メガキューブ2001年Vol.2用


 メガキューブ2001年Vol.2(2001/04/10発売)のコラムページ用に読んだ単行本(単行本15画集1)。

【単行本】「抱きしめたい」 ちば・ぢろう 大都社 B6

 うまいなー、この人は。コメディもラブストーリーも、実にうまくまとめてくる。この作品集は短編中編織り交ぜた厚手の単行本という感じなのだが、どの作品もそれぞれ楽しめる。この中ではとくに短編の「Hag Hagだだっこ」がいい。一見クールでなんでもできそうに見える男子・主人公なのだが、彼はその性格のせいもあって物心ついたときから人に触ることができなくなっている。だが、たまに人と触れ合いたいという本能的な欲求が頭をもたげ、他人に触れないという性分とせめぎ合い、精神のバランスが崩れてしまう。それが発作となって現れていたのだが、同じクラスの女の子に抱きつくとその発作が不思議と収まって……というところから始まって、愛のあるコメディを展開する。この男子の心の傷の吐露と、癒されていく過程が、短いページ数の中にぎゅっと詰まってて実に読ませる。とか思って作者後書きを読んでみたところ、『ここ数年、ちばぢが描きたかったテーマがここに全てあります』とのこと。やはり感動させられただけあって作者の想いが込められたものだったのだなあと思ったしだい。

【単行本】「おねえさんにおまかせ▼」 ひろせみほ 笠倉出版社 B6

 わりとコンビニ売り系H漫画っぽい短編が集まった単行本。一般性のある華やかな絵柄で、手っ取り早くエロに突入し、適度にまとめるといった感じ。手堅く楽しめはするんだけど、お話的にはよくあるタイプだし、絵柄的にもそんなキャラが強いほうじゃないんでいまいち決め手に欠けるなという印象。

【単行本】「RPG一発男」 Dr.モロー&スタジオ寿 ゲーム・フィールド A5

 「RPG一発男」自体は8ページのみ。で、残りは10年近くに渡ってRPGマガジンで連載された1ページ漫画「RPG一代男」が掲載されている。それにしてもちょうど100回やったとこで雑誌もなくなっちゃうとは、まさに図ったかのようでこの人らしい。まったりしつつ好き勝手やってるって感じで、RPGやったことのない人間でも楽しく読める(ちなみにかくいう俺はちょっとだけかじったことがある程度)。

【単行本】「スクールゾーン」1〜2巻 ふじいあきこ with 秋山道夫 ワニマガジン社 B6

 このコンビ、何気にけっこういい仕事してると思う。この作品は女教師モノの作品を集めたシリーズなのだけど、それぞれに趣向を凝らしてきっちりアダルトなエロをやってお話もうまいことまとめている。ヤングヒップリニューアルに伴って作品は終了し、このコンビがワニマガジン系で描くのはこれが最後になったのだそうだ。

【単行本】「Hにキスして!」1〜2巻 かわもりみさき 少年画報社 A5

 モテ系サラリーマンとイケてるOLのオフィスラブコメ。主人公のサラリーマンはかなりモテモテなのだが、彼の特殊能力が「気配りが非常に巧み」であるということだったりするあたりは、エロ漫画では珍しいパターンだけどリアリティはある。お話もちゃんと恋の駆け引きがあってまとめて読むとけっこう楽しめるものだった。エロもちゃんとやってるし。まとまっちゃってて、飛び抜けた何かがあるタイプではないのでそんなに目立ちはしない作品だけれど。女の子の肩幅はも少し細いほうが好み。

【単行本】「センチメントの季節」7巻 榎本ナリコ 小学館 A5

 かつて天才的な短歌を詠んでいた男は今は才能の抜け殻状態で、その彼の元に、彼が高校生だったころの想い出から抜け出てきたような少女が転がり込んでくる。少年時代に止まろうとするも止まれない男と、彼と彼の才能にこだわってしまう周りの人たちの、苦いストーリー。しっかり描いているし、技術的なレベルは高い。ただ、うーん、なんか出てくるキャラ出てくるキャラ、うじうじしてて読んでて正直なところうっとうしいものはある。なんかみんなナイーヴすぎなのではないか、そんなことも考えてしまうのであります。

【単行本】「僕の彼女の作り方」 森博巳 蒼竜社 B6

 最近ではわりとアダルトな感じの作風に移行しているようだけど、ちょっと前の、森ヒロミ名義だったころの作品は非常にスウィート。いや、これがとてもいいのだ。何か独特のふわふわした雰囲気があって、ちょい目と目の間が離れ気味な女の子キャラも可愛い。そしてお話自体もとろとろに甘いのが多くて。とくに好きな作品が「大好き!!」。彼女のいるかわいー男の子を、お金持ちのお嬢さまがさらってきてHに誘惑しちゃうという話なのだが、明るくて甘くてノリが良くて楽しいなあ。俺は、たぶんこの作品で森ヒロミという名前を初めて意識したんだと思う。

【単行本】「まほろまてぃっく」3巻 作:中山文十郎+画:ぢたま某 ワニブックス A5

 今回はまほろが戦士だったころのライバル的な存在が登場し、戦闘もあり。別れを覚悟のうえでのまほろと優のデート模様が、ああ、切ねえなぁ!!という感じ。甘さ、楽しさ、幸せさだけでなく、ラストのコマでまほろ機能停止へのカウントダウンを見て胸が締めつけられたり。アップダウンがあるからこそ、幸せなシーンも切ないシーンもより心に染みる。メイド服はもちろんかわいいけれど、それだけでは終わらない。力作。

【単行本】「放課後」 秋葉凪樹 コアマガジン B6

 学園モノのエピソードを集めた単行本。各話でメインとなるカップルは違うけど、基本的に同じ学校が舞台になってる連作シリーズのようだ。ときにコメディチックに、ときにセンチメンタルにラブストーリーを味付け。描写は丁寧で、微妙なキモチのやりとりをうまいこと描けているのが良い。

【単行本】「ドキドキしちゃう」 藤堂玖麗 蒼竜社 B6

 華やかな絵柄が持ち味で、トキメキのあるスタンダードな美少女漫画という感じがする。「コレ!」という飛び抜けたものはなく、もう一つ何か欲しいといった印象。

【単行本】「pilgrim memory」 嶺本八美 蒼竜社 B6

 この人ってデビューしてからまだ3年半で、単行本も2冊なのか。作風こなれててうまいので、もっとキャリアがあるようなイメージを持っていた。この作品集はわりと初期の作品も入っているけれど、そのころから独自の味が出ていて面白く読める。ゆったりとした絵でほっとするというのも大きい。とくに初単行本だった「LILLIPUTIAN BRAVERY」の、古いバージョンであるデビュー作(タイトルは一緒)なんかは、背の小さな女の子というモチーフと、まだ初々しさの残る絵柄がマッチしていていいなあ。お気楽な話も、トキメキラブ話もそれぞれ面白い。ヌルめでまったりした雰囲気の漫画が好きな人にはたまらないものがあるんでは。

【単行本】「デッド・ゲーム」 山本賢治 ワニマガジン社 B6

 殺人淫楽症の気がある美人殺し屋がヒロインの物語。ぐるぐる瞳のヒロインがなかなかカッコイイ。けど、エロを多めにしている分、ストーリー面がちと弱くなっちゃってるかなあ。あと、極悪なターゲットを殺すために引っ張っているわりには、一瞬で首をスパッと斬っちゃったり、殺し方が鮮やかすぎるのも気になるところ。もっとギュウギュウ苦しめ抜いてから殺したほうがスカッとするのでは。

【単行本】「少女の季節」 咲香里 笠倉出版社 B6

 咲香里がエロ漫画フィールドで活躍していたころの短編作品を集めた単行本。わりと古めの作品も入っているけど、昔からうまいな〜。華のある作画で、エロもけっこうボリューム感があるし。

【画集】「姫栗毛」 中村博文 メディアワークス A4

 うっまいなあ。肌色の深み、それから目の輝きの鮮やかさなどなど、パッと見て一目瞭然なうまさ。見ていて思ったのが、この人って寒色と暖色のコントラストのつけ方が抜群だなあということ。ところで中村博文って42歳なんだ……。もっと若い人だと思ってた。


 ページ構成の都合上、非掲載となった同人誌コーナー原稿用にチェックした分(同人7)。

【同人誌】「みんなキライ。」 <全米ライフル狂会>

 からすやま、梅町将二、芳右島ドリル、秋葉凪樹男、帝羅、いんどめたしんが参加する「HAND MAID メイ」本。なんかみんな楽しそうに描いているのがちょっといい感じな本。とくにからすやまの作品は、ドタバタギャグのストーリーをやってる脇で並行してオープニングテーマらしきものを同時進行させてて4ページのわりに中身がある感じを受けた。絵もうまいし。あといんどめたしんのデフォルメききまくりな絵は見てて楽しい。

【同人誌】「Paipo21」 新貝鉄也 <CAPTAIN SANTA>

 イラスト本なんだけど、ホンットうまいですなあ。怪獣とかの絵なんかほんとに楽しそう。もちろんキャラ者もいいけれど。薄茶色の紙に黒い細い描線という作りがなかなかオシャレ。でもやっぱり漫画読みたいなあ。

【同人誌】「For your innocent Heart」 中村零 <MANITOU>

「To Heart」系作品とらくがきの本。なめらかな絵柄はなかなかキャッチー。漫画のほうはマルチと浩之のちょっといいお話。原作のほうはよく知らないけど、小道具の使い方とかうまいしけっこう読めた。もう少しボリュームは欲しいところだけど。

【同人誌】「ひよ子」 ひぽぽたます <HAND BOMB>

「秘境探検ファム&イーリー」が元ネタ。掌編3本で、お色気、ドタバタギャグ、ちょっといい話とそれぞれ違った持ち味の話をこなしている。漫画が4〜8ページと短いので、こちらもやはりもっとボリュームが欲しい。

【同人誌】「PATRIOT GAME」 チャーリーにしなか <EINSATZ GRUPPE>

 今は亡きコミックRXに掲載されたロボット婦警モノの続編。この人の描く女の子は吊り目がキュートでなかなかいい感じの造形をしている。エロシーンのテンションも高めでわりと読みごたえはあった。たぶん元作品のほうを知っていたほうがより楽しめるのだろうけど。

【同人誌】「BLUE VELVET」 きみづか葵 <A・O・I PROJECT>

 イラスト&ちょっとした文章の本。うーん、やはり漫画が読みたいです。

【同人誌】「ママグルショー・1」 高雄右京 <ママグル徒>

 こちらもイラストがメイン。巻頭で「HUNTER×HUNTER」のホモエロ漫画4Pはあるけれど、かなりラフな状態。


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