2003年4月下旬


4/30(水)……人魚牛

▼OHP月極アンケートテーマ入れ替え。5月分は「戦記モノ」にしてみました。この時期に不謹慎といわれるかもしれませんが、この時期だからこそあえてやってみることにしました。史実に基づいたものだけでなく、未来世界を舞台にした架空のモノなども範疇とします。よろしくお願いします。

▼4月分「言葉が素晴らしい作品」は、大本命だろうなと思っていた「ジョジョの奇妙な冒険」とダークホース(?)な「神聖モテモテ王国」が競り合って、結果はジョジョに軍配が。ところでコレをやってみて思ったのは、やっぱり漫画の名ゼリフって絵があって、コマが割られていてこそ威力を発揮するものなのだなあということ。セリフそのものだけ抜き出すとなかなかそのアツさが伝わらない。やはり野に置け……といったところでしょうか。ちょっと違うか。

【雑誌】ヤングキングアワーズ 6月号 少年画報社 B5中

 がぁさんの新連載「ハニハニハッ! 〜サテライトNOAH漂流記〜」がスタート。1000年の眠りから目覚めた地球人類の生き残りの男は、ノアという地の民によって「救世主」と呼ばれお祭り騒ぎをもって迎えられる。しかし目覚めた彼が抱いた感情は絶望。かつての輝かしき地球文明を復活させるにはノアの民はあまりに数が少なすぎるし、文明も退化しすぎていた。そんな彼を励ますべく、生け贄として捧げられためがねっ娘のハニハニが奮闘する……という出だし。ハニハニのドジっ娘っぽいノリはかなり軟派な雰囲気だが、その実けっこう本格的なSF物語になりそうな感じでもある。硬軟をいい具合に取り混ぜている感じで期待できそう。

 磯本つよしの読切「トモエの駐在日誌」は、たいへんのどかな海辺の村で駐在をやっている若い女性のトモエさんが、行方不明になったおばあちゃんを探して島を駆けずり回るというお話。瑞々しくかつ爽やかな絵柄はなかなか気持ち良くて目を惹くものがある。たたストーリー面については連載モノの一挿話としてだったらいいとは思うんだけど、これ単体で読むと世界やキャラクターに対する説明がかなり不足しているように感じてしまう。まあ実のところ、アワーズライト2001年11月号に掲載された同タイトルの作品の続き的エピソードではあるので、そちらのほうで説明は済んでるといえば済んでいるのだけれど。雰囲気、背景、キャラ作りはいいと思うので、なんか別の作品で再登場してほしいところ……と思って作者本人のWebページを見たところ、5月8日発売のヤングキングダムにも漫画が掲載されるとか。

【雑誌】週刊少年サンデー 5/14+21 No.22+23 小学館 B5平

 画:武村勇治+作:若桑一人の新連載「売ったれダイキチ!」がスタート。頭は悪いけど元気だけは人一倍な少年・大吉と、やたら長生きしてていろんなことを知っているネコがコンビを組んで、商店街を活気づけていくという商売漫画。このコンビでは昨年「ダイキチの天下一商店」という短期集中連載が掲載されたことがあるが、キャラクターや枠組みをちょっと変化させての本格連載といったところ。武村勇治の絵はけっこう好きで、女の子も可愛いと思うが、題材的には難しいと思うしブレイクしきれるかというと微妙なラインかな。井上和郎「美鳥の日々」。だいぶセイジへの想いが通じたことで、美鳥が元に戻る日も近づいてきているのかという展開。このままずっとドタバタラブコメでやっていくこともできると思うけど、それだけで終わらそうとせず物語に起伏を与えて深みを出していこうという姿勢には好感が持てる。藤田和日郎「からくりサーカス」は幕間が終了で、次号から「からくりサーカス」編がスタート。それに向けて今号のラストでは、非常にワクワクさせてくれる展開が。今後も楽しみ。

【単行本】「ちまちまぱぺっと」 ひな。 角川書店 B6 [bk1][Amzn]

 お人形さんと純情少年が織り成す、かわいらしくて微笑ましいコメディ。主人公は、女の子と見間違うばかりの外見で、人形師になるという夢を抱えた男の子・サトミくん。彼は同級生の女の子・桜坂さんに夢中だけれども、彼を幸福にしようとやってきたときどき人間の女の子の姿に変わるちっちゃい人形のむめのおかげで、その仲がうまく行かなくなってしまう。この作品でまず目に付くのは登場人物たちのかわいらしさ。むめはもちろんのことだけど、サトミくん、桜坂さん、それから里見くんのことが大好きなちっちゃな女の子・木菜子ちゃんと、いずれもキュートでラブリー。ひな。の作画の魅力が存分に発揮されている。で、お話のほうは最初ドタバタコメディでずっといくのかなという具合に始まるんだけど、むめがサトミくんの幸福を願いつつも自分のせいでそれが果たせないことに気づいてしまったときの切ない気持ち、それからサトミくんの優しさなどが丁寧に描かれて、気持ちの良い暖かい物語に仕上がっている。1巻できれいにまとまった佳作。

【単行本】「黄金のラフ 〜草太のスタンス〜」9巻 なかいま強 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 手堅く面白い。ここまでマイト竿崎と花咲と一緒の組で盛り上がっていたチワワンオープンが決着。きりたんぽたちの新しい苦闘が始まる第9巻。草太の飛距離はアップしているんだけど、頭は別に変わってないからそれをうまくコントロールできず、ポジションとしては結局の所現状維持。だけど全体的にはスケールアップを感じさせる……というストーリー運びなんかはやっぱりうまい。ゴルフ漫画の場合、気軽に強さをインフレさせちゃうとたいへんなことになるから、このくらいのぺースがちょうどいいんじゃないでしょうか。

【単行本】「龍」33巻 村上もとか 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 いつもながらに高値安定。これだけ長い話ながらとくにダレたというような印象を抱かせることもなく、激動の時代を描写した大河ドラマをしっかり展開。この巻では今やかつての勢いはなくしている甘粕の意地とでもいうべきものが、底光りするような凄みを発揮していてカッコイイ。

【単行本】「高校アフロ田中」5巻 のりつけ雅春 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 まったり馬鹿高校男子ライフ。全然進歩のないヤロウライフが見てて楽しい。この巻では電化製品売場で鼻毛カッターを試したら、それがハンパでなくからまって抜けなくなっちゃって思いもよらぬダイナミックなアクションを展開する「ゲイラカイトはよくあがる」という回が良かった。

【単行本】「ナイトクレイバー竜一」2巻 稲光伸二 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 麻雀でストリートファイトという作品。麻雀漫画らしく読みやすいし、局面局面はそれなりにいいんだけど、いまいち盛り上がりきってないかなー。ハッタリが利いていることはいるんだけど、どうせ麻雀漫画やるならもっと馬鹿みたいなくらいにまでボルテージ上げてったほうがいいと思う。

【単行本】「SS」8巻 東本昌平 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 この巻で印象的なのはこれまでお高く止まって自動車評論家なんぞをやっていた栗原が、気分を一新して車というものを楽しみだす姿が印象的。今は「おっさん」と呼ばれるような年齢になってしまった男たちの心の埋み火を、誇張しすぎるでなく描き出しててしみる作品。

【単行本】「ファミリーペットSUNちゃん!」1巻 岡崎二郎 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 とある平凡な家庭にやってきた、人間の言葉を解するふてぶてしい&ユーモラスなオオサンショウウオのサンンちゃん。彼と一緒に暮らしていくうちに、それまでも仲の良かった一家の絆はさらに強くなっていく……というペット&ファミリードラマ。たいへんほのぼの落ち着いた作品。派手に面白いってタイプの作品ではないけれど、手持ちぶさたなときとかに気がつくと読み返しているといったタイプの作品かな。岡崎二郎作品には珍しく「キャラクターもの」という色合いが強め。


4/29(火)……山と田蹴る

▼飲み会は続くときには続くもの。今日は池袋西口のかずとらというお店で渡辺僚一さん、高畠正人さん、新田五郎さんと飲み。少人数でこじんまり、5時間ほど漫画の話とかいろいろしてきました。こういうのはすごく楽しいなあ。やっぱり飲み会は長っ尻してもオッケーなところがいいです。

▼未読物
【雑誌】ヤングキングアワーズ 6月号 少年画報社 B5中
【雑誌】コミックメガストアH Vol.07 白夜書房 B5平
【単行本】「龍」33巻 村上もとか 小学館 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「高校アフロ田中」5巻 のりつけ雅春 小学館 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「ナイトクレイバー竜一」2巻 稲光伸二 小学館 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「SS」8巻 東本昌平 小学館 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「ファミリーペットSUNちゃん!」 岡崎二郎 小学館 B6 [bk1][Amzn]

【雑誌】大阪芸術大学 河南文藝 漫画篇 2003年春号 vol.2 大阪芸術大学 B5平 [Amzn]

 小池一夫責任編集で大学が発行してる漫画雑誌。いちおう普通の書店でも売っている。まあ学生の作品が中心なのでさすがに通常の商業誌と同じ感覚とはいかないものの、小池一夫の指導の手が入っているせいか案外読める。とくにちょっとアメコミチックな描線で画面も整理されているCAPT.NYAKO「MARCH OF THE PIGS」なんかはかなりうまい。あと、とある猫の日常を描いたかげむらしん「One Life」は優しい色使いのカラー漫画で、完成度高め。それから大阪芸術大学卒業生である治島カロの「RELIEF」も良かった。汽車の中で知り合いになった青年と小さな女の子のひとときのふれあいを描いた暖かいエピソード。この人は線がシッカリしたいい絵をしてますな。コミティアに「奇人別動隊」というサークルで出ている人で、読切作品「コイン・トラッシュ」でヤングキング 2003年4/7 No.7に掲載歴あり。

【雑誌】ヤングマガジン 5/12+19 No.22+23 講談社 B5中

 ハロルド作石による「アンダー・ザ・ブリッジ レッド・ホット・チリ・ペッパーズと僕物語」という取材モノの漫画が掲載されている。まあ内容はもちろん取材レポートなんだけど、ハロルド作石の肝の太いやらかしぶりが笑えます。宮下英樹「ヤマト猛る!」。合宿編が終わり、大和たちの成長ぶりは歴然。ぐんぐん力をつけていく様子がはっきりと伺え、しっかりした読み応えがある。あとヒロインの女の子も最後のほうでチラッと出てきて、汗臭い世界に彩りを添えている。なかなかいい感じです。

【雑誌】漫画サンデー 5/13 No.18 実業之日本社 B5中

 作:松森正+画:ひじかた憂峰「湯けむりスナイパー」。最近ずっと美人モードなトモヨさんは、君江ちゃんのために源さんからはそっと手を引く。落ち着きがあって自分の領分をわきまえたいい女ですな。

【単行本】「マウス」10巻 作:あかほりさとる+画:板場広志 白泉社 B6

 この巻は1冊まるまる「古都吸血奇譚」編。マウスの祖父により封印されていた謎の存在・蛭子を相手に、マウスたちが戦いを繰り広げるというこの作品には珍しいシリアスな展開が続く。まあたまにはこういうのもいいかなーと思うけど、「マウス」は馬鹿でノリノリなエロ展開のときのほうが楽しいなというのが正直なところ。


4/28(月)……定期呈示

▼ゴールデンウィークまとめ読み。ヤングマガジンは買い忘れたので明日。

【雑誌】漫戦スピリッツ 5/25 小学館 B5中

 今号には原秀則のインタビューが掲載されている。インタビューというとわりと最先端のトンガった人を取り上げることが多いけど、個人的にはこういうキャリアのある職業人的な人のインタビューのほうが興味あったりする。

 吉田戦車「山田シリーズ」。今回は山田がかくれんぼをさまざまなプランでサポートしてお金を稼ぐ。山田の色気が炸裂するエピソードだ。本題の新人作家についてはわりと大人しめな印象だけど、香港映画を見ながらトレーニングをしているうちに激強になってしまったオタクが主人公の増田賢也「ドラゴンマン」あたりは絵、ネタともにまとまってて良いかなと思った。

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 5/12+19 No.22+23 小学館 B5中

 村上かつら「サユリ1号」が最終回。総じてみると大橋ユキさんはかわいそう&はた迷惑な女の子だった。ラストについても直哉とちこちゃんについては爽やかに終われたけど大橋さんは……。これも積み重ねた悪行の報いか。何はともあれ緊張感のある青春物語で終始ぐいぐい読ませてくれた。最終巻は5月30日発売。ここらへんで一発、短編集も市場に投入してほしいところ。古屋兎丸「π」。田村さんのπを狙う邪悪な童顔野郎・鷹士と、暴走族スタイルを身にまとった夢人の対決が本格化。なんかいきなりダイナミックなアクションが繰り広げられている。こういうの描かせてもうまいなあ。

【雑誌】ヤングキング 5/19 No.10 少年画報社 B5中

 けっこう楽しみにしていた学園ラブコメ漫画、吉野ケイイチ「チキンデイズ」が毎号連載化。今どき珍しい垢抜けない作風が新鮮。単行本1巻は5月28日に発売。たぶん高柳ヒデツなんではないかといわれている膝枕カカトの読切「Boy, take it easy」が掲載。平凡な少年である主人公男子は、同級生の梨田ゆり子さんとつき合い始めたばかり。しかしゆり子の兄が彼のことを彼女から遠ざけようとして一悶着あり、ゆり子の意外な一面が発揮されるというお話。一見大人しそうなゆり子のキャラはけっこう魅力はあるけど、このお話だけで終わっちゃうとちょっと物足りない。連載第一回めという感じの内容。東本次朗「のびたのマーチ」は最終回。札幌市長を目指して奮闘中な行動力だけはありすぎる超バカ少年を主人公としたギャグ。けっこう線がシッカリしてて荒削りなパワーがありそうではあったが、もう一歩ハジけきらんかったかなという印象。

【雑誌】週刊少年ジャンプ 5/12+19 No.22+23 集英社 B5平

 作:ほったゆみ+画:小畑健「ヒカルの碁」は北斗杯編が最終回。えーと、これって続きはあるんかな。今夏に読切が掲載されると書いてあるけど、ということは少なくともそれ以前に続編が始まることはないわけで……。樋口大輔の読切「ジーズ」。何やらストレスを感じると恐ろしい能力を発揮してしまう体質の少女を、「ヤタガラス」というコードネームで呼ばれる半分機械の身体であるエージェントが護衛する。守られる側のほうのメガネっ娘な女の子がわりとかわいい短編。設定は大きめなので読切というより連載向きかなあという感じ。

【雑誌】フラワーズ 6月号 小学館 B5平

 波津彬子「楽園の扉」。いいね〜。「うるわしの英国シリーズ」というシリーズ名に恥じぬ英国ぶり。英国の、とある古道具屋で出会った紳士と淑女。その恋の行方を描く。作画も含め、全体の雰囲気作りが徹底しててとてもいい。西炯子「お手々つないで」。ラブコメしちょりますのう。プレイボーイな男子・佐藤くんも、マイペースな女子・山王さんの前では振り回されっぱなし。二人の関係はユーモラスで、見ていると自然とニヤニヤさせられてしまう。

【雑誌】コーラス 6月号 集英社 B5平

 松田奈緒子「レタスバーガー プリーズ. OK,OK!」。綾が惹かれたニセ太宰男編がおしまい。将来的なものに不安は残しつつもいちおう今のところは……というのは、今後の展開にも興味が持続する幕の引き方であったと思う。単純に主人公カップルが引っついて幸せ〜だけでは終わらない点は読みごたえがある。そのだつくし「主婦のトモ」。面白い。今回は子供ができないことを気に病んでいる奥さんのトモのために、夫が犬をプレゼント。いやー犬はいいね〜。考えてみるとコーラスは、芳成香名子「こむび日和」、きら「まっすぐにいこう。」と、ペットについては犬寄りだ。

【雑誌】メロディ 6月号 白泉社 B5平

 よしながふみ「愛すべき娘たち」後編。これは面白かった。扉ページに「スウィート&ビターなLOVE note」って書いてあるけど、確かにけっこうビター。一見、人格的にもルックス的にもまったく問題のないよくできた娘さん。でもなぜかいつまでも結婚しない。そんな彼女が見合いで出会ったのは、身体に不自由なところはあるものの性格の非常に美しい、素晴らしい男性。かなりいい具合におつき合いをしていたが彼女の出した結論は……。良い人にもほどがある娘さんであるがゆえに選ぶことになってしまった幸福とも不幸ともつかない道。なかなか興味深い内容でありました。

【雑誌】阿ウン 6月号 ヒット出版社 B5平

 7周年記念特大号。綴じ込みで「シャイニング娘。」のマウスパッドが付いている。その師走の翁は先月お休みだったが、今回は「精装追男姐」が再開。美少年・リューくんから感覚を残したままもげてしまったちんこは、学園を仕切ってる状態の女3人組によっていいように酷使されまくる。うーむ楽しいなあ。ちんこいじりの方法がバリエーションに富んでいる。遊び心満載で、かつノリノリで激しいHシーンも十分実用的だし。いつもながらにええ仕事してます。

 大井はに丸「lose」も相変わらずH。今回は学園内ノーパンゲームのルールを破ってしまった女の子が、さんざんにお仕置きFUCKされるというお話。ピチピチジューシィで、かつ表情の変化とかが派手。みっしり詰まっておりますなあ。わたんかづなり「東丸商店街福引き会」。こちらも相変わらずハイテンションなエロ。商店街を盛り上げようと頑張ってる女の子が、同じ商店街の意地悪な幼なじみ男子の計略で福引きの景品にされて、エロエロな目に遭うというお話。ちょいと泥臭いところが味。

【雑誌】快楽天 6月号 ワニマガジン B5中

 今号から表紙がみやびつづるに変わりリニューアル。なのだけど実質的には前号でもう内容は変わっていたといっていい。具体的には今までのオシャレ路線から人妻系で固めた実用路線にシフト。現在の状況だとオシャレ路線でも先は見えてるし、実用系でないと売れないというのも分かる。年端のいかない少女っぽい路線だとコンビニ売りでは厳しいというのも分かる。でも人妻実用路線だったらほかにも似たような雑誌はあるしなあ。正直このリニューアルは残念。

 というわけで前半は人妻いっぱい。飛龍乱「Sister in Law」、草津てるにょ「ノーテンファミリー」、かるま龍狼「幼な母が行く!」、すどおかおる「若奥様 午後の吐息」、TRIGGER「絶叫マシーンをお茶の間で」ときて、LINDA「戯れ」と続く。そんな中、従来のオシャレ路線から出てきた人たちのうちの一人、鳴子ハナハル「スクランブルドエッグ」の爽やかな作画はパッと目を惹く。セックスをするとなぜか卵を生んでしまう不思議な女の子とその彼氏の物語。この人はなかなかにいい表情を描きます。

【雑誌】エンジェル倶楽部 6月号 エンジェル出版 B5平

 中華なると「義父」。夫にほっておかれがちな若奥様が、いつも家にいる義父によって堕とされていくという、まあわりとよくあるタイプのエロエロ話。でもオーソドックスな内容だけにさすがに作風としてはこなれていて、いやよいやよも好きのうち状態の若妻さんがいやらしい。奴隷ジャッキー「A wish 〜たった一つの…を込めて〜」はけっこう切なげな展開。今回はかなりラブストーリー的な路線で行ってますな。

【アンソロジー】アイラDELUXE VOLUME.10 三和出版 A5平 [Amzn]

 岡すんどめ「鹿乃子百合」。表紙には「鮮烈!!だるま娘!!!!」と書いてあるけど、こういうのが表紙でうたうようなウリになるというのはこの本くらいであろう。四肢が切断され男根まで生えていて、見せ物小屋で性玩具として扱われている少女と、彼女に使える召使のお話。けっこうキツいことをネタにしているわりに、総じて見ると愛の物語であったりする。こういうネタを描きそうには思えないライトな絵柄でもあり、新鮮に映った。掘骨砕三「下し屋」は、下水の中に住み住人たちの糞詰まりや虫下しのお世話を仕事としている「下し屋」の少女たちのお話。肛門の中で媚薬を生む虫を育て、その影響で身体が異形に変形していくさまを、実に楽しそうに描いている。いや〜、この人はよくこういう形状を描くっていうか思いつくよね。毎回感心。


4/27(日)……僕の小規模な登記簿

▼海明寺裕さん、小杉あやさん、しろみかずひささん、海野やよいさん、新田五郎さんという、なんだかものすごい濃い方々と飲み。飲み会自体はとても楽しかったが、最近飲むたびに「弱くなったなあ」と思う。家で酒をほとんど飲まなくなっていることもあり、わりとすぐ回ってしまう。帰りは寝過ごしてタクシーに乗ったことは覚えているのだが、どの駅から乗ったのか全然覚えていない。タクシー料金から推測するに、たぶん相模大野だと思うんだけど……。

▼で、飲み会は新宿でやったのだが、なぜか新宿では居酒屋に入ってみて「ここは当たりだ!」と思えた経験があまりない。うるさくなくて料理と酒が美味くて、なおかつ長居できるところがいいんだけど。けっこう時間制限ありなところが多いんだよね。ただ交通の便が非常にいい土地だから今後も使うことにはなると思うので、そのうち飲み屋探索はしておこうかなと思っている。1店30分くらいで一晩何軒も回るとかやってみたい。

【雑誌】アックス Vol.32 青林工藝舎 A5平 [bk1][Amzn]

 特集は後藤友香。第五回アックスマンガ新人賞で林静一個人賞を受賞して掲載された「創世記」の辻村典子は、コミティアに出ているテオレマ館の人ですな。

 福満しげゆき「僕の小規模な失敗」は毎回面白い。定時制高校に通いながらマンガを描いているものの芽が出ず、普通に明るく暮らしている人たちにコンプレックスを抱きながら鬱々と日々を過ごしている男の物語。これってもしかしてノンフィクションなのだろうか……。その福満しげゆきだが、今回の作家近況欄はすごいと思った「「何かしようと上京したけど何もする事がない。最近は引きこもりがちだ。そんな人で西武新宿線小平に来れる人、バンドを組もう。」という言葉のあと、携帯電話の番号を載っけているのだ。作風もそうだけどコメントからも寂しさがあふれまくっている。この人の単行本を、どこか出してください。島田虎之介の新連載「東京命日」は、とある駆け出しCFディレクターの青年の姿を追っていくお話で、作者コメントによれば「シマトラ最初で最後の青春マンガになる予定」とのこと。昨年単行本が出た「ラスト・ワルツ」[bk1][Amzn](感想は2002年12月31日の日記参照)は傑作だったが、今回は果たして。期待してます。

【雑誌】ビジネスジャンプ 5/15 No.11 集英社 B5中

 甲斐谷忍「ONE OUTS」。今回はいったいどういう仕掛けでひっくり返すんだろうと推測する楽しみが常にあって、毎度面白い。今進行中のエピソードは、渡久地一人じゃどうにもならん話だけどさて。

【単行本】「鮮紅街」 中島あつき エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]

 タイトルは「マッカガイ」と読む。1998〜1999年に掲載された作品が単行本化。よく出たなあ。犬と人間が混じったような外見の「亜人」と、普通の人間の姿をした「我人」。二つの人種が混在し、お互いにいがみ合っている世界を舞台とした物語。亜人の中では嫌われる「しっぽつき」であり我人の町に住もうとするハズレ者の亜人・ロギと、亜人にに親を殺された我人の少女・レレ。この二人がきっかけになって、変わっていく亜人と我人の関係はじょじょに変わり始めていく。ジャンルとすればSFファンタジーアクションとかそんな感じかな、なかなかしっかりとお話は作られていて読みごたえもある。作画も丁寧。よくできている。ただキャラの魅力が、外見的にちょっと弱いかなという気はした。カッコ良いような可愛いような……という感じなんだけど、もう少しそのどちらか片方に振っちゃっても良かったかも。

【単行本】「踊る島の昼と夜」 深谷陽 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]

 神々、そして魔の住む島・バリで和風居酒屋を経営している男を主役として、島で起こる魔術がらみの事件を描いていく読切シリーズを中心とした単行本。この人の作品には、その地にある熱気、魔術が行われていることを素直に信じたくなるような空気が、画面の中にしっかり封じ込められているのがいい。あと登場する女性たちがみんな魅力的。お話もキレが良くて粋だ。

【単行本】「青 オールー」2巻 羽生生純 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]

 面白くなってます。元有名漫画家だった差能構造が、銃を撃つ快感にのめり込み、それまでは平凡な編集者であった安対、差能を崇拝する少女・区々を巻き込んでいく。暴力団のヒットマンや、差能作品の大ファンであった少年・チルと対峙する中で、差能が見せつけるギラギラした狂気に慄然とするのと同時にワクワクしたりもする。羽生生純の作品は、借り物ではないこの人ならではの「味」がとても濃厚。

【単行本】「未来の恋人たち」 犬上すくね 大都社 B6 [bk1][Amzn]

 2000年5月に発売された同タイトルの単行本の改訂版。同人誌掲載作品も多数収録。昔からうまい人という印象があったんだけど、今改めて読んでみるとこのころの作品はまだ初々しい感じは確かにある。でも柔らかな感触やら、日常から恋愛的要素を切り出してくる感性の鋭さはやはりキラリと光るものがある。現在はずいぶん洗練されたのだなあと思うと同時に、このころのもなかなかにいいですな、とも思う。ラブコメあり、ホラーあり、アニパロありと、犬上すくねのいろいろな作品が読めるうれしい1冊。

【単行本】「コペルニクスの呼吸」 中村明日美子 太田出版 A5 [bk1][Amzn]

 これで完結。細い男の身体を色っぽく描かせたら一級品。お話のほうもなかなか読みごたえがあった。元はサーカスにいたが金持ちの男に買われ男妾に身を落とした青年・トリノスと、彼の周囲の人々の愛のかたちを描いていくというストーリー。オオナギという名の初老の変態男にトリノスが翻弄され、身体をいじくり回されるシーンとか、エロティックだしミステリアスでもある。いろいろな出来事が終わった後、万感を包み込むようにして終わっていく幕引きも鮮やかだった。

【単行本】「かてきょ」 木静謙二 メディアックス A5 [Amzn]

 Hだねえ。最近の実用系エロ漫画家としては個人的にトップクラスの評価。今回の単行本は、以前隣の家に住んでいて昔なじみだった男の子の家庭教師をしている由季子さんが、彼が自分の名前を呼びつつオナニーをしているシーンに出くわしちゃったことから激しいHに突入……という「かてきょ」全4話が中心。本当にこの二人がやるというだけのお話なのだが本番するまでに3話を使っているだけあって、エロ描写はみっちり。ガードのユルいメガネッ娘である由季子さんは、性経験は全然ないんだけど、乳がとてもデカくて色っぽい。この人お得意のフェラチオ描写も山盛り。絵もうまいし、いや〜堪能させていただきました。


4/26(土)……Let's back on.

▼OHP月極アンケート4月分「言葉が素晴らしい作品」は4月いっぱいで締め切りますので、まだ入れ足りない方はお早めによろしくお願いしまーす。

【雑誌】少年エース 6月号 角川書店 B5平

 5人の新人の作品を集めた付録小冊子「少年エースをねらえ!」がくっついている。アンケートで1位を獲った作品が本誌連載をゲットできるという企画。こういうおまけは好きだなー。企画としても面白いと思うし、何より漫画が読める。しかもあんまり手あかのついてないのが。掲載作品は玉山大吾「ドラゴン」、樋口彰彦「TORON」、えすのサカエ「ココロよりメイル。」、下城達也「暴れん女王スー」、佐伯淳一「さかなのな」。まあ正直なところ、どれも本誌連載には若干物足らんかなという気はするのだけどスジは悪くないと思う。個人的にはブルース・リーに憧れたままアクション俳優になった男を主人公とした、玉山大吾「ドラゴン」のまっすぐさがわりと気に入った。

 本誌の中身のほうは、今回は若干低調かなー。いつものメンツが手堅くやってるという感じ。貞本義行「新世紀エヴァンゲリオン」も掲載されているのだが、アニメにはない漫画ならではの味がいまいち薄いような気がしてしまう。天津冴「がぁ〜でぃあんHearts」は、ただでさえ賑やかなところにさらに新女子キャラ二人が登場。華やかで楽しくてよろしいんじゃないでしょうか。

【雑誌】ガンダムエース 6月号 角川書店 B5平

 今号から月刊化。なのだけど、うーん、あんまり面白くない。安彦ガンダムは面白いけど60ページちょいで、隔月のときよりはページ数が減ってるし。トニーたけざきのパロディネタが今回は比較的大人しめなので、「ガンダムだけで一冊はツライのでは」という創刊当初からの懸念が浮き彫りになってしまった感がある。やはりもう2〜3本、強力に読ませる連載が欲しい。ウエダハジメの特別読切「バグの子」には心引かれるものがあるが、カラー2ぺージだけだしねー。

【雑誌】コミックミニモン 6月号 東京三世社 A5中

 たまちゆき「小っちゃな恋のメロディ」は、小気味の良い子供恋愛Hばなし。引っ込み思案な男の子に、ちょいとマセた感じの可愛い女の子が声をかけて仲良くなるというお話。ちゃんとSEXはするけど、このキャラならそのものズバリでなくキス程度でも良いかな〜とか思った。ほしのふうた「プラネットタイム」は、女の子二人が夜中にこっそり家を脱け出して、野原にお星さまを見に行くというシチュエーション。野外で女の子二人がからみあう様子がたいへん可愛らしい。二人で寝そべりながら夜空を見上げているシーンなんかは、見ててたいへん気持ちが良い。

【単行本】「爆音列島」1巻 高橋ツトム 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 この漫画、すごく好きだ。お話はちょっとしたことで補導されて転校した少年が、転校先の中学校の友達と一緒に暴走族への道を歩んでいくというもの。舞台設定は1980年東京。そのころの風物をふんだんに盛り込みつつ、一人の少年が、いかに暴走族というムーブメントに身を投じていったかを描いていく。この作品の素晴らしいところは、ゾク描写が非常に生々しいこと。別に突飛な設定なんぞ必要としない。いかにもいそうな奴ら、ありそうな出来事だけに臨場感は抜群。端々に登場するアイテムとかセリフとかも良くて、例えばステッカーを売れと先輩に命令された主人公の仲間が「オレよォ『成りあがり』買っちまって金ねェんだよ」というシーンなんかすごく好き。この時代のヤンキーたちが何を考え、どう生きたかということをつぶさに語ってくれる物語には興味津々。

 漫画で暴走族モノっていうと、やれ悪のグループと抗争を繰り返す正義のヤンキーだの、だらだら続く青春日常空間だの、公道バトルだのが描かれるんだけど、この作品にはいってみればそういう「ドラマ」はない。あくまで普通の少年が普通に暴走族になっていく物語。つまり普通の暴走族モノは、「暴走族になってからどうするか」ってドラマだったりするんだけど、「爆音列島」では「暴走族になっていく」という体験そのものがドラマであり日常であるわけなんだよね。正義だの悪だのではなく「そこに仲間がいるから」「ただなんとなく」「友達がやってるから」といった、もうありがちもありがちな理由でゾクになる、そういった過程というのはこれまでの暴走族漫画では意外と語れてこなかったような気がする。この作品のヤンキーは異世界のヤンキーじゃなくて、たしかに自分も生きたその時代の、生のヤンキーたちなんだよね。そこに惹かれます。

 ところでこの単行本、カバー見返しのところにある高橋ツトムが矢沢永吉についての思いを語った言葉がえらくいい。「みんな永ちゃんから生き方を教わり 夢を見た オレはカミさんにプロポーズした後『長い旅』を歌った」。あんたカッコ良すぎるよ!

【単行本】「神戸在住」5巻 木村紺 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 文系少女の視点できちんきちんと物事を整理した語り口はいつもながらに細やかでおくゆかしい。この巻は、辰木さんはいい友達がいっぱいいていいなーと思った。大学の友達、高校時代までの友達、皆さんいい方ばかり。友達が近くにいていつでも話せる、昔を懐かしんで想い出を大事にしあえる仲間がいる。どっちも素晴らしい。自分は友達少ない人間なんでつくづくそう思う。はっきりいって羨ましい。

【単行本】「いばらの王」1巻 岩原裕二 エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]

 身体が石化していくという治療不明な奇病「メデューサ」にかかり、治療法が確立される未来に望みをたくしてコールドスリープに入った人々。彼らば目覚めてみるとそこは約束された未来ではなく、見渡す限り人の姿はなく、巨大生物たちが跋扈する世界であった。主人公は、双子のシズクを残して自分一人だけがコールドスリープするメンバーに選ばれてしまったことを負い目に感じ続けている少女・カスミ。彼女と一緒に目覚めた数人の人々、とくに何かいわくありげなマルコ・オーエンを軸として、異世界での冒険譚が進行していく。

 内容的にはとくに難しいところはなく、派手に展開する未来モノアクションといった感じ。岩原裕二の滑らかでダイナミックな作画は見ていて気持ちいい。うまいなーと思う。ただストーリーの牽引力は今のところあんまり強くないかなという印象。舞台設定や作画は良くアクションもしっかりしてるんだけど、キャラの魅力がまだあんまり出てないような気がする。主人公のカスミがもっと物語を引っ張っていくようになってくると、面白みが増してきて、さらにもっと広い世界が描かれ出すと面白くなってくるのではないかと。1巻はまだ序章といった趣。

【単行本】「こどものあそび」 南Q太 祥伝社 A5 [bk1][Amzn]

 田舎の村で育った一人の背の高い女の子の人生遍歴を、淡々と追いかけていく物語。えーと南Q太の自伝的なお話なのかなあ。それはどうでもいいと割り切るべきか、切り離して考えるべきかはちょっと悩ましい。ただお話としては面白いと思う。自然体で一人の女の子の、そのときどきの気持ちをすくい取った透明感のあるお話。こういうのだと恋に生きるお話になりがちだが別にそんなんでもなく、そのときどきで運動に熱中してみたりバイトにいそしんでみたり。そういった生活をごく自然っぽく描けているのは高い技巧があってこそ。生活空間内の空気を描くのがうまいなーと感じる。

【単行本】「ジンクホワイト」3巻 小泉真理 少年画報社 A5 [bk1][Amzn]

 これにて最終巻。きれいな締めくくりだったと思う。美大を目指すマキと、彼女になついてくる後輩の男の子。二人の関係を軸に描かれる青春物語。やっぱりキャラクターに魅力があるなーと思う。別に珍しい人格、外見とかじゃないんだけど、ごくフツーにまっすぐな人たちである点が好ましい。読んでいてたいへんに気持ちいい作品でした。


4/25(金)……フルーツ盛る

▼ゴールデンウィーク前ということで、この10日間くらい仕事が集中しちゃってて忙しかった。かなりの日数を仕事場泊まりで過ごしていたこともあっていろいろ弱まってたのだが、それもようやく一段落。昼まで仕事やってそのまま取引先へ直行して届けモノをしてから帰宅。ズバッと昏倒。ちなみにこういうことは終わったから書ける。忙しいときに「忙しい」と書くと、「ああ、あいつは今忙しそうだから仕事振るのはやめとこう」とか思われてしまう危険性があるので、なるべく書きたくないのだ。

▼未読物
【単行本】「爆音列島」1巻 高橋ツトム 講談社 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「神戸在住」5巻 木村紺 講談社 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「いばらの王」1巻 岩原裕二 エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「鮮紅街」 中島あつき エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]
【単行本】「踊る島の昼と夜」 深谷陽 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]
【単行本】「青 オールー」2巻 羽生生純 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]
【単行本】「未来の恋人たち」 犬上すくね 大都社 B6 [bk1][Amzn]

【雑誌】月刊IKKI 6月号 小学館 B5平

 五十嵐大介の連作「SPINDLE −スピンドル−」の前編が掲載。うわー、こりゃいいなあ。具体的な地名は描いてないけど、東洋と西洋が向かい合うところ、つまりボスポラス海峡でしょうな、の沿岸の地が舞台。地元の男性に恋したが果たせなかったことを怨みに思っていた西洋人の少女・ニコラが、長じてその地へ復讐のために戻ってくる。それとは別に糸を紡ぎ、それを織ることで自分の世界を布の中に描き出していく少女・シラルの物語が並行して語られる。この二人の人生がどう絡んでいくのかはまだ分からないけれども、東洋と西洋が入り混じったオリエンタルな空気、美しい風景の描写など、惚れ惚れするものがある。魔術的な要素もうまい具合に作品を盛り上げていて、後編に期待を持たせる。次号がすごく楽しみ。

 カサハラテツローの新連載「ライドバック」がスタート。有名なダンサーを父母に持ち、自身もダンサーを志したが、骨折でその道を諦めんとしていた少女・尾形琳。そして入学した文芸大学で、彼女は「ライドバック」と呼ばれるロボットと、それに熱中する若者たちに出会う。武骨なメカとそれを駆る女子大生という構図はなかなかにキャッチー。アクションもこの人らしくダイナミックで面白くなりそう。この人の爽快感のある作品は、わりとゴチャゴチャした作品の多いIKKIの中ではいいアクセントになってくるかも。

 宇仁田ゆみ「スキマスキ」は最終回できれいにしめくくり。キュートなラブストーリーをきっちりまとめた。単行本は7月30日発売だそうです。ジョージ朝倉「平凡パンチ」。面白いなあ。うだつのあがらない自主映画監督と、なぜか彼のファンであるる女の子。このまま二人でコンビを組んで映画界をのし上がっていくのかと思っていたら、そうは問屋がおろさない。意外な方向へお話はゴロゴロと転がり始めている。さすがに今が旬の作家だけあって勢いを感じる。この調子でもっともっと読者をぶん回していただきたい。それはとても気持ちのいい体験だから。菊池直恵「鉄子の旅」が再開。今回は以前募集した鉄道界のアイドル的女子「レールクイーン」と共に、いつものメンツが列車に乗ったり駅を見たり。もの好きな女子の登場でちょっぴり華やか。でも横見さんはもっとテンション高いほうがいいですな、確かに。

【雑誌】アフタヌーン 6月号 講談社 B5平

 今号もフィギュア付きだが、今回購入した書店ではフィギュアの箱を綴じ込んだ状態でビニールひもをかけていたため、雑誌にヘンなクセがついていた。こういうことになるなら付録はいらないなあ。藤沢とおるの新連載「トッコー」のプロローグ、第0話が掲載。美少女が主役のバトルアクションということで、最近の藤沢とおるらしい路線。まあたぶん既存のアフタヌーン読者へのウケは悪そうだなとは思うけど、これがきっかけで新規読者を引っ張ってきてくれるようならいいんじゃないかなー。それで部数が延びれば雑誌の寿命も延びる。儲けが増えて余裕ができれば、売れなさそうな作品も掲載しやすくなるかもしれない。そしたら自分にとっては得だ。とよ田みのる「ラブロマ」。今回も微笑ましいラブコメ模様を展開。根岸さんとおつきあい中の星野くんは、彼女にお弁当を作ってほしいと要求。しかし何がどう転んだか、二人でお弁当を交換しあう勝負に発展。ほのぼの楽しくて非常に健全。ニコニコしながら読もう。漆原有紀「蟲師」。いつもながらの丁寧な筆致は健在で、安定して面白い。確固とした地力をつけてきている。

 ひぐちアサの読切「基本のキホン!」は、とある弱小高校野球部の球児たちを描いた青春ストーリー。それまでは高校生活全敗も覚悟しながらのんびり野球をしていた部員たちが、プロまで視野に入れている1年生投手の出現でにわかにざわつき始める。野球シーンよりもむしろ会話シーンが主体でドラマが進行するが、いかにも生の高校生っぽい本音をぶっちゃけるキャラたちの姿に親近感が湧いてくる。またラストも前向きで後味が良い。四季大賞受賞作、松本あずさ「降る/積もる」。学校内ではよそよそしくしているけれども、下校後はいつも一緒の部屋で過ごしている幼なじみな二人の少女の物語。目立つ容姿でクラス内でのポジションは上のほうである和香子、地味でイジメられがちな朋子。一見接点がなさそうな二人の友情模様を掘り下げる。線の細い儚げで上品な作画が、地味ながらも芯のある物語にしっかりマッチした佳作。

【雑誌】ヤングマガジン増刊 スポ僧 No.2 講談社 B5中

 スポーツ専門増刊。巻頭は、高橋ツトムがランディ・バースの7試合連続ホームランと、TV脚本家をしている青年と若いころに別れたきり合わなくなっていた父親による家族ドラマをからめた「7GAMES」という作品。個人的にはバースと江川の駆け引きとかを中心とした作品を予想してたので、少々意外な感じはした。でもしっかりまとまってはいる。蓮古田二郎「しあわせ団地特別編」。いちおうゴルフはからめているけど、まあいつもの調子と思って間違いない。妻は土手でつくしをとり、夫はもぐらと戯れる。

 前川かずお「GAL-1クライマックス」。く、くだらね〜。今回の増刊の中で一番面白かった。働くお姉さん「ワーキングガール」の頂点を決めるという、非常に馬鹿馬鹿しい女子異種格闘技戦の模様を描く。出てくる女性がナースだったり海女だったり、SM嬢だったりウエートレスだったり。仕事用具を凶器として使用可能なので、ものすごい決着が身もふたもないことになってたりして思わず笑ってしまう。この人はやっぱいいね。こうのこうじ改めコウノコウジ「100M 純愛パンク爆走伝」は告った女子に「100Mで100秒切ったらつき合ってあげる」といわれたパンク野郎の主人公が、馬鹿っぷりを発揮して本当に頑張ってしまうというお話。この人の暑苦しい作風はけっこう気になる。最近ヤンマガ本誌がいまいち面白くないので、こういう人がどーんと弾けてくれるといいのだが。

【雑誌】ヤングアニマル 5/9 No.9 白泉社 B5中

 たくまる圭の短期集中連載「僕らは長く夢をみる 〜めざせ俳句甲子園〜」。年に一度、松山で開かれる高校生による俳句全国大会に出場している、俳句部の面々の青春物語。熱血でありつつけっこう馬鹿っぽくて面白いな〜。たくまる圭の絵はいつもながらに気持ちいいし。楽しい作品になりそう。克・亜樹「ふたりエッチ」。最近は受付嬢の巨乳ちゃんが活躍中。今回も天然ぶりを発揮して真に接近。しょうもない展開だけど、気楽でいいなーとも思う。

【雑誌】ビッグコミック 5/10 No.9 小学館 B5中

 なかいま強「黄金のラフ〜草太のスタンス〜」。大風原野と回るマンデートーナメント編が一段落。ちゃんとオチがついた。でも次につながるステップとなりそうではある。毎度コンスタントにきっちり面白い。

【雑誌】ビッグコミックスペリオール 5/16 No.10 小学館 B5中

 乃木坂太郎「医龍」(原案:永井明).面白いしうまい。今回は一つの手術の様子を通じて、チームのメンバー、それぞれのスキルを無理なく一通り説明している。研修医である伊集院についても、彼の何が朝田に見込まれたのかということがしっかり分かったし、本格的な段階に入る前に上々の下準備ができたという感じ。こういうことやっとくのは、今後盛り上げていくうえで重要。小山ゆう「あずみ」。やっぱりあの顔がすごくひん曲がってる奴がいい。なんか見るたびにすげえ顔だなあと思う。

【雑誌】コミックバンチ 5/9+16 No.21+22 新潮社 B5中

 作:上之二郎+画:小野洋一郎「報復のムフロン」は最終回。終始読みごたえのある力作だった。最後の展開で一瞬びっくりさせたあと、きれいに締めくくる手際もなかなか。作:山本周五郎+画:木暮峰「蚊帳の中」は2回め。前回に引き続きなかなかいい雰囲気。妹への許されぬ恋心を押し殺そうと苦悩する飴職人の竹二郎。しっとりとした和風な色気に惹かれるものあり。

 野田正規「逃げるな!!駿平」が新連載。これも世界漫画愛読者大賞の1回めにエントリーされた作品。普段は平凡なサラリーマン、だけどキックボクサーでもある駿平を主人公としたキックボクシング漫画。絵が古いというのは見れば分かるが、外国人のキックボクサーが「”ハミング”シダシタラトツゼン……!?」とか、全部カタカタ喋りしているあたりもアナクロなものを感じた。ちと厳しいかな。それにしても世界漫画愛読者大賞作品は、これで半数以上が連載化されてしまったことになる。これだと「投票って意味ないじゃん」って感じにならなっちゃわないかと思うんだけど。

【雑誌】手塚治虫マガジン 6月号 KKベストセラーズ B5中

 2号め。1号めはわりとどこの書店でも余ってるなーという印象だったけどどうなんかな。で、今回は「ブラック・ジャック」「鉄腕アトム」「どろろ」「るんは風の中」「ジョーを訪ねた男」「シュマリ」が掲載。うーん、どの作品も面白いなあ。「ブラック・ジャック」はとくにおいしいところのより抜きだし、「どろろ」もカッコイイ。「るんは風の中」ではポスターの中の女の子に少年が抱いた恋心を鮮やかに描き出しているし、「ジョーを訪ねた男」では人種差別問題に鋭く斬り込む。この作風の幅広さには脱帽するほかないな、と改めて感じた。やはり巨人だと思います。

【雑誌】LaLa 6月号 白泉社 B5平

 津田雅美「彼氏彼女の事情」。いやー有馬くんにはいろいろありますな。やはり金持ちは家庭が複雑だ。あと冒頭の有馬宮沢のアツアツっぷりはアテられる感じで良いです。あと今号では巻末の読切、三上チト「蔓草オペラ」が良かった。美術部所属の女子先輩の糸子、男子後輩・大希のカップルのお話。趣味を同じうするカップルがなかよしこよしというお話では終わらさず、最初は大希のことを可愛がっていた糸子が、彼の絵の才能を見せつけられて絶望する、でもやっぱり好き……という気持ちの揺れをしっかり描き出している点に好感を持った。あと絵のほうもスッキリしていて気持ちが良い。

【雑誌】コミックピンキィ 6月号 オークラ出版 B5平

 なんとなく微妙な雑誌という感がある。面白いようなそうでもないような。ハードエロってわけでもなしロリでもなし、かといって萌えでもなし、なんとなく誌面から雑然とした印象を受ける。まあ混沌としてるのは嫌いじゃないけど。

 モリス「お兄ちゃん大作戦!」。けっこういい。両親共働きの家庭で、お兄ちゃんが中学生になり一緒にいる時間が減ったことを寂しく思っている妹が、お兄ちゃんを恋人にする作戦を展開。1回100円でフェラチオという御奉仕価格で御奉仕したり、いろいろ頑張る。モリスの漫画は昔から和むなあ。ほんわかしてます。舞登志郎「俺は男だ!」。姉がきっかけで性に目覚めちゃった感のある弟を見て、今度は姉のほうがドギマギ。なかなか初々しくてニヤリ。ダーティ・松本の自伝的漫画「エロ魂!」はいつもながらに面白いが、今回は後半やけにお話がデカくなってちょっと驚いた。単行本はまだっすかねえ。

【単行本】「熟娘」 小暮マリコ ジェーシー出版 A5 [Amzn]

 ここ最近でとみに絵がエロくなってきている小暮マリコの初単行本。女の子がスタンダードに可愛い華やかな絵柄ながら、女体のボリューム感がアップ、汁気も増してずいぶんいやらしくなっててた。MUJIN掲載作品を集めたということで、かなりエロ直球勝負。ズーンズーンと激しくやりまくっております。でも鬼畜系的な殺伐としたところはあまりない。MUJIN掲載作品はハードコアということで女体が固めに見える作品が多いというイメージがあるんだけど、この人のトロトロとろけるような絵柄は目を惹く。すごくムチムチ密度が高い。


4/24(木)……暗い分離

▼以前からトップページの右側の細長いスペースがどかーんと空いててもったいないなーとか思っていたので、小銭稼ぎも兼ねてAmazonライブリンクというのを試しにつけてみた。今回つけたのはそのときどきの、Amazonにおける漫画・アニメのベストセラーが表示されるという奴。でも今だと「ブラックジャックによろしく」の既刊が並んでてあんま面白くないな……。だいいちウチのページの場合、ベストセラーを掲載してもあんまり意味がないような気がしなくもない。単純に「今日入荷した漫画」の中からランダムで表示していくライブリンクとか用意してくれるといいのにな。そういえば最近bk1が、その日発売の漫画単行本のリストを送ってくれるメールサービスを始めたけど、ああいうデータベース使ってやってくんないかな。あ、そうか。俺も購入スケジュールCGIとか設置してるわけだから、そのデータを使ってなんかやろうと思えばできないこともないのか……。なんかけっこう簡単そうな気がしてきた。でもあんまりゴチャゴチャ並べすぎるとウザったいかな。

【雑誌】モーニング 5/8+15 No.21+22 講談社 B5中

 種田山頭火の人生を描いていく、いわしげ孝「まっすぐな道でさみしい」は2回め。なかなか面白い。まだ放浪生活に入る前、学生時代の山頭火と当時の恋人のエピソード。こんな時分から、己が人を愛せないことを自覚してしまうというのは確かに絶望することでしょうなあ。うめ「ちゃぶだいケンタ」。塾編終了。熱血子供漫画という展開でなかなか面白かった。この人、絵もうまくなってると思う。

 読切、石田純平「迷娘」は、遊園地に行ってはしゃいでいるうちに迷子になってしまった女の子の気持ちを等身大で映し出すって感じのお話。優しい絵柄には雰囲気はあるが、こういういかにも「いい話」系の作品の場合、もう少し作画力が欲しい。稲田恭明「Rock'n Roll Star」。リストラされたオヤジの中で何かが弾け、突然ストリートでギター片手に自作の歌をがなり出す。そのソウルフルなパフォーマンスが話題になり、瞬く間に芸能界デビュー、社会現象を巻き起こしスターダムを駆け上がっていってしまうというお話。爆発力は足りなめながらユーモラスで、手堅く読めるナンセンス漫画といったところ。

【雑誌】ヤングサンデー 5/8+15 No.21+22 小学館 B5中

 今回は付録DVDが。アイドルグラビアや作家インタビューとかが入っているらしい。まだ確認してない。たぶんこのまま再生しないような気がする。そういえば最近すっかり付録CD-ROMだのDVD-ROMだのって使わなくなったなあ。あと今号には武論尊とGacktの対談が載っている。むしろこっちのほうが注目だと思う。作画:SHINYAの読切漫画「MOON CHILD」も掲載。

 作:室積光+画:猪熊しのぶ「都立水商!」がスタート。新宿コマ劇場から歩いて数分、歌舞伎町のすぐ近くにある日本初の水商売教育専門学校を舞台とした学園モノ。お色気路線でバリバリ行くのかと思ったら、初回は意外と普通に学園モノしている。とりあえずインパクトのある設定だが、それをどれだけ生かせるか、といったところ。原案:東野圭吾+画:間瀬元朗「HEADS」は今回で最終回。けっこうシッカリ作ってあって読みごたえはあった。

【雑誌】ヤングジャンプ 5/15 No.21+22 集英社 B5中

 井上雄彦「リアル」が掲載。事故で下半身が不随になった高橋が、子供のころに別れたままだった父親に今一度会いたいと願うが、現実は夢想したようなものではなく落胆が彼を襲う。今回は野宮たちは登場せず。でも読みごたえは抜群。清野とおる「ハラハラドキドキ」。主人公の幼なじみの女の子・岡地面子が妙にかわいいなと思ってしまった! それにしてもサブタイトルの「頭のオカシイ少女」ってそんな……。きたがわ翔の「ホットマン2003」は短期集中連載だったのね。というわけで最終回。5月1日発売の漫革に「楽園のメロディ ホットマン番外編」が掲載予定。それから山花典之「妹 あかね」も今回でおしまい。焦らしに焦らし続けた連載だったけど、最後はわりとあっさりしたハッピー・エンドにまとめてきた。

【雑誌】週刊少年チャンピオン 5/8+15 No.21+22 秋田書店 B5平

 作:森高夕次+画:松島幸太朗「ショー★バン」。ショーバンって本当にガキだなあ。見てて実に微笑ましい。ここまで分かりやすく増長しやすい単純な主人公は今までの野球漫画ではあまり見なかったので、非常に新鮮なものを感じる。まあ実際にはよくいそうですが、こういう人は。園田ともひろ「はぐヤン!とんじる」。友ヤンキーの爆走につき合いつつも、さりげない心遣いを続ける主人公ヤンキーの細やかさが面白い。八神健「ななか6/17」。このところの終盤戦の展開はずっといい。次回も楽しみ。

【単行本】「まゆマテリアル」2巻 高岡基文 ヒット出版社 A5 [Amzn]

 着る服に合わせて人格だけでなく体型まで変化させることができる特殊な能力を持った少女・まゆ。その親であり研究者でも大学教授から、研究生の吉川が彼女をたくされ、さまざまな事件に遭遇していくという物語。この人のエロぢからにはいつも感心させられるものがある。いかにも美少女漫画〜という、まあ「アニメ絵」とかいわれがちな絵柄。ぐちゃぐちゃに濃いわけでもないのに、なんか肌の質感がぴたぴた吸いつくよう。掲載誌の阿ウンには、この手の人材がけっこう多いけどその中でも実用面ではトップクラスでしょう。まあ要するに「写実じゃない、アニメ絵でヌキたいんだ! だから美少女漫画読んでるんだよう」って人は世の中にけっこういるわけで、そういうニーズにしっかりこたえていると思う。

 反面この人はストーリー面はわりと弱い。今回の作品はけっこうきっちりまとまったなという印象はあるけど、エロ漫画としては長めの2巻分使っているのだから、風呂敷はもっと広げちゃっても良かったような気はする。毎回いろんなシチュエーションが楽しめるということで、短編でしばらくやってっていただけるとうれしい。まあこのお話は、服を変えることでキャラクターの体型とかも変えられるからその分変化には富んでいたんだけどね。個人的には男が複数の多人数プレイをもう少し増量してくれると良かったかなあという感じです。


4/23(水)……ソード置き

【単行本】「浅倉家騒動記」1巻 桝田道也 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 いや〜、これいいよ。下らなくて面白い。というわけでモーニングにときどき掲載されていた時代劇モノのギャグ漫画が単行本化。江戸時代は幕末、江戸から近いような遠いようなという中途半端なポジションに位置するとある藩に仕える、浅倉家の面々の活躍を中心としたお話。浅倉家の当主、その息子、お殿様と登場人物たちがみんな間が抜けているのは見てて楽しいし、ギャグもけっこうヒットするものが多くクスクス笑えた。とくに臆病で武士としては全然見込みなわりに手先は意味もなく器用で、ASIMOみたいなからくりを作っちゃう浅倉息子のエピソードなんかすごくいい。絵は垢抜けないものの慣れてくるとだんだんそれが味になってくる。帯に吉田戦車がコメントを寄せてるのはちょっと驚いたけど、確かに彼が気に入るのも分かる。ボケにもツッコミにも殺伐としたところがなくあくまで呑気。ちと画面がゴチャゴチャしてて読みにくいところはあるものの、基本的には肩の力を抜いて気楽に読める。なかなかいいセンスしている。こういうギャグの描き手って貴重だと思いますよ。キレもだんだん良くなってて期待を持たせる新鋭。

【単行本】「示談交渉人M」 佐藤秀峰 竹書房 B6 [bk1][Amzn]

【単行本】「ブラックジャックによろしく」5巻 佐藤秀峰 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 佐藤秀峰2冊が相次いで。「示談交渉人M」については、「ブラックジャックによろしく」がバカ売れしているうちに便乗して出してくれ〜と常々思ってたんだけど、ようやく竹書房が動いた。ついでに小学館も「おめでとォ!」「ハードタックル」で便乗してくれ〜とは思うものの、小学館の腰はさらに重そうな。

 「示談交渉人M」は、とあるハンパなチンピラ風の男・坂本が、雀荘で出会った交渉人・真島によってヤクザの抗争に巻き込まれる。お話は初っぱなからテンパっている。人質を賭けた麻雀勝負に真島が負け、つき合わされた坂本は「殺さなければお前を殺す」みたいなことをいわれ拳銃をわたされ、その銃を真島に向けることとなる。生死を賭けた麻雀勝負という極限状況を描き、その中から命の意味を探っていくといお話はこの人ならではの濃密さ。ちとお話的にはバランスが悪いし無理があるようにも思えるけれども、力づくでガシガシと読まされてしまうことは確か。

 「ブラックジャックによろしく」のほうは、小児科編を経て「がん医療編」へと突入。「がん医療編」に入ってからの八方塞がりで息苦しい展開はやはりボルテージが高いし、医療の現場ってのは恐ろしいもんなんだなあと痛感する。たぶん現場の医師の人たちからの賛否両論はある作品なのだろうけれども、問題提起には確実になるだろうし、ドラマとしても読みごたえがあって面白い。

【雑誌】スーパージャンプ 5/14 No.10 集英社 B5中

 作:武内伸+画:本庄敬「一杯の魂」。なるほど確かに素材に超こだわりまくった佐野実によるラーメンは美味そうだ。あんまりラーメンには興味ないんだけど、それでも食ってみたいという気になる。

【雑誌】近代麻雀ゴールド 6月号 竹書房 B5中

 おお!片桐若菜じゃん。というわけで読切4ページギャグ「神様と12人の弟子たち」が掲載。はなっからまともに麻雀を描こうなんて気はこれっぽっちもないなというところをまざまざと見せつける。この人の軽やかかつ妙なノリのギャグは凄く好きなんで、もう少しいっぱい作品を描いてほしい。せきやてつじ「おうどうもん」。とっても激しい展開。親父と毒蛇がロシアンルーレット麻雀勝負。ショッキングな演出とそれを支える激しい作画。この人もうまく売り出せば、佐藤秀峰ほどとはいかないかもしれないけどブレイクできると思うのだが。みやわき心太郎「打牌速度一秒以内の謎」。例によって例のごとくな、桜井章一教祖の教えを説く宗教的啓蒙漫画。これはヤバい。読み終わってもうお腹いっぱいだと思ったら前編だった……。慄然とする面白さ。

【雑誌】週刊少年サンデー 5/7 No.21 小学館 B5平

 井上和郎「美鳥の日々」。なんだか「クラス愛」を訴える教育実習の女先生がセイジたちのクラスにやってくる。なにか三段論法的思考で生徒たちを誤解してしまう彼女に、ルナ先生の面影を見た。けっこう美人なのでレギュラーキャラになるかと思ったけどならないかな。田辺イエロウ「結界師」。結界を張ることでさまざまな魔物を封じる結界師の家に生まれた少年が、学園生活をしつつ事件に対処していくというお話。「NARUTO」っぽい絵柄。作画、ストーリー作りともにまとまってて、少年漫画の妖怪退治系のお話として完成度は高い。連載向きかも。田中モトユキ「鳳ボンバー」は前号での予告どおり最終回。けっこういいキャラが多かっただけに残念。

【雑誌】週刊少年マガジン 5/7+14 No.21+22 講談社 B5平

 作:さいふうめい+画:星野泰視の「哲也」コンビが、8週連続集中連載「賭博師 梟」を開始。函館中の賭場を荒らしまくる賭博師・梟に、とある雀荘が集めた助っ人たちが立ち向かうというお話。第1回は麻雀牌は使っているものの麻雀はしてない。でもハッタリは利いている。単純なルールのギャンブルだけに、駆け引きの妙が分かりやすい。


4/22(火)……胃に文具

ボディは薄く、画面は大きく〜ベールを脱いだ「sigmarion III」(ZDNet)。これは正直かなり欲しい。でもシグマリオンII買ってからまだあんまり日が経ってないし……。とりあえず安くなるのを待つかな。あとこれも気になった。松下、単3電池2本で3カ月以上使用できる電子ブックを今秋発売(INTERNET Watch)。面白いことは面白いんだけど520gはちと重い。シグマリオンIIIより重いわけだし。どうでもいいんだけどこの画面に写ってる漫画を描いているのってあおきてつおかな?

 まあここらへんのものはいいとして、今一番物欲がそそられているのがA4ノートパソコン。仕事を家に持ち帰るとき、いちいち会社で使ってる3.5kgくらいあるデカくて重いノートを持っていくのが面倒くさいんで……。仕事用のマシンはしょっちゅう環境を汚すソフトとかインストールするので、普段使いのマシンとは分けとかないとけっこう厳しかったりするので、1個独立した環境を用意しときたいんだよね。

【雑誌】イブニング 5/13 No.5 講談社 B5中

 今号から月2回刊化で、毎月第2・第4火曜日発売に。ヤングチャンピオンと同じ発売日であるというと覚えやすいです(←覚えやすくねー)。まあそれはともかくとして、最近あんまり景気のいい話題のない漫画界においては珍しい勢いのある雑誌という感じはする。モーニングに毎号掲載されてる「GOGOイブニング」とか販促活動も気合い入ってるし。ちなみに今号には後述する別冊付録と「What's Michael」のキーホルダーがおまけとして付いている。キーホルダーはなんだが、別冊付録のほうはちゃんと読めるしお得な感じがする。まあ値段も特別定価とはいえ330円に収まってるので納得はできるし。

 で、まずは本誌の内容のほうから。月2回刊になったけれども全体のトーンはそんなに変わらず。ただ連載モノが軒並み一話完結でなくて次号以降に引っ張る展開になっているので、月イチのときのほうがスッキリしてたかも。でもまあここらへんは仕方ないところでしょう。

 安野モヨコ「さくらん」。うまいなあ。芸者を演ずる自分、一人の女としての素の自分、どちらが本当なのか分からなくなったきよ葉の心は千々に乱れる。気品がありかつ艶やかな女心の描写に熟練の技を感じる。作:中島博行+画:カワラニサイ「ホカベン」は新連載。イブニング3月号に第1回小林まこと大賞受賞作「Yellow chicken live.」(そのときの感想は2/19の日記参照)が掲載されたカワラニサイの初連載作品。弁護士という仕事に情熱を燃やす青年が、さまざまな事件を通して法律を巡る厳しい現実にぶち当たっていくというお話。かなりガチンコで熱血な展開だが、骨張ったいかにも根性据わった感じのある絵柄は、テーマに力負けしてないという印象を受ける。まずはお手並み拝見。佐藤マコト「サトラレ」。今回は孤島で暮らす二人のサトラレ、白木と浩少年のエピソード。あの女の子も再登場。可愛いなあ。吉田基已「恋風」。これは月イチ連載。今回はかなりお話が動いてて、いやーもう切なくて参った。進むも退くも辛い状況。冷却期間を置くというのが大人の対応なのかもしらんけど、そうもいかなそうだし。というわけで次の次の号をじりじりしつつ待ちます。

 別冊付録の「イブニング THE FIRST」は、浦沢直樹、しげの秀一、能條純一、佐藤マコトの初期作品をそれぞれ収録。かなり前の作品とはいえみんなうまい。浦沢直樹「Swimmers」はデビュー前の1979年に描かれた未発表作。ますむらひろしライクな猫と犬によるちょっとしたエピソード。なんかこのころから線がすごくこなれててうまかったんだなあと感心した。能條純一「北家の獅子」は「哭きの竜」のちょっと前くらいか。さすがにエロ劇画時代の後の作品ですな。しげの秀一は「めもりい・すのー」が掲載。学園恋愛モノで時代を反映して髪型とかは野暮ったいけど、しげのギャルはやっぱりかわいいなと再確認。佐藤マコト「サオリ」。生殖能力に欠陥があるため人間同士でのSEXが認められなかった青年・山崎と、彼が購入した「人形」と呼ばれる女性型ロボット「サオリ」の暖かい触れ合いを描いた作品。旧型で融通は利かず性欲処理用としては機能的でない、しかし人間くさい魅力を持ったサオリの、イキイキした表情、しぐさがとても魅力的。人形であるがゆえに周囲からは冷たい目を向けられつつも、一生懸命今を生きるサオリ、そして山崎の姿が爽やかな読後感を残してくれる。良作。

【雑誌】ヤングチャンピオン 5/13 No.10 秋田書店 B5中

 以前週刊少年チャンピオンでボクシング漫画「満天の星」を描いてた楠本哲が新連載。「ベンゴ・スター」。タイトルどおり弁護士を目指す青年の奮闘物語。ちょうどイブニングでも「ホカベン」が始まったけど、ひょっとして今アツいジャンルだったりするんすかね。丸尾末広「ハライソ 〜笑う吸血鬼2〜」。血の味に酔う吸血鬼少女・留奈の表情が艶めかしくて惹かれる。前回出てきた失踪した姉を探している少年も、吸血鬼の世界に引き込まれていくんかな。この少年もたいがいアブない感じだが、失踪した姉のほうもかなりなものであったことが今回描かれている。連載再開してからなかなか好調。アクの強いキャラと耽美な絵柄の極彩色な取り合わせにシビれる。

【雑誌】漫画アクション 5/6+13 No.18 双葉社 B5中

 今号にはゴールデンウィーク特別企画「黄金の笑い」が掲載。まあ要するに、しりあがり寿、とがしやすたか、おおひなたごう、芳井一味が4ページずつギャグ漫画を描くというもの。出来としては可もなく不可もなく。ロドリゲス井之助「リーマン戦記独身3」。3人組のうちデブ担当・田巻に独身のわびしさが募り、ついに奥の手を使ってしまうのか、といった展開。今回はちょっとしみる感じだった。こうやって独身男は引き返せなくなっていくわけですな。山崎さやか「東京家族」。壮の家に婚約者とちょっと喧嘩気味な姉がやってくる。そこに居合わせた吉村が彼女のことを気に入ってしまいアプローチをかけるが……。何かと壮に対抗意識を燃やす吉村は、憎めないキャラでけっこう気に入っている。それと我の強い壮の姉がからんできてなんか面白くなりそう。

【雑誌】漫画サンデー 5/6 No.17 実業之日本社 B5中

 長尾朋寿「ホロ酔い酒房」。焼酎の水割りは、割り水して一晩寝かせたほうがうまくなるのかー。知らなかった。今度試してみよう。この漫画はけっこう勉強になります。

【雑誌】ドルフィン 6月号 司書房 B5中

 天崎かんな「大変ルポライター」が巻頭カラー。B級週刊誌の編集兼ライターである不思議ちゃん的な女の子コッコちゃんが、いい加減な編集方針によりファッションヘルスに突撃取材。でもなぜか彼女自身が店長さん相手に風俗嬢体験レポをすることになっちゃって……というお話。コッコちゃんの「〜っスね」というぽわんぽわんしたしゃべり方とか、どんどんHなことをしちゃう軽さとか、明るくて調子のいいノリが読んでて楽しい。肉感的で実用性もけっこう高いし。天崎かんなの罪のない作風は好きだな。うさぎのたまご「死神少女FUCK」。うさぎのたまごの漫画を読むのは久しぶりだが、この人もけっこう気に入っている。陽気なわりに意外と鬼畜。でもそれが殺伐としてないのがいい。で、今回のお話は死神少女が魔法使いのジジイの罠にハマってやられまくるというお話。わりとフツーかな。うさぎのたまごにはもう少しぶっ飛んだのを期待してるんだけど。


4/21(月)……機動帝国

▼郵便局でコミックビーム定期購読1年分の料金を払い込み。今回は忘れなかった。けっこう忘れガチなんだよね、これ。

【雑誌】ヤングマガジン 5/5 No.21 講談社 B5中

 福本伸行「賭博破戒録カイジ」。今回は帝愛のカジノ責任者、一条の内面を描くお話。けっこう屈折してる奴だったのね。三田紀房「甲子園へ行こう!」。新チーム作りへ向けての苦戦は今回も続く。宅見のキャプテン適性が問われる状況。野球マシン、甲子園マシンでは終わらない生の高校生が描けていて読みごたえがある。

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 5/5 No.21 小学館 B5中

 木葉功一「マリオガン」。復活したマリオ少年が、今までのなよっちい美男子ぶりとはまた違った、凄みのある魅力で学校のみんなを惹きつける。まさにスーパーマリオ。なかなか痛快。マリオ少年のことが大好きな女教師さんがいいですなあ。村上かつら「サユリ1号」。最後の最後で直哉は動けず。といったところで次回が最終回。えー、大橋さんはいったいどうなってしまうんだろう……。けっこう苦い締めくくりになるかも? ヒラマツ・ミノル「アグネス仮面」。今回も面白いなあ。アグネス仮面が元大和の先輩レスラーと飲みながら話をするというエピソードなのでアクションはないけど、キャラクターが強いのでぐんぐん引き込まれる。あと最後に出てきておいしいところを持っていく大物二人もさすが。

 今号から「はじめての×× 100」という企画がスタート。100人の漫画家+αが1本ずつ4コマ漫画を描いていくというもの。100人分入力するのはさすがに面倒くさいので、公式ホームページに一覧でも載っけといてくれればいいのに。まあそれはともかくまず第1回は16本。いきなりちばてつやが描いていたのはちょっとびっくりした。あとなぜか乙葉と小川直也と根本はるみと及川奈央が。

【雑誌】週刊少年ジャンプ 5/5 No.21 集英社 B5平

 村田雄介「アイシールド21」。けっこう気になるキャラクターであった、王城のスター桜庭の内面が描かれる今回。このあたりのお話を通じて彼も成長していきそう。使えるコマが一つ増えれば直接対決の面白みは増す。というわけで桜庭の今後の活躍は楽しみ。コンプレックスを抱えたキャラだけに、その成長のドラマはアツいものになるのではないかと。作:ほったゆみ+画:小畑健「ヒカルの碁」。日韓の対決が終局を迎えようとしつつある中、今回も塔矢パパはシブい。ヒカルvs.高永夏の対決はどっちが勝ったか。どっちになってもおかしくなさそうだけど……。

【単行本】「Replace Girl」 ムサシマル 三和出版 A5 [Amzn]

 絵がうまいなあ。肉感的だけどスタイリッシュ。髪の毛の描き方とか、細かいところもいい。最近の三和出版エロ漫画雑誌の中で、シャープな線による達者な作画でけっこう目立ってる。もともとはイラスト仕事がメインの人だったとのことで、これが初単行本。漫画のほうに来て日が浅いということもあり、いろいろなストーリーを試してる様子が伺える。SFっぽいのがあったり、ロリだったりラブコメだったりハードエロだったり。ストーリー面ではいずれもいい線行ってるんだけどもう一押し足りないかなという印象を受けるのだけど、魅力的な絵柄はいろいろなタイプのストーリーで生きそうだし、可能性は感じるし期待してます。


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