2004年11月21日コミティア購入物件


2005年1月10日読了分

【同人誌】「逆寿司シリーズ総集編」 新田五郎 <WAIWAIスタジオ>

 ふぬけ共和国の新田五郎さんの漫画本。新田さんは文章も面白いが、漫画のほうも味があって本当にいい。今回はなんといっても「逆寿司」という発想に爆笑してしまった。逆寿司とは『寿司の魅力にとりつかれた者たちが「アレ? 寿司の概念を逆にしたらどうだろう?」という、おそるべき考えから産んだ闇の寿司』なんだそうな。よくそんなもの考えつくなあ。とても下らなくていい。自分も、自分なりの逆寿司を、とてもひまなときにでも考えてみたくなりました。

【同人誌】「Tableau 4.5」 志賀彰 <憂貧局>

 まだ途中バージョンという感じなんだけど面白いですなあ。しっかり青春恋愛ストーリーとなってて読ませるし、コマ割とか構図取りとかもきちんとしてて読みやすい。続きも早く読みたい。それにしてもいつも思うのだけど、ここの本はいつもこちらが申し訳ない気持ちになるくらい安い。けっこうページ数があっても50円とかで売ってることが多いし。

【同人誌】「白挽夏」 上原昭人 <ち>

【同人誌】「あぶく紙」 上原昭人 <ち>

 この人の自由奔放な漫画作りにはいつも感心させられる。頭から出てくることをそのまま紙に描きつけた落書きみたいなんだけど、その落書きが見ててとても気持ちいい。こういうのを自然に作れちゃうっていうのは羨ましいなあ。今回の本は比較的物語っぽく読める部分も多めな感じ。でも漫画という枠組みにとらわれないかのような(もちろんそこから完全に逸脱しているわけではないのであくまでイメージ的な話)、肩の力の抜けた自由さはやはり健在。

【同人誌】「つゆくさ 十五」 <つゆくさ>

 今回の三島芳治による漫画「エッフェル塔について」は、藤沢の町にいきなり建設されたエッフェル塔をめぐって、主人公の女の子がいろいろ物思うというお話。訥々とした語り口が独特で、なんとなく寂しげでもあり、ごく普通の日常っぽくもあり。抑えられた叙情がかえって不思議な感覚を呼び起こしてくれる作品。いつもながらイイっすね。

【同人誌】「ブタまんレポ」 森砂季 <トラウマヒツジ>

 レポート漫画「パンチラメイド喫茶に行きましたよ」「精神科に行きましたよ」を収録。「精神科に行きましたよ」はコメントしにくいものがあるけれど、とても楽しそうに通院時の話を描いていて面白かった。「パンチラメイド喫茶」のほうは飄々としていつつもテンション高くて単純に楽しい。「あの地平線が輝くのはどこかにパンツを隠しているからなんですよ!!」というセリフは素晴らしいと思った。

【同人誌】「惑星オシイレマクラ」 アニュウリズム <シカクイハコ>

 今回は長めなお話。工場に勤務する「僕」が、ボロボロなロボットとともに彼が元いた「惑星オシイレマクラ」を目指す不思議な旅に出る。これはとても面白かった。なんだかもこもこした感触の絵がまずユニークで、お話のほうも不思議で面白く、ラストは切なさと暖かさが共存していてジーンとさせられるものがあった。作品内に出てくるさまざまなアイテムや描写も独特。例えば主人公がやっている、「ダイヤルを右に5回まわしてボタンを押すだけ」というのを延々一日中繰り返す「空気加工」という仕事とか、得体が知れなくてシュール。こういうのなんかすごく好き。それから旅の途中で出会う人や生き物たちも奇妙でユニーク。途中まで画面6分割の画一なコマ割でいって、いきなり大ゴマを使ったりする構成も効果的。最近どんどん長い作品も描くようになってきていて、読みごたえがアップしている。いい調子で向上しているのではないかと。

【同人誌】「おたまじゃくしくん」 <あびゅうきょ>

 「絶望独身男性が自慰で射精した精子の化身」であるところのおたまじゃくし君が、美少女に導かれて放浪。美麗な絵とぶっちゃけた絶望ネタで面白く読ませてくれる。突きっぱなしたブラックジョークが毎度ユニークで、作画も相変わらず美麗。

【同人誌】「取水塔・7」 粟岳高弘 <あわたけ>

 もう7冊めになるのかー。のんびりしたムードだったこれまでだけど、今回はヒキが強い展開で、先が気になるところ。美少年美少女というわけではない、そこらへんにいそうな人たち(でも女の子はこれはこれでかわいい)が繰り広げる身の丈SFなんだけど、異世界感もしっかりあるところがいいです。

【同人誌】「和紋」 山崎浩 <ワンダーワンダー>

 猫漫画なんだけど、鋭い視点で猫と人間の関係を描写。飼い猫が人間と暮らすこと、捨てられること、安定を得ること、自由を捨てること……などなど、「猫を飼う」「人間に飼われる」ということの意味にさっくり斬り込んでいて時折ハッとさせられる。自然描写もいつもながら巧み。なおこの本は新声社刊のねこばかコミックアンソロジー「ねこだまり」4〜6(1997〜1998年)に掲載された作品を収録したもの。

【同人誌】「菓子袋」 おかず <PaintWorker>

 お絵描きチャットPaintWorkerの常連さんによって作られた本。CD-ROM付。冊子部分では「P.W.劇場」の特別編第35話として描かれた「その者、可憐につき」が良かった。上級生からも「おねーさま」と呼ばれる女の子・チコと、その親友でバカみたいに強い女の子・姫草明里(通称:Lamp)の二人を中心とした学園モノな作品。しっかりした作画でちょいと百合っぽい雰囲気のお話をやっててなかなか楽しい。CD-ROMのほうもざっとしか見てないけど、お絵描きチャットでここまで描き込むんだ〜と感心させられるものが多かった。

【同人誌】「レタル」 金子木村 <マンガマン/コクマルガラス>

 筆ペンタッチで叙情的な作品を描いていて気になる人。このような感じで描く場合は、もっとデッサンがしっかりしてくると、より良いかなあという気もします。雰囲気はいいので期待したいところ。

【同人誌】「赤い牙」Vol.5 <赤い牙>

 プロ作家多数参加の豪華な同人誌。今回もこちらのページにあるようなメンツが執筆。ただ読んでみると、それぞれのページ数は少なく、商業誌で描いている作品のほうが断然面白いと思う。正直なところ1500円というのは高い。ただまあこれだけのメンツが同人誌であんまり頑張りすぎちゃって、それで商業誌落としたりされても悔しいので、このくらいに止まっててちょっと安心するところもあるというか。

【同人誌】「くじびきマンガランス」 <東京大学漫画調査班TMR>

 東京大学の漫画好きサークルTMRによる漫画関連の文章本。今回は漫画内に出てくるサークル同士を戦わせちゃおうという最大トーナメントが特集。そのほか構成員による漫画レビュー、コミティア代表・中村公彦へのインタビューなどなど、124ページでもりだくさんな内容。漫画をネタにしてみんなで無駄な努力を結集して楽しんじゃおうという意気込みにあふれていて楽しいです。いつもやたら手が込んでて大したものだと思います。

 このサークルにはコミティアのカタログ「ティアズマガジン」の記事で取材させていただきましたが、なかなか面白げな集団で、見てて正直なところ羨ましいなあと思った。自分も学生時代、ああいうふうに漫画について語れる仲間たちがいたら、人生変わってたかもしらんなあとかいろいろ考えたりしました。でも学生時代はそんなに自覚的に漫画に接してなくて、自分が漫画好きだとかいう意識もあんまり持ってなかったんですけどね。


2005年1月2日読了分

【同人誌】「かおりちゃんのまぼろしハンバーグ」 鵜匠カシヲ <赤色オレンヂ>

【同人誌】「おまけの犬田くん」 鵜匠カシヲ <赤色オレンヂ>

 「かおりちゃんのまぼろしハンバーグ」にて、ついに「かおりちゃん」シリーズ完結。同級生のレティクル星人の悪意に悩まされ、菊男ちゃんに癒され(?)たりしていたかおりちゃんの旅もこれにて最終章。トリップを誘うようなとても不思議なお話だったけど、最後は感動させられたりもしてステキだった。あとおまけ漫画の「おまけの犬田くん」は、黄色い救急車の運転手、犬田くんの日々を描いたおまけ漫画。電波チックな感じも漂わせつつ、けっこうオシャレな感じにまとまってたりもする、独特のバランス感覚が絶妙です。

【同人誌】「かっぱのねね子」 こうの史代 <の乃野屋>

 「おおきなポケット」(福音館書店)2001年4月号〜2002年3月号にて連載された、子供向けのカラー漫画。陸にあがった河童のねね子ちゃんと、人間の少女のいずみちゃんの生活を描いた作品。コミカルな調子でドタバタ展開。ほのぼのした味わいのある、優しい絵作りがかわいらしい作品。まあこうの史代の作画の場合、カラーよりモノクロのほうがカケアミの魅力が出るので良いかも……なんて思ったりもしますが、これはまたこれで。

【同人誌】「イーヴァの記憶」 オノ・ナツメ <setteorsi>

 両親の記憶を持たないため、自分で嘘の記憶を作っては遊んでいた少女・イーヴァが、町にやってきた政治家に親の面影を見る。イタリア政治家好きの作者の趣味を作中に生かしつつ、短いページ内で、鮮やかで、暖かみのあるドラマを構築しているのはさすが。やっぱり面白いです。

【同人誌】「ラダトームの灯」 はっぱのびたろう <東京イントロダクション>

 これはけっこう良かった。戦争をしている相手国に人質として連れてこられたローラという名の女子高生と、彼女をさらってきて家に置いている家族の物語。トーンの使い方がオシャレな絵柄はポップでキュートだし、ドラクエネタを現代風にアレンジして青春ストーリーに仕立て上げた意匠もユニーク。この人の本を買ったのは初めてだったっけかな。面白かったです。

【同人誌】「行き先は空を見て」 ちゃい <印度茶>

 3か月しかない病院内での余命を、3日の健康な日々と取り換えたおにいちゃんが主人。彼がその3日間の時間で、いつも見ていた飛行機雲の写真を撮っている少女と触れ合う。最初の設定自体はよくよく考えると唐突ではあるけれど、読んでいる最中はそれが気になることはない。端整で透明感のある絵柄、優しいお話作りできれいにまとまった1作。

【同人誌】「初し彼女」 ein <空事象>

 女学生な彼女が、よく分からん実験だかなんだかに熱中して忙しげな彼氏の注意をこちらに向けんと、じたばたするというお話。この人の清潔感のあるシャープな絵は見てて心地いい。1ページ上下段2コマの画一的なコマ割も、本がA5サイズと小さいので読みやすい。

【同人誌】「江古田ゴールデンボールズ」 <地味頁>

 「経済ヤクザ」(?)っぽい兄を持ち、その兄の恋人っぽい女性と一緒の部屋で暮らしている少年が主人公の「僕らの街」(ササガワヒロシ)を収録。今回は前編。シャープな絵柄できっちりお話を作って来ている。ヒキの強い展開なので次回に注目。

【同人誌】「忍者とあそぼう」 <ロボ音>

 忍者さんと少年たちののどかな生活。ほのぼの。ユニークな絵作りと、短いけれどのんびりとして気のきいた内容がきっちりマッチ。

【同人誌】「試着室でパンツ」 <野原がしげる>

 常にパンツ一丁で街を徘徊し、デパートの試着室でパンツを着用したりする見るからにヘンな人・間見さんと、彼と仲良くしている少年の生活を描いたお話。絵柄的にはラフだが、ノリの良いお話作りにはけっこう惹かれるものが。

【同人誌】「増し毛」 <マンガマン>

 金子木村、とろろ、よしみひろし、北條月彦、ミヤン宮岡の5人が執筆。筆ペンタッチの金子木村がちょっと気になる存在。一度かっちりペンとかで描き込んだ作品も読んでみたいなという気はします。

【同人誌】「男たち」 タテワキコウ <平行事情>

 主人公の女の子の元に、なんかちょっと壊れ気味のお姉ちゃんが、酔っ払ってぐでぐで状態になって訪ねてきたと思ったらうさんくさい料理を作り出し、それをお姉ちゃんの知り合いであるインド人が引き取っていく……というお話。ラフな線でだーっと描いた鍛冶のコピー本だが、のたくたしたムードはなんとなく楽しい。

【同人誌】「限界通信」第4号 <限界通信社>

 絵柄的にも話的にも、生真面目に漫画を描こうとしている感じの作品が多い点には好感が持てる。掲載作品の中では渡邊竜也「白い手」とか、小林(?)誠「ハナレバナレ」あたりはまとまりもいいし。ギャグ方面は逆にちょっと弱いかな。なんというか学漫っぽい雰囲気のある本。「学漫っぽい」というのはあくまで雰囲気の話で、レベルはそれよりだいぶ高いと思いますが。

【同人誌】「左開き変型まんが2本立て!!」 藤井ひまわり <ひまわりデザイン事務所>

 くにょくにょした適当感あふれる明るい絵柄が楽しく、いつもながらマイペース。メカ描写のいい加減っぽいごちゃごちゃ具合とか見てて面白いです。

【同人誌】「長島はちまきのぐるぐる犬話。」 長島はちまき/もりうむらじ <meR>

 「長島はちまきのぐるぐる犬話。」をメインに、以前商業単行本も出た犬漫画「チロといっしょ」[Amzn]の特別編などを収録したかわいい絵柄の犬漫画本。犬は好きなんで微笑ましく読みました。

【同人誌】「ASSEMBLE」 紅茶羊羹 <大深海水淵亭>

 コピー誌やちらしなどに描いた漫画などを集めて1冊にしたオフセット本。この人のコピー誌はけっこう買い逃してたことが多いので、まとまってくれたのはうれしい。軽妙な絵柄と飄々としたギャグセンスが好きです。

【同人誌】「オンナノコ」「Girl's comic」 カトウヒカリ/minami kenichi <parking。>

 ひさびさ感のあるコピー誌。なんとなく2作品ともひっそりした雰囲気となってますね。カトウヒカリ「オンナノコ」のきれいさ、minami kenichi「Girl's comic」の言葉、どちらも好きな感じではあります。

【同人誌】「けだもののようにIII −完結編総集編−」 渋蔵 <ぐんたまカンパニー>

 最終巻の感想は2004年8月コミティアの感想(11月16日分)で書いたとおりだが、さっそく総集編も刊行。同人誌ながら3巻めだけで400ページ以上という大ボリュームで、10年続いた傑作のラストを飾ってくれた。ヨリ子という美しく野性的で一般的な貞操観念や常識を持たない少女・ヨリ子、彼女に振り回される少年・一太、ヨリ子のことを愛する中年男性・藤倉麻紀らの生き様を追いかけていった物語は、力強く鮮烈で、たいへん読みごたえがあった。長い放浪の末に、ヨリ子らがようやくたどりついた境地、そこで浮かべた表情もたいへん印象的。漫画としての技量もたいへん高い。

 パッと見派手ではないので商業誌で人気がとれるタイプの作品ではなかったかもしれないが、完成度的には商業誌作品と比べてもまったく遜色がない。商業誌ではこのペースでの連載は無理だったろうし、一人でここまで物語を煮詰めるというのも難しかっただろうから、「同人だからできた作品」といって良いと思う。第1巻に当たる学園編は太田出版から商業単行本化されたが[bk1][Amzn]、東京編、完結編も機会があったらぜひお願いしたいところ。ちょっとページ数が多すぎるし、確実なセールスが見込めるわけでもなさそうなので無理かなあ。


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