2002年5月中旬


5/20(月)……肉つかない中つ国

【書籍】『「中つ国」歴史地図 トールキン世界のすべて』 カレン・ウィン・フォンスタッド 評論社 A4 [bk1][Amzn]

中つ国歴史地図 自分内「指輪物語」熱が高まっているのを受け、ネット書店でなんとなく注文。そしたらこれがかなりマニアックな本だったのでうれしくなってしまった。「指輪物語」を読んでいると「今、地図でいうと彼らはどこらへんにいるのだろう」「この土地にはどんないわれがあるんだっけ」みたいな疑問がいろいろ出てくるのだが、この本の作者もたぶん同じことを考えたのだろう、中つ国世界の詳細な地図を物語をもとに描き起こすという作業をしたのがこの本。まず最初に長さの単位の算定や、中つ国世界が平らなのか球形なのかの推測などを行い、非常に本格的に作業している。

 中身は実にストイック。地図と説明文だけで、キャラクターのイラスト、というか生きている者のイラストなんか一個もなし。「指輪物語」当時の話だけでなく、「シルマリルリオン」などで詳細に描かれた上古のエピソードなどなど、あらゆる場面における地図を作ろうと試みている。しかもしまいにはミナス・ティリスやオルサンクの塔の構造など細かい点にまで言及。トム・ボンバディルの家の見取り図まであるのには驚かされる。マニアの人にとってはもうたまらない1冊だが、ハッキリいってそれ以外の人には何が何だかという本だと思う。何十回も「指輪物語」や「ホビットの冒険」「シルマリルリオン」を読んでなお飽き足らない人にオススメ。

▼6月購入予定。リンク先はbk1の予約ページ

6/上 「中村明日美子短編集」 中村明日美子 太田出版
6/上 「大葬儀」 駕籠真太郎 太田出版
6/上 「家政婦が黙殺」 篠房六郎 ビブロス
6/1 「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」1巻 安彦良和 角川書店
6/1 「Dr.リアンが診てあげる」1巻 竹内元紀 角川書店
6/1 「ケロロ軍曹」5巻 吉崎観音 角川書店
6/1 「地球美紗樹」3巻 岩原裕二 角川書店
6/5 「しゅーまっは」5巻 伯林 秋田書店
6/5 「イケてる2人」13巻 佐野タカシ 少年画報社
6/5 「リボルバー」 ZERRY藤尾 コアマガジン
6/6 「流星のストライカー」1巻 秋月めぐる 秋田書店
6/6 「賭博破戒録カイジ」6巻 福本伸行 講談社
6/6 「ユキポンのお仕事」5巻 東和広 講談社
6/6 「しあわせ団地」4巻 蓮古田二郎 講談社
6/6 「バカ姉弟」1巻 安達哲 講談社
6/6 「復讐餓鬼」 MARO 三和出版
6/7 「ベルセルク」23巻 三浦健太郎 白泉社
6/7 「イエローハーツ」1巻 米倉けんご ワニマガジン社
6/7 「To-mA」3巻 桑原真也 講談社
6/7 「眠狂四郎」4巻 作:柴田錬三郎+画:柳川喜弘 新潮社
6/7 「ワイルドリーガー」4巻 渡辺保裕 新潮社
6/7 「奥さまは少女」 甘詰留太 ティーアイネット
6/13 「吉田自転車」 吉田戦車 講談社
6/17 「ママと呼ばないで」 矢凪まさし エンジェル出版
6/18 「からくりサーカス」23巻 藤田和日郎 小学館
6/19 「青春ヒヒヒ」下巻 清野とおる 集英社
6/19 「BOX」2巻 六田登 集英社
6/19 「いくえみ綾 THE BEST-PREMIUM!長編セレクション−」 いくえみ綾 集英社
6/21 「バガボンド」14巻 井上雄彦 講談社
6/21 「不思議な少年」2巻 山下和美 講談社
6/21 「竹易てあし漫画全集 おひっこし」 沙村広明 講談社
6/21 「ラブレター」 アルコ 集英社
6/21 「空室あります」2巻 やまあき道屯 講談社
6/21 「蒼天航路」25巻 王欣太 講談社
6/21 「ブラックジャックによろしく」1巻 佐藤秀峰 講談社
6/21 「ブラックジャックによろしく」2巻 佐藤秀峰 講談社
6/21 「もっけ」1巻 熊倉隆敏 講談社
6/21 「ラブやん」1巻 田丸浩史 講談社
6/21 「仮面ライダーSPIRITS」3巻 村枝賢一 講談社
6/21 「学園まりあ」 あうら聖児 晋遊舎
6/24 「れ・り・び」2巻 ともち 幻冬舎コミックス
6/24 Bstreet Vol.9  幻冬舎コミックス
6/24 「幽玄漫玉日記」6巻 桜玉吉 エンターブレイン
6/24 「振袖いちま」2巻 須藤真澄 エンターブレイン
6/25 「秘密のカンヅメ」 春籠漸 ヒット出版社
6/26 「泥棒猫」2巻 大石まさる 少年画報社
6/27 「ピュアガール」 おがわ甘藍 松文館
6/27 「琴線」 斉藤佳素理 ジェーシー出版
6/28 「ZOID惑星Zi」1巻 塩崎雄二 小学館
6/29 「花園メリーゴーランド」4巻 柏木ハルコ 小学館
6/29 「ざこ検マルチョウ」5巻 高田靖彦 小学館
6/29 「アグネス仮面」2巻 ヒラマツ・ミノル 小学館
6/30 「ミルク中毒」 友永楓人 一水社
6/下 アックス Vol.27  青林工藝舎
6/下 「バカ田バカ助の挑戦」 長尾謙一郎 白夜書房
6/下 「アナル・ジャスティス」2巻 上連雀三平 フランス書院
6/下 「飲尿女神」 上連雀 ワニマガジン

【雑誌】ビッグコミックオリジナル 6/5 No.11 小学館 B5中

 たくまる圭「未来少年ビン坊」。貧乏話でかなりすさみそうな状況なのだけど、兄弟愛に満ちていて読後感はほのぼの。それにしてもこの人の線は、ちょいとラフなところがあるけれども暖かみがあって気持ちいい。

【雑誌】ヤングマガジン 6/3 No.25 講談社 B5中

 ロクニシコージ「すべてに射矢ガール」。そろそろ矢についての根本的解決がなされるのだろうか。というわけでここのところ物語は核心部へ近づいてきてる。最終回も近いかなあ。蓮古田二郎「しあわせ団地」。今回は突如迷い込んできた女教師がなんかいい。絶妙に貧乏臭くてなおかつ色っぽかったり。やはりヌレスケは重要である。

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 6/3 No.25 小学館 B5中

 曽田正人「昴」が盛り上がっていてすごい感じになってきている。でもこれはまだ初っぱなだからさらに盛り上がるってことだろうし。ところで昴が先攻めみたいな形になっているということは、プリシラ・ロバーツはもっと上を行くんだろうか。そっちのほうも気になる。作:雁屋哲+画;花咲アキラ「美味しんぼ」。今回から全県味巡り富山県編。それにしても最近の山岡さんたちは、場所決めの動機が適当すぎる。同僚の人が富山県の女性に恋してるから、その仲をとりもつついでに……という感じで決めている。これではつき合わされる雄山がかわいそうだ! 別にいいんだけど。それはともかくここに出てくるゲンゲという魚はちょっと食ってみたいなー。

【雑誌】週刊少年ジャンプ 6/3 No.25 集英社 B5平

 サッカー漫画の新連載、キユ「NUMBER10」がスタート。かつて名選手で今はアルゼンチンでスカウトをやっているピエトロという男が、町で出会った日本から来た少年の才能に一目惚れ。この出会いによって少年の才能も開花していくという出だし。サッカーのシーンのアクションはキレがあるし、絵柄も明快。小難しい理屈もなく読みやすくまとまっててなかなかいい。ネタ的に語られることが多いけど、少年漫画らしい作品を描けるし、ジャンプの若手作家の中では完成度は高い作家さんだと思う。尾玉なみえ「少年エスパーねじめ」。練川えすてるのいい女ぶりに感激。あとへびの邪悪な表情も。

【雑誌】花とゆめ 6/5 No.12 白泉社 B5平

 樋口橘「MとNの肖像」、今回は聖先輩のエピソード。一見世慣れたようでいて、実はけっこうピュアな方だったわけだ。で、次号でいよいよ最終回。だいぶ収まるべきところに収まったし、ちょうどいい時期なんではないかと。

【雑誌】まんがくらぶオリジナル 7月号 竹書房 B5中

 中嶋沙帆子「電脳やおい少女」が単行本化決定したんだそうな。めでたい。発売日等は次号で発表されるとのこと。でもって次号は2色カラーで登場。

【単行本】「MとNの肖像」5巻 樋口橘 白泉社 新書判

 この巻は「MとNの肖像」本編は3話しか収録されてなくて、あとは番外編と読切という構成。本編の読みごたえが足りないのはちょい不満だけど、「せつない恋の物語」というたいへんストレートなタイトルの読切が面白かったのでわりと満足。「せつない恋の物語」は、昔から自分たちの面倒を見てくれた男に一途に恋している女の子と、その姿を複雑な想いで見つめている血のつながらない弟のお話。樋口橘は技量的にむちゃくちゃうまいというタイプじゃないんだけど、分かりやすい線、分かりやすいお話を持っているのがいい。

【単行本】「てるてる×少年」2巻 高尾滋 白泉社 新書判

 この人の絵は本当にいい。お姫様のしの、めがね君で細身色白な忍者・才蔵。二人ともたいへんかわいらしい。とくに才蔵の描写は力が入っていて、ショタっ気のある人にはこらたまらんという感じのキャラに仕上がっている。恋心の描写も甘く切なくていいねえ。ただ、物語を語るという面においては、キャラへの愛情が先に立っているせいかちょっとごちゃごちゃしていて分かりにくいようにも思える。


5/19(日)……焦燥しよう、そうしよう

▼自宅マシンのビデオカードを交換。新たに購入したのはInno3DというメーカーのTornado GeForce2 MX400のPCI版でDVIコネクタ付きのもの。しかも2枚同時。なんで今どきPCIかといえば4月13日の日記で書いたとおり、デュアルディスプレイのため。まったく同じカードを2枚使うことでメインとサブの色差を極力少なくしようという魂胆。となるとAGPは一つのマザーに1本しかないから必然的に選択できない。一つのチップでデュアルディスプレイを実現するカードの場合、同じチップなんだから色も同じに出るだろうと思いきや、意外とメインとサブの色差が出てしまう。今まで使っていたMatrox Millennium G400 DualHeadもそうだった。最近のG550あたりだとかなり改善されているそうだが、同一状態のPCIカード×2のほうが色差は出ないはず。Windows 2000環境の場合、1チップでデュアルディスプレイにすると左右画面を完全につなげて扱うので、アプリの確認ダイアログが左右のディスプレイの境界部分に出るなど使いにくいことがけっこうあり、それの解消という目的もあった。

 で、このTornado GeForce2 MX400は、現在市場にある製品としては珍しく、「PCI」「シングル」「DVIコネクタ」という条件を満たした製品。同じような仕様の製品は調べてみた限りでは、ATIのRADEON7500を積んだカードくらいしかないが、ウチのディスプレイとRADEON7500は相性が悪いらしいので結局これを選択することに。で、実際に環境を構築してみたがわりといい感じ。若干サブのほうが暗めかなという印象はあるものの、これはケーブルのせいかもしれない。まあなんにせよ今までよりは格段に色差が少ないし使いやすくもなったので満足。ただ問題は熱。ビデオカードが2枚あるだけに、ケース内はかなり熱くなるようで、さっそくサウンドカードがハングったりしていた。カードの順番を変えてみたりしたが夏はけっこう不安。ていうかパソコンの電源入れると部屋が暑くてかなわん。冷却のためにファンを増やすと今度はうるさくなるし、バランスとるのはなかなか難しいですのー。

【アンソロジー】「コミック焦燥」 太田出版 A5平 [bk1][Amzn]

 いや〜、この本いいわ。個人的にその人が描いてるだけで大幅ポイントアップって感じの濃厚な作風の人が揃っている。しかも絶妙におしゃれっぽくない路線を狙っているあたりが素晴らしい。広くオススメとかじゃないけど、ツボにハマる人はかなりイケるのでは。

 とくに感動したのがカイトモアキ「秘密」だ。いつも性的妄想を膨らませてばかりいる、ニキビ面の男子が、非常にヤバげな性質の女子に誘惑されるというお話なのだが、その女子の行いがすさまじく濃い。これはネタをバラしたら台無しになってしまいかねないので書かない。でも感触的に、早見純の特濃な作品を読んだときのようなビリビリしびれる感覚はあった。読んでてかなり悶絶してつい奇声をあげたりした。カイトモアキサイコー。それからツギノツギオだ。髪を金色にしたいかにもな男と、むさくるしいなりの男が出会って、二人でパンキッシュな日々を送るというお話。セリフが全部手書き。画風もこの人独特の、人を不安にさせるようなアンバランスさがあってたまらない。むんむん匂い立つような作風だ。それにしてもこういう小太りで丸顔で冴えないツラのキャラって、俺に似てることが多くて困る。ともあれこれを機会として、太田出版がカイトモアキ「裸のふたり」、ツギノツギオ「サルハンター」を単行本化してくれたりしたらいいなあ、などと激しく妄想。

 早見純「醜学旅行」は、非常に醜い容姿をした学生・風見君の憎悪がひしひしと伝わってくる作風は相変わらずすげえ迫力。押見修造「パラノイアスター」もわりと早見純を思わせる。なんだかそういう作風の人多いな。超能力を封印し続けたまま何もいいことなく暮らしてきたおっさんが、同じ店でバイトをやっている可愛い女の子に彼氏ができたと聞いて理不尽にブチ切れるというお話。途中の女を殴る描写の激しさとか、最後に訪れる破滅とか、夢も希望もないのがいい。いましろたかし「クール井上」のものすごい淡々としたストーリー作りも圧巻。加藤伸吉「ミドリに…」はマズいラーメン屋で出会った男女を中心とした青春ドラマで、しみじみとした味わいのあるお話。愛がある。

(執筆陣)古泉智浩、加藤伸吉、カイトモアキ、石原まこちん、ツギノツギオ、早見純、吉本浩二、尾上龍太郎、押見修造、いましろたかし、松永豊和(再録)

【雑誌】まんがタイムきらら(まんがホーム7月号増刊) 芳文社 B5中

 なんだろう。萌え系4コマ雑誌とでもいおうか、かなりかわいい女の子を描ける人が集まった4コマ誌で、これはむしろ男の子向けなのかもしれない。というか男性読者を引き込むというのはかなり意識してるんじゃないかと思う。執筆陣は以下に記しておくけど、なかなか分かった感じの顔ぶれ。

 わりとみんな楽しめたのだが、まずしおやてるこ「ぼくのおねえちゃん」が、4コマじゃないんだけど、かわいらしい子供恋愛を描いてて爽やかで良いと思った。学年誌とかから出てきたような邪気のない絵柄が心地いい。それから「とらのあなの美虎ちゃん」を描いているむっくの「眼鏡のお年頃」という、眼鏡好きな女の子の話がなんかヘンなノリでいいなと思った。原田たけひと「202号室」は、ショートカットの女の子の頭の形が良い。ナントカ「影ムチャ姫」は、姫の影武者をやることになったくノ一の天然ボケっぷりが楽しい。このほかにも吉井夏彦のメイドもの4コマとか、太田虎一郎のヘンな漫画とか、刻田門太のアキバのパーツショップを舞台にしたコメディとか、なんかいろいろオタク的ツボを突く作品が多い。なんか不思議な感じもする増刊。ただオタク受けを狙うなら、まんがタイムブランドってのはどうなんだろ。見逃されがちな気もするんだが……。

(執筆陣)おおた綾乃、関根亮子、大乃元初奈、ふじもとせい、後野まつり、水城まさひと、刻田門大、吉井夏彦、結原りん、むっく、門井亜矢、ナフタレン水嶋、原田たけひと、しおやてるこ、海藍、佐々木亮、上原甲斐、湯川かおる、師走冬子、笹野ちはる、ナントカ、太田虎一郎、篤見唯子、新条るる、荻野眞弓

【単行本】「恋愛レシピ」1巻 池部ハナ子 竹書房 A5 [bk1][Amzn]

 すごく久しぶりの単行本は、恋愛+料理という以外な路線。いや、最近の傾向からいえば恋愛のほうは至極当然なんだけれども、料理を必ず組み合わせてレシピ紹介までやるというのが意外だった。その料理もカボチャのガーリックステーキとか、はちみつをかけるハニーやきそばとか、なんか非常に甘そう。しかもそれが恋愛にごく自然にからんでいるのが面白い。恋愛自体は紆余曲折ありなんだけど、料理レシピとかが入ることによってそれをうまいことまーるい雰囲気にしてくれている。狙いがけっこう面白いし、お話としても後味良く楽しめた。

【単行本】「リアル・サマー」 山崎さやか 河出書房新社 A5 [bk1][Amzn]

 短編集。「HOUSE」「リアル・サマー」「間宮という女」「しょぼテン」「妹よ」の5作品を収録。5本で1000円というのはちと高めな気もするけど、いずれの話もソツなく楽しんで読める。1994年初出の古い作品もあれば、ごく最近のもあり、山崎さやか(沖さやか)という作家の変遷も感じる。この人は女を描くのがすごくうまい人だが、この本にも各作品で印象的な女の子が出てきてて、読者をお話に引き込むいい材料となっている。

【単行本】「LET IT BE!!」2巻 こいずみまり 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 桜小路さんかわいー。というわけで桜小路さんがちょっとHだったり、ラブラブムードが高まったりと桜小路祭りな第2巻。こいずみまりは4コマは気楽で楽しいし、ストーリー漫画もけっこう読ますし、いい仕事してるなーと思う。単純にあれだけ仕事しててネタが枯れないってのは大したもの。ところで上記bk1リンクで「LET IT BE!!」に「れっついっつびー」とフリガナが振ってあるけど、「れっつ」でも「いっつ」でもないよなー。

※2003年2月19日追記:読み仮名は「れっついっつびー」が正しかったみたいです。bk1さんごめんなさい……。

【単行本】「ORANGE」3巻 能田達規 秋田書店 新書判 [bk1][Amzn]

 オレンジがじょじょにチームとしての形を整えてきてて手応えを感じる第3巻。きちんと外国人やベテラン選手など、各ポジションのキーマンたちのドラマも描いているのが良い。やっぱり2部とはいえ、プロリーグを扱うほうがスポーツ漫画としては好きだな。学校スポーツで強さのインフレを起こすとどうしても無理は出ちゃうんで。

【単行本】「神々の山嶺」3巻 作:夢枕獏+画:谷口ジロー 集英社 A5 [bk1][Amzn]

 この巻は羽生丈二と、彼のかつてのパートナーだった岸の妹である京子との、男と女のドラマが中心。そんなわけで山登りシーンほどの壮絶さは出ようもないので、若干足踏み状態な印象。とはいえ端々の描写はしっかりしているし読ませる話であることに変わりはない。

【単行本】「アリス狩り」 中村みずも 久保書店 A5 [Amzn]

 この人は近年すっごく良くなったなあと思う。正直いってそれまではあんまり注目してなかったんだけど、鉛筆描きにしてからロリ方面でメキメキ頭角を現わしてきた感がある。作者Webの単行本情報のページ見ると、この単行本とそれまでの本では違う人が描いてるんじゃないかと思っちゃうくらい印象が違う。この単行本では鉛筆描きのタッチに高級感があるし、少女の男を誘うような目つきがエロチックでたいへんよかったり、とても充実している。いやあ化けましたなあ。


5/18(土)……下衆以外の何か

▼とある仕事で「指輪物語」の作品紹介を書くことになって本を引っ張り出してきたら(もちろん評論社の布張りハードカバーの旧版だ)、無性に指輪読みたい欲が盛り上がってきて耐えられなくなって読み始めてしまう。そしたらやっぱり面白くてつい睡眠時間を削って読みふける。何度も繰り返し読んでいると、あの「かったるい」と定評のある、冒頭の「ホビットについて」とか補遺とか年表がたまらなく良くなってくるのだが、久しぶりに読んでみたら記憶が曖昧になっている部分もあって(塚人と北方王朝の歴史とか。指輪本編にはあんまり関係ない部分なのだが)、また知識の再確認とかしたくなってきてしまった。忙しい時期だっていうのに困ったもんだ。

【単行本】「BECK」11巻 ハロルド作石 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 祝・講談社漫画賞。発行があと1か月後だったら帯に入れられたのになあ。「クロマティ高校」も同様だけど。

 で、この巻は、鳥肌立ちまくりのクライマックスだった前巻のような見せ場はないけれども、やっぱり読みやすくて面白い。野外ライブ「グレイトフルサウンド」を最後にいったん解散したBECKだったが、コユキがBECK再始動に向けて動き出す。早いとこ全員揃ってのニューBECKの演奏シーンを読みたい。聴くことはできないけれどもビンビン感じる。そういえば最初はぎこちなかったコユキだったけれども、最近はステージ上でサマになっている。こういう変化の描き方もしっかりしてて、それが非常に気持ちいい読み心地にもつながっている。ああ早く続きを読みたい。

【単行本】「青春ヒヒヒ」上巻 清野とおる 集英社 B6 [bk1][Amzn]

 アクが強いけどすごく好きなんだ! お話を要約すると、引越により日日日中学校に転校してきた少年・岩清水君が、奇矯な行動をとり続けるクラスメートたちに翻弄され続けるといった感じの学園ギャグ漫画という感じ。作画技術についてはうまいほうではないんだけど、とにかく味が濃い。ヘンなクセがありまくり。とくにクラスメートたちの造形はかなりスゴい。全裸の奴はいるわ、いつもノーパンで首を絞めたりなどの攻撃をしかけてくる女はいるわ。でもお話はあくまでナンセンス。端々でクラスメートが天井に張り付いてたり、わけのわからん細かいギャグがちりばめられているのもなんだか気にかかる。「面白いか?」と問われれば「面白い!」と答えるけれども、「他人に薦めるか?」といわれると「相手による」としかいえない。それから併録されている読切短編「坂本龍馬に憧れて…」「もんもんばあとオレ」もこれまた怪作。そういえばおまけ漫画に別冊ヤンマガでこの前連載を始めた押切蓮介と友達とあったけど、なるほどと思った。両方ともクセが非常に強い。

【単行本】「下水街」 掘骨砕三 三和出版 A5 [Amzn]

 掘骨砕三のちょいと昔めの作品を集めた単行本。このころの作品は今のようにスタイリッシュな絵ではなく、むしろよくあるタイプの美少女漫画絵という感じ。よくここからあんだけ洗練されたもんだなーと驚かされる。お話作りの面白さは変わっていない。下水の街に住む人々の物語を描いているのだが、芋虫少女と機械娘の愛情あふれる生活だとか、座れるたびに乳が巨大になっていく娘の話だとか、グロテスク極まりないけれどもキュートという、ギリギリのラインを突っ走っている。複乳もあれば複男根もありその内容はびっくりどっきり。最近ではグロ+キュートが、どちらも極限まで磨きがかかってきている感があるのだけど、アイラの休刊が決まった今、この人が本当に描きたいような作品を載っけられる雑誌ってどこがあるかなーと心配になってしまう。この稀有な才能を生かし続けるためにも、三和出版はフラミンゴ→アイラ路線を継続してほしいものだが。

 ところで今回の単行本のあとがきにより、「掘骨砕三=小瀬秋葉=鉈川紘」が公式な確定情報に。鉈川紘は単行本あとがきでインタビューの聞き役を担当している沢村三菱との合体ペンネームっぽい。というわけで掘骨砕三ページにちょっとデータ追加。

【雑誌】イブニング 6月号 No.10 講談社 B5中

 寺沢大介「喰いタン」。すげー。限定品の羊羹を食えなかったと号泣する喰いタン。殺人現場の寿司を貪る喰いタン。それにしても殺人の証拠を喰っちゃっていいんかこの男は。なんか面白いよ。絶対この人は確信的に探偵ギャグやろうとしてるね。なんだかんだいって寺沢大介作品って好きだ。吉田基已「恋風」。今回の萌えポイントは妹でなくてむしろおかあさま。熟女。若いころはさぞ美人だったんでしょうなあ。いえーい。佐藤マコト「サトラレ」。今回の主人公はサトラレの少年のほうかと思いきや。なかなかイタズラ心があって面白いエピソード。片山まさゆき「最弱!ルーズドッグス」はけっこう面白くなってきた。今のベイスターズなら勝てないかもしれませんのー。

 伊藤静「寝ズ見の番」は、商家の屋根裏に潜んで情報収集を行うという、江戸時代から続いている由緒ある職業「寝ズ見」に、21世紀である今、させられようとしている青年のお話。これがデビュー作だそうだが、絵柄的にはけっこうこなれてて落ち着いた雰囲気。小田原ドラゴンの新連載「妄想トラック8823」は、「最後の文藝春秋漫画賞受賞作家」というアオリにちょっと笑った。8823(ハヤブサ)といえば西岸良平の「海底人8823」を思い出すなあ。ちなみに「地球最後の日」という単行本に収録されてます。

【雑誌】ウルトラジャンプ 6月号 集英社 B5平

 作:倉田英之+画:山田秋太郎「R.O.D」は最終回。けっこうよくできた作品だったような気がする。アニメのほうもちょっと観てみたいところではあるんだけど、そういう作品はたまりまくりなので結局観ないまま終わりそうな気もする。いかんなあ。読切、豊増大輔「星降る夜の委員長」。なかなか爽やかな学園ラブストーリーになってて好感が持てる作品だった。とある男子のもとに迷子の女の子が転がり込んでくるが、彼女はいつも彼の世話を焼いているクラス委員長の女の子にちょっと似ていて……。絵柄から察するに、この人はコミックオルカで描いている、るりるり♥と同一人物だと思う。伊藤悠の新作「黒突」前編は、人を殺すことに良心的呵責を感じてしまう忍者(のようなもの)の少年の物語。相変わらずシャープな絵柄が非常にカッコよく、物語のほうも厚みがあって読みごたえがある。短編集とか出してくれないかなー。

【雑誌】月刊サンデーGX 6月号 小学館 B5平

  「新暗行御史」の尹仁完+梁慶一コンビを特集した別冊付録がついている。別冊ヤングサンデー2000年1/16号に掲載された「THE FOOLS」をまるまる再録。シャープで力強い絵柄はえらい達者だし、力の入る面白い作品になってる。こういう漫画を読ませてくれる付録は歓迎。やっぱり漫画を読むために雑誌を買っているのだから。この前フラワーズがやったみたいに、連載第一話を収録するという付録もなかなか良かった。ああいうのが付いてると、連載が途中の段階で雑誌を買い始めたという読者が、単行本買ってみようかなと思うきっかけにもなるかもしれないし。浅野いにお「素晴らしい世界」は、自分の彼女が「考えることをいっさいやめてしまう」という流行病にかかってしまい残された男の日々を描くという作品。しんしんと静かなお話の進め方が切なく、心に残る作品。

【雑誌】オースーパージャンプ 6月号 集英社 B5中

 石川サブロウ「ゆきのいろ」が連載再開。この人の、地味ながらしっかりドラマを作っていく作風はけっこう好き。コンスタントに読んでいける作品が一つできた。

【雑誌】Vanilla 6月号 講談社 B5平

 面白いことは面白いんだけどなんかすごく微妙。中村真理子や吉田まゆみはさすがに手堅いが、もうすこしぴちぴちしたフレッシュな人が看板を張っててほしくもある。それにしても付録が「あぶらとり紙&フェイスマスクセット」というのはなんとも。とりあえず今その付録で脂をとりつつこの文章を書いている。

 環ちひろの読切「ぶっとばせっ!」は、目の出ない女子プロレスラーが、これまた目の出ない漫画家の卵が出会ったことを契機に開き直るというお話。なかなか威勢が良くて楽しめるお話だった。とはいえ根拠なく頑張るだけでは何も解決しないわけで、考えてみるとそれで本当にいいのだろうかとか思う話でもある。俺ももうすぐ30歳だしね。やっぱ人生について考えたりもします。あと次号では、コミック.Hで描いていたマサキノリゴがショート連載を始めるらしい。これはちょっと楽しみ。

【雑誌】コミック七服神 VOLUME 02 大都社 B5平

 コスプレH漫画誌2号め。今回はLAZY CLUB、かかし朝浩、きょんといったところが新たに登場。実用面では個人的には森高たかし「セーラー気分」がヒット。この人は明るい作風だけど、妙にむちっと瑞々しいエロシーンを描くのが好み。かかし朝浩「着服!!コスプレマン」。4ページと短いけど爆発力はあって、くだらないことやってて楽しい。


5/17(金)……かませ因果、悪どい招待者

▼サッカーW杯日本代表の人選はわりと納得。中山が選ばれた時点でもう万事オッケーというか。本番の試合で同点のまま迎えた後半15分とかに、10番背負った中山が出てきたら……と想像するとこりゃもうたまらん。ついでだから前からトルシエが画策していたカズの代表コーチ就任とかもやってくれないかな。あとW杯中継では山口素弘の解説を聞いてみたい。

▼未読物
【雑誌】まんがタイムきらら 芳文社 B5中
【単行本】「ORANGE」3巻 能田達規 秋田書店 新書判 [bk1][Amzn]
【単行本】「神々の山嶺」3巻 作:夢枕獏+画:谷口ジロー 集英社 A5 [bk1][Amzn]
▼早売り
【雑誌】コミック七服神 VOLUME 02 大都社 B5平
【単行本】「下水街」 掘骨砕三 三和出版 A5 [eS]
【単行本】「アリス狩り」 中村みずも 久保書店 A5 [Amzn]

 まんがタイムきららには、新条るるとか太田虎一郎とか、「とらのあなの美虎ちゃん」でおなじみのむっくとかが描いてます。

【雑誌】コミックバンチ 5/31 No.24 新潮社 B5平

 1周年、発売日が毎週火曜から金曜に変更、フィギュア付、世界漫画愛読者大賞結果発表、英語版「RAIJIN COMICS」の北米での発売決定のおしらせなど、今号は非常に話題が多い。バンチも1年経ってさすがに売れ行きは落ちてきているっぽいけど、こうやって意欲的に話題を作ろうとしていく姿勢が衰えてないのは非常にいいことだと思う。「RAIJIN COMICS」も面白い試み。もし日本で成功しなくても海外で当たればデカいし、日本国内のほうもその利益によっていろいろなことをしていけるかもしれないし。何はともあれ2年目も変わらず応援していきたいと思う。やっぱこういう雑誌がちゃんと軌道に乗ってくれないと、漫画雑誌に夢を見るのが非常に困難になってしまうので。

 世界漫画愛読者大賞は結局のところ木ノ花さくや「エンカウンター 〜遭遇〜」になったが、個人的には「満腹ボクサー徳川。」の続きが読みたかったが、それならちゃんと投票しておかなくちゃねー。まあ何はともあれ、ちゃんと5000万円の賞を出すという実績を作ったというのは大きいと思う。今号の掲載漫画では、坂本タクマ「屈辱er大河原上」で、珍しく大河原上が勝利してたのが面白かった。

【雑誌】別冊ヤングマガジン 6/1 No.32 講談社 B5中

 押切蓮介の新連載「悪霊ドリル」がスタート。それまで勉強ができてモテモテだった男子・間宮が、学校に住みついていた化物と出会ったことで霊的なものが見えちゃうようになるわ、勉強できなくなるわ、彼女にフラれるわと転落人生に突入。この人は絵はうまいほうではないけど、得体のしれない迫力がある濃い作風の持ち主でけっこう気に入っている。これからコンスタントに登場してくれると喜ばしい。藤寿男「サイキックソルジャー正義」。超能力者の少女と、ヒーロー妄想のある男子が繰り広げる学園ドタバタギャグ。垢抜けない絵柄はけっこう好感度高いし、気楽に読めるお話も面白い。

 しばらく本誌のほうでやっていた作:筒井康隆+画:山崎さやか「NANASE」が再開。今回のエピソードも初っぱなからかなり緊張感があって面白い。七瀬のキャラクターもいいし、非常によく出来ている。松本剛「甘い水」。青春の心地よさと苦さをともに描き出す。少年少女の親密度が増しているだけに、少女の悲惨な境遇がより際立って、なんとも切ない。すごくいい。

【雑誌】ビッグコミック 6/17増刊号 小学館 B5中

 「まぐろ土佐船」が復活。青柳裕介の死後、斎藤健次の原作はそのままで、青柳プロダクションに漫画制作が引き継がれ連載続行。さすがにしっかりと原作が付いているし絵も青柳裕介本人のものに近いので違和感なく楽しめた。ただやっぱりキャラが放つオーラは、青柳裕介本人が描いていたときのものにはなかなかかなわないなという気はした。オガツカヅオ「いついたるねん」。毎度非常に鮮やかで面白い。今回は子供を作ることをためらっていた霊感主婦・明日香の家に、複雑な事情を持った少年がそのおばあさんに連れられてやってきたところからドラマが繰り広げられていく。地味な絵柄だけどじゅんじゅんと物語を進めていく手際は見事だし、いつも感心させられる。もっと広く知られてしかるべき作品だと思うし、早いとこ単行本化してもらいたいところ。

【雑誌】ビッグコミックスペリオール 5/31 No.11 小学館 B5中

 作:大西祥平+画:高橋のぼる「警視正大門寺さくら子」は、さくら子がアメリカに行くことになって一騒動。最初は小悪党的にでてきた藍川と山吹が、すっかりさくら子の子分的存在になってるのが楽しい。乃木坂太郎「医龍」は2回め。シャープな絵柄がカッコよくて、切れ味のいい医療ドラマとなっている。この調子で盛り上げていってほしい。

【雑誌】コミックメガストア 7月号 コアマガジン B5平

 鬼ノ仁「活線挿抜」は今回もエロいしうまい。ここ数年のエロ漫画全体における最大の進化といえば、ちんこ描写だと思うのだが、この人は取り分けエロいちんこ、およびまんこを描く人だなあと思う。あとそういう意味ではTHE SEIJI「2年目。」もよかった。肉弾系で手堅い。あと女の子にどこかほっとさせるような愛敬があるのも好感が持てる。乱満「秘密の基地で×××」。女教師ヤラレまくりな連載。むっちむちの熟した身体がたいへんにエロい。細かい点ではクリトリスとかに描いてある顔がなんかかわいい。

 かんとり「みるコミ2」、それから榊原薫奈緒子「異邦人妄想」の4色カラーまんが2本は肌色の彩色がともに美しい。んでもってかんとりは乳、榊原薫奈緒子はぷりぷりちんこが魅力。なめぞう「My Cheer Lady」。チアリーダーの女の子とストーカーな男のH。相変わらずキャラクターが思い余りまくってる感じの、過剰な迸りが素晴らしい。最近なめぞうはけっこう精力的に漫画を描いているんで、そろそろ新単行本が出てもいいころではないかと思うんだけど……。大我でやってた分と合わせて出してくれないかな。

【雑誌】アイラ VOL.20 三和出版 B5平

 本来は12日発売なのに17日に発売が延期されたんでイヤな予感がしてたのだが、案の定、次号での休刊が決定したとのこと。編集長のコメントによれば、この路線は存続させたいけれども最悪なくなる可能性もあるらしい。何はともあれ正式な発表は次号で行われるとのこと。前身のフラミンゴほどではないにせよ、やはり代わりの利かない雑誌だと思うので残してほしいところだが……。

 ともあれ今号の話に。まず巻頭カラー4ページのあるまじろう「逝け! 愛裸学園寸止め部」が下らなくて面白かった。男女混合エロ合戦という感じで明るく、かつ局部描写とかがエロチック。栗田勇午「二人の果て[前編]」。本格的な犬との獣姦漫画。ちょいと浦沢直樹に似たタッチで、やってることは激しい。しかも続くとくる。後編が楽しみ。海明寺裕「牧場の物語」は4話め。うーん、これ単行本になるんだろうか。なんとか収録してほしいものだけど。MARO「復讐餓鬼」は今回で最終回。なんか呆気ないけれどもそこらへんも含めて、MARO先生らしさのよく出た作品だった。これは単行本出たら買ってしまいそうな気がする。

【雑誌】コットンコミック 7月号 東京三世社 B5中

 今号も独自のマイペースを貫いている。駕籠真太郎「駅前独逸」はタイトルどおりドイツネタ。最近国名シリーズが駕籠真太郎の中でトレンドっぽい。雪見野ユキオ「消しゴムコロコロ」は図書館でのHネタ。好きなシチュエーションだ。

【雑誌】純愛果実 7月号 光彩書房 B5平

 ゼロの者のマウスパッド付。一部の光学式マウスでは使用できないそうだが、図柄がかなり露出度が高くてエロいので、どっちみちなかなか使いにくいんではないかと思う。漫画のほう、「後日談−前−」はかつて鬼畜な男に調教されていた女に優しい恋人ができるも、身体はハードなエロ責めを忘れられずに鬼畜男のほうに戻ってしまう……というお話。相変わらずじゅくじゅくと汁気たっぷりに熟れている。甘露甘露。司人形「隙間」(「すきま」の「ま」の字は、正確には門がまえに「魔」)。鉛筆描きのタッチが今回も美しい。友永和からペンネームが変更された友永楓人は、この名義では初の単行本が6月下旬に発売されることが決定した模様。めでたい。


5/16(木)……偽妖精記

▼2002年講談社漫画賞
少年部門:野中英次「魁!!クロマティ高校」、ハロルド作石「BECK」
少女部門:よしながふみ「西洋骨董洋菓子店」
一般部門:かわぐちかいじ「ジパング」

 クロ高は意外だけどなんとなく納得。そして「BECK」はもちろん大納得。ていうか遅かったとさえ思う。2000年末にコミック・ファンの仕事でインタビューをさせていただいた時点では、「BECK」は8〜9巻くらいでおしまいの予定だったらしいけれども、そこで終わってたら今回の受賞はなかったはず。やっぱりこういう賞とかは出せるうちに出しておかなきゃダメだ。そういえばハロルド作石は「ゴリラーマン」でも講談社漫画賞を受賞しているけれども、少年部門と一般部門両方とも受賞した人ってほかにいたっけかな? 確かいなかったような。1987年に19歳でデビューして、二十代前半で「ゴリラーマン」が講談社漫画賞を受賞しているはずだから、複数回受賞者としてももしかして最年少かもしれない。天性の漫画家という感じがすごくする。

【雑誌】アディダスマンガフィーバー 飛鳥新社 B5変形平 [bk1][Amzn]

 無事入手。まんがseekに特設ページがあるが、要するにサッカーW杯に向けたアディダスのキャンペーンの一環であるっぽい。参加作家は以下に示すとおり非常に豪華。しかもフルカラー。みんなページ数は少ないので、漫画的に、というか物語的に読みごたえのある作品はさほどないけれども、非常に達者な人ばかりでカッコイイ本に仕上がっている。これで本体価格が880円ってのはけっこうビックリ。漫画については一人、安彦良和だけが24ページも描いているけど、これはもろに筆の速さの差が出た結果という感じがする。

 ところでこの本で気になったのが、「[error]special edition」と銘打たれていること。えーとつまりこの「error」っていうのは、美術出版社から出てたアレのことなんだろうか。確かに装丁であるとかフルカラーである点とかは一緒だし、あそこの編集をしていたスタッフがからんでいるならこの豪華メンツも頷ける。出版社が違うのはちと不思議だが、そこらへんはオトナの事情なんすかねえ。美術出版社から出ていた「error」はさほど部数が出ていたとは思えないけれども、参加作家がだいぶ豪華になっているとはいえ、作り的にはほぼ一緒。それがこのように売れ線な本に化けているのを見ると、やっぱり売り方、プロモーションって重要なんだなあとつくづく思う。

(参加作家)大友克洋、井上雄彦、岡野玲子、松本大洋、荒木飛呂彦、安彦良和、上條淳士、寺田克也、谷口ジロー、横山宏、田島昭宇、小畑健、浅田弘幸、山田芳裕、楠本まき、西村しのぶ、矢沢あい、吉野朔実、黒田硫黄、D{di:}、ヤン・ヨンスン、Nicokas de Crecy、Francois Schuiten、Francois Boucq、Max Cabanes、Emile Bravo、ペンソン、ボワレ

【雑誌】コミックガム 6月号 ワニブックス B5平

 きづきあきら「午前10時30分のウサギ様」目当てに購入。これはデパートの着ぐるみショーの中に入っている女の子に惚れてしまった男の子の物語。きれいにまとまっていてキャラクターも魅力的。ただなんとなく結論には釈然としないものあり。女の子が心変わりするところとか、もう少しこの二人に関する掘り下げが欲しかった気はする。男の子のほうもこれだと一歩間違えればストーカーっぽく映るし。すがわらくにゆき「快速!FREE NOTE Book!!」。赤フン少年の股間の悩ましさ。素敵だ。それにしてもこの人の描線、いい具合にシャレた感じで枯れてきてるなー。

【雑誌】モーニング 5/30 No.24 講談社 B5中

 菅原雅雪「暁星記」がついに連載再開。はるか未来、立体的に超巨大な植物が地表を覆う金星で生きる人々を描いたファンタジーアクション。かなりスケールがデッカくて面白くなりそう。この再開のおかげでようやく第一部のほうも単行本にまとまってくれるんじゃなかろうか。というか第一部のお話はけっこう忘れちゃっているので、早いとこ単行本を出してくれると助かる。第41回ちばてつや賞で大賞を受賞した烏屋さと志「HOME」が掲載。タイトルは横文字だが、舞台としては武家時代の日本。盗人として放浪しながら生きてきた小悪党、人呼んで悪七が山里で一人暮らす女性に恋慕の情を抱いて改心しようとするも、待っていたのは辛い現実だった……という物語。垢抜けない絵柄だが和風情緒と重厚感のある絵柄は目を惹くし、お話としても読みやすい。あと今号には小田扉の月イチ漫画「男ロワイヤル」が掲載されているので男ファンは要チェック。

【雑誌】ヤングサンデー 5/30 No.24 小学館 B5中

 秋重学「學ビノ園」。最近とみにデコちゃん小野寺さんがかわいかったりするのだが、今回はやけに胸が大きいなー思った。

【雑誌】ヤングジャンプ 5/30 No.24 集英社 B5中

 武富智「キャラメラ」、清野とおる「青春ヒヒヒ」が終わってしまった今、いよいよヤンジャンのお楽しみは高橋陽一「キャプテン翼ROAD TO 2002」に絞られた感がある。あっもちろん山花典之「妹 あかね*」も。とかいっている間に大空翼がアディダスジャパンと正式に契約を結ぶことが明らかになったそうな。

【雑誌】週刊少年チャンピオン 5/30 No.25 秋田書店 B5平

 立松昂治によるゴルフ漫画「ラフ&ラフ」、それから佐渡川準による萌え系ラーメン屋娘ドタバタギャグ漫画「無敵看板娘」と、新連載2本がスタート。次号では作:今川泰宏+画:国広あづさ「七人のナナ」も最終回。ここのところ連載陣の入れ替わりが激しくなってきているけれども、ここのところの新連載陣を見ると一時期の萌え路線からまたちょっと軌道修正したのかな、という雰囲気も伺える。


5/15(水)……冷房インフラ

▼しまった。だらだらと泊まり込みで仕事してたら、アディダスなんちゃらかんちゃらとかいう、やけに豪華なメンツが描いてるらしい漫画雑誌を買うのをすっかり忘れてた。不覚……というほどのことでもないけど、やっぱり雑誌は発売日、というか買えるうちに買っちゃわないと落ち着かない。今週来週はわりと忙しめなだけに。

【雑誌】オールマン 6/5 No.11 集英社 B5中

 六田登「BOX」は、いよいよ一途vs.堂本の試合が始まって盛り上がってきている。そろそろ終わりが近いかな。あと里見満のゲイ漫画「Rainbow Life」は、今回も男らしくゲイ道を邁進中。好きな作品なのだが単行本は出るんかいねえ。本宮ひろ志プロデュースなだけに名前売りで出しそうな気はするけど。

【雑誌】近代麻雀 6/15 vol.414 竹書房 B5中

 うーん、いまいちパッとしない。個人的に今号で目についたのは三山のぼる「くノ一雀法 忍者姫桜」。よく分からないがやけに露出度の高い衣装をつけたくノ一が麻雀したりセックスしたりする漫画。この人の作風もけっこう独特の妙な味がある。高橋のぼるほど派手ではないが、ときどきさりげなくヘンなことやってて驚かされたりする。実はわりと好き。

【雑誌】ビジネスジャンプ 6/1 No.12 集英社 B5中

 作:夢枕獏+画:谷口ジロー「神々の山嶺」。羽生と深町、二人の無酸素登頂が続く。このところ深町サイドからの話になっているが、深町の疲労度が強まれば強まるほど、羽生の超人性が浮き彫りになってくる。やっぱりこの作品は、登山シーンになるとべらぼうに面白い。

【雑誌】週刊少年サンデー 5/29 No.24 小学館 B5平

 前後編で藤崎聖人「ガクの詩」が掲載。学校ではイジメられっ子だけど、実はけっこうな詩作りの才能の持ち主である主人公・内藤学がラップに出会って目覚めるというMCバトル漫画になるっぽい。今やってるOHP月極アンケートの「音楽漫画」の投票でちょろっと書いたけど、「TO-Y」以降の音楽漫画はスッカリ歌詞を書かないのが主流になった。「DRAGON VOICE」の身悶えするような歌詞なんかはむしろ珍しい存在。で、この漫画はかなりストレートに歌詞を書いている。そういえばラップがテーマならさすがに歌詞を書かないわけにもいかない。なんとなく盲点を衝かれた感じだった。ちなみにこの作品では詩を三代目魚武濱田成夫が担当している。ラップは好きくないが、漫画としてはハッタリ利いてるしテーマも珍しいし悪くないなと思った。

【雑誌】週刊少年マガジン 5/29 No.24 講談社 B5平

 サッカーW杯が近いということで、サッカー選手漫画がこのところよく掲載されているけれども、今回はむつ利之による「洪明甫物語」が掲載。洪明甫は好きな選手なんでちょっとうれしい。この人が日本にいれば、と何度も思った。森川ジョージ「はじめの一歩」はこのところ板垣がやけにカッコイイ。力感もスピード感も十二分。でも好事魔多しという展開になりそうな感じではある。


5/14(火)……生きろ烏賊

▼FMV BIBLO LOOX Sの新モデルは、重さは890gのままで無線LAN内蔵モデルが登場。現在の1kg以下ノートPCだと、やっぱ一番バランスとれてるような気がする。松下のLet's note R1も良かったんだけど、CPU不足のせいで生産終了しちゃったみたいだし。このクラスの常時持ち歩きノートPCはすごく欲しいのだが、個人的には今のところ待ちの一手。VAIO Uがわりと売れたようなので、それに触発された他社が軽量マシンを投入してくるであろう秋モデルを見てからといったところ。

【雑誌】ヤングチャンピオン 秋田書店 B5中

 作:宮崎克+画:高岩ヨシヒロ「ふりかえればアイツがいた! 松田優作物語」はついに最終回。カッコよかったけどちと長くしすぎちゃった感はあるが、最後はきれいな締めくくり。葉月京「恋愛ジャンキー」。今回のエイタローはやけにビッグ&ワイルド。いつの間にこんな野獣っぽくなったんだっけか。地井さんがかわいそうだ。

【雑誌】漫画アクション 双葉社 B5中

 山崎さやか「東京家族」は家族ドラマとしてコンスタントに面白い。ちょっとうまく行き過ぎな感じもするけど、その分ほのぼのとしてていい。心が洗われる。やっぱ世の中、悲惨なばっかじゃいけねえっすよ。艶々「鷹月助教授の淫靡な日々」はエロめな展開になってきたなと思ったら、次号で最終回らしい。鮫島の正体もいまいち分かってないし、なんかいきなりな感じもするけど果たして。

【雑誌】漫画サンデー 実業之日本社 B5中

 小田扉「マル被警察24時」はますますシリアス路線。ムボー君とシャイな刑事・落合の微妙な顔はほのぼのしているが。それにしてもムボーくんのマジックショーは本当に無謀だ。


5/13(月)……小粋冒険

▼カシオ計算機のデジタルカメラ「EXILIM」が正式発表さる。厚さ11.3mm/重さ85gで124万画素。これは正直、かなり欲しい。問題は実売価格だなー。MP3機能はどうせSDカードだし画像入れることを考えるとそんなに音楽入れるわけにもいかないからどうでもいいけど、ボイスレコード機能はちょい気になる。ともあれまずは現物触ってみたい〜。

【雑誌】別冊マーガレット 6月号 集英社 B5平

 いやー、別マおもしれーじゃん。と、今月号を読んですごく思った。

 まずはアルコの新連載「ハイスコア」が注目。同じクラスの男の子・千葉くんに、3か月間で50回以上も告り続けるほどに夢中な女の子・キヨちゃん15歳が主人公。彼女は千葉くんが好きで好きでたまらなくって、男子トイレに入り込んで告白してしまうほどなのだが、その彼女がある日、千葉くんを追いかけてボウリング場に迷い込む。そして初めてのボウリングでいきなり大活躍……とかいう具合。出だしを読んでとにかく千葉くん好き好きの恋愛漫画になるのかなと思ったが、何やら恋とボウリングの2本立て漫画となりそう。この人のふわふわした、感覚的で奔放な作画は見ているだけで面白い。んでもって今回はギャグとしての爆発力もあって楽しかった。いくつかの短編で見せた、オトメチックでセンチメンタルなお話を、恐らく天性の感覚で紡ぎ出してしまう才能にも惚れている。なんなんだろうこの人は。面白えなあ。というわけで今後の展開にすごく期待している。

 中原アヤ「ラブ★コン」は安定して面白いラブコメとなっている。なんかもう小泉さんと大谷くんがくっつくしかないのは分かりきっているのだが、大谷くんに恋してしまったブリブリの後輩というライバルも新たに登場して多少混戦模様。形勢逆転はまあないにせよ、派手めで愉快そうなキャラなんでちょっといいと思った。永田正実「恋愛カタログ」は、ヒロインの妹・種ちゃんの姉離れが進みつつある様子を今回は描く。微笑ましい。いくえみ綾「私がいてもいなくても」は毎度しみじみいい。ヒロインの晶子と日山の相互理解が深まり、今後さらに波瀾があるかな。河原和音「先生!」も盛り上がり中。いっぺん先生と離れることになって、今度は他校の人から告白されてしまった響。学生時代から先生一本に絞らないでほかの人も見てみろという意見については説得力があるだけに、なかなか難しい様相。まあ結論は変わらないと思うけど、物語の盛り上がりとしてはいいと思う。

【雑誌】ヤングキング 6/3 No.11 少年画報社 B5中

 「烈火の炎」の安西信行が読み切りで登場してたのはけっこう意外。でもヤングキングの誌面には合っていないこともないような。タイトルは「CRAZY MANIAX」。モテモテなんだけど3次元の女には興味ない男が迷い込んだのは、校内きってのオタクどもが集う「CRAZY MANIAX」と呼ばれる漫研。で、その面々の活躍を描くドタバタギャグ。オタク的な濃さはあまりないものの、読切で間口を広げておく場合はこんなもんでしょう。読切で1回ぽっきりで終わらすにはキャラの数が多すぎに思われるが、連載化も視野に入れてるんじゃないかなー。中西やすひろ「愛DON’T恋」は、守のジゴロ化が進んでいてますます脂っこくなった最終章。目が離せねえ、とか思っていたら作者が急病で、療養のため3か月ほど休載するらしい。作者コメントによると入院したらしい。残念だけれども充電してより濃い作品を描いていただきたい。花見沢Q太郎「ももいろさんご」は、2色カラーになったからって、赤色使いまくり。

【雑誌】ヤングマガジン 5/27 No.24 講談社 B5中

 馬場康誌「空手小公子小日向海流」。すっかり正統派な空手漫画として面白くなってる。アクションシーンもスピーディで迫力があるし、何より主人公の成長が誌面からビシバシ伝わってくるのがいい。強くなるという快感を見せてくれている。平本アキラ「アゴなしゲンとオレ物語」。今号はゲンさんが珍しくちょっとカッコイイ。それにしても「コンボイケーキ」っていったいどんな味がするんだろう。蓮古田二郎「しあわせ団地」は今号と次号で2号連続掲載。貧すれば鈍す……なんてもんじゃないな。なぜなら二人はいつも貧乏だから。それにしても今回のさなえの形相はすさまじい。夫は基本的に変わっていないが、妻はなんかどんどんまともでなくなっているような。

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 5/27 No.24 小学館 B5中

 今ちょうど大勝負中で盛り上がっている曽田正人「昴」、山本康人「僕」がともに良い。「僕」は時雄戦が次号で決着のようだが、「昴」のボレロはまだまだこれから。どんどんテンションが上がっていきそうで期待している。

【雑誌】週刊少年ジャンプ 5/27 No.24 集英社 B5平

 新連載、叶恭弘「プリティフェイス」が巻頭カラー。いきなりスペクタクルな出だし。北海道大会で優勝しちゃうほどに空手が強い不良の乱堂が、大会の帰りがけでバス事故に巻き込まれ、意識を取り戻してみたら顔が好きだった女の子・理奈ちゃんと同じものに変わっていた。顔が焼けただれていて身元の分かる持ち物がなんもなかったのだが、数少ない遺留品の中にあったその女の子の写真を元に顔を復元されてしまっていたのだった……という設定。さらに理奈ちゃんには行方不明になっている双子の姉がいて、病院から出てきた乱堂を理奈ちゃんは姉と勘違いしてしまう。んでもってその家に引き取られて一つ屋根の下の生活が始まってしまう。

 「復活前と復活後で髪の色が違う」「さすがに男の身体に女の顔をつける医者はいなかろー」「なんでその写真だけは焼けず、彼のものだと判明したのか」「理奈ちゃんも声で姉じゃないと分からないか」「男だけに体毛くらいあるのでは」「空手で優勝するくらいなんだからもっと筋肉はあるじゃろー」などなどのツッコミどころは満載ながらも、もしかしたらそれは伏線なのかもな、とか思った。まあとりあえず作画は達者で女の子はかわいいし、華やかではある。なんにせよ面白くなってくれればそれでオッケーなんで頑張ってほしいもの。

【単行本】「水蜜桃の夜」 ジョージ朝倉 講談社 新書判 [bk1][Amzn]

 今年はジョージ朝倉大ブレークの年なのかー!? というわけで「カラオケバカ一代」「ハッピーエンド」に続いて、早くも今年3冊めの単行本。さらに7月にはZipper comicでやってる「ハートを打ちのめせ」も単行本化されるという。今、ジョージ戦線に異状あり。

 で、この単行本は「水蜜桃の夜」「失踪日和」「紅いソーダ水」「カラフル・フレーバー」「愛の暴走」の5本を収録した短編。うーん、こりゃ面白いわ。「水蜜桃の夜」が、親の再婚の連れ子同士な義兄妹のもどかしい恋心を描いたセンチメンタルなお話になっていると思えば、「愛の暴走」は同棲している彼氏のことを考えると頭がパーになって、彼の会社に潜入してお茶汲みしてしまったりと突飛なことを繰り返す女の子のパワフルなバカップルラブストーリーになっている。でも馬鹿やってもピュアなラブストーリーやっても、なんだかこの人の作風には得も言われぬ強さがある。爆発力がある。さらにうまくのし上がっていけば、安野モヨコクラスにまで行けちゃう人かもな〜と思えるエネルギーを感じる。とりあえず今まで読んだ作品についてはみなハズレなしだった。どの単行本読んでも楽しめると思う。多分少女漫画系の人でなくてもオッケー。

【単行本】「ぷるるんゼミナール」6巻 ながしま超助 双葉社 B6 [bk1][Amzn]

 これにて最終回。この巻では菜々美の見合い相手として出てきた巨乳の達人的男が大活躍。菜々美はずっと凌辱されっぱなし。「凌辱されてて試験があるの忘れてたあ〜〜ッ!!」ってのは名セリフだと思う。それにしてもおめでたい作品だった。ハッキリいって内容はかなりセクハラだと思うんだけど、この人の場合はウジウジしたところがなくって読後感はあくまでカラッと明るい。なんか憎めない。これは非常に得難いながしま超助ならではの味だと思う。それからずっとセックスやってるだけのようでさえあるのに、最後は「巨乳は世界を救う」とかいってるのも実にテキトー。ここらへん、非常にどうでもいいのだが、これだけどうでもいいと反論しようという気はまったく起きない。巨乳とギャグの相性の良さは常々思うところではあるが、この作品でもそれは見事にあらわれていた。何はともあれスゴイ漫画だった。


5/12(日)……苦に楽さ

▼フランスオフを町田で開催。つまり先日まとめ買いしておいたタイム涼介「フランス」を、同好の士な方々にお渡しするついでに飲んだ。最初考えていた炭焼き料理の店がお休みだったため、馬肉料理専門店「柿島屋」に入る。ここは夕方になりきらないうちから馬肉をつつきつつ焼酎かっくらってういーとくだまいている50代以上と思しき常連のおっちゃんたちがやたらいる店で、いつ行ってもええ感じに空気がよどんでいる。わりと有名な店らしく、以前種村季弘の本に登場してるのを見たことがある。馬肉っつてもそんなに高くはない。馬肉のすきやきみたいな肉鍋が一人前900円。ホッピー200円とか合成酒250円とかいう、これまたええ感じの飲み物がメニューに並んでいる。全体的にわりと安い。馬肉もおいしいことはおいしいが、むちゃくちゃ感動するってほどでもない。まあ町田に来たら話のタネに利用してみるのも良いかもしれない。場所とかは「柿島屋」でGoogleとかで検索かければ、すぐ分かるんではないかと。

▼飲み話は楽しかった。漫画とか萌えとかの話をした。でも詳細はあんまよく覚えてない。飲み会トークだし。その後帰ってきてから同人誌をちょろっと読んだ。

5/5コミティア購入本
【同人誌】「宇宙温泉」 小田扉 <みりめとる>
【同人誌】「来ちゃった。」 <NENE>
【同人誌】「島のうらっかわ」 <極楽とんぼ>
【同人誌】「Night-Marchenの幻想雑誌 2002.5.5版」 村山慶 <Night-Marchen>
【同人誌】「とても危ない本」 村山慶 <Night-Marchen>
【同人誌】「男の闘い VOL.1」 伊藤一蔵 <伊藤一蔵商店>
【同人誌】「花八代系譜」 大空とわ <猫熊図書>
【同人誌】「プールプーール」 袴田めら <逆ギレ刑事>
【同人誌】「Othelo」 イトウサクミ/ハルタハルノブ
【同人誌】「ねむの鈴2」 中田歩美 <天羅万象>
【同人誌】「penkiya iii」 <ペンキヤ>
【同人誌】「どっか行こうや!!」3 <ひまわりデザイン事務所>


5/11(土)……macth bit

【雑誌】カラフルコミックピュアガール 6月号 ビブロス B5平

カラフルコミックピュアガール創刊号  カラフルBeeがリニューアルし注目の新創刊。白を基調とした表紙は美少女誌としてはかなりシャレていて新鮮な印象。内容的にも実用目的の美少女漫画誌とは一線を画し、きれいな絵を描ける人を重点的に起用。かなり今風ではあるのだけど、でも萌え系という感じは不思議としない。ポジション的にはコミックガムやアワーズライト等のオタク系一般月刊誌あたりと、美少女漫画誌の中間を埋める存在といった感じだろうか。成年マークは付いているものの、エロなしの作品もけっこうあってエロ度は軽め。「エロを描いていく」というよりも、「女の子の可愛さを表現するために必要であればエロも積極的に描いていく」という印象。例えばカラフルBeeでいえば春風サキのような、泥臭いけど手堅いベタな抜きエロ担当みたいな人はいないようだ。

 で、読んでみた感じ気になる作品はけっこう多かった。巻頭カラーの綾瀬さとみの連載「Pure Pure」はページ数も多くて学園ラブコメらしい居心地のいい雰囲気があるし華やか。金にうるさい小学生の女の子トイチちゃんの取り立てコメディ、オオシマヒロユキ+猪原大介「公園の帝王トイチちゃん」は絵もうまいしさすがにキレイにまとまっている。コミックでないほうのカラフルPUREGIRLの原画家オーディションから出てきた姫野裕紀「ないしょのきもち」は淡い鉛筆調のタッチがたいへん面白い。甘くてふわふわしててとてもいい絵。あるまじろう「キッチンたちばな」は、エロシーンはちょっと唐突な感じがあるものの、スッキリした絵柄と人情味のあるストーリーは好感が持てる。あとTAGRO「モノレエル」前編は、静かな筆致で資料収集のための写真撮影に出かけた漫画家のフィールドワークを切り取るといった感じのお話で、直接的に描かないけど青春の痛みとかを感じさせる作品で、後編にも期待を持たせる。toi8「空想東京百計」は色がとてもきれいで予告編ながら印象に残った。

 とはいえ全体的には雑然とした印象。予告編とかも含めて、10ページ未満の短い漫画が多く、それが入れ替わり立ち替わりするので頭のモードを切り替えるのに忙しい。なんか「もうちょっと読みたい」ってとこで終わっちゃう作品が多く、読みごたえ的には正直もう少し欲しいかなといったところ。B5平とじで650円という価格づけからすると、読者もかなりコストパフォーマンスは重視すると思うし。このあたりは今回予告編として掲載されている作家の本連載が始まるにつれて、じょじょに解消されていくのかもしれない。ともあれ、こういう華のあるシャレた絵柄の人で一冊固めた美少女雑誌というのも珍しいし、このご時世、今までと同じことやってたら売れるわけもないのでどんどん新しいことやっていく雑誌に成長していってくれればな、と思う。まずは期待して、しばらく買い続けてみたいと思う。

(漫画執筆陣)綾瀬さとみ、宇佐美渉、古賀亮一、八雲剣豪、甘夏真琴、みさくらなんこつ、東雲萌黄、オオシマヒロユキ+猪原大介、姫野裕紀、泉川康裕、森野ぱぴこ、巻田佳春、稍日向、あるまじろう、きりあきら、まえだ、太田虎一郎、TAGRO、ぱ、吉田創、CARNELIAN

【雑誌】コミックビーム 6月号 エンターブレイン B5平

 今号の注目は安永知澄の最新作「待ち人」。都会に出ていった幼なじみの友達が帰省するのを楽しみに待っている女の子・君代が主人公。自分とは違うハキハキした性格のちよに対する憧れを描き、彼女との再会がきっかけで君代は新たな一歩を踏み出す勇気を得る。さっぱりとした絵柄もストーリーも青春モノらしくて非常に爽やか。青春好きの人には必ずやヒットするであろう作風。よくできている。この人の作品はこれまで2001年10月号掲載の「くそがき」、2002年1月号「ももこの禁止生活」があるが、いずれもハズレなく面白かった。もっとコンスタントに登場してくれるとうれしい。

 おおひなたごう「のもたろう」。顔に紙袋をかぶってビルの一室で寝ころび、それぞれの善行を報告しあう5人の男たち。相変わらずまったく揺らぐことのないマイペースでナンセンスな作品を描いている。森薫「エマ」は、ケリー奥様の病状が気掛かり。エマとウィリアムの関係もこの人あったればこそという名脇役であるだけに。志村貴子「敷居の住人」、鮪オーケストラ「トニーの背骨はよく曲がる。」は次号で最終回。んでもって次号ではTKD+竹谷州史の「LAZREZ」コンビの新連載「皆殺しのマリア」のほか、水野純子の「ファンシージゴロ♥ペル」がスタート予定。水野純子はかなり意外。32ページも描くらしいけど、そんなに描けるならCUEの連載やめることなかったじゃん……とか思ったりもした。

【雑誌】コミックバーズ 6月号 幻冬舎コミックス B5平

 古屋兎丸の読み切り「あくまのうた」が掲載。魔王ルシファーに憧れる女子高生・美加と、彼女の親友である智子。非常に明るくルシファーへの想いを口にする美加だが、家庭は親が借金を残して逃亡し崩壊状態。そういった苦境も彼女を悪魔信仰へと走らせていく。明るく痛々しく物語は展開し、ラストは開放感さえあるファンタジーへと鮮やかに到達する切れ味は抜群。で、今号は最終回ラッシュ。カサハラテツロー「空想科学エジソン」、相川有「極楽丸」、作:藤木稟+画:坂本一水「SUZAKU」、新名あき「DEVIL SMILE」は最終回。福原鉄平「キカイ博士ノージルV」は本格連載化。

 第1回幻冬舎コミックス新人漫画賞で佳作を受賞した夏木旬「ミッシュマッシュナイトアメリカ」。ふわふわしたキュートな画風はなかなか面白いが、お話は閉塞してて分かりにくい。作画センスはいいだけに惜しい作品。ところでこの賞の選考についての総評で、「世相のせいか、雑誌への間違った認識のためか、全体的にファンタジー志向の作品が目立ちました」というコメントがあってちょっと笑ってしまった。そんなに間違った認識とも思えないんだけど……。「ミッシュマッシュナイトアメリカ」の佳作受賞についても「多少下駄をはかせた感もありますが」とのこと。

【雑誌】零式 Vol.41 リイド社 B5平

 安森然「WATER ENGINE 流体機関」。キョーコが顔の絆創膏をはがす仕草が妙に印象的。こういったちょっとした、なんでもない動作を気持ち良く見せてしまう画力はさすが大したもの。まだ子「プレゼント♥」は、お姉ちゃんの前の彼氏に憧れててその人の前では猫かぶってたんだけど、実は彼が変態であったことに気づいてエロ道に目覚めていく女の子のお話。独自のまろやかなペンタッチは相変わらず好感度が高い。最近の零式における注目株。

【単行本】「せんせい」 岸大武郎 新潮社 B6 [bk1][Amzn]

 北野武、山田太一、城山三郎、藤本義一の4人の、それぞれの人生に影響を与えた恩師とのエピソードを描いていく作品。一つひとつのエピソードが丁寧に描かれていて、泣ける物語に仕上がっている。この4人のインタビューも付いてるのだがそっちのほうでは各人わりと恩師の想い出をさらっと語っているところを見ると、漫画化に際してけっこう脚色を施しているのだろうなと思う。ここらへんは岸大武郎の演出力の高さを感じさせる。4話の中では、城山三郎と大学時代の恩師、それから藤本義一と川島雄三のエピソードが出色。

【単行本】「全日本妹選手権!!」2巻 堂高しげる 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 例の漫研の女の子たちによる、妹&オタクネタ満載のギャグ漫画。ネタ的にはかなりベタなものを使ってきてて、アニソンの話題とかてんこ盛り。これはあえてわざとらしいほどベタベタにしちゃっているところが、ギャグとしての分かりやすさにつながってていい。そういう知識がない人にとっても、「ああ、ディープなオタクネタなんだろうな」と分かるし。で、この巻のクライマックスは、漫研部員によるリレー漫画編でしょう。作中ではリレー漫画ということになってるけれども、考えてみりゃ本当に描いているのは堂高しげる一人なんだろうから、けっこう面倒なネタだったんじゃないかと思う。そういう手間をかけても笑いに徹しているあたりは潔し。なお、この巻の巻末には堂高しげるの漫研時代の作品もちょっと掲載されているのだが、そのころはカケアミ多様でけっこうペンタッチ違うんだなーと思った。こっちも好みかも。

【単行本】「カムカム雲雀荘」 EB110SS メディアックス A5 [Amzn]

 ロリ系ではたいへんひいきにしているEB110SSの3冊め。これまでの2冊と違って今回はロリオンリー。その分濃い内容となっている。とくに表題作の「カムカム雲雀荘」は、実母に代わってアパートの管理人をすることになった男が、その入居者の女の子とねんごろになるお話で、ロリ者の妄想が爆発した作品となっている。その娘さんのおうちは、元々父ちゃんが娘のロリ裏ビデオを撮っているようなちょい壊れた家庭なのだが、娘とばっかりやるのにちょいと飽き気味なお父ちゃんは、主人公に対し撮影に協力し家賃を値引く代わりに娘さんを差し出してくる。というとものすごく陰惨な話みたいなのだが、実際の作風としてはみんなしてセックスを楽しんでてけっこう明るい。何より女の子の表情がすごく良いのだ。あどけなくて柔らかくて。んでもってエッチシーンも充実してるしサービスたっぷり。今回は単行本のカバーイラストからしてロリ全開だけれども、個人的にはこの人は、モノクロページのほうが味があると思う。だからジャケットでビビッと来た人は、そのままの勢いで買っちゃえば、中身見てさらに満足……という具合に行くんではないかと。


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