2003年12月中旬


12/20(土)……君の瞳をツイホする

▼「指輪物語」の新版の文庫にもようやく追補編[bk1][Amzn]が登場。ということをyama-gat siteの12/19の項で知り購入を決意。これまで自分が愛読していた旧版は、1972〜1975年にかけて出版された化粧箱入りのハードカバー版。これは表紙もちゃんと布張りの赤表紙本となっているいとしい本なのだが、旧版と新版では日本語訳が細部で異なっており、どの程度違っているのかを知りたかったので前々から新版も買わなきゃなあと思っていた。とくに固有名詞や地名の表記の違いが気になっていた。でもすでに旧版があるのにさらに新版をハードカバーで買うのは邪魔くさいし、さりとて文庫版は追補編がないし……とこれまでは二の足を踏んでいたのだった。まあそんなわけで、これでようやく支障がなくなったので新版を心置きなく買える。ていうかもう注文しちゃった。本編9巻セット[bk1][Amzn]と合わせて。

【雑誌】ビッグコミックオリジナル 1/5 No.1 小学館 B5中

 水島新司「あぶさん」。なんか景虎に恋人ができるとかそういう話題が。来年のオフあたりには結婚すかね。あぶさんが孫と対決するためにはそろそろ仕込んでおかないと。

【雑誌】花とゆめ 1/10 No.2 白泉社 B5平

 椿いづみ「親指からロマンス」はシリーズ掲載から連載に昇格。マッサージ研究会所属の女の子・千愛と、マッサージしたくなるような素晴らしい背中を持つモテ男な陽介をメインとした学園ラブコメ。ドタバタしたいかにもラブコメらしい作品となっていてわりと好き。変則的なコマ割りが多く、画面がガチャガチャしててちょっと読みにくくはあるけれども。藤原規代「HELP!!」。「次号、感動のクライマックス」と書いてあるからラス前なのかな。常に涙でうるんでいるかのようなヒロインの目の描き方が印象的。登場人物が一生懸命頑張ってるなということが伝わってくる素直な作風に好感が持てる。ただせっかく医者を目指す少女の話なのだから、医療シーンはもう少し出てきたほうがお話に厚みが出たかな〜という気はした。

【単行本】「アイドル地獄変」 尾玉なみえ 集英社 B6 [bk1][Amzn]

 消えたわけでもないのに帯に「早すぎた奇才」とか書かれる人も珍しいな……。というわけでビジネスジャンプに連載されて、スパッと打ち切りをくらった妙ちきりんアイドル漫画がめでたく単行本化。主人公の海ひろ子16歳はアイドル志望の女の子。ドジでマヌケで頭がちとおかしい。熱意だけはある。そんな彼女をアイドル仕掛人の紅がよせばいいのに拾ってしまったもんだから周囲の人たちはいい迷惑。そんなわけでひろ子が奇矯な行動をし、周囲の人が扱いに困るという内容です。

 まあそんなわけで、尾玉なみえらしいヘンなギャグがいろいろ炸裂しまくるこの漫画。おかしな話が多くて個人的にはけっこうお気に入り。とくに終盤は、ひろ子が雄パンダの性欲を刺激すべく演技する話とか、どんどんアイドルとかそういうのを完全に無視した展開にいっちゃってて面白かった。回を重ねるごとにうれしい逸脱ぶりを見せてくれている。まあ打ち切りかもしんないけどさー、打ち切り漫画でないと出てこないようなねっちょりした味わいがあってええんでないかなーと思いますよ。

【単行本】「恋愛ジャンキー」12巻 葉月京 秋田書店 B6 [bk1][Amzn]

 ミホがいなくなって失意のエイタローが、取引先の巨乳アイドル系プロダクションの面々、および地井さんたちと温泉ツアーへ。かねてから人気が(俺内で)高かった地井さんがいっぱい出てくるようになってきてて喜ばしい。

【単行本】「無敵看板娘」6巻 佐渡川準 秋田書店 新書判 [bk1][Amzn]

 安定して面白い。主人公の鬼丸美輝だけでなく、めぐみ、太田らの脇役もキャラが立ってて楽しくドタバタ。トムとジェリーのごとく、仲良く喧嘩している感じがとてもイイ。この巻に収録された話では、美輝の子供のころからの相棒であったおかもちが討ち死にを遂げるあたりのエピソードがシュールで良かった。サバサバしててひねくれない作風も気持ちいい。

【単行本】「BRII ブリッツ・ロワイアル」1巻 富沢ひとし 秋田書店 新書判 [bk1][Amzn]

 田口版、深作版、高見版とも違う「バトル・ロワイアル」……といったことが帯に書かれている富沢版BR。これまでの「バトル・ロワイアル」が陸軍におけるプログラムであったという設定のもと、今回は生徒たちが海軍の作ったプログラムのもと殺し合いをさせられることに。というかまだ生徒同士の殺し合いになるのかは分かってなくて、修学旅行の最中に連れ去られた中学生たちが、海軍の課したカリキュラムに参加させられて戦争を学ばされている状態。主人公の少女・橋本真恋人(はしもと・まこと)は、生まれついての自分の不幸さを気に病んでいたが、今度の不幸はハンパじゃない。進むことも逃げることもかなわぬ状況で、デス・ゲームは続いていく。

 この設定のもとではウネウネした異世界の生物とか出しようがないし、富沢ひとしらしさがちゃんと出るかなーとか最初は思っていたけど、お話としてはなかなかしっかり読ませる。キャラクターは例のぷにぷにした顔つきをしているだけに、「ああ、ヒドい目に遭ってるなあ」というのがよりヒシヒシと伝わってくる。「バトル・ロワイアル」のシリーズは、たしかに少年少女が人殺しをするんだけど、その過程での感情の動きや各人の背景、その先にあるものをけっこうちゃんと描写している。そのせいかけっこう感触としてはウェットで、殺伐としたことをしているわりに読後感は殺伐とした感じにはあんまりならない。そういうところはいいと思う。


12/19(金)……狂える残酷なお師匠

▼帰りがけに神田駅周辺で呑もうとするも、この時期の金曜日といえば、世の中は忘年会のピーク時期。5人で飛び込みで入ろうとしたら10軒くらい連続で満席で入れず。ようやく入った店でも4人席に5人を詰め込むという盛況ぶり。恐るべしボネーン。でも飲み会自体はたいへん楽しかった。帰りは隣駅から歩いて帰ったが、酔っ払ってたのであんまり寒さは感じなかった。

▼未読物
【単行本】「アイシールド21」6巻 村田雄介 集英社 新書判 [bk1][Amzn]
【単行本】「ちょこっとSister」1巻 作:雑破業+画:竹内桜 白泉社 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「職業・殺し屋。」2巻 西川秀明 白泉社 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「恋愛ジャンキー」12巻 葉月京 秋田書店 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「無敵看板娘」6巻 佐渡川準 秋田書店 新書判 [bk1][Amzn]
【単行本】「BRII ブリッツ・ロワイアル」1巻 富沢ひとし 秋田書店 新書判 [bk1][Amzn]
【単行本】「アイドル地獄変」 尾玉なみえ 集英社 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「祝!できちゃった結婚」 宇仁田ゆみ(文:清水美音子) メディアファクトリー A5 [bk1][Amzn]
【単行本】「さべあのま全集1 モト子せんせいの場合」 さべあのま メディアファクトリー 文庫 [bk1][Amzn]
【単行本】「江戸川ハートブレイカーズ」1巻 須田真太郎 講談社 B6 [Amzn]

 「江戸川ハートブレイカーズ」は古本。初版は1994年。Amazon.co.jpのユーズド商品で250円。インターネットで探すと2巻セットだと3000円くらいしちゃうんで、2巻は気長かつ適当に探す。どっか復刻してくれませんかのう。

▼自分でいうのもなんだが本日のタイトル部のダジャレは分かりづらい。まあこういうことです。

【雑誌】ウルトラジャンプ 1月号 集英社 B5平

 やまむらはじめが初登場で、新連載「蒼のサンクトゥス」がスタート。外宇宙から地球に落ちてきた人間が中に入ることのできない特殊な空間「A-NEST(エイリアンズ・ネスト)」。その周囲から発見される特殊なレアメタルを求めて、海に潜り採掘を行うチームの面々が主人公。設定は特殊だがこれからの広がりもいろいろありそうな気配で、まず初回はいい感じであるように思えた。あんまり分かりにくくならないレベルを保ちつつ、サクサク進めていっていただきたい。okama「CLOTH ROAD」(脚本:倉田英之)。今回もなかなかいい感じ。コンピュータを使った服をまとってリングバトルをする……ということで、こちらも設定は風変わり。でも絵の魅力も十分だし、今後の展開も楽しみ。あと大暮維人「天上天下」がアニメ化決定だとか。放映開始は来春の予定。

【雑誌】月刊サンデーGX 1月号 小学館 B5平

 吉田蛇作の読切「デス・プリ」が掲載。主人公の少年が、子供のころ一緒に遊んでいたときに古井戸に落ちて行方不明になっていた幼なじみの少女と、十三年ぶりに再会。ところが彼女は古井戸とつながっていた異世界において、世界の覇者として君臨する女王となっていて、主人公にも世界征服をさせようと大暴れするのだった……というドタバタコメディ。この人の女の子の肉付きが良い、明るく健康的な絵柄はエロ方面でもいい具合だったが、こっち来てもちゃんと似合ってるなあ……。エロだけが持ち味なタイプって人でもないので、今後も幅広く活躍してくれるとうれしい。うまくハマれば吉崎観音チックにやっていけるんじゃないでしょうか。

【雑誌】チャンピオンRED 2月号 秋田書店 B5平

 作:南條範夫+画:山口貴由「シグルイ」。禍々しく登場した舟木道場の双子がインパクトあり。でもそれ異常に「い いくぅ」とか呟いている気のふれたお師匠さんがいい。単行本1巻は1月22日に発売とのこと。有川祐「N.S.Q」。意味のない嘘ばかりついている少年と、彼の嘘を見抜く特技を持ったその友人。しかしある日嘘つき少年がついた嘘には、ちゃんとした意味があって……。短いながらもほろりと泣かせるいいお話。うまいです。

【雑誌】まんがくらぶオリジナル 2月号 竹書房 B5中

 まあいつものとおり。短期集中新連載で佐藤両々「しょっぴんブギ」が開始。新人さんらしいいけどなかなかうまい。お話のほうは、ほっとくとなんかヘンなものばかり買ってくる天然ボケのOLさんを主人公としたギャグ。そのほかでは、あっきう「おかえりっサクちゃん」がけっこうシリアスな展開になってて目をひいた。

【雑誌】コミックバンチ 1/9 No.3 新潮社 B5中

 坂本タクマ「屈辱er大河原上」。着々とスターダムをのし上がって行く漫才コンビ、ヒゲ&ツボ師。この勢いで単行本2巻も出してほしい。小野洋一郎「ブレイブストーリー」(原案:宮部みゆき)。ヒロイン役の大松香織ちゃんがカワイイ。

【単行本】「占い刑事」 桑澤篤夫 集英社 B6 [bk1][Amzn]

 「世界のクワサワ」の本領発揮。すげーくだらねー。死ぬほどくだらないっすよ、この作品は。主人公の城戸我宝は東新宿署の刑事。そして占いの名人である。その彼が占いを駆使して事件を解決……するようなしないような。このようにあいまいな書き方をするのは、城戸が披露する占いの知識は、主に「人相や手相などから女性のアソコの具合を当てる」ためのものだから。収録されている話でこの作品を象徴しているのが第5話「名器の耳」。最初はいちおう殺人事件の捜査会議から始まるんだけど、そのうち会議は人相から犯罪者を見分ける方法へ話題がシフトしていき、さらには人相により性器の形状を当てる方法へと進んでいく。そして会議は白熱し、城戸の申し出により「事件が行き詰まった時は行ってみるか」とかいって、捜査陣全員でソープに繰り出す。そしてみんなで名器の女の子を見つけて「占いの力って本当に凄い!最高だ!!」とサッパリ。ちなみに事件は最後の2コマで何の前触れもなく突然解決いたします。占いする必然性なんてまったくないじゃん……。というわけでもう本当に骨の髄までいいかげん。でもそこがいい。あまりの下らなさに脱力しまくり。いやー、桑澤篤夫って、よくこんな漫画描くよなー。こんなくだらない漫画はこの人じゃなければ描けない、っていうかフツー描かない。このどうしようもなさが、とても好きだ。クワサワ漫画についてはいつか極めてみたいような気もする。

【単行本】「BECK」17巻 ハロルド作石 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 いつもながらしっかりと面白いし、ライブのシーンの気持ち良さは鳥肌モノ。この巻では「BECK」が、グレイトフル・サウンズ出場を目指し、初の国内全国ツアーへ旅立つという展開。まあ恐らくはグレイトフル・サウンズにも出るんだろうけど、そこでどういうパフォーマンスを見せるのかもすごく楽しみ。


12/18(木)……カタカナ字

▼たまには日付が変わらないうちに日記を更新するぜ〜。

▼↑とかなんとか思い立ったのは、本日はちゃんと寝ようと思ったから。このところ夕方くらいに寝て夜になってからごそごそ起き出して活動を開始するという感じで、生活サイクルが完全に昼夜逆転状態になっちゃっていた。それをしっかり寝ることでリセットするのが狙い。というわけで本日は早寝します。まあ就寝は0時くらいなんで、一般的に見ると早寝じゃないのかもしれないけど。何はともあれおやすみなさい。1・2・3・グー。

【雑誌】オースーパージャンプ 1月号 集英社 B5中

 伝説のご当地ラーメンの繁盛店を描いた作:武内伸+画:大泉孝之介「−ラーメン人物伝− 一杯の魂」。今回は白河・とら食堂の巻。けっこうコンスタントに読める安定した仕事ぶり。まあ実のところ、個人的にはラーメンにあんまり興味なかったりもするんだけど、食い物の話はすごく好きなのでその手の漫画はつい読んじゃう。

【雑誌】ヤングサンデー 1/15 No.3 小学館 B5中

 イマイチ面白くない〜。淡々と安定して仕事をしてるって感じの作品ばかりでワクワクしない。現在ヒートアップしているのは守村大「パラダイス」くらいだろうか。石川優吾「格闘美神 武龍」はけっこう好きだったけど、発ケイが出てきたところでちょっとクールダウンしてしまった。

【雑誌】ヤングジャンプ 1/15 No.3 集英社 B5中

 新連載、作:荒仁+画:坂本眞一「にらぎ鬼王丸」がスタート。これはなかなか力強くて面白かった。時は江戸中期。熟練した刀鍛冶のもとで修行を積んでいた青年・鬼王丸がたどる数奇な運命を描いていく。1話めは、と自分が鍛えた刀のせいで少年が殺されたことを悔いた鬼王丸が、真の刀鍛冶への道に目覚めるというストーリー。シャープで骨太な作画は達者だし、物語にも力がある。アクションも派手で目をひくし、シッカリした作品となっている。てなわけで次回以降の連載にも期待。

【雑誌】メンズヤングG(アクションピザッツ 2/1増刊) 双葉社 B5中

 しまった。増刊枠だから中身みないで反射的に買っちゃったんだけど、中身は大島永遠「女子高生」の再録本だった……。どおりで副題が「女子高生スペシャル」なわけだ。ほかの漫画も載ってるんじゃないかなと思っていたんだけど「女子高生」だけだった。いや、別に「女子高生」が悪いってわけじゃなくて、アクション本誌でちゃんと読んでたんで、わざわざ増刊買う必要はなかったな、と。まあいいんすけどね。

 なお次号は2月中旬発売とのことだが、次は全部新作描き下ろしでメンバーも多彩。榎本ナリコ、大島永遠、陽香、桐原いづみ、倉上淳士、藤真拓哉、堀口純男、山名沢湖、友美イチロウ、私屋カヲルがクレジットされている。山名沢湖の名前があるのがちと意外。

【単行本】「A wish たった一つの…を込めて」 奴隷ジャッキー エンジェル出版 A5 [Amzn]

 いいよいいよー。作者自身はこの作品について「純情直球ラブメキストーリー」と書いているけど、もう本当に直球すぎて、パワーが暴発して孫六ボールみたいに暴れまくっているという感じ。出だしからして、主人公の森崎くんが、初めて見たときから憧れていた美少女・霧島さんが初詣の人混みの中で痴漢されててそこから輪姦へ……という情景を目撃するところからスタート。そのままお話は紆余曲折を重ね、最終的に二人が劇的に結ばれるところまで猛烈な勢いで突っ走る。

 正直なところお話としてはけっこうメチャクチャではある。そもそも出だしからしてそうだし、二人が惹かれ合っていく必然性もよく分からんところはある。でも最終回あたりまで行くと、そういうのはもうどうでも良くなる。超早漏の森崎くんが、血が出るまで霧島さんに身体をこすりつけものすごい回数の失敗の後、ようやく初めてのSEXに至るシーンには感動さえしてしまう。汗とよだれと鼻水にまみれ、さらに鼻血を噴き出しお互いの身体をめり込ませ合うようにして交合するその熱さ、激しさにクラクラする。これを「奴隷ジャッキー作品においては異色なホドにキレイ着地を遂げた」と語る作者は、やっぱり独特の感性をしていると思う。アクは強い。読者を選ぶとも思う。でもこういうのを描ける人はほかにいないと思うし、個人的にはすごく気に入っております。

【単行本】「ZODIAC LOVERS」 B.たろう ワニマガジン A5 [Amzn]

 宝瓶宮に住む水瓶さんが、いろいろな星霊さんの仲を取り持ったり取り持たなかったり……というほのぼの日常ファンタジー。柔らかくキュートなB.たろうの作画と、優しいお話作りが心地よい作品。で、とてもきれいでかわいらしいんだけど、物語的なフックはちと弱いかなー。一話一話が短いというのもあるけど、単行本1冊分続けて読んでいると途中でちょっと飽きてきた。

【単行本】「中出し専科」 草津てるにょ 司書房 A5 [Amzn]

 草津てるにょがいろんなところで描いた短編を集めた本。この人はストーリー的にはさほど特筆すべきところはないんだけど、ピチピチに熟れた妙齢の女性を描いたときの実用性の高さは折り紙付き。つやつやした乳肌はいやらしさは十分。個人的にはそれだけで見る価値はあると思う。あと時折バカっぽいネタをやるときはけっこう笑えたりもする。

【単行本】「少女牧場」 春籠漸 シーズ情報出版 A5 [Amzn]

 自選初期作品集とのこと。現在は体液ドピュドピュの密度の濃い輪姦モノが売りの春籠漸だけど、このころはまだヌルめな作品が多い。もともとはそんなに器用に絵を描くタイプの人ではないし、最初のころの作品は正直なところいまいち。ただ現在につながる実用性の萌芽はところどころに感じられたりはします。


12/17(水)……回帰線、バーン!!

▼未読物
【単行本】「未開の惑星」上下巻 松本次郎 太田出版 B6 [bk1][Amzn:/
▼19日売り
【雑誌】月刊サンデーGX 1月号 小学館 B5平

▼サンデーGXは今月から定期購読サービスを利用。発売日の2日前に届くとはなかなか優秀。これで送料無料なのだからありがたい。

【雑誌】週刊少年サンデー 1/1 No.3 小学館 B5平

 新連載、川久保栄二「怪奇千万!十五郎」がスタート。測定不能の知能指数を持つ天才少年を主人公にした推理モノといったところ。4/30 No.20に掲載された「竹の子ドクター」の推理アクション版といったところ。初回の敵役は魔少年B・Tっていうか、電気を自在に操る奇術師B・T(BLACK THUNDER)。んー、まあそこそこなんだけどちょっと絵は古めだし、期待度は低めかな。井上和郎「美鳥の日々」。セイジの子分のいい男、宮原がルーシィをデートに誘うも……といったお話。ラブコメだなあ。宮原はけっこういい人っぽいので報われてほしいもんです。

【雑誌】コミックメガストア 2月号 コアマガジン B5平

 今月号もしっかり面白い。この雑誌は本当に粒が揃ってる。

 で、今号はまず國津武士「Empress!」が最終回。ちっちゃな女帝ちゃんと、彼女の婿として見込まれたあんちゃんのHラブコメも大団円。今回はあんちゃんが女帝ちゃんの記憶を失ってしまうが……というところから始めて、きれいにハッピーエンドまで持っていった。女帝ちゃんはとてもかわいかったし、ストーリー、絵柄ともに愛敬がある。締めも後味が良かったし、最後まで楽しめた。月野定規「♭38℃」。主人公の少年を中心とした三角関係は、切なさとエロさを増すばかり。「捨てないで」とすがる先輩の姿が胸にドキューンとくる展開。エロシーンにしろ恋慕の情にしろ、しっかり熱を持って描けていて印象に残る作品となっている。この連載も好調。

 和六里ハル「発電ぱんだくん!」。いつでもおちんちんが立ちまくりな性欲少年ぱんだくん。それを囲んで不思議な女の人の絹枝さん、すみません名前忘れた同じクラスの女の子、それからその子のことが好きなささげちゃんが毎回くんずほぐれつ。今回はささげちゃんがぱんだくんと絹枝さんにいじられまくっててこれまた楽しい。明るくて可愛くてエッチで、あとドタバタコメディとしてもいい感じ。ひぢりれい「Nouvell Vague」は5回め。だけど1年ぶりの掲載なんでさすがにストーリーなんか全然覚えてない〜。とりあえずネコミミのメイドさんが出てきたりしてます。絵はいつもながらすごくうまくて感心。

 THE SEIJI「似た者夫婦」は、昨日の日記で書いたとおりこれでしばらくエロ方面お休みというとりあえず打ち止めの1本。自分の女を上司に差し出して出世を狙う男と、そうされることに快感を感じてしまう女という似た者カップルのお話。まあ鬼畜ネタといえばそうなんかもしれないけど、けして殺伐としたモノにならないのがイイ。というわけでチャンピオンでも頑張ってくださいませ。田沼雄一郎「放課後個室倶楽部」はボーイズラブはHであります。美少女誌ながら少年たちがガチンコにH。両少年ともかわいいですのう。そのほか今号では玉置勉強「クラスメイト」の痛々しさの混じった艶めかしい少年少女エロ世界、RaTe「としょいいんちょ」の巨乳めがねっ娘っぷり、隅田かずあき「武藤さんとケイ君の場合(仮)」の切ないラブストーリー、新人・如月群真「染めろ!転校生」の異常なクラスで繰り広げられる密度の濃いフリーセックス……といったところも印象に残った。いや〜2冊に分けても満足できそうなくらい充実してますな。

【雑誌】コットンコミック 1月号 東京三世社 B5中

 渡辺ヒデユキ「マスカキの恋」シリーズ、「恋は盲目」。いつも馬鹿馬鹿しくていいな〜。マスカキに恋した奇特な女性がなんかアヤシイことを開始しそう。しょーもなさバリバリで素晴らしい。ハマダユタカ「Two Hearts」。ああ、ますます田中ユタカっぽい……。たぶん同一人物ではないと思うけどアシスタントさんかなんかかなあ。


12/16(火)……拝観な日

▼コミックメガストア2月号の目次のところをちょろちょろ見ていたら、THE SEIJIの作者コメントのところに「しばらくチャンピオンで修行します」と書いてあってちょっとびっくり。「情報遅いよ」「今さら気づいたのか」っていわれるかもしれないけど……。「どのチャンピオン?」って思ったがTHE SEIJI HOMEPAGEの日記(現在のTHE SEIJIのコーナー)の10月15日の項によると週刊少年のチャンピオンだそうな。そして今後しばらくは成年マーク作品はお休みだとか。個人的には、2003年のエロ漫画界のMVPを一人選ぶとしたらこの人(もしくは師走の翁あたり)だと思っていた。いろんなところで精力的に仕事してたし、クオリティもコンスタントで、毎回楽しく読めた。そんなわけでエロ漫画のほうで読めなくなっちゃうのは残念だけど、チャンピオンのほうでどんなの描くかは楽しみ。

【雑誌】ヤングマガジンUppers 1/6 No.1 講談社 B5中

 村枝賢一は「RED」がお休みで、スペシャル読切「ジングルベルアーミー」での登場。国連平和維持軍で連戦している一兵士のゴードンと、国連の親善大使としてサンタの格好をしてやってきた少女のお話。苛烈な戦場に咲いたハートフルな物語。しっかりしたお話作りで見せ方もうまく楽しめる作品に仕上がっている。あとクリスマス企画として、村枝賢一、大島永遠、真島ヒロ、Tony、桑原真也、士郎正宗、たかみち、吉崎観音、はっとりみつるがカラーイラストを描いている。みんなうまいけど、この中では真島ヒロのイラストがダントツにエロいと思った。サンタギャルがキワどい格好を恥ずかしがってて、汗ばんで悶えているさまがソソる。塀内夏子「史上最低のレガッタ」は最終回。手堅くまとめてきたけど、まあそこそこって感じかなー。塀内夏子作品の中ではあんまり面白くない部類だと思う。

【雑誌】漫画サンデー 12/30 No.50 実業之日本社 B5中

 作:倉科遼+画:勘崎順次「愛と復讐の挽歌」。そろそろクライマックス。濃い復讐劇ドラマを展開して、いよいよ最後の一丁場といったところ。ベタといえばもちろんそうなんだけど、それだけにエンターテインメントとしては太い読みごたえ。長尾朋寿「ホロ酔い酒房」(原案:野上ヒロノブ)。今回は中華料理&花彫酒なお話。うまそうだなー。とても食いたいとても飲みたい。最近もうのべつまくなし、おいしいものを食うことばかり考えてますよ。

【雑誌】ラブマニ 1月号 平和出版 A5平

 駕籠真太郎「忍法武芸帳」は最近好調。今回は竹内文書を持ち出してきて、モーセの末裔で海だけでなくなんでも割る忍法を駆使する忍者が登場。それと前回ブイブイいわせた毛忍法を駆使する忍者が対決するという図式。罰当たりなネタで縦横無尽。楽しいです。加賀美ふみを「The hard core」は新シリーズ。すごく無口で自分の気持ちを表にすることのできない女の子が、「子供のころみたいになんでも素直にいえるようになりたい」と願ったら、本当に体がちっちゃくなっちゃってカレシはドギマギしまくる……というお話。いつもながら可愛くラブラブで、しかも今回はロリ。続きモノになるみたいで今後の展開も楽しみ。

【雑誌】ひな缶Hi! Vol.02 茜新社 B5平

 ロリ専門エロ漫画雑誌2冊目。コミック天魔の増刊。天魔系の雑誌はやるだけ系の作品が続くものが多くて、読んでて飽きることが多いのだけど、この雑誌はけっこういい。もちろんやるだけな作品もあるが、全般に愛敬のある作風の人が多く、エロだけでなくお話としてもそれなりに楽しめる。

 この中ではまず國津武士「特別補習」が楽しい。忍者学校で、くノ一少女3人娘が先生に金縛りの術をかけて、いろいろHないたずらをするというお話。ちっちゃい娘さんたちが大人の男である先生を誘惑しちゃう過程の賑やかさ、華やかさがグッド。猫玄「ミガワリ」は、妹の下着の匂いをかいでふんがふんがしている変態兄のペースに、妹ちゃんが引きずられていくというお話。コメディテイストだけどエロ度もけっこう高め。猫玄は安定感あるなあ。ベンジャミン「雨に濡れて」は一本一本はシャープだけど、全体的に見ると柔らかさの出ている描線で目をひく。鼻をあまり目立たせないで描く女の子の表情に艶があっていいです。

 狂一郎「町の社長ちゃん!」。父親が亡くなって町工場の経営を受け継いだ女学生社長ちゃんだが、その工場が作っていたのが大人のおもちゃだったと知ってビックリ。でも工場を維持するため、頑張って自分でモニターをやって品質工場に励むのでしたという話。だんだんやってることがエスカレートしていく過程がけっこうH。あらきかなお「ひとりじめ」は、イマ風に洗練されたテクスチャーと描線の兄妹モノ。見た目がスッキリきれいで萌え度も高め。そのほかてるき熊、メラメラジェラシー、T.K-1、巻田佳春あたりも好印象。

【単行本】「生きるススメ」 戸田誠二 宙出版 A5 [bk1][Amzn]

 作者のWeb「COMPLEX POOL」で公開されたショートコミックを中心に、描き下ろし2本を加えた全30本の短編集。以前Web漫画をいろいろ漁っていたときにこの人の作品は何度か見たことがあって、印象に残ってはいた。でも全部詳細に読んだことはなかったんで、こうしてまとまってくれたのはうれしい。

 で、紙の本でまとめて読んでみたけど、これはなかなか面白いです。絵柄は素朴ながら味があるし、訥々とした語り口も読者に訴えかけてくるものがある。ページ数は1〜8ページ程度と短いながら、時折泣けてくるようなお話もあるし。とくに人の命を扱ったお話がいいと思う。収録作品の中では「小さな死」「2009年の決断」「花」あたりがとくにジーンときた。描き下ろし作品を除いては、作者Webあるいはこのあたりで読むことができる。こういうふうになってると、くだくだしく説明しないでも「まあまずは読んでみろ」といえるから楽でいいです。

【単行本】「あの月の光のように」 内田雄駿 河出書房新社 A5 [bk1][Amzn]

 九龍で連載された作品。頭脳明晰、スポーツ万能の少年が抱えてしまった秘密。それは母親が、ひきこもりとなった実の兄を殺害してしまったこと。彼はそれを隠蔽するために兄の死体をバラバラに解体するが、罪悪感は日に日に彼の精神を蝕んでいく。ストーリーは非常にシリアスな雰囲気のまま展開。その中で苦悩する青春を描き出していく視点はなかなかに鋭くて、読みごたえもあった。

 まあそんなわけで面白い作品であることは確かだし、内田雄駿という作家の力量もかなりのものがあるとは思う。でも帯とか巻末の解説の言葉は、ちょっと身内誉めしすぎかなあという気もしてしまう。帯は売るためにつけるものだから、多少オーバーに書いてもいいとは思うんだけど……。九龍は雑誌内でもそんな実績のない作家さんをやたら持ち上げるようなインタビューをしたりすることが多いし、そういうところはちと鼻につくところはある。


12/15(月)……ミスった油不満

▼年末なんでわりと忙しめ。生活サイクルも不規則になっております……ってそれは別に年末だからってわけじゃないか。

▼16日売り
【雑誌】ヤングマガジンUppers 1/6 No.1 講談社 B5中
【雑誌】漫画サンデー 12/30 No.50 実業之日本社 B5中
【雑誌】ラブマニ 1月号 平和出版 A5平
▼17日売り
【雑誌】コミックメガストア 2月号 コアマガジン B5平

【雑誌】近代麻雀 1/15 竹書房 B5中

 画:張慶二郎+画:浜田正則「ミスターブラフマン」。なるほどブラフマンにはそういう過去があったのか。ギャグ漫画としてコンスタントに面白いと思う。作:阿部譲二+画:堀田あきお&かよ「監獄ギャンブラー」は今回でおしまい。しみじみとした感じで締めくくり。阿部譲二原作の漫画で面白かったのってあんまり記憶にないが、この作品は健闘していた部類かな。

【雑誌】ビジネスジャンプ 1/10 No.2 集英社 B5中

 読切で登場の中ナナ「アポロ」。バイトをクビになり彼女にもフラれてどん詰まりな27歳フリーターの男が、昔にタイムスリップして子供のころの自分の姿を見て、またやり直すきっかけをつかむという話。さほどビンビン来るようなエネルギーは感じないが手堅くまとめてきている。絵柄的には大武ユキや「Big Hearts」の林明輝っぽい感じ。

 村生ミオ「男の時間」。うわー、開き直ってるなあ。今回は見開き扉が巨乳のドアップ。そしてサブタイトルは「うなれ、巨大乳!!」。さらにペンネームの上のところには「★サー・チチグランデ」とか書いてある。で、内容は町で噂の巨大乳をグラビア撮影すべく、主人公がその持ち主である主婦をおっかけるというお話なんだけど、8ページまでその主婦は顔がコマの外に出ていて乳が強調されまくる。この村生ミオの恥じらいのまったくない作風は、もはや職人芸の域というかなんというか……。この人は何がどうなってこうなったんだろうなあ。気になる作家さんだ。そういえば村生ミオの単行本全部持ってるって人っていうのもあんまりいないんじゃないかと思う。

【雑誌】ヤングマガジン 1/15 No.3 講談社 B5中

 最近週刊少年マガジンがなんだか迷走気味だけど、ヤンマガもここしばらくあんまり元気がないと思う。手堅く面白いっていう作品はあるんだけど、あえてコレがっていう突出した作品が最近ないような気がしますなあ。なんか新顔でブイブイぶっ飛ばすような人が一人出てくるとだいぶ印象が違うと思うのだけれど。

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 1/15 No.3 小学館 B5中

 花沢健吾が久々登場。新連載「ルサンチマン」。もうすぐ30歳になろうかというのに彼女もいなければ、仕事にもやりがいを見出せない、顔はすっかりオヤジ顔……そんな主人公が見つけた新しい世界、それは触感を伴うコンピューター世界で女の子と出会うことだった、という出だし。最初地味だったので気づかなかったけど、舞台は実は近未来。バーチャルリアリティもずいぶん進歩していて、ギャルゲーの世界も現実さながらになっているという設定。なかなかに生々しいが、ユーモアがあってけっこう読める。端々のディティールとかがしっかりしているし面白いと思う。絵柄はちょっとハロルド作石似になってて、作品のテンポも悪くない。というわけで期待。ちなみに自分日記で調べたところ、「花澤健吾」名義のヤングサンデー1999年1/29 No.7掲載の「退屈な月」(感想→1999年1月13日の日記)、スピリッツ200年6月増刊Manpuku!掲載の「ジョニィからの伝言」(感想→2000年5月1日の日記)、「花沢けんご」名義のスピリッツ2003年1/1 No.1、1/8 No.2掲載「ラウンドガール」(感想→2002年12月9日の日記)が引っかかった。

 ヒラマツ・ミノル「アグネス仮面」はとても面白い、面白いのだが……えー、ここで中断しちゃうんですかー!!と悲鳴をあげたくなるようなヒキの強い展開。いよいよアグネスの必殺技が炸裂ダーとか思ったら、4月5日発売号までお休みとのこと。これはツラい。なおアグネス仮面の必殺技が何かを答える「必殺技当てクイズ」というのも実施されているので、詳しくは雑誌のほうをどうぞ。玉井雪雄「OMEGA TRIBE」も面白くて先が気になるのだが、こちらも続きはNo.6+7合併号までお預けだとか。何かと生殺しな今号のスピリッツ。古屋兎丸「π」。パイダーマンの女性版が登場! ますます妙ちきりんな展開になってて、素直に楽しい。

【雑誌】週刊少年ジャンプ 1/15 No.3 集英社 B5平

 梅澤春人の新連載「LIVE」がスタート。イジメられっ子が呼び出した悪魔を、ひょんなことから引き継いでしまった少年・勇太朗。しかしその悪魔・スレイヤを人間にしちゃうという願い事をしてしまったばかりに、奇妙な共同生活が始まるのだったというお話。初回はドタバタ展開。まだどうなるかはよく分からないけど、初回はまあまあ楽しげ。作:大場つぐみ+画:小畑健「デスノート」。連載3回めだが好調。しっかり面白い。物語世界にきっちりルールを設定し、その中で巧みにドラマを盛り上げていく手腕は鮮やか。あとライトの妹ちゃんがけっこうかわいかった。作:稲垣理一郎+画:村田雄介「アイシールド21」。パンサーが試合に登場して、快足ぶりを披露。アイシールド21に負けず劣らずなスピード感を発揮しててこちらも痛快。河下水希「いちご100%」は、修学旅行先で西野さんと真中くんがデート、みたいなものをする。いやー、こっちもかわいいですね、とそのときどきで意見がくるくる変わる俺だ。

【単行本】「大変ルポライター」 天崎かんな 司書房 A5 [Amzn]

 天崎かんなの描く作品はなんか好きだなあ。内容的にはまあごく普通のエロ漫画。表題作の「大変ルポライター」も、ルポライターをやってる女の子のコッコちゃんが、ヘルスに体験取材に行ってそこで店長さんとHなことをしちゃうとか、まあそんな感じでストーリー的なもの珍しさはなかったりする。そのような短編が続くんだけど、どれもなんかHなことをやりつつほんわかした味わい。なんか気のいい、愛敬のあるキャラが多い。お話のほうも陰惨なレイプとかなくて、基本的に明るい。天然なうっかりさん風味とでもいいますか。狙いすぎたあざとさとかないし、いい意味でB級C級な味があると思う。あと女体描写もあんまり洗練されているわけではないんだけど、それだけに肉感的だったり。トンガった最先端の作家さんにはないまろやかさがあって、個人的にはけっこう癒されたりします。


12/14(日)……すてきなC8H18

【単行本】「すてきな奥さん」 一條裕子 フリースタイル A5 [bk1][Amzn]

 これは面白うございますなー。この単行本は、アフタヌーンに掲載された「俺について来い。」「蔵野夫人」に、描き下ろしの「すてきな奥さん」を追加したもの。いずれも平凡(?)なご家庭が舞台になっていて一見淡々としているのだけど、実は巧妙な仕掛けが施されている。

 「俺について来い。」はかわりばえのしない日常に退屈した奥様が、義父を相手に会社ごっこをするというお話。自分のことを「吉田家総務部家事事業課」の吉田と位置づけ、義父は課長役をこなす。夕食のメニューの企画書を作成して課長にプレゼンするなど、徹底したヒマつぶしを敢行するというお話。それから「蔵野夫人」は、ひとたび捕まるや四角四面な夫についての何の益にもならないような話を延々続ける困ったお隣さん・蔵野夫人に悩まされる、ある主婦のお話。ユーモラスな作品でありながら、蔵野夫人の得体の知れなさはちょっと怖くもあったり。どちらの作品もからめ手からじわじわと攻めてくるような、周到で回りくどいようにも見える、でもツッコミを入れられないままズルズル読む者を引き込んでくるような呼吸が絶妙。そして描き下ろしの「すてきな奥さん」は、ごく普通の老人の世間話を描いた作品かなーと思ったら、最後にビックリなしかけが。読者を鮮やかに煙に巻く巧妙な語り口が素晴らしい。1冊の本として、見事に完成しております。

【単行本】「君を連れていく船」 星逢ひろ 松文館 B6 [bk1][Amzn]

 星逢ひろ@ボーイズラブサイドな単行本。星逢ひろのつるりとしたキュートな作画は、女性向けでも男性向けでも見映えがする。ライトなタッチであるのにHシーンがけっこう実用的であったりするのも、汎用性の高さにつながっている。どっちでもコンスタントにいい仕事してるなーと思う。この単行本の中では、東条・秀一・晶の男の子3人組の物語である「立入禁止区域「満天星」「時計、鼓動、波打ち際」「大人になれない夢を見る」「小さな島の中と外」の全5話が、なかなか切ないお話となっていてとくに良かった。親のいない少年を集め、里親が見つかるまで育てている孤島。そこで出会った3人の男の子の友情・愛情・別離のお話で、キュートで甘くて切なくてよろしゅうございます。あとカワイイ少年がチアガールのコスプレをする「放課後雨やどり組」なんかも萌え度高め。女性じゃないんでメインターゲットである女性読者的な観点からの評価がどうなのかは知らないけど、個人的には満足しました。

【単行本】「ピンクな彼女達」 りえちゃん14歳 松文館 B6 [Amzn]

 りえちゃん14歳の描く少女たちはやっぱりイイ。ロリではあるけど幼女系ではなく少女系。最近は乳や尻のデカい女性も描くようになって、以前と比べるとバランスが崩れてるところはあるんだけれども。りえちゃん14歳のファンっていうと、美少女漫画的にはもうオールドファンが多くなっちゃうのかなあ。でも好きなんだよねー。


12/13(土)……密ARMY

▼未読物
【単行本】「ピンクな彼女達」 りえちゃん14歳 松文館 B6 [Amzn]
【単行本】「君を連れていく船」 星逢ひろ 松文館 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「すてきな奥さん」 一條裕子 フリースタイル A5 [bk1][Amzn]
▼15日売り
【単行本】「生きるススメ」 戸田誠二 宙出版 A5 [bk1][Amzn]
▼16日売り
【雑誌】ひな缶Hi! Vol.02 茜新社 B5平
【単行本】「あの月の光のように」 内田雄駿 河出書房新社 A5 [bk1][Amzn]

【雑誌】ネムキ 1月号 朝日ソノラマ A5平

 品質は安定しているけど雑誌として動いてる感じがあんまりしないなあ……。でも隔月発行で連載陣の続きも気になるからいちおう買っちゃうけど、もう少し号ごとの変化や勢いのある新鋭の登場が欲しいような気はする。たとえそういうモノがあっても、この雑誌の場合わりと似たようなトーンの作家が多いから、雑誌の中で目立たないんだよね。で、連載陣の中で最も気になるTONO「チキタ★GUGU」は今回わりと静かな展開だが、クリップにある変化が訪れて、今後はまた流れが変わってきそう。安定して面白い。

【雑誌】別冊マーガレット 1月号 集英社 B5平

 アルコの読切「三つ編と赤い自転車」は、高校生になって小学校からの同級生だった男の子のことがなんだか気になるようになった女の子の恋物語。しばらくは何もいわず彼を見つめているだけ、相手に想いが届いたかに思えても人の目があって素直になれず……という展開で、非常に初々しい。恋のキラメキを十分感じさせるいい作品で、アルコのいいところがしっかり出ている。アルコはやっぱこういうのはいいやね。いくえみ綾「かの人や月」の読切バージョンが掲載。今回は羽上一家の長女ひろののカレシ的存在の深町君サイドの視点からお話を展開。ひろのの天然っぽさがなんか楽しいお話となっていてほのぼのアットホーム。問題なくうまいです。

【雑誌】comic天魔 1月号 茜新社 B5平

 水無月十三「我が肉に群れ集い喰らえ」後編は、12月号の続き……といっても2002年12月号からの続きなので1年ぶり。内容のほうは輪姦されることに興味のある女の子が、同類の女教師の導きで初めての体験をするというお話。絵もうまいしハードでエロいけど、わりとストレートなエロ漫画なので1年も空けんでも……という気はちょっとした。そうま竜也「岩川さん そのいち」。田舎の学校が舞台で、なんだかボリューム感のある体をした岩川さんという女の子と、彼女を見つめる男子のお話で、そこにSFっぽい要素がちょっとからむのかな?という感じ。この雑誌は単発のやるだけ漫画が延々続くという印象が強いんだけど、その中にこういう続きモノが入るといいアクセントになりそうな気がする。そんなわけで期待。粗雑那絵「ヌル万!」。ローションにまみれて女の子がお互いにHなことをしまくる「オイルレズリング部」の面々のお話。みんなで「ぬるぬる万歳!!」「ヌル万」「ヌル万」と叫んでいるシーンが馬鹿みたいでいいな〜と思った。

【雑誌】マガジン・ウォー・ウルフ vol.003(ウォーB組1月号増刊) マガジンマガジン B5中

 サガノヘルマーの作品を読もうと思って購入。「恥悦玩具YINSHING」。キチガイプロデューサーにダマされて肉奴隷調教された後、「エロ・ゲリラ」を名乗る女性タレントとしてデビューさせられたインシン・オブ・ファイトイが主人公というなんだかすごい漫画。ラストのオチが下らなくてけっこういい。このほか漫画は星野竜一、天誅丸、やまのべきった、素崎アキラ、うらまっく。雑誌自体がエロ漫画ユーザー向けというよりは一般のエロ雑誌ユーザー向けなんで、物語的な機微よりもストレートに分かりやすいエロをやっている作品が多い。そういう中でも、ちゃんとその雑誌のカラーにきっちり合わせてくるうらまっくはプロだなあとしみじみ。


12/12(金)……御縄つらいよ

▼今月からコミックバーズの発売日が変更で12日→30日になってます(12月は発売日繰り上がりで29日)。

【雑誌】コミックビーム 1月号 エンターブレイン B5平

 今月号で個人的に一番ググッときたのが、須田真太郎「ウルティモ★スーパースター」の最終話。るちゃプロレスが狡猾なやり手プロデューサーに対して落とし前をつけ、そしてラストへ。垢抜けない作画で、魂を解放するプロレスの世界に生きる男たちを物語は、読んでいてとても気持ち良かった。最後は三波の成長も垣間見ることができてうれしかった。須田真太郎の人情味あふれる作風にはしばしば泣かされる。それから作:TKD+画:竹谷州史「皆殺しのマリア」も最終回。ちょっとラストはよく分からん状況だったけど、マリアがビシッとカッコイイままだったのでいいんじゃないでしょうか。市橋俊介「敗北DNA」は久々の新連載。以前連載していた「テルオとマサル」で見せた、暑苦しくて濃いギャグがすごく好きだったので今回も期待。ただ「敗北DNA」は4コマなので「テルオとマサル」よりはパンチ力が弱めかな。鈴木マサカズ「ブルードック・ブルース」は次号最終回を控え、ドシッと来る読みごたえ。単行本にまとまってくれるといいんだけど……。

 森薫「エマ」。エレノアの姉モニカという触媒が現われて、あららら〜といううちに思わぬ展開へ。個人的にはストレートにエマとくっつくわけにもいくまいよ、ていうかいかないでほしいなどと意地悪なことを考えていたので、これもまた良いんじゃあないかと思う。竹本泉「よみきり♥もの」は連載再開。今回の「ぼんよりの連続」は、なんだかふにゃふにゃ姿勢が定まらない女の子と、それがなんか気になってしょうがない少年という、いつもの的図式。ぽやーんとしててかわいいですやね。志村貴子「放浪息子」はいつも変わらずいい感じに甘みが漂ってて楽しい。2003年を振り返ってみて、非常に充実していた作家の一人。キングダムやエロティクスFなどでも活動しているが、どの作品もハズレなく面白かった。安永知澄「やさしいからだ」はちょっと怪しい雲行き? 妹の世話を焼くことで日々の不安をまぎらわしていた女の子だが、その日常が崩れていきそうで……といった感じで以下次号。良いモノを持った人だし2004年の飛躍も期待。

 あと金平守人「KANEHIRA-DEATH」が先月最終回で、今月もしれっと載ってるんじゃないかなーとか思ったけど……。ちなみに今号の巻末はAZUSAの短期集中連載「私のいる風景」の1回め。SFファンタジーっぽい不思議な雰囲気のお話を描いております。物語的にはあんまり引き込まれるって感じじゃないけど、画面全体の雰囲気はセンスを感じさせる、丁寧で美しいモノとなっている。

【雑誌】ヤングアニマル 12/26 No.24 白泉社 B5中

 宮野ともちか「ゆびさきミルクティー」が連載再開。まあ状態としては今まで同様、二人の女の子をやきもきさせているままですが。作:あかほりさとる+画:板場広志「マウス」はやっぱり馬鹿馬鹿しくてイイ。マウスの1週間のH回数は414回。1日50回以上だから、1時間につき2回は確実にこなしているわけですな。すごかお方ですばーい。まつもと剛志の4コマ「まじかるストロベリィ」。ほのぼのラブラブしてていいんじゃないでしょうか。絵柄もちんまりきれいにまとまっててかわいらしい。

【雑誌】ビッグコミックオリジナル 1月増刊号 1/12 小学館 B5中

 新連載、石塚真一「岳 みんなの山」。前号(感想は9月20日の日記参照)で読切掲載された作品がさっそく連載化。山の中で、住所も持たず一人暮らしをしながら山岳救助をしている男・三歩の、ちょっとヘンだけど山を愛する生き様を描いていく物語。新人ながらこなれた作風で、しっかり読ませる。一見地味だが、ドラマをちゃんと構成できているし好みな作風。今後もけっこう楽しみだ。あと業田良家「女はつらいよ」もスタート。こちらは家計を支えるため、全国を回ってコンパニオンをやっているお母さんとその娘、老父母がメインの家族モノ。メゲずに頑張るバイタリティある家族って感じで、手堅く楽しい一本となりそう。たくまる圭「アニキ」は毎度ほのぼの心温まる。今回で7話め。ページ数がたまったら単行本化してほしいもんです。

【雑誌】ビッグコミックスペリオール 1/1 No.1 小学館 B5中

 以前短期集中で登場した、もりやまつる「WARAKADO−笑う門には福来たる−」が本格連載化。暗い時代を蛸庵和尚が笑い飛ばす……的なお話で、まずは蛸庵が坊さんになるまでのお話からスタート。このシリーズは、もりやまつるとしてはわりとヌルめなほうだと思うんだけど……。乃木坂太郎「医龍」(原案:永井明)。いやーミキの体はHだなあ。女性陣が肉感的でたいへん色っぽい、というようなことを最近毎回思う。狙ってやっているのでしょうな。手術シーンは文句なく盛り上がり、それ以外の地味なシーンでもちゃんとお楽しみがあっていいです。


12/11(木)……秦のコッテウシ

Fujisan.co.jp、雑誌取次大手の大阪屋と提携(INTERNET Watch)。ということでFujisan.co.jpの雑誌カテゴリ一覧を覗いてみたけど、コミック・まんがは少ないなあ。今のところ3誌しかない。そんな中にコミック.Hが入っているのはちょっと意外。全然定期的じゃないじゃん……。ちなみに現在コミック.Hのホームページでは「2003年ベスト・マンガ」と「最も『ロック』なマンガ」を決めるアンケート企画をやってて、それによると最新号の発売予定は現在のところ1月下旬であるらしい。

▼本日は11/20の日記で触れた、広島産の冷凍かきを使って鍋。しかしいかんせん冷凍モノ、死んだ貝の味だった。仕方ないので同じく備蓄してあった鶏肉の肉団子を追加してみたが、これも冷凍モノだったので死んだ鶏の味しかしなかった。ちなみにビールを飲みつつこの文章を書いているが、これも缶ビール。生ビールではないので死んだ麦の味しかしない。ダークな気分になったので浮き輪をつけてオホーツク海の荒波に飛び込んでいこうかと思ったが寒いからやめた。

【単行本】「ミヨリの森」 小田ひで次 秋田書店 B6 [bk1][Amzn]

 ちゃんと単行本化されて祝着至極。「拡散」「クーの世界」で知られる小田ひで次がミステリーボニータにて連載した自然派ファンタジー。主人公のミヨリは、母親が男と一緒に逃げたことをきっかけに、東京を離れて父の実家に預けられることになった女の子。そこは東京とは打って変わった過疎の村。しかし大きな森を中心に、自然に囲まれた暖かい場所だった。ミヨリは祖父母が所有する森でさまざまな森の精霊らと出会い、優しい心とバイタリティを持った女の子へと変わっていく。

 「拡散」や「クーの世界」と比べるとずいぶんおとなしくてまとまった作品ではあるけれど、森の地面に生えた苔のようなふんわりとした触感を思わせる、もこもこ柔らかいペンタッチで描かれた自然はとても美しい。そしてお話も全体にすごく優しい。小田ひで次に「拡散」的な過剰なモノを求める向きにはちと物足りないところもあろうけれども、これはこれで一つの優しいファンタジー譚としてしっかり完成されている。間口的にはむしろこちらのほうが広いかもしれませんな。

【単行本】「サムライダー」2巻 すぎむらしんいち 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 以前の「サムライダー」よりもかなりシリアス。ハリウッド映画的に大がかりなアクション漫画となっている。サクサク読めるしダイナミック。ごくまっとうにカッコイイです。

【単行本】「史上最低のレガッタ」2巻 塀内夏子 講談社 新書判 [bk1][Amzn]

 少年院に入れられた少年たちが、レガッタによる更正を目指して一生懸命努力していく物語。塀内夏子らしく手堅いっちゃ手堅いけど、ちょっと設定が現実離れしすぎかなー。面白くないわけじゃないんだけど、なんだか燃えない。

【雑誌】モーニング 1/2+8 No.2+3 講談社 B5中

 うめ「ちゃぶだいケンタ」。今回もケンタがかっこいー。ここんとこぐんぐん成長してて頼もしい。新伊秀策「色歌」は、古代中国に題材をとった歴史漫画。秦の始皇帝とその影武者の絆を描いた物語。しっかりドラマを作っている点には好感が持てるが、ちょっと作りが生真面目すぎるような気も。作者はけっこうな中国史マニアだと見た。王欣太「蒼天航路」。曹操がとある自由人に遭遇し「心腹の友に少し似ていた」と語った、その「心腹の友」があの人だったのがちょっと泣けた。

【雑誌】ヤングサンデー 1/8 No.2 小学館 B5中

 山田玲司「ONE ON ONE 絶望に効くクスリ」。今回は10人の子供の里親をやっている主婦をレポート。いつも珍しげな人の話を取材してて、このシリーズはけっこう面白いんじゃないかと思う。北崎拓「なんてっ探偵アイドル」。なるほど、そういう展開できたか。最近ちょっとサービスシーン多め、かつドラマ的にも盛り上げて来ております。

【雑誌】ヤングジャンプ 1/8 No.2 集英社 B5中

 竹田エリの新連載「メリーちゃんと羊」がスタート。羊のおじさんといっしょに暮らすメリーちゃんが主役の4コマギャグ。けっこうかわいいし、ほのぼのしてて良いのではないかと。 高橋陽一「キャプテン翼 ROAD TO 2002」の、扉ページの次の見開きがなんか間抜けてて笑った。ところで2002の本番が来るのはいつなのかな……。

【雑誌】週刊少年チャンピオン 1/5+8 No.2+3 秋田書店 B5平

 能田達規「ORANGE」はついにリーグ戦決着。いい感じで感動的な展開でありました。そして水島新司「ドカベンプロ野球編」は絶句。次回で「プロ野球編」は最終回らしいです。今度は「パワフルプロ野球編」っていうタイトルにするといいと思うな。マジで。


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