2003年6月下旬


6/30(月)……アンティークな蘊蓄

OHP月極アンケート7月分「知識がつく/ついたような気がする漫画」を開始しました。今回は「知識がつく/ついたような気がする漫画」です。まあ要するに、読むと知識がつく、あるいはついたような気になれるウンチク漫画、学習漫画などなどを挙げて語り合っていくという趣旨のアンケートです。よろしくお願いします。

▼あと6月の「刑事・探偵・捕物・ミステリ」は終了。加藤元浩「Q.E.D.」が1位という結果に。ところで今回は意外なくらいメジャー作品に表が入らなかった。主だったところでいうと「名探偵コナン」「金田一少年の事件簿」「探偵学園Q」「こちら葛飾区亀有公園前派出所」に1票も入らなかった。これは来訪者層がそういう感じになってるってことなんでしょうなあ。

▼未読物
【単行本】「ドロヘドロ」3巻 林田球 小学館 A5 [bk1][Amzn]
【単行本】「つゆダク」4巻 朔ユキ蔵 小学館 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「ハードアクメ」 玉置勉強 一水社 A5 [Amzn]

【単行本】「最強伝説黒沢」1巻 福本伸行 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 改めて読み返してみてもやっぱりすごい。これほどまでに年を食った独身男の悲哀を、ユーモラス、かつ真っ正面から真剣に描いた作品はなかなかない。主人公の黒沢は44歳。高校を卒業してからとくに何の疑問もなく建設会社に入り、以来26年間、現場に出て働き続けてきた男。その間、特別ドラマチックなことはなかった。結婚して家庭をかまえることもなかった。出世もなければリストラされるでもなく、なんとはなしに日々が過ぎていく。26年。ずっとその調子だった。そんな黒沢がついに気づいてしまう。こんなことでいいのか、と。きっかけはサッカーワールドカップの熱狂。その渦の中で、どんなに大騒ぎをしてもそれはしょせん他人事、自分自身の感動ではないということを痛感してしまった。それ以来、彼の苦悩の日々は続いていく。

 黒沢はそれをきっかけにして、人並みの幸せを得るべく、人望を得るべく、ジタバタと本当に見苦しくあえぐ。その日々が切々と綴られていくわけだが、これが実にすごい。例えば工事現場で一緒に働く奴らに感謝されてみたくて、アジフライを大量に買ってきてそっと各人の弁当の中にしのばせるなどの小細工を使う。でもそんなことに誰も気がつかない。あげくの果てには裏目に出て、軽蔑さえされてしまう。ものすごくみっともない。情けない。思わず爆笑してしまう。でも泣けてもくる。

 この作品の凄いところとして、言葉の使い方が絶妙である点が挙げられる。第1話なんかとくに素晴らしい。いきなり1ページぶちぬきで「感動などないっ……!」などと言われたら、思わず目が吸い寄せられてしまう。黒沢は自分の人生を「カレンダーの四角いマスを、ただ漫然と塗りつぶしていく塗り絵」と評し、そんな自分を「ただ齢を重ねただけの男……………齢男だ……」と断ずる。この個性的、かつ的確なセリフ回しには衝撃さえ受けた。あと独身男性のわびしさを演出する各種アイテムもうまい。黒沢が居酒屋で一人、なんこつ揚げライスをかきこむところなんかもう抜群。

 引き合いに出すのもなんだか、あびゅうきょの描く独身ダメ男性にはアニメやマンガという逃げ道があった。しかし黒沢にはそんなものさえ何もない。もう絶望的に手詰まり。どうしたらいいのかさっぱり分からない。タイトルは「最強伝説」だけどどうやったら最強になれるのか、果たして福本伸行が彼を最強にするつもりがあるのか。また、彼がいきなり生まれ変わってサラリーマン金太郎みたいな豪快人間になって最強化したとしても読者は、なんか釈然としないものを感じるのではないか。だって似たような境遇にある独身男性はたぶんそんなふうにはなれないから。実際、そんな常人離れした黒沢は見たくないという気持ちもどこかにある。黒沢はいったいどこへ行こうというのか。そんなこんないろいろ含めてこれからの展開にも目が離せない。

【単行本】「独りの夜も長くない」 近藤ようこ 小学館 A5 [bk1][Amzn]

 キツい!これもキツい……。タイトルどおり30代中盤になっても結婚せず、親と同居しているOLの早苗、予備校講師の田代。悩める二人の独身者の心のうちを丹念に描いていく作品。といっても別に早苗と田代がくっつくなんてことはなくて、それぞれのお話が並行して展開される。帯には「経済的には自立していても心が自立できない、現代に生きるシングルたちの物語」と書いてあって、30代独身男のとってはとても身につまされるものがある。この二人は紆余曲折の末、心を通わせられる相手を見つけるので物語としての救いはある。でもやっぱ自分のこと考えちゃいますよ、こういうの読むと。自分は親不孝してるよなとしみじみ痛感。いやー、これはこたえますわい。でも読んじゃう。

【単行本】「沈夫人の料理人」1巻 深巳琳子 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 ずいぶん昔の中国が舞台。長者の若奥様で食事をすることが何よりの楽しみという沈夫人と、彼女に見込まれた愚直な料理人・李三の、いっぷう変わった主従関係を描いていく。沈夫人は武骨な李三が彼女の前に出ると叱られた子供のようにあわてたりするさまが面白くて仕方がない。しかも李三の料理の腕は一流だったりするので、本人には伝えないけど大のお気に入りだったりする。ヒマつぶしや腕試し、来客のもてなしと、何かにつけて李三を試し、からかい翻弄する。その様子がなんとも楽しく描かれている。絵柄自体は大人の落ち着きを感じさせる端整なもの。でも遊び心は十二分。沈夫人の、上品で美しいけれど童女のような無邪気さ、洒落っ気は見ててすごく面白いし、李三のドギマギしまくりな反応にも思わず笑わされてしまう。その主従関係がメインになりがちだが、料理のほうもしっかりおいしそう。珍しげな中華料理のレシピがけっこうしっかり記載されているので勉強になったような気もする。パッと見は地味だけど、ニヤニヤ笑いながら面白く読める、茶目っ気に満ちた良作。

【単行本】「ギャラリーフェイク」28巻 細野不二彦 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 いつもながらにたいへん手堅い。累計900万部突破とのこと。この巻で印象的なのは、ネット界で「皇帝」として崇められているアマチュア映画評論家をめぐる回。細野不二彦という人は抑制をしっかり利かす職人的な作家さんだが、ことオタク分野の話になるとときどき興奮したような作品を描くことがある。この回にもちょっとそういうところは感じたが、細野不二彦の生の一面が感じらるような気もしてかえってホッとするというところもあるかも。

【雑誌】ヤングキングアワーズ 8月号 少年画報社 B5中

 花見沢Q太郎の新シリーズ「NAGI」が巻頭カラーで掲載。剣の達人の祖父を持つ、美少女剣士・凪が主人公の時代活劇モノ。花見沢Q太郎にしては珍しい路線。「次号も特別に連続掲載です!!」って書いてあるということは、毎号連載ってわけではないけど、不定期では掲載されていくって感じかな? 作:田畑由秋+画:余湖裕輝「コミックマスターJ」。今回は時事ネタでもある書店の万引き問題が題材。実際にあった、万引き少年が逃走中に事故で死亡し、書店が非難を浴びて閉店した事件を元にしたお話。作品内ではより事態をエスカレートさせて悲劇的なお話にしている。実在の人間の命、そして店長の人生が関わった問題だけに、ここまでセンセーショナルな扱い方をするのは実際の事件関係者に対する配慮という面でちと心配になってくる。次号、後編でどのようにケリをつけるのか気になる。ただ、実は個人的にはこの作品のことだから来月は例の漫画家の生原稿流出事件ネタで行くのではないかと思っていた。今回のエピソードを前後編にしちゃったので、その問題に関しては再来月かな。

 なお、アワーズは来月からページ数をアップしてリニューアルされるそうだ。それにともなって増刊号はしばらくお休み。平野耕太「ヘルシング外伝」は本誌で再開予定

【雑誌】ヤングマガジン 7/14 No.31 講談社 B5中

 松本剛の読切「海風」が掲載。ヤンマガ創刊23周年企画「平成歌謡漫画大全集」の一環として描かれた作品だが、お話自体はいかにも松本剛らしい青春物語。病弱な姉の汐美が入院先から帰宅し、姉想いの少年・祥一が彼女を出迎える。姉を守るという使命感が強いがために祥一は、彼らのことを見守り続けてきた友人の敏ちゃんを誤解するが、そのことがきっかけで姉と敏ちゃんの今まで知らなかった側面を知る。大きな事件が起こるというわけではないけど、お互いを思いやる3人の気持ちがきちんと描けていて爽やかな読後感を残してくれる一作。

 真鍋昌平「暴力ポコペン」は短期集中連載の1回め。キャバクラ嬢と初めて店外デートすることになって舞い上がっていた主人公だが、なぜかついてきた酔っ払い女のせいで今は心霊スポットとなっている閉鎖した集合住宅に行く羽目になってしまう。そこでチーマーっぽいガキどものリンチ現場に出くわしてしまい、集合住宅内での命を賭けた追っかけっこが始まる……という感じの作品。ヤンマガに合わせてけっこうギャグっぽい作風にしてきているのかな? 蓮古田二郎「しあわせ団地」。いつもながらにはじめはダメだ。それでも見捨てないでいてくれる奥さんがいてくれるっていうのは正直羨ましいことでございます。あと今号には阿部秀司「エリートヤンキー三郎」の河井星矢大特集が掲載。やはり河井がいてこそのこの作品。

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 7/14 No.31 小学館 B5中

 作:安童夕馬+画:大石知征「東京エイティーズ」。バブル期の大学生の青春模様を描いた本作は、早大スーパーフリー事件のおかげで図らずもものすごくタイムリーな注目作となってしまったような気がしないでもない。とはいえ、その前から秘かに注目していた作品ではある。ここらへんで描かれるようないかにも軽薄そうな大学生サークル的行動って、そのころに学生生活を送っていた人間にとってはけっこう忘れたい記憶なんじゃないかと思うのね。それを今どきになって生々しくほじくり返されるのはけっこう恥ずかしいはず。自分自身もこの80年代は大学生じゃなかったが、その名残りを色濃く残していた時代は体験しているので、今思い返すと気恥ずかしい。なんかこの気恥ずかしさを極めるために単行本買っておくべきなんじゃないかという気になっている。

 古泉智浩の読切「変身エロイダー」が掲載。たいへん下らなくて面白かった。一見クールなように見せかけているが、実はスケベなことで頭がいっぱいの14歳・杉村正夫が主人公。彼はそのエロっぷりが宇宙人に認められ、正義のヒーロー・エロイダーに改造されてしまう。しかしエロイダーは股間の砲身をしごくことで溶解液を発射するというのが必殺技な、なんかみっともないヒーローであった。まあ設定だけで馬鹿馬鹿しいんだけど、オチもヒーローの情けなさが際立っていて良かった。山本英夫「ホムンクルス」。少しずつ小出しにお話が進み、謎が深まっていく。じりじり焦らされるような感覚につい引き込まれてしまう。ここらへんの持ってき方はうまいですな。のりつけ雅春「高校アフロ田中」。田中たちが数学の補習で小学生向けの問題を出されて、出題のシュールさに悩む。しょーもないけどけっこう笑ってしまった。

【雑誌】週刊少年ジャンプ 7/14 No.35 集英社 B5平

 かずはじめの新連載「神奈川磯南 風天組」がスタート。修学旅行先の遊園地でヤクザにからまれたところを「風天組」と呼ばれる二人の中学生に助けられた少年が、彼らを追いかけていきなり転校してしまう。だけど風天組の二人は学校でも異端視されている風変わりな奴らで……といったところ。まあ学園不良グラフィティってとこかな。タイトルを見ると藤沢とおるの「湘南純愛組」をちと思い出しちゃうけど、まあとりあえずは様子見。菅家健太の読切「スレンダー」は、デブとバカにされていたクラスメートの芥がダイエットを決意。で、いきなりダイエットやりすぎで、ガイコツになって現れる。そんなところから始まるドタバタギャグ。絵の完成度はまだまだだけど、ギャグ漫画としてはけっこう読ませるし悪くない。あと、蔵人健吾「サンタ!」は12回めにしてあえなく最終回となっている。

【雑誌】エンジェル倶楽部 8月号 エンジェル出版 B5平

 奴隷ジャッキー「A wish 〜たった一つの…を込めて〜」。いろいろな障害によって隔てられてきた森崎くんと霧島さんがついに再び抱き合うときが。この作品は、前作の「巴」とずいぶん違った純愛物語になっている。まあエロはハードだし、けっこう変態的だったりもするんだけど。この人の描くキャラクターは感情の振れ幅が大きくていい。


6/29(日)……超陶酔出納帳

【雑誌】漫戦スピリッツ 7/27 小学館 B5中

 吉田戦車「山田シリーズ」がやっぱり面白い。山田の言葉の一つ一つが琴線に触れてかなり笑ってしまった。ちなみに今回のテーマは洗濯とエプロンとカルボナーラ。本当です。山口かつみ「My Favorite GP」。ずっとバイク漫画を描きたくて仕方なかったが、仕事を得るためにそれを封印し続けてきた山口かつみ自身の想い、そしていざ自分の好きなモノに近い作品を描けるようになってからの感慨などをつづっていく。バイクというものに惹かれてやまなかった若き日の自分、そんな自分が仕事に忙殺されていくうちにそういったものに感応できなくなっていったこと、加藤大二郎の活躍を機にまたバイクに対する想いを募らせるも突然訪れたヒーローの死……などなど、作者のそのときどきの想いが伝わってくる。個人的にはこういう青さをいつまでも残している山口かつみという作家はけっこう評価してます。

 そのほかの新人組については、青旗昇「るちゃ!」が勢いがあって良かった。ルチャドールな父を持つ女子高生が、学校にルチャ部を作るべく奮闘。この娘さんが学校にもマスクをかぶって登校するなど、かなりの変わり者。それだけにやることもエネルギッシュ。こういう無駄にエネルギーが余ってるようなキャラクターを見るのは楽しい。

【雑誌】CRAFT Vol.17 大洋図書 A5平 [bk1][Amzn]

 雁須磨子「のはらのはらの」は最終回。なんだかだらだらとしているうちに、いつのまにやらくっついてしまった西戸崎と先輩の糸島(いちおう書いておくけど男同士)。実は物語中、とくに波瀾もなく二人の仲はずっと近づき続けている。その遅々たる歩みが面白かった。本当に進展がのんびり。エロありな雑誌におけるボーイズラブというのはえてして進展が早いものだけど、そんな中、ぷらぷらそぞろ歩きでもするかのようなぺースで進むお話はなかなか新鮮だった。紺野キタ「めばえ」。女の子の格好をするのは好きだけど、別にホモセクシュアルな趣味は全然ない小学校6年男子・司。彼のおかげで一人の少年が道を踏み外すことになってしまうのでした、というお話。どちらの少年もたいへんかわいらしうございますなー。

【単行本】「バガボンド」17巻 井上雄彦 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 いよいよ小次郎が鐘巻自斎のもとから巣立ちの時を迎える。序盤は「小次郎かっこいい〜」「一刀斎かっこいい〜」という感じだが、この巻の終盤のあたりは、人生の晩年を捧げた小次郎を手離したときの、自斎の感慨深い表情に感動させられる。年輪がしっかり刻まれたいい顔してます。人間の顔というものをきちんと描けるというのはやはり強い。

【単行本】「ベルセルク」25巻 三浦建太郎 白泉社 B6 [bk1][Amzn]

 魔女の弟子・シールケと行を共にするようになったガッツ一行。魔物たちとの戦いの中で一行は魔術というモノの凄い力を知るとともに、シールケもガッツの豪勇に驚嘆する。考えてみれば、この世界観で、この巻数に至るまで魔術というものに頼ることなく戦闘シーンを描いてきたというのは改めて凄いことであったような気がする。新しい要素が加わってどのようにお話が展開していくのか、やはり楽しみ。

【単行本】「黒田三十六計」2巻 平田弘史 リイド社 A5 [bk1][Amzn]

 黒田官兵衛の生涯を追っていく戦国時代劇画シリーズ。この巻は、二十歳そこそこの才気ばしった青年だったころの官兵衛が苦杯をなめた折りのお話を描いている。戦を仕切ろうとするも人望がなかったため策略が失敗し、家中の顰蹙を買った官兵衛。その窮地を逃れるべくとった策が、同じ家中の者の子供を殺して磔にするという事件を起こして話題の矛先を反らすというものだったというのがけっこう衝撃的。史実を基にしたフィクションであるとはいえ、物語の主役とは思えないような振る舞い。殺伐とした戦国模様を伺わせるエピソードだった。

【単行本】「金魚屋古書店出納帳」2巻 芳崎せいむ 少年画報社 A5 [bk1][Amzn]

 懐かしい漫画本を愛する良心的な古書店「金魚屋」と、漫画に対して大切な想い出を持った人たちによる人間ドラマ。上品な絵柄で、本とその本がくれた想い出を大切に描いた良心的な作品。一つひとつのエピソードを丹念に作っててよくできてる。とはいえ実はこの作品を読んでいると、個人的には違和感も抱いてしまう。いや、別に作品自体が悪いってわけじゃなくって、これは金魚屋周辺の人々が単行本派で、自分が雑誌派であるというスタンスの違いに起因しているのだろう。

 まあぶっちゃけた話、自分は現在進行形の作品についてはそれなりに読んでいるとは思うのだけど、それを追っかけるのに汲々とするあまり、読みが雑になっているんじゃないかという引け目は感じている。で、この作品の場合、一つの作品を繰り返しいとおしむように読むということにむしろ重きが置かれているので、自分みたいに次から次へと濫読しているとなんか申し訳ないような気がしてきちゃうのだ。自分はさほど一つの作品を何度も読み込むほうじゃないので(さすがにそれをやってると追っつかないし)、この作品に出てくるレトロマンガマニアのキンコちゃんあたりには全存在を否定されちゃいそうでちょっと怖い。でも正直なところ、この本を読むと個人的には「そっちもいいんだけど、若いんだからもっと今の漫画を、そして雑誌を読もうぜ〜」とも思ってしまう。……とかまあそんなわけで自分の読書スタイルについても、つい考えさせられてしまう漫画ではある。

【単行本】「タコポン完全版」上下巻 作:狩撫麻礼+画:いましろたかし エンターブレイン B6 [bk1][Amzn:上巻/下巻

 まったく見知らぬ者同士4人が何者化によって集められ、一つ屋根の下、家族として暮らすことに。とりあえず依頼者が金は振り込んで来るので4人は家族生活を営むけれども、彼らに「タコポン」と名付けられた依頼者が実は宇宙人であったことが判明し、事態はどんどん思わぬ方向へと進んでいく。以前双葉社から全8巻で出てたときも読んだけど、今回の復刊を機会に改めて読み直してみた。で、これがけっこうスタンダードに面白い。仮面家族によるファミリードラマとしてもいいけど、少しずつネタが明かされていくミステリアスな展開もなかなか読みごたえあり。意外とスケールも大きい。あと8巻分を2巻に詰め込んでいるだけあって、密度が異様に高いです。


6/28(土)……魔のワニ包囲ショー

俺キューブ6月22日の日記で書いたとおり、ビデオエンコ&キャプチャー用のキューブPCに12cmファンを追加したら、ずいぶんいい具合になった。写真のような状態で、ケースは開けたまま、ファンは固定とかはとくにせず横にただ置いてあるだけ。1日中ビデオエンコを回しっぱなしにしててもHDDが43℃程度。CPUも60℃弱程度に収まる。CPUはアツいものの、まあこれは壊れても別のに差し替えればなんとかなるパーツなんであんまり気にはならない。とりあえずエンコ途中で止まったりせず、普通に動いてくれていればそれでオッケー。HDDは壊れるとデータ吹っ飛んじゃうので損失はむちゃくちゃデカいけど、CPUだけなら壊れても取り返しはつく。CPUなら最近はそこそこのものでも1万円以下で買えるし。まあそんなわけで静音化&冷却は完了。これならマシンつけたままでも安心して寝られます。

【雑誌】フラワーズ 8月号 小学館 B5平

 吉田秋生の新連載「イヴの眠り」がスタート。63ページ掲載。えーと「YASHA−夜叉−」は読んでなかったのでよく知らないのだけど、その18年後という設定なのかな。けっこう面白げではあるので「YASHA−夜叉−」のほうもそのうち機会があれば。波津彬子「うるわしの英国」シリーズ、今回は「魔法意匠の庭」前編が掲載。死去した婚約者への思いを理由に、幼なじみのアルフォンスのプロポーズを拒み続けてきたヴィクトリア。そんなことを5年も続けているうちに、アルフォンスは売れっ子小説家になり、二人の関係にも転機が訪れようとしていた。アルフォンスが一人の少女を連れてきてヴィクトリアにその家庭教師を依頼するのだが、少女のいうことな何やら謎めいていて……というわけで以下次号。いかにも上品なヴィクトリアの容姿がいかにも英国。この人ほど血中英国趣味濃度が高い作家さんも珍しい。西炯子「お手々つないで」。毎回面白いラブコメディ。とらえどころのないマイペースな女子・山王さんと、それに振り回されっぱなしなモテ男・佐藤くんのコンビネーションが見てていつも楽しい。

【雑誌】コーラス 8月号 集英社 B5平

 小沢真理「ニコニコ日記」がTVドラマ化決定。8月18日から放送開始。NHK教育は最近けっこう意欲的にドラマやってますな。まあそれはともかく、この作品はけっこうドラマ向きだとは思う。

【雑誌】メロディ 8月号 白泉社 B5平

 今号はいまいち琴線に触れる作品がなし。魔夜峰央「パタリロ西遊記!」、加藤四季「お嬢さまと私」とショートギャグものは安定して面白いけど。

【雑誌】阿ウン 8月号 ヒット出版社 B5平

 師走の翁「精装追男姐」は5話め。これまで身体から分離していたおちんちんが、ついに本来の持ち主である美少年・リューくんの元へ帰還。いろいろ経験を積んだチンコのおかげでリューくんは、それまでのメソメソ少年から強引な淫乱少年へと早変わり。いやーいつもながらノリノリで楽しいねえ。絵の密度の高さ、それからストーリ展開のテンポの良さ、遊び心と総合点が非常に高い。昔からうまい人ではあったけど、近年ますます作家的に成長してるんじゃないかと思います。池上竜矢「好き好き大好き」。生徒である息子の真琴くんが好きで好きでしょうがなくって、のべつまくなし求めちゃう母親女教師・双葉先生の活躍を描くシリーズ。何かにつけてそういう展開に持ち込もうとする双葉先生のエネルギッシュな振る舞いがいい感じ。あと絵のほうも元気が良く、親しみやすくてけっこう好き。

【雑誌】快楽天 8月号 ワニマガジン B5中

 リニューアルしてからエロ路線をずいぶん強化した快楽天だが、今号はなんとなく、エロ路線と今までのオシャレ路線がちょうどいいバランスになってきたような気がした。前半がエロ路線、後半がオシャレ路線とわりときれいに分かれていて、どちらもちょうどいい分量。

 まずエロ側。西安「間柄」。大学時代ご主人様&奴隷の関係にあった女教師2人が、ともに生徒の公平君の奴隷として仲良くエロエロな日々を送るようになるというお話。いつもながらこの人の絵は、線がキリッと引き締まっててかつ肉付きも豊富でエロかっこいい。見映えのする作画。かるま龍狼「お汁夫人」は、潮を吹いたことがないというお金持ちの奥様が潮初体験をなさるというお話。コメディとエロを両立する腕前はさすが。例えば乳の揺れ方一つとってもそうだけど、色んな面でツボをしっかり押さえているところがエラい。飛龍乱「天国にいちばん遠い家」は、飛龍乱お得意の、子供の友達である美少年が奥様をメロメロにしちゃうという筋立て。この人の描く、肉のぷりぷりした女性はやっぱ好きですわい。

 島本晴海「はれ☆ゆき」。こちらは快楽天初登場。オクテな二人がお互いに告白しあって結ばれるというほのぼのラブストーリー。この人はこういうアツアツカップル漫画を描くのがけっこううまい。草津てるにょ「クックスタジアム」。肉まん作りで美女二人がスタジアムで対決。しかしなぜかそれがエロエロな方向へと突入しちゃって、肉とまんが入り乱れる展開に。最近草津てるにょはけっこう馬鹿馬鹿しいお話も描くようになって、だいぶ懐が広くなったような。エロもちゃんと両立してるし。

 続いてオシャレサイド。鳴子ハナハル「蔵」前編は初カラー。地方の豪家の生まれながら、親が決めた許婚を残して女中と逃げた男が、父親の訃報を聞いて帰郷する。しかしそんな彼に迫るは婚約者であった加代子の妹である京子。それがきっかけとなって男はまたしても故郷にからみとられていく……という感じ。タカハシマコ「あわあわ」は、姉弟が仲むつまじく一緒にオフロ、と思いきや突如つきつけらる苦い現実。短いながらも切なさたっぷりのお話に仕上がっていて手際鮮やか。近里みちる「マヨネチュード6.9」は、元気な作風がなかなか面白い。貧乏でマヨネーズくらいしか食えない不思議ちゃん的な女の子の、しょーもない日常を描くというお話。ハジけててよろしいんじゃないでしょうか。陽気婢「内向エロス」は妄想たっぷりなお話。かつては「やおいコンビ」と呼ばれた美少年同士だった男二人。しかし片方は大人になってタダのデブオタと化していた……と思ったら、そのうち意外すぎる事態に。このくらい都合がいいとかえって楽しいねー。

【アンソロジー】アイラDELUXE VOLUME.12 三和出版 A5平 [Amzn]

 掘骨砕三「虫籠」。古い廃向上の雨水溜めにある煉瓦さんの家で、下働きをしている女の子・盥のお話。彼女が同じく煉瓦に囲われている少女・生粗と仲良くなるというお話。お腹の中で虫を飼って育ててたり、グロテクスなことをやってるのに、そのグロさと可愛さが不可分のものとして同居。やっぱええですわい。柿ノ本歌麿「令嬢利々菜 狂気と復讐のBODY LANGUAGE」。アイラDELUXEにちゃんと定着していきそうな気配でうれしい。今回は学校で肉奴隷として扱われているお嬢さまが、なぜそうなったのかを語るという内容。まあ実は1年ほど誘拐犯に拉致されててその間に受けた人間離れした凌辱ビデオが出回っているからなんだけど、その中身がやっぱスゲー。「中」の肉がずるずるに引きずり出されてて別の生物みたい。マネしたいとかそういう感情をいっさい差し挟む余地がないほどのやりすぎ感が実に素晴らしい。氏賀Y太「まいちゃんの日常」。この人もやっぱり刺激がメチャクチャ強い。まいちゃんは今回、高性能包丁の試し切り要員とされつつやられまくる。バサバサずぶずぶ切り刻んで血もぶわぶわ。まったくもって情け容赦がない。柿ノ本歌麿→氏賀Y太と掲載順が並んでいて、このコンボは超強力。

 ところで次号予告に「ハード凌辱の雄、初登場!!」といううたい文句で井ノ本リカ子の名前があったのにはちょっと笑った。そういうキャラではないような……。まあこの人ならハード凌辱でも描きこなすだろうけれども。


6/27(金)……ええ気前、高慢浪費

▼bk1が、マンガ新刊予約に代わってリマインダサービスというのを始めるそうだ。bk1から来たおしらせメールによると「専用ページで登録した近刊コミックスが、bk1で購入可能になったことをメールでお知らせするというもの」らしい。で、実際にページを見てみたんだけど、うーん出版社別に登録しなくちゃいけないのか……。全出版社のがいっぺんに登録できるページとかあったら便利そうなんだけど。ご意見・ご提案受付中とのことだったのでいちおう要望メールは出してみた。現在の仕様だと、使うかどうかは微妙なライン。

▼未読物
【単行本】「金魚屋古書店出納帳」2巻 芳崎せいむ 少年画報社 A5 [bk1][Amzn]

【雑誌】ヤングアニマル 7/11 No.13 白泉社 B5中

 作:雑破業+画:竹内桜「ちょこッとSister」が連載化。2002年12/27 No.24(感想は2002年12月13日の日記参照)に読切で掲載されたものの続編。クリスマスの日にサンタさんからかわいい妹がプレゼントとして送られて来るという、なんか脳味噌トロトロになりそうな萌えシチュエーション話。読切版は本当にそれだけのストーリーだったので「原作付きでやるほどでもないよなー」とか思っていた。むしろ連載向きでしょう。で、1回めは二人が暮らすアパートに、めがねっ娘の管理人さんがやってきてハーレム状態の予感。藍より青くなるかもねー。

【雑誌】ビッグコミックスペリオール 7/11 No.14 小学館 B5中

 片山まさゆき「時給女王!!ルリ」が掲載。なんかギャルにやる気のなさげなギャル雀で、困ったお客さんを懲らしめる役割を担っているメチャメチャ強引なメンバー・ルリの活躍を描くというお話。まあいつもの片山まさゆきという感じで手堅い。新井英樹「キーチ!!」。キーチが育ってちょっとカッコ良くなってきたような気がする。

【雑誌】コミックバンチ 7/11 No.30 新潮社 B5中

 日高建男「満腹ボクサー徳川。」は毎度しっかり面白い。タフネスさでは並ぶ者なき市川に、徳川が真っ向勝負を挑み、ヘヴィ級ボクサーとしての力を証明する。試合が進むごとに、このプクプクした身体の男がどんどんカッコ良く見えてくる。増量の苦しさ、難しさというものはしっかり描いているけど、それだけに止まらすお話としても面白い。よくできた作品。

【雑誌】LaLa 8月号 白泉社 B5平

 なかじ有紀「ビーナスは片想い」は、予定調和の気持ち良さが存分に味わえる作品。「くっつきそうな人同士がくっつく」という、たいへん分かりやすい状況を焦らして焦らして。ラブコメだなあ。津田雅美「彼氏彼女の事情」。なんかサラッとたいへんなことをいってますな〜。若い身空でたいへんだ。緑川ゆき「体温のかけら」。11年間、いつも一緒にいた幼なじみの男の子・竹田くんに彼女ができたと聞いて、女子高生な吉尾さんはブチ切れ。なんとか彼への気持ちに区切りをつけようとするも、やはり諦めきれない気持ちは残る。そんな吉尾さんの気持ちに気づいた竹田くんもそのことが心に引っかかり続けて……というお話。青春恋愛模様がセンチメンタルでなかなかいい。スタイリッシュな絵柄も相変わらず好感度高し。ただ竹田くんの出した結論はどうなんだろう。なんか後々しこりが残りそうな。

【雑誌】コミックミニモン 8月号 東京三世社 A5中

 ほしのふうた「ノリちゃんと私」。ご近所に住んでる少年少女がやりまくっているだけというお話なんだけど、いつものことながらどっちも無邪気でかわいいなあ。女の子だけじゃなくて男の子のほうもいい。雑誌の表紙もほしのふうたが描いているが、こっちの女の子もこれまた元気そうでいい感じ。

【単行本】「青春ビンタ!」4巻 私屋カヲル 少年画報社 A5 [bk1][Amzn]

 いつもながらバカやってて楽しいねえ。男子・女子の妄想爆発で、サービスシーンをふんだんに盛り込みつつドタバタ勢い良く学園生活を展開。やっぱりキャラクターが基本的にバカばかりというのは見ててワクワクする。今回はジョーカー的な存在であるネネ先生だけでなく、ヒロインであるはずの桃香とかもヘンなことをするようになってる。アミちゃんのゴージャスな乳も目の保養で、見てて飽きない。

【単行本】「無敵看板娘」4巻 佐渡川凖 秋田書店 新書判 [bk1][Amzn]

 こちらも安定して面白い。ラーメン屋の手伝いをしている看板娘な美輝が暴れまくっていることは確かだが、萌えというよりもごくスタンダードなドタバタコメディ。元気があり余っている様子がエキサイティング。でも実は狭いエリアでしか活動していなくて、「ああ、あそこの娘さんがまたやってるよ」という感じ。基本的に社会的な影響はとくにないあたりが微笑ましい。

【単行本】「駅前浪漫奇行」 駕籠真太郎 太田出版 A5 [bk1][Amzn]

 この本はいまいちおもしろくないかなあ。「駅前」シリーズの一環として「踊る!クレムリン御殿」でやったように、世界各国をネタにしてドカドカとお話を転がしていく。その料理の仕方自体は面白いのだけど、思いついたことを次から次へと並べ立ててるという感じで、ネタの一つ一つは面白いけど全体として見た場合にあんまり印象に残らない。別に内臓を振り回したり人体改造したりしないというのが物足りないってわけではなく、ネタを元にした話の練り込みがちと駕籠真太郎にしては甘いのではないかなあとか思った。わりと淡々と進んじゃってる印象。


6/26(木)……しよう、年末は

▼未読物
【単行本】「タコポン完全版」上巻 いましろたかし エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「タコポン完全版」下巻 いましろたかし エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「駅前浪漫奇行」 駕籠真太郎 太田出版 A5 [bk1][Amzn]
【単行本】「バガボンド」17巻 井上雄彦 講談社 B6 [bk1][Amzn]
【単行本】「黒田三十六計」2巻 平田弘史 リイド社 A5 [bk1][Amzn]
▼27日売り
【雑誌】ヤングアニマル 7/11 No.13 白泉社 B5中
【雑誌】コミックミニモン 8月号 東京三世社 A5中
▼28日売り
【雑誌】阿ウン 8月号 ヒット出版社 B5平
【雑誌】快楽天 8月号 ワニマガジン B5中
【アンソロジー】アイラDELUXE 三和出版 A5平 [Amzn]

【雑誌】アックス Vol.33 青林工藝舎 A5平 [bk1][Amzn]

 みうらじゅん「アイデン&ティティ32」が毎回面白い。病に倒れ余命あとわずかという状態の岩本が、本当の意味での最後のライブへと向かってひた走る。最期までロッカーであろうとする生き様には切々と迫るものがある。あと、こういう「死を前にして何かに挑む」という設定は、ベタだけど意外と最近見ないような気もして新鮮。中野シズカ「刺星」前編。この人の作画にはいつもながら惹かれる。主線を用いず、スクリーントーンの重ね合わせでモノの輪郭を表現する切り絵的な手法がカッコイイ。福満しげゆき「日本のアルバイト」は、ゾンビが日常的にそこらへんをうろうろしている不景気日本で、バイトがなかなか見つからずふらふらしている青年のお話。いつもながらに主人公はとても頼りない。とくにすごい事件は起こらないけど、その淡々とした日常の進みぶりが快感。このシリーズは不定期連載になるようなので、今後にも期待。あと巻末の告知によれば、福満しげゆき初単行本となる「まだ旅立ってもいないのに」[bk1]の発売日は8月上旬になったとのこと。

【雑誌】少年エース 8月号 角川書店 B5平

 天津冴「が〜でぃあんHearts」。今さらながら主人公の和也がモテまくり、告白されまくり。まさに濡れ手にあわわわわ。とても都合がよくて素晴らしいと思った。小手川ゆあの新連載「ライン」は、女子高生二人がメインのサスペンスアクションもの。手堅い作風ではあるのだけど、この人の場合はキャラクターの表情にもう少しメリハリが出るとより読みやすくなるんじゃないかなといつも思う。それもあってか、なんだかお話が頭に入ってきにくかった。さほど複雑な筋立てでもないんだけど……。吉崎観音「ケロロ軍曹」。夏美の意外な弱点発見で、ケロロたちが調子に乗る。毎回ドタバタとコンスタントに楽しい。いい仕事してますな。

【雑誌】ガンダムエース 8月号 角川書店 B5平

 安彦良和「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」は、アムロが砂漠をうろちょろしてランバ・ラルとハモンさんに酒場で遭遇して、迎えに来たフラウ・ボウになんだかんだいわれる話。ハモンさんが美人であるなあというのと、フラウ・ボウのごく普通な女の子っぷりが改めて新鮮に感じられた。あとランバ・ラルはカッコイイ。ORIGINは各人物像の掘り下げが深くて、やっぱり面白い。井上行広「アクシズのハマーンさん」。なんだかやっぱりこの雑誌には萌えハマーンが必要なのだなと感じた。

【雑誌】モーニング 7/10 No.30 講談社 B5中

 桝田道也「浅倉家騒動記」は今号から月イチ連載に昇格。相変わらず下らなくてとても面白い。今回は浅倉家当主が、猫にとりつかれたみたいになっている男をひまつぶしに諭す。そこからの展開が思わぬ方向にどんどん転がっていってとても楽しい。言葉のセンスも絶妙。やっぱりギャグ漫画は言葉が良くないとね。最近出てきたギャグ漫画家の中ではかなりの有望株といっていいんじゃないだろうか。

【雑誌】ヤングサンデー 7/10 No.30 小学館 B5中

 北崎拓「なんてっ探偵アイドル」。トリコロールの新メンバー・あげはが、アキラたちと一緒の学校に転校してくる。そしてさっそくスクール水着。いやーサービス精神旺盛ですなあ。一色登希彦「ダービージョッキー」(原案:武豊+構成:工藤晋)。しっかり面白い。ベテラン騎手・財津が見せる意地、凄みのあるセリフがシブくかっこよかった。脇役もしっかり輝かせることのできる一色登希彦はやっぱり実力ある作家さんだと思う。

【雑誌】ヤングジャンプ 7/10 No.30 集英社 B5中

 海野そら太の読切「少年マッハ」が元気があって好印象。おちこぼれ学校の生徒だけど100メートル10秒台という超俊足な少年が、好きな女の子のために名門校の選手と勝負するというお話。海野そら太で自分日記に検索をかけたところ2002年10/3 No.42掲載の「殴られ屋」、増刊ヤングジャンプ漫革9/25 Vol.29掲載の「ここで逢いましょう」が引っかかった。

【雑誌】週刊少年チャンピオン 7/10 No.30 秋田書店 B5平

 すげー。作:ピエール瀧+画:漫$画太郎「樹海少年ZOO1」がすげー。これはいっさい内容について書くわけにはいくまい。何書いてもネタバレになっちゃうよ! この連載は以前も言語道断な超展開を見せてくれたが、それと同等クラスの衝撃を与えてくれた。ここまで豪快に放り投げてくれると参りましたというほかない。浜岡賢次「浦安鉄筋家族」は2本立て。1本はいつものとおりやって、もう1本をそれと同じお話をクラスの中のまったく目立たない地味な男子二人の視点から語るという構成で、ワザ師ぶりを存分に発揮。うまい。

【単行本】「がじぇっと」1巻 衛藤ヒロユキ マッグガーデン B6 [bk1][Amzn]

 ああ、なるほど。これは評判どおりいい。お話は、元電気屋の家に生まれて機械関係の修理が得意という特殊技能を持つ中学1年生・鳥賀周一くんが,とてもカワイイ声の持ち主であるクラスメートの多来さん(通称:タレちゃん)に一目惚れするところから始まる。でもタレちゃんは何やら機械関係の不思議なものを呼び寄せてしまう不思議な性質があるらしく、彼女の周りで空飛ぶ機械が見えたり、不思議な事件がたびたび起こるようになる。

 基本的には鳥賀くんの初恋を軸にお話は進行するのだけど、そこに宇宙人とかSFチックな要素をうまいことからめてお話は展開。考えてみると、初恋にしても宇宙人にしても基本的には「未知との遭遇」なんだよね。二つの「なんだろうこの気持ちは」というドキドキした感情を重ね合わせることによって、瑞々しい読み心地を作り出している。この作品で好感が持てるのが、キャラクターたちがけして背伸びしてないこと。中学1年生という、まだ子供のほうにより近い年頃の少年少女たちの、日々のアドベンチャーをあったかく描いている。衛藤ヒロユキの描き方自体も、「少年らしい少年をピュアに描きましたよ」といったいかにも大人くさい匂いが全然しない。わりと素で、少年に近い視点でモノを描いている作家という気がする。汚れたところが全然なくてすごく気持ちがいいなあ。

 あと言葉もいいと思う。鳥賀少年が部屋で機械いじりをして、一息ついているシーンで「発光するものが多いので部屋を暗くすると宇宙船みたいになる」「ぼくはこれがわりと好きなのだった」というモノローグがあるんだけど、こういう描写とかなんとなく少年らしい情緒が随所に感じられていい。こんな少年少女は今どきあんまりいないかもしれないけれども、こういう作品があるってことは重要だと思う。

【単行本】「濃爆おたく大統領」1巻 徳光康之 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 おたく先生に続き、今度は大統領。序盤のロケットパンチにこだわる展開はなかなか素晴らしい。やはり男はドリルとロケットパンチ。後半は「サクラ大戦」の話になるのでよく分からないが、徳光康之の愛の強烈さは伝わってくる。……楽しそうだなあ。

【アンソロジー】園ジぇる 茜新社 A5平 [Amzn]

 ご立派なタイトルどおりの幼女エロエロアンソロジー本。執筆陣は茜新社の公式サイトのほうを参照。それにしても思うのだけど、可愛くてかつエロい幼女絵を描ける人ってここ数年ですごく増えた。この本も、うろたん、目高健一、らいむみんと、魔道うに、きくらげ……そのほかにもいろいろといった具合にうまい人が揃っている。芹沢ゆーじ「らぷそでぃ」あたりは、幼女がいっぱいいて大人たちとエロっちいことばかりしている楽園のような公園というイカれた設定が面白い。あと小山田満月のカラー2Pは相変わらずすごくうまい。身体の各パーツの質感に、ホンモノならではの情熱を感じる。なお、このシリーズは続編も出る模様。10月ごろに「乳園ジぇる(仮)」が発売予定というアナウンスが掲載されている。それにしても最近の茜新社は、コミックLOといい、なかなか飛ばしてますな。ちとあざといような気がしないでもないけど、プロモーションがうまいと思う。


6/25(水)……下士官の菓子缶

▼OHP月極アンケート6月分「刑事・探偵・捕物・ミステリ」は30日で締め切りますんで、投票お済みでない方はお早めにどうぞ。

【雑誌】月刊IKKI 8月号 小学館 B5平

 相変わらず個性派がひしめくバラエティに富みすぎるくらいな誌面。よくいえば多彩だけど、統一された雑誌のカラーがなくすごく雑然としているともいえる。個人的には楽しいが、一作ごとに頭のスイッチを完全に切り替えなくちゃならないので読むのがタイヘン。

 吉野朔実の新連載「period」が開始で一挙3話掲載。これはすごく読みごたえがあった。大学教授で一見すごくクール、だけど家庭では暴君な父の家庭内暴力に振り回される二人の少年の物語。作画が美しいだけに暴力の描写が非常に痛々しく、ズンとこたえるものがある。父親の冷静な表情にゾクッとくる。これはなかなか怖い作品。次回以降の展開にも要注目。五十嵐大介「スピンドル」後編。東洋と西洋のぶつかり合うアジア西端の地を舞台にした、魔術的な物語。何よりも五十嵐大介の作画が素晴らしい。オカルト風味てんこ盛りで細部までしっかり描き込まれた画面には、呑み込まれてしまうような迫力がある。謎めいたストーリー展開や深い余韻を残すラストも見事。シリーズ第2弾は初冬登場予定とのこと。のんびり待ちます。

 日本橋ヨヲコ「G戦場ヘヴンズドア」は今回で最終回。いろいろあったけど、最後はきれいに収まるべきところに収まったなという感じ。カサハラテツロー「ライドバック」は、アクションシーンが派手で痛快。わりと小難しげな漫画の多いこの雑誌の中で、こういうスカッと楽しめる作品は貴重。笠辺哲「衛生下士官」は、悲惨な戦場の最前線で戦う兵士たちの葛藤を描くハードな物語……かと思ったが、ラストのヒネリがなかなかユニーク。新人賞のイキマン出身者だが、作画も特徴あるしいっぷう変わった作品を描く。ちょっと面白い存在だ。青山景「ドリップ」。ボケ気味の老人が孫の部屋を訪ねたところ、そこで見たものはバイブを突っ込まれたまま放置プレイされている少女。この二人のちょっと馬鹿げた会話をベースにお話は進行。エロ描写を混ぜつつぶっとんだ展開を見せるあたりは、ちょっと朔ユキ蔵に似てるかな。高い画力の持ち主だし、今後もどんどん作品を描いてってほしい。

【雑誌】アフタヌーン 8月号 講談社 B5平

 赤名修が「勇午」をしばらくお休みして新連載「ダンダラ」を開始。新撰組の面々の活躍をハードに描く歴史ロマン。初回は芹沢鴨に近藤勇がボコられてます。力が入っている感じで読みごたえは十分。とよ田みのる「ラブロマ」。毎回面白いなー。実に微笑ましい。今回は星野くんが根岸さんの家を訪問。いつもながら星野くんの率直すぎる物言いが楽しい。ユーモアがしっかり利いててほのぼの。今度は星野くんの家族のほうも見てみたい。上田宏則「Kiss girl」のトクマくん&ユキちゃんの内気な二人の恋愛模様もこれまたいい感じ。シプルな線なんだけど、女性を魅力たっぷりに描けていると思う。

 須藤真澄「雨が止むとき」。実は四季賞出身なんだそうだが、アフタヌーンには初登場。雨に濡れると姿が見えなくなってしまうという不思議な現象に包まれた街を舞台にしたファンタジー。昔ほどのセンスオブワンダーは感じないものの、きれいにまとまっているし愛敬もある。こういうタイプの作品もどんどん描いていってほしい。高橋ツトム「爆音列島」。暴力がたいへん痛そう。暴走族の人たちって怖いんだなあということをリアルに感じる。どうもこれから暴走族同士のガチンコな抗争になっていくようだが、すごく迫力のある戦いになりそう。伊達にシンナーで脳味噌とろかしちゃいねえなと思った。当時の文化状況も含めてとても興味深い。

【雑誌】手塚治虫マガジン 8月号 KKベストセラーズ B5中

 さすがに毎号しっかり読める。「ブラック・ジャック」「どろろ」はカッコイイし、「リボンの騎士」は可憐だし。あとアニメ公開記念ということで「ぼくのそんごくう」も掲載されている。手塚治虫作品は、名前は有名だけど意外とちゃんと読んでない作品も多かったりするので、こういう雑誌で毎月読めるのは気楽だしけっこうありがたい。

【雑誌】ビッグコミック 7/10 No.13 小学館 B5中

 さいとう・たかを「ゴルゴ13」。今回のエピソードはオープン・ソースのOSとブラウザの技術をめぐる日本人技術者と米国の巨大企業経営者の軋轢がテーマに。ビル・ゲイツ的な人物をヤッちゃうんだろうか。すごいぜゴルゴ。作:小池一夫+画:森秀樹「花縄」。長谷川平蔵の跡を継ぐべく、元力士の花太郎が江戸の街を行く。シブく人間ドラマを展開していて、ガッシリした読みごたえ。さすがに豪華コンビだけあってしっかり面白い。

【雑誌】スーパージャンプ 7/9 No.14 集英社 B5中

 新連載、大河原遁「王様の仕立て屋 〜サルト・フィニート〜」は、ナポリ在住の凄腕の洋服職人である日本人・織部悠が、その腕前を生かしてさまざまな人間ドラマに関わっていくというお話である模様。スーパージャンプは「ZERO」「きららの仕事」「ナッちゃん」と、職人系の作品が多いね。わりと手堅く読める作品になりそう。この手の職人芸→人間ドラマという作品は、いい服作ればなんでも解決、おいしい料理でなんでも解決……というパターンになっちゃいがちなのが少し気になるところではあるけれど。

【雑誌】週刊少年サンデー 7/9 No.30 小学館 B5平

 読切で田中保佐奈「暗号名はBF」が掲載。BFは「ビッグファイア」の略。1日に77分7秒だけすごい美青年な大人に変身できるという能力を生かして、本当は小学生な団がエージェントとして活躍。つまりBF団なんだよ!……というのは一部ウソでBFは「ベビーフェイス」の略です。まあそんなわけで団少年は大人に変身して、女スパイをたらしこんだりしていろいろ活躍する。もしかして子供のままのほうがたらしこむにはいいかもねーとか思ったりもするけど、まあいろいろサービスもあるし、ドタバタしたアクションものとしてきっちりまとまってる。けっこう楽しく読んだ。

【雑誌】週刊少年マガジン 7/9 No.30 講談社 B5平

 岩田やすてるが週刊少年マガジンに初登場。「キイチDA GOAL!!!」が掲載。Jリーグのユースチームという、ちょっとシブいカテゴリを題材にした熱血サッカー漫画。主人公のキイチは、地方の無名校に所属していたがその天才的なセンスが認められてユースチーム入りした逸材。そんな彼がユースチームで友情を育みつつ、その才能を開花させていくというお話。さすがに実績のある人だけに、明快で分かりやすいお話作り。ごくストレートに面白く、スルスルと読めた。連載向きのお話だとは思うけど。 作:七三太朗+画:川三番地「Dreams」。日本語に訳されてそのまま元の英語名に戻ることなく流通し続けたスポーツというネタが出てきて「野球だけは」といってるけど「卓球」もそうだよなーとか思った。

【単行本】「モン・スール」 きづきあきら ぺんぎん書房 A5 [bk1][Amzn]

 コミケやコミティアに出ている創作系同人サークル「GRAIL」で活躍していたきづきあきらの初単行本。コミコインで配信されているウェブコミック雑誌「COMIC SEED!」で連載された作品をまとめたもの。

 母親に続いて父親も失踪した家で、二人暮らしていた兄妹をめぐる物語。兄・柾樹は生活に追われる中で余裕をなくしていき、小学生である妹・美波のことは置き去りにしがち。そんな中、美波の心の空虚は広がっていき、兄の友人である神田への恋にすがるようになる。神田は神田で、美波と肉体関係を持ってしまったことによる罪悪感に苛まれる。一見ソフトな絵柄でありながら、登場人物たちがお互いに心の痛みをさらけ出し痛い言葉をぶつけ合うストーリー進行はかなりシビア。このへんの容赦のなさはきづきあきらの持ち味が出ている。ただラストはちと宙ぶらりんな印象。別に救いをもたらせとはいわないけど、登場人物たちを突き放すでもなく、何も解決しないままというのはちと収まりが良くなかった。ただ、読ませる力自体は確かなものを持っている。だから余計に宙ぶらりんな締めくくり方が気になったりするんだろうけれども。


6/24(火)……相撲陸軍

【雑誌】イブニング 7/8 No.9 講談社 B5中

 寺沢大介「喰いタン」。いつも面白いなー。今回は高野がこの作品としては珍しいサービスシーンは無視で、焼鳥とビールへの愛を語り、そして食いまくる。あー、こういうの見てるとたまらなく焼鳥が食いたくなってくる。鶏肉好きだー。ものすごく好きだー。そういえば寺沢大介って、モノをうまそうに食ってる人間を描くのがすごくうまいと思う。こっちまで食いたくなってしまう。焼鳥焼鳥焼鳥〜。佐藤マコト「サトラレ」。このところ反サトラレな山田教授がカッコイイ。クールで陰湿だけど、冷徹な計算のもと、自分の力の及ぶ範囲で局面を打開しようとする毅然とした態度に男を感じる。吉田基已「恋風」。好きであるがゆえに、兄弟であるがゆえに、耕四郎は一つの決断を下す。そして次回から新章スタート。新章は耕四郎と七夏、どちらをメインにして展開するのか気になる。

【雑誌】ヤングチャンピオン 7/8 No.14 秋田書店 B5中

 葉月京「恋愛ジャンキー」。久々に地井さんが登場。やはりこの娘さんが一番良いと思う。まあ正直なところ、乳がデカいからというのはある。富沢ひとし「ブリッツ・ロワイアル」(原案:高見広春)。まだとりあえず殺し合いはスタートしていない。なんか「バトル・ロワイアル」でのプログラムとは、また違った感じになりそうだけど……。

【雑誌】漫画アクション 7/8 No.26 双葉社 B5中

 特別企画でギャグ漫画特集「ギャグ畑でつかまえて」というのが掲載されている。4人の作家が4ページずつ。ラインナップは上野顕太郎、いましろたかし、いとう耐、SABE。この中で一番意外だったのはやはりSABE。タコなんだけどダイバースーツを来て、ぶにゃぶにゃした頭の部分を玉袋といい張るヘンなモノが主役のヘンな漫画「素もぐり君」というのを描いている。ヘンだよなあ。あといましろたかしの、課長がカラオケで歌を歌っていてそれを誰も聞いてないというだけのお話「熱唱!盆堀課長」も味がある。最近のアクションはわりと動きがいろいろ出てきて面白くなっている。やっぱり雑誌はナマモノだから、動いてこそなんぼです。

【雑誌】漫画サンデー 7/8 No.26 実業之日本社 B5中

 作:倉科遼+画:勘崎順次「愛と復讐の挽歌」。恭平が自分の証拠を隠滅するためにフィリピンへ行き、血なまぐさい現実に直面。これからもさらにベタで大仰な展開が待っていそう。この雑誌の中では一番楽しみな作品。

【単行本】「凸凹ニンフォマニア」 駕籠真太郎 久保書店 A5 [bk1][Amzn]

 これまで入手難だった「人間以上」に続く駕籠真太郎の第二作品集が待望の復刊。個人的にこの単行本はすごく好きで、駕籠真太郎に本格的に入れ込んだのはこの本を読んでからだった。作者自身が「人間を道具として扱っていることに疑問を抱かない人間の気違いぶり」を描くという方向性を確立したと語る「動力工場」シリーズは、今見てもその奇想の連続に驚かされる。ここらへんを読んだとき、「エロ漫画でできる範囲」というものがすごく広がったような気がした。人体の内部から排泄物をテレポートさせることで発展した未来社会を描いた「A感覚の帰還」なんかも、その着想だけでなくそこからの展開がトリッキーで非常にうまい。体内虫うじゃうじゃSEXを描いた「極楽昆虫天国」とか、よくこういうネタを飄々とやっちゃうもんだよなあと感心させられる。

 今回の復刻では単行本初収録の「左側に気をつけろ」「ある英雄の死」も追加で掲載された。というわけで旧版を持っている人も買うしかないでしょう、という感じの本になっている。あ〜やっぱりこの本は好きだな。

【単行本】「媚虐の音色」 やまのべきった 桜桃書房 A5 [Amzn]

 連載されたのがCOMIC夢雅 2001年3月号〜2002年5月号ということで、かなり時間を置いての単行本化。財閥御曹司との結婚式の途中でさらわれた花嫁が、そのまま拉致監禁され覆面をつけた7人の男たちから休むことのない凌辱を受け続けるという過程を、全7話かけてみっちり描いた作品。救いがなくずーっとエロ責めされるというお話なので、まあ基本的には実用系。やまのべきったの描く女性は一見清楚なので、その分、色責めされてどんどん快楽に狂っていく様子はいやらしい。一本調子といえば一本調子だけど、ラストでどんでん返しもあって起承転結もついてるしよろしいんじゃないでしょうか。それにしてもこの奥さん、いくら夫に隠れて実は遊んでたからといってちょっとかわいそうだなあ。拉致したり監禁したり輪姦したり凌辱したりするのは、良くないことなので良くないと思った。


6/23(月)……おい、どんと来い!

【雑誌】ヤングキング 7/21 No.14 少年画報社 B5中

 中西やすひろ「愛DON'T恋」がついに最終回! いや〜最後までこいつらは。素晴らしいね。ここまでずっと女をとっかえひっかえして、愛欲の世界に生きてきた主人公・守が、突如出会った運命の女と添い遂げるというのがここまでの展開。で、最終回はこれまでのドロドロはきれいさっぱり忘れ、バーベキュー食いながらめでたしめでたし。守とひろみが、「こいつらのために日本を良くしていきたいな」「うん!!みんなでがんばろう」と会話しているシーンは正直爆笑してしまった。おまえらいったいどの口でそういうことを……なんでいきなり日本とかいいだすんだ……。

【雑誌】近代麻雀ゴールド 8月号 竹書房 B5中

 最近漫画雑誌で袋とじが流行ってる模様。今回は「雀鬼の一打!! 雀鬼・桜井章一が実戦譜を斬る!!」と題した袋とじ付き。別に袋とじにしなくても……という気はするけど。とみさわ千夏「不思議なピーチ牌」。いつもながらすごくバカバカしい。今回は横浜ベイスターズの東投手をモデルにした野球選手がナンシーと卓を囲む。ああ、期待の若手なのにイジられてるイジられてる……とか思いました。そういえば今号はせきやてつじ「おうどうもん」が休載でちょっと寂しい。

【雑誌】ヤングマガジン 7/7 No.30 講談社 B5中

 こちらでもヌード系の袋とじが。もりやまつるの読切「サブウェイ特急」は、柳沢慎吾みたいなサル顔の男が、ある日突然ロッケンローラーになってひと山当てるとか言い出し、彼女や親からあいそを尽かされる。まあ実際そんなに世の中甘くはないけど、挫折の末になんとかなってしまうという調子のいいお話。主人公をはじめとした登場人物の顔面パワーが凄く、つい読んでしまう。顔は大事です。蓮古田二郎「しあわせ団地」。はじめ夫婦が珍しく安居酒屋へ。最初はまあまあだったが、しだいにしょっぱい飲みに。いつもながらのはじめのダメっぷりが愉快。

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 7/7 No.30 小学館 B5中

 古泉智浩「友だちロボットZ-ayaオブジョイトイ」。何かと自分内で理屈をつけて部屋に引きこもっている竹夫に、父親が会社の試作品であるという美人のねーちゃん型の友達ロボットを与える。でも竹夫はダメ人間なので、まともな友達関係は築けない。最近の古泉智浩のダメ人間漫画はたいへんキレがいい。今回も身も蓋もないラストに思わず笑ってしまった。ダメ人間をダラダラ描いているのは確かなのだが、オチに持っていく思いっ切りの良さが素晴らしい。この作品がいいと思った人は、迷わず単行本「青春☆金属バット」(感想はオスマン「5月の日記より」参照)を買おう。

 谷広野「風を待ってる」後編。少年少女の生活感を描く描写にキラリと光るものが多く、期待を持たせる作家さん。ただ、前編がかなり変則的な進行をしていただけに、もっと面白い落とし方をしてほしかったなと思った。玉井雪雄「オメガトライブ」は連載再開で新展開。晴郎たちの新たな作戦が始まる。この作品は、なかなかいい感じに大風呂敷を広げていて読みごたえがある。

【雑誌】週刊少年ジャンプ 7/7 No.30 集英社 B5平

 和月伸宏の新連載「武装錬金」が開始。錬金術を戦闘に応用……というのが肝な、妖怪退治系の学園バトルものという感じ。さすがにキャリアのある人だけあって読みやすい。あと主人公の妹ちゃんがけっこうかわいい。作:稲垣理一郎+画:村田雄介「アイシールド21」は相変わらず好調。今回はアメフトというスポーツの、作戦面から見た面白みをしっかり描けていると思う。あと脇キャラの不良三人組がいい味を発揮。

【同人誌】「タイガーブック」 むっく コミックとらのあな A5平

 コミックとらのあなの情報誌「虎通」に掲載の「Miracle Tiger 虎々ちゃん」および無料配布の「とらだよ。」掲載の4コマ漫画「ココちゃん」を1冊にまとめた本。公式ページはこちら。まあ知っている人は知っているとおり、虎々ちゃんたちがドタバタ動き回りながらとらのあなを宣伝。屈託のなさが楽しい。ただ個人的には「とらのあなの美虎ちゃん」のほうが好きかなー。あっちのほうがページ数が短い分テンポがいいし、いつでもどこでも何があっても同人同人いっててイッちゃってる度が高いと思う。あと「美虎ちゃん」のほうが、他社媒体に掲載する広告媒体ということもあって、むりやり宣伝やってるというおかしさが出ているような気はする。でもまあこちらはこちらで賑やかでいいんだけど。

 ところでどうでも良いことだが、この本はお金で買うと700円の本なのだが、ポイントカードだと1000ポイント。これはポイントで交換するとちと割高なような……。ポイントは100円につき5ポイントなので、2万円買い物しないと1000ポイントたまらないわけだから。


6/22(日)……あ、回文か。受託。

6月8日の日記で書いた俺キューブPCの発熱問題がようやくいちおうの解決を見る。なにせケースが小さいもんで、高さのあるクーラーは入らない。薄型のクーラーは冷えないうえにうるさく、どうにも苦戦した。で、試行錯誤の結果、クーラーマスターのRadiantはなんとか装着できることが判明。これに付いているファンはそんなに静かってほどでもないのだが、ADDA製の70×70×15mmのファンCF-70SVRに交換することでだいぶ静かになった。7cmファンはそもそも単体売りされている製品があんまりないので、このくらいしか使えるものがないのだ。まあとりあえず、これでCPU、HDDの温度がともに40℃台まで抑えられた。ちょっと重い作業をすると50℃台になったりもするが、これまで通常時でも60℃とか行ってたのを考えれば雲泥の差。ケースは相変わらず開けっぱなしで運用しているので、今度は横に12cmの静音ファンでも置こう。これで熱問題は最終的な解決を見るはず。

【単行本】「赤い文化住宅の初子」 松田洋子 太田出版 A5 [bk1][Amzn]

 この単行本が出てくれたのはすごくうれしい。松田洋子は団地、集合住宅、文化住宅と、普通の人々が住んでいる、でも息詰まるような閉塞感、つましさに満ちた空間を描くのがすごくうまい。この単行本に収録されている「赤い文化住宅の初子」「PAINT IT BLUE」ともにそんな領域が舞台だ。

 「赤い文化住宅の初子」は、父は失踪し母は死去、共に暮らす兄はそんな状況にイライラし辛く当たる、そんな幸薄い環境で暮らす女子中学生・初子が、同級生の少年との恋愛をたった一つの心の支えにしながら生きるいじましい姿を描いた物語。現実はつらい、でもつらいだけに彼氏との時間が大切なものに感じられる、そんな気持ちを実に丁寧に描いている。ちっぽけな幸せでさえ、自分には身に余るものであると思ってしまう初子の健気さが心にしみる。切なくやりきれなく暖かく、いとおしくなるような作品。

 かたや「PAINT IT BLUE」は、大学に行く頭がなかったので親父のやっている鉄工所に就職した青年の、どんづまった青春模様を飄々と描いた作品。普通の漫画だったらその状況に一念発起して、立身出世やら鉄工所の繁栄を目指したりしそうなもんだが、この主人公は別にそんなことはしない。現実を淡々と受け入れ、ブツブツいいつつもなんだかんだ日々を過ごしている。ダメダメさ加減を楽しむとかではなく、別に面白くもおかしくもない日常は普通に過ぎていく。その視点のクールさ、フラットさ加減がなんだかカッコイイ。

 松田洋子作品は、こういう地味な何の変哲もない世界に対する鬱屈した感情が常にベースになって、そこから次々と情念に満ちた描写を繰り出してくる。その表現には力がある。作品を作る上で重要なコアになる部分をしっかり持った作家さんだなあと感じる。こういう人は強い。社会的強者ってわけではないけれども。

【単行本】「天使みたい −ガールフレンズ−1」 山下和美 集英社 新書判 [bk1][Amzn]

【単行本】「白い花 紅い華 −ガールフレンズ−2」 山下和美 集英社 新書判 [bk1][Amzn]

 NHK教育でのドラマ化に合わせて新装版で復活。改めて読んでみたけど、やっぱりしびれた。すごく面白い。とくにそれぞれ表題作になっている「天使みたい」「白い花 紅い華」が素晴らしい。

 「天使みたい」はともに科学者である父母が、死んだはずの主人公の少女・はるかの双子・かなたのロボットを作ったことから始まる物語。両親ははるかの成長に合わせてかなたの身体も作り替え、彼女たちは記憶を共有しながら育っていく。かなたのおかげで自分は半分でしかないというコンプレックスを抱き続けるはるかの苦悩、それでありながらもかなたに向ける想い。中盤はぐぐっと盛り上げ、ラストはしみじみ締めくくる。話運びが抜群にうまくて鳥肌の立つような出来栄え。「白い花 紅い華」は、クラスの支配者として君臨していた小早川さんと、彼女の支配下に入らずにいた甲田さん。二人の異彩を放つ少女の対立と友情を描いた物語。二人の関係は引かれ合い、牽制し合い、常に緊張感に満ちているけれども、どこか共鳴している。カッコイイ女二人、そこにカッコイイ男もからみ、なんとも美しいお話に仕上がっている。

 最近は男性誌がメインになっている山下和美だけど、それとは別に、またこういう読切もどんどん描いていってほしい。この人の洗練ぶり、キレ味、立ち姿のカッコ良さにはいつも惚れ惚れする。

【単行本】「Climber」 森山塔 フランス書院 B6 [bk1][Amzn]

 単行本「死ぬなミミズ」「お姫さまといろいろ」からのより抜き再録に読切「てんぷらたまごうどん」をプラスした単行本。ここらへんの作品群は当初、塔山森名義で発表されたものだが、個人的にはすごく好きなあたり。ストーリーもそこそこあり、かつシュールでトリッキーな山本直樹/森山塔/塔山森の持ち味がいかんなく発揮されている。「軽のトラック」(原題「Kのトラック」)の持って回ったような白々しいセリフのテンポ良い繰り出し方とか、「崑崙南華楼の想い出」「甲州街道はもう秋なのさ」の不思議な夢を見ているような読み心地とか実に素晴らしい。このころはまだフルCGではないんだったっけか、線の艶めかしさもとても良いなあ。

【収録作品】「崑崙南華楼の想い出」「甲州街道はもう秋なのさ」「じょおうさま」「死ぬなミミズ[前編][後編]」「登山者たち」「続・登山者たち」「PATRIOT」「軽のトラック」「こんな娘といいなできたらいいな」「よい子の日記 part1/part2」「てんぷらたまごうどん」


6/21(土)……内弟子の小槌

【単行本】「Tokyo Graffiti」1巻 井上三太 集英社 B6 [bk1][Amzn]

 この作品はけっこう好き。えーと街の看板やら鉄橋やらあちこちにスプレーでカッチョイイ字やら絵を描く行為、なんでも「グラフィティ」というらしいですな、それをやっててカリスマ的な扱いさえ受けている男子・森永裸武、通称:LOVEが主人公。とにかく街に出てグラフィティを描いているのが楽しいという彼に、クラスメートの桃子は惹かれていくが、桃子は桃子で友達が応募したオーディションがきっかけでトップアイドルへの道を歩んでいく。そんな二人の青春ラブストーリーを軸にお話は展開。

 この作品でいいのは、彼らは彼らなりに青春してるんだなというのが伝わってくること。まあ正直自分的にはほとんど縁のない世界ですよ。グラフィティだのヒップホップだのいうものは。で、そういうのをただ街で見かけるだけだったらたぶん「若ぇもんはよく分からん」「馬鹿なことやってんなー」くらいで終わっちゃうんじゃないかと思う。でもこういう作品があると、そういうことをやってる人たちも普通に青春してるのだなと感じられる。まあもちろん全部が全部こんなステキじゃない、っていうか輝いてる奴はごく一部なんだろう。でもそれはどのフィールドだって一緒。ただこういう作品は、そういった対象を偏見を持たずにフラットに見れるきっかけにはなる。それだけでも個人的にはけっこうな収穫。あと普通に青春ラブストーリーとして楽しくできてる。桃子ちゃんはかわいいし。井上三太は昔に比べて女の子描くのずいぶんうまくなってると思う。

【単行本】「柔道放物線」2巻 今井智文 秋田書店 新書判 [bk1][Amzn]

 週刊少年チャンピオンの後ろの方で地味にヘンなことをやっているギャグ漫画。1巻のときは「もう少し面白かったような」とか思わないでもなかったんだけど、2巻になってずいぶん良くなってる。明らかに面白くなってきていると思う。チビ、デブ、メガネの柔道部3人が織り成すギャグという枠組みは変わってないんだけど、ドタバタというよりはまったりとしながら邪でマッドな得も言われぬ空気が漂ってる。あとキャラクターの表情がクドめなのもさわやかならざるものがあって、クセのある面白さを演出。適度にうっとうしいところがいい。

【単行本】「軍鶏」19巻 作:橋本以蔵+画:たなか亜希夫 双葉社 B6 [bk1][Amzn]

 リョウとの邂逅を待ちわびるトーマを中心として、さまざまな異能の格闘家たちが動き始める。それぞれ理由のある強さを持ったヤツらが続々集まってくるようすは単純にワクワクする。早いとこ実際の試合が見たい。

【単行本】「史上最強の弟子ケンイチ」5巻 松江名俊 小学館 新書判 [bk1][Amzn]

 いつもながらきっちり楽しい。この巻ではいよいよケンイチが梁山泊の住み込みの内弟子になり、本格的な鍛錬が開始。格闘技やらトレーニングやらの理論的に正しいかどうかはともかくとして、漫画としてはしっかり完成されている。この作品の場合、「戦え!梁山泊 史上最強の弟子」で一度描かれたもののブラッシュアップされてるというところもあるので、まったくの新展開に突入してからが勝負かなという気もする。

【雑誌】ドルフィン 8月号 司書房 B5中

 巻末とかでひっそり続けられていた司書房内輪マンガ、高塚さのり「それさえもおそらくは平凡な日々」単行本化の報にちょっとびっくり。

 天崎かんな「オリヒメサマ」。主人公男子の部屋に空から美少女、ていうか七夕の織姫様がおっこちてきて……といういわゆるオチモノ系なお話。でも落ちてきたお姫様が炊飯器を直撃してもがもがするところとか、けっこう楽しかった。この人の作品は登場する人物がたいていお人好しだったりおっちょこちょいだったりして、見てて和む。あわじひめじ「ゴミ箱恋愛協奏曲」も和み系なH。ファミレスのバックヤードで、片付け最中に脚がゴミ箱から抜けなくなってしまったのをきっかけにカップル誕生。そばかす娘のヒロインが明るく元気でなかなかかわいい。くどうひさし「ラヴリー大野城さん クローゼットの秘密」は、大野城さんがというヒトが大好きで部屋に忍び込んだメガネ君男子が、大野城さんが帰ってきたので慌ててクローゼットに隠れる。そこで目撃した大野城さんがカップルでイチャつく様子を見てメガネ君大興奮。オチはベタだけどドタバタ楽しくてよろしいんじゃないでしょうか。


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