2002年9月1日コミティア購入物件


2002/11/16読了分

【同人誌】「ツベ教のあるまち」 いまいともゆき <まんが工房・戯>

【同人誌】「かみさまのえほん」 いまいもとゆき <まんが工房・戯>

 カケアミの感じとか素朴な絵柄とか、良心的な話作りとか、山川直人を思い起こさせるような雰囲気を持っている。さすがに山川直人ほどの技量はないものの。一作一作は丁寧に描かれているし、絵柄にも味があって好感は持てる。あとがきとかを見ると藤子・F・不二雄リスペクトな人のようで、なるほどなあと思った。

【同人誌】「海が見える先に君に会いに行こう。」 さくらのりたか <DARUMAYA FACTORY>

 A3のコピー紙1枚に4ページ分ずつで、ペン入れもされていないまだラフ状態の本。なんだけど、面白かった。以前この人が描いていた『「行けるところまで行こう」と君は言った。』(そのときの感想は2000年5月7日の日記参照)の続き的エピソード。よく分からない理由で彼女と別れた男(前作の主人公が成長した姿)が、心に引っかかっていたことをハッキリさせるために行動するといった感じのお話。若干説明が不足している部分はあるが、読み心地がなめらかで気持ちがいいなと思った。30ページ以上あるお話だけどしっかりまとまってるし。もっとうまく絵を描く人はいっぱいいるけど、この人はそれに負けない面白い漫画を描ける何かをちゃんと持ってると思う。それだけにもっとガシガシいろいろ描いてほしいところではあるのだけど。

【同人誌】「赤い牙」壱 <赤い牙>

 これはコミティアで売られてた本ではなく、とある方に頼んでコミケで買っておいていただいた本。それの受け渡しがコミティア会場だったので……。あちこちで話題になっていた本だけど、プロ作家が山ほど参加した本。下記執筆陣を見れば分かるだろうけど、一癖二癖ありそうなメンツがてんこ盛りで非常に豪華。全体で112ページなんで、一つ一つの話は短いながら、さすがにこれだけのメンツだけあって短いページ数でも自分の持ち味を出すやり方を心得ている感じ。なお元々は夏コミケ限定本だったらしいけど、現在はhttp://members.jcom.home.ne.jp/akaikiba/index.htmlから購入申し込みができる模様。

【執筆陣】
AKE、安倍吉俊、長田裕幸、小田扉、鬼頭莫宏、沙村広明、清田聡、D[di:]、Nao、弐瓶勉、日本橋ヨヲコ、ヒロモト森一、古屋兎丸、ベギラマ、籬讒贓、松田洋子、真鍋昌平、三宅乱丈、森山洋
表紙イラスト:古屋兎丸 / 表紙デサイン:メチクロ

【同人誌】「ハッピーアイスクリーム読本」 果竜 <竜の子太郎>

 キラキラしたオトメチックな絵柄が毎度良い。収録されている作品は短いものばかりだけど、それぞれにファンタジーしている。きれい、かつ可愛らしい。

【同人誌】「See You」 ニシムラリョウ <universal Kidology>

 出だしは気軽に、最後は寂寥感のある締めくくり。表紙に描かれた女性の笑顔は幸福そうだが、最後まで読んでから見直すと切なさがこみ上げる。7ページの短いエピソードながら、うまいなと思わされる。

【同人誌】「Summer mer3」 <meR>

 夏をテーマに、参加メンバーが思い思いのことを描いたミニ本。使われている紙とか、絵の感じとか、全体に可愛らしくまとまっている。

【同人誌】「Potty Patty #1」 きりはらただし <迷画座>

 パティーという、英国っぽい町に住んでいる女の子と、その兄や友達の日常を描く続き物シリーズ。お話自体はまだ序盤でどういうふうになっていくかはよく分からないけど、「カルピス名作劇場」的な優しい雰囲気があってなかなか気持ちが良い。鉛筆描きっぽいタッチの絵柄もいいし。

【同人誌】「こあくまとよる」 「みつくまくん」 タカオカトオル(ドライアイ)/音子・寿

 タカオカトオル(ドライアイ)と、寿こと音子の二人本。両人ともかわいらしいファンタジー風味あふれる作品を描いている。とくに寿こと音子の作画はオリジナリティがあってとても良い。

【同人誌】「サイレン Vol.5 明日の天気」 ニシムラカズコ/保科慎太郎 <サイレン>

 両人ともうまい。保科慎太郎「天気読み」は明日の天気を当てることのできる特技を持った女の子とその友達のエピソードで、爽やかな中にもちょっと切ない雰囲気もある。ニシムラカズコ「橋の上」は、最後の夏に負けたばかりの進学校の野球部でピッチャーをやっていた少年のある夏の日を描いた話。どちらも短いけどきれいにまとまった青春話になっている。

【同人誌】「ユウエンチ」 山川黄予美 <YOIKO>

 一人で遊園地を回って寂しそうにしている女性を、その遊園地の着ぐるみの人が励ますといった感じの心暖まるお話。いつもながらに絵の完成度は高いし、お話のほうもきれいにまとまっていて読ませる。遊園地のいろいろな乗物が入れ替わり立ち替わりする演出とか、トータルで見てすごくうまいなーとか思った。

【同人誌】「春のてのひら」 朋田のえ <郷民>

 戦争で家族を亡くした後、夫と出会った祖母の過去のエピソードと、それについて想いを馳せる孫娘とその男友達の様子を描いた作品。微笑ましくラストを締めくくったお話は読後感がいい。ずいぶん昔の恋と、今現在進行中の恋の二つが心地よく描かれている。上品で整った絵柄も好感度が高くてきれいにまとまった1冊。

【同人誌】「STUPIDS」 JASON <BoleRO>

 絵の完成度がすごく高い。いかにも洋風な感じで、セリフも横書き。腕白な少年マシュー、その相棒的存在のスタントン、それから勝ち気な女の子のシェリルという3人組の日々を描いた作品。リアルな風景描写と、その雰囲気を崩さない程度にデフォルメされた3人組の姿が、非常にイキイキとしてて見ていて楽しい。細部の描き込みとかもしっかりしてるなあ。と思って、作者Webを見たところ、やはりイラストの仕事とかをしている人なんですな。「デュエルマスターズ」のカードイラストなどをやってる人らしい。


2002/11/11読了分

【同人誌】「ヒカリノハラ」 よみねむこ <よみねこ>

【同人誌】「ゆうれいのいる教室」 よみねむこ <よみねこ>

 垢抜けてはいないしちょっと古めな絵だけど暖かみがあっていいなあと思った。「ヒカリノハラ」は、中学校に入ったばかりの女の子と親戚のおねえちゃんの、夏祭りの夜のちょっと不思議なエピソード。女の子らしい気持ちの移り変わりが描けていていい雰囲気。「ゆうれいの教室」は、仲良くしていた野球部の少年が事故で亡くなってしまったことをひきずったままの女の子が、学校に出るという噂のゆうれいがその少年のモノなのではないかと思い、一目会おうとするというセンチメンタルはお話。こちらのほうもなかなかにいいお話。絵はそんなにうまくはないけど丁寧に作られていて好感度は高い。

【同人誌】「hana.」 ハネコ/高奈由朱 <ハナビ/朱花狂>

 春夏秋冬を意識して毎号本を作っているようで、この本は春の巻でテーマは花。ちなみに発行は5月コミティア。ハネコ、高奈由朱ともにファンタジーテイストなお話。高奈由朱は儚くお耽美な感じ、ハネコは優しい絵柄でメルヘンチックでなかなかいいコンビ。

【同人誌】「Night-Marchenの幻想雑誌 チッペの物語IV」2002.9.1版 村山慶

 殺し屋として育てられた少女、チッペの物語。今回はチッペが彼女をやけに可愛がるお姉さんに雇われ、「殺し屋をやめないか」といわれて悩むというエピソードで次号への続く。このシリーズも4話めになったが、絵柄的にもコマ漫画っぽくなってきてるしお話も動いてるし、読みやすくなってきた。

【同人誌】「HORIZON」 駿馬 <STUDIO MAILAND>

 イラスト集。この人の清涼感のある絵柄はとても好き。次は漫画もやっぱり読みたいです。

【同人誌】「EU-BOOK」 <山本内燃機>

 ヨーロッパ車をテーマに多数の人がイラスト+コラムを寄稿といった感じのコピー本。主催者の山本マサユキの趣味が出まくった本でなんとなく楽しい。車が分かるようならもっと楽しいんだろうけど……。


2002/11/10読了分

【同人誌】「つゆくさ7」 <つゆくさ>

【同人誌】「定型集(2)」 三島芳治 <つゆくさ>

 うーん、三島芳治がやっぱりいい。とくに「つゆくさ7」に収録された「パリの秘密の詩」が素晴らしい。クラスのみんなに溶け込まず一人ポツンとしている少女が、周囲から聞こえてくるなんともないきれぎれの言葉をノートに記録し続けていく。今回も「記録する」という行為自体の不思議さを、「使い終わった言葉はその後どうなるのだろうか。」などといった強く印象に残る言葉に乗せて描写している。シンプルでぽつねんと画面に配置された絵は、たぶん商業誌とかにはそぐわないだろうけど、数ある漫画作品の中で一種独特の光を放っている。同人誌でなければこういう人は出てこなかったに違いない、と強く思う。

【同人誌】「協定領域」 弘岳粟高 <あわたけ>

【同人誌】「取水塔・4」 粟岳高弘 <あわたけ>

 「協定領域」がエロモードの同人ペンネーム弘岳粟高名義、「取水塔・4」が通常ペンネームの粟岳高弘名義。どちらもいつもどおり、フツーっぽい感じの女の子が野外ですっぽんぽんになります。「取水塔」はシリーズものなので、1冊単体で読んだ場合は「協定領域」のほうが楽しめるかも。得体のしれないぶよぶよした生物と女の子が多人数でからんでたりしててHだし。この人のエロシーンにはなんだか得もいわれぬソソられる手触りがあるなあ。あと、あわたけ作品はどれもそうだけど、この2冊についても「なんだかSFっぽい舞台設定」が見え隠れしてちょっと面白い雰囲気を醸し出している。

【同人誌】「魔女っ娘アキラ」 らいだゆず <HATA HATA>

 いつもながらの馬鹿話……とか思ったら、意外にもちゃんとした友情ストーリーであった。元魔法少女で、現在は魔法の力もなくした平凡な女学生であるアキラが、なんだか悩んでいる様子の友達のために魔法は使えないながらも奮闘するという物語。シンプルで明るい絵柄はスラスラと読みやすいし、好感度は高い。あと巻末のお気楽な短編2本も面白かったり。コミックフラッパーで連載中の、新居さとし名義の「地球防衛OLいちご」もそのうちまとまってくれるといいなあ。できれば単行本で。

【同人誌】「STEEL HEART」 大野ツトム <トラウマヒツジ>

 ウルトラジャンプ2002年7月号に掲載された「ダロウ」ほか2編を収録した個人誌。デッサンの非常にしっかりした、シャープで力強い描線がカッコ良く実力の高さを伺わせる。とくに「ダロウ」はやっぱりよく出来ていて、戦争が終わって生きがいを見失ってしまったかつての英雄を描いた物語は悲哀に満ちている。これからはコミケはちょっと控えると後書きにあったけど(コミティアは出るらしい)、今後は商業誌のほうに力を入れていくという感じかな。

【同人誌】「空間アーカイブス」 高見知行 <流線型工房>

 モーニング 2001年 12/13 No.52に第40回ちばてつや賞受賞作「日曜日のおでかけ」(そのときの感想は2001年11月29日の日記参照)が掲載された高見知行の個人誌。シンプルかつ暖かみのある完成度の高い絵柄で、日常のふとした風景を描写した「空間アーカイブス」シリーズは、とくに大きなストーリーがあるわけではないけど視点の細やかさが印象的。あと作品の合間に挿入される頑固親父とその娘によるコメディ「父」シリーズもけっこう楽しかった。多少絵柄的には今風でないかもしれないけど、風景描写とかもうまいし、実力は高いと思う。

【同人誌】「限界通信 創刊号」 <限界通信社>

 前述の高見知行や、「Bird Cage」でアフタヌーンの四季賞を受賞した山下博行らが参加した同人誌。全般にしっかりとした線をした人が揃っていてしっかり創作をやろうとしている雰囲気が伝わってきた。作品としてはいつも学校ではイジメられている少年の思わぬ素顔を、クラスメートの女の子が発見するという僕牧人「笑顔にかかった時間」あたりがええ話で完成度高いなと思った。リストラされてヤケになっていた青年がクリーニング屋で出会った不思議なできごとを描いた渡辺大樹「おせんたく」、家にこもってゲームばかりしている男が主人公の橋本エイジ「東京バカ。〜訪問者〜」、ガッシリした線が印象的な佐藤ヒロシ「花」あたりも良い感じ。山下博行「17 15」は、田舎から出ていく少年と少女の別れのシーンを印象的に描いた作品。お話としては断片的ではあるものの雰囲気作りはうまい。高見知行は「空間アーカイブス」シリーズの4話めでの参加となっている。

【同人誌】「MPX」 すすき野なお <広域避難場所>

 ショタケットで出した本をまとめた作品集という感じ。ショタケットだけに内容はもちろんかわいい少年をいじるお話だけど、少年同士がからむのではなく、女の子が男の子にいたずらするというお話がメイン。おちんちんいじられた少年がおしっこしちゃう……という感じのエピソードは甘やかで可愛らしく、かつエロチック。

【同人誌】「i,」 鈴木ちょく <直立不動産>

 これまで発表した短編を1冊にまとめた本。収録作品は「フレンズ」「それから」「やくそくのひ」Forget Me」「HARMONICS」の5本。前3本は少年少女の想いを描いた作品で、後2本は青年のエピソード。とくに印象に残ったのは、転校していく友達との爽やかな別れを描いた「フレンズ」と、仲間と決別したバンド青年が主人公の青春ストーリー「HARMONICS」。つややかな絵柄は完成度が高くて、お話についても読後感が良いものが揃っており、作者の実力の高さが分かる。

【同人誌】「騒音カット」 上倉旧 <ロボ音>

【同人誌】「よくあるはなし」 上倉旧 <ロボ音>

【同人誌】「青田宇宙興信所」 上倉旧 <ロボ音>

 ポップでシャレた絵柄は見ていて楽しい。頭から出てきた楽しく風変わりな発想を、軽やかにお話として仕立て上げている感じ。とくに「騒音カット」はポットから次々と飛び出してくるお花、扇風機を操作するためだけに存在するロボット……などなど、自由な発想が光っている。かと思えば「青田宇宙興信所」あたりでは現代の若者の青春ストーリーっぽいこともやってて、いろいろな引き出しがありそうだなと思わせてくれた。今後も注目の作家さんだ。

【同人誌】「LDK」EPISODE 5 橋本しん <プロペラ>

 以前コミックメガフリークとかで描いていた橋本しんの個人史。軽やかではあるけれど、実に雰囲気のいい絵柄で、同棲中の男女ののほほんとした日常を楽しく描写している。別に大した事件とかは起こらないけど、テンポ良く展開されるお話は見ていて単純に楽しい。絵柄、お話ともにセンス良好。

【同人誌】「コミツカアニツヂ」 <駆動系>

 sukechan、裁谷、ワダアルコの3人本。各人とも絵がしっかりしててそれぞれ独自の雰囲気を持っている。この中ではワダアルコ「午前八時の奇妙なお茶会」がとくに良いなと思った。全身厚着でぐるぐる巻きにした元下働きの青年の身の上話を、老先生が聞くというお話。老先生のエキセントリックな性格が見ていて面白く、青年のお話の内容も不思議でなかなか。

【同人誌】「秘密基地」 袴田めら <逆ギレ刑事>

 いつもながらに上品な絵柄。最近ますますクオリティが上がったような。お話は、急に山に行きたくなったといってふらりと出ていったまま1年も戻ってきていない男を待ち続ける、その彼女と友人たちのエピソード。残された者たちの複雑な想いをクリアに描写したまとまりの良い青春モノの佳作。

【同人誌】「PURITY」 MDM/江戸川春泥 <MDM>

 商業誌で発表した「お姉ちゃんといっしょ。」「本当にありそうな恐い話」「放課後長靴下御子様同盟」の3作品を収録した同人誌。基本的にはロリ。ショタもあり。この人のタッチの細かいお子様絵は、はがき投稿者だったころからけっこう目を惹かれるものがあって印象に残っていた。形のいい頭とか、八重歯の感じとかがとくに良いなと思う。

【同人誌】「ジ・ガレガレ」 堀池さだひろ

【同人誌】「グリーンスノードニアの教会」 堀池さだひろ

【同人誌】「南の空」 堀池さだひろ

【同人誌】「A DAY IN THE LIFE」 堀池さだひろ

【同人誌】「ジ・ガレガレ BOOTLEG SERIES Vol.1」 堀池さだひろ

 コミックビームで「ジ・ガレガレ」を連載していた堀池さだひろの短編漫画5冊。「ジ・ガレガレ」の第一話のオリジナルバージョンとか、イラスト集的なものとか。内容はそれぞれで異なるものの、どれも優しくゆったりした雰囲気の、良心的なファンタジーを描いていることについては共通。ただこの人の場合は、いつももう一つ何かあればな、とは思ってしまう。良心的すぎてちょっと歯ごたえが足りないというか。絵にあと一つキレが出るか、お話にアクセントがつくとグンと良くなりそうなんだけど。


2002/11/6読了分

【同人誌】「Tableau4」 志賀彰 <憂貧局>

 どこか波長の合うヒマ人の少年・渡辺康隆と自由人な少女・中嶋未弥の青春物語。刊行ペースがゆっくりしてるのでなかなかお話は進まないけれど、進んだときはいつも面白い。いつも思うのだけど、ここの本は内容に比して安い。いつも50円とかで「ええんかいなあ」とか思いつつ買わせていただいている。「Tableau」シリーズは内容的にまとまったら総集編とか出していただけるとたいへんうれしい。人にも勧めやすくなるので。

【同人誌】「悲しみばかりじゃないけれど」 滝沢千尋・コバヤシヒロキ

 ちょっとよしともよしともっぽいかなーという感じの短編。かつて事故でメンバーの一人を失って、そのことがまだ引っかかっている学生時代の仲間たちのその後のエピソード。タイトルどおり悲しんでばかりのお話ではないが、感傷的なムード漂う小品。雰囲気作りはなかなかいい具合にできていると思う。

【同人誌】「菊男ちゃんのおしゃゆめビビム」 鵜匠カシヲ <赤色オレンヂ>

 今回は菊男ちゃんがメルヘンチックなお店で買った薬を飲んで小さくなってしまったりするお話。ファンタジー、というかなんというか。絵柄的には風変わりだけど、独自の美しさが確固としてある。意外と性描写が生っぽいのも毎回刺激的。

【同人誌】「地中に敵・迷子の遍路」 三五千波 <つくりもの>

 大人がスタンプラリー。子供がいるわけでもないのにスタンプラリー。たいへん怪しく妖しい。平衡感覚が狂うような駅構内の風景描写にクラクラする。そしてモノローグもなんだか非常に業が深い。絵と言葉の双方に含まれた毒が読んでいるうちにどんどん染み出してくるようで、なんだかく酔っ払ったような心地になる。これはすごいと思った。

【同人誌】「スペーストルネード江古田」 <地味頁>

【同人誌】「江古田バッテリー」 <地味頁>

 「スペーストルネード江古田」の表紙は、色使いとかが安倍吉俊っぽい。どちらの本もなかなかいい出来。「スペーストルネード江古田」のほうは、修学旅行先で夜更かししていた小学生男女の間の、ちょっと甘酸っぱいお話「間接的恋愛事情」(原案:永井真吾+作:笹川宏)がメイン。間接キッスというアイテムがうまく使われていて初々しく微笑ましい。「江古田バッテリー」のメインの「五月病」(原案:吉田志+作:笹川宏)は田舎の駅で乗り合わせた、東京から地方の大学にやってきた男子と、足の悪い女子のやり取りを描いた作品。大きな出来事は何もないけど心地よい余韻の残るお話。あと、どちらの本とも後半のメンバー同士のトークに若さを感じた。実際に若いのかどうかは知らないけれども。


2002/10/14読了分

【同人誌】「帰ってきたみるく☆きゃらめる」 <みるく☆きゃらめる>

 石川秀行の漫画「探偵処女エリカ」は、いつもながらに頭の軽いH漫画。この人の描く少女の軽さはなかなかにものすごくって、ちょっと珍しい才能だなーといつも感心、感動する。意外に実用的に感じてしまうあたりも屈辱というかなんというか……。吉本松明の論説は、今回はものすごく直球勝負、「萌え」がテーマ。個人的にはそろそろ「萌え」について考えるのはだいぶ飽きてきているところはあるのだが、それだけに他人が考えてくれるというのは楽でいい。実際いろいろ整理・検証してくださっているので、たいへん参考になります。

【同人誌】「面食いショウの孤独」 武富健治 <胡蝶社>

 これは爆笑した。武富健治が21歳のころ、1991年にアフタヌーンの四季賞で準入選した作品らしい。内容としてはカッコイイけどひどく面食いな男・ショウが、美人でない娘とはつき合えないという主義を貫き通すというお話。武富健治といえば、ものすごく深刻で陰鬱な表情をしたキャラが特徴なのだが、あの達者、かつ不景気な絵柄とノリをそのままに、全体としてはギャグをやっているのに驚いた。主人公たちの雰囲気はまるでフランス革命でも起こしそうなくらいものすごい大仰なノリであるのに、結局のところクリスマス前に彼女を調達するという欲望に対して己を貫き通す大学生の姿を描くという、ただそれだけの物語しかやってないところが素晴らしい。カッコイイなあ、武富健治は。

【同人誌】「魚類正義魚マン3」 森砂季 <トラウマヒツジ>

 紡錘形なシルエットが愛しい正義のヒーロー、魚マンの本。「さかなマン」でなく「うおマン」であるのがいい。デザインとかはラフなんだけど、雰囲気が良くて楽しくて好きだなー。全体にほのぼのしているのもいい。

【同人誌】「ほんとうはひとつの話」 井上やひこ <プロパガンダユニオン>

 コミティアでは名の売れているサークルだけど、ここの本をちゃんと買ったのはもしかして初めてかも。で、読んでみたらちゃんと面白かった。絵柄的には商業誌とかだと線が少ないかなって感じのものだけど、どのお話もしっかり読ます。魅力的な恋愛のシチュエーション作りがうまい人だなあと思った。ちょいとエロチックな要素の入れ方も巧みだし。

【同人誌】「スーパー委員長 vs ハイパー委員長」 面影花電車 <此処はシガレット。>

 これはいいな。勢いがある。小学校からずっと学級委員長を勤めてきた女子二人が同じクラスになり、どちらが委員長にふさわしいかを巡って対決するというお話。途中、一瞬ラブコメっぽい展開になるかと思いきや、ズバッと勢いを殺さず最後まで突っ走ってくれて痛快だった。こういう馬鹿馬鹿しいお話は好き。

【同人誌】「オメザ」「一部始終」「ごげじやばる」

 奥付がないのでサークル名や作者名はよく分からず。おそらく同じ作者のものと思われる3冊。ちょっと不思議な感触の、アーティスティックな絵柄に特徴あり。絵柄的には独自のものがあるので、ストーリー面が強まると面白そうな感じではある。

【同人誌】「職人芸ライヴヴァージョン」 中年女(文山未絵) <中年女と玉虫爆弾>

 けっこう強烈で良かった。まるで版画か何かみたいな強烈に濃い描線で、腹話術人形のフクスケを巡る濃いギャグを展開。邪悪な毒電波をダダ漏れさせている感のある登場人物が多くて、かなりスパイシーだった。爆発力もあるしかなりインパクトは強烈。

【同人誌】「いるま少女電波」 あびゅうきょ

 毎度あびゅうきょは素晴らしいなあ。この作品では、入間にあるコミュニティーFMに魅せられ、少女たちの住まう理想郷・入間をダメな男が巡礼する。少女の清らかな美しさが、何か滅びの予感みたいなものを漂わせてテキストに乗って、読むもののの心に染み入ってくる。とても危うく、美しい本だ。

【同人誌】「105号室白川由子」 YanaYang <青ラジヲ>

 大人しそうだけど、夢中になったら周りのことが見えなくなっちゃいがちな女子大生、白川由子さんの日常。このお話での彼女は、バイクに一目惚れし、それに「三郎」と名付けて乗り回している。白川さんを描く暖かみのある描線がなかなか良い感じ。


▼未読物

【同人誌】「流星学舎」(ニ)(三) 入江アリ/封谷映

 これは(一)を手に入れてから読みます。


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