2003年3月上旬


3/10(月)……肘漫画

▼ヤンマガを見たら、本年度から講談社漫画賞に児童部門を新たに創設するというお知らせが掲載されていた。それ自体はいいと思うんだけど、講談社ってそんなに児童向け雑誌って強かったっけか?

▼神保町に立ち寄ったので、久々に芳賀書店とか東西堂書店といった実写エロ中心の専門書店に行ってみた。相変わらずあの手の書店っていい雰囲気だなと思う。客と客同士が言葉を交わすことはないんだけど、どこか学校の文科系サークルの部室にも似た空気があるような気がする。コミック高岡に行った後だと余計そう感じる。

▼未読物
【雑誌】ミステリーボニータ 4月号 秋田書店 A5平
▼早売り(12日)
【雑誌】コミックバーズ 4月号 幻冬舎コミックス B5平
 ミステリーボニータは志村貴子と小田ひで次が載っていると聞いて買ってきたけど、750ページもあって読むのが面倒くさいので明日回し。

【雑誌】エース桃組 2003.Spring 角川書店 B5平

 むー、正直言ってあんまり面白くないと思った。この雑誌、女の子山盛りなわりには意外と萌えが弱いような気がするんだけど……。単純に自分がそういうメンタリティを持ってないだけなのかもしれないけれども、最初の時点でノレないと、なんか可愛い女の子の出てくるフツーの漫画が淡々と続いているなーという印象になっちゃう。良くも悪くも似たような作風の人を集めターゲットを絞った雑誌だから、合う合わないがハッキリ分かれそう。

 山名沢湖「産地直送あぐりちゃん」。山奥の学校から転校してきた農業大好き少女あぐりちゃんが巻き起こす騒動をコミカルに描いた作品。あぐりちゃんってのは「agriculture」からですな。個人的にはもう少しファンタジー風味が強いほうが好きかなあとは思うけれども、ちゃんと雑誌の雰囲気に合わせて、明るく楽しく作ってある。線も心なしかいつもよりシンプル。平野耕太「進めング。」は、メガネッ娘居酒屋「委員長」のお話。でもメガネッ娘はほぼ出ない。メガネかけた男オタクは二人ほど。ダメな人たちを描くときの切れ味は、やはりさすがと思わせるものが。

【雑誌】ヤングキング 4/7 No.7 少年画報社 B5中

 小池田マヤ「聖★高校生」。今回神保くんは、ボーイズラブ系の漫画を描いている太めな女の子に雇われて、Hなことをするはめに。いや、いろいろ経験してますなあ。個人的に今回出てくる娘さんも、太いなりにかわいく描けているなと思った。

【雑誌】ビッグコミック 3/25 No.6 小学館 B5中

 岡崎二郎「ファミリーペットSUNちゃん!」は第一部最終話。ショート・ショートもうまい人だけに、さすがにきれいにまとめてきた。今後は「アフター0 Neo」が、ビッグコミック本誌の5月10日発売No.10から隔号連載になり、増刊号にも掲載される予定だが、この中でサンちゃんたちも随時登場していくことになるとのこと。また本誌No.8では岡崎二郎版「鉄腕アトム」が掲載。作:鍋島雅治+画:はしもとみつお「築地魚河岸三代目」。今回からはウニについてのうんちくが語られるエピソード。勉強になる……ような気はするのだが、こんないいウニなんて手が出せないからなあ。知識はつくけど意外と役に立ってないような。

【雑誌】ヤングマガジン 3/24 No.15 講談社 B5中

 松本光司「彼岸島」は、いよいよ吸血鬼たちの住む島に到着して、お話が本格的に盛り上がってくることになりそう。ここからが本番だと思うので期待してます。単行本は1〜2巻が4月4日に同時発売。蓮古田次郎「しあわせ団地」今回は野田夫婦がチャリティーバザーに参加。豚汁を貪るはじめの邪悪な顔に笑った。相変わらず嫌な表情を描くのは抜群にうまい。最近ではさなえのほうも人格がだいぶ歪んで、すごい顔するようになってきた。森遊作「BANKERS」はポーカー編の最終話。仕掛けとしてはそんなにデカくはないけど、ハッタリが利いててけっこう読ます。

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 3/24 No.15 小学館 B5中

 なんか最近ずんずん濃い誌面になっているスピリッツだが、次号からは山本英夫の新連載「ホムンクルス」も始まってそれに輪をかけることになる模様。ヒラマツ・ミノル「アグネス仮面」も再開するようだし、今スピリッツはけっこうアツい。

 で、今号は巻頭カラーが木葉功一「マリオガン」で、のっけから濃い。紅い拳銃の前の持ち主であったインディアンの少年ルカの、白人への復讐に費やされた悲劇的な生涯が引き続き語られる。少年の叫びは悲痛で物語は重量級。三宅乱丈「ペット」もますますシリアスなことになってきているし、読みごたえありまくり。そういった派手な作品が増えて来ている一方で、江川達也「日露戦争物語」あたりもコンスタントに読める。歴史の教科書で名前を見たような人物たちが、いかにも人間くさく描けているのがいい。

【雑誌】週刊少年ジャンプ 3/24 No.15 集英社 B5平

 秋本治「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が連載1300回突破記念ということで巻頭カラー。というわけで今回はキリ番時恒例、両さんの子供時代を描いたノスタルジックなええ話系のエピソードとなっている。河下水希「いちご100%」。東城さんと真中が接近していることに危機感を抱いた北大路さんが、身体を使って猛アタック。サービスシーンもりもりではあるが、そういう行為に走らざるを得ない北大路さんの気持ちを考えるとちょいと切ないねえ。読切、堀部健和「神撫手」は、触れた相手に幻覚を見せることのできる特殊能力を持った少年が主人公。彼はその能力を生かして美術品を狙う絵画泥棒をやっている……という筋立て。絵柄は上品でよくまとまった作品。ただちょっとまとまりすぎな感じもあるかな。

【雑誌】メガキューブ Volume25 コアマガジン B5平

 竹下堅次朗がイラストを描き下ろしたクリアファイルがおまけで付いている。誌面のほうは相変わらずいまいち低調。この雑誌ならではのカラーというものがいまだ確立できない印象を受ける。今号から復活した後藤晶「こどもの時間」、それから琴義弓介「触乳」が現状では柱なんだけどもう一つ勢いのあるニューフェイスが出てきてほしいところ。次号予告には道満晴明、玉置勉強、ほしのふうた、鈴木がんまといった名前が掲載されているので期待できるかな?


3/9(日)……革新帝国

▼そろそろ確定申告しなきゃなーと思って書類をごそごそ。昨年の控えが残ってたのでわりと簡単に完了。国税庁のページの確定申告書作成コーナーもけっこう役に立った。今年は税務署行くのも面倒なんで、郵送で済ませちゃう予定。

【雑誌】CRAFT Vol.16 大洋図書 A5平 [bk1][Amzn]

 雁須磨子「のはらのはらの」。いよいよ西戸崎と、糸島先輩の関係も盛り上がってきたー。肉体関係を持つかも……という雰囲気になってきて、糸島先輩も西戸崎を意識しまくり。一直線にボーイズラブエロスに走るでなしに、ほわほわした話を少しずつ進めていく呼吸は独特。面白いなあ。紺野キタ「とてもじゃないけどみつからない」。少女小説家をやってる父親の元に、別れた妻のところから息子が3年ぶりにやってくる。ところがその子は、なぜか可愛い少女に化けていて……。少女小説を書きホモでもある父と、少女好きで女装好きだけど性的にはノーマルな息子。変わり種の親子関係が見ていて面白い。あとこの息子さんの女装姿がたいへん可愛いのだ。まあ要するに紺野キタが描く少女なわけだから。でも実は男だといわれると、絵的には少女と全然変わらないのに何か特別な空気をまとうのが不思議。

【単行本】「魔女レーナマジョりーな完全版」 石田敦子 大都社 B6 [bk1][Amzn]

 エースネクスト休刊に伴って結局2巻が出ないままだった「魔女レーナマジョりーな」がようやく1冊にまとまった。クラスメートの二ツ木さんが、かつて見た夢の中に出てきた少女じゃないかとずっと気になっていた空太。でもそれは夢なんかじゃなくって実は本当で、しかも二ツ木さんは魔女であったことが判明。彼女は不幸な境遇にあった自分の母親のようにはなるまいと黒魔女を志すが、空太は彼女の中にある優しい部分を信じ続ける。

 この作品も石田敦子らしく、見かけはパッと華やかな魔女っ娘っぽくはあっても、お話としてはかなりシリアス。空太は二ツ木さんに白魔女の道を歩んでほしいと願うが、彼女はそれを「自分にとって都合のいい理想の押しつけ」であるとして拒む。白も黒も彼女が元から持っていた部分であり、その両方を引っくるめて受け容れることができるかということを空太は問われるわけだ。このあたり単純に終わらせないで、難しい問題に向かっていくあたりに作者の真摯な姿勢を感じる。それだけに休刊に伴って急いでお話を端折って終了させざるを得なかった点は惜しまれるところではある。

【単行本】「クローン5」3〜4巻 すぎむらしんいち(相談:いとうせいこう) 講談社 B6 [bk1][Amzn:3巻/4巻

 古代の人間を母体として作られたクローンたちが、彼らを作り出した製薬会社の追手たちと闘ったりしていく中で自分たちの出生の秘密を見出していく。いろいろとクセのあるキャラとかがてんこ盛りですごいドタバタしているのに、ちゃんと一本のエンターテインメント作品にまとめ上げているあたり、すぎむらしんいちはやっぱりうまいと思う。次に何が起こるか分からないというワクワク感が常にあって楽しく読める。

【単行本】「人殺しの女の子の話」 西岡兄妹 青林工藝舎 変型判 [bk1][Amzn]

 「単行本」と表記しているけど、通常の漫画本ではなく描き下ろしの絵本である。西岡兄妹の不思議な雰囲気のある作画は、漫画的というよりは挿絵的なので、絵本というスタイルは非常によくマッチしている。お話としては、ある日突然「人を殺したい」と思って自分の父母を殺してしまった女の子の物語。不穏だけれども美しい。

【単行本】「貧民の食卓」5巻 おおつぼマキ 新潮社 B6 [bk1][Amzn]

 最終巻。なんかテキトーに料理している感があふれててけっこう好きな作品だった。でも一食100円という縛りはちとキツすぎたかもしれない。いまいちピンと来ない料理が多いんだよね。この手の漫画はいかに美味しそうな料理を紹介できるかってのも重要なんで、せめて4人で1000円くらいにしとけばもっと美味しそうな料理を作れたかも。この漫画で紹介されていた料理では、麻婆豆腐と納豆をまぜて炒めるって料理は実際にやって、わりとおいしかったのでその後ときどき作ったりしている。ところでこういう料理漫画って、女性誌よりも男性誌のほうが多いような気がする。これはたぶん、男性にとっては料理することは新鮮な体験だったりするからなんだろうなーと思う。

【単行本】「ARIA」2巻 天野こずえ マッグガーデン B6 [bk1][Amzn]

 水先案内人見習いの女の子・灯里の視点から、水に覆われた惑星アクア(火星)の町、ネオ・ヴェネツィアの四季折々の風景や出来事を、優しく見つめていくというお話。美しい風景は町に流れているゆったりと急がない空気を感じさせてくれて、とても気持ちいい作品。作画のほうも華があって完成度が高い。ただ前作の「AQUA」から数えてもう4巻めになるんだけど、少し物足りなさも芽生えてきてはいる。なんというかこのアクアという星は地球からいいとこどりしているというか、きれいなところばかりを集めている感じがしてて、少々舞台として都合が良すぎな気がする。別に汚いモノを描くべきだとは思わないけれども、例えばもの悲しげな要素とか、隠し味的なモノを含めてアクセントつけるともっといいかなーと。現状だと一本調子で癒されるばかりに思えたりもしてしまうんですな。

【単行本】「イエローハーツ」2巻 米倉けんご ワニマガジン B6 [bk1][Amzn]

 都会のデンジャラスゾーンの闇を垣間見せながら展開する、若者たちの青春群像といった感じだろうか。米倉けんごは一時期、とくに今村夏央名義メインで活動していたころ、シャープで骨太なゴツゴツした人物造形を志向していたが最近は曲線の美しい丸みを帯びた感じの画風になってきた。個人的にはこっちのほうが好み。表紙のでみんな飛び跳ねている感じとか、楽しそうでいいと思う。ただお話のほうは少年少女の青春模様に、ヤバい大人たちの事情がからんでハードに展開中。うーん正直いってゴチャゴチャしてていまいち本筋のつかみづらい構成だと思う。次巻で完結のようだがどのような物語の畳み方をするかで、だいぶ印象が変わってきそう。


3/8(土)……減る足す蹴る田

▼掘った芋をいじってたら更新が遅れました。

▼未読物
【単行本】「貧民の食卓」5巻 おおつぼマキ 新潮社 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「ARIA」2巻 天野こずえ マッグガーデン B6 [bk1][Amzn]

【雑誌】YOUNG YOU 4月号 集英社 B5平

 栗生つぶら「苺が歯にしみる」。仲のいい友達だった大学生男女。その友情が恋愛感情に変わっていく様子を初々しく描写。この雑誌にしては若々しい内容で微笑ましかった。羽海野チカ「ハチミツとクローバー」は高値安定。山田が気持ちに整理をつけるためのきっかけとなるような出来事が。あと花本先生のモノローグが沁みる。

【雑誌】FEEL YOUNG 4月号 祥伝社 B5平

 岡崎京子の再録作品「ヘルター・スケルター」最終回が巻頭という構成。単行本は4月8日発売とのこと。南Q太「スクナヒコナ」はオシャレな絵なんだけど、さりげなく重い展開になっててちょっと怖い。同じ会社の不倫相手が奥さんと別れて結婚してくれるというので仕事を辞めたら、相手がリストラされちゃって、どんどんダメ人間っぷりを発揮していく。しかも自分の部屋に転がり込んでぶらぶらして、借金までこさえてきちゃうという展開。ドロドロの種はしっかり蒔かれており、今後キツい内容になっていきそう。この人の重めの作品は、実生活を反映してそうに感じられてしまうところが嫌なんだよなー。こいずみまり「ガーデンオブエデン」は、主人公・真島さんの描く絵を見るためにやってきた先輩男子・坂井。この二人の関係性がどうなっていくかは不明だけど、けっこうヒキが強いので先が気になる。月子「純愛エレジイ」。それまでいい飲み友達だった男にハマってしまった女の子。最初は主導権を持っていたけど、相手はそこまで真剣でなくて……という具合の恋愛パワーゲーム。キレのいいシャープな作画が印象的。

【雑誌】近代麻雀オリジナル 4月号 竹書房 B5中

 押川雲太朗「ダイナイマイトダンディ 地獄のワニ蔵」が最終回。ちょっと中途半端な感じがしなくもないけれど……。そういえば押川雲太朗はこのところ、「ああ猛虎軍」「不死身のフジナミ」と、立て続けに連載が終了している。もしかしてなんか週刊誌で描くとかあって連載を整理したりとかしてるのかな(「ああ猛虎軍」は週刊誌連載だったけど)。

【単行本】「モッちゃん 不動直立編」 尾上龍太郎 白夜書房 B6 [bk1][Amzn]

 なんだか得体の知れない面白さ。パチンコ/パチスロものではあるんだけど、主人公がとてもヘン。いつもパチンコ屋さんの前に突っ立っている「モッちゃん」と呼ばれる男。上半身はランニングいっちょ、しかもすそが片方出ていて、下のほうもサンダル履き。直立不動だが、ヒゲダンスみたいに手首を直角に曲げて、手の平を地面と水平に向けている。でも顔はゴルゴみたな感じの眼光の鋭さ。彼はパチンコ屋でさまざまな事情でハマっている人間を見つけると「俺が打とう、お前の金で。」のセリフと共に代打ちを申し出る。そこらへんの展開は人情モノっぽいんだけど、モッちゃんの格好は前述のような浮浪者然としたもの。渋いようなヘンなような、妙な読後感を残す。こういうヘンな漫画を描く人は好きだ。

【単行本】「ちくちくウニウニ 全」 吉田戦車 B6 [bk1][Amzn]

 「ちくちくウニウニ」「超ちくちくウニウニ」を1冊にまとめたもの。海の中のウニ学校に通うウニのこどもたち、それから彼らの親、そして先生たちの姿を面白おかしく描いた作品。吉田戦車としては唯一の少年誌連載。ウニ先生の身勝手な独白がこの作品の最大の目玉。それから海の生き物たちの妙な行動も見ていて楽しい。少年誌向けという意識もいい方向に働いていて、たいへん下らなくも面白い作品になっている。

 個人的な話になって申し訳ないのだが,この作品、というかこの作品の登場人物のウニ先生には、これまでの人生において多大な影響を受けている。もともと他人の話を全然聞いちゃいない人間である自分としては、ウニ先生の「私だけが幸せになれ」という哲学には感動したし、自分に都合のいい願望を口に出すときの彼の悪びれることなき態度にも敬意を覚えた。あと「自分だけ良ければいい」といいつつ、悪いことはしないのもいい。せいぜい天女の羽衣を盗んだりするくらいで、罪はあんまりない。でもまあ実際には、彼そのまんまな生き方が得かといえばそうでもなかったりする。まったく自分の都合だけ優先すると他人から憎まれたりするので、まわり回って損になる。そのようなリスクは最小限に抑え、自分には都合のいいように持っていこう。そんなことを信条に生きていたので友達は少ない。当然モテないので30歳を過ぎても独身である。やっぱりあんまり得してない。でもまあいいかとも思っている。

【単行本】「おとぎのまちのれな」2巻 はっとりみつる 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 かわいくて勢いあってエッチ。妖怪の伝説のある村で、お年頃の女の子れなが、突如エッチな気分がとまらなくなるという状態が止まらずいろいろなトラブルに巻き込まれていく。前作の「イヌっネコっジャンプ!」同様、お話がどう転がるんだかさっぱり分からないんだけど読んでいるととにかく楽しい。直接的に裸を見せたりすることは少ないのに、テンションの高い演出で、例えばチアガール姿、スクール水着姿程度であってもむんむん色気をかもし出してくる。なんか一般誌のHってこのくらいの露出度がちょうどいいような気がするなあ。それでも十分にエッチなことは描ける。

【単行本】「閉暗所愛好会」 掘骨砕三 三和出版 A5 [Amzn]

 いやーこれはスゴイ。まず表紙からしてキている。一見、地面の穴ぼこに女の人が落ちている……というだけなんだけど、内容を知っている人から見るとうわっとくるインパクトばりばり。人物の可愛さに騙されると大変なことになる作品である。ストーリーのほうは、暗くて狭いところが大好きな人が集まる秘密クラブみたいなところに勤める従業員の青年が、会員の皆様のお世話をするというもの。例えば部屋いっぱいを土で満たして巣穴みたいなものを作っている人、天井から吊るした袋の中に住まう人……と会員はヘンな人揃い。彼女たちはなぜかプロフィールを見ると、外見に比べると異常に年齢を重ねているのだが、そこには秘密がある。まあ主人公の青年はそこらへんはあまり詮索しないで勤めているわけだが、だんだん会員たちの影響を受けて自分自身も変わっていく。思いもよらない方向へと……。

 で、まあ読み始める前にこれだけは覚悟しておいてほしいんだけど、正直なところこの作品ではうんこがもりもり出てくる。絵柄はすごくかわいいのに、ここらへんはまったく容赦なしだ。もともと舞台は特殊、やっていることも異常、そしてそこからお話はさらにビックリするような展開を見せていく。なんかもう当たり前のごとくサラッと人体改造系のネタも出てくるし、驚愕のうんこプレイもあり。読んでいる間中、ビリビリしびれっぱなしで本当に楽しかった! 別に自分はスカトロ好きじゃないけど、これだけやってくれると刺激的すぎてワクワクしてくる。最終回のネタも良かったな。特殊であるけれどすごく幸せそうだ。これは愛です、愛。そしてファンタジー。素晴らしい。


3/7(金)……押しやれ、丁重に

▼最近bk1のサーバーが重いなー。以前から重かったけど拍車がかかったような。もうそろそろCGIベースのシステムだと、サーバーもしくは回線が限界なんじゃないかなあ。とかいいつつウチのサーバーもだいぶスペックが古臭くなってきたように思うので、最近ちと乗り換えを画策中。

▼未読物
【雑誌】CRAFT Vol.16 大洋図書 A5平 [bk1][Amzn]
【単行本】「ちくちくウニウニ 全」 吉田戦車 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「おとぎのまちのれな」2巻 はっとりみつる 講談社 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「魔女レーナマジョりーな完全版」 石田敦子 大都社 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「モッちゃん 直立不動編」 尾上龍太郎 白夜書房 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「イエローハーツ」2巻 米倉けんご ワニマガジン B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「クローン5」3〜4巻 すぎむらしんいち(相談:いとうせいこう) 講談社 B6 [bk1][Amzn:3巻/4巻
▼早売り(8日)
【単行本】「閉暗所愛好会」 掘骨砕三 三和出版 A5 [Amzn]
▼早売り(10日)
【雑誌】メガキューブ Volume25 コアマガジン B5平

【雑誌】コミックバンチ 3/21 No.14 新潮社 B5中

 大沢智子の読切「噛みんぐNight」が掲載。この人は久しぶりに見た。5年くらい前にスピリッツで、普段は激太りだけどダイエットすると超美人になる女性とその弟によるドタバタコメディ「ひみつのお姉さん」を描いてた人だよね。検索かけたところ、最近ではパチンコ漫画雑誌とか4コマ誌とかで活動してたらしい。両方とも守備範囲外なのでチェックしてなかった。今回の作品は理想の繁殖相手を探して夜の町をさすらう吸血鬼のお嬢さまのお話。さばけた作風の持ち主で、すごく好きってわけではないんだけど雑誌で読む分にはそれなりに楽しい。

【雑誌】MUJIN 4月号 ティーアイネット B5平

 板場広し「未恥への一歩」。主人公の男が彼女を調教してて露出プレイとかいろいろやらせるというお話で、途中までステロタイプなエロで来たかなと思ったら……。この人の漫画は陽気でいいですな。カラッとしてて嫌味がない。しかもジューシィでエロシーンもけっこう充実してるし。小暮マリコ「秘密の部屋」は、イジメられっ子の少年が、イジメっ子から逃げるために活用していた校内の人目につきにくいところにあるトイレで、カワイイ女の子といい仲になっちゃうというお話。今回も華がある可愛さを発揮しつつエロシーンも十分。あと小暮マリコとしては初となる単行本が4月25日に発売決定した模様。

【単行本】「樹海少年ZOO1」7巻 作:ピエール瀧+画:漫$画太郎 秋田書店 新書判 [bk1][Amzn]

 キノコパワー全開な第7巻。謎のキノコを食べたマッキの怪人たちが獣一たちに次々と襲いかかる。まあいつもながらパワフルで下らなくて下品でよろしいと思います。ところで個人的には獣一と行動を共にしている犬・パンチのしゃべり方が気に入っている。「たぶん」は「ワブン」、「なんじゃこりゃー」は「ワンじゃこりゃー」、「まぶしい」は「ワぶしい」といった具合。なんだか和む。

【単行本】「エリートヤンキー三郎」14巻 阿部秀司 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 正直なところかなり惰性で買っている。「エリートヤンキー」という言葉が凄いインパクトではあるのだが、その実はまったり学園モノだったりする。まあこの巻ではほとんど学校のシーンは出てこず、三郎がゴルフやったり河井がバイトやったりなんだけど。

【単行本】「カラコカコ〜ン」2巻 こうのこうじ 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 最終巻。町のボウリング場でうだうだしている男女を描いたドタバタコメディ。こうのこうじの暑苦しい作風はけっこう好きなのだが、この作品については地味に終わっちゃった印象。もう少しハジけてくれるかなと期待してたんで、その点でちと残念。

【単行本】「ユキポンのお仕事」6巻 東和広 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 安定株。本日もユキポンは働いたり、あけみちゃんのわがままに振り回されたり。むくむくしたユキポンの姿を見ていると思わず触りたくなる。「むくむくライオンかばん」という言葉が頭をよぎる。ちなみに「むくむくライオンかばん」は吉田戦車の「伝染るんです。」に出てきたセールスマンが持っていたかばん。あといつも呑気に暮らしているユキポンたちの影で、放浪の旅を続けている元犬社長の犬助の哀愁漂う姿にも惹かれるものあり。

【単行本】「おしゃれ手帖」5巻 長尾謙一郎 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 今や珍しくなった、典型的「ヘタウマ」漫画の旗手。いつもながらにムチャなテンションをキープ。この作品の中ではバブルの崩壊を頑として信じようとしないトレンディ先生ショパンさんがいい。考えてみれば「ヘタウマ」というジャンルも非常にバブル的なシロモノであったわけで、この作品を象徴するキャラといえるかもしれない。


3/6(木)……増えるエントリー

▼昨日の日記で「てるてる×少年」の作者名を間違ってました。正しくは高尾滋です。お詫びして訂正いたします。

▼そういえば傘の正しいさし方って習ったことがない。なんでこんなことを書くかといえば、雨の日に傘をさして歩いていると、自分はやけに濡れるような気がするから。デブだから、歩き方が悪い、もこもこした上着を着ている、撥水加工がしっかりしてない服を着ているなど、ほかにも要因はいろいろあるとは思うのだが、もしかして傘のさし方にも問題があるのかもしれぬとか思ったりしているのだ。傘の持ち手を身体のどのあたりに持ってきて、どのくらいの高さ、どんな角度で構えると最も濡れにくいのか。そのうち追求してみたいテーマではある。とりあえずサーチエンジンで検索でもしてみます。

【雑誌】モーニング 3/20 No.14 講談社 B5中

 うおー、今週の山田芳裕「ジャイアント」はものスゴイ! いよいよ3Aのペナントレースも大詰めで、最高潮の盛り上がり。血沸き肉躍るアクションの連続にゾクゾクして、もう涙がちょちょぎれた。とくにバットとぶつかったボールがひしゃげるところとか、読んでてすごく気持ち良くてシビれた。スタンディング・オベーションもの。いやあいいもん見させてもらいました。

【雑誌】ヤングサンデー 3/20 No.14 小学館 B5中

 石川優吾「格闘美神 武龍」。女子プロレスラーめぐみの総合格闘技での勝利から一夜明け、ランとの間柄も変化。この二人が激突するときは面白い勝負を見せてくれそうで楽しみ。一色登希彦「ダービージョッキー」(原案:武豊+構成:工藤晋)は騎手たちの思いを賭けた皐月賞のレースが盛り上がっている。非常に迫力があって読みごたえがある。ただ見開きの扉の片方だけがカラーで、もう片方だけがモノクロというのはどんなもんだろう。先頭の二人のみカラーというのがなんとなく意味ありげだったりもするけど。

【雑誌】ヤングジャンプ 3/20 No.14 集英社 B5中

 引き続き岡本倫「エルフェンリート」は読みごたえのあるシリアスな展開。なるほどしっかり作ってある。石川優吾「カッパの飼い方」。ちょっとおかしくてかわいいペット系の作品で、なおかつ石川優吾であるにも関わらず、おねえちゃんが全然出てこなくて淡々とした語り口なんだけど面白い。「格闘美神 武龍」も盛り上がってるし好調ですな。佐藤まさき「チョー合金ダマシイ」。オタク男子の部屋に鎮座まします超合金やフィギュアたちが繰り広げるちょっと暑苦しいギャグ。そこそこ面白いけど、この内容だともう少しパワーがほしい感じはする。

【雑誌】週刊少年チャンピオン 3/20 No.14 秋田書店 B5平

 八神健「ななか6/17」。扉に出ているこの人妻は誰だ、と思ったらななかの新しいお母さんだった。そういうえばそんな人もいましたな。ここしばらくあんまり描かれてこなかったキャラだが、ななかが大人になっていくうえで、どうしても決着をつけなければならない人物の一人。この後の展開に注目したい。作:森高夕次+画:松島幸太朗「ショー☆バン」は巻頭カラー。ショーバンくんが相変わらずの天才っぷりを発揮している。今回の勝負に勝ったりしたらまた天狗になりそうで楽しみ。ショーバンの自己中ぶりは、すっかりこの作品における欠かせない楽しみとなっている。

【雑誌】ヤングヒップ 4月号 ワニマガジン B5中

 井荻寿一「霊能探偵ミコ」が掲載。やっぱり井荻ギャルは上品ながらも色っぽくていいねえ。なんの変哲もない普段着姿とかにソソられたりする。草津てるにょ「POISON」は、最近共学になったばかりの学校の水泳部で、男子部員第一号のかわいい少年が女教師や先輩女子たちによってたかって可愛がられてしまうというお話。相変わらずエロい。でも終わり方がちと途中っぽいので、続編があるといいかなと思った。

【雑誌】コミックPOT 4月号 メディアックス B5平

 最近のエロ漫画雑誌の中ではかなり楽しみにしている本。ファンタジーライズと合併してから充実していると思う。

 で、今号はまずエンジェル倶楽部で描いている奴隷ジャッキーが初登場。「おしおき!!てぃーちゃー」。不良ばっかりのクラスで、可愛さと巨乳でみんなに慕われている天然系女教師・日比野まむ先生が大活躍。まさにてきぱきマム……下らなすぎる。それはいいとしてこの人の豊満で汁気たっぷりな絵柄、テンションの高いセリフやHシーンなどの作風は、エンジェル倶楽部一誌だけの登場ではもったいないと思っていたので、活躍の範囲が広がるというのはうれしい限り。高橋くるみ「スマイル2」(前編)。うーん、これって絵柄から判断するにどう見てもジェームスほたてだよねえ。この人はMUJINに描いている小暮マリコも同一人物っぽいけど、そうなるとペンネーム三つ使い分けってことになる。で、今回のお話は双子の女生徒の両方に好かれちゃって赴任早々の本多先生はもうタイヘン……というお話。かわいいしムチムチしててHだし、いい仕事してます。

 長谷円「鏡の部屋のとくこさん」。平凡な主婦のとくこさんが、自分の家と同じ間取りの隣の部屋に住む若い男、それからその仲間と淫らな行為にふけりまくるというお話。肉感的な人妻で多人数ファック。テンション高くていやらしくてよろしいです。しろみかずひさ「PHOBOS&DIMOS」。こちらも情熱的。そしてその中に潜むロマンチックな要素が沁みる。木静謙二「eats in」後編は巻中4色、とか思ったら4ページしかない……。後編なのに「To be continued」になってる。4月に単行本が発売するそうなので、その作業で忙しいとかかな。

【単行本】「アイシールド21」2巻 作:稲垣理一郎+画:村田雄介 集英社 新書判 [bk1][Amzn]

 王城ホワイトナイツ戦が開始。王城の最強のラインバッカー進清十郎ら、強力なライバルキャラたちが登場してきてお話もヒートアップ。個人的には王城の馬鹿力男・太田原がお気に入り。カツ丼10杯くらい食いそうなところがいい。アイシールド21の俊足の見せ場も増えてきてるし面白い。絵がすごく整っていて若干荒々しさが足りないような気はするけれども、その分は技術でカバー。アクションにスピード感はあるしときには気持ち良く熱血してくれるし女の子も可愛いし、よくできた作品だと思う。現在の週刊少年ジャンプの若手勢、という連載陣の中ではかなりの有望株。あとはセナ、ヒル魔、栗田以外の味方のキャラがもう少し立ってくると良いと思う。

【単行本】「目隠しの国」7巻 筑波さくら 白泉社 新書判 [bk1][Amzn]

 この巻の山場はかなでの告白シーン。これまである意味足枷になっていた「触れた人の未来が見える」という能力に対する気持ちを整理するうえでも大事なエピソード。上品で華のある作画と優しい物語は、いつもながら好感度が高い。ただ個人的に、最近ちとこの作品というか筑波さくらは足踏み気味のような気がする。連載開始のころから完成度が高かったこともあるんだけど、優しい暖かい気持ち良いだけでなく、そろそろもう一歩踏み込んだものを見せてほしいところ。


3/5(水)……婦警版ですか

▼未読物
【単行本】「アイシールド21」2巻 作:稲垣理一郎+画:村田雄介 集英社 新書判 [bk1][Amzn]
【単行本】「人殺しの女の子の話」 西岡兄妹 青林工藝舎 変型判 [bk1][Amzn]

【単行本】「ANNE FRIENDS」 町田ひらく コアマガジン A5 [bk1][Amzn]

 約1年ぶりの単行本。成年マーク付きだけど珍しくbk1でも取り扱っている。まあ確かに、外国の絵本の表紙か何かのような性的なものを感じさせない表紙は成年コミックっぽくない。女性に人気があるみたいな話を聞いたことがあるけどそれも頷ける。実際内容のほうも、通常の美少女漫画とは一線を画している。

 今回収録されたのは短編が10本。詳しい収録作品リストは町田ひらくコミックスリストのほうを参照していただきたいが、いかにも町田ひらくらしい、大人の男たちもしくはその他の要因によってもたらされた過酷な運命の中で生きる少女たちの姿を描いた物語が揃う。シニカルで、よもぎのような苦い味を残す作風は、甘いラブコメやストレートなハードコアエロスが主流を占める美少女漫画界において、強烈な異彩を放っている。そういえば出てくる人物たちが、全員日本人ではないというのも最近の町田ひらく漫画の特徴なところ。舶来品の人形のような気高さ、美しさを独特の硬質な線で描き出している。

 舞台としてはヨーロッパ系が中心だが、いくつかの作品ではその他の国籍の少女たちも描かれる。とくに印象的なのは「スケアクロウ」。ベトナム戦争中の出来事を描いた物語で、米国の負傷兵を助けた現地の少女を描いた作品。町田ひらく作品では運命に打ちひしがれている少女が描かれることが多いが、ここに登場するファンという少女は、若いながらも水田を自分で守り、時には銃をとり狙撃もする。大柄な米兵がこの少女に助けられ、守られるということの喜びを体験するというエピソードはなかなかに興味深い。また「Chocolate Adam」は、南の島の、褐色の肌を持つ少年少女の物語。少女は少年を慕うが、彼は肌の白い人魚に憧れ、そこから悲劇が生まれる。このほかの作品も完成度が高く、鋭利に研ぎ澄まされた語り口が絶妙な冴えを見せている。非常にクールな作風だが、例えば天文描写など、ロマンチックな事物が必ずひそめられているのも少女たちの可憐さを際立たせる要因になっていると思う。

【雑誌】コミックフラッパー 4月号 メディアファクトリー B5平

 この雑誌は単行本にならない作品多いから、雑誌で買っておくべきだと思うのです。というわけで今号はもう読切祭といった様相。谷澤史紀が2本、岡本一広、和六里ハル、R-STYLE、末弘、ゆうの亜樹子、田代琢也と山盛り。読切好きにはうれしい限りだが、それだけ連載本数が少ないということの裏返しでもある。ただ次号からは小原愼司「二十面相の娘」、画:谷澤史紀+作:夏秋望「すいむ。」、それからいのうえさきこのエッセイコミックといった具合に、新連載攻勢がスタートするとのこと。とくに小原愼司はすごく楽しみ。

 和田慎二「スケバン刑事if」。同じコインロッカーベイビーであったことが絆となって、かけがえのない友となった天宮佑希、氷室麗華(まあ要するに麻宮サキと海槌麗巳と同じ顔をした人たちです)の物語。麗華が住む豪邸の一角に、コインロッカーがドドーンと据え付けてあるシーンは何度見ても笑ってしまう。和田慎二はこの雑誌の不思議な雰囲気の中心部という気がする。柳沼行「ふたつのスピカ」。うーむ、今回の4色カラー扉のアスミはやたらかわいいなあ。でもお話のほうはセンチメンタルな内容となっていて……。こういう健気な娘さんには幸せになっていただきたいものです。

 岡本一広「楽園スクラッチビルド」。まだ垢抜けないものはあるが、スッキリした清涼感のある作風には惹かれるものがある。今回はプラモデルばかり作っている父親にわだかまりを抱いていた少女の心を、同級生のプラモマニアの少年が解きほぐすという感じのお話。読後感は良好なんだけど、前作の「トランスルーセント −彼女は半透明−」に比べると、ストーリーの練り込みが甘いような気がする。というかあんなの壊したらそうそう直せるもんじゃないような……。でも実際モデラーの人の結婚生活ってのは難しいらしいですな。場所の問題もあるけど、シンナーや塗料のにおいもネックとなるんだそうな。

 谷澤史紀は「夏の約束」「夏祭り」と、なぜか夏のお話が2本。とくに「夏の約束」のほういが爽やかなラブラブ風味が色濃くて良かった。まあこういう爽やかな心地よさで見せるタイプの作風の場合、作画についてはもう一つレベルアップが欲しいところではあるものの、次号から連載も始まるし、技術的なことはガンガン描いている間に伸びるのではないかと。それにしても個人的にはフラッパー若手読切陣の中で最初に連載を持つのは完成度からいって石黒正数かなあとか思っていたので、谷澤史紀が一番乗りしたのはちと意外だった。和六里ハル「超絶マッサージ師 谷間えくぼ」。究極の揉み技を身につけた12歳138センチブルマっ娘が大活躍。実にこの人らしい、可愛らしさと煩悩が共存した作品。そのうちまた連載やってほしい。この人がいると誌面がずいぶん華やぐと思う。

【雑誌】ビッグコミックオリジナル 3/20 No.6 小学館 B5中

 福本伸行「最強伝説黒沢」。今回は2色カラーだけど面白すぎる。黒沢の起死回生の一策……アジフライ作戦……不発……!! いやあもう情けなさ爆発。舞台が小さすぎるだけになおさら。最近オリジナルが出るたびにこの作品を読むのが楽しみでならない。たぶん単行本で読んでも凄い作品だと思うんだけど、このワクワク感はぜひ雑誌で味わっていただきたいと思う。作:矢島正雄+画:中山昌亮「PS羅生門」。今回は鑑識の硬骨漢・美咲の入院にからめて、お金の生き死にについてを語るというエピソード。今回も心にしみるいいお話だった。矢島正雄原作はやっぱりいいです。

 あと弘兼憲史「黄昏流星群」のアニメ化の直前プレビューも掲載。パッと見たところ弘兼憲史っぽくない絵のような感じがするけど、エピソードの内容勝負な作品なんで、そこらへんは別にオッケーでしょう。ところで弘兼憲史について最近思うんだけど、この人は中年男の中途半端にたるんだお腹とか、中年女のくたびれた裸体を描くのが抜群にうまいと思う。なかなかああいうふうに張りのない肉体というものを描ける人って少ないような気がする。

【雑誌】花とゆめ 3/20 No.7 白泉社 B5平

 高尾滋「てるてる×少年」。最近すごく恋愛モノとしてのテンションが高まってて、今回もズギューンときた。才蔵がしのぶの靴ひもを結んであげるシーンと最終ページなんか、もう魂がトロけます。素直になってきたしの姫が反則気味なくらいかわいい。すごく良くなってきた。樋口橘「学園アリス」。たいへんほのぼのとしております。今回は蜜柑が、クラスのみんなのムードをよくしようとドッジボール勝負を画策。アリスだなんだいっているけど、しょせんまだ小学生なわけでたいへん微笑ましい。

【雑誌】週刊少年サンデー 3/19 No.14 小学館 B5平

 橋口たかし「焼きたて!!ジャぱん」。今回もヘンだ〜。パンの味なんかもうどうでもいいって感じです。藤田和日郎「カラクリサーカス」。貞義がいい味出している。テンション高いし、自分を中心に世の中はすべて回っているみたいなことを平気の平左でいいきっちゃうメンタリティも素晴らしい。今回のキーとなるセリフは、流行歌などでよく使われるようなポジティブなフレーズだけど、それをこんなにダークな使い方をするセンスに感心。

【雑誌】週刊少年マガジン 3/19 No.14 講談社 B5平

 森川ジョージ「はじめの一歩」が連載600回に到達。赤松健「魔法先生ネギま!」はその300分の1の連載2回目。なんか普通に面白い。ドタバタ学園コメディとしてけっこううまく構成されてると思った。そういえばこの前、「ラブひな」の最後のほうの巻をまとめ読みしたんだけど、やっぱり面白かった。そのうち単行本買おう。

【雑誌】桃姫 4月号 富士美出版 B5平

 大原久太郎のロリロリ漫画「フニフニ」がよろしいかと。プールで溺れて保健室に運び込まれた女の子と保険医の男のお話。というわけでもちろん少女はスクール水着。ほっぺたのぷにぷに感の際立つ少女の造形が良い。あとお腹の膨らみの描き方とかが分かってる感じがいたします。オチの身も蓋もなさも楽しい。ゆずぽん「僕のかあさんは…」は新シリーズってことは続きモノなのかな。父の再婚相手は女子高生だったが結婚とほぼ時を同じくして父が死去。その後5年が経ち、妙齢になった彼女と主人公が男女として意識しあうというお話。まあよくあるっちゃよくある内容なんだけど、個人的にはこういう健康的な絵柄は好き。お母さんおっぱい大きいし。


3/4(火)……祖父と河馬

▼「ゲド戦記」(アーシュラ・K・ル=グウィン)の第5巻「アースシーの風」の日本語版[bk1][Amzn]が3月21日に出るらしいんだけど、買うかどうかちと迷っている。第4巻が非常に後味が悪い内容だったから……とかではなくて、21日出るのがハードカバー版だから。ここまでソフトカバーのほうで買っちゃってるのでできれば揃えたいんだけど、ソフトカバーになるのを待ってるとけっこう長い時間かかる、もしくはいつまで経っても出ないような気もする。悩みどころ。

タカラ、青林堂グループ会社を子会社に(ZDNet)
 うーん。ねこぢるグッズとかを出すんすかねえ。

【雑誌】ヤングマガジンUppers 3/18 No.6 講談社 B5中

 はっとりみつる「おとぎのまちのれな」。直接的なHシーンは全然描いてないのにHだなあ。動悸の擬音が乱舞するテンションの高い描写で、Hな雰囲気をググッと盛り上げる演出が奏効。何がどうなっちゃうんだかまだ全然見えないけど、それはそれでまた面白い。咲香里「春よ、来い」。なんだか収まるべくところに収まりつつあるようで、だいぶほのぼのしたラブコメ的様相を呈してきている。沙恵の外見も元に戻ってより安心感も増した。

【雑誌】キングダム 4月号 少年画報社 B5中

 せきやてつじ「RUN&GUN」は連載2回め。男二人のエージェントが、ロスの日本人街のドンの孫娘を護送。せきやてつじの作風はB級アクションが最も似合うと思うんだけど、その手の内容だけにさすが面白い。あと今回は女子高生である孫娘がけっこう可愛く描けていると思った。この人の描くキャラは表情が豊かでいいです。岡田正尚の新連載「BURNOUT GIRLS」。日本一部活が盛んなことをウリにしている高校を舞台に、自動車部のハチャメチャ娘たちが暴れまくる。この人らしく車とアクションとお色気がてんこ盛りで、賑やかにスタートしている。この人の開けっぴろげな作風はまあまあ好き。ちょっとゴチャゴチャしてて読みとばしてしまいがちなところはあるんだけど。

 あと、今月は志村貴子「ラブ・バズ」が休載で、その代わりに寺和ミナ「坊さんウォーズ!!」というドタバタギャグ漫画が掲載されている。

【雑誌】漫画アクション 3/18 No.11 双葉社 B5中

 やはり家族モノ2作が面白い。山崎さやか「東京家族」と柳沢きみお「翔んだカップル21」。「東京家族」は栄子が海外にホームステイに行きたいといいだしてひと騒動と、ほのぼのしたお話。「翔んだカップル21」は真由子の実父であることが判明した崎野さんが最後の時を迎えてしんみり。どちらも読みやすいしまとまりがいい。

【雑誌】漫画サンデー 3/18 No.10 実業之日本社 B5中

 作:ひじかた憂峰+画:松森正「湯けむりスナイパー」。最近はずっと化粧しっぱなしのトモヨさん。きれいになったトモヨさんに、旧知の花子ママが結婚の話を振るが……。最近トモヨさんと君江ちゃんの間柄がすごく親密だったけど、もしかしたら一波乱あるかも。

【雑誌】少女天国(阿ウン3月号増刊) ヒット出版社 A5中

 予告に次号は3月18日発売予定と書いてあるので、出たのはけっこう前。なんとなく今頃購入。久しぶりに春籠漸の漫画をチェックしてみようと思ったのもちょっとある。今回の「眠り姫」は、普段超乱暴な姉にギッタギタにされている弟が、彼女が一度寝たら何があっても起きないという性質を利用し、友達とともに寝室に忍び込んでHなことをする……というお話。ちょっとムチャな設定→多人数プレイというパターンは不変。ベタな美少女漫画絵ではあるが、汁っ気のある局部描写とかが実用的。写実的では全然ないけどエロいという意味では、エロ漫画としてはある意味正しいのかも。写実を求めないからこそエロ漫画……というニーズはやっぱりあると思うし。完願阿骨打「時期はずれのサンタさん」は、タイトルどおり季節外れな時期にロリロリサンタさんが一人暮らしの男の部屋にやってきてHなことに突入というお話。サンタ服の女の子というのはけっこう可愛いもんです。

【単行本】「高校アフロ田中」4巻 のりつけ雅春 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 のんびりまったり高校馬鹿男子ライフ。下らないけどキラリと光るネタもしばしば見られるし、意外とヒネったりもしてるし、個人的にはけっこう面白いと思う。キャラクターの中では無敵体力男の加藤さんの豪快な振る舞いがいい。この人が出てくる回は笑う率が高い。

【単行本】「キーチ!!」3巻 新井英樹 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 行方不明になっているキーチは浮浪者の老男女に保護され一緒に暮らすようになるが、しかしそこで安穏としていたのも束の間、またしても彼の前で惨劇が起こる。4歳児ながらその人生は転石のごとし。ハッキリいって物語がどういう方向に進むかまったく分からない。現在並行して連載している「SUGAR」がボクシング漫画で軽やかで格好良いのに対し、こっちはだいぶ重たい。このまま行くと、「愛しのアイリーン」以来の嫌漫画になる可能性もある。そういうのもアクが強くて好きだけど。

【単行本】「エイケン」9巻 松山せいじ 秋田書店 新書判 [bk1][Amzn]

 銀天蝶@生徒会vs.エイケン部の紛争が決着。というわけでこの巻はわりと動きのある巻。でも最近はちょっと最初のころのインパクトが薄れちゃったかなあという印象。トーンとかいっぱい使うようになってから、画面がゴチャゴチャして見せるべきところ、つまりこの人の場合は小萌の爆乳だったりといった過剰な部分とかがあまり目立たなくなってるような気がする。抜くべきところは抜いて、画面にメリハリをもっとつけていくといいんじゃないかと思います。


3/3(月)……草原序章

ほしのふうたイラストボード(クリックで拡大) ▼職場に到着したら、なんだか机のうえに大きな包みが置いてある。送付元は久保書店。中身は「額」と書いてある。全然覚えのないものだったのでなんだろうと思って開けてみたところ、昨年の12月19日の日記で触れた、ほしのふうた「いたずらスイッチ」発売時のプレゼントのイラストボードだった。ラッキ〜♥ せいせいぜい色紙程度のサイズかなと思っていたが、サイズは意外と大きくてB4程度だった。

【雑誌】マンガ・エロティクスF Vol.20 太田出版 B5平 [bk1][Amzn]

 新連載がいくつか。まずは藤原薫「少女幻想」。塾通いでガリ勉と周りからはいわれている少女が見る妄想。それが彼女をエロチックな行為へと駆り立てていく。いつもながら硬質な線で描かれた少女の姿は、ピンと張り詰めたような美しさ。でもそれがいかにも繊細であるだけに、エロシーンで見せる淫らさにハッとさせられるものがある。よしながふみの新連載「愛がなくても喰ってゆけます。」は、「〜YながFみ先生の愛欲と食欲の日々〜」というサブタイトルが付いている。内容は、漫画家のYなが先生が同居人でアシスタントのS原という男性となんかいろいろメシ食いに行ったりするという日常漫画。ちなみに「この話はこれとよく似た人物とは一切関係ありません。」という注が振られている。食べ物自体はほとんど描いていないのに、なんか無性にうまそうだ。あと安彦麻理絵のシリーズ連載「声」も始まっている。こちらは声を題材にした読切連作形式。それから沙村広明のイラスト+文字によるショートストーリーの3ページ「RIGHT HAND HEAVEN」も連載開始。

 新連載とくれば最終回もあり。中村明日美子「コペルニクスの呼吸」は今回で最終回。これは人物関係とかをしっかりつかむために、単行本が出た時点でまとめ読みするのが吉かな。安田弘之「紺野さんと遊ぼう」、松田洋子「赤い文化住宅の初子」は次号で最終回。どちらも楽しみにしていた連載なので、お名残り惜しいことでございます。

 志村貴子「どうにかなる日々」。扉ページ体操服姿の少女がとてもかわいい。今回は夢やぶれて故郷に引っ込もうとしている売れない歌手をやってた少女とそのマネージャーの青年のお話。淡々としたお話の進め方に味がある。かわかみじゅんこ「ニュース」は、受験、過程、恋愛といろいろな問題で頭が超イッパイな15歳少女の日々を描く読切。少女のうるんだような目つきがなんか色っぽい。少女から女に変貌を遂げていく時期特有の艶めかしさとでもいいましょうか。渡辺やよい「壊して…!」はエロティクスF初登場。ベッタベタに濃いい熟女のエロスを描いている。わりと淡白な作品が多いこの雑誌の中では目立つ。

【雑誌】ヤングマガジン 3/17 No.14 講談社 B5中

 山本マサユキ「ガタピシ車でいこう!!迷走編」。今回はいつもの3人でスキー場へ。珍しくうまいこといってると思ったら、やっぱりオチが。この漫画だけにまあ何も起こらないわきゃないとは思うけれども、そのお約束をちゃんとやってくれるところが楽しかった。森遊作「BANKERS」。接待ポーカー編好調。しっかり分かりやすく見せ場を作って面白く読ます。サトシのギャンブラーとしての成長ぶり、あがきっぷりに手応えを感じる。

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 3/17 No.14 小学館 B5中

 吉田戦車「殴るぞ」。この人のグッドな言葉への目の付けどころは本当に鋭いなと思った。「なるほど、そういうふうにいわれると妙ですな」と、膝をポンと打ちたくなる。三宅乱丈「ペット」。けっこう大きくお話が動いている。能力者たちの飼い主であった中国マフィアたちの会社に異変が。いろいろなところに仕込みが行われていて読みごたえ抜群。ラフなタッチの描線にも得も言われぬ迫力がある。

【雑誌】週刊少年ジャンプ 3/17 No.14 集英社 B5平

 河下水希「いちご100%」。なんか真中と東城さんがいい雰囲気になってしまっていることに、北大路さんはやきもき。そして選んだのは肉体でたらしこむ道。頑張れー、もっとやれーと無責任なことを思う。作:稲垣理一郎+画:村田雄介「アイシールド21」。対カメレオン野郎編は勝負あり、といったところ。アイシールドの猛烈なスピード描写は爽快感あり。

【単行本】「短編集」 魚喃キリコ 飛鳥新社 A5 [Amzn]

 いろいろなところで描かれた19本の短編を集めた単行本。素っ気ないタイトルがいかにも魚喃キリコらしい。どの作品も、主に恋に悩んでいたりするおねえちゃんたちの気持ちをすくい取って、シンプルだけれども風情のある線で漫画の中に封じ込めている。透明感のある表現はそのときどきのウキウキする気持ち、苦しい泣きたくなるような気持ちなどなどを、読む者に手に取るように伝えてくる。まあ残念ながら、こんなかっこ良さげな恋愛模様にはあまり縁のない人間ではあったりするのだが、そんな人間が読んでも面白く感じられます。

【単行本】「羊のうた」7巻 冬目景 幻冬舎コミックス B6 [bk1][Amzn]

 これにて最終巻。最後は喪失感を刻み込みながら、暖かく締めくくり。長期間に及んだ連載だったが、陰鬱な物語を終始緊張感をもって進め、きれいに着地した。色白な千砂と血の赤のコントラスト、家や服装などの和風の装い、一砂と千砂、それから一砂と八重樫さんの関係……などなど、いろいろな事物が印象に残る。まあ正直なところ、少々長くしすぎた感はあってボリューム的には3〜5巻くらいで収めちゃっても良かったかなとは思うけれども、何はともあれ美しいままで終わってくれて一安心。まあそんなわけで一つの長い作品には幕が引かれた。そのすぐ後であるこれから何を描いていくか、冬目景にとっても作家性が問われる正念場ということになってくるかもしれない。

【単行本】「ヘルシング」5巻 平野耕太 少年画報社 B6 [bk1][Amzn]

 カバーをめくってまず笑い、冒頭のバカネタでさらにまた。でも本編のほうは邪悪で黒々としてたいへんかっちょ良い。とくにアーカードが魔弾の射手・リップヴァーン中尉の乗る空母に襲いかかっていくシーンなぞは胸がワクワクする。そして断末魔の中尉が見せる恍惚の表情の美しさときたら。んでもってその後は殺戮を命ずる少佐のカッコイイお言葉へと続く。あとはもっと早くお話が展開してくれれば。

【単行本】「ギャラリーフェイク」27巻 細野不二彦 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 超安定株で隙がない。とくに新たに付け足すような感想とかはないんだけど、読めばやっぱりちゃんと面白い。今回の収録作品の中では、亡くなった腕利き絵画修復家の娘さんがフジタに弟子入りしてその技術を盗もうとするお話が良かった。


3/2(日)……オードーモンキングゲイナー

▼「オーバーマンキングゲイナー」23話。作画的にはまあまあレベルだったが内容は、だいぶクライマックスが近づいてきて非常に盛り上がっている。面白い面白い。戦いを重ねていく中で、ゲイナーくんが一人の男として成長している様子も頼もしい。もともとかなりメガネくん好きにはアピールするであろう容姿の持ち主。そこに男の魅力もプラスアルファしたら、こりゃあもうモテモテでしょう。

【単行本】「晴れた日に絶望が見える」 あびゅうきょ 幻冬舎コミックス B6 [bk1][Amzn]

 さてさてどう対処したらいいものやら、という本だ。圧倒的に緻密で美しい背景描写、純粋で可憐で汚れない少女たち。そんなものたちが一コマ一コマ、一枚絵のイラストとしても通用しそうなくらいのクオリティで呈示されているのに、内容は恐ろしく暗黒。主人公の影男は38歳独身、アニメや同人誌の世界のみで生きてきて、親にもなれなければ男としても通用しない。真っ黒いベールを頭からすっぽりかぶってその外形さえ分からない社会的に不要な人間、ダメ男。そんな行き場のない存在である男に、少女たちはある一つの方向、日本の男が男と死ねる唯一の道を指し示す。ドーン。

 あびゅうきょによると、現代日本は邪教の洗脳により、大和撫子たるべき女子は邪教徒どもに股を開き母性を失った存在。そして男は守るべき女子を失い、アニメやフィギュアなどのヴァーチャルな存在にしか魂の行き場を見出せなくなったゴミ。日本人が日本人として生きるためには、邪教徒を排斥するべくお国のために戦うしかない。背景にちりばめられた「八紘一宇」「愛国」などの文字、靖国神社や菊の御紋の神々しいイメージがそういったムードを盛り上げる。でもその担い手である男子は、アニメや漫画で骨抜きのぐにゃぐにゃになっている。どうしたらいいんだ。絶望。ドドーン。

 といった絶望的な内容に対して、受け手たる、アニメや漫画に浸りきった30歳独身男子の自分はいったいどうしたらいいのか。あびゅうきょがこれを本気の本気でやっているのか、それともネタでやっているのか、そこらへんでまず判断に迷う。本気でやっているとしたら、これを笑って読むのは失礼なような気もするけど、それを真に受けた行動をするのはいささかクレイジー。ネタでやっているとしたら、手離しで褒め上げ真に受けるのは馬鹿だし、しかし今の日本男子、ひいては自分の状況を考えるとむげに笑ってしまうのもどうかという気がする。ただ単純に絵の美しさを愛でたり、時折描かれているテーマの過激な刺激にシビれる程度に押さえておくのが一番賢いのだろうけど、それもちとクールすぎるしちとイヤな奴っぽすぎる。

 というわけでどんなスタンスをとるべきか、対処に迷うというわけだ。でも内容的には不思議なくらい面白いと思う。なぜか読んでいて非常に気持ち良かったりもするのだ。美少女にダメ男のダメさ加減をビシビシ容赦なく指摘していただく快感というのもあるのかもしれない。何にせよものすごく刺激的な一冊であることは間違いない。

【単行本】「セクシーボイスアンドロボ」2巻 黒田硫黄 小学館 A5 [bk1][Amzn]

 女スパイ道を一直線だったニコの前に突きつけられる厳しい現実。三日経つと経験したことを全部忘れてしまう殺し屋「三日坊主」との出会い、そして別れを通して、それまで遊び感覚で女スパイをやっていたニコは、その道に疑念を抱くようになる。飄々とお話を進めつつ、それと地続きのまま、世の無情さを呈示していく構成がうまい。ニコが作品世界の中で、しっかり息をし生きている感じがする。声という漫画では描きにくい武器を使っているんだけど、声が聞こえないもどかしさは微塵も感じさせない。やっぱしうまい。いつもながらその漫画力にうなる。

【単行本】「アグネス仮面」3巻 ヒラマツ・ミノル 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 面白いな〜。これぞエンターテインメント。この巻では帝日プロレスでアグネス仮面とタッグを組んでいた、相撲取り出身のマチルダ仮面がパワーアップ。一時は調子に乗ってアグネスに対し反旗を翻すも、この作品のジョーカー的存在であるマーベラス虎嶋がそこに大きく立ちはだかって事態はムチャクチャなことになってしまう。ヒラマツ・ミノルの緻密さとパワフルさを兼ね備えた作画、遊び心が存分に威力を発揮されてて問答無用で楽しい。あー早く続きが読みたい。

【単行本】「アフター0」9巻 岡崎二郎 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 わりと難入手本だった「トワイライト・ミュージアム」収録作品に、単行本初収録作品を加えて「アフター0」の著者再編集本のうちの1冊として刊行。「トワイライト・ミュージアム」は、たぶん「アフター0」よりも入手しにくかったと思われる本なので、今回初めて収録作品を読んだ人も多いかもしれない。初収録作品としては、岡崎二郎のデビュー作である「仏陀降臨す」も収録されている。これは初めて読んだ。世界中に仏教が広く普及した未来の世の中を舞台に、地球の衛星軌道上に仏像を浮かべ世界仏教の中心にする計画を巡る物語を描く。絵についてはその後の作品よりもいくぶん固めではあるんだけど、この人は最初から非常に完成度の高いお話を描いていたんだなあと感心した。このほかの作品も粒ぞろいで面白いので「アフター0」をここまで読んできて気に入った人はぜひどうぞ。

【単行本】「セツナカナイカナ」 こがわみさき エニックス B6 [bk1][Amzn]

 端整で清潔感のある絵がまず魅力。そこに爽やかな恋愛風味を織り込みながら、ふわふわと宙に浮かぶような邪気のない物語を展開してくる作風は読んでいてとにかく気持ちがいい。少年少女のラブコメが中心だけど、ベタにラブで突っ走るのではなく、恋愛的な要素は日常の中で抱くふとした不思議にファンタジーな心持ちをほのかに味付けするエッセンスという感じで、上品な砂糖菓子のように口の中ですーっと溶けていくような読後感。……ではあるのだけれど。個人的には最近のこがわみさきは正直なところ物足りないものも感じている。なんというかもっと伸びてほしい。いつも上品でかわいらしく、気持ちのいいお話は描く。だけれど、同人誌で主にやってたころと比べてもお話の引き出し自体は増えていないし、「前回より今回、今回より次回」という勢いが感じられないのが歯がゆい。いやー、やっぱもったいないと思いますよ。こんだけいい絵をしてるんだから。

【単行本】「おうどうもん」1巻 せきやてつじ 竹書房 B6 [bk1][Amzn]

 モーニングで「ジャンゴ!」をやっていたせきやてつじが麻雀漫画に挑戦。小倉では敵なしだった天才麻雀野郎のケンタだったが、実はタダのいい加減なヒモだと思っていた自分の親父が、かつては伝説とまでいわれた雀士であったことを知る。東京からやってきたヤクザが、歌舞伎町の支配権を争う中国マフィアとの麻雀勝負に親父を駆り出そうとしていたのだ。その勝負の渦にケンタは否が応でも巻き込まれていく……というストーリー。

 麻雀漫画は、その性質上バストアップが基本。顔の表情と手、それからタバコなどの上半身で扱うアイテムを駆使したアクションで見せなければいけないジャンル。そういうふうに条件が限定されている分、演出力が問われるんだけど、せきやてつじはこの点すごく強力。とくに人間の顔というものを、ものすごい迫力で描けるというのが強い。なんだかものすごく直球、そして剛球。力任せなんだけど、本当に漫画で力任せをやるには高い技量が必要。痛快至極でカッコイイと思います。

【単行本】「独身寮空室あり!」3巻 矢凪まさし 双葉社 B6 [bk1][Amzn]

 最終巻。とあるボロボロな独身寮で暮らす男女の、恋愛ありHありな日常を楽しく描写したコメディ。絵、ストーリーともにたいへんヌルいんだけれども、矢凪まさしの持ち味はまさにそこ。ところが本当にHもヌルいのに意外と使えてしまうという不思議さも持っている。この作品自体はお話的には多少散漫な印象もあるけれども、普通に肩の力を抜いて気楽に読むには楽しい作品だと思う。


3/1(土)……寺社ぶっかけ

▼電車に飛び乗って西に向かったため、更新が遅れました。最近はこういう更新が遅れたときの言い訳は適当なことを書こうと心に決めているのだが、実は今日の言い訳は本当だ。珍しく遠出して京都に行っていたのである。漫画読者系の知り合いと「今度は関西でオフやりましょう」と正月にチャットでお話をしてて、それを実行したというわけだ。土曜の昼に京都に着いて、朝まで飲んで日曜の昼には東京に引き返すというバタバタしたスケジュールだったが、飲みだけで帰ってはもったいないとそこそこ歩き回ったおかげで、思ったよりは観光したような気分にはなれた。

 あいにく到着したとき京都は雨で、市中を練り歩くには不向きな気候だったのだが、待ち合わせ場所にほど近い八坂神社、知恩院あたりを散策。観光慣れしていないこともあり、知恩院で寺でけー、鐘でけー、門でけーとまるで子供のように喜ぶ。デカい木造建築物って存在感があっていいですな。あと祇園のあたりをぷらぷらして、いかにもステロタイプなイメージの「京都」っぽい町並みの雰囲気を堪能。夜は飲んで一晩中カラオケやらで時間をつぶし、朝になったら錦の市場に行ってみやげ用の京野菜等を購入。その後も本願寺の前の通りをほっつき歩いたり。疲れたけどなんとなく充実。今度はもう少ししっかり時間をとって歩き回りたいなあ。寺は年齢を重ねてからのほうがなんかいいです。子供のころに来たときよりもなんかしみじみ興趣をくすぐられた。

▼未読物
【単行本】「セクシーボイスアンドロボ」2巻 黒田硫黄 小学館 A5 [bk1][Amzn]
【単行本】「ギャラリーフェイク」27巻 細野不二彦 小学館 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「アグネス仮面」3巻 ヒラマツ・ミノル 小学館 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「高校アフロ田中」4巻 のりつけ雅春 小学館 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「キーチ!!」3巻 新井英樹 小学館 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「アフター0」9巻 岡崎二郎 小学館 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「独身寮空室あり!」3巻 矢凪まさし 双葉社 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「ワイルド7愛蔵版」6巻 望月三起也 実業之日本社 B6 [bk1][Amzn]

【雑誌】近代麻雀 4/1 Vol.434 竹書房 B5中

 有元美保「雀荘で遭った愉快な人々」。今回はラストページのエピソードがおいしい。雀荘で同卓したおっとりした女性が見せた、毅然とした一面。うーんこれは実際に遭遇したら萌えるでしょうな。赤羽文学「フリーダム」。フリー雀荘に入ったら、そこは恐ろしい自由の空間だった。間違ったヒッピー魂があふれまくる適当なノリが楽しい。

【雑誌】ビジネスジャンプ 3/15 No.7 集英社 B5中

 作:夢枕獏+画:谷口ジロー「神々の山嶺」がついに最終回。今回の扉の言葉はまさに最終回にふさわしい。谷口ジローの緻密な線で描写された山岳は圧倒的な存在感を持っていて、羽生、深町、そしてマロリーといった人間たちのドラマを際立たせてくれた。最終巻が出たときにまた読み返すのが楽しみでならない。「大きな物語の喪失」が叫ばれる世の中だけれども、しかし実際の漫画シーンに目を向けてみれば、今もこうしてしっかりした物語も確かに作られている。そしてやっぱり良質な物語は、読む者の心を強く揺さぶる。そのような力を実感させてくれる、読んでいて毎号ゴッツい手応えのある力作だった。次回作にもまた期待してます。

【雑誌】ポプリクラブ 4月号 晋遊舎 B5中

 へかとんはいつもいいなあ、というわけで「ひよこのたまごやき」。お兄ちゃんと妹のラブラブH物語。おかっぱなめがねっ娘妹、ひよこちゃんは、親代わりとして働いてくれてるお兄ちゃんにぞっこん。そのお礼としてひよこちゃんは、お兄ちゃんの趣味の「凌辱写真撮影」につきあってあげるのでした……というお話。すごい甘いお話なのに、サラリと「凌辱写真」とかいい出す天然っぷりがこの人らしくっていいなあ。あと絵もたいへんかわいい。そろそろ単行本出ないかな。井ノ本リカ子「プリティ♥サイズ」は連載2回目。早くもラブコメ風味が高まって参りました。お得意のソフトタッチの絵柄だけど、わりと濃いめのH描写も健在。


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