2003年3月下旬


3/31(月)……う、いもうとおとこ

▼OHP月極アンケートの4月分「言葉が素晴らしい作品」を開始。まあ要するに名セリフとかが印象に残っている作品を挙げてくという趣旨のアンケートです。常設アンケートの「アンケートをとってほしいテーマ」でも前々から要望の高いテーマではあったんだけど、セリフ一つ一つで投票していくと、票が物凄い勢いで割れちゃうそうだったのでこれまでは躊躇してました。でも投票を作品単位にすればそんなに票が割れることもないんじゃないかというアイデアが寄せられたので、その線で行ってみることに。個々のセリフについての思いは、コメント欄で存分に語っていただければと思います。またトラブルのあった3月分「むしやどうぶつたちのせかい」も、並行して4月2日いっぱい投票受け付けを継続いたします。

▼実は4月分の設置作業中に、操作を間違って3月分のログに空のログを上書きしてしまったのだが、昨日書いた定期的バックアップのおかげでさっそく救われた。便利です、定期的ダウンローダー。というかしっかりしろ俺。

【単行本】「武侠さるかに合戦」天の巻 吉田戦車 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]

 吉田戦車には珍しいストーリーモノなんだけど、これが面白い。タイトルどおり「さるかに合戦」をモチーフにしたお話なので、カニが猿に対して仇を討とうとするというストーリーは元ネタどおり。しかしキャラクターはそれぞれ非常にクセがある。いらん知恵ばかりある狡猾な猿、針武術の達人である元女王ハチ候補のハチ、主人公であるカニの娘、それから嫌な目つきをした弟カニなど(ちなみにたいていのキャラクターは人間的な造形をしている)。あと股間にイガイガをつけた栗の親分の登場シーンは、何度見ても爆笑してしまう。猿のイヤったらしい表情とかも最高。

 ところがストーリーのほうは、意外なくらい骨太。オーソドックスとさえいえるかもしれない。任侠モノ的なテイストでけっこう力が入っていたりするし、途中の展開も波瀾万丈。それが吉田戦車らしい味のある造形のキャラクターによって演じられることで、得も言われぬ面白さを発揮している。なんだか吉田戦車の新しい側面を見ているような感じ。この人全然枯れてないよ。改めてその才能に感心することしきり。今後の展開も楽しみ。

【単行本】「想うということ」 犬上すくね エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]

 いろいろな恋愛の局面を独自の視点から鮮やかに切り取った素敵な短編集。なんといっても単行本に降られているキャッチフレーズが「純愛作品集」である。柔らかく包み込むような絵柄でありつつ、ときにドキッとするような鋭い視点も見せてくれる。この中でとくに好きなのは一話めの「おくびにもだせない」。好きになるとほかのものが見えなくなる……という「恋は盲目」状態を、そのまんま形にして描いてしまったストーリーは着想としても面白い。あと「Love experience」での、一方的な恋の告白に対する「言葉のピンポンダッシュ」とか、言語表現もいい感じ。基本的には現代モノが中心だけど、巻末の「空も飛べるはず」は、中世ヨーロッパ的な世界を舞台に空を飛べる能力を持った種族の少年少女の恋模様、成長模様を描いたファンタジーテイストな作品。こちらも優しい読後感を残す良いお話。何よりこの人の作品は、ベルベットのようななめらかな手触りがよろしいと思います。

【単行本】「よみきりもの」4巻 竹本泉 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]

 面白い。一話完結のスタイルがこの人の作風にビシッと合っている。個人的に竹本泉作品はこれまでそんな熱心な読者ではなかったのだが、この作品についてはばっちりヒットした。竹本泉についてスゴイなあと思うのは、この人ならではの雰囲気ってものがもう物凄い勢いで確立されてしまっていること。揺るぎも乱れもまったくない。雰囲気勝負な作品というのは多いけれども、この域までたどりつくというのはそうそうできるこっちゃないと思う。さらにこの作品については一本につき一ネタ、風変わりなキラッと光るアイデアが盛り込まれているのが良い。

【単行本】「ヘヴンズドア」 小池桂一 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]

【単行本】「G」 小池桂一 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]

 小池桂一が一挙2冊発売。しかもオンラインビームによると4月13日に、青山ブックセンターでサイン会もやるらしい。そういう場に出てくる人というイメージはなかったので、これはちょっと驚き。

 で、まず「ヘヴンズドア」は著者初の短編集。1983年に米国で発表された「LANDED」から、2001年発表の近作まで幅広く収録した1冊。これを見ると小池桂一は昔っからムチャクチャうまいってことがよく分かるが、近年に至ってもそれがさらに洗練され続けているのが驚き。この作品集の中でとくに印象に残ったのは「ルーパ」。何をやらせてもトロい少年が河原で一匹の亀を拾い、それに夢中になる。しかし心ない学友がその亀をオモチャにして教室の窓から落としてしまったショックで、彼の意識は不思議なゾーンにハマり込む。ただでさえ遅い彼の思考はさらにスピードを落とし、周囲のすべてのものが超高速で動いているような感覚にとらわれる。脳内の思考がぐんにゃりと歪み、周囲が一斉にスピードアップする瞬間の描写が素晴らしい。

 「G」はコミックバーガーに連載され、1988年にスコラから単行本が刊行された作品の復刻。マウナイ族というインディオの一部族の青年・トマクが、「死の草」と呼ばれる強烈な幻覚作用を及ぼす草の力により外の世界と結びつく。深い密林の中での呪術的な要素に、宇宙船の幻影といったSF的イメージをからめた展開は非常に壮大で、そのジャンプ力の高さに驚かされる。ただお話としてはもう少し大きな展開が用意されていたのかもしれない。

 どちらの本についても、小池桂一の克明・緻密・超写実的な描写が、ドラッギーな世界観に抜群の説得力を持たせている。幻覚の描写は多いが、画面については細部までピッチリと、まったく曖昧な部分なく描かれており「現実」と大差ない存在感を持っている。こういうリアルな画風だからこそ、幻覚描写も映える。そういえば最近、こういうすごく写実的な描写で勝負する人ってあんまり見なくなったような気がするなあ。まあ小池桂一レベルの人については、漫画史を通してもそう何人もいるわけじゃないとは思うけど。

【雑誌】ヤングマガジン 4/14 No.18 講談社 B5中

 平本アキラ「アゴなしゲンとオレ物語」。茶羽根の一戸建てが復活。家を建てるということに対する茶羽根の執念や恐るべし。そしてその発想たるやダイナミック。蓮古田二郎「しあわせ団地」。今回は途中、ちょっとファンタジ〜な展開、でもないか。とりあえずあんまり怠けていたり、一日中裸でいたりするのは控えめにしておいたほうがいいのかもしれないなとか思った。

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 4/14 No.18 小学館 B5中

 山本英夫「ホムンクルス」。車上ホームレスな主人公の手持ちの金がいよいよ尽き追い込まれていく。切迫感は募る。まだ事件というほどの事件には至っていないけど、読者を物語に引き込んでいく力はやはり抜群。吉田戦車「殴るぞ」。今回の犬のいたずらに思わずニヤリ。こういう犬がいたら楽しそうだなあと妄想する犬スキーな俺。ヒラマツ・ミノル「アグネス仮面」は、凶悪なツラをした大和プロレスの生き残りたちが大暴れ。歯ごたえありまくりなヒールの登場で、これまでも面白かった物語もさらにググッと盛り上がってきた。エンターテインメント〜。

【雑誌】週刊少年ジャンプ 4/14 No.18 集英社 B5平

 加地君也「闇神コウ」が新連載。わりとありがちな妖怪退治モノといった雰囲気だけど……。まあジャンプの場合、こういう作品が化けたりすることがまれにあるんでしばらくは様子見。鈴木央「ウルトラレッド」。閃×山田戦決着。脇役キャラの活躍が目立ってきた。さほど目立つわけではないながら、じょじょに面白くなってきているあたり、作者の地力を感じる。


3/30(日)……ヤーパンの園

▼ぐはー。月末も押し迫ってきたっていうところでOHP月極アンケート3月分「むしやどうぶつたちのせかい」のログが吹っ飛んでしまった。古いログやいくつかのマシンのキャッシュを引っ張り出してきてなんとか、3月28日(金)20:17のkrkrmrさんの書き込みまでは復元。でも一部は手持ちのキャッシュ等に残っていなくて復元できず。せっかく投票してくださった方々には本当申し訳ないです。そんなわけで再投票があることも考えて、投票期間を4月2日いっぱいまで延長します。

 月極アンケートについては、これまでログ飛びはずーっとなかったので、すっかり安心しきっていてバックアップをちゃんととっていなかったのが敗因の一つ。というわけでこれからはlukewarmの駄文置き場→「ソフトウェア」→「その他」にある「定期的ダウンローダー」を普段から常駐させて、ログを定期的に保存しておくようにしたいと思う。ちなみにこのソフトは、指定したURLのファイルを、指定した書式のファイル名で定期的に保存しておけるというツールでなかなか便利です。設定方法は若干とっつきにくいかもしれないけど。

▼未読物
【単行本】「ワイルド7愛蔵版」7巻 望月三起也 実業之日本社 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「つゆダク」3巻 朔ユキ蔵 小学館 B6 [bk1][Amzn]
▼早売り(31日)
【単行本】「武侠さるかに合戦」天の巻 吉田戦車 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]
【単行本】「想うということ」 犬上すくね エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「よみきりもの」4巻 竹本泉 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]
【単行本】「ヘヴンズドア」 小池桂一 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]
【単行本】「G」 小池桂一 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]
▼早売り(1日)
【雑誌】コミックメガストアH Vol.6 コアマガジン B5平

【単行本】「アフター0」10巻 岡崎二郎 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 「トワイライト・ミュージアム編」の下巻に当たる第10巻。これにて「アフター0」著者再編集版もめでたく最終巻。きれいにまとまったSFショート・ショート作品として元々マニア筋では評価の高かったシリーズだが、今回の全10巻で新たな読者が手にとってくれる機会が増えたことは喜ばしい。あと単行本初収録作品が意外と多く収録されていたので、すでに旧版の単行本を持っていた読者にとっても楽しめるシリーズだった。

【単行本】「ナンバーファイブ」3巻 松本大洋 小学館 B5 [bk1][Amzn]

 だいぶ物語のほうは軌道に乗ってきて、虹組の面々もどんどん動くようになってきた。この巻あたりから、ナンバーファイブの逃走劇とほかのメンバーの追跡にからめ、ナンバーワンの人となりがクローズアップされてきている。要するにナンバーファイブとワンにお話は収束していくのであろうなという感じがうかがえた。それにしても不思議な世界観ですなあ。ファンタジーとハードボイルドが違和感なく混ざり合ってる。虹組を作ったとかいうおっさんなんか、シブい面してうさぎの着ぐるみみたいなの着てるし。

【単行本】「安住の地」2巻 山本直樹 小学館 A5 [bk1][Amzn]

 この巻で完結。砂漠の中にポツンとあるアリエヘンと呼ばれる居住地に流れ着いた、制服姿の女子高生風の少女。彼女とそこの住人たちの気怠い夢のような生活が延々と描かれていく。いつもの山本直樹調ではあるのだが、個人的にはやっぱり面白いな〜と思った。舞台が砂漠地方ということもあり熱気で周りの風景がゆらゆら歪むようで、読んでいる間中、何か気持ちの良くなるオクスリでもやってるような感じだった。とくに今回は「この人は正気だ」と思えるキャラクターがほとんど一人もいないため、いつもよりさらに足元がおぼつかないような感覚に陥った。淡々と物語は進むけれども、その中にしっかり引き込まれた。

【単行本】「命+紅」 ヒロモト森一 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 400年以上も「死なない」でいる男・不知火死朗と、こちらは「死ねない」でいる犬飼左京。戦国時代からつながる因縁の二人が、現代を舞台にガツガツと意地をぶつけ合うバイオレンス・アクションといったところ。激しくハッタリの利いた、迫力のある画面は相変わらずカッコよく、キャラクターも邪悪までに猛々しい雰囲気が出ている。ただヒロモト森一作品にありがちなことだけど、キャラが特殊すぎちゃって作品世界にのめり込みにくいってところはやはり見られる。あとあまり目立つヒロインがいなかったのもちょっと残念。ヒロモト森一の描く女の子ってけっこうカワイイと思うので。

【単行本】「ホーリーランド」5巻 森恒ニ 白泉社 B6 [bk1][Amzn]

 シン、ショウゴという、初めてできた友達が標的にされてしまったことに責任を感じたユウが、どんどん自分を追い込んでいく。自暴自棄になって不良たちとの戦いを続ける彼は、シンたちを襲った首謀者である加藤の一味と事を構えることになるが……という第5巻。この巻のユウはテンパりまくり。力と精神のバランスが完全に崩れた危うさにゾクッとさせられる。そんな中でも格闘知識についての解説はいつもどおりシッカリ行われていて(実践的かどうかはストリートファイトしないので知らないけど)、たいへん読みごたえがある。こういう言い方するのもなんだけど、ちょっと賢くなったような気分というか。あとこの巻では待望の対決もあり。それと殺伐とした雰囲気になってきている中で、伊沢妹が出てくると一気に気持ちが華やぐ。愛でユウを救っていただきたい希望の星。

【単行本】「野蛮の園」 西川魯介 白泉社 A5 [bk1][Amzn]

 高大一貫の工業高等専門学校、「高専」における野郎どものムンムンとした日常を、途中から編入してきた金子くんというまだその文化に染まりきってない少年の目から語っていくというお話。まあ要するに男が圧倒的な割合を占める学舎での、大馬鹿魂あふれる学園モノといった感じ。とはいっても全員が全員男ってわけじゃなくって、女の子もいる。そして西川魯介だけに、その希少な女人たちのほとんどがめがねっ娘だー。オタク的な知識をひけらかすというのでなく、隠し味として盛り込みながら展開されるドタバタ学園ライフは、勢いがあって楽しい。あとHシーンにもついてもそんな多くないながら十分にエロかったりして、いい具合にバランスとれてるよなーと感心する。キャラクターでは、一見ヒロインっぽいんだけど実は高専的文化に染まっちゃっててむしろ精神的に男側に属するクラスメートの江刺さんと、金子くんをHな行為にずるずる引きずり込む大姐A先輩がいいですな。

【単行本】「星の降る音」 星逢ひろ 松文館 B6 [bk1][Amzn]

 星逢ひろの作品は美少女漫画雑誌でしか読んだことなかったのだが、この人ってボーイズラブの人でもあるんですなあ。確かにこの人の描く少年は、少女顔負けで可愛い。つるんとした輪郭、ポッと染まった頬がいい具合。美少女漫画のほうでも、柔らかい絵のわりにエロい漫画描く人だなーと思ったけど、ボーイズのほうでも十分エッチ。まあわりと少年が少女っぽいんで、バリバリ女好きという人でもけっこうイケるんじゃないでしょうか。

【単行本】「健康の設計」 駕籠真太郎 東京三世社 A5 [bk1][Amzn]

 最近の駕籠真太郎は小粋ではあるが、ちょっと刺激については以前より抑えめな作品が多くなってきているように思うのだが、この本は昔の作品が多めなので不穏なギャグがバリバリだ。とくに好きなのが「凸凹ニンフォマニア」に収録されていた「動力工場」シリーズに通じるところのある「健康の設計」。人体の一部を利用した機械を利用した日常生活という、「家畜人ヤプー」的なネタは今見てもやはりクールで面白い。あとレーザー砲によって、感覚自体はつながったまま身体を左右に真っ二つにされてしまった女性が繰り広げる、ブラックなギャグ的状況を描いた「快楽の断面的横滑り」なんかは奇想のヒネり具合、事態のエスカレートさせ方が非常にいい。この時期の駕籠真太郎は人体断面図ネタが多いけれど、やっぱり基本はあくまでギャグ。なんでもかんでも笑い倒してしまえという姿勢が頼もしい。


3/29(土)……ブックリスト

▼OHP月極アンケート3月分「むしやどうぶつたちのせかい」は3月いっぱいで投票締め切ります。地味なテーマかと思いきや、意外とマイナーだったり古かったりで普段は話が出ないような良作の名前が上がったりして、個人的にはけっこう楽しんでたりします。投票お済みでない方、それから投票はしないまでも、どうぶつ・虫・植物漫画の話をしたいという方もぜひどうぞ

【雑誌】ヤングキングアワーズ 5月号 少年画報社 B5中

 長谷川哲也「ナポレオン −獅子の時代−」は、アウステルリッツ編がおしまい。アワーズ内では異色な作品ながら今回は巻頭カラー。実際、力の入った濃いめの人物描写に支えられたメリハリの利いた歴史ロマンは面白く読めた。二宮ひかる「ハッピーバースディ」。相変わらずキレのいい、恋愛願望をかきたてる読切作品。他人の彼女ではあるけれど、なんだか気になる、ほっておけないクラスメート女子を、主人公の男子が見つめるという内容。女心とらえがたし。

 作:清水栄一+画:下口智裕「3年B組 Rock'n Roll is DEAD」は、学校の連中と一緒に組んでいたバンドから追い出されたロック野郎な少年が、憧れの女の子に誘われてとあるギターに出会う。しかし霊感の強い彼は、それが縁で不思議な出来事に巻き込まれていくのだった……という短編。わりとハッタリが利いててまとまってるんだけど、この雑誌だと作風が余湖+田畑の「J」コンビとカブるので少々不利かも。で、画:余湖裕輝+作:田畑由秋「コミックマスターJ」は、前回に引き続き新古書店問題。作中でも答えは出せていないけれど、確かに難しい問題なのでそれはやむなしだと思う。

【雑誌】快楽天 5月号 ワニマガジン B5中

 オシャレ系エロ漫画雑誌の砦であった快楽天がついに方向転換か。次号予告で「創造的快楽改革」を旗印にリニューアルするといった内容が書かれており、表紙もなんか違った感じになるらしい。予告の顔ぶれを見ると、どうも実用度を強めようとしている印象。昨今のエロ漫画は確実に売れる実用系と萌え系以外の、ちょっと風変わりな作風を持った作品群は軒並みスポイルしてきている感があるけれども、快楽天もその波に呑まれてしまうのか。グラビアがメインになっちゃった、同社のヤングヒップ作家の受け皿という側面もあるかもしれない。

 それを如実に感じさせるのが、今号の巻頭カラーがLINDA「過去の記憶」だったこと。LINDAは肉弾熟女系ハードコアエロの描き手としては現在かなりノッている人だが、ストーリー面で見るべきものがあるかといえばそういうタイプではない。次号もカラーで登場とのことだが、これは「快楽天もこれからは実用面に力を入れてきますよ」という宣言のようにも思える。次号ではこのほか、これまた実用系の雄である草津てるにょも投入。かるま龍狼、飛龍乱、いのうえたくやも人妻モノをやるようで、今までのライトでオッシャレ〜というイメージからだいぶ変えて来ている。個人的に人妻モノはすごく好きだけど、快楽天についてはオシャレ路線のほうがいいなあ。そういう雑誌が一つはないと、ジャンル全体の幅が狭まっちゃうんで。ともあれ次号の出来映えは要注目。

 前置きが長くなっちゃったけど、それでは各作品について。北河トウタ「とぶくすり」。これも人妻モノといえば人妻モノ。でも夫の会社が作った新薬のせいで、身体がロリロリな少女になってしまった奥様……ということで、まあつるぺた系と考えてよろしいかと。タカハシマコ「ココアシガレット」は3話連載の3話め。美術の先生が好きな女の子が、先生の愛を独り占めにする妹さんに嫉妬して、その真似をいろいろしてみる……という微笑ましいお話。相変わらず完成度の高い少女絵で可愛らしい。途中の展開はちょっとベタなだじゃれネタでちょっと笑った。SABE「阿佐谷腐れ酢学園」。うんこもりもり。ぶっ飛んでますな。なお単行本上巻が、4月上旬ついに出ます。あと朔ユキ蔵「からっ風ブギ」はコミックライズ2001年2月号からの再録。

【雑誌】エンジェル倶楽部 5月号 エンジェル出版 B5平

 奴隷ジャッキー「A wish 〜たった一つの…を込めて〜」。凌辱シーンは激しいが、愛の告白も痛切。どっちにしろテンションが著しく高い作風はやっぱり好きだ。吉良広義「モウレツ♥尺八指南」。とある事情により女(かつフタナリ)になってしまった主人公の光一くんが、フェラチオ同好会である「尺八倶楽部」の人たちに捕まって、尺八されまくるというお話。やりまくりだけど、ハチャメチャなストーリーもけっこう楽しめるのが良い。

【単行本】「無敵看板娘」3巻 佐渡川凖 秋田書店 新書判 [bk1][Amzn]

 ドタバタコメディとして、安定した面白さを発揮していると思う。メチャ強な実家のラーメン屋手伝い娘・鬼丸美輝が、今回も鬼神ぶりを発揮。バカで乱暴でアナーキーで、明るいこと以外は本当にいいところがない。でもハタ目に見てる分には面白い。基本はドツキ漫才ってとこでしょうか。

【単行本】「バトル・ロワイアル」9巻 作:高見広春+画:田口雅之 秋田書店 B6 [bk1][Amzn]

 わりと好きなエピソードである灯台に立て籠もる女生徒5人組編がこの巻のメイン。七原君はモテモテだなあ。これまでの感想に書き足すようなことはあまりないけど、とりあえずこの巻で生き残りが15→9人と、ついに一桁台に到達。


3/28(金)……演歌タウン

▼アニメ「THE ビッグオー」最終回。うーん、不完全燃焼な感じですなあ。作画、雰囲気作り、キャラの魅力という面では成功していたけれども、ストーリーのほうが考えオチ的な感じになってしまってて残念。2ndシーズンは全13話使って1エピソードをやってたわけだが、こういうよく分からんオチにするならそれだけの話数使う必要はなかったような気がする。メタレベルなお話をやりたいのならもっと壮大なこともできただろうし、直球勝負的なロボットアニメ的路線で行ったとしてもキャラが十分に立ってたんだから普通に面白くできたと思う。どっちの方向性でもいいからもう少しハジけて欲しかった。

▼未読物
【単行本】「野望の王国完全版」8巻 作:雁屋哲+画:由起賢ニ 日本文芸社 B6 [bk1][Amzn]

【雑誌】ヤングアニマル 4/11 No.7 白泉社 B5中

 柴田ヨクサル「エアマスター」がアニメ化ということで特集記事が掲載。作:あかほりさとる+画:板場広志「マウス」。マウスにヤレぬ場所はなし。というわけであっちでもこっちでもやりまくるマウス。天然ヤリチンぶりが最近とみにいい味を出している。技来静也「健闘暗黒伝セスタス」は第VIII章がおしまい。ルスカに惹かれてしまっているオクタヴィアがけっこう可愛い。第IX章は夏再開予定とのこと。

【雑誌】ビッグコミックスペリオール 4/11 No.8 小学館 B5中

 今号は東本昌平「SS」でしょう。この作品はときどき泣ける回があるのだが、今回がまさにそれ。ダイブツと栗原が、長年のわだかまりを忘れて子供みたいに無邪気に車を走らせる様子にすごくジーンときた。こういう味は若造では出せませんな。東陽片岡「お三十路の町」は最終回。こういう連載はずーっと続くもんだとばかり思っていたので、なくなるのは寂しい。

【雑誌】コミックバンチ 4/11 No.17 新潮社 B5中

 第1回世界漫画愛読者大賞を受賞したものの、途中で連載が中断していた作:小林ユウ+画:木ノ花さくや「エンカウンター −遭遇−」が連載再開。でもいまいちこの作品、印象が薄いんだよね。で、第1回組ではやっぱりこっちだと思う、日高建男「満腹ボクサー徳川。」はいい具合に盛り上がっている。試合を迎えて徳川の天才性がいかんなく発揮されておりカタルシス十分。回を重ねるにつれ、このぷくぷくした男がだんだんカッコ良く見えてくる。

【雑誌】フラワーズ 5月号 小学館 B5平

 今号は西炯子「お手々つないで」が表紙。んでもって中身の作品のほうも好調。ぶっきらぼうな演劇少年・佐藤は、他校の女の子・山王さんとつき合う気満々だが、どうも相手はほわほわしててその意図をつかみがたく。のんびりしたムードと、つんのめる男子のはぐらかし方の自然さに思わず微笑んでしまう。うまいですな。渡辺多恵子「風光る」は安定株で面白い。思えば自分は途中から読み始めたので、現在70話中の60話分くらい読んでないんだけど、すんなり入っていけたし今も楽しんで読めている。こういう間口の広い作品があるっていうのは雑誌全体にとって有益。

【雑誌】コーラス 5月号 集英社 B5平

 松田奈緒子「レタスバーガープリーズ. OK, OK!」。ここのところちと恋愛模様が混線気味だったけど、決着がつきそうな展開になってきた。主人公の綾とか、各キャラクターの崩した顔とかもいろいろ描けているのが見てて楽しい。調子に乗ったときの顔とか半ベソ面とか。

【雑誌】メロディ 5月号 白泉社 B5平

 よしながふみ「愛すべき娘たち」が掲載。扉に「2号連続登場!前後編」と書いてあるのに、今回のが前編なのだが後編なのだか扉に書いてないのは不親切だと思った。いやまあ前編なんですけど。で、今回は申し分のないいい娘さんで結婚願望もないわけではないのに、なぜか嫁に入っていない莢子さんの物語。彼女が人の勧めで見合いを繰り返すものの合う相手に出会えずにいたが、そんな彼女が唯一惹かれたのはちょっと意外な男性であった……という内容。スッキリした絵と安定感のある話運び、それから莢子および相手の男が両方とも好感度が高く、気持ち良く読めた。というわけで後編も楽しみ。魔夜峰央「パタリロ西遊記!」。よくできた漫才のような軽妙なリズムがお見事。職人芸。雁須磨子のカリスマさん取材漫画「カリスマ探訪記」は2回め。今回のお相手は新宿の母・栗原すみ子さん。人生の深みを感じさせつつも、終始なごやかな雰囲気の取材といったところ。

【雑誌】ヒメクリ 5月号 FOX出版 B5平

 今号は平とじ。えーと今後もこの形態なのかな。まあ何はともあれなかなか元気です。平とじになったということで背表紙のところにDr.モローの4コマ漫画が載ってたりする遊び心は楽しい。ただこれは束(本の厚みのこと)の計算を間違えたのかなあ。4コマ漫画が背表紙から5mmくらいずつハミ出しちゃってる。意図してやったのでないならちともったいない。
(2003/03/30追記:印刷所での指定紙取り違え事故があったようです→FOX出版のおしらせ

 まずは初登場、たちばなとしひろ「そんな二人のHappy Time」。最近のこの人のアツアツカップルH漫画は非常に充実している。男女とも好き好きビームを放出しまくってて、思わずアテられてしまう。登場人物たちが、それぞれとてもいい表情してます。羽田としのり「GIRLS2」は、男にフラれた姉と、彼氏とうまくいってない妹という双子の姉妹が、妹のほうの彼氏といろいろあって3Pに突入というお話。瑞々しい画風が魅力で後味爽やか。

 ゴージャス宝田「なんでかな。」は、Hなことに興味のある女の子が、いつも校庭を覗きに来ていたロリコンにーちゃんに迫ってやがて恋仲に……というお話。男にとってはおいしすぎるシチュエーションなれど、最終的にラブラブ状態になっていく様子が微笑ましい。小林王桂「Funky Butterfly Fancy」。このスッキリしたペンタッチは毎度のことながら良い。きっと一度見れば惚れるという人も多いと思うので、ぜひ単行本を出してほしいところ。パニックアタック「大人になる呪文」。今回も楽しいですのう。妹大好き兄貴が今回は足フェチ道に目覚めちゃって、未由たんにの足をいじくってハアハアする。今回は服はまったく脱がず。でもいい。それがいい。なおパニックアタックはどうも「明日のナージャ」に夢中っぽい。未由たんが新しい魔女服をもらって喜び、「せらっせらっ」とかいって踊りながら喜んでいたりする。

【雑誌】阿ウン 5月号 ヒット出版社 B5平

 師走の翁が体調不良のため休載、摩訶不思議、大井はに丸あたりも今回は載っていないので若干寂しいか。ジャム王子「BAD SLAMMERS」は今月号で最終回。西遊記をモチーフにしたエロエロ冒険譚も最終局面。キャラクターがみんなバイタリティにあふれていたし、エロシーンも充実してたしなかなか良い作品だった。単行本でまとめて読み返したいところだが、ヒット出版社はわりと単行本化のぺースが早いという印象があるので、そう遠からずまとめ読みできるんじゃないかと思う。武礼堂(元・村正みかど)「裸の宗教裁判」。平凡な村の娘さんが、魔女裁判といっては女の子にHなことをしまくる審問官たちにとっつかまって乳を吸われたりするというエロコメ。この人の絵は元気があっていいねえ。コミカルで健康的でけっこう好き。あと次号は7周年記念で特大号になるらしい。

【雑誌】リトルピアス 5月号 東京三世社 A5中

 ほしのふうた「人形の家」は、この人には珍しく連載モノとしてスタート。謎めいた洋館の中で淫らな行為に耽っている少女の姿に見せられた少年が、その館にとらわれておもちゃにされていく……というお話。今回は幼女というよりも、むしろショタの魅力のほうが強いかも。女の子側がミステリアスで大人びた表情をしているのでそういう印象。つもたきまこ「あなたの精液飲ませて下さい」。いつも勉強ばっかりしているカタブツの女の子が、少女2人を囲ってHなことに耽っているおじさんの元に出かけていって、タイトルにあるようなセリフをズバッと。絵は今風ではなくてかなり泥くさめなのだが、個人的にはそれがいいと思った。精液の匂いや、粘膜の手触りといったモノを強く感じさせる作風。大向こう受けすることはないだろうけど、こういう特徴のある作風はけっこう好きだ。

【雑誌】キカスマDX 松文館 A5平 [Amzn]

 キカスマ→キカスマDXと誌名変更。判型もB5平とじからアンソロジー形状のA5平とじへ。リニューアルなんだけど、号数が書いてないのが気になるところ。次回予告も載ってないから、この号の売上次第では次の号はないかも……という感じなのかなと憶測。

 LINDA「企画書」は、厳しい女上司と部下の男がHな関係になってしまうというオーソドックスなオフィスもの。LINDAの肉感的な絵柄で熟れた女体をいつもながらエロチックに描写。いつもながらの実用度の高さ。GRACE「転校生」は、都会からの転校生の少女が、過疎の進む田舎の村の学校で子作りを前提とした実質的な性教育を受けるというお話。ラストの送電線と鉄塔をバックに、少年少女が野原の真ん中でセックスにふけっているという構図はなかなか印象的だった。

【アンソロジー】アイラDELUXE VOLUME.9 三和出版 A5平 [Amzn]

 発売日が完全に19日から28日に移った模様。次号も28日発売となっている。

 今号ではまずMARO「凌辱死神姉妹」。タイトル見ただけで不覚にも笑ってしまった。MARO先生のこういうヘンなセンスは他の追随を許さないモノがある。氏賀Y太「まいちゃんの日常」2話め。いや〜今回のはいいなあ。いきなり四肢切断された人犬状態の女の子が出てきたと思ったら、どんなハードな責めをされても復活するメイドのまいちゃんが自分の肉でこの人犬少女のエサを賄えと命令されて、腕ハンバーグやらすっごいモノを作らされる。むちゃくちゃひでーことをやってるんだけど、ちゃんとギャグになってる。耐性のある人はぜひどうぞ。あと今号では岡すんどめ「VRVRV」にも四肢切断少女が出てくるので、そっち方面のマニアにはオススメ。


3/27(木)……ミス地味オタ

▼アニメ版「ななか6/17」の最終回見ました。途中、動かなくなってきて文句垂れたりもしたけど、物語部分については総じてうまくまとまっていたのではないかと。ラストのあたりはけっこう感動もした。ななかが最終的に出した結論が、アレで最善であったかは分からないけど、原作が終わっていない段階で出来得る着地のさせ方としては良かったように思う。原作のほうもちょうど今盛り上がっているところだし、そちらがどのような展開を見せるかも楽しみ。「THE ビッグオー」の最終回は明日見ます。春からの新番組は「鉄腕アトム」「金色のガッシュベル」「デ・ジ・キャラットにょ」「TEXHNOLYZE」「LAST EXILE」あたりを見ていこうかと思っている。あとここ15年くらいアニメはちゃんと見ていなかったので、その間に見逃していた旧作についてもぼちぼち行こうかと。

【雑誌】モーニング 4/10 No.17 講談社 B5中

 今号の注目は、新連載「憲史・くらたまのゴージャスめし」だ! 倉田真由美がレポ漫画、弘兼憲史が解説漫画を描いて、二人の漫画家がゴージャスなめしを食い散らかすというたいへん許し難い連載。いきなり食っているのが「あらがわ」(「あら」は「鹿」という字を三つ、「がわ」は皮)という店のステーキ。4人で25万円超という強烈な肉っぷり。猛烈に許し難い……というか素直に羨ましい。読切、作:綱元将也+画:吉原基樹「U-31」。かつてはサッカー日本代表にも呼ばれる天才的な選手だったが、今では元名門チームで平凡なゲームメーカーに成り下がってしまった男が、現在の自分の置かれた位置というものを痛感し、再起への覚悟を固めるという物語。シャープで力強い絵で、男の意地を感じさせる読みごたえのあるお話を作っている。ただ短編というよりもむしろ長編もしくは中編向きのお話かなという気もする。決意だけなら漫画の主人公でなくてもできるわけだから、そこからの具体的なステップを見たかったところ。

【雑誌】ヤングサンデー 4/10 No.17 小学館 B5中

 守村大「パラダイス」。東日本新人王戦が決着し、今回で第一部完。試合の模様は迫力があったし、恋愛関係の描写もいかにもこの人らしくて面白く読める。ちゃんと第二部も5月8日発売No.23から開始予定。

【雑誌】ヤングジャンプ 4/10 No.17 集英社 B5中

 こばやしひよこ「おくさまは女子高生」は今号から週刊連載化。先生と結婚している女子高生の若奥様。でも卒業まではHはしないという約束で、夫婦ともに悶々と……というお話。いつものように健康的にぼいんぼいんです。

【雑誌】週刊少年チャンピオン 4/10 No.17 秋田書店 B5平

 新連載、作:七三太朗+画:森田克俊「GONTA!」が巻頭カラーでスタート。ヤクザにも将来の幹部と目をつけられるほどの無敵ケンカ小僧・キンヤが「キング」と呼ばれる強そうなヤツと河原で決闘、ということでケンカ漫画と思いきや、扉ページに「痛快熱血拳闘漫画」と書いてある(←最初に見ておけという感じだけど)。というわけでボクシング漫画になるようだ。このページでもときどき書いているけれども、ここのところボクシング漫画が少年誌・青年誌ともに流行っていて、週刊少年誌でもマガジンに「はじめの一歩」、サンデーに「KATSU!」があり、ジャンプ以外の3誌に連載作品が存在することになった。実際のボクシング自体がそう盛り上がっているようには見えないんだけど、なんか原因でもあるんだろうか。まあ漫画向きの題材であることは間違いないと思うけれども。

 能田達規「ORANGE」。今回はオレンジではなく、敵役のさいたまレオーネのプレーっぷりがカッコイイ。隙がなくて「強い!」と感じさせるものがある。こういう説得力は大事。テクニシャンであるソンのプレーも、いかにも点取り屋っぽい。作:ピエール瀧+画:漫$画太郎「樹海少年ZOO1」。さすがジャンプ作家だっただけのことは……という展開。

【単行本】「女の生きかたシリーズ」 河合克夫 青林工藝舎 A5 [bk1][Amzn]

 さまざまな女性を主人公として、ちょっとヘンな味わいの短編シリーズ。例えば、寿退社したあと元の会社の同僚に「しあわせせんべい」なるせんべいを食わせて無理やりしあわせを分け与えようとする女、自分を捨てた男に自分の心の痛みと同じ痛みを与えようと男の背中に画鋲を一つずつ刺していく女などなど、風変わりな人たちの物語。絵もいわれぬ味ではあるのだけど、前の単行本「ブレーメン」みたいなインパクトはないかな。

【単行本】「ヨコハマ買い出し紀行」10巻 芦奈野ひとし 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 もう10巻めなのかー、としみじみ。始まったときからずーっと安定して面白い。こういう癒しっぽい作品は、癒してばっかりだと得てして単調になりがちなのだけど、この作品については飽きないで読んでいられる。のんびりしたムードの中にも、空をずーっと飛んでるアレとかたそがれの雰囲気を感じさせるアイテムを常に描き続けているのがいい隠し味になっているのではないかと。お話を作るためにさまざまなシチュエーションをそこらへんから取ってきてくっつけるって感じでなく、作品世界から自然といろいろなシチュエーションが生まれてくるって感じなのもいい。

【単行本】「耳スタジオ」 松本耳子 少年画報社 B6 [bk1][Amzn]

 よろず屋に就職した巨乳なねーちゃんの高橋マコさんが、派遣された先々でHなことをしつつ活躍……という「ナンでもしちゃうゾ♥」全4話と、短編7本を収録した単行本。いつもながら非常にカルーく明るーくH三昧な様子は見てて楽しい。松本耳子の特徴は、なんといっても作風全体に漂う「イマドキのギャル感」(←すげー陳腐な形容で申し訳ない)。フツーっぽいけどキュートで愛敬ありというタイプの、奔放で元気のイイ女の子をイキイキと描けてる。そういえば最近できたらしい作者本人のWebの「JOBS」のコーナーによると、6月6日にもまた短編集が出るとか。

【単行本】「それいけ!!ぼくらの団長ちゃん」3巻 小野寺浩二 少年画報社 B6 [bk1][Amzn]

 楽しくてよろしいと思います。オタク的な要素がこの作品では「ヤマモト」とかと比べると抑えめな分、ドタバタコメディとしての面白さが素直に出ている。スクール水着とかそういうフェチ的なアイテムは出てくるんだけど、読み心地は意外とスッキリサバサバしている。実は微笑ましい学園モノであると思う。ハッ、OHP月極アンケートの「学園モノ」のときに投票しておけば良かった……。

【単行本】「Landreaall」1巻 おがきちか スタジオDNA B6 [bk1][Amzn]

 むー、Amazonにはまだ入ってないかな? いちおうISBNコードを元にリンクだけ(←その後入ってました)。

 かつて魔の山の火龍を退治した勇者であったという噂の両親を持つ兄妹が、街にある歌う樹に宿る歌姫のために、家来とともに旅に出るという感じのヒロイック・ファンタジー。軽やかな作画と楽しげな作風は相変わらず読んでて気持ちがいい。兄・DXと妹・リオン、それから家来の忍者みたいなロッコー、キャラクターもそれぞれ愛敬たっぷり。ただスッキリした絵柄と軽妙なテンポのわりに、案外お話がスッと頭に入ってきにくいような気もちょっとする。単行本の最初の巻なのに本編部分が3話しかなくて、親の世代のエピソードが2話という構成になっているからっていうのもあるかもしれない。


3/26(水)……オブリガドーン

▼今このページとかがある、picnic.toドメインで運用しているサーバーのマシンを近々入れ替える予定です。乗り換え先はIXENTのE-Serverで提供されているマシン。料金は今まで使ってたのと同じで、スペックがCPU:233MHz→1.1GHz、メモリ:64MB→512MB、HDD:2.5GB→40GBと大幅アップ。現在のサーバーも運用開始から3年半が経ち、スペック的にだいぶ時代遅れになってきてたしトラフィックが増えて重くもなってたんだけど、これでずいぶん改善されると思います。新サーバーへの移行はいちおう4月10日あたりを予定。その近辺は環境移行作業のため、ちょっとアクセスしにくくなるかもしれません。まあこのあたりについては、その直前くらいにでもまた告知します。

【単行本】「6番目の世界」 福島聡 エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]

【単行本】「空飛ぶアオイ」 福島聡 エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]

【単行本】「少年少女」2巻 福島聡 エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]

 福島聡祭り。というわけで3冊同時発売。現在コミックビームで連載中の「少年少女」の2巻に加え、短編集「6番目の世界」、それから昔の連載「空飛ぶアオイ」がいっぺんに。この3冊を通しで読むと、福島聡ほどの人でもじょじょにうまくなっていったんだなあということが分かる。とくに「6番目の世界」は、この人が初めて描いた漫画から「少年少女」直前のころの近作まで入っていて、ズンズンうまくなっていく様子が伝わってくる。「空飛ぶアオイ」はその中間点くらい。

 いちおう続き物ということで一番書きやすいので「空飛ぶアオイ」についてから書くが、このお話はただ普通に暮らしているだけで身の周りに不思議な出来事を次々呼び寄せてしまう女の子・アオイさんの日常を描いた作品。このころの絵は今より丸い感じで、普通に癒し系なテイスト。ドタバタ劇を楽しく描いているけど、若干コマが小さいかな? なんとなく今ほどのメリハリがなくて天真爛漫なお話なわりに、ストーリーが意外と頭に入ってきにくいような。それから「6番目の世界」。こちらは先に書いたように、年代バラバラで味わいの異なる6本の短編を収録。キレのいい構成は昔の作品からもありありと感じる。途中演劇方面に走ったとのことで、漫画についてはブランクが何年かあったそうだが、なるほどそれも分かる。3話めの「一日の楽天」と4話めの「もう半分」の間で、絵柄がガラリと変化している。

 で、現在の作品「少年少女」。これはもう素晴らしい。とにかく絵がうまいし、構成も絶妙。甘かったり苦かったり微笑ましかったり……と、いろいろな少年少女たちのシーンを鮮やかに切り出している。漫画力の高さは歴然。今回の収録作品の中では、後に世界中に広がる新種のウイルス病にかかってしまった人気アイドル・リンコと、彼女の病気の診断を下した医者の息子の姿を描いた「リンコ、ふたたび。」が一番好きかな。医者の息子が抱く、夢中になったアイドルに対する憧れという甘味と、その彼女を利用するような形になってしまった苦味、二つがないまぜになった複雑な味わいをつぶさに描写。あとリンコ側の気持ちも考えるといろいろ想いは巡り、深い余韻を残す。あとヨシコ&ゴローシリーズ「微睡」はやっぱり好感度が高い。これ読んでたら、またそのうち長編も描いて欲しいなあという気持ちがふつふつと沸き立ってきた。今のこの人だったらどんな物語、どんなキャラクターを作るのか興味をそそられるものがある。

【単行本】「OBRIGADO」 加藤伸吉 太田出版 A5 [bk1][Amzn]

 加藤伸吉としては初短編集。デビュー作まで含めて多彩な作品を収録しており、そのいずれもが個性的。まあ近作の短編はちとスカシ気味なところもあるのだが、愛あり浪漫ありな「ベビーシッターベイベー」や「友達に会いに」あたりを見ると、やっぱり大した才能の持ち主だなと思う。ただやはり「国民クイズ」「流浪青年シシオ」などの強烈な輝きをすでに目にして来ているので、この人にはもっとエモーショナルで、読む者をぶっ飛ばしてしまうような作品を期待してしまったりもする。もっと高く、もっと遠くへ、といった感じです。

▼収録作品
「トショカン」「ぶらりざんばら街」「ベビイシッターベイベー」「ダメなオヤジ」「ミドリに…」「スキ姫」「ブミギリ」「嗚呼!うげげ人生」「友達に会いに」

【雑誌】ガンダムエース 特別号 角川書店 B5平

 来月からの月刊化(毎月26日発売)を控えた特別号。この号を読んでの感想は「このオヤジたち元気だよなあ」ということ。「このオヤジたち」というのはもちろん安彦良和と富野由悠季のことを指している。とくに「オーバーマンキングゲイナー」が終わったばかりでいいたい放題状態な富野由悠季。エネルギッシュさは年齢を感じさせないものがあるが、刻まれた年輪はいい味を出している。モノ作りとしてのぶっとさが印象に残った。二人とも傑物でそう簡単には越えがたい壁ではあるが、でも個人的には若手クリエイターの中からも、この人たちクラスの人が出てくるという可能性は信じております。

 で、漫画のほう。今回は安彦良和「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」の「EXTRA SECTION」が掲載。ガルマの死からしばらく失脚していたシャアが、キシリアに見出されて復活するまでの空白期間を描いたお話。正直なところ、安彦良和がこういうアニメで語られなかった部分のストーリーを漫画にしてくるとは思ってなかったので驚いた。しかも中身もしっかりしてて面白い。個人的には、こんなにジムが強そうに思えたのは初めて。あとズゴックもカッコイイ。特別号ということで総集編みたいなお茶濁しで来るのかなと予想してたのだが、まさかこんなに魅力的な話を投入して来るとは思ってなかった。この人もやっぱり凄い。トニーたけざき「ガルマ様の優雅なる悩み 〜兄弟愛は時空を超えて〜」。この人のガンダムパロディは毎回うまい。それにしてもザビ家の人たちキャラ立ってるなあ。あと徳光康之「サラリーマン蔵武郎」も掲載。顔はザクレロだけど名前はグラブロなサラリーマンが、ジオン関係のステキなグッズを販売しに、あなたのおうちにやってくるというストーリー。

【雑誌】少年エース 5月号 角川書店 B5平

 特別付録でガンダムエースの出張版付き。これが付いてるからヒモがかかってて中身が確認できない〜とか書店の店頭で思った人も多いかもしれない。

 今号では作:乙一+画:大岩ケンヂ「GOTH」の最終話が掲載。背徳感と緊張感に満ちた美しい作風はなかなか印象的だった。大岩ケンヂもシャープな作画で健闘していると思う。なお終了に当たって、原作者の乙一が『「GOTH」コミック版によせて」という1ページの文章を寄せている。「雀ゴロ女子高生竜子」は、エース特濃Vol.1にも描いていた新人・ツガノガクの読切。麻雀の神に愛された女子高生竜子が、気楽なノリでヤクザたちを相手に回した麻雀勝負で大活躍というお話。まあ楽しいことは楽しいんだけど、「かわいい女子高生が麻雀で大暴れ」という単一アイデアだけで終わっちゃってるようにも思えて、もう一ヒネリ欲しい気がした。けっこう期待している人ではあるので、ちょっと欲目もあります。西川魯介「なつめブルダラーク!」。安定して面白い。ちょっとHなシーンを入れる呼吸が絶妙。

【雑誌】スーパージャンプ 4/9 No.8 集英社 B5中

 宮下あきら「暁!!男塾」。いろいろあった男W杯編も決着。最後はすべて「中国四千年」でなんでもオッケーってことにしちゃう豪快さが素晴らしいと思った。ところで巻末の作者コメントを見ると、先の話になるようだが宮下あきらにテレビ出演の話が来ているらしい。詳細は決まった段階で告知するとのこと。

【雑誌】週刊少年サンデー 4/9 No.17 小学館 B5平

 雷句誠「金色のガッシュ!!」はアニメ化を控えてまたテンションを上げてきた感じで、作画にもそれは表れている。そして小学館サイドも売りだそうと気合いを入れている感じが伺える。「次号は超ガッシュ号」とかいってるし。井上和郎「美鳥の日々」。美鳥が好きだったはずなんだけどセイジに興味の対象が移りつつある真行寺が再登場。面白いけど最後のアレは、いくらなんでもノンケな男はやらんと思う。藤田和日郎「からくりサーカス」。勝がかっこいい。でもなんか今後またお話が長引いちゃいそうな展開になってきてしまって、「それはちょっと」とも思った。現在単行本は27巻まで発売中。35巻まで行かないうちになんとか……とは思うのだが。

【雑誌】週刊少年マガジン 4/9 No.17 講談社 B5平

 「シュート!」と「3・3・7ビョーシ!!」がお休み。巻頭カラーでは作:藤沢とおる+画:関口太郎「ワイルドベースボーラーズ」が連載開始。少年院あがりの伝説の不良少年を筆頭としたチームが、甲子園を目指して奮闘していくという話になるっぽい。原作が藤沢とおるだけあって、藤沢テイストがバリバリ。手堅いっちゃ手堅いが、新鮮味はあんまり。

【雑誌】ビッグコミック 4/10 No.7 小学館 B5中

 作:小池一夫+画:森秀樹の新連載「花縄」が巻頭カラーでスタート。時は江戸時代で、元人気力士だったが今は人生に絶望して自暴自棄になっている男・花太郎が主人公。んーと、これ以上書くとネタバレになっちゃうかなあ。とりあえず第一話の重要人物として火付盗賊改方・長谷川平蔵が出てくるということくらいは書いておく。原作、作画ともに実績のある人たちだけに、お話はドッシリした読みごたえがあってなかなか面白くなりそう。それから業田良家「男の操」も新シリーズ連載。売れない演歌歌手の父ちゃんと、彼を有名にしようと努力する娘のいじましい姿を描いた家族ギャグといったところ。


3/25(火)……あ、ストロボいい?

▼本日は福島聡3冊と加藤伸吉1冊と、単行本がたいへんおいしそうなラインナップ。しかし雑誌も9冊購入しており(ビッグコミックは買い忘れ)、増刊系や、生モノ度が高い週刊誌もありということで、どれを読もうか迷った。たぶん単行本のほうが感想に対する需要が高いのではないかと思いつつも、雑誌があるときは雑誌優先というのが個人的なポリシー。なぜかといえば雑誌の話が好きだから〜。読むだけだったら別に全部読むのもできるけど、書くことまで考えるとさすがにそこまでの時間はない。今の文量だと1日で書けるのは多くて10アイテムくらいまでだが、今回はIKKIとアフタヌーンという重いモノもあるので、8〜9アイテム程度にしておきたい。とかいうことを考えた末、本日は結局雑誌だけにしちゃいました。でも単行本も読みたくてウズウズしてたりはするんだけど。なんだかんだいっても、面白い漫画っていっぱりありますな。

▼未読物
【単行本】「6番目の世界」 福島聡 エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「空飛ぶアオイ」 福島聡 エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「少年少女」2巻 福島聡 エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「OBRIGADO」 加藤伸吉 太田出版 A5 [bk1][Amzn]

【雑誌】月刊IKKI 5月号 小学館 B5平

 やっぱりこのくらいの軽さのほうが読みやすくていいです。

 まず今号では、今女性向け漫画でノリにノッてるジョージ浅倉の新連載「平凡ポンチ」が始まったのが目玉。全然売れない自主制作映画野郎・真島が、彼のファンであるという奇特な女子に出会い人生激変。とかはせずに、引きこもってこの女の子を映してばかりという、さらにダメダメな状態に突入。でも女の子のほうはそのままでは終わらせてくれなさそうで……という第一話。まずは出だしというところだが、ともかく登場人物たちのエネルギッシュさは伝わってきた。きっとこの人はここでも面白い作品を描くと思う。期待している。山本直樹「DOORS」も新連載。狭いアパートの一室で、薬かまして淫らな行為に耽る男一人と少女二人。だらーっと自堕落な雰囲気が山本直樹らしいが、さてここからどういうふうにお話を進めていくんだろうか。

 それから、さくらももこ「神のちから」は、単行本「神のちから」「永沢君」の新装版発売(4月30日)を記念しての新作。「神のちから」のシュールですっトボけた味わいはかなり好きだったが、その雰囲気は今回も健在。唐沢なをき「漫画家超残酷物語」は今回で最終回。しかも内容もいかにも最終回に似つかわしいモノ。今号はスピリッツ増刊の漫戦スピリッツのほうに移動するっぽい。なるほど、たしかにこのネタは漫戦スピリッツにはピッタリだ。漫戦スピリッツには日本橋ヨヲコ「G戦場ヘヴンズドア」みたいな、アツい漫画家漫画も一本あるといいかも。新人漫画家さんを焚き付けるのにグッドだと思う。

 野本明照の読切「チナミの風景」。この人は最近キレが良くなってきた。今回のお話もけっこう面白い。ちょっとヒネて学校をサボってばかりいる小学生・チナミが、家の真ん前の土地で、石を積み上げ奇妙な城のようなものを作るという作業を33年間も続けているおっさんを見つめたりちょっかいを出してみたりする。奇行の中に隠されたちょっといいお話。モチーフが魅力的だと思うし、料理の仕方も爽快感があって鮮やか。青山景「茶番劇」はIKKI新人賞イキマンの第1回受賞作。小生意気な小学生女子と、なぜか学校外では女装しているクラスの目立たない男子が、マンションの屋上でおままごとを繰り返すヘンな人間関係を築いていくお話。北道正幸や「ちゃぶ台ケンタ」のうめあたりを思わせる絵柄は整ってるし、お話としても楽しく読める。ただラストの処理はちと小賢しくてイマイチ。ただセンスの良さは感じるので今後もガシガシ描いてってほしい。アフタヌーンの四季賞系の作家さんは、編集部の方針だか本人の資質なんだか知らないけど受賞した後の「次」がなかなか出てこない人が多い。イキマンにしろ四季賞にしろ、「その次」を見せてくれる人がもっともっと出てくるといいなと思っている。

【雑誌】アフタヌーン 5月号 講談社 B5平

 今号は「寄生獣」のミギーのフィギュア付き。その分特別定価580円になってるのはイマイチだけど、雑誌の内容としてはけっこう面白くなってきている。熊倉隆敏「もっけ」などのシーズン増刊勢の加入、新連載攻勢でだいぶ雑誌内に風が吹いてきた。こうなってくるとマンネリ気味に思えていた連載陣の手堅さも生きてくる。まあこういう風は継続的に吹かせていかないと淀みはすぐ出てきちゃうので、引き続きテコ入れは続けていってほしい。で、このような状況になっているのはやっぱり直接的なライバル誌IKKIが出てきたのが良い刺激になってるんだろうなと思う。IKKIはイキがいいわりに雑然としてて雑誌ならではのカラーがいまいち見えないのに対し、アフタヌーンは雑誌全体としてのまとまりは感じる。今後も仲良く喧嘩して、お互いに向上していってくれるとうれしい。

 そんな今号のイチオシは、数度の読切掲載を経て連載化された、とよ田みのる「ラブロマ」。フツーの少年少女の学園ラブコメなんだけど、その恋愛っぷりにユーモアがたっぷり込められていてしかも微笑ましいのが良い。とくに率直すぎるくらい率直に、告白した相手の根岸さんに対して愛を示しまくる星野くんの振る舞いが楽しい。すごくほのぼの、いいお話。冬目景「ACONY」は隔月掲載の新連載。こちらは都会の中で、一つぽっかりと古臭いたたずまいを保っているアパートに越してきた少年が、そこのヘンな住人たちと織り成すコメディといった感じのお話。作者コメントによれば「”和”と”洋”は描いたので今度は”和洋折衷”」とのこと。なんか気楽に読める作品になりそう。「羊のうた」という安定株な作品が終わり、次の一手が冬目景の今後しばらくの作家生活の吉凶を分けるという気が個人的にはしている。最近の冬目景は以前ほどの輝きがなくなってきてはいるものの、まだ期待はしているし頑張っていただきたい。

 田丸浩史「ラブやん」。キューピッドとしての力量が問われ始めてしまったラブやんに、一つの恋が託される。なんか思いもよらぬ展開になってて面白かった。この人の作品については、日記漫画よりもフィクションのほうがやっぱ好きです。あと芦奈野ひとし「ヨコハマ買い出し紀行」では、とある黒砂糖がツボにハマってしまって涙ぽろぽろ状態のアルファさんが色っぽくて良かった。

【雑誌】ヤングチャンピオン 4/8 No.8 秋田書店 B5中

 丸尾末広「ハライソ〜笑う吸血鬼2〜」は2回め。今回主に描かれているのは、8年前に行方不明になった姉を探し続けている少年。一見普通そうなんだけど、姉を探し求める気持ちの煮詰まりっぷりがハンパでなくて、かなり常軌を逸しかけている。病んだ人物はこれからももりもり出てきそう。それが吸血鬼たちにどうからんでくるかが楽しみ。乾良彦「鬼道天外かなめ」は今号で第一部・完。最終ページに「乾良彦先生の次回作にご期待下さい」と書いてあるところを見ると、第二部はなさそう。

【雑誌】ヤングジャンプ増刊 漫革 5/1 VOLUME-32 集英社 B5中

 清野とおる「おもちゃのウギャギャ」が掲載。まあ要するに、オモチャが欲しくて欲しくて仕方がない少年が万引きを敢行し、見つかってボコボコにされるというお話。それだけなのにやけに濃い。キャラクターの表情とか。しかも教育に良い……かもしれない。江川達也「八月の鯉」は最終回。高校時代の先輩荒廃が大人になってから再会し、ということでちょっと良い感じに甘酸っぱいお話になるのかと思っていたら、なんかむちゃくちゃベタな展開に突入してブツリとエンド。まさにちぎって投げたという感じ。でもこういう身もふたもない展開は、実はちょっと好き。

【雑誌】BJ魂 5/1 No.12 集英社 B5中

 今号は「占い刑事」が載っていないのでちと物足りない。甲斐谷忍「太平天国演義」。洪秀全を襲う妖魔たちの正体が明らかに。途中まではミステリアスに、最後でズバッとタネを明かす胸のすく筋立てでコンスタントに面白い。とりあえず連載再開後初っぱなの肩慣らし的エピソードは終了。次回あたりから本格的な展開になっていきそう。

【雑誌】手塚治虫マガジン 5月号 KKベストセラーズ B5中

 1冊まるごと手塚治虫な雑誌が創刊。2003年4月7日のアトム誕生日を前にさまざまなイベント等が行われているけど、これもその一つ。今後毎月25日発売で発行されていくそうだ。まず第1号は、「ブラック・ジャック」「「鉄腕アトム」「どろろ」からのより抜き、それから短編の「雨ふり小僧」「野郎と断崖」「紙の砦」が掲載。で、読んでみた感想だけどやっぱり面白い。というか予想以上に面白かった。たった1冊だけ読んだだけでも、手塚治虫のおっそろしいほどの多ジャンルぶり、ストーリーテラーとしての太さが伝わってくる。戦時中のとある漫画少年の生き様を描いた自伝的な作品である「紙の砦」あたりも感動させられるものがあるし、「ブラック・ジャック」や「鉄腕アトム」は今見てもテーマ的に深いなーと思う。

 まあ正直なところ、個人的には「鉄腕アトム」よりもほかの手塚作品のほうが好きなのであまりアトムでお祭り騒ぎしてもなあという気はするんだけど、とりあえず手塚作品を今あえて手に取らせるだけの動機づけには確実になると思う。誰でも名前は知っているけど意外と読まれていないのが手塚作品、という気もするのでこれを機会にいろいろとチャレンジする人が出てくるといいと思う。ていうか自分自身も未読作品はけっこうあるので、ブームの尻馬に乗らせていただこうかななんてことを考えている。

【雑誌】漫画アクション 4/8 No.14 双葉社 B5中

 わたべ淳「ライジング」。かなり熱血してて面白い。実業団女子ソフトボールというネタは非常に地味だけど、その中での人間模様を丁寧に描いている。あとOLをやりながら……という部分にもちゃんと触れているのが、物語に厚みを持たせているような気がする。

【雑誌】漫画サンデー 4/8 No.13 実業之日本社 B5中

 女子球技モノではこちらもアツい。作:田中誠一+画:千葉きよかず「剛球少女」。こちらは高校野球。死力を尽くした強豪校との対戦もクライマックス。一球ごとの駆け引きの妙が伝わってくる展開は読みごたえあり。笠太郎「ふくすけ」が最終回。ここのところの悪質な料理学校との対決編はわりと盛り上がっていたので、ちょっとあっけなかった感がある。何より最後は、スピード勝負じゃなくて味勝負にしてほしかったところ。

【雑誌】コミックピンキィ 5月号 オークラ出版 B5中

 ダーティ・松本による私説エロマンガ激闘史「エロ魂!」がいつも面白い。今回はエロ漫画雑誌黎明期を彩った有名な名物編集者たちが出て来はじめた。役者がどんどん揃いつつあって面白い。連載も今回で14回め。そろそろ単行本にならんもんだろうか。舞登志郎「俺は男だ!」。可愛い中学1年生の少年・ケンジが性に目覚め始めてしまい、しかもその対象が自分であるらしいと知ってしまった姉・弘美はドキドキ……という展開。弟のほうはショタっぽくて可愛いのはもちろんだけど、これまで大人のおねーさんという感じだった弘美が初々しい様子を見せてきている様子が面白い。


3/24(月)……A団地勝てっ

▼実は先週は月曜から木曜まで会社に泊まっていて、その後金曜から日曜は家にこもっていて外出しなかったので気がつかなかったのだが、そういえば3月19日から営団地下鉄半蔵門線の水天宮前〜押上間が開業していたのだった。ミーの乗換駅は水天宮前の一つ前の三越前。そのためこれまで寝過ごしても一駅で済んでいたので被害は少なかったのだが、これからはそうもいかなくなった。あと始発駅が遠くなったので、帰りの電車で座れる確率が低くなった。困る。誰かがなんとかしてくれるといいと思う。できればタダで。

【雑誌】近代麻雀ゴールド 5月号 竹書房 B5中

 朔ユキ蔵「ヌきまくり」が掲載。なんか最近不調な麻雀野郎タカちゃんが、その原因は満ち足りたセックスライフにありと指摘され、沸き上がる性欲と格闘して四苦八苦というドタバタギャグ。「つゆダク」同様、軽〜くエロをまぶしてきれいにまとめている。でもこの人にはやっぱり手堅さよりもぶっ飛びを期待しちゃうところではあるので、少し物足りないような気も。作:安田潤司+画:秋重学「東京最終回」。高校生デジタル雀士であるところの主人公・ヒロが、最強位戦の決勝戦で勝負を諦めかけたときに、今までとは次元の違う境地に到達する。というわけで2回めにしてだいぶお話は盛り上がって参りました。けっこういろいろと面白いアングルでの描写とかあったりして、麻雀漫画に必須のハッタリがよく利いている。

【雑誌】ヤングキング 4/21 No.8 少年画報社 B5中

 小野寺浩二「それいけ!!ぼくらの団長ちゃん」がなんと巻頭カラー。しかもそのカラーの見開きでブルマー少女6連発。今回は「日本最後のブルマー着用高校」が、ブルマー好きの男達の声援をバックに、漢華高校のバレー部を苦しめるというお話。実のところ個人的にはブルマーはいまいちグッと来ないのだが、まあなんとなく気持ちは分からないでもないので楽しく読める。ところで個人的にこの作品は、小野寺浩二の著作の中でもけっこう好きな部類。別にオタネタがどうのこうのでなく、小野寺浩二の一つの持ち味である少年誌的なドタバタコメディテイストが遺憾なく発揮されている点を好ましく思っていたりする。大石まさる「りんりんDIY」。夏真っ盛り!少なくとも作品内では。今回は大石まさるが水着ギャルをとにかく描きたかった。そういう回。本作の女の子が勢ぞろいで、いちいちグラビアアイドル的なポーズをとっているのがなんかおかしい。

 後藤イチオ「カリン娘5(カリンコファイブ)」。ドタバタ楽しい読切だった。純情で真面目な娘さんである若菜ちゃん一筋な男・耕一が、彼女の実家に挨拶に行く。ところがそこには依怙地なお婆さんと、若菜そっくりで性格はむちゃくちゃな4人のお姉さんがいて、なんかもう事態はどんどんこんがらがっていくのだった、というお話。瑞々しい絵でサービスシーンもしっかりあって、賑やかでよろしいなと思った。吉野ケイイチ「チキンデイズ」は、ラブコメ度が高くてけっこう楽しみにしている作品。最近のラブコメの中では微笑まし度がけっこう高いほうだと思うんだけど……。垢抜けてなくて安易にH方向に走ったりしないところとか好み。これまでは隔号連載だったが、次号からは毎号連載となるそうだ。そのうち単行本にもなるかな。

【雑誌】ヤングマガジン 4/7 No.17 講談社 B5中

 福本伸行「賭博破戒録カイジ」。この人の描くイカサマは、大がかりなわりに意外とタネが貧乏くさいのが面白い。今回のも妙に生活感があって良かった。安達哲「バカ姉弟」は新展開だそうな。幼稚園編が始まったような始まってないような。でもどんな状況になろうと、バカ姉弟のマイペースぶりは変わらないだろうと思われる。何着てもかわいいですな、この二人は。

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 4/7 No.17 小学館 B5中

 山本英夫「ホムンクルス」は2回め。車の中で生活を続けるホームレスの主人公に怪しい誘いが。たぶんこれをきっかけに、物語はどんどん動いて行くんだろう。不穏なムードがぷんぷん漂っていて先が気になるところ。コージィ城倉「ティーンズブルース」。最近はホスト漫画が増えているけれども、その中でホストを主要な役にしながらそれにハマっていく少女の側の視点から描くというのは、男性誌としては珍しい。んでもって主人公の少女がどんどん薄汚れていくって感じでたいへんイヤ〜な展開なのだが、そこはコージィ城倉の読者を物語に引き込む独自の語り口によって面白く読ませてしまう。いやまあすごくイヤなんで読めないという人もけっこういそうな気はするけれども。最近のビッグコミックスピリッツ濃厚激クド路線の一翼を担う一作。

【雑誌】週刊少年ジャンプ 4/7 No.17 集英社 B5平

 読切、郷田こうや「野球狂師の詩」。天才教師と噂される男が荒れ果てた学園にやってきたと思ったら変態教師だった!というところから始まるギャグ漫画。奇を衒った漫画ではありその心意気は良いのだが、爆笑するかといったらそんなでもない。でも作画はけっこうきっちりまとまってるし全体としての出来は悪くない。ギャグで勝負というより、ドタバタコメディで行くぜと割り切るとけっこうコンスタントに作品描いていけそうな人という感じがした。河下水希「いちご100%」。今回は唯ちゃんがけっこうかわいいなというのが、実は一番印象に残った。序盤は東城さんで、終盤は西野さんという構成なのでお話的な重要度は低いんだけど。それはそうと今回のサブタイトルの「DASH淳平!!」ってのは、やっぱり「ダッシュ勝平」を意識してたりするんですかね。鈴木央「ウルトラレッド」。着実に面白くなってきているような。あんまり流派やスタイルにとらわれない戦いっぷりは、見ててけっこうワクワクする。

【雑誌】LaLa 5月号 白泉社 B5平

 森生まさみが「おまけの小林クン」と読切「ミモザでサラダ」の2本立て。「おまけの小林クン」もたかちと真央子の昔の話を描いた番外編なんで、実質的には読切2本に近い。「ミモザでサラダ」のほうは、大金持ちでデッカいお屋敷に住む資産家の孫娘に、祖父の最後の贈り物として人間そっくりのロボットであるというカイルがボディーガードとして贈られるところからお話がスタート。明るく優しいお嬢さまであるミモザと、クールな雰囲気を漂わせたカイルの掛け合いが楽しい作品。ときどきカイルが見せる大胆な振る舞いもトキメキ感高し。


3/23(日)……名機有償化

▼2003年4月購入予定。リンク先はbk1の新刊予約コーナー。3月に注目作が多かった分、4月は若干少ないかなという印象。個人的な注目作は高橋ツトム「爆音列島」、須田信太郎「ウルティモ・スーパースター」あたり。

4/3 「ORANGE」8巻 能田達規 秋田書店
4/3 「金魚屋古書店出納帳」1巻 芳崎せいむ 少年画報社
4/4 「賭博破戒録カイジ」9巻 福本伸行 講談社
4/4 「彼岸島」1巻 松本光司 講談社
4/4 「彼岸島」2巻 松本光司 講談社
4/4 「いちご100%」4巻 河下水希 集英社
4/4 「どんまい!」4巻 作:矢島正雄+画:若狭たけし 集英社
4/5 「なんてっ探偵アイドル」12巻 北崎拓 小学館
4/5 「ボクと彼女の秘密」 矢凪まさし 大都社
4/8 「マニマニ」 宇仁田ゆみ 祥伝社
4/9 「春よ、来い」10巻 咲香里 講談社
4/9 「全日本妹選手権!!」4巻 堂高しげる 講談社
4/9 「ワイルドリーガー」8巻 渡辺保裕 新潮社
4/10 「恋愛ジャンキー」10巻 葉月京 秋田書店
4/10 「ササメケ」3巻 ゴツボ×リュウジ 角川書店
4/12 「らって好きなんらもん」 EB110SS メディアックス
4/15 「まゆマテリアル」2巻 高岡基文 ヒット出版社
4/17 「制服ぬいだら♪」1巻 渡辺航 秋田書店
4/18 「トーキョー・トライブ」 井上三太 集英社
4/18 「警視総監アサミ」9巻 作:近藤雅之+画:有賀照人 集英社
4/18 「HELLS ANGELS」1巻 ヒロモト森一 集英社
4/18 「金色のガッシュ!!」10巻 雷句誠 小学館
4/18 「美鳥の日々」2巻 井上和郎 小学館
4/18 「お姉浪漫」 KASHIみちのく 司書房
4/19 「吼えろペン」7巻 島本和彦 小学館
4/20 「LOVE HOUSE」 橋本ライカ 河出書房新社
4/21 「未来の恋人たち」 犬上すくね 大都社
4/21 「ムサシマル作品集」 ムサシマル 三和出版
4/22 「ブラックジャックによろしく」5巻 佐藤秀峰 講談社
4/22 「浅倉家騒動記」1巻 桝田道也 講談社
4/23 「爆音列島」1巻 高橋ツトム 講談社
4/23 「神戸在住」5巻 木村紺 講談社
4/24 「示談交渉人M」 佐藤秀峰 竹書房
4/25 「青 オールー」2巻 羽生生純 エンターブレイン
4/25 「ウルティモ・スーパースター」1巻 須田信太郎 エンターブレイン
4/25 「こどものあそび」 南Q太 祥伝社
4/25 「ジンクホワイト」3巻 小泉真理 少年画報社
4/25 「コペルニクスの呼吸」2巻 中村明日美子 太田出版
4/25 「パレポリ」 古屋兎丸 太田出版
4/25 「塾娘」 小暮マリコ ジェーシー出版
4/25 「いばらの王」1巻 岩原裕二 エンターブレイン
4/25 「鮮紅街」 中島あつき エンターブレイン
4/25 「踊る島の昼と夜」 深谷陽 エンターブレイン
4/26 「かてきょ」 木静謙二 メディアックス
4/27 「完全版 野望の王国」9巻 作:雁屋哲+画:由起賢二 日本文芸社
4/28 「マウス」10巻 作:あかほりさとる+画:板場広志 白泉社
4/30 「龍」33巻 村上もとか 小学館
4/30 「高校アフロ田中」5巻 のりつけ雅春 小学館
4/30 「ナイトクレイバー竜一」2巻 稲光伸二 小学館
4/30 「SS」8巻 東本昌平 小学館
4/30 「MOON LIGHT MILE」6巻 太田垣康男 小学館
4/30 「ファミリーペットSUNちゃん!」 岡崎二郎 小学館
4/30 「黄金のラフ 草太のスタンス」9巻 なかいま強 小学館
4/下 「Pegimin H」 森山塔 フランス書院

【単行本】「α アルファ」上下巻 くらもちふさこ 集英社 A5 [bk1][Amzn:上巻/下巻

 いやあ、これは参った。面白いですわ。本当によく出来てる。この作品は「α」という短編連作シリーズ全6話と、男女4人の役者によるドラマ「+α」全6話が、1話ずつ交互に掲載されるという構成になっている。「α」のほうはファンタジーあり、現代劇ありのそれぞれ独立した完成度の高い短編としても読めるのだが、「+α」では「α」の内容が4人の役者たちが演ずる連作テレビドラマの内容として扱われる。

 個人的には雑誌(コーラス)掲載時はいまいちピンと来てなかった。非常に申し訳ないのだが言い訳したい点もあって、実はこの作品、まず「α」6作が連続して掲載され、その後しばらく置いてから「+α」6作が掲載される……という形で連載されていたからだ。雑誌で読む場合は、まず「α」のほうを完全に独立した短編シリーズとして楽しみ、「+α」を役者青年たちの青春ストーリーを楽しむという形だった。それが単行本で順番を入れ替えることによって、「点」であった劇中劇が、「線」である役者青年たちのドラマによってつながれていき、雑誌で読んだときより点も線も鮮やかに目に飛び込んで来る。この物凄い技巧の冴えには正直感動した。もちろん単行本だけ読んでもむちゃくちゃ面白いのだが、雑誌で読んでいた人にとっては感慨がひとしおであることは疑いない。

 個人的には、単行本で読む場合はまず「α」だけまとめて読み、その後「α」「+α」を通読していく……という2回読みをするのがオススメ。「α」だけ拾って読むと冴えた短編であり、次に「+α」を合わせて読んでいくと劇中劇の回数が進むにつれ、主役格の三神妃子の演技力の向上、精神面での成長といった側面も見えてくる。つまり「+α」を読むことによって、短編であった「α」の内容にさらに別の側面も加わって深みが出てくるのだ。漫画的な技巧も素晴らしくて、作画・コマ割りともに洗練されている上に新しい。大したもんです。個人的には、とくに週刊の男性向け漫画は短期間で才能を完全燃焼というイメージが強いのに対し、少女漫画は長いことかけて作風を洗練させ磨いていく……という印象がある。実際に少女漫画でスゲエなあと心を揺り動かされるのはむしろベテラン作家のほうが多い。そしてこの作品についてもベテランの底力というものを強く感じた。

【単行本】「チキタ★GUGU」4巻 TONO 朝日ソノラマ A5 [bk1][Amzn]

 ここまでのお話の中で、最もハードな展開を見せるあたり。チキタたちに好意を示すようになっていたニッケルとの物語の顛末、そして人食い妖怪だったラー・ラム・デラルの抱いた気持ち……と続くあたりは胸がしめつけられる。上品でライトな絵柄ながら、ズンと胸に迫る読みごたえがある。美しく洗練された作風に、凄味も出てきた。今後のクリップがらみの物語も凄いことになりそうですごく楽しみ。

【単行本】「迷宮書架」 ひらのあゆ 雑草社 A5 [bk1][Amzn]

 活字倶楽部のレビューコーナー・扉ページに掲載された4コマ漫画を集めたモノ。実はぶっちゃけた話、4コマ漫画はまとめて読むのがけっこう面倒なのであまり得意なジャンルではないんだけど、これは読んでみたら面白かった。掲載誌が掲載誌だけに、小説などの活字本をネタにしているのだが、ネタのヒネり方がうまい。本好きなら納得できるし、意外と痛いところをチクッと突いてたり、本を楽しんでいる人ならではの視点が感じられて面白く読めた。とくに純文学やSF、ミステリについてとか、ジャンルについての言及は、楽しい4コマ仕立てなんだけど何気に鋭い。「純文学とは何ぞや?」という問いに対する「実は『その他』なのでは?」という言葉には妙に納得。

【単行本】「ファンシージゴロペル」1巻 水野純子 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]

 カワイイ女の子型の宇宙人が住んでいる桃色惑星「姫コトブキ」。その中で一人だけもこもこ毛むくじゃらでファンシーなぬいぐるみのような形をしたペルが、自分の出生の秘密を聞いて絶望し、地球へ旅立つ。彼はそこで理想の女性を求めて、あちらこちらをさまよう……という物語。ペルや出てくる女の子たちのキュートな外見とは裏腹に、物語はけっこうシリアス。愛を探して幾千里……というお話になっていてけっこう読みごたえがある。基本的には出だしと終わりさえしっかりしていれば、途中の展開はいかようにも作れるタイプの作品だと思うので、意外と長いお話になる可能性もあるかも。

【単行本】「クロ號」5巻 杉作 講談社 A5 [bk1][Amzn]

 連載開始当初からすでに超安定株だったが、それは5巻まで来ても変わらず。まあ実際の猫たちがこういうふうに感じながら暮らしているかは分からないけど、納得はできるし、ときに見せるつらめな展開もリアリティはある。絵に独自の味があるし、そのうち動物モノ以外でもなんか連載やってみてほしい。

【単行本】「軍鶏」18巻 作:橋本以蔵+画:たなか亜希夫 双葉社 B6 [bk1][Amzn]

 トーマの底知れない才能が、数々の格闘家を引き寄せていく第18巻。華やかな陽の当たる道を歩き続けるトーマが、その対極にある暗黒の住人・リョウに魅入られているというのは必然なのかもしれない。リョウの中国編が終わっちゃってどうなるのかなと思っていたが、第二の主人公とでもいうべきトーマの登場で物語が引き締まってきた感がある。

【雑誌】純愛果実 5月号 光彩書房 A5中

 巻頭カラー、ゼロの者「チェリーボム」は、アダルトビデオショップの店員と少女のお話。一度っきりのつもりでやったはずの二人だったが、どうにも肉体の相性が抜群だったようで、少女が彼とのセックスを求めて始終つきまとってくるようになる。そして男のほうにもその熱が伝染していく……という感じのお話。この人の描く作品はいつもそうだけど、熱に浮かされたように身体を求め合う二人の様子が濃密に描かれていてたいへんエロい。あとぴったりひっつきまくるラブ風味も濃厚で、こーんな風にできたらいいなあと憧れるものが。友永楓人はしばらく休んでいたけど復帰。「となりの水菜さん」。子供を生んだばっかりの色っぽい人妻の水菜さんが、変態的な趣味の持ち主であるオットによってエロすぎる水着を着せられて、室内プールに連れていかれ……という感じ。いつもながらに乳も汁も盛大。


3/22(土)……禁男子用錠

▼「オーバーマンキングゲイナー」最終話見ました。いや〜面白かった。小難しいことはどうでもいいや。とにかく最後までアクションも笑いもふんだんに盛り込んで、これまでの勢いそのままに突っ走ってくれてて見てて気持ち良かった。こういうスカッと楽しんで「ありがとうございましたー」って感じで終わる作品はやっぱり大好き。まさにお祭りみたいな作品だった。ええもん見せてもらいました。スタッフの皆さんに最敬礼。

▼あと「THE ビッグオー」は第25話で、こちらも次回で最終回。ここまでずっとクオリティが高くて楽しんで見てはいたんだけど、なんだかメタな感じの分からんちんなお話になっちゃってきているのはどうなんだろうという気が少し。正直2ndシーズンの内容は、2時間程度(できれば劇場版)にまとめちゃってTVシリーズは1話完結タイプで行ったほうが途中から見た人も入りやすいので良かったかな……という気はするんだけど。まあそこまでの予算も出ないだろうし仕方ないかな。そんなわけでここしばらくは、漫画だけじゃなくアニメもだいぶ見るようになってきました。

▼bk1の4月の新刊予約がスタート。購入リストは現在作成中なので23日の日記で。

▼未読物
【単行本】「チキタ★GUGU」4巻 TONO 朝日ソノラマ A5 [bk1][Amzn]
【単行本】「BURAIKEN」 唐沢なをき エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「ファンシージゴロペル」1巻 水野純子 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]

【単行本】「トモルの星」 永野のりこ 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 地球の平和を守るんだかなんだかな「トモシビ少年トモルくん」が、ギャルギャルしい女の子すてらちゃんをストーキング。いつもながらの電波系メガネくんもの。騒がしくて楽しく読める作品ではある。でもいまいち乗り切れなかった感もあり。あまりに永野のりこパターンすぎちゃったといのはあるかもしれない。強いていうならもっと、正視できないくらいこっぱずかしいお話にしちゃってもよかったような気が。

【単行本】「もっけ」2巻 熊倉隆敏 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 丁寧に作られた妖怪譚。女の子二人が可愛いというのもあるんだけど、風景が美しく描けていることもあって、自然の中に存在する怪異という存在が受け容れやすい。展開自体は地味といってもよく、怪奇を描きつつ奇を衒わないところが見てて心地よい。順調に推移してます。

【単行本】「サトラレ」4巻 佐藤マコト 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 安定して面白いですなあ。この巻ではサトラレの初恋、デート、育児と、わりと男女関係がらみのお話が多め。いずれも避けて通れないし、答えが一つでないモノであるだけに、シミュレーションのし甲斐はいろいろありそうだ。あと佐藤マコトの描く女性はそれぞれ可愛いなーと思った。

【単行本】「蒼天航路」27巻 王欣太 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 この巻から馬超の乱編に突入。無邪気に知略をめぐらしまくるカクが見てて楽しい。あと前半は華陀編。唐突な感じではあったけど、曹操の政の特徴的な部分が出たエピソードでもある。

【単行本】「史上最強の弟子ケンイチ」4巻 松江名俊 小学館 新書判 [bk1][Amzn]

 安定して面白いですな。激しい特訓特訓で来ているけれども日常シーンは呑気で楽しい。女の子も適度に出てくるから華もあるし。前作「戦え!!梁山泊 史上最強の弟子」では、不良集団・ラグナレク自体はそんなに大した集団でもなかったけど、そこらへんが終わった後どうするかが一つ課題でしょうな。

【単行本】「焼きたて!!ジャぱん」6巻 橋口たかし 小学館 新書判 [bk1][Amzn]

 ねぱんで待つ……というわけで、ジャぱんのあまりのうまさに衝撃を受けた黒柳の昇天シーンから始まる第6巻。この巻も奇人変人大集合だけど、比較的大人しく感じるのはGMのリアクションのせいだろうか。この程度では物足りなく思ってしまったりする。もう私たちはあの黒柳(とかデーブとか)のリアクションを知ってしまった。さらば優しき日々よ。もう戻れない。もう帰れない。太陽の手・ジャぱん。

【単行本】「ネコの王」4巻 小野敏洋 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 いいですなあ。パンチラ、裸てんこもりでお気楽なようでいながら、底のほうではシリアスなテーマも進行させる。甘味と苦みをいい具合に共存させているので、どちらの味もクッキリ際立つ。でまあそれはともかくぱんつぱんつおしりおしりおっぱいおっぱい。古麻子ちゃん猫女神さまたちに加えて、今度はエルフのコレットちゃんも加わって事態はますますドタバタ。楽しい楽しい。

【単行本】「家族の禁断肖像」 海明寺裕 桜桃書房 A5 [Amzn]

 雑誌はなくなっても単行本はちゃんと出してくれるあたり偉いです、桜桃書房。この単行本ではお得意のわんこ系の作品を中心として、短編を8本収録。なんてことなかったはずの日常を非日常が侵食していき、最後にはそれが完全に逆転してしまう、その過程をねちっこく描く手際はやっぱりうまい。収録作品の中では、自分がご主人様に調教されるというエロ妄想を綴ったホームページを作っていた女子高生が、弟にそれを発見されて本当に調教されていく「おねえちゃんのひみつ日記」あたりが個人的には好み。作中でIP Messengerとか使っているのがいかにもそれらしいとか、そういう細かディティールに興味を惹かれるというのもある。

 最近のエロ漫画雑誌は、ストレートなエロか萌えの二者択一という感じであまりヘンな作品は載らなくなってきているという印象があるんだけど、こういうちょっと変わった作品を描ける場も残しておいてほしいもんです。個人的には、この人ならではの妄想力、想像力の風呂敷を広げることのできる長編作品がまた読みたいところなんだけど。非エロでもいいかも。

【単行本】「あたしたちのこと」 ほりほねさいぞう 東京三世社 A5 [Amzn]

 「あしたもおいでよ」に収録された「TV OZシリーズ」と同一の世界で展開される「OZシリーズII」を中心とした単行本。「オズの魔法使い」を演じる劇団に集う少女たちの、どんどんエスカレートしていく性戯を描いていく。まあスカトロくらいは多少あるものの、ほりほねさいぞうにしたらわりと軽いほう。ちっちゃい女の子がみんな可愛くて、滑らかな感触のキュートな絵柄が威力を発揮している。みんな無邪気にエッチを楽しんでるって感じが良いですな。

 そのほかでは「おっきいね」「きょうはたのしい」「フロルとタダ」の短編3本が同時収録。この3本の中では「おっきいね」がいいと思う。身体が巨大になってしまう病気になってしまった少女と、彼女の世話を焼くお兄ちゃんのラブラブストーリー。といっても状況はかなり異常であったりするわけだけど。この人の作品は度肝を抜くようなことをしばしばやるけど、それでも核となる部分には愛が色濃く存在するのがいいです。

【雑誌】ドルフィン 5月号 司書房 B5中

 くどうひさし「うそつき四泊」は、めがねっ娘の女の子が一人暮らしのための部屋を探す間、男の先輩の家に泊まっちゃう。もちろん友達の家に泊まるっていってきたの、と親には伝えてあるってわけで、まあそうなると当然する。お風呂あがりに先輩の男モノのシャツを借りて……といういかにもなことまで。スッキリした絵柄は相変わらず見てて気持ち良くて、ベタなネタが嫌味にならず生きている。でもラストはちとほろ苦い。吉田蛇作「人妻ハメ」。自宅に会社の同僚&上司3人を連れてきた旦那さんが、仕事上のミスのもみ消し料として妻を差し出す。まあタイトルそのまんまな内容。夫の見ている前で……というネタはベタだけどやっぱ好き。あと、今号はみやびつづるも掲載されているけど「艶母」第一話の再録。


3/21(金)……鹿番長ズルい歩

【単行本】「武富智短編集 A SCENE」 武富智 集英社 A5 [bk1][Amzn]

【単行本】「武富智短編集 B SCENE」 武富智 集英社 A5 [bk1][Amzn]

 いや〜、やっと出ましたな。武富智としては初の短編集。初連載だった「キャラメラ」のほうは出来としてはイマイチだったけど、短編はどれも光ってる。甘く切なくほろ苦く、でも爽快感のあるお話が、キレのある端整な絵と絶妙にマッチ。この中ではとくに、いつも一緒にいた幼なじみ3人組のそれぞれの成長を描く「3ペイジ」、病弱な少年と寂しい少女の一時の心の触れ合いを鮮やかに描いた「ピノキオの♪と」あたりが個人的には強く印象に残っている。あとこの人の名前を初めて意識することになった「若奥様のオナ日記」も。まあなんといっても美しい漫画が好きな人で、この絵が嫌いな人はあんまりいないんじゃないかなーと思わせる絵。それから少年少女の繊細な心を鮮やかに描き出す、叙情的なストーリー回しも素晴らしい。ほとんどの作品が、雑誌初出時と比べると大きく手が入れられていて、中にはタッチが相当変わっちゃった作品もある。個人的には旧版の作画もかなり好きなのだが、まずとりあえずは、単行本になって多くの人の目に触れる機会が増えたことを喜びたい。

▼「A SCENE」収録作品
「WAFFLE BUNNY」、「嬉悔しい影ノ介」、「3ペイジ」前後編、「アイニーデュ」、「あきらとめぐり会って」
▼「B SCENE」収録作品
「いつか忘れてしまうけど」、「若奥様のオナ日記」、「ひととき全て」、「bazaar」、「夜の朝顔」、「ピノキオの♪と」

【単行本】「Big Hearts ジョーのいない時代に生まれて」1〜2巻 林明輝 講談社 B6 [bk1][Amzn:1巻/2巻

 現在、モーニングで連載中のモーニング漫画。広告代理店の営業マンだった主人公・保谷栄一が、30億のかかったプレゼンの最中に緊張の余り嘔吐するという失態を犯してしまったことを契機に脱サラ。プロボクサーとして生きていくという物語。この作品を読んでまず感じるのは、絵が非常に地味であるということ。デッサンはすごくしっかりしてるんだけど乾いた描線はパッと見目立たない。でもコレが面白いんですな。キャラクターの心情描写がしっかりしているし、地味な画風がかえって「普通の人間だった主人公が、着々と努力を積み重ねて強くなっていく」というストーリーによくマッチしている。スポーツ漫画のわりに人間離れしたところがない。大人の常識の範囲内であるところに、等身大な魅力がある。

 あと人情の機微の描き方もシッカリしている。作者自身、新人とはいえ40歳で広告代理店を退職したという経験のある人らしいのだが、なるほどそれも頷ける。人生経験がしっかり作品の中に生きてて、それぞれのキャラに深みがある。あと主人公の栄一の試合と、その恋人的な存在である女性歌手の売り込みの様子を同時並行で進行させて見せたりとか、構成の妙も光っている。今後の展開も楽しみ。

【単行本】「私家版鳥類図譜」 諸星大二郎 講談社 A5 [bk1][Amzn]

 鳥をモチーフに、文字通り想像力の翼を自由にはためかせた連作を集めた単行本。例えば長い間、外界を見ることなく地下の廃墟の中で暮らしていた人々が、行商人が持ち込んだ鳥を初めて見てさまざまな想像を巡らせる「鳥を売る人」。例えば「虚空」と呼ばれる空間にそびえ立つ無限に続くかと思われる塔の世界の中で暮らす人々と、外の世界に魅入られてしまった青年の物語「塔に飛ぶ鳥」。いずれもスケールの大きい舞台設定、想像力の自由さ、そこに封じ込められたロマンにしびれる想い。さすが諸星大二郎、センス・オブ・ワンダーばりばりですなあと感心する1冊。

【単行本】「緑の黙示録」 岡崎二郎 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 木と話すことができる特殊能力を持った少女が、その能力が縁でさまざまな事件に遭遇していくという物語。岡崎二郎としては初めてアフタヌーンで掲載された作品だが、内容はいつも通りの岡崎節。植物学の知識をさまざまに織り込みながら、ミステリー仕立てのお話を組み立てている。

 この作品における植物についての描写でキーとなっているのが、「植物も動物たちと同じように、なんらかの手段でお互いに意志を伝え合っているのではないか」という命題。そしてその伝達力により、人間たちともさまざまに関わりを持ってくる。動物を使って自然の素晴らしさみたいなものを描く作品はけっこうあるが、植物についてこういう、一歩踏み込んだアイデアを持ち込んだ作品はなかなか珍しい。安易に「植物! エコロジイ〜」ってな感じで安易に結論づけるような一発ネタで終わることはなく、回数を重ねるにつれて内容も深めてきている。しかもお話としてもちゃんと読ませるものにまとめ上げているあたり、その腕前にはさすがとうならざるを得ない。「1巻」」という表示がないのでこれで終わっちゃうかもしれないけど、植物というテーマはこれからも掘り下げていってくれるとうれしい。

【単行本】「ジャイアント」3巻 山田芳裕 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 アメリカに渡ってから、トントン拍子で野球生活を送ってきた巨峰に深刻なスランプが訪れる巻。しかもその原因を作ったのが、大学時代のチームメートであった神宮寺。というわけで巨峰の力強いプレーによるカタルシスはあんまりない巻だが、その分神宮寺がイイ。アメリカであろうが日本であろうが、勝利を貪欲に追求し火の玉のようなプレーを続ける姿は痛快至極。個性的ないいサブキャラだと思う。

【単行本】「金色のガッシュ!!」9巻 雷句誠 小学館 新書判 [bk1][Amzn]

 小学館漫画賞&アニメ化と、ビッグな朗報が立て続けに。小学館漫画賞は、これまでの内容からいって当然かなと思う。ただ全体としてはだいぶ落ち着いてきちゃってる、まあぶっちゃけテンションが下がってきている感もある。この前、全巻読み返してみたんだけど、やっぱり1〜3巻くらいのテンションは物凄いものがあった。とくに周囲に対して心を閉ざしていた清麿が、ガッシュとの出会いによって成長していくさま、そしてアツいセリフの数々は今読んでもボロボロ泣けるアツさがあった。というわけでこの漫画賞&アニメ化をきっかけに、またタガを締め直してガンガン面白くしていってほしいところ。いや、今でも水準以上には面白いんですけどね。

【単行本】「からくりサーカス」27巻 藤田和日郎 小学館 新書判 [bk1][Amzn]

 この巻でもいろいろと、今まで張ってきた伏線についての種明かしが行われていく。「ちゃんと説明が行われる」という快感を、すごく味わってます。少年漫画というのはなんだかんだいって明解であることが強く求められるジャンルだと思うので、これは気持ちがいい。あとこの巻では大ネタも仕込まれていてとても面白い。ちゃんとモノを考えて描いている姿勢が窺えて、読んでいるほうとしても手応え十分。

【単行本】「泡姫伝」 あわじひめじ 司書房 A5 [Amzn]

 元気が良く、かつ和む味わいのある絵柄が気になっていたあわじひめじの最新刊。このところ線のほうもきれいになっててうまくなっていると思う。それ以上になんか作品の内容がこのところずいぶん悪ノリしてて面白い。というかもう凄い勢いでアニパロ、ゲームパロのネタを入れて来ている。あるときは拉麺男、あるときは鉄人、あるときはプロゴルファー猿……とまあいろいろやりまくり。そんでもって明るく楽しくHを展開。といってもオタクくさいというよりも、コミカルで勢いのある楽しさを満喫……という感じになることが多い。それが最も強く発揮されているのは「ピクチン」かなあ。霊のミュージックの替え歌に乗って、チンコ方をした生物ピクチンたちと、彼らが住む星に不時着した姉妹がまぐわる様子は非常にユーモラス。あと「ちんぽこハメ太郎」も笑った。もうタイトル通りなベタな内容なんだけど、ハメ太郎にやられちゃう4匹が何かに似ていて可愛い。

 あと余談になるけど、作者あとがきに「ネットで批評して下さったらしい『OHP』というサイト」という記述があったりしてすごくびっくり。


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