「最近の漫画は物語性が薄くなっている」との指摘がある。この問題について、「検討に値する」と思われる事項を以下に列挙していく。
OHP日記の関連箇所:2002/11/09、2002/11/10、2002/11/11
▼前提部分に関する考察
・そもそもここでいう「物語性」とは何を指す言葉なのか。
・ここでいう「最近の漫画」およびそれと対比される「昔の漫画」とは、具体的にいつごろからいつごろまでの作品を指しているのか。
▼最近の漫画は本当に物語性が薄いのか
・「物語性の薄さ」を指摘する人は、現在の漫画についていける感性を持ち合わせていないだけではないのか。
・昔の漫画を美化しすぎなのではないか。
・昔の漫画は今読んでも面白いか? 評価にノスタルジーが影響していないか。
・全体的なレベルの問題。時を超えて語り継がれるほどの名作を除いた「昔のその他の漫画」のレベルはどうだったのか。
▼本当に「最近の漫画は物語性が薄い」と認めた場合における考察
・それは漫画特有の現象なのか。
・一部のジャンルに限った話ではないのか。
・一時的な現象ではないのか。
・物語性は弱まったが、それに代わる何かが今の漫画にあるのではないか。
▼「最近の漫画でも物語性の強いものは昔と同じくらいある」と仮定した場合における、「薄まった」と感じる人が多くなっている理由
・その人が今の漫画についていけていない。読解力、感性の不足。
・単純にその人が漫画を読んでいなくてイメージだけでモノをいっている。
・物語パターンが消費され尽くし、読者が慣れた。
・生半可なフィクションを凌駕する現実。
・受け手の感受性の変化。想像力の減退。
・嗜好の多様化による、特定の個人に対する作品のヒット率の低下。
・雑誌数の増加による有力作品の分散。
・出版点数の増加により個々人が漫画をカバーしきれなくなった。
・他の娯楽の充実による漫画の相対的な地位低下。
・漫画が高度化したことで間口が狭くなった。
・「物語性の強い漫画が減った」のではなく「物語性の薄い漫画が増えた」。
▼「本当に物語性の強い漫画が減っている」と仮定した場合における、その原因として考えられるもの
・「物語」以外の部分で勝負する作品が増えた。またそれを受け容れる土壌が成立した。
・実際に作品レベルが落ちている。
・作り手の感受性の変化。
・漫画家育成力の低下。
・誰にでも分かりやすい作品が減った。
・目につきやすい特定ジャンルの衰退→物語を語るフィールドが少年誌から青年誌へと推移?
・ジャンルの細分化により、個々の作品における内容の幅が狭くなった。
・作画技術に対する要求のハイレベル化→物語に割く時間の現象。
・作画の精密化に伴う情報量の増加→ついていけない読者が増加。
・作品の長大化。話数、単行本巻数が増加した分、一話一話の内容が薄まっている。
・社会の変化。フィクションとの対応の複雑化。
▼「物語性は薄まっていない」と確定した場合のリアクション
・実際には物語性が強い作品があるのに認知していない人がいる。そのような人にも認知させるべきか?
・認知させるとしたらどのようにすればいいのか。
・現状はいいかもしれないが将来に不安はないか。
▼「物語性が薄い」と確定した場合のリアクション
・「物語性が薄い」ということは本当に悪いことなのか。
・物語性が薄いほうがむしろ常態であり、物語性が強いほうが異常であるとは考えられないか。
・漫画には物語性以外の面白さもあるのではないか。
・物語性を取り戻すにはどうしたらいいか。
・「新しい物語」の可能性はどこにある?