2002年2月17日コミティア購入物件
【同人誌】「つゆくさ」5号 三島芳治/丸山由太 <つゆくさ>
やはり注目は三島芳治。頭の良さをひがんだ友達に「とびにさらわれる」といわれた女の子・遠野さんという少女。お話としては意味がありそうななさそうな、よく分からないのであるが、独特なリズムと作画が引っかかってくる。そしてラストシーンにも不思議な開放感がある。シンプルな画面にもなんともいえない吸引力がある。底が見えない作家だ。
【同人誌】「かおりちゃんの吃驚バウランチ」 鵜匠カシヲ <赤色オレンヂ>
【同人誌】「かおりちゃんのてふになる」 鵜匠カシヲ <赤色オレンヂ>
「かおりちゃんのてふになる」を見て、一瞬、元韓国大統領・廬泰愚になるのかと……思いませんでした、すみません。
で、内容なんだけどこりゃ濃いなあ、この世界は。いつものごとく無神経な宇宙人レティクル星人に悩まされるかおりちゃんの日常を描いているのだが、ヤバいのはむしろレティクル星人によって被害を受けていると感じ続けているかおりちゃんのほう。「何かしらねーモラトリアムとやらでひとの足さんざんひっぱっといて」「自分はいち抜けた?」「ふざけんなふざけんな豚あッ!!」。巻を重ねるたびにかおりちゃんの状況は進行していて、ダークな読後感を残してくれる。すごいなあ。
【同人誌】「男の子の為のアンドロギュヌス講座」 三五千波 <つくりもの>
男装を夢見る少女が、軒先で干されていた燕尾服ドロを決行するも、その持ち主である少年に見つかりしばし彼と語らうというお話。男装という華麗っぽい世界(実際にどうなのかはよく知らないが)と、ごく普通のアパートの軒先というミスマッチに得も言われぬ味が。絵柄など、作品全体に漂っているお耽美志向な空気も濃密。
【同人誌】「蛇を飼う女」 武富健治 <胡蝶社>
この前アフタヌーンに「まんぼう」が掲載された武富健治の作品。なおこの作品はアフタヌーン四季賞2001年秋のコンテストで佳作を受賞している。世間に迎合しない高い志を持った友人が死に、その人が飼っていた大きな蛇を引き取りともに暮らす女性が主人公。安易で無神経な行いを繰り返す世間にどうしても得心が行かないひどく脆い精神を、武富健治独特の沈痛な読感のある節回しで描いている。影のある作風から繰り出されてくる、孤独感や無力感、静かな憤り、諦念などなどいろいろなものがごたまぜになって突き刺さってくるような物語は、読む者の言葉を失わせるような力がある。この息詰まるような得体の知れない迫力を持った作風は、読み捨て系の商業誌とは相容れないものがあると思う。でもこういう人が活動し続けられる場所がどこかにあるといいな、と切に願う。
【同人誌】「伊藤伸平『素敵なラブリーボーイ』を読む」 吉本松明
Ionisationの吉本松明さんによる詳細な解説本。こういうふうに自分の惚れ込んだ作品について掘り下げ、語り尽くそうとするときのこの人の集中力はスゴいなといつもながらに思う。こういう長文の「評論」は、自分には書けない。及ばざる部分を痛感させられる。
【同人誌】「parking 08」 <parking?>
創作同人漫画批評。原稿を依頼依頼ものの結局書けなかったので、アンケートだけ参加させていただいた。そんなわけで個人的にはこの本を見ると、書けなかったという敗北感がこみ上げてきてしまうのだが、それは今さらいってもしょうがない。
で、中身のほうは下記リンクページを見ていただくと分かるとおり、漫画系Web的にはなかなかの参加メンツなのではないかと思う。個人的には新田五郎さんによる木持アート出版インタビュー、それから蛭間にあさんによる気合いの入ったあびゅうきょインタビューあたりが注目コンテンツ。あと同人誌で同人誌ガイドをやるというのはなかなか面白い試みだと思う。商業誌でやったところで別にその本を買えるわけではないし、コミティアのカタログでやる場合、どうしても多かれ少なかれイベント主催側の意志が関与してしまう。レビュワーの人が信頼に足るようならば、発表場所としては同じ即売会で売られている同人誌という場所は、すごくまっとうだし役にも達だろう。136ページオフセットで300円っていうのも頑張った価格だと思うし。いい本に仕上がっているだけにアンケートのページのレイアウトミスはもったいないな、とは思う。
(関連リンク:parking?ホームページ)
【同人誌】「LDK」 はしもとしん <プロペラ>
コミックメガフリークで連載されていた作品をまとめたもの。男子・高谷、女子・ユゲさん、仲良しな二人の日常生活を描いた作品で、読んでいると和む。二人ともかなーり呑気なのが楽しい。線自体はシンプルだけど独特のサバサバした質感のある絵柄は見ているだけで気持ちいい。すごくセンスのいい線を引く人だと思う。
【同人誌】「獅子王の門」「無表情な灰」 男鹿たかとお <壺中庵>
なるほど。かなりしっかりした作品を描ける人だな、と思った。まずは「無表情な灰」。かつて長い時間をともに過ごした幼なじみの男が死に、主人公の女性が彼のことを追憶するというお話。というと非常にいい想い出っぽいが、二人が子供のころ熱中していたのは、生き物を戯れに殺すという非常に不穏なものだった。その後、男は性犯罪を犯し、誰にも惜しまれることはなかったが、彼女のみがその死を悼む。シリアスなお話をじゅんじゅんと語っていく構成力はなかなかのもの。
「獅子王の門」は結局城持ちになれなかった武将が、死に際に主家に弓をひいて城を簒奪、彼と親しくしていた歳下の武将に討たれるまでを描いた作品。こちらも渋みがあって読みごたえ十分な作品。ただ、シャープな描線はカッコイイけど、なぜかこの人にはキャラの片側の目しか描かずもう片方を影で隠してしまうという癖があるようなのが気になる。そのほかの部分でも、線はしっかりしているのに細部を省略しているのが目立ってちょっと違和感を持った。この絵柄だともう少し細部まで細密に描き込んだほうが迫力が出そうだと思うんだけど。お話も絵も基本的にはシッカリしているので、そこらへんはもったいないかな。
【同人誌】「DIET A-GO-GO」 西村竜 <univesal kidology>
一緒に住んでる女の子がダイエットを始めたことによりバタバタする恋人たちの生活を描いた日常系コメディ。他愛ないお話だけど明るく楽しく読める作品。アワーズライトでもおなじみだったスッキリまとまった絵柄も、読みやすくてグッド。この人はここ数年でホントうまくなったなーと思う。
【同人誌】「Rainbow」「DOUBLE MOON」 <Hee-Haw>
藤ノ木いらか、衣羅ハルキ、百井葉月の3人本。いつもながら3人ともそれぞれ独自の作風を持っててうまい。「Rainbow」は虹の七色の一色ずつをテーマにした短編を、3人がそれぞれ担当。最初はいつもと違うタッチだなーと漠然と思っていたが、この本は全員ボールペンで描くというのをテーマとしていたようだ。ちゃんとサークル全体でテーマを設定していろんなことにチャレンジしていこうという姿勢は好感が持てる。で、そのボールペン描きも案外いい。トーンは使わないという縛りがいい方向に出てて、手描きの質感がいい塩梅。とくに輪郭がちょっとボヤける感じが、藤ノ木いらかの柔らかい絵柄とは相性が良い。でも百井葉月の「藍の話」の和風な風景描写にもけっこう合ってるような気はする。これはカケアミの効果かもしれないが。お話のほうもそれぞれ工夫してあっていいな。
あと「DOUBLE MOON」も、「魔法使いとその弟子」というテーマが設定されている。こちらのほうは3人があとがきで振り返っているとおり、ファンタジー世界に厚みを持たせるだけのページ数がないため、連作シリーズの抜粋みたいな感じになってしまっている。そういう点では、単体で気軽に楽しみやすいコメディテイストでまとめた衣羅ハルキ「仮免魔法使いメルル」が、この中では面白く感じた。
【同人誌】「PLEASE PLEASE MR.SKY」 レンキナコ <Poeta>
冒頭の「ヒナギク」は、作者自身もいっているように大島弓子調(さすがにそのように完成されてるわけではないけど)。なんとなく生真面目な少女漫画らしいテイストの作りが気になって購入。
【同人誌】「ハッピーアイスクリーム2」 果竜 <竜の子太郎>
【同人誌】「果竜再録短編集 Crow's foot」 果竜 <竜の子太郎>
いつもながらにキラキラしてかわいらしいいい絵。でも萌え〜って感じではなくて、あくまで美しく完成された少女世界であるところが美しくて良いなあと思う。「Crow's foot」のほうは、いろいろなところで描いてきた断片的な作品を集めた作品集という感じ。漫画、イラストなど、いろいろ見られる。「ハッピーアイスクリーム2」は魔女学校の修行物語。まだまだお話としては序の口といったところなので、これからの展開に期待したいところ。
【同人誌】「BLUE PLUM」Vol.1 <BLUE PLUM>
明星大学漫画倶楽部が1993年5月に発行した開始。コミックフラッパーで「ふたつのスピカ」を連載中している柳沼行の昔の作品が載っていたということで購入。さすがに10年近く前の本だけあって今の絵とは全然違う。これ以降でずいぶんうまくなってるんだなあ。
【同人誌】「Toy Box」1〜4 <Bits&Pieces>
なんだかわりと昔の少女漫画的な味わいを残したいい雰囲気の絵をした人が多かったので購入。線が太めの少女漫画色の色濃い猫又千夜、洗練されたキュートな絵柄が持ち味の有瀬美帆(じぇいど)、涼しげで爽やか書き文字にもメルヘンチックな味のある麻宮陵の3人がとくに気に入った。それぞれもう少しページ数があるとうれしいなー。
【同人誌】「魚マン大百科」 森砂季 <トラウマヒツジ>
みんなのアイドル、紡錘形の身体が魅力なヒーロー「魚マン」の大百科本。なんか魚マンのさまざまな側面が分かったような分からないような気持ちになれて、けっこう楽しい。それにしても魚マンはいい形してるなあ。ギョとは大違いだ。
【同人誌】「いつかこんな日が」 袴田めら <逆ギレ刑事>
アフタヌーンだったっけか、投稿用に描いた作品。学校でいつも楽しく過ごしていた仲良し4人組の女の子。その一人・理名の夢に毎日ほかの3人が現れるようになり、一人ひとり普段は隠していることを語り出す。いつものつき合いが本音を隠したものであったことを知り、理名は思い悩むが……というお話。ページ数的にもまとまっているし、ミステリアスな展開から最後のちょっと泣かせる〆に持っていくストーリー運びはなかなかのもの。ただ、ラストへ向かう重要なキーポイントとなる理名の怪我のエピソードは、ちょっと唐突で軽く感じられてしまうし、なぜ夢の中に友達が出てきたかという点に関する掘り下げも欲しい。もう少し前半部で、分かりやすくネタフリしちゃっても良かったような。ラストがキュッと切なくなる良い感じのものだっただけにちともったいない。
【同人誌】「RETURN MATCH−翔子−」EPISODE 16 高山瑞穂 <學茶無館>
いよいよ本格再開。ドーピング疑惑で一度は挫折しかかった女子走り高跳びの選手・青木翔子の復活までの道程を描いていく。1994年に前半部がラポートから単行本化された作品だが、これが非常にしっかりした陸上漫画になってて実に面白いのだ。それにしても6年も中断してたのかー。単行本のほうは今でも買えるのかな? いちおうAmazon.co.jpでは取り寄せ扱いになってるけど……。ラポートは意外と古い単行本でも絶版にしなくて、時折ぽこっと増刷したりする出版社だから案外あったりするかも。
【同人誌】「p.p.m.」1〜2 ピコピコリョウ <ぴこぴこ。>
この人は本当にセンスのいい絵描く人だなーと思う。線自体は非常にシンプルなんだけど、一本一本が実に味わい深い。例えば、アインシュタインの相対性理論の本を読んで、ちょっと涙をにじませる女の子のお話を感覚的に描いた「青934-1」なんかは、なんで泣くのかよく分からないけど絶妙にいい。ゆったりした感触が気持ちいい。とりあえず実際に見たほうが手っ取り早いと思うので作者Webにリンク。
【同人誌】「取水塔」2〜3 粟岳高弘 <あわたけ>
うん。いいですなあ。海辺の町に住むちょっとヘンな雰囲気のある女の子と、彼女に興味のある男の子。直接的なHシーンはないんだけど、普通の娘さんがキワどい格好をしてる感じが妙にキュンとくる。この人の描く女の子にはスクール水着が本当によく似合う。でもたぶん貝の水着とかでも似合うような気はなんとなくする。
【同人誌】「とかげの生活(1)君と暮らしたら」 さくらのりたか <DARUMAYA FACTORY>
合コンの席で悪酔いしてついつい「一緒に暮らす女の子募集」とか叫んじゃった男と、その話につい乗ってしまった女の子の、勢い余って実現した同棲生活を描いていくという感じ。まだ1話ということで生活本番には至っていないけど、なんか面白いことが起こりそうで楽しみ。この人の作品は、技術的にはそんなでもないものの、毎回毎回「描きたいものを素直に描こう」って感じの意気込みが伝わってきていいといつも思う。あとすごくするするスムーズに読める。「読みやすく描ける」、なおかつ「勢いがある」っていうのは貴重。
【同人誌】「スミレ式スカァト」 加瀬世市 <テレピン>
へー、うまい人だなあ。この人の本買うのはたぶん初めてだったと思うけど感心した。線がすごくしっかりしてていい雰囲気を持ってる。スカートに幻想を持った変態親父により、凶悪にメカニカルな特製スカートを取り付けられてしまった女の子の憂鬱を描くという作品。絵の緻密さとは裏腹に、内容はけっこう馬鹿馬鹿しくて楽しい。この人も絵を実際に見ていただいたほうが早かろうと思って作者Webにリンクを張ろうとしたら、なんだかすでに向こうからリンクを張っていただいていたことが判明。なんだか申しわけない。
【同人誌】「ねこのこ」「カレーさん」 walk <楽>
シンプルでゆったりした少女絵がなかなか可愛らしい。とくに自分の前世がカレーだったような気がして、自分を「カレーさん」と呼べなどとのたまう不思議な女の子のお話を描いた「カレーさん」がいいなと思った。
【同人誌】「放課後まんがまつり」Vol.1 新田五郎 <WAIWAIスタジオ>
ふぬけ共和国・マンガの新田五郎さんによる漫画紹介本。今回の特集は「アイドルマンガ!!」。モー娘。漫画を中心に新田さんらしい味のあるセレクションを展開。この人の文章は常々いってるけど本当に面白い。なんというか肩肘張って書いてるようには見えないながら、自然とにじみ出る味にいつも「この人にはかなわない」と感じる。いろいろ文句とかをつけつつも、対象への愛がそこはかとなく感じられちゃうところが人徳だなーと思う。
【同人誌】「偏西風’78 初期Sketch Book」 あびゅうきょ
1978〜1982年に描かれたあびゅうきょ作家活動初期のスケッチ集。風景画なのであまり面白いといった類の本ではないけれども、作家あびゅうきょを知るうえではやはり押さえておきたいところ。
【同人誌】「パエリア」「ボルシチ」「ガルシニア」「カテキン」 <グラニュー塔>
購入したのは「日曜日のおでかけ」で第40回ちばてつや賞を受賞した高見知行が描いていたため(「日曜日のおでかけ」についての感想は、2001年11月29日のモーニング 12/13 No.52の項を参照のこと)。橋本エイジという人もどこかで見た絵柄だと思ったら、ヤングマガジンUppers 4/16 No.8に「ヒットマンブルース」が掲載されてた人だった模様(感想は4月2日の日記参照)。4冊通してみてやっぱり目立つのは高見知行。シンプルで素直な絵柄が新鮮。さほど目立つ作品はないけど、全般にちゃんと創作しようとしている雰囲気は伺える本という感じがした。
【同人誌】「LOLITA GO HOME〜RIGHT NOW〜」 <WARHEADS>
こーわとMDG.の二人本。こーわのキレのいいペンタッチは鮮やかで美しく、女の子もイキイキ可愛い。表紙の絵なんかとくに華があるし、カラーも美してくいいねえ。MDG.のほうは、さみしがり屋な少女と悲しみの気持ちを食べる宇宙人ロクとの、暖かい触れ合いとちょっと切ない別れを描いた作品。童話チックな作りでなかなかいい塩梅にまとまっている。
【同人誌】「Night-Marchenの幻想雑誌 2002.2.17版 チッペの物語2」 村山慶 <Night-Marchen>
この本からペンタッチが変わって、ちょっと太めの強弱が利いた感じになった。個人的には前の硬質な線も好きだったのだが、長い物語を描くにはこっちのほうが向いているかも。モデルチェンジした線で描かれるであろう長めのお話に期待。今回のもチッペというキャラクターが前号よりも見えてきて面白くなりつつあるけれども、ページ数はも少し読みたい。
【同人誌】「どっか行こうや!!」その2 藤井ひまわり <ひまわりデザイン事務所>
「七転八倒ひめあられ」シリーズは気楽に読めてやはり面白い。宇宙時代が舞台なんだけど、別に肩肘張らず楽しくアドベンチャー。くにゃくにゃに力が抜けていてほのぼの。なんか骨の髄まで平和なところが素晴らしい。
【同人誌】「次」 <いのべぇ>
巻頭の¥の水性ペンか何かかな、描き込むわけではないんだけどまろみのある線はけっこう好み。あと目を惹いたのはinoko。きっちり引いたアングルも描く、奥行きのある画面作りがけっこう気持ち良くてソソるものが。今回はけっこうラフだが、もっと本格的に描いた作品も見たいと思わせるものはある。
【同人誌】「20世紀地方生活情景」 Lazy8 <FuniFuni Festa!>
地方の学校に通う、親友同士な女学生二人の情景を印象的に描いた作品。絵柄はシンプルで一話一話は断片的だけど、暖かい雰囲気はあるし、学校生活が終わりを告げていく寂しさなんかも心地よく描けている。
【同人誌】「ああ、男性自身」 山田参助
す、素晴らしい。内容的には要するにホモ漫画なのだ。しかしちまたによくあふれているようなヴィジュアル系っぽい優男がからむのではなく、あくまで山田参助の場合、柔道部っぽいというか、太めで人が良さそうな、むくつけき男たちによるエロスを描く。別にそういう趣味のある人間ではないのだけど、山田参助漫画はいいと思う。70年代テレビドラマ的というか、野暮ったさと人情味がちゃんとあって、それぞれの男たちを愛情たっぷりに描いているのが分かる。そりゃまあ一般的にいったら不格好ではありましょう。でもねえ、いいじゃないですか、こういう世界があっても。ある種、素敵なファンタジーであるとさえ思う。絵もすごくうまい。背景とかまでガリガリ描き込むってわけじゃないけれども、太い男の太く毛むくじゃらな身体を、なんかこうすごく楽しそうに描いている。表情もいいね。気持ち良さそーに歯を食いしばっている顔なんかものすごくいい。別にエロシーンない漫画描いてもうまい人だとは思うけれども、この人はこうだからいいと思う。立派です。
【同人誌】「Potty Patty Image Boads」 きりはらただし <迷画座>
新シリーズ「Potty Patty」に向けての予告編的作品。世界名作劇場的に暖かみのある絵柄は今回も冴えている。元気の良いキッズアドベンチャーものになりそうな感じ。本編に期待。
【同人誌】「ミミウサ」 稲垣有 <girl-ic>
うさぎ好きの同僚に辟易してた女の子が職場をクビになったと思ったら、部屋に何やらうさぎの飼育係と思しき女の子が押しかけてきて……というところから、お話は一気にファンタジー世界へ。うさぎをめぐる不思議なドタバタに巻き込まれてしまう。丸くてカッチリしたデザインの絵とか、テンポ良く進むお話とか、見ていて楽しい本。
【同人誌】「夢売り」 瀬島健太郎
とある真面目そうな青年が、駅のホームで「夢が叶う」という空っぽの小瓶を売っている不思議な老人と出会う。しっかりとした品のある線で実直にお話を作っているという感じで好感が持てる本だった。
【同人誌】「道」 南蔵 <の乃野屋>
の乃野屋から、こうの史代のでない本が。全編油絵調の彩色によるフルカラー本(表紙だけモノクロ)。いつも意識することなく決まりきった通勤路を往復していた男がある日ふとした拍子で、ちょっと気になっていたがコース外である階段を上り、不思議な経験をするというお話。極彩色のフルカラーが現実っぽくなさを際立たせている。終始薄ぼんやりとした描線もミステリアスな雰囲気を盛り上げていてグッド。
【同人誌】「部品くん」(3) しまざきみさえ <ハムくまズ>
これにて最終巻。(1)(2)の感想は2001年11月18日コミティア購入分のページ参照。それまで自分を単体の何かだと思っていたけれども、実は何かの一部であったことが判明した部品くんが、それまで楽しく暮らしていたコミュニティを脱け出すも……というお話。機械ではあるんだけど丸っこくて、メルヘンチックでポエティックないい感じのお話に仕上がっている。暖かみもあるし、ちょっぴり切ないスパイスも利いているし。そのまま彩色して絵本にしちゃってもいい感じだな、と思った。
【同人誌】「少年テスラ」 甲作美久智 <Ga-syasya Mine>
一瞬ニコラ・テスラの話かなーと思ったけどそうではなく、魔法学校に通うテスラ少年とその女友達、それから先生が活躍する冒険物語といったところ。絵的にはまだ垢抜けてないけれども、元気のよい少年モノを描こうとしている点には好感を持った。表情の付け方とかは矢凪まさしをちょっぴり想起。
【同人誌】「The Traditional」 ikki <Handmade Sandwich>
ラフスケッチって感じのぼやーっとした絵でインド話。お話的にはまとまってないし意味もよく分からんけれども、なんとなく気になった。これがガシガシに描き込んであったらかえって手に取っていなかったかも。ラフでぼやけていて夢みたいな感じなのが味になっている。
【同人誌】「サイレン」vol.1〜3 <siren>
vol.1はsasa/保科慎太郎/松尾奈奈/ニシムラカズコ、vol.2はニシムラカズコ/sasa/つがわまゆこ/保科慎太郎、vol.3は保科慎太郎/ニシムラカズコが執筆。とくにニシムラカズコ、保科慎太郎の主力作家二人がそれぞれ絵に味があって心惹かれた。保科慎太郎は線が細くて黒目が目立つキャラの造形が良く、ニシムラカズコは筆ペン系の暖かみのあるタッチで見せ場のシーンの雰囲気作りはなかなかのもの。お話的には強烈に惹きつけるってほどではなかったんだけど、長いのを読んでみたいなという気にさせられた。
【同人誌】「つきのよる」 トガユウジ <非常階段>
夜の森で迷った女の子が出会った不思議な出来事。欧風中世系の舞台設定。白と黒のコントラストが利いた画面作りがいい雰囲気。
【同人誌】「けだもののように」III-1 渋蔵 <ぐんたまカンパニー>
いよいよ長く続いたこの物語も完結編が始動。でも先はまだ長そう。比古地朔弥名義で描いた「まひるの海」が、ちょうどこの作品と似たような枠組みの作品だったが、やっぱりこっちのほうがつき合いが長い作品だけに思い入れは深い。ついに一太とヨリ子が再会したことで、今後どのようにお話が展開していくのかすごく楽しみ。これ、完結したらどっかの出版社が単行本化しないかなあ。少なくとも今よりは多くの人が読めるようにしないともったいないっすよ。
【同人誌】「Zipny」 コーノコーイチ
テーマは「最近の軽自動車を考える」。この人の絵もダジャレもとても好きだが、正直クルマに全然興味のない人間なのでよくは分かりまへん。でもなんとなく楽しそうな雰囲気は伝わってきて、ちょっと軽自動車が欲しくなった。
【同人誌】「モノログ」 アオゾラ透湖 <YELLOW TAG>
この人の絵はすごく好きだ〜。ペンネームに似つかわしい透明感があって。今回の本は4ページのショートが4本。ほのぼのいい雰囲気。参考までに作者Web「Rainbow Drops」にリンク。
【同人誌】「プカぼん」 <プカプカ堂>
25人の作家さんがイラストコラムを描いた本。可愛らしい雰囲気の絵をした作家さんが揃ってて雑然とした中にも統一感はある。執筆陣の中で気になる名前といえばやっぱり細川貂々かな。
【同人誌】「ぶどう摘み」 音子 or 寿
ああ、この人の絵はいい。まーるい顔と小さな目、短い指。たいへんラブリー。何かとても可愛らしいこけしさんというかキューピーさんというか。でもそういう人形的なテカテカした感じではなくて、カケアミ調の肌になじむ感触があって。「ぶどう摘み」という作品は、小学校の女教師二人が子供という存在について語り合う作品でしみじみとした暖かみあり。あと老夫婦二人がちまっと可愛らしい「たのしい日」、さりげなくてちょっとジーンとくる「たわいのないこと」なんかも短いながら良いお話。
【同人誌】「ごっこあそび」「手紙 改訂版」「やさしいこ」 藤空子 <藤屋>
端整なペンタッチが目を惹く作家さん。「ごっこあそび」はボーイズラブ色が強めな美少年二人の世界、「手紙 改訂版」は兄からの手紙のみを心の中に刻み込んで生きることを諦めてしまった儚い少年の物語、それから「やさしいこ」はそれまでちょっと敬遠してきたおばあさんの優しさを少年が知るという心あたたまるお話。いずれもきれいでいい出来。美しい少年の透き通るような肌の白さ、黒みのある瞳の輝きが印象的。
【同人誌】「たのしい読書日記」「うちのカメ」 はしもとさちこ
すごくいいなあこの人は。「たのしい読書日記」は、お子さんの読む本を追っかけ読書している近況報告、「うちのカメ」はもちろんはしもとさちこの家で飼ってるカメの話。なんかもうね、骨の髄までほのぼのしてます。とても楽しそうで、読んでてすごく癒されました。
【同人誌】「声の温度」 おざわゆき
シリーズものになるそうで今回は第一章「夏の面影」を収録。なんだか男を拒絶するような雰囲気を持った女の子が、ホームで転落しそうになったところを助けてくれた、別にかっこいいとも思えない平凡な感じの男性にほのかな好意を抱く。彼は実は、彼女の通う学校に転任してきた教師で……というところからスタート。この人が女子高生を描くなんて新鮮だなーと思ったら、作者あとがきによると初めてなのだそうな。ちなみにあとがきをつけるのもほとんど初めてらしい。まず第一章から、この人らしい切ない雰囲気が随所に漂っていて面白くなりそうな気配は濃厚。先行きがとても楽しみ。
【同人誌】「Daryl Mercury episode 002」 TOM.Ichikawa <STUDIO DOUBLEMOON>
【同人誌】「THE HOLYDAY OF CHOCOLATE」 TOM.Ichikawa <STUDIO DOUBLEMOON>
すごく美しい絵がお見事。完成度の高い造形、モノトーンな質感。シャレてます。これは一度フルカラーでも見てみたい気がするな〜と思って作者Webを見てみたけど、あまり色を派手に使ったイラストは置いてなかった。シックな色使いが好きな人らしい。
【同人誌】「本屋さん」「アルバイト瑞穂」「花泥棒」「フルート」 <FallPowder>
絵はそんなにうまいというほうではないんだけど、なんだか全般にほのぼのとしていいなと思って購入。キャラ的には「本屋さん」で、本屋のアルバイトをやってるおさげの女の子がいい感じ。
【同人誌】「魔女っ子ムサシ」 金田サカエ/らいだゆず <三枚刃/HATAHATA>
金田サカエとらいだゆず(=新居さとし)の合作本なんだけど、こりゃ面白いわ。4ページ構成の話が3本あって、1ページめと4ページめがらいだゆずで、2〜3ページめの見開き部分が金田サカエ。らいだゆずの可愛い絵柄で入っておいて、金田サカエが豪快にお話をむちゃくちゃにし、んでもってらいだゆずがあんまりまとめないでええ加減にお話をシメるという構成が絶妙。思わず笑ってしまった。なんかテキトー、かつ勢いがあるのがいい。
【同人誌】「EVERYDAY VALENTINE」 らいだゆず <HATAHATA>
んでもってらいだゆずの個人誌。この人は4年連続でバレンタイン本を出しているのだそうな。この人はなんかどこで描いても変わらんな、と思う。揺るぎない脳天気な作風を持っている。カラッと明るくてすごく好きだなあ。