方面でこのテの研究をしている人はいるんだろうか。いたら面白いんですが。
(01.0421、滑川)



・「俺の名はバーサス!」 小野寺浩二(2001、雄出版)

A5判。自称正義の味方・バーサス、本名・戦場佐助(いくさば・さすけ)。ポエム同好会でやたらとポエムを詠む美少女・春野うららとともに(?)学園でマイナー同好会連合と対決する。その他にも読みきりを何本か収録。

次々と出てくる妙な同好会の妙な技とか、事態が緊迫しているときに急にポエムを詠みだすうららとか、メリハリがきいてて楽しいギャグマンガ。テイスト的には現在の「妄想戦士ヤマモト」とほとんど変わらない。

だけど、この作者って「ロリータ番長」を読んだときにも思ったんだけど、「あるあるネタ」で攻めなければいけないときに途中からただのムチャクチャになっちゃったり、突然あまり面白くないベタな話になっちゃったりすることがあるのは何なんだろう……。
この単行本で言えば読みきり「エロゲーマスター ジョウ」は「男らしくエロゲーをする」という最初の設定は面白いのに、途中からすぐムチャクチャになってしまっていた。まあ、最近はそんなこともないみたいだけど。
(01.0420、滑川)



・「アナザー・レッスン」 毛野楊太郎(2001、コスミックインターナショナル)

アナザー・レッスン

「YOUNGキュン!」連載。A5判。成年コミック。「楽しい課外授業」などの、武内久美先生をヒロインとする「課外授業シリーズ」の番外編。

男子生徒たちの手に堕ちマゾ奴隷として調教されてしまった武内先生を救おうとして、逆に彼らの罠にかかってしまった女生徒・池原みづき。彼女はいろいろあって女の子を捕まえては調教し、客をとらせる組織に監禁されていた。彼女を調教する担当となったのは、この世界では「教授」と呼ばれる、久美先生を真性のマゾ奴隷だと勘違いし絶望した久美の元恋人の男だった。

「人間は極限状態に追い込まれたときにどのような態度をとるのか? どのように生きればよいのか?」は、どういうわけか平和な現在の日本でもマンガでよく取り上げられるテーマである。タイトルを忘れたけど「カイジ」を描いている人が少年マガジンでやっていたやつとか、読んでないけど「バトルロワイヤル」とか。
で、ほとんどがそんな中でも変わらぬ不屈の精神や美しい友情・愛情やなんかを描いている(のではないかと思う)が、では本当に突き詰めるとそういうのってどうなの? ということになる。

突き詰めれば何の根拠もない。

何の根拠もないのだ。伝統とか精神文化みたいなものが強い支えになってくれることは考えられるけれど、それだって「有効なツール」であるにすぎず、サイコロを10回ふったら同じ目が出たから11回目をふっても同じ目が出るだろう、という憶測を補強するモノにすぎない。「極限状況」の負荷は無限大に増殖することがじゅうぶんありうるし、またその質も変えることができる。そうなったとき人間はもはやどうにもならない。

本作のヒロイン・池原みづきは、「心と身体は別」と思っているわりきったコギャル。セックスそのものにタブーがないし、調教プレイ自体が実にくだらないと思っている。本来ならこのテのマンガではまず選ばれないタイプの女の子なのだが、それを「教授」がさまざまな手をつかって調教していく(ここで「教授」がふだんは大学の研究室の助手というインテリで、一筋縄ではいかない洞察力に長けていることが意味を持っている)。
やがてすべての価値を相対化しているはずのみずきは、教授のあの手この手で攻略されていく。しかし最後にもうひとつストーリー的なヤマがあって……という展開。

もともと「鬼畜系」なジャンルってのは小市民的な「生の根拠」みたいなものをブチ壊すのが商売のようなところがあるが、監禁調教モノを監禁する側/される側の心理戦として突き詰めた作品ってのは近頃めずらしいのではないかと思う。また「特定の価値に執着しているから」堕ちてしまった久美先生にいらだちを隠せないみずきが自分の拠り所にしていた「(通俗的な意味での)価値相対主義」が突き崩されていく過程ってのはなかなかに考えさせられるモノがあるのではなかろうか。そういう意味で言えば価値相対主義も価値のひとつなのである。

ラストはあまりに徹底しているので、読後地面が消え去ったように思うかストーリー的には「ズルい」と思う人がいるかもしれない。しかし生には何の根拠もない。「ズルい」と叫んでもだれも助けてくれない(なんつー暗いレビューだ……)。

連載中、やや唐突かと思われた部分は描き足しでフォローされていますね。
(01.0420、滑川)



・「アイラ」Vol.7(2001、三和出版)

レビューの前にささいな告知と訂正。夢枕獏、板垣恵介の「餓狼伝」に登場した久我重明は、どうやら夢枕獏の別作品「獅子の門」のキャラクターらしい。確認してないが知り合いがそう言ってた。
そろそろ雑誌レビューはわたし的に超重要だと思うもの以外、やめようと思う。雑誌は驚くほどどんどんたまっていくのと、実はもともと雑誌がたいして好きではないことが原因(衝撃的発言)。雑誌を毎号きちんと読むことと、単行本ベースで作品を渉猟していくのと、私の情報処理能力ではあまり変わらないこともわかった。実際、単行本で読んで面白かった「サトラレ」や「すべてに射矢ガール」などは、連載当時ほとんど知らなかったことなどから考えても、私の好みにものすごく合った作品を今の雑誌洪水の中から見つけだすのはきわめてむずかしい。
まあ最近のマンガ雑誌の思うところはいつかブチブチと書いてみたいと思ったりして(予告するとたいていやらないんだよな……)。

本誌は成年コミック雑誌。数号前まで載っていた、Hマンガ家が自分のエロに対するこだわりを書いていたエッセイがなくなっていたのがつまらん。あれ、いい企画だと思ってたのに。

・「Oh! My DOG」 毛野楊太郎

本誌Vol.2に読みきりで掲載された作品の、シリーズ化第1回らしい。犬として精神的に調教され、肉体的にも改造された少女を当たり前のように飼う世界の物語(らしい)。
「犬もの」で有名なのは海明寺 裕だが、本作はソレとは異なり肉体まで改造されてしまっており、描写もかなり陰惨。このまま行くとかなり陰惨な話になると思われる。あまりにむごたらしい話が苦手な私にとっては辛いところです。
次号予告を見たら海明寺さんの名前があったので、ウワーかわりばんてんに別作家の「犬もの」が載るんだー、と思ったらどうも違うらしい。「漫画アクション」の「ぷるるんゼミナール」VS「オッパイファンド」のように(私が勝手に対決だと思っていただけだが)、犬対決が見られると思ったのにある意味残念だ。

・「まりのゲリラ」 果愁麻沙美

最終回。「トルエン団地」と呼ばれる、産廃で溢れている荒れ果てた地域で、アル中のオヤジを持ちながらもバレエを習うまりのとその姉妹を描く。トビトビに読んでいたがまったく意味がわからず、当惑させられたマンガ。しかし面白くないという意味ではなく、何とも言い難い作品だった。ふとひらめいたのだが15年くらい前に「リュウ」とかに載っていたSF読みきり作品などに近いんではないかということ。バレエものという往年の少女マンガ的設定が見られるところなど。ちょっと思いつきを書いてみた。

・「ちんこむし」 堀骨砕三

青年のちんちんとタマがとれてしまい、それを捨ててもまた生えてくる。で、捨てたちんちんとタマに頭や手足が生えて小さい人間になっていっぱい出てくる、という、これまた滑川泣かせの作品。どう論評していいか当惑するばかりだ。
(01.0417、滑川)



・「YOUNG キュン!」5月号(2001、コスミックインターナショナル)

成年コミック雑誌。

・「さらくーる」 みた森たつや

「SFおしかけ女房」ものカテゴリ。お話は終盤戦に入ってきていると思うが、次号へのヒキって感じの話だった。次号も読みたいけど、予告が載っていないんでやっぱり隔月かな。

今までのお話についてはここ参照。

・「激しい課外授業」 毛野楊太郎

前号で「アナザー・レッスン」が終わって、新連載。「課外授業シリーズ」で調教され続けの武内久美先生に加え、今度は保険医の村崎あやめ先生も罠に落ちる。今月は第1回ということで今までのシリーズのあらすじが載っている。

・「恥しい課外授業」

(01.0416、滑川)

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